以下、本発明について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
<ガラス塊の製造装置及びガラス塊の製造方法>
以下、図面を参照して、本発明の実施形態(第1実施形態)に係るガラス塊の製造装置、及びこの製造装置を用いたガラス塊の製造方法について説明する。
図1は、第1実施形態のガラス塊の製造装置1の概略構成を示す上面図である。図1に示されるように、ガラス塊の製造装置1は、第1成形装置10と第2成形装置20とから構成されている。第1成形装置10は、熔融ガラス切断ユニット100、成形型搬送ユニット200、ピックアンドプレースユニット300、ピックアンドプレース旋回ユニット500、および、複数の成形型400を備えている。第2成形装置20は、熔融ガラス切断ユニット600、成形型搬送ユニット700、ピックアンドプレースユニット800、ピックアンドプレース旋回ユニット1000、および、複数の成形型900を備えている。また、第1実施形態のガラス塊の製造装置1は、シーケンサ50を更に備えている。
図2は、第1実施形態に係るガラス塊の製造装置1の熔融ガラス切断ユニット100、600の概略構成を示す側断面図である。図2は、熔融ガラス切断ユニット100、600を、図1の紙面手前から奥行き方向に見たときの構成を示している。なお、説明の便宜のため、図2中、成形型400及び900については断面図で示し、また図面を見やすくするために、熔融ガラス切断ユニット600の構成を省略して示している。第1成形装置10及び第2成形装置20(図1参照)は、同一の構成を有する装置であるため、以下、代表として第1成形装置10の構成及び動作について説明する。流出ノズル30(パイプ)から流出する熔融ガラスMGを、熔融ガラス切断ユニット100に支持されている成形型400と熔融ガラス切断ユニット600に支持されている成形型900とで交互に受け取って切断し、成形型400及び900上に切断された熔融ガラス塊GGを、それぞれ成形型搬送ユニット200及び700によって各工程に搬送して、所定の形状(例えば、球状、両凸曲面形状、扁平形状等)のガラス塊Gを成形する。第1成形装置10及び第2成形装置20は、流出ノズル30の位置(図1及び図2の(A)の位置(以下、「キャスト位置A」という。)の中心軸AXを対称軸として線対称に配置され、異なるタイミングで同一の動作を行うものである。ガラス塊の製造装置1の各構成要素は、シーケンサ50に接続されており、シーケンサ50の指示によって駆動制御されるが、図1においては、図面を簡略化するためにシーケンサ50と各構成要素との接続を省略し、また熔融ガラス切断ユニット100及び600の構成も省略して示している。
図2に示すように、熔融ガラス切断ユニット100及び600は、熔融ガラスMGが流出する流出ノズル30の下側に、流出ノズル30の中心軸AXに対して傾斜して支持プレート(不図示)に固定、支持されている。流出ノズル30は、図示省略された作業槽、清澄槽、ガラス熔解槽に連通しており、熔解、清澄、均質化され、一定温度に制御された熔融ガラスMGが流出ノズル30から流下する。熔融ガラス切断ユニット100は、成形型400を支持し、この成形型400を流出ノズル30の略真下、すなわち、熔融ガラスMGの供給位置であるキャスト位置Aと、成形型リリース位置(図1及び図2の(B)の位置(以下、「リリース位置B」という。))との間で斜め上下方向に移動させる装置である。また、熔融ガラス切断ユニット600は、成形型900を支持し、この成形型900を流出ノズル30の略真下、すなわち、熔融ガラスMGのキャスト位置Aと、成形型リリース位置(図1及び図2の(B’)の位置(以下、「リリース位置B’」という。))との間で斜め上下方向に移動させる装置である。なお、本実施形態においては、リリース位置Bの高さとリリース位置B’の高さとは略同一に構成されている。
図3は、本発明の第1実施形態に係るガラス塊の製造装置1の成形型400(及び900)の構成を示す断面図である。成形型400と900は同一の構成であるため、以下、代表として成形型400を説明する。図3に示されるように、成形型400は、成形型本体部410と、成形型本体部410を支持する成形型支持部420とを備えている。成形型本体部410は、流出ノズル30からキャストされる熔融ガラスMGを受け取り、ガラス塊Gを成形する凹部成形面410aを備えた耐熱鋼(例えば、ステンレス鋼)製の略円柱状の受け型である。凹部成形面410aの表面は、製作するガラス塊Gの表面形状に応じて、断面が所定の球面や非球面形状の曲面となるように鏡面加工されており、製作するガラス塊Gの表面に傷や汚れが付かないように構成されている。また、成形型本体部410には、成形型本体部410の下面と凹部成形面410aとを貫通するように複数の貫通孔410bが形成されている。なお、本実施形態の成形型400は、上面視したときに略円形状の凹部成形面410aを有しており、鉛直方向の断面形状が楕円で、水平方向の断面形状が円形のガラス塊Gを成形するものとして説明する。
成形型支持部420は、成形型400を支持する略円筒状の部材であり、成形型支持部420の先端側(図3の上側)は、成形型本体部410の外径と略同一の内径を有し、成形型400が収容されて固定されている。成形型支持部420の軸心方向中央部下側には、外周面から垂直に突出する円盤状の位置決め用フランジ420aが形成されており、位置決め用フランジ420aの下側には、下側把持部420bが形成されており、位置決め用フランジ420aの上側には、上側把持部420eが形成されている。成形型支持部420の内部には、貫通孔410bに浮上ガスを供給するための通気孔420cが形成されており、成形型支持部420の下側には、通気孔420cと連通する弁付きソケット430、440が設けられている。
弁付きソケット430は、その端面が下側把持部420bの外周面に露出するように、成形型支持部420の軸心に対して直交する向きに取り付けられており、下側把持部420bが後述するピックアンドプレース旋回ユニット500のロボットハンド510によって挟持されたときに、弁付きソケット430を通して通気孔420cに浮上ガスが供給されるようになっている(詳細は後述)。
また、弁付きソケット440は、成形型支持部420の基端面(下面)から突出するように取り付けられており、成形型支持部420が熔融ガラス切断ユニット100の移動アーム113、及び成形型搬送ユニット200のスライダ210に取り付けられたときに、弁付きソケット440を通して通気孔420cに浮上ガスが供給されるようになっている(詳細は後述)。
このように、本実施形態の成形型400は、弁付きソケット430又は440を通して供給される浮上ガスが、通気孔420c、貫通孔410bを通って凹部成形面410aから噴出するように構成されており、凹部成形面410aにキャストされる熔融ガラスMGは、凹部成形面410a上で受け取られ、凹部成形面410a上に切断された熔融ガラス塊GGは、浮上状態で冷却され、所定の形状のガラス塊Gに成形される。
なお、通気孔420cの上端部は、全ての貫通孔410bに均等(所定の流量、つまり、所定の圧力)に浮上ガスを供給できるように拡径されており、空間部420dが形成されている。従って、通気孔420cに供給されたガスは、空間部420dに一旦溜まり、各貫通孔410bから所定の流量(すなわち、所定の圧力)で均一に噴出される。なお、所定の流量とは、凹部成形面410aにキャストされる熔融ガラスMGが凹部成形面410aと接触した場合であっても融着せず、かつ流出ノズル30からの熔融ガラスMGの排出を妨げない程度の流量である。
図2に示すように、熔融ガラス切断ユニット100は、移動アーム113と、テーブル160と、ボールネジ162と、スライダ164と、駆動ベルト166と、サーボモータ156と、を備えている。テーブル160は、長方形の板状の部材であり、その表面中央部には、その長手方向に沿ってボールネジ162が回転自在に支持されており、ボールネジ162には、スライダ164が螺合している。なお、本実施形態のテーブル160は、熔融ガラス切断ユニット100を正面から見たときに、ボールネジ162の中心軸PXが、流出ノズル30の中心軸AXに対して約15°傾くように斜めに配置されている。本明細書においては、流出ノズル30の中心軸AXが延びる方向を「鉛直方向」と定義し、ボールネジ162の中心軸PXが延びる方向を「移動方向」と定義する。
ボールネジ162の下端は、テーブル160の下端からつき出しており、駆動ベルト166を介してサーボモータ156の回転軸に連結されている。従って、サーボモータ156の回転に応じてボールネジ162が回転し、これによりスライダ164が移動方向に沿って(すなわち、中心軸AXに対して斜めに)上下動する。
スライダ164上には、流出ノズル30の中心軸AXに向かってつき出される(すなわち、図2において水平な方向につき出される)移動アーム113が固定されている。移動アーム113は先端に弁付きソケット440と接続可能なガス供給プラグ117を備えており、ガス供給プラグ117が弁付きソケット440と嵌合することにより成形型400を支持している。
ガス供給プラグ117には、その先端(上端)の外周面を覆うように配置されたロックスリーブ117aが設けられている。ガス供給プラグ117の内側には、図示しない複数のロックボールが放射状に配置されており、このロックボールと弁付きソケット440の溝部440a(図3)とが嵌合することにより、ガス供給プラグ117に弁付きソケット440が固定される。なお、ロックスリーブ117aが押し下げられた状態では、ロックボールが外側にフリーの状態となり、ガス供給プラグ117に対する弁付きソケット440の挿抜がスムーズに行えるように構成されている。ロックスリーブ117aは、ガス供給プラグ117の内部に配置されたバネ(不図示)によって図2の鉛直方向に付勢されている。ロックスリーブ117aの外周面には、係合溝117bが形成されており、移動アーム113には、係合溝117bと係合する係合アーム163a、163b(図2において不図示、図7参照)が配設されている。
図2において、成形型400に熔融ガラスMGを受けるとき(キャスト工程)、熔融ガラス切断ユニット100は、サーボモータ156を回転させることにより成形型400を移動方向に沿って上昇させ、キャスト位置Aに配置する。そして、流出ノズル30より流下する熔融ガラスMGを成形型400の成形面410aで受け取り、成形面410aの熔融ガラスMGが所定量になったとき、成形型400を降下させて、所定量の熔融ガラス塊GGに切断する。そして、熔融ガラス切断ユニット100は、成形型400をリリース位置Bまで搬送し、リリース位置Bで熔融ガラス塊GGが載置された成形型400を成形型搬送ユニット200に引き渡す。なお、図2においては、熔融ガラス切断ユニット100に隣接して配置される熔融ガラス切断ユニット600も示されているが、熔融ガラス切断ユニット600の構成及び動作は、熔融ガラス切断ユニット100と同様であるため、同等な説明は繰り返さない。
図2に示すように、ガス供給プラグ117は、マスフロー118に接続しており、マスフロー118はガス供給部(不図示)に接続している。そして、ガス供給プラグ117と弁付きソケット440とが嵌合し成形型400が支持されるとき、ガス供給部から供給される浮上ガスが、マスフロー118を介して成形型400の凹部成形面410aに供給されるようになっている。このように、本実施形態の熔融ガラス切断ユニット100は、成形型400を移動アーム113上に支持し、成形型400の凹部成形面410aから浮上ガスを噴出させながら、成形型400を移動方向に上下動させ、キャスト位置A(最上端)とリリース位置B(最下端)との間で成形型400を搬送する。また、本実施形態の熔融ガラス切断ユニット600は、成形型900を移動アーム613上に支持し、成形型900の凹部成形面910aから浮上ガスを噴出させながら、成形型900を斜め方向に上下動させ、キャスト位置A(最上端)とリリース位置B’(最下端)との間で成形型900を搬送する。なお、図2に示すように、成形型900の凹部成形面910aに供給される浮上ガスは、成形型400の凹部成形面410aに供給される浮上ガスとは別の経路で(つまり、別のマスフローを介して)供給されるようになっているが、浮上ガスは共通のガス供給部から供給される。
<熔融ガラスのキャスト>
上述したように、本実施形態においては、成形型400の斜め上下方向(すなわち、移動方向)の移動により、熔融ガラスMGを切断し、成形型400の凹部成形面410aに熔融ガラス塊GGを分離する。
図4は、本発明の第1実施形態に係るガラス塊の製造装置1の熔融ガラス切断ユニット100に支持される成形型400の凹部成形面410aに熔融ガラスMGがキャストされる様子を説明する図である。図4(a)は、成形型400の凹部成形面410aに熔融ガラスMGがキャストされるときの様子を示す図であり、図4(b)は、斜め降下切断を行う直前の様子を示す図であり、図4(c)は、斜め降下切断後の熔融ガラス塊の様子を示す図である。
図2、図4に示すように、成形型400の凹部成形面410aに熔融ガラスMGをキャストするとき、熔融ガラス切断ユニット100は、サーボモータ156を駆動し、成形型400を流出ノズル30の流出口に接近するように移動方向に沿って上昇させて(すなわち、キャスト位置Aに配置させて)、流出する熔融ガラスMGを成形型400の凹部成形面410aで受ける(図4(a))。そして、熔融ガラスMGが成形型400の凹部成形面410aにキャストされ始めると、熔融ガラス切断ユニット100は、流出ノズル30の先端が、流出する熔融ガラスMGの中に沈み込まないように、成形型400を所定の速度でゆっくりと移動方向に沿って右斜め下方向に降下させる。そして、凹部成形面410aにキャストされた熔融ガラスMGが所定の重量(例えば、10〜30g)に調整されたとき(図4(b))、熔融ガラス切断ユニット100は、成形型400を急速に(熔融ガラスMGの流下速度よりも速い速度)で右斜め下方向に降下させる。成形型400が右斜め下方向に急速に降下すると、熔融ガラスMGにくびれが形成され、熔融ガラスMGから熔融ガラス塊GGが分離、切断される(図4(c))。なお、本明細書において、キャストとは、成形型400の凹部成形面410a又は成形型900の凹部成形面910a(図2)に熔融ガラスMGを供給することをいう。
本実施形態においては、このように成形型400を右斜め下方向(移動方向)に移動させながら熔融ガラスMGをキャストすることで、熔融ガラス塊GG(すなわち、ガラス塊G)の底面(成形面)に発生する樹紋を抑制している。
図5は、本発明の第1実施形態に係るガラス塊の製造装置1の成形型400の移動の様子と、検討例の降下切断法を採用したガラス塊の製造装置の成形型400Pの移動の様子とを比較する図である。図5(a)は、検討例の降下切断法における成形型400Pの移動の軌跡を示す図である。図5(b)は、本実施形態の斜め降下切断法における成形型400の移動の軌跡を示す図である。
図5(a)に示すように、検討例の構成においては、熔融ガラスMGが成形型400Pの凹部成形面400Paにキャストされ、降下切断法によって分断されるとき、成形型400Pの凹部成形面400Paの中心軸Qは、常に流出ノズル30の中心軸AX上を鉛直方向に移動する。このように、検討例の構成においては、凹部成形面400Paの中心軸Qが流出ノズル30の中心軸AXと常に一致した状態で熔融ガラスMGのキャストが行われるため、熔融ガラスMGは凹部成形面400Paの中心部から周辺部に拡がるようにキャストされる。従って、次々にキャストされる熔融ガラスMGは、先にキャストされた熔融ガラスMGに折り重なるように(包み込むように)キャストされていくが、先にキャストされた熔融ガラスMGと後にキャストされた熔融ガラスMGとの間に温度差(つまり、時間差)があると、その収縮率の違いから樹紋が発生する。
一方、図4、図5(b)に示すように、本実施形態の斜め降下切断法においては、常に成形型400が右斜め下方向(移動方向)に移動している状態で、熔融ガラスMGが成形型400の凹部成形面410aにキャストされ、分断されるようになっている。このように、本実施形態においては、凹部成形面410aの中心軸Qが流出ノズル30の中心軸AXに対して常に相対的に移動している状態で熔融ガラスMGのキャストが行われるように構成し、新たにキャストされる熔融ガラスMGが、先にキャストされた熔融ガラスMGに折り重ならないようにしている。
図4に示すように、本実施形態においては、成形型400がキャスト位置Aに配置されたとき、凹部成形面410aの中心軸Qが流出ノズル30の中心軸AXに対して平行で、かつ左側にΔxだけオフセットするように配置し(図4(a))、凹部成形面410aが熔融ガラスMGを受けながらゆっくりと右斜め下方向に降下し、降下切断が行われる直前(すなわち、熔融ガラスMGが所定の重量に調整された時点)で、凹部成形面410aの中心軸Qが流出ノズル30の中心軸AXに対して平行で、かつ右側にΔxだけオフセットするように構成している(図4(b))。つまり、成形型400が移動方向に移動するとき、凹部成形面410aの中心軸Qは、凹部成形面410aの中心軸Qと流出ノズル30の中心軸AXとで規定される平面上を、流出ノズル30の中心軸AXを横切って平行に移動するため、熔融ガラスMGは、成形型400の凹部成形面410aの右側から左側に向かって順にキャストされる。このように熔融ガラスMGをキャストすると、後からキャストされる熔融ガラスMGが、先にキャストされた熔融ガラスMGに折り重なることがないため、ガラス塊Gの下面(成形面)はスムーズに創成され樹紋の発生が抑制される。なお、成形型900に熔融ガラスMGをキャストするときは、熔融ガラス切断ユニット600は、成形型900を左斜め下方向に移動させるため、オフセットの方向が逆になる。すなわち、熔融ガラスMGは成形型900の凹部成形面910aの左側から右側に向かって順にキャストされるように構成されている。なお、成形型400がキャスト位置Aに配置されたときの凹部成形面410aの中心軸Qのオフセット量(Δx)と、降下切断が行われる直前の凹部成形面410aの中心軸Qのオフセット量(Δx)とは、必ずしも同一である必要ななく、それぞれ任意に設定してもよい。
熔融ガラス塊GGが成形型400の凹部成形面410a上に切断された(分断された)後、成形型400は、リリース位置Bに配置される。また、熔融ガラス塊GGが成形型900の凹部成形面910a上に切断された後、成形型900は、リリース位置B’に配置される。なお、熔融ガラスGGが切断された瞬間においては、熔融ガラス塊GGの表面に、成形型400及び900の移動方向に平行な方向(移動方向とは反対側)に延びる切断痕が形成されるが、後述する徐冷等の成形工程を経ることによって、切断痕は熔融ガラス塊GGの内部に吸収されて消滅する。
さらに、本実施形態においては、熔融ガラス切断ユニット600と熔融ガラス切断ユニット100とは互いに隣接して配置されており(図1、2)、それぞれタイミングをずらして同一の動作を行う。すなわち、本実施形態において、熔融ガラス切断ユニット600は、成形型900を移動アーム613上に支持し、成形型900をキャスト位置Aとリリース位置B’との間で搬送する。なお、本実施形態においては、成形型400、900をそれぞれ同一の動作により相互に入れ替える態様を示すが、これに限られず、例えば成形型400と成形型900とで異なる大きさの熔融ガラス塊GGを成形する場合には、各熔融ガラス切断ユニット100、600の動作は異なっていてもよく、キャスト位置Aに成形型400、900を相補的あるいは排他的に配置することのできる機構であれば本発明を適用することができる。そのため、熔融ガラス切断ユニットの数や移動アームの数も適宜変更することができる。
成形型400に熔融ガラスMGがキャストされているとき、成形型900は、キャスト位置A近傍の待機位置に配置される。なお、待機位置とは、第1成形装置10による降下切断(すなわち、成形型400の上下動)時に、移動アーム113と干渉しない位置である。成形型400の凹部成形面410a上に熔融ガラス塊GGが分断され、成形型400がリリース位置Bに搬送されると、移動アーム613が上昇し、移動アーム613に支持された成形型900がキャスト位置Aに搬送される。そして、成形型400と同様、成形型900に対して熔融ガラスMGがキャストされ、斜め降下切断法によって切断されると、移動アーム613は、成形型900をリリース位置B’に搬送する。このように、本実施形態においては、流出ノズル30から流出する熔融ガラスMGが、熔融ガラス切断ユニット100に支持されている成形型400と熔融ガラス切断ユニット600に支持されている成形型900とで交互に受け取られるように構成されている。従って、熔融ガラスMGの引き上げ量が多い(すなわち、熔融ガラスMGの流量が多い)場合でも、流出ノズル30から流出する熔融ガラスMGを間断なく受け取ることが可能となる。なお、図1に示すように、リリース位置B及びB’に搬送された成形型400及び900は、それぞれピックアンドプレース旋回ユニット500及び1000によって、成形型搬送ユニット200及び700に引き渡される。そして、ガラス塊Gが取出された新たな成形型400及び900が、ピックアンドプレースユニット300及び800によって、成形型搬送ユニット200及び700から移動アーム113及び613にそれぞれ引き渡されて使用される。
<熔融ガラス切断ユニットから成形型搬送ユニットへの成形型の引き渡し>
図1に示すように、成形型搬送ユニット200は、オーバル状のレール205と、このレール205上を時計回りに移動可能な複数のスライダ210等より構成されている。また、成形型搬送ユニット700は、成形型搬送ユニット200と同様の構成であり、スライダ710が反時計回りに移動する点で成形型搬送ユニット200と異なっている。
スライダ210は、成形型400を支持する金型ベース220が搭載されたキャリッジプレート215を備えている。キャリッジプレート215の下面側には、レール205の内周面と外周面とを挟むように二対のベアリング(不図示)が取り付けられており、キャリッジプレート215は、二対のベアリングを介してレール205に走行可能に連接されている。シーケンサ50は、スライダ210に設置された駆動部(不図示)をスライダ210毎に独立に駆動制御することができる。シーケンサ50による駆動部の制御により、二対のベアリングの各々がレール205の側面を転がることにより、金型ベース220が搭載されたスライダ210がレール205上を走行する。このような構成の成形型搬送ユニット200は、例えばASK社の”ASK ローリング ガイド システム”(登録商標)を利用して構築することができる。
また、各スライダ210上の金型ベース220は、円筒状の部材であり、内部には、上側に向かって開口し、成形型400の弁付きソケット440と嵌合する円筒状のガス供給プラグ225が取り付けられている。また、各金型ベース220には、浮上ガスを供給するための配管240が接続されている。各配管240は、ロータリージョイント245を介して、不図示のガス供給部と接続されている。
図6は、本発明の第1実施形態に係るガラス塊の製造装置1の成形型400を熔融ガラス切断ユニット100から成形型搬送ユニット200へ引き渡すピックアンドプレース旋回ユニット500の概略構成を示す図である。図6(a)はピックアンドプレース旋回ユニット500の側面図を示し、図6(b)はピックアンドプレース旋回ユニット500の上面図を示している。なお、説明の便宜のため、図6(b)においては、ロボットハンド510に挟持される成形型400の外径を点線で示している。ピックアンドプレース旋回ユニット500は、リリース位置Bに配置された成形型400を引き抜き、成形型搬送ユニット200に引き渡す装置である。
ピックアンドプレース旋回ユニット500は、成形型400を挟持するロボットハンド510と、回転軸X1を中心にロボットハンド510を回転させるメカロータ540と、ロボットハンド510及びメカロータ540を支持するスプラインシャフト545と、スプラインシャフト545を上下動させる昇降装置(不図示)を備えている。図2に示すように、成形型400がリリース位置Bに配置されたとき、成形型400はロボットハンド510によって挟持され、移動アーム113から上方に引き抜かれ、レシーブ位置bに配置されたスライダ210の金型ベース220に引き渡される。
また、第2成形装置20のピックアンドプレース旋回ユニット1000(図1)は、ピックアンドプレース旋回ユニット500と同一の構成を有する装置であり、リリース位置B’に配置された成形型900を移動アーム613から引き抜き、レシーブ位置b’に配置されたスライダ710の金型ベース720に引き渡す。
図6(b)に示すように、ロボットハンド510は、駆動部515と、一対のアーム512a、512bとで構成されている。駆動部115は、図6(b)の紙面に対して垂直方向に配置された回転シャフト(不図示)を有するモータ510aと、一対の駆動シャフト510b、510cとを備えている。アーム512bは駆動シャフト510bの先端に固定されており、アーム512aは駆動シャフト510cの基端部510caに固定されている。モータ510aの回転シャフトの先端は、駆動部515の内部においてピニオンギア(不図示)に連結している。また、駆動シャフト510bの基端部510ba及び510cの基端部510caには、それぞれラックギア(不図示)が形成されており、それらは駆動部515の内部においてピニオンギアを挟むように対向して配置されている。従って、モータ510aが回転駆動されると、駆動シャフト510b、510cは互いに異なる方向(図6の左右方向)に直線的に移動するため、モータ510aの回転方向を反時計方向と時計方向とで切り換えることにより、駆動アーム512a、512bを開閉することができる。
このように、本実施形態のロボットハンド510は、アーム512a、512bを開閉制御することにより、アーム512aと512bの間に成形型400を挟持したり、リリースしたりすることが可能になっている。また、上述のように、ラック・アンド・ピニオン機構によって駆動アーム512a、512bを開閉する構成を採用しているため、アーム512a、512bを開閉したとしても、アーム512aと512bの中心の位置は変化しない。このため、リリース位置Bに配置された成形型400の中心と、アーム512aと512bの中心とが略一致するようにロボットハンド510を配置すれば、リリース位置B上で成形型400を正確に挟持することが可能となる。
また、アーム512aには、アーム512aの内側(アーム512bと対向する側)と外側とを貫通するように、ガス供給プラグ530が取り付けられている。ガス供給プラグ530は、マスフロー535と接続されており、マスフロー535はガス供給部(不図示)と接続されている。そして、ロボットハンド510が、成形型400を挟持しているとき、ガス供給プラグ530と弁付きソケット430とが嵌合し、ガス供給部から供給される浮上ガスが、アーム512aと512bとの間に挟持された成形型400の凹部成形面410aに供給されるようになっている(図6(b))。このように、ロボットハンド510は、成形型400をアーム512aと512bとの間に挟持して移動アーム113から引き抜き、成形型400の凹部成形面410aから浮上ガスを噴出させながら、成形型400をリリース位置Bからレシーブ位置bに配置されたスライダ210の金型ベース220に引き渡す。なお、レシーブ位置bは、金型ベース220への成形型400の引き渡しが可能な範囲で任意に設定することができる。
なお、上述したように、ロボットハンド510は、スプラインシャフト545の上端に取り付けられたメカロータ540の制御によって、回転軸X1(すなわち、スプラインシャフト145の軸心)を中心に回転可能に支持されている(図6(a))。また、スプラインシャフト545の下側には、スプラインシャフト145を上下動させる昇降機(不図示)が配設されており、ロボットハンド510は、スプラインシャフト145の上下動によって上下方向に移動可能に支持されている。このため、ロボットハンド110に挟持された成形型400は、回転軸X1を中心とした回転方向及び上下方向に移動可能であり、本実施形態においては、回転軸X1を中心とする円周上に設定されたリリース位置Bと、レシーブ位置bとの間を移動する。
図7は、本発明の第1実施形態に係るガラス塊の製造装置1の成形型400が熔融ガラス切断ユニット100から引き抜かれる様子を説明する図である。図7(a)は、リリース位置Bに配置された成形型400を示している。上述したように、移動アーム113は、ロックスリーブ117aの外周面に形成された係合溝117bと係合する係合アーム163a、163bを備えている。係合アーム163a、163bは、係合溝117bと対向するように、ロックスリーブ117aを挟んで配設されている(図7(a))。そして、成形型400がリリース位置Bに配置されたとき、係合アーム163a、163b間が閉じられることで、ロックスリーブ117aが係合アーム163a、163bに接続される(図7(b))。次いで、ピックアンドプレース旋回ユニット500のロボットハンド510が旋回(回転)及び上下に移動し、アーム512a、512bの間に成形型400が配置される(図7(c))。そして、アーム512a、512bが閉じられることにより、成形型400の下側把持部420bが挟持される(図7(d))。次いで、係合アーム163a、163bが所定量だけ降下することにより、ロックスリーブ117aが押し下げられ、弁付きソケット440とガス供給プラグ117との固定(ロック)が解除される(図7(e))。そして、この状態でロボットハンド510が上昇することにより、成形型400が移動アーム113から抜き取られる(図7(f))。移動アーム113から抜き取られた成形型400は、ピックアンドプレース旋回ユニット500が回転軸X1を中心に旋回することによって移動され、レシーブ位置bの上方まで移動されると、図8(a)〜(d)の工程によって、成形型搬送ユニット200へ引き渡される。
図8は、本発明の第1実施形態に係るガラス塊の製造装置1の成形型400が成形型搬送ユニット200へ引き渡される様子を説明する図である。図8(a)〜(d)は、成形型400がピックアンドプレース旋回ユニット500のロボットハンド510から成形型搬送ユニット200へ引き渡される様子を順に説明する図である。なお、図面を見易くするために、図8(b)〜(d)においては、マスフロー535、230、配管240を省略して示している。
図8(a)は、成形型400がピックアンドプレース旋回ユニット500のロボットハンド510から成形型搬送ユニット200へ引き渡される直前の様子を示す図である。上述したように、成形型搬送ユニット200の金型ベース220には、成形型400の弁付きソケット440と嵌合する円筒状のガス供給プラグ225が取り付けられている。ガス供給プラグ225は、ガス供給プラグ117と同様の構成のプラグであり、マスフロー230と接続されており、マスフロー230は配管240を介してガス供給部(不図示)と接続されている。また、ガス供給プラグ225には、その先端(上端)の外周面を覆うように配置されたロックスリーブ225aが設けられている。ガス供給プラグ117と同様、ガス供給プラグ225の内側には、図示しない複数のロックボールが放射状に配置されており、このロックボールと弁付きソケット440の溝部440aとが嵌合することにより、ガス供給プラグ225に弁付きソケット440が固定される。なお、ロックスリーブ225aが押し下げられた状態では、ロックボールが外側にフリーの状態となり、ガス供給プラグ225に対する弁付きソケット440の挿抜がスムーズに行えるように構成されている。ロックスリーブ225aは、ガス供給プラグ225の内部に配置されたバネ(不図示)によって図8の上方向に付勢されている。また、成形型搬送ユニット200のスライダ210は、ロックスリーブ225aの外周面に形成された係合溝225bと係合する係合アーム250a、250bを備えており、係合アーム250a、250bは、係合溝225bと対向するように、ロックスリーブ225aを挟んで配設されている(図8(a))。
成形型400がピックアンドプレース旋回ユニット500のロボットハンド510から成形型搬送ユニット200へ引き渡されるとき、金型ベース220から成形型400が抜かれた(つまり、空の)状態のスライダ210が成形型400のレシーブ位置(図1の位置(b)、以下「レシーブ位置b」という)に配置される。詳細は後述するが、スライダ210が、ピックアップ位置(図1の位置(f)、以下「ピックアップ位置f」という)に搬送されたとき、金型ベース220に挿入されている成形型400がピックアンドプレースユニット300によって抜き取られるように構成されている。そして、成形型400が抜き取られた空のスライダ210がピックアップ位置fからレシーブ位置bに搬送される。
ピックアンドプレース旋回ユニット500のロボットハンド510によって、成形型400がレシーブ位置bの上方に搬送されると、係合アーム250aと250bとの間が閉じられることで、ロックスリーブ225aが係合アーム250a、250bに接続される(図8(b))。そして、係合アーム250a、250bが所定量だけ降下することにより、ロックスリーブ225aが押し下げられ、この状態でロボットハンド510が下降することにより、成形型400が金型ベース220のガス供給プラグ225に挿入される(図8(b))。次いで、係合アーム250a、250b間が開放される(開けられる)ことにより、ロックスリーブ225aがバネの付勢力によって上方向に移動し、ロックボールが弁付きソケット440の溝部440aと嵌合し、弁付きソケット440がガス供給プラグ225に固定される(図8(c))。弁付きソケット440がガス供給プラグ225に固定されると、ロボットハンド510のアーム512a、512b間が開くように駆動され、成形型400が金型ベース220上にリリースされる(図8(d))。このように、成形型400は、ピックアンドプレース旋回ユニット500のロボットハンド510から成形型搬送ユニット200へ引き渡され、成形型搬送ユニット200に引き渡された後も、マスフロー230を介して凹部成形面410aに供給される浮上ガスによって熔融ガラス塊GGの浮上状態は維持される。
なお、本実施形態においては、ピックアンドプレース旋回ユニット500によって成形型400が熔融ガラス切断ユニット100から引き抜かれるとき、成形型400の凹部成形面410aには、一時的にマスフロー118とマスフロー535とを介して浮上ガスが供給されるため、一時的に浮上ガスの流量が増えることとなる。また、成形型400がピックアンドプレース旋回ユニット500から成形型搬送ユニット200にリリースされるとき、成形型400の凹部成形面410aには、一時的にマスフロー535とマスフロー230とを介して浮上ガスが供給されるため、一時的に浮上ガスの流量が増えることとなる。そのため、本実施形態においては、ロボットハンド510のアーム512a、512bの位置をセンサー付きの監視装置を用いてモニタすることにより、成形型400とアーム512a、512bとの位置関係(すなわち、ガス供給プラグ530と弁付きソケット430との接続状態)をモニタし、凹部成形面410aから一定の流量の浮上ガスが噴出するようにマスフロー118、マスフロー535及びマスフロー230を制御している。
図9は、本発明の第1実施形態に係るガラス塊の製造装置1の成形型400が熔融ガラス切断ユニット100から成形型搬送ユニット200へ引き渡されるときの浮上ガスの流量制御を説明する図である。具体的には、ピックアンドプレース旋回ユニット500によって成形型400が熔融ガラス切断ユニット100から引き抜かれるときのマスフロー118(図2参照)及びマスフロー535(図6参照)によって制御される浮上ガスの流量を説明する図である。図9は、縦軸にマスフロー118及びマスフロー535を介して供給される浮上ガスの流量YLを示し、横軸に時間tを示している。波形W1〜W3は、それぞれマスフロー118によって制御される浮上ガスの流量、マスフロー535によって制御される浮上ガスの流量、マスフロー118によって制御される浮上ガスの流量とマスフロー535によって制御される浮上ガスの流量の和(つまり、浮上ガスの総流量)を示している。
図2、図9に示すように、成形型400がリリース位置Bに搬送されるまで(すなわち、時間t1まで)、マスフロー118は、凹部成形面410a上に切断された熔融ガラス塊GGを浮上させるために必要な所定の流量YLの浮上ガスを供給している。そして、成形型400がリリース位置Bに配置されると(時間t1)、マスフロー118は、W1で示されるように浮上ガスの流量を徐々に減少させ、ロボットハンド510のアーム512a、512bの移動によりガス供給プラグ530が弁付きソケット430に挿入され始めたとき(時間t2)、マスフロー535はW2で示されるように浮上ガスの供給を開始し、その流量を徐々に増加させる。そして、ガス供給プラグ225が弁付きソケット430に完全に挿入されたとき(時間t3)、マスフロー118は浮上ガスの供給を停止し、マスフロー535は所定の流量YLとなるまで浮上ガスの流量を増加させている。
このように、成形型400がピックアンドプレース旋回ユニット500によって熔融ガラス切断ユニット100から引き抜かれるときにマスフロー118及びマスフロー535を制御することにより、マスフロー118及びマスフロー535によって供給される浮上ガスの総流量(すなわち、混合流量)が、図9中の波形W3で示すように、所定の流量変動幅内に収まるようになっている。なお、成形型400がピックアンドプレース旋回ユニット500から成形型搬送ユニット200にリリースされるときのマスフロー535及びマスフロー230の制御も同様であるため、マスフロー535及びマスフロー230によって供給される浮上ガスの総流量(すなわち、混合流量)も、図9中の波形W3で示すように、所定の流量変動幅内に収まるようになっている。従って、成形型400の凹部成形面410aから噴出する浮上ガスの流量は、成形型400の引き渡しの前後を通じて略一定に維持されるため、凹部成形面410aの熔融ガラス塊GGの浮上状態も安定して維持される。
<徐冷>
レシーブ位置bにおいて、成形型400が金型ベース220に引き渡されると、レシーブ位置bのスライダ210は、レール205上を時計回りに一定速度で走行するように駆動され、徐冷炉265を通ることにより、凹部成形面410a上の熔融ガラス塊GGが徐々に冷却される(図1の位置(c))。
<取出し>
そして、スライダ210が取出位置(図1の位置(d))に搬送されると、スライダ210は一時停止し、冷却された(すなわち、所定形状に成形された)凹部成形面410a上のガラス塊が、不図示の取出機構により回収される。取出機構としては、吸着パッドが設けられたロボットハンド等が挙げられる。
<予備加熱>
取出工程によってガラス塊が回収されると、スライダ210は、再びレール205上を時計回りに一定速度で走行するように駆動され、スライダ210に搭載された成形型400は、加熱炉270を通ることにより、ガラス塊の成形に適した温度になるように調節される(図1の位置(e))。
<成形型搬送ユニットから熔融ガラス切断ユニットへの成形型の引き渡し>
そして、スライダ210が成形型400のピックアップ位置fに搬送されると、スライダ210は一時停止する。そして、ピックアンドプレースユニット300によって、スライダ210に搭載された成形型400が抜き取られてキャッチ位置(図1の位置(C))に運ばれ、ロボットハンド510に再び引き渡される。つまり、成形型400が成形型搬送ユニット200から熔融ガラス切断ユニット100へ引き渡される。なお、成形型搬送ユニット700は、成形型搬送ユニット200と同一の構成であり、上述した成形型搬送ユニット200において行われる一連の工程は、成形型搬送ユニット700においても同様に行われ、成形型900はピックアンドプレースユニット800によって、成形型搬送ユニット700から熔融ガラス切断ユニット600へ引き渡される。なお、本実施形態においては、成形型400が抜き取られた後の移動アーム113は、リリース位置Bに停止しており、キャッチ位置Cは、リリース位置Bと同一の位置である。
図10は、本発明の第1実施形態に係るガラス塊の製造装置1の成形型400を成形型搬送ユニット200から熔融ガラス切断ユニット100に引き渡すピックアンドプレースユニット300の構成を説明する側面図である。図10は、ピックアンドプレースユニット300を図1の第2成形装置20側から見たときの図である。図10に示されるように、ピックアンドプレースユニット300は、ユニット本体302、上下および左右方向に移動可能な移動アーム304、及び二股アーム310a、310bを備えている。
ユニット本体302は、内部にモータ及び複数の遊動カム(不図示)を備えており、ユニット本体302の下側に配設される移動アーム304を垂直(上下)方向及び水平方向に移動させる。また、移動アーム304の先端(図10の左側)には、成形型400の上側把持部420eを挟持可能な二股アーム310a、310bが固定されており、アーム310bとアーム310aとが相対的に離間することにより、二股アーム310a、310b間に成形型400の上側把持部420eが挟持される。
スライダ210が成形型400のピックアップ位置fに搬送されると、ピックアンドプレースユニット300は、移動アーム304を下降させると共に、二股アーム310a、310b間を開き、二股アーム310a、310b間で成形型400の上側把持部420eを挟持する。そして、移動アーム304を上昇させることにより、成形型400を金型ベース220から抜き取る。次いで、ピックアンドプレースユニット300は、移動アーム304を前進させる(図10の左方向に移動させる)ことにより、熔融ガラス切断ユニット100の移動アーム113の方向に移動させ、成形型400をキャッチ位置Cの移動アーム113に引き渡す。
図11は、本発明の第1実施形態に係るガラス塊の製造装置1の成形型400が成形型搬送ユニット200から熔融ガラス切断ユニット100へ引き渡される様子を説明する図である。図11(a)は、ピックアップ位置fに配置された成形型400を示している。上述したように、成形型搬送ユニット200のスライダ210は、ロックスリーブ225aの外周面に形成された係合溝225bと係合する係合アーム250a、250bを備えており、係合アーム250a、250bは、係合溝225bと対向するように、ロックスリーブ225aを挟んで配設されている(図11(a))。係合アーム250a、250bは不図示の駆動機構により開閉可能に構成されている。そして、成形型400がピックアップ位置fに配置されたとき、係合アーム250a、250b間が閉じられることで、ロックスリーブ225aが係合アーム250a、250bに接続される(図11(b))。次いで、ピックアンドプレースユニット300の二股アーム310a、310bが下降し(図11(c))、二股アーム310a、310b間に成形型400の上側把持部420eが挟持される(図11(d))。そして、係合アーム250a、250bが所定量だけ下降することにより、ロックスリーブ225aが押し下げられ、弁付きソケット440とガス供給プラグ225との固定(ロック)が解除される(図11(e))。そして、この状態で移動アーム304が上昇することにより、成形型400が金型ベース220から抜き取られる(図11(f))。成形型400が金型ベース220から抜き取られると、係合アーム250a、250b間が開放され、ロックスリーブ225aはバネの付勢力により上方向に移動して所定位置に戻る(図11(g))。金型ベース220から抜き取られた成形型400は、ピックアンドプレースユニット300に挟持され、その位置で上昇し、キャッチ位置Cの上方まで前進移動する(図11(h))。そして、成形型400は、ピックアンドプレースユニット300の下降動作によって下降し、弁付きソケット440とキャッチ位置Cの移動アーム113上に配置されたガス供給プラグ117とが嵌合することにより、成形型400が移動アーム113上に固定される(図11(i))。上述したように、本実施形態においては、成形型400が移動アーム113から抜き取られたとき(図7(f))、係合アーム163a、163bが、ロックスリーブ117aを押し下げた状態となっている。従って、弁付きソケット440にガス供給プラグ117が挿入され、係合アーム163a、163bが開放されることで、弁付きソケット440とガス供給プラグ117とが固定(ロック)される。
上述したように、成形型400が移動アーム113に引き渡されると、ガス供給プラグ117と弁付きソケット440とが嵌合し、ガス供給部から供給される浮上ガスが成形型400の凹部成形面410aに供給される。なお、成形型400が移動アーム113に支持されると、ピックアンドプレースユニット300は、二股アーム310a、310b間を開くと共に、移動アーム304を上昇させ、二股アーム310a、310bを再びピックアップ位置fの上方に移動させる。このように、成形型搬送ユニット200から移動アーム113に引き渡された成形型400は、第2成形装置20の成形型900に熔融ガラスMGがキャストされている間に、移動アーム113が上昇することにより、キャスト位置A近傍の待機位置に運ばれる。なお、待機位置とは、第2成形装置20による降下切断(すなわち、成形型900の上下動)時に、移動アーム613と干渉しない位置である。
上述したように、第2成形装置20の成形型900に熔融ガラスMGがキャストされ、成形型900上に熔融ガラス塊GGが分断されると、移動アーム613は、成形型900をリリース位置B’に搬送する。そして、成形型900がリリース位置B’に搬送されると、続いて、移動アーム113が上昇し、移動アーム113に支持された成形型400がキャスト位置Aに搬送される。そして、再び成形型400の凹部成形面410aに熔融ガラスMGがキャストされる。このように、各成形型400及び900は、ガラス塊の取出し後、再び熔融ガラスMGのキャスト工程へと戻されて、循環して使用される。そして、流下する熔融ガラスMGは、キャスト位置Aに順次搬送されてくる成形型400及び900によって次々と受け取られる。
このように、第1実施形態のガラスの塊製造装置1では、成形型400及び900を右斜め下方向及び左斜め下方向に移動させながら流下する熔融ガラスMGを次々に受け取って成形している。従って、このような構成によれば、キャストされた熔融ガラス塊GGが成形型400及び900上で折り重なることがなく、樹紋の抑制されたスムーズな成形面を備えたガラス塊を得ることが可能となる。
なお、第1実施形態のガラス塊の製造装置1では、斜め降下切断法を採用した二組の成形装置(すなわち、第1成形装置10、第2成形装置20)が流下する熔融ガラスMGを交互に受け取り、ガラス塊を成形する構成としたが、二組の成形装置に限定されるものではない。すなわち、斜め降下切断法を採用した成形装置であれば、樹紋の抑制されたスムーズな成形面を備えたガラス塊を得ることができ、ガラス塊の製造装置1は一組の成形装置で構成してもよく、また三組以上の成形装置で構成してもよい。
なお、第1実施形態のガラス塊の製造装置1のように、二組の成形装置で構成した場合、検討例のような1台の成形装置を用いた構成と比較して、熔融ガラスMGの引き上げ量を2倍に増やすことが可能となり、例えば、大容量のガラス塊であっても、生産性よく製造することが可能となる。また、第1成形装置10及び第2成形装置20は、それぞれ全体の製造速度の半分の速度でガラス塊を製造すればよいため、成形型搬送ユニット200及び700による成形型400及び900の移動を遅くすることが可能となる。これにより、成形型400及び900上の熔融ガラス塊GGに加わる加速度を減らすことが可能となり、加速度によって生じるガラス塊の歪み(表面のシワなど)を抑制することが可能となる。なお、流出ノズル30の位置(キャスト位置A)を中心としてさらに多くの成形装置(例えば、四組の成形装置)を配置してガラス塊を成形するように構成すれば、熔融ガラスMGの引き上げ量をさらに増やすことが可能となる。
また、第1実施形態のガラス塊製造装置1では、成形型400(及び900)を熔融ガラス切断ユニット100(及び600)と成形型搬送ユニット200(及び700)との間で受け渡すことにより、熔融ガラス切断ユニット100(及び600)による熔融ガラスMGのキャスト及び切断工程と、成形型搬送ユニット200(及び700)による冷却及び予備加熱工程とを分離している。このため、熔融ガラスMGのキャストにかかる時間が他の工程に影響を与えることはなく、熔融ガラス切断ユニット100及び600による熔融ガラスMGのキャスト及び切断工程と、成形型搬送ユニット200及び700による冷却及び予備加熱工程とを独立して制御することが可能となる。例えば、熔融ガラスMGの引き上げ量を増やした場合、それに応じて熔融ガラス切断ユニット100及び600の動作速度(すなわち、成形型400及び900の入れ換え)を速める必要が生じるが、成形型搬送ユニット200及び700による成形型400及び900の移動速度を維持すれば、冷却処理や加熱処理の時間を確保することが可能となる。なお、この場合、成形型搬送ユニット200及び700による処理に時間がかかり、熔融ガラス切断ユニット100(及び600)と成形型搬送ユニット200(及び700)との間で行われる成形型400(及び900)の受け渡しに支障がでることも考えられるが、成形型搬送ユニット200及び700の金型ベース220(すなわち、成形型400及び900)の数量を増やすことにより、容易に解決することができる。また、大容量のガラス塊を製造する場合、熔融ガラスMGのキャストに要する時間のみならず、冷却処理にも時間を要することとなるが、スライダ210の移動速度をガラス塊の容量に応じて遅くすることにより、移送経路を長くすることなく冷却処理の時間を確保することができる。
<ガラス成形品の製造>
第1実施形態のガラス塊製造装置1を用いて成形されたガラス塊(プリフォーム)は、プレス成形型内に導入されてプレス成形型と共に加熱・軟化され、軟化した状態で精密プレス成形される。こうしてプレス成形型の成形面の面形状がガラス塊に転写され、プレス成形型内で加圧された状態で冷却された後、プレス成形型からガラス成形品(ガラス光学素子)が取出される。これにより、成形面の面形状が転写されたガラス光学素子(例えば、非球面レンズ)が得られる。このようにして製造されたガラス光学素子には、必要に応じて、芯取り加工や面取り加工等の各種研削・研磨加工や、染色加工、反射防止膜、紫外線カット等の各種コーティングが施されて、ガラス光学レンズが得られる。
以上が本実施形態の説明であるが、本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。
例えば、本実施形態においては、成形型400及び900を流出ノズル30の中心軸AXに対して15°の方向に移動させる構成としてが、この構成に限定されるものではなく、10°〜50°の範囲で適宜設定可能である。この場合、角度が大きいほど成形面上の熔融ガラス塊GGに対して加速度によって生じる横方向の応力が加わるため、熔融ガラス塊GGの変形が危惧される。このため、成形するガラス塊の重量が重いものほど移動角度を小さくすることが好ましい。
また、本実施形態においては、受け型(下型)である成形型400及び900のみによってガラス塊を浮上成形する構成としたが、この構成に限定されるものではなく、例えば、成形型400が成形型搬送ユニット200に引き渡され、ガラス塊が取出されるまでの間に、成形型400及び900に相対する上型を用いてプレス成形を行うことも可能である。プレス後、冷却することにより精密プレス成形用の近似形状プリフォームを製造することができる。なお、この場合、ガスを噴出可能な多孔質体を備えた上型を用い、上型及び下型の両方からガスを噴出させてプレスしてもよく、また、貫通孔のない上型を用い、上型からはガスを噴出させないでプレスしてもよい。また、上型の構成としては、1つの上型を所定位置に配置する構成としてもよく、あるいは、成形型400及び900の搬送に合わせて移動可能に設けられた複数の上型を配置する構成としてもよい。
また、本実施形態においては、上面視したときに略円形状の凹部成形面410aを備えた成形型400及び略円形状の凹部成形面910aを備えた成形型900によって、水平方向の断面形状が円形のガラス塊を成形する構成として説明したが、本発明は、例えば、シリンドリカルレンズやセルフォックレンズ等、略円柱状のガラス塊を成形するガラス塊の成形装置に適用することも可能である。この場合、上面視したときに略矩形状の凹部成形面を備えた成形型が用いられるが、本実施形態と同様、熔融ガラスが成形型の凹部成形面の一端部側から他端部側に順にキャストされるように、成形型をオフセットした位置から斜め下方向に移動させながら熔融ガラスをキャストすれば、樹紋のないスムーズな成形面を備えたガラス塊を得ることが可能となる。
また、本実施形態のキャスト工程においては、成形型400及び900を一定の角度で斜め下方向に移動させる構成としたが、成形型400及び900にキャストされた熔融ガラスMGが所定の重量に調整された後の工程、すなわち、成形型400及び900を急速降下させる工程(熔融ガラスMGの切断工程)においては、既に熔融ガラスMGのキャストが終了しており、樹紋の形成(発生)には主に関与しないため、成形型400及び900を垂直方向に降下させる構成とすることもできる。
また、本実施形態においては、ピックアンドプレースユニット300の二股アーム310a、310bは、成形型400の上側把持部420eを挟持するものとして説明したが、ピックアンドプレース旋回ユニット500のアーム512a、512bと同様、成形型400の下側把持部420bを挟持する構成としてもよい。
また、本実施形態においては、移動アーム113及び613を斜め方向(移動方向)にスライド可能な熔融ガラス切断ユニット100及び600によって、成形型400及び900を移動させる構成としたが、このような構成に限定されるものではなく、本発明は、例えば、ターンテーブルに対して成形型が移動方向に沿って動くように成形型を設けることにより、ターンテーブルを備えるガラス塊の製造装置に適用することができる。
<第2実施形態>
図12は、本発明の第2実施形態のガラス塊の製造装置1Mの構成を示す側面図である。図13は、本発明の第2実施形態のガラス塊の製造装置1Mの構成を示す上面図である。図12、図13に示されるように、ガラス塊の製造装置1Mは、成形型400M、熔融ガラス供給部30M、ターンテーブル200M、ダイレクトドライブモータ210M、加熱炉270M、取出機構250M、ガラス塊回収部260M及びガス配管240Mを備えている。
熔融ガラス供給部30Mの上部は、図示省略された作業槽、清澄槽、ガラス熔解槽へ連通しており、熔解、清澄、均質化され、一定温度に制御された熔融ガラスMGが熔融ガラス供給部30Mの先端(流出ノズル30Ma)から流下する。流出ノズル30Maより流下した熔融ガラスGは、成形型400Mによって受け取られて、所定の形状のガラス塊に成形される。
図13に示されるように、成形型400Mは、ターンテーブル200M上にて回転中心周りに等間隔に複数個設置されている。ターンテーブル200Mには、例えば軽量かつ高強度のアルミニウム合金製を使用することができる。ターンテーブル200Mは、ダイレクトドライブモータ210Mによって時計方向に間欠回転駆動される。これにより、各成形型400Mは、停留位置(キャスト位置AA)や停留位置(取出位置BB)で所定時間停留する。
ターンテーブル200Mの下面側には、複数本のガス配管240Mが設置されている。各ガス配管240Mは、一端が、対応する成形型400Mに接続されており、他端が、全ガス配管共通の単一のガス供給部(不図示)と接続されている。なお、図13においては、図面を明瞭にするため、ガス配管240Mを一点鎖線で示している。
次に、ガラス塊製造装置1Mによるガラス塊Gの成形方法について説明する。まず、熔融ガラスMGから所定重量のガラス塊Gを成形するため、キャスト位置AAにおいて、清澄、均質化された熔融ガラスMGが連続して一定速度で流出ノズル30Maより流下される。流下された熔融ガラスMGは、キャスト位置AAに順次移送される成形型400Mによって次々と受け取られて、降下切断法により切断され、成形型400M上には所定量の熔融ガラス塊GGが供給される。成形型400Mからは、ガス供給部からガス配管240Mを介して供給されたガスが噴出している。そのため、熔融ガラス塊GGは、ガスの噴出圧によって各成形型400Mに浮上状態で受けられながら、例えば所定の扁平状のガラス塊Gに成形される。
加熱炉270Maでは、成形型400M内で成形されている熔融ガラス塊GGが取出されるまでの間に徐々に冷却される。次いで、取出位置BBに搬送された成形型400M内のガラス塊Gは、取出機構250Mによる吹出ガスにより、略扇形のガラス塊回収部260Mに吹き飛ばされる。吹き飛ばされたガラス塊Gは、ガラス塊回収部260Mにより回収される。加熱炉270Mbでは、成形型400Mがガラス塊の成形に適した温度になるように調節される。このように、各成形型400Mでは、ターンテーブル200Mの回転に応じて、熔融ガラスMGのキャスト、熔融ガラス塊GGの成形、熔融ガラス塊GGの冷却、ガラス塊Gの取出しが順次行われる。各成形型400Mは、ガラス塊Gの取出後、再びキャスト工程へと戻されて、循環して使用される。
第1実施形態と同様、本実施形態においても、成形型400Mへの熔融ガラス塊GGのキャスト方法として、斜め降下切断法を用いている。
図14は、本発明の第2実施形態に係るガラス塊の製造装置1Mの成形型400Mに熔融ガラスがキャストされるときの様子を示す成形型400Mの断面図である。図14に示されるように、成形型400Mは、成形型取付部420Mの上部に固定されている。成形型400Mは、流出ノズル30Maからキャストされる熔融ガラスMGを受け取り、ガラス塊Gを成形する凹部成形面400Maを備えた耐熱鋼(例えば、ステンレス鋼)製の成形型である。凹部成形面400Maの表面は、製作するガラス塊の表面形状に応じて、断面が所定の球面や非球面形状の曲面となるように鏡面加工されており、製作するガラス塊の表面に傷や汚れが付かないように構成されている。また、成形型400Mには、成形型400Mの下面と凹部成形面400Maとを貫通するように複数の貫通孔400Mbが形成されている。
成形型取付部420Mの内部には、貫通孔400Mbに浮上ガスを供給するための通気孔420Mcが形成されており、ガス供給部からガス配管240M、通気孔420Mcを介して供給されたガスが貫通孔400Mbを通って凹部成形面400Maから噴出するように構成されている。通気孔420Mcの上端部は、全ての貫通孔400Mbに浮上ガスを供給できるように拡径されており、空間部420Mdが形成されている。従って、ガス供給部からガス配管240M、通気孔420Mcを介して供給されたガスは、空間部420Mdに一旦溜まり、各貫通孔400Mbから所定の流量(すなわち、所定の圧力)で噴出される。なお、所定の流量とは、熔融ガラス塊が凹部成形面400Maと接触した場合であっても融着せず、かつ流出ノズル30Maからの熔融ガラス流の排出を妨げない程度の流量である。
成形型取付部420Mは、成形型400Mを支持するための略円筒状の部材である。成形型取付部420Mの下部420Meの外径は、上部420Maの外径よりも細く形成されている。また、成形型取付部420Mの下部420Meは、上部420Ma(すなわち、成形型400Mの中心軸Q)に対し約15°の角度で傾斜しており、ターンテーブル200M上に配置された金型ベース220Mの先端部に形成された収容部220Maに差し込まれて、摺動可能に支持される。
金型ベース220Mは、略円筒状の金属製の部材であり、成形型取付部420Mを摺動可能に支持している。金型ベース220Mの収容部220Maは、成形型取付部420Mの下部420Meを収容するための円筒状の空間であり、金型ベース220Mの軸心(図14の上下方向)に対して約15°の角度で傾斜している。金型ベース220Mは、収容部220Maの倒れ方向(図14の左右方向)がターンテーブル200Mの径方向と一致し、かつ収容部220Maの開口がターンテーブル200Mの外側(つまり、斜め上方)を向くように、ターンテーブル200M上に配置されている。このため、成形型取付部420Mが金型ベース220Mに対して摺動すると、成形型取付部420M(すなわち、成形型400M)は、ターンテーブル200Mからターンテーブル200Mの径方向外側に向かって斜めに(すなわち、図14の右斜め上方向に)つき出る。金型ベース220Mは、その内部に垂直方向に摺動可能な摺動部220Mbを有しており、摺動部220Mbの上面は、金型ベース220Mの内部で成形型取付部420Mの下面と当接している。なお、図14においては、図面を明瞭にするため、金型ベース220Mの内部構成を一部省略して示している。
ターンテーブル200Mの下側には、成形型400Mを垂直方向に移動させる昇降機160Mが配設されている(図12)。昇降機160Mは、摺動部220Mbを下側から突上げる突上げ部160Maと、突上げ部160Maを垂直方向に進退させるモータ(不図示)とで構成されており、成形型400Mがキャスト位置AAに配置されたときに、突上げ部160Maが上昇されるようになっている。突上げ部160Maが上昇されると、突上げ部160Maは、対向する摺動部220Mbと当接した状態で摺動部220Mbを垂直方向に摺動させる。そして、摺動部220Mbが垂直方向に上昇すると、それに当接した成形型取付部420Mが斜め方向に上下動するため、成形型取付部420Mに取り付けられた成形型400Mも斜め方向に上下動する。なお、本実施形態の成形型400M、成形型取付部420M及び金型ベース220Mは、同一の材料によって構成されてもよく、また異なる材料によって構成されてもよい。
<熔融ガラスのキャスト>
本実施形態においても、第1実施形態と同様、このような成形型400Mの斜め下方向の移動により、熔融ガラスMGを切断し、成形型400Mの凹部成形面400Maに熔融ガラス塊GGを分離している。具体的には、図14に示すように、成形型400Mに熔融ガラスMGをキャストするとき、昇降機160Mは、モータを駆動して突上げ部160Maを突き上げ、成形型400Mを流出ノズル30Maの流出口に接近するように右斜め上方向に上昇させる。そして、熔融ガラスMGが成形型400Mの凹部成形面400Maにキャストされ始めると、昇降機160Mは流出ノズル30Maの先端が、流出する熔融ガラスMGの中に沈み込まないように、成形型400Mを所定の速度(熔融ガラスMGの流下速度よりも遅い速度)でゆっくりと左斜め下方向に降下させ、成形型400Mにキャストされた熔融ガラスMGが所定の重量に調整されたとき、成形型400Mを急速に(熔融ガラスMGの流下速度よりも速い速度(熔融ガラスMGの流下速度よりも速い速度で)左斜め下方向に降下させて、熔融ガラスMGから熔融ガラス塊GGを分離、切断する。
なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様、成形型400Mが上昇したとき、凹部成形面400Maの中心軸Qが流出ノズル30Maの中心軸AXに対して左側に所定量だけオフセットするように配置される(図14)。そして、凹部成形面400Maが熔融ガラスMGを受けながらゆっくりと左斜め下方向に降下し、降下切断が行われる直前(すなわち、熔融ガラスMGが所定の重量に調整された時点)で、凹部成形面400Maの中心軸Qが流出ノズル30Maの中心軸AXに対して左側に所定量だけオフセットするように構成している。つまり、成形型400Mが流出ノズル30Maに対して斜め左下方向に移動するとき、凹部成形面400Maの中心軸Qは、凹部成形面400Maの中心軸Qと流出ノズル30Maの中心軸AXとで規定される平面上を、流出ノズル30Maの中心軸AXを横切って平行に移動するため、移動期間中には、熔融ガラスMGは、成形型400Maの凹部成形面400Maの左側から右側に向かって連続的にキャストされる。従って、第1実施形態と同様、後からキャストされる熔融ガラスMGが、先にキャストされた熔融ガラスMGに折り重なることはなく、本実施形態によっても、ガラス塊の成形面に発生する樹紋が抑制される。
また、本実施形態の熔融ガラスMGのキャスト工程においては、ターンテーブル200Mを固定した状態で成形型400Mの上昇と降下を行うように構成し、熔融ガラスMGから熔融ガラス塊GGを切断した後も、成形型400Mは、成形型400Mが切断時に描いた移動軌跡の延長線上を通るように斜め下方に直線的に移動する例を示したが、これに限定されるものではない。つまり、成形型400Mは、熔融ガラスMGの切断が可能であり、かつ、ガラス塊の成形面に発生する樹紋を抑制できる範囲において、自由な軌跡で移動させることができる。成形型400Mの具体的な動かし方として、例えば、熔融ガラス塊GGを成形型400Mに供給した後、斜め下方に円弧状の軌跡を描くように移動させることができる。この場合、昇降機160Mは、熔融ガラス塊GGが成形型400Mに供給された後、成形型400Mの降下速度を徐々に低下させる。
また、上述の説明において、成形したガラス塊を精密プレス成形に供する場合について説明を行ったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、その他の具体例としては、まず、ノズルから流出する熔融ガラスから適量の熔融ガラスを分離する。次いで、成形面から浮上ガスが噴出している成形型上に供給する。そして、光学素子のプレス工程におけるプレス成形に適した形状にするため、ガラス塊の成形中に、成形型と、成形型に対向して配置される上型とを用いて、熔融ガラス塊をプレスし、所望の形状に成形する。その後、ガラスを冷却することにより、ガラス塊を得る。
次に、得られたガラス塊を用いて、リヒートプレス(Reheat Press)成形により、ガラス塊からガラス成形体(ガラスブランク)を得る。具体的には、まず、ガラス塊を再加熱し、軟化する。そして、軟化したガラス塊を、離型剤が塗布された成形型に供給し、リヒートプレス成形により、ガラス成形体(ガラスブランク)を得る。得られたガラス成形体に研削加工または研磨加工を施すことにより、球面レンズなどのガラス光学素子を得る。また、リヒートプレス成形は、ガラス塊の粘度を、104〜106ポアズの範囲とする。
また、ガラス塊を得てからプレス成形するまでの工程において、ガラス塊の表面を粗面化処理する工程(バレル研磨工程など)を有していなくとも構わない。また、ガラス塊を得てからプレス成形するまでの工程において、ガラス塊を研削または研磨する工程を有さない。
また、得られたガラス成形体に対して、スムージング加工研削加工または研磨加工を施すことにより、球面レンズ、非球面レンズなどのガラス光学素子を得ることができる。
このようにして得られたガラス光学素子には、必要に応じて、芯取り加工や面取り加工等の各種研削・研磨加工や、染色加工、反射防止膜、紫外線カット等の各種コーティングを施すことができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。