JP6699628B2 - 金属帯の圧延方法および冷却設備の制御装置 - Google Patents
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Description
ワークロールと被圧延材の非接触部分(以下、板道外という)は板道に比べ低温であるから、板幅端部から板道外に向かって熱が逃げる。そのため、図4に示すように、ワークロールの胴長中央部では熱膨張が大きく、端部に向かうにつれて熱膨張が小さい、という台形に近いサーマルクラウンのプロフィルが形成される。
特許文献1には、ワークロール軸方向に配置された冷却水バルブを閉じる箇所を変化させることで、ロール冷却水の流量分布をワークロール軸方向に変化させ、ワークロールのサーマルクラウン分布を制御する方法が提案させている。
特許文献2、特許文献3には、誘導加熱や蒸気によりワークロールを加熱することで、サーマルクラウンを制御する方法が提案されている。
なお、圧延荷重によるロールの撓みを補償する機構としてワークロールクロスやベンダーがあるが、これらは摩耗や熱膨張のような幅方向に不均一なプロフィルを制御することはできない。
[1]金属帯の圧延ラインにおいて、ワークロール軸方向のロール冷却水の流量分布が可変である冷却設備を備えた圧延機を用いて被圧延材を圧延するに際し、圧延サイクルにおいて圧延予定である全被圧延材について、被圧延材板幅端部を基準とするロール軸方向のロール冷却水流量変更範囲の可能な組合せのすべてについて、被圧延材とワークロールの接触部分におけるワークロールプロフィルの予測計算値とワークロールプロフィル目標値との差を求め、該差を当該圧延サイクルの全被圧延材について合計した値を求め、こうして求まる前記合計した値同士を比較して、この値が最小となるときの各被圧延材の被圧延材板幅端部を基準とするロール軸方向のロール冷却水流量変更範囲を、圧延サイクルにおける圧延予定の各被圧延材の被圧延材板幅端部を基準とするロール軸方向のロール冷却水流量変更範囲と決定して圧延することを特徴とする金属帯の圧延方法。
[2]金属帯の圧延ラインにおいて、ワークロール軸方向のロール冷却水の流量分布が可変である冷却設備を備えた圧延機を用いて被圧延材を圧延するに際し、圧延サイクルにおいて圧延予定である全被圧延材について、被圧延材板幅端部を基準とするロール軸方向のロール冷却水流量変更範囲を仮定して定め、圧延機のワークロールプロフィルの予測計算値と目標値との差から求まる評価関数J1を下記の式(1)
[3]前記ロール冷却水流量変更範囲がロール冷却水流量減少範囲であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の金属帯の圧延方法。
[4]金属帯の圧延ラインにおいて、ワークロール軸方向のロール冷却水の流量分布が可変である冷却設備を備えた圧延機がタンデム圧延機の1つ以上のスタンドに設けられていることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の金属帯の圧延方法。
[5]金属帯の圧延ラインにおいて、ワークロール軸方向のロール冷却水の流量分布が可変である冷却設備の冷却水流量分布を制御する制御装置であって、圧延サイクルにおいて圧延予定である全被圧延材について、ワークロールプロフィルの目標値を圧延順に設定する設定手段と該設定手段の出力に基づいて、圧延サイクルにおいて圧延予定である全被圧延材について、被圧延材板幅端部を基準とするロール軸方向のロール冷却水流量変更範囲の可能な組合せのすべてについて、被圧延材とワークロールの接触部分におけるワークロールプロフィルの予測計算値とワークロールプロフィル目標値との差を求め、該差を当該圧延サイクルの全被圧延材について合計した値を求め、こうして求まる値同士を比較して、この値が最小となる値を演算する演算手段と、該最小となる値であるときの各被圧延材の被圧延材板幅端部を基準とするロール軸方向のロール冷却水流量変更範囲を、圧延サイクルにおける圧延予定の各被圧延材の被圧延材板幅端部を基準とするロール軸方向のロール冷却水流量変更範囲と決定する手段と該決定されたロール冷却水流量変更範囲を冷却設備に出力する出力手段とを備えることを特徴とする冷却水流量分布を制御する制御装置。
熱間圧延ラインにおける冷却設備は、通常、圧延機のワークロールの被圧延材入側や出側にヘッダーをロール軸方向に配置し、該ヘッダーに設けられた複数のノズルから冷却水をワークロールに向けて吐出することにより、ワークロールを冷却している。図5(a)には、ワークロールの被圧延材の入側に二本の冷却水ヘッダー3、出側に1本の冷却水ヘッダー3がそれぞれ設けられた形態が示されているが、これに限るものではない。
他方、通常時にはバルブの調節により吐出流量を抑えておいてノズルからロール冷却水を吐出する場合は、ロール冷却水の流量分布は、ノズルから吐出する冷却水流量を減少あるいは増大することによって変えることができる。
上述したように、通常時にノズルに設けられたバルブを全開にしてノズルからロール冷却水を吐出する場合は、ロール冷却水の流量分布は、ノズルから吐出する冷却水流量を減少することによって行うことができるから、この場合の「ロール冷却水流量変更範囲」、あるいは「流量変更範囲」は、それぞれ「ロール冷却水流量減少範囲」、あるいは「流量減少範囲」と表現することにする。
(ステップ1)
圧延サイクルにおいて圧延予定の全被圧延材について、被圧延材の幅方向に1点以上の評価点A、B、C・・・を定め、評価点A、B、C・・・でのワークロールプロフィルの目標値を、各被圧延材について圧延順に設定する。この目標値は、ワークロールの胴長中央と左右両評価点A、B、C・・・を放物線や楕円などの2次曲線で結ぶように設定するのが好ましい。
上記評価点の最板端からの距離についても具体的な数値はあくまで一例であり、本発明は、ここでの例に一義的に限定するものではない。
圧延サイクルにおいて圧延予定の全被圧延材について、被圧延材1本毎のロール冷却水流量変更範囲を仮定して定める。ここで、最初にロール冷却水流量変更範囲を定めるには、例えば、全被圧延材に対し該変更範囲をゼロとする、もしくは乱数表を用いて被圧延材1本毎の該変更範囲を決めてもよい(こうすることで、全被圧延材について、ロール冷却水流量変更範囲の組合せの1つを定めることができる)。
ステップ2で仮定された流量変更範囲について、ワークプロフィルの予測値と目標値とから下記の式(1)に基づいて、各評価点での被圧延材1本の評価関数J1を計算する。
なお、式(1)の重み係数については、例えば、表1のように先の被圧延材から次の被圧延材への板幅の変化に応じて決定してもよい。
評価点A、B、C・・・の全てについて下記の式(2)に基づいて式(1)の評価関数J1を合計して評価関数J2を求める。
圧延サイクルにおける全被圧延材について、下記の式(3)に基づいて式(2)の評価関数J2を合計して評価関数J3を求める。
そして、逐次、圧延サイクルにて圧延予定の全被圧延材について、新たに可能な冷却水流量変更範囲を、例えば乱数表を用いて仮定して定め、この新たな可能な組合せについて、ステップ3〜5と同様の計算を繰り返して、評価関数J1、J2、J3を求める。最終的に、流量変更範囲の可能な組合せのすべてについてJ3を求める。
圧延サイクルにて圧延予定の全被圧延材について、ロール冷却水流量変更範囲の可能な組合せのすべてについて求められたJ3の値同士を比較して、その中で最も小さい場合の、全被圧延材のロール冷却水流量変更範囲を当該圧延サイクルのロール冷却水流量変更範囲として決定する。
ワークロールプロフィルの目標値は、被圧延材上の駆動側(ドライブサイド)と作業側(ワークサイド)の各評価点、例えばA〜C点と接するワークロール箇所のワークロール半径の平均と、ワークロールの胴長中央のワークロール半径との差を下記の式(5)に基づいて計算し、上下ワークロールについて合計して求める。ワークロールプロフィルの胴長中央と左右両評価点A〜C点を放物線や楕円などの2次曲線で結ぶように設定するのが好ましい。ワークロールが軸方向に移動するワークロールシフトミルを想定し駆動側と作業側の平均を用いるが、ワークロールが軸方向には移動しないミルやワークロールが軸方向には移動しないで、かつ上下ワークロールがクロスすることができるミルでは左右対称となり駆動側と作業側の値は等しくなるため、片側の計算は省略可能である。
例えば、ワークロールの熱膨張については、下記の式(6)に基づいて予測計算することができる。ワークロール温度は、ワークロール冷却水の流量に応じた熱伝達率を用いることで計算できる。また、摩耗量については下記の式(7)に基づいて予測計算することができる。そして、ワークロールプロフィルは、両者を合計して、下記の式(8)に基づいて予測計算値することができる。
(実施例1)
熱間圧延鋼板の仕上げ圧延ラインにおける7スタンド(F1〜F7)からなるタンデム圧延機に適用した実施例を説明する。圧延機の設備仕様を表2に示す。
また、ワークロールを冷却するヘッダーは、ワークロールの被圧延材の入側に2基、出側に1基それぞれ設け、各ヘッダーにはノズル間隔が60mmで配置されたノズルが35個設けられたものを使用した。
板幅方向の評価点は、被圧延材の板幅端部から25mm、75mm、150mmの3点とし、F1〜F7の全7スタンドに対し、F3が最小になるときのロール冷却水流量減少範囲を適用して圧延を行った。図7に圧延サイクルの板幅構成を示す。図8に本発明によって決定したロール冷却水流量減少範囲を示す。
また、従来技術との比較を行うために、図7とほぼ同じ板厚、板幅構成の全被圧延材が81本の低炭素鋼素材からなる圧延サイクルにおいて、ロール冷却水流量減少範囲を一律−100mmとしたものを従来例とした。
一方、従来例では、エッジビルドアップが生じており、異常な板厚プロフィルが複数あった。図10に、一例として、板幅が1本前の被圧延材よりも約240mm広がる38本目の板厚プロフィルを示す。
熱間圧延鋼板の仕上げ圧延ラインにおける7スタンド(F1〜F7)からなるタンデム圧延機に適用した実施例を説明する。7スタンドのうち、後段のF4〜F7のスタンドの圧延機がワークロールシフト機構を備えている。圧延機の設備仕様を表3に示す。
また、ワークロールを冷却するヘッダーは、実施例1と同様に、ワークロールの被圧延材の入側に2基、出側に1基それぞれ設け、各ヘッダーにはノズル間隔が60mmで配置されたノズルが35個設けられたものを使用した。
板幅方向の評価点は、被圧延材の板幅端部から25mm、75mm、150mmの3点とし、F1〜F3の3基の前段スタンドに対し、本発明によりF3が最小になるときのロール冷却水流量減少範囲を適用した。図11に圧延サイクルの板幅構成を示す。図12に本発明によって決定したロール冷却水流量減少範囲を示す。
また、従来技術との比較を行うために、図11とほぼ同じ板厚、板幅構成の全被圧延材が61本の低炭素鋼素材からなる圧延サイクルにおいて、ロール冷却水流量分布を固定として圧延を行ったものを従来例とした。
一方、従来例では、図14に示されるようなエッジビルドアップが生じており、異常な板厚プロフィルが見られた。
2:ワークロール
3:冷却水ヘッダー
Claims (5)
- 金属帯の圧延ラインにおいて、ワークロール軸方向のロール冷却水の流量分布が可変である冷却設備を備えた圧延機を用いて被圧延材を圧延するに際し、
圧延サイクルにおいて圧延予定である全被圧延材について、被圧延材板幅端部を基準と
するロール軸方向のロール冷却水流量変更範囲の可能な組合せのすべてについて、
被圧延材とワークロールの接触部分におけるワークロールプロフィルの予測計算値とワークロールプロフィル目標値との差を求め、該差を当該圧延サイクルの全被圧延材について合計した値を求め、
こうして求まる前記合計した値同士を比較して、この値が最小となるときの各被圧延材の被圧延材板幅端部を基準とするロール軸方向のロール冷却水流量変更範囲を、圧延サイクルにおける圧延予定の各被圧延材の被圧延材板幅端部を基準とするロール軸方向のロール冷却水流量変更範囲と決定して圧延することを特徴とする金属帯の圧延方法。 - 金属帯の圧延ラインにおいて、ワークロール軸方向のロール冷却水の流量分布が可変である冷却設備を備えた圧延機を用いて被圧延材を圧延するに際し、
圧延サイクルにおいて圧延予定である全被圧延材について、被圧延材板幅端部を基準とするロール軸方向のロール冷却水流量変更範囲を仮定して定め、
圧延機のワークロールプロフィルの予測計算値と目標値との差から求まる評価関数J1を下記の式(1)
に基づいて合計し評価関数J2を求め、圧延サイクル内の全被圧延材について下記の式(3)
に基づいて合計し評価関数J3を求める計算を、前記ロール冷却水流量変更範囲の可能な組合せのすべてについて行い、こうして求まるJ3同士を比較して、J3が最小となるときの各被圧延材の被圧延材板幅端部を基準とするロール軸方向のロール冷却水流量変更範囲を、圧延サイクルにおける圧延予定の各被圧延材の被圧延材板幅端部を基準とするロール軸方向のロール冷却水流量変更範囲と決定して圧延することを特徴とする金属帯の圧延方法。 - 前記ロール冷却水流量変更範囲がロール冷却水流量減少範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属帯の圧延方法。
- 金属帯の圧延ラインにおいて、ワークロール軸方向のロール冷却水の流量分布が可変である冷却設備を備えた圧延機がタンデム圧延機の1つ以上のスタンドに設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属帯の圧延方法。
- 金属帯の圧延ラインにおいて、ワークロール軸方向のロール冷却水の流量分布が可変である冷却設備の冷却水流量分布を制御する制御装置であって、
圧延サイクルにおいて圧延予定である全被圧延材について、ワークロールプロフィルの目標値を圧延順に設定する設定手段と
該設定手段の出力に基づいて、圧延サイクルにおいて圧延予定である全被圧延材について、被圧延材板幅端部を基準とするロール軸方向のロール冷却水流量変更範囲の可能な組合せのすべてについて、被圧延材とワークロールの接触部分におけるワークロールプロフィルの予測計算値とワークロールプロフィル目標値との差を求め、該差を当該圧延サイクルの全被圧延材について合計した値を求め、こうして求まる値同士を比較して、この値が最小となる値を演算する演算手段と、
該最小となる値であるときの各被圧延材の被圧延材板幅端部を基準とするロール軸方向のロール冷却水流量変更範囲を、圧延サイクルにおける圧延予定の各被圧延材の被圧延材板幅端部を基準とするロール軸方向のロール冷却水流量変更範囲と決定する手段と
該決定されたロール冷却水流量変更範囲を冷却設備に出力する出力手段と
を備えることを特徴とする冷却水流量分布を制御する制御装置。
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