JP6056718B2 - 金属帯の圧延方法 - Google Patents

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Description

本発明は、熱間圧延ラインや冷間圧延ラインなどの金属帯の圧延ラインにおいて、ロールプロフィルが3次以上の関数で表されるカーブを有し、軸方向位置で上下で互いに補完し合う形状のイニシャルロールカーブで形成された上下一対のワークロールを備える圧延機により、この上下一対のワークロールを互いに逆向きの軸方向にシフトさせて圧延する金属帯の圧延方法に関する。
金属帯の圧延においては、ワークロールと被圧延材の接触部分(以下、「板道」と言う)にて摩擦が生じ、ワークロールの板道に相当する部分の摩耗が進行していく。また特に熱間圧延においては被圧延材が鋼材である場合、800から1100℃程度と高温であるため、サーマルクラウンと呼ばれるワークロールの板道に相当する部分において熱膨張が生じる。このような局所的な摩耗と熱膨張により、被圧延材の幅方向板厚分布や形状が悪化し、製品品質や通板安定性の低下を招くという問題がある。
そのため、上下ワークロールを被圧延材の圧延1本毎に軸方向に数mmずつシフトするワークロールシフト方法が実用化されている。なお、圧延荷重によるロールの撓みを補償する機構としてワークロールクロスやベンダーがあるが、これらは摩耗や熱膨張のような幅方向に不均一なプロフィルを制御することはできない。
従来のワークロールシフト圧延方法は、被圧延材を圧延する毎にワークロールの軸方向位置を一定のピッチ(以下シフトピッチと呼ぶ)で数mmずつずらしていき、機械設備上の限界に達したら、折り返してシフトを続けるサイクリックシフト法が広く用いられている。
この方法はシフトピッチやシフト量上限などの設備制約によって決まる固定のシフトパターンであるため、ある被圧延材とその次の被圧延材との板幅の差によっては板道端部分でのロール摩耗や熱膨張の影響により、板端部の厚みが過厚(エッジハイスポット)になったり、過薄(エッジドロップ)になったりするなどの板厚プロフィル異常となる場合がある。
一方、ワークロールシフトを活用した板クラウン制御方法として、図3に示すように、ロールプロフィルが3次以上の関数で表されるカーブを有した上下一対のロールを軸方向に互いに逆向きに移動させる方法が特許文献1に開示されている。上下ロールをそれぞれ軸方向逆向きにシフトすると、被圧延材位置のロールギャップの形状が変化し、シフト位置によって板クラウンや形状を制御することができる。
特許文献2には、サイクリックシフト法を前提として決定した次材のシフト位置に許容範囲を設け、その許容範囲内でロールプロフィルの目標値と予測計算値からなる評価関数を最小とする最適シフト位置を決定するシフト量決定方法が提案されている。
また特許文献3では、ワークロールプロフィルの目標値と予測計算値から決まる評価関数を各被圧延材のシフト位置を仮定して計算し、評価関数が最小となるようなシフト位置を圧延サイクルで圧延予定の全被圧延材について決定する方法が提案されている。
特許文献1 特開昭57−091807号公報
特許文献2 特開平06−154823号公報
特許文献3 特開昭63−260615号公報
しかしながら、特許文献1に記載されている方法では、シフト位置は各被圧延材の板幅や圧延荷重によって決定されるため、ロール摩耗や熱膨張を軸方向に分散させるサイクリックシフト法を用いることは出来ない。
また、特許文献2や特許文献3に記載されている方法では、ワークロールプロフィルをロール胴長全体にわたり目標のプロフィルとすることを特徴としており、被圧延材のワークロール上での板道範囲を考慮してシフト位置を決定するものではない。つまり、シフト位置を決定する際に『ワークロールプロフィルのどの位置で被圧延材を圧延するのか』を考慮していないために、被圧延材の板幅やシフト位置によっては、エッジハイスポットやエッジドロップなどの幅方向板厚プロフィル異常が生じるという問題がある。
本発明は以上の問題を解決すべくなされたものであり、被圧延材を圧延するに際し、板幅方向での厚みが不均一、特に幅端部の厚みが過薄になったり過厚になったりする問題を解消できる金属帯の圧延方法を提供し、金属帯の製造におけるスケジュールフリー化を安定的、かつ確実に、実現することを目的とするものである。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]金属帯の圧延ラインにて、圧延サイクルにおける圧延予定の全被圧延材を、ロールプロフィルが3次以上の関数で表されるカーブを有し、軸方向位置で上下で互いに補完し合う形状のイニシャルロールカーブで形成された上下一対のワークロールを備えた圧延機により、該ワークロールを互いに逆向きの軸方向にシフトさせて圧延する圧延方法において、圧延サイクルにおける圧延予定の全被圧延材について、ワークロールシフトピッチに上限を設け、可能なワークロールシフト位置の組合せを仮定して、これらの組合せの全てについて、組合せ毎に、被圧延材とワークロールの接触部分におけるロールギャップの予測計算値と目標値との差を、被圧延材板幅方向の1点以上の評価点について、式(1)
に基づいて、評価関数J1として求め、そして、1点以上の評価点すべてについて求めたJ1の値を式(2)に基づいて評価関数J2として求め、次いでJ2を当該圧延サイクルの全被圧延材について合計した値を評価関数J3として求めた後に、組合せ毎のJ3の値の中で最小となるときの組合せのワークロールシフト位置を、圧延サイクルにおける圧延予定の全被圧延材についてのワークロールシフト位置として決定して圧延することを特徴とする金属帯の圧延方法。
[2]前記の上下一対のワークロールを備えた圧延機がタンデム型圧延機の少なくとも1つ以上のスタンドに設けられていることを特徴とする[1]に記載の金属帯の圧延方法。
圧延サイクルにおける圧延予定の全被圧延材を、互いに逆向きの軸方向にシフト可能であって、ロールプロフィルが3次以上の関数で表されるカーブを有し、軸方向位置で上下で互いに補完し合う形状のイニシャルロールカーブで形成された上下一対のワークロールを備えた圧延機により圧延する際に、圧延予定の全被圧延材のワークロールの軸方向のシフト位置を最適に決定することにより、金属帯の板厚分布を均一化することができる。そして、そのことにより、クラウンプロフィルの異常が発生し易い板幅が狭幅から広幅に組まれた圧延サイクルを採用することができ、板幅規制のないスケジュールフリーの工程管理が可能となる。
本発明の被圧延材の幅方向に定められた評価関数の評価点を示す。 本発明の評価関数の計算ステップを示す。 本発明において使用される圧延機のワークロールを示す。 実施例について全圧延材の板幅と板厚の圧延サイクルを示す。 実施例についてワークロールシフト位置を示す。 実施例について被圧延材の板厚プロフィルを示す。 他の実施例について全圧延材の板幅と板厚の圧延サイクルを示す。 他の実施例についてWRシフト位置を示す。 他の実施例について被圧延材の板厚プロフィルを示す。 ワークロールの表面プロフィル(r)とロール軸方向座標(x)を示す。
本発明の実施形態について以下に説明する。
本発明においては、互いに逆向きの軸方向にシフト可能であって、ロールプロフィルが3次以上の関数で表されるカーブを有し、軸方向位置で上下で互いに補完し合う形状のイニシャルロールカーブで形成された上下一対のワークロールを備える圧延機を使用する。図3に、この圧延機の上下一対のワークロールのみを示した。
このワークロールは、図3から分かるように、ロールプロフィル(ロールバレル)が僅かにS字状をなしており、軸方向位置で上下で互いに補完し合う形状となっている。
本発明の実施形態について以下に説明する。
本発明は、圧延サイクルにおける圧延予定の全被圧延材について、被圧延材とワークロールの接触部分(板道)におけるロールギャップ形状を、目標とするロールギャップ形状とするように全被圧延材に対するワークロールシフト位置を決定することを特徴とする。
本発明では、圧延サイクルにて圧延予定の全被圧延材について、可能なワークロールシフト位置の組合せを仮定して、これらの組合せのすべてについて、組合せ毎に、被圧延材とワークロールの接触部分におけるロールギャップの予測計算値と目標値とで決まる第1の評価関数の値を、被圧延材幅方向の1点以上の評価点すべてについて計算して求め、さらに、これらの値を全評価点について合計して、1本の被圧延材について、第2の評価関数の値を求める。次いで、この第2の評価関数の値を、当該圧延サイクルの全被圧延材について合計した値を、第3の評価関数として求める。そして、可能なワークロールシフト位置の組合せのすべてについて求めたJ3の値同士を比較して最小の値をとるJ3のワークロールシフト位置を、圧延サイクルにおける圧延予定の全被圧延材についてのワークロールシフト位置として決定して圧延する。
本発明では、図1に示すように、第1の評価関数を被圧延材板幅方向の1点以上の評価点について求め、この第1の評価関数に基づいて、第2、第3の評価関数を求めているから、被圧延材のワークロール上での板道範囲のロールギャップを評価することができ、異常板厚プロフィル等を効果的に防止することが可能となる。
また、図1では、材板幅方向の1点以上の評価点A、B、・・・、Fを明瞭に示すために、フラットなワークロールを示しているが、本発明では、すでに記載したように、図3に示すようなロールプロフィルが3次以上の関数で表されるカーブを有しているロールが使用される。
以下において、上記の発明における評価関数の計算手法の具体的な1例を以下に示す。
本発明においては、最初に、圧延サイクルにおける圧延予定の全被圧延材について可能なワークロールシフト位置の組合せを仮定する。例えば、圧延予定の全被圧延材がN本である場合、1本目の被圧延材のワークロールシフト位置がX、2本目のそれがX、・・・、N本目のそれがXとすると、ワークロールシフト位置の組合せは(X、X、・・・、X)となる。
そして、X、X、・・・、Xの各値は可能な範囲において変わりうるから、それに応じた組合せ(すなわち圧延サイクルにおける圧延予定の全被圧延材について可能なワークロールシフト位置の組合せ)が考えられる。
本発明の評価関数の計算手法は以下のステップ1〜4からなる。
(ステップ1)
被圧延材の幅方向に1点以上の評価点A、B、C・・・を定め、各評価点について、ワークロールのロールギャップの予測値と目標値とから下記の式(1)に基づいて被圧延材1本について第1の評価関数J1を計算する。
評価点は、例えば、図1のA(最板端から25mm)、B(同50mm)、C(同75mm)、D(同100mm)、E(同150mm)、F(同200mm)という具合に、板幅方向の1点以上に仮定する。
上記評価点の最板端からの距離についても具体的な数値はあくまで一例であり、本発明は、ここでの例に一義的に限定するものではない。
(ステップ2)
評価点A、B、C・・・の全てについて下記の式(2)に基づいて式(1)の評価関数J1を合計して第2の評価関数J2を求める。
(ステップ3)
圧延サイクルにおける全被圧延材について、下記の式(3)に基づいて式(2)の評価関数を合計して第3の評価関数J3を求める。
なお、式(1)〜(3)の重み係数cについては、例えば、表1のように先の被圧延材から次の被圧延材への板幅の変化に応じて決定することができる。
(ステップ4)
圧延サイクルにおける全被圧延材についてのワークロールシフト位置の可能な組み合わせすべてについて求めたJ3、・・・J3の値同士を比較して、その中で最も小さい場合のワークロールシフト位置を、当該圧延サイクルの圧延サイクルの全被圧延材のワークロールシフト位置として決定する。
このようにして決定されたワークロールシフト位置に基づいて、当該圧延サイクルの圧延サイクルの全圧延材を圧延する。
上記のステップにおいて、圧延サイクルにて圧延予定の全被圧延材について、可能なワークロールシフト位置の組合せを仮定しているが、ワークロールのシフト位置については、例えば乱数表を用いて被圧延材1本毎のワークロールシフト位置を仮定することにより定めることができる。
先行の被圧延材とこれの後続する次の被圧延材に対するワークロールシフト位置の変更量(ワークロールシフトピッチ)に上限を設けたい場合は、上限の値を考慮してワークロールシフト位置の組合せを仮定すればよい。
そして、でワークロールシフトピッチに上限を設けた場合でも、圧延サイクルにおける圧延予定の全被圧延材についてのワークロールシフト位置の組合せの数は膨大であり、これらの組合せすべてについて、評価関数J1を各評価点について計算し、次いで、全評価点分を合計してJ2を求め、さらに全被圧延材分を合計して求めたJ3の中から、評価関数J3が最小となるようなワークロールシフト位置を選び出してももちろんよいが、計算の負荷を軽減するため、非線形計画法などにより評価関数J3が最小となるようなワークロールシフト位置を決定することも可能である。
以上のステップ1〜5を図2に示す。
ステップ2の評価関数J1は、ロールギャップの目標値と予測値から求められる。
ロールギャップの目標値は、図1に示すように、被圧延材上の駆動側(ドライブサイド)と被駆動側(ワークサイド)の各評価点、例えばA〜F点と接するワークロール箇所のワークロール半径の平均と、ワークロールの胴長中央のワークロール半径との差を下記の式(4)に基づいて計算し、上下ワークロールについて合計して求める。ワークロールプロフィルの胴長中央と左右両評価点A〜Fを放物線や楕円などの2次曲線で結ぶように設定するのが好ましい。
ロールギャップの予測値は、以下のように求めることができる。
ワークロールの熱膨張およびワークロールの磨耗については、例えば、それぞれ式(5)および式(6)に基づいて予測計算することができる。
そして、熱膨張と磨耗を省いたロールギャップ形状については、ロールプロフィルが3次関数で表されるロールは式(7)のようにロール径が与えられており、シフト位置によって式(8)のように予測計算できる。
上記のワークロールの熱膨張、ワークロールの磨耗および該熱膨張と磨耗を省いたロールギャップ形状についての3者を合計したワークロールギャップについて式(4)のように計算した予測計算値をもとに、式(1)のJ1が計算により求まる。
以下に本発明の実施例を示す。
(実施例1)
ロールプロフィルが3次以上の関数で表されるカーブを有し、軸方向位置で上下で互いに補完し合う形状のイニシャルロールカーブで形成された上下一対のワークロールを備えた圧延機をF1−F7の7スタンドすべてに備えたタンデム型仕上げ圧延機を有する熱間圧延ラインにて本発明の検証を行った。圧延機の設備仕様を表2に示す。
図4に示す板厚−板幅構成の圧延サイクルに対し、本発明例と従来例の比較、評価を行った。
評価点は被圧延材の板端から25mm、75mm、150mmの3点とし、ワークロールシフトピッチの上限は20mmとした。
ベンダー荷重は圧延開始時75トンと設定し、圧延中の荷重変動に応じて制御した。
圧延後の被圧延材の厚みプロフィルの評価は板幅が1本前の被圧延材よりも約150mm広がる62本目にて行った。また、従来技術との比較を行うため図4とほぼ同じ厚み構成、幅構成のサイクルにて、従来のサイクリックシフト法によりWRシフト位置を決定し圧延を行った。
本発明法によって決定したWRシフト位置と従来のサイクリックシフトによるWRシフト位置を図5に示す。図6は62本目の板厚プロフィルであるが、従来例では約20μmの逆クラウンプロフィルとなっているのに対し、本発明では逆クラウンプロフィルが生じておらず良好なクラウンプロフィルとなっていることが確認できた。また62本目以外のクラウンプロフィルについても異常プロフィルや形状不良は生じなかった。
(実施例2)
前段のF1〜F3スタンドの3スタンドには通常の軸方向にシフトしないワークロールを備え、後段のF4〜F7スタンドには、ロールプロフィルが3次以上の関数で表されるカーブを有し、軸方向位置で上下で互いに補完し合う形状のイニシャルロールカーブで形成された上下一対のワークロールを備えた7スタンドのタンデム型仕上げ圧延機を有する熱間圧延ラインにて本発明の検証を行った。
圧延機の設備仕様を表3に示す。
図7に示す板厚−板幅構成の圧延サイクルに対し、本発明例と従来例の比較、評価を行った。評価点は被圧延材の板端から50mm、100mm、150mm、200mmの4点とし、ワークロールシフトピッチの上限は20mmとした。
ベンダー荷重は圧延開始時は75トンと設定し、圧延中の荷重変動に応じて制御した。
圧延後の被圧延材の厚みプロフィルの評価は板幅が1本前の被圧延材よりも約220mm広がる90本目にて行った。また、従来技術との比較を行うため図7とほぼ同じ厚み構成、幅構成のサイクルにて、従来のサイクリックシフト法によりWRシフト位置を決定し圧延を行った。
図9は90本目の板厚プロフィルであるが、従来例では約10μmの逆クラウンプロフィルとなっているのに対し、本発明では逆クラウンが生じておらず良好なクラウンプロフィルとなっていることが確認できた。また90本目以外のクラウンプロフィルについても異常プロフィルや形状不良は生じなかった。
以上の説明では、本発明を熱間圧延ラインのタンデム型圧延機に適用した例を挙げたが、冷間圧延ラインなどの他の金属帯の圧延ラインに適用することも可能である。

Claims (2)

  1. 金属帯の圧延ラインにて、圧延サイクルにおける圧延予定の全被圧延材を、ロールプロフィルが3次以上の関数で表されるカーブを有し、軸方向位置で上下で互いに補完し合う形状のイニシャルロールカーブで形成された上下一対のワークロールを備えた圧延機により、該ワークロールを互いに逆向きの軸方向にシフトさせて圧延する圧延方法において、圧延サイクルにおける圧延予定の全被圧延材について、
    ワークロールシフトピッチに上限を設け、可能なワークロールシフト位置の組合せを仮定して、これらの組合せの全てについて、組合せ毎に、被圧延材とワークロールの接触部分におけるロールギャップの予測計算値と目標値との差を、被圧延材板幅方向の1点以上の評価点について、下記式(1)


    に基づいて、評価関数J1として求め、そして、1点以上の評価点すべてについて求めたJ1の値を下記式(2)


    に基づいて評価関数J2として求め、次いでJ2を当該圧延サイクルの全被圧延材について合計した値を評価関数J3として求めた後に、組合せ毎のJ3の値の中で最小となるときの組合せのワークロールシフト位置を、圧延サイクルにおける圧延予定の全被圧延材についてのワークロールシフト位置として決定して圧延することを特徴とする金属帯の圧延方法。
  2. 前記の上下一対のワークロールを備えた圧延機がタンデム型圧延機の少なくとも1つ以上のスタンドに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の金属帯の圧延方法。
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