JP6054759B2 - ポリイミドフィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はポリイミドフィルムの製造方法に関し、特に、顔料等の不溶性添加物を含むポリイミドフィルムの連続的製造に好適に用いることができるポリイミドフィルムの製造方法に関する。
ポリイミドフィルムは、優れた耐熱性および絶縁性を有することから、各種フレキシブルプリント配線板の基材フィルム、プリント基板を保護するために使用されるカバーレイ等として使用されている。かかるポリイミドフィルムとして、近年、表面性や色相を変更する目的で、顔料を含むポリイミドフィルムが製造されている。このようなポリイミドフィルムに含まれる顔料の含有量は、易滑性を付与するために添加される少量のフィラーと比較すると顕著に多い。このように、多量の不溶性添加物が含まれるポリイミドフィルムを量産設備にて連続的に製造しようとする場合、不溶性添加物を添加しないポリイミドフィルムと比較してフィルムの靭性が低下し、工程中で破断しやすいため安定した生産ができないという問題がある。
一般に、ポリイミドフィルムの製造には、フィルム端部をクリップまたはピンシートで把持して、フィルムを高温炉(テンター炉)内に搬送し、加熱および焼成を行う工程が含まれる。不溶性添加物を含むポリイミドフィルムは、靭性が低下するため、特に、この工程において、高温炉から出てきたときに急激に冷やされて収縮しその応力に耐え切れずに、クリップまたはピンシートで把持されているフィルム端部が破断するという問題がある。また、同様の問題は、不溶性添加物を添加する場合に限られるものではなく、厚みの薄いフィルムを製造する場合にも起こる。
テンター炉を用いるポリイミドフィルムの製造においては、従来不溶性添加物を含まない場合においても、ピンにより把持された端部での裂けや脱ピン不良の問題が指摘されている(特許文献1〜4参照)。
特許文献1には、ピンからフィルムを剥離する際にフィルム端部で裂けが発生するという問題を解決するために、フィルム端部把持用のピンの太さを規定することにより、フィルム裂けを抑えることが開示されている。
また、特許文献2には、フィルムの収縮力が大きい場合にフィルム面にピンを喰い込ませた孔が幅方向に長孔状に破断するという問題を解決するために、フィルム端部に細く切った別のフィルムを設置して同時にピンにさすことにより、端部裂けを安定化することが開示されている。
特許文献3には、熱可塑性ポリイミド層を含むポリイミド系多層フィルムの製造において、ピンに熱可塑性ポリイミド層が固着することに起因して脱ピン不良が発生するという問題を解決するために、多層液膜の端部を単層構造とし、当該端部を、脱ピン不良を伴わない樹脂層とすることが開示されている。
特許文献4には、イミド化に伴う脆性の増大に起因して脱ピン不良が発生するという問題を解決するために、多層液膜を形成する際に、得られる多層液膜の両端部を最外層の幅広液膜のみとすることが記載されている。
特開2006−289803号公報(2006年10月26日公開) 特開2008−284703号公報(2008年11月27日公開) 特開2006−239965号公報(2006年9月14日公開) 特開2007−290256号公報(2007年11月8日公開)
しかしながら、上記従来の構成では、不溶性添加物を含むことにより靱性が低下したポリイミドフィルムを、テンター炉を用いて製造する場合の、フィルム端部の破断の問題を解決するためには十分ではない。
また、フィルム端部把持用のピンの形状や太さを変更したり、フィルム端部に細く切った別のフィルムを設置したりする場合、ピンシート交換の工数が増えたり、設備の設置により空間を占有し製造時の調整作業の支障となる場合があり、より簡便にフィルム端部の破断の問題を解決する方法が求められる。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、顔料等の不溶性添加物を含む場合や、製品厚みとして薄いものを製造する場合にも、ポリイミドフィルムをテンター炉を用いて連続的に製造する場合の、フィルム端部の破断の問題を解決することができるポリイミドフィルムの製造方法を提供することにある。
本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法は、上記課題を解決するために、ポリアミド酸および硬化剤を含む樹脂溶液をダイスから押し出して、支持体上へキャストして乾燥し、ゲルフィルムとする(A)工程と、(A)工程により得られたゲルフィルムを前記支持体から引き剥がし、端部を固定して焼成炉で焼成する(B)工程と、を含むポリイミドフィルムの製造方法であって、(A)工程において、キャストされる液膜のフィルム幅方向の端部の厚みが、当該液膜のフィルム幅方向の中央部の厚みよりも大きくなるように調整して、樹脂溶液をダイスから押し出すことを特徴としている。
上記の構成によれば、従来のポリイミドフィルムの製造工程におけるフィルム端部の破断や脆性の問題を解決し、安定した生産を行うことができるという効果を奏する。
本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法では、(B)工程により得られたポリイミドフィルムのフィルム幅方向の中央部の厚みが3μm〜25μmであることが好ましい。
上記の構成によれば、厚みの薄いフィルムを製造する場合に起こりやすいフィルム端部の破断の問題を解決することができるというさらなる効果を奏する。
本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法では、上記樹脂溶液は、さらに不溶性添加物を含むことが好ましい。
上記の構成によれば、不溶性添加物によるフィルムの靱性の低下によるフィルム端部の破断の問題を解決することができるというさらなる効果を奏する。
本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法では、上記樹脂溶液に含まれる上記不溶性添加物の含有量は、ポリアミド酸固形分総重量に対して、1重量%以上であることが好ましい。
上記の構成によれば、多量の不溶性添加物によるフィルムの靱性のさらなる低下による問題を解決することができるというさらなる効果を奏する。
本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法は、さらに、(B)工程により得られたポリイミドフィルムのフィルム幅方向の端部を切り落としてフィルムを巻き取る工程を含むことが好ましい。
本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法では、上記ダイスのリップ開口部のフィルム幅方向の端部のリップ先端間距離を、上記ダイスのリップ開口部のフィルム幅方向の中央部のリップ先端間距離よりも大きくなるように調節することにより、(A)工程においてキャストされる液膜のフィルム幅方向の端部の厚みが、当該液膜のフィルム幅方向の中央部の厚みよりも大きくなるように調整することが好ましい。
上記の構成によれば、フィルム端部把持用のピンの形状や太さを変更したり、フィルム端部に細く切った別のフィルムを設置したりせず、より簡便にフィルム端部の破断の問題を解決することができるというさらなる効果を奏する。
本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法では、リップ開口部の幅が500mm以上のダイスを使用し、リップ先端間距離を、上記中央部のリップ先端間距離よりも大きくなるように調節する、上記端部の幅は、10mm〜200mmであることが好ましい。
上記の構成によれば、より好適に端部の厚みを中央部の厚みよりも大きくすることができるとともに、(B)工程において、焼成炉で焼成するときに、固定できる程度の幅をより確実に確保することができる。
本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法は、以上のように、ポリアミド酸および硬化剤を含む樹脂溶液をダイスから押し出して、支持体上へキャストして乾燥し、ゲルフィルムとする(A)工程と、(A)工程により得られたゲルフィルムを前記支持体から引き剥がし、端部を固定して焼成炉で焼成する(B)工程と、を含むポリイミドフィルムの製造方法であって、(A)工程において、キャストされる液膜のフィルム幅方向の端部の厚みが、当該液膜のフィルム幅方向の中央部の厚みよりも大きくなるように調整して、樹脂溶液をダイスから押し出す構成を備えているので、不溶性添加物を添加したポリイミドフィルムや、厚みの薄いポリイミドフィルムの製造工程においてもフィルム端部の破断の問題を解決し、安定した生産を行うことができるという効果を奏する。
本発明において用いられるダイスの一例を示す概略の斜視図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できるものである。
なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。
上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本願発明者らは、樹脂溶液を、ダイスから押し出してキャストされる液膜のフィルム幅方向の端部の厚みが中央部よりも厚くなるように調整して、樹脂溶液をダイスから押し出すことにより、得られるゲルフィルムおよびポリイミドフィルムの端部を分厚くし、強度を確保してポリイミドフィルムを安定生産することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法は、ポリアミド酸および硬化剤を含む樹脂溶液をダイスから押し出して、支持体上へキャストして乾燥し、ゲルフィルムとする(A)工程と、(A)工程により得られたゲルフィルムを前記支持体から引き剥がし、端部を固定して焼成炉で焼成する(B)工程と、を含むポリイミドフィルムの製造方法であって、(A)工程においてキャストされる液膜のフィルム幅方向の端部の厚みが、当該液膜のフィルム幅方向の中央部の厚みよりも大きくなるように調整して、樹脂溶液をダイスから押し出すものである。
(I)樹脂溶液
(A)工程では、ポリアミド酸および硬化剤を含む樹脂溶液をダイスから押し出して、支持体上へキャストして乾燥し、ゲルフィルムとする。上記樹脂溶液は、少なくとも、ポリアミド酸および硬化剤を含んでいればよい。本発明は、例えば顔料のような不溶性添加物を含むポリイミドフィルムをテンター炉を用いて連続的に製造する場合の、フィルム端部の破断の問題を解決することを主な目的とするものであるが、勿論、顔料等を含まない場合にも用いることができる。かかる場合にも、ピンからフィルムを剥離する際にフィルム端部で裂けが発生する等の問題が存在することから、本発明に係る製造方法を好適に用いることができる。よって、上記樹脂溶液に、顔料等が含まれない場合も本発明に含まれる。しかし、上記樹脂溶液が、さらに不溶性添加物を含んでいる場合には、本発明はより効果的に作用する。
また、製品厚みとして薄いポリイミドフィルムを製造する場合には、顔料等を含まない場合でも、テンター炉を用いて連続的に製造する場合に、フィルム端部の破断の問題が起こりやすいことから、厚みの薄いポリイミドフィルムを製造する場合にも、本発明は有利である。さらに、本発明に係る製造方法は、顔料等の不溶性添加物を含み、且つ、厚みが薄いポリイミドフィルムを製造する場合に特に有利である。
<不溶性添加物>
ここで、不溶性添加物とは、樹脂溶液に用いられる溶剤または分散媒に不溶性の粒子であれば特に限定されるものではない。かかる粒子の粒径は特に限定されるものではないが、例えば、平均粒径が0.01μm〜20μm程度である。
上記不溶性添加物には、例えば、有機または無機顔料、フィラー等が含まれる。上記有機顔料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ペリレンブラック、パリオゲンブラック、アニリンブラック、ポリイミド粉末等を挙げることができる。上記無機顔料としては特に限定されるものではないが、例えば鉄、マンガン、クロム、チタン等の単独または複合金属酸化物、ヘマタイト等の鉱物、カーボンブラック等が挙げられる。また、本発明において、顔料には、着色剤として用いられる不溶性添加物に加え、増量剤、展色剤、表面性や色相を調節する目的で添加される配合剤等も含まれる。上記フィラーとしては、例えば、つや消し剤として用いられるシリカ、雲母、アルミナ、酸化チタン;熱伝導性フィラーとして用いられる窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等が含まれる。また、上記フィラーには、表面性の調整のために添加される、リン酸カルシウム、酸化マグネシウム等の無機粒子も含まれる。
上記顔料を含むポリイミドフィルムの具体的な一例としては、例えば、顔料として、ペリレンブラックおよびシリカを含むポリイミドフィルムを挙げることができる。ここで、上記ペリレンブラックとしては、特に限定されるものではないが、例えば、BASF社製ルモゲンブラック等を挙げることができる。ペリレンブラックは紫色を呈する黒色顔料であり、一般的にポリイミドフィルムのように黄色の樹脂を着色した場合に効果的に黒色に見せることができる。また、上記シリカとしても、特に限定されるものではないが、例えば、溶融シリカ、フュームドシリカ、合成シリカ等、またはこれらの2種類以上の組み合わせを挙げることができ、より具体的には、シーマ電子社製各種HPSシリーズ;林化成株式会社製SQシリーズ;フジシリシア製多孔質シリカサイリシアシリーズ、サイロホービックシリーズ等を好適に用いることができる。シリカを用いることにより、上記ペリレンブラックを含む黒色ポリイミドフィルムにおいて、優れた遮光性とマットな質感を両立し、また高い絶縁信頼性をも併せ持つポリイミドフィルムを得ることができる。
上記樹脂溶液に含まれる上記不溶性添加物の含有量も特に限定されるものではないが、ポリアミド酸固形分総重量に対して、より好ましくは1重量%以上であり、さらに好ましくは2重量%以上であり、特に好ましくは3重量%以上であり、最も好ましくは5重量%以上である。例えば、樹脂溶液に顔料を含める場合には、その含有量は通常の添加物と比較して多くなるため、フィルムの靱性が低下し、テンター炉を用いて連続的に製造する場合の、フィルム端部の破断の問題が起こる。かかる場合に、特に本発明の製造方法は特に有効である。また、同様の問題は、顔料を添加する場合に限られるものではなく、同様に多量の不溶性添加物を添加する場合にも起こる。なお、ここで、上記不溶性添加物の含有量は、重合工程において用いられた、等モル量の芳香族ジアミンと芳香族酸二無水物の重量と、添加された上記不溶性添加物の重量から算出することができる。また、得られたポリイミドフィルム中の上記不溶性添加物の含有量も特に限定されるものではないが、より好ましくは1重量%以上であり、さらに好ましくは2重量%以上であり、特に好ましくは3重量%以上であり、最も好ましくは5重量%以上である。得られたポリイミドフィルム中の上記不溶性添加物の含有量は、次のようにして測定することができる。すなわち、ポリイミドフィルムを、ヒドラジン溶液を用いて溶解し、ろ過、洗浄、乾燥を行った後重量を測定し、処理前のフィルムの重量と比較することで測定できる。
<ポリアミド酸>
ポリアミド酸は、通常、芳香族ジアミンと芳香族酸二無水物とを、実質的に等モル量となるように有機溶媒中に溶解させて、得られた溶液を、制御された温度条件下で、上記酸二無水物とジアミンとの重合が完了するまで攪拌することによって製造される。このようにして得られたポリアミド酸を含むポリアミド酸溶液は、通常5〜35重量%、より好ましくは10〜30重量%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に適当な分子量と溶液粘度を得る。
上記芳香族ジアミンとしては、これに限定されるものではないが、例えば、3,3´−ジアミノジフェニルエーテル、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、ビス{4−(3−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3´−ジアミノベンゾフェノン、4,4´−ジアミノベンゾフェノン、3,3´−ジクロロベンジジン、3,3´−ジメチルベンジジン、2,2´−ジメチルベンジジン、3,3´−ジメトキシベンジジン、2,2´−ジメトキシベンジジン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン(m−フェニレンジアミン)、4、4´−ジアミノジフェニルスルフォン、3、3´−ジアミノジフェニルスルフォン、9、9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4、4´−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4、4´−(1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4、4´−ジアミノベンズアニリド等、またはこれらの2種類以上の組み合わせを挙げることができる。
また、上記芳香族酸二無水物としては、これに限定されるものではないが、例えば、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2´,3,3´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4´−オキシジフタル酸二無水物、3,4´−オキシフタル酸二無水物、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4´−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、4,4´−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、p−フェニレンジフタル酸無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物等、またはこれらの2種類以上の組み合わせを挙げることができる。
なお、上記芳香族ジアミンと上記芳香族酸二無水物とは、実質的に等モル量となるように反応させればよく、添加の順序、モノマーの組み合わせおよび組成は特に限定されるものではない。
ポリアミド酸を製造するための重合用溶媒として用いられる有機溶媒は、芳香族ジアミン成分、芳香族酸二無水物成分、および得られるポリアミド酸を溶解するものであれば、特に限定されるものではない。上記重合用溶媒として、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等を用いれば、得られるポリアミド酸の有機溶媒溶液(ポリアミド酸溶液)をそのまま用いて樹脂溶液を調製することができる。
ポリアミド酸を製造するための反応温度は、−10℃〜50℃であることが好ましい。かかる範囲内であることにより、良好な反応速度で反応が進み、生産性に優れるため好ましい。また、反応時間も特に限定されるものではないが、通常数分〜数時間である。
<硬化剤>
本発明において硬化剤とは、脱水剤および触媒を含む趣旨である。
ここで脱水剤とは、ポリアミド酸に対する脱水閉環剤であれば特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、N,N’−ジアルキルカルボジイミド、低級脂肪族ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪族酸無水物、アリールスルホン酸ジハロゲン化物、チオニルハロゲン化物等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、脂肪族酸無水物および/または芳香族酸無水物を特に好適に用いることができる。上記樹脂溶液に含まれる上記脱水剤の含有量も特に限定されるものではないが、好ましくは、ポリアミド酸に含まれるアミド酸ユニット1モル当り、0.5〜5モルの範囲内が好ましく、0.7〜4モルの範囲内がより好ましく、1.5〜2.5モルの範囲内が特に好ましい。
また、触媒としては、ポリアミド酸に対する上記脱水剤の脱水閉環作用を促進する効果を有する成分であれば得に限定されるものではないが、具体的には、例えば、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、複素環式3級アミン等を挙げることができる。これらの中でも、例えば、イミダゾール、ベンズイミダゾール、イソキノリン、キノリン、ジエチルピリジンまたはβ−ピコリン等の含窒素複素環化合物が特に好ましく用いられる。上記樹脂溶液に含まれる上記触媒の含有量も特に限定されるものではないが、好ましくは、ポリアミド酸に含まれるアミド酸ユニット1モル当り、0.05〜3モルの範囲内が好ましく、0.2〜2モルの範囲内がより好ましく、0.5〜1モルの範囲内が特に好ましい。
上記脱水剤および触媒の使用量が上記範囲内であることにより、上記樹脂溶液を液膜化して乾燥する際のゲル化反応を好適に促進させることができる。
<樹脂溶液の溶剤>
上記樹脂溶液に用いられる溶剤としては、ポリアミド酸を溶解する有機溶媒であれば特に限定されるものではないが、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアセトアミド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶媒;フェノール、o−、m− 、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコール等のフェノール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;ヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン等の溶媒;等の有機極性溶媒を挙げることができる。これら有機溶媒は単独で用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。さらに、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素も使用可能である。上記有機溶媒の中でも、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等のアミド系溶媒を特に好ましく用いることができる。
また、樹脂溶液におけるポリアミド酸の濃度は、通常5〜35重量%、より好ましくは10〜30重量%である。この範囲の濃度である場合に適当な分子量と溶液粘度を得る。
<その他の成分>
本発明で用いられる樹脂溶液は、ポリアミド酸、硬化剤、および必要に応じて不溶性添加物を含んでいればよいが、その他の成分をさらに含んでいてもよい。その他の成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、密着付与剤、保存安定剤、イオン捕捉剤等を挙げることができる。また、樹脂溶液には、溶解可能な範囲でポリイミドが含まれていてもよい。
<樹脂溶液の調製方法>
ポリアミド酸および硬化剤を含む樹脂溶液、またはポリアミド酸、不溶性添加物および硬化剤を含む樹脂溶液を調製する方法は特に限定されるものではなく、ポリアミド酸溶液中に、硬化剤および場合によっては不溶性添加物を十分に分散または溶解できるような方法であればよい。
ポリアミド酸溶液中に、硬化剤および場合によっては不溶性添加物を添加するタイミングについても、特に限定されるものではない。それぞれについて、ポリアミド酸重合時、ポリアミド酸重合後、支持体に樹脂溶液をキャストする直前等に添加することが例として挙げられるが、その分散性等を考慮して、最適な時期を選択すれば良い。
また、ポリアミド酸溶液中に、硬化剤および場合によっては不溶性添加物を添加する添加方法についても、特に限定されるものではなく、これらを直接添加する方法、有機溶媒に分散または溶解させて添加する方法などの中から最適な方法を選択すれば良い。
硬化剤および場合によっては不溶性添加物の添加については、それぞれをポリアミド酸溶液に用いられているものと同一の有機溶媒に予め分散または溶解させて、硬化剤溶液を調製しておき、これをポリアミド酸溶液に添加して混合する方法をより好適に用いることができる。この方法では、ポリアミド酸溶液の粘性が高いため、硬化剤をそのままポリアミド酸溶液に添加するよりも、硬化剤または不溶性添加物を分散または溶解させやすい。さらに、硬化剤または不溶性添加物を実質的に液体として取り扱うことができるので、硬化剤または不溶性添加物を供給させやすくすることができる。
(II)(A)工程
(A)工程では、上記樹脂溶液をダイスから押し出して、支持体上へキャストして乾燥し、ゲルフィルムとする。すなわち、本工程では、キャストされた上記樹脂溶液からなる液膜を乾燥することにより、溶剤を蒸発させるとともに、ある程度イミド化を進行させて、自己支持性を持ったゲルフィルムを得る。
ゲルフィルムの状態での溶剤残存率、イミド化の程度、および焼成炉の温度設定については、ポリアミド酸の種類、得られるポリイミドフィルムの厚み等に応じて、適宜選択すればよい。すなわち、ゲルフィルムを得る方法や条件は特に限定されるものではなく、液膜から溶剤を一部蒸発させたり、ポリアミド酸の一部をイミド化したりしてゲルフィルムへ転化できるような条件であればよい。通常は、加熱等による乾燥方法を採用することができる。この場合、支持体上での乾燥は、好適には60℃〜200℃、さらに好適には80℃〜150℃の温度領域で加熱することにより行うことがより好ましい。これにより、ゲルフィルムへの転化を好適に進行させることができ、乾燥の初期段階で残存成分を有効に蒸発させることができるため好ましい。また、加熱方法についても特に限定されるものではなく、従来公知の加熱方法を好適に用いることができる。
また、乾燥時間についても特に限定されるものではないが、1〜600秒の範囲内であることが好ましい。加熱時間が上記範囲内であれば、ゲルフィルムを効率良く作製することができる。
本工程において用いられる支持体としては、特に限定されるものではないが、連続的にポリイミドフィルムの製造を行うという観点から、回転しているドラム、エンドレスベルト等を好適に用いることができる。支持体の材質も特に限定されるものではなく、金属、樹脂等であればよいが、例えば、ステンレス等の金属であることがより好ましく、ステンレス製のドラム、ステンレス製のエンドレスベルトなどを特に好適に用いることができる。例えば、本工程は、乾燥炉内で、好適には加熱された支持体上に、上記樹脂溶液をキャストすることにより行ってもよい。
本発明で用いられるダイスの具体的な構成は特に限定されるものではなく、公知の各種の構成を好適に用いることができる。
図1は、本発明において用いられるダイスの一例を示す概略の斜視図である。ダイス1は、その上部に、図示しない反応容器等から上記樹脂溶液が連続的に供給される供給口部2を備えている。そして、ダイス1は、その下部に、供給された樹脂溶液を、所定の幅および厚さで連続的に押し出すリップ開口部3を備えている。それゆえ、樹脂溶液は、ダイス内部を供給口部2からリップ開口部3の方向(図1において矢印A方向)に向かって連続的に流れることになる。このように、ダイス1は、樹脂溶液を、設定された所定の幅および厚さでリップ開口部3から連続的に押し出すようになっている。
ダイス1は、リップ開口部3のリップ先端間距離(図1において矢印C方向の幅)を調節する、つまり、製造するフィルムの厚さを調節するリップ先端間距離調節機構を備えていることが好ましい。また、この先端距離調整機構は少なくともフィルム両端部、中央部を別個に調整できるように3箇所以上に分かれていることが好ましい。ここで、リップ先端間距離調節機構は、リップ先端間距離を調節することができる機構であれば、その構成は特に限定されるものではないが、例えば、リップ開口部に備えられたリップボルト等を挙げることができる。
また、ダイス1は、その内部に、供給された樹脂溶液の温度を調節する温度調節機構やダイス内部での流れ速度を調整する流路を備えていてもよい。
本発明では、(A)工程においてキャストされる液膜のフィルム幅方向の端部の厚みが、当該液膜のフィルム幅方向の中央部の厚みよりも大きくなるように調整して、樹脂溶液をダイスから押し出す。
なお、本発明において、フィルム幅方向とは、連続的にキャストされる液膜の製膜方向と垂直な方向を指すものとする。また、液膜が、ゲルフィルムおよびポリイミドフィルムになった場合においては、液膜の製膜方向と垂直な方向に相当する方向を指すものとする。
ここで、液膜のフィルム幅方向の端部とは、フィルムの幅方向の両端をそれぞれ含む一定の幅をいい、(B)工程において、焼成炉で焼成するときに、固定される領域を含んでいればよい。両端の上記端部の幅は、それぞれ、10mm〜200mであることが好ましく、20mm〜190mmであることがより好ましく、30mm〜180mmであることがさらに好ましく、40mm〜170mmであることが特に好ましい。上記端部の幅が、10mm以上であることにより、(B)工程において、焼成炉で焼成するときに、固定できる程度の幅を確保することができる。また、上記端部の幅が、200mm以下であることにより、製品の収率を上げ効率的に製品を取得することが出来る。
なお、両端のそれぞれの端部の幅は、同じであっても異なっていてもよいが、同程度であることがより好ましい。
また、液膜のフィルム幅方向の中央部とは、液膜のフィルム幅方向において、上記端部以外の部分をいい、中央部全体において、厚みが一定であることがより好ましい。
なお、液膜の全幅は、製造するフィルムの幅に応じて適宜設定され、通常500mm〜3000mmであり、より好ましくは750mm〜2500mmである。
以上のように、(A)工程においてキャストされる液膜のフィルム幅方向の端部の厚みが、当該液膜のフィルム幅方向の中央部の厚みよりも大きくなるように調整して、樹脂溶液をダイスから押し出すことにより、ポリイミドフィルムの製造工程においてフィルム端部の破断の問題を解決し、安定した生産を行うことができる。
なお、特許文献3、4には、樹脂溶液を支持体上にキャストする場合に、ダイから押し出された液膜の両端部の厚みが増加するネックインと呼ばれる現象が発生しやすくなり、これにより厚膜化した多層フィルムの端部で層間の剥離が生じることが問題点として挙げられている。かかるネックイン現象は、表面張力や引張応力の影響により、自然に端部が厚くなる現象である。フィルムが多層である場合や、熱可塑性である場合に、厚み変動が乾燥状態に影響しピンシートへの固着等を誘発するため問題となる。しかし、その場合でも、例えば12.5μmの厚さのフィルムにおいて、多くても約1μm厚くなる程度である。
これに対して、本発明では、積極的に、キャストされる液膜のフィルム幅方向の端部の厚みが、当該液膜のフィルム幅方向の中央部の厚みよりも大きくなるように調整して、樹脂溶液をダイスから押し出す。
本発明では、キャストされる液膜のフィルム幅方向の端部の厚みが、当該液膜のフィルム幅方向の中央部の厚みよりも大きくなるように調整して、樹脂溶液をダイスから押し出すことができるものであれば、上記調整の方法は特に限定されるものではない。
例えば、上記調整は、ダイスのリップ開口部のフィルム幅方向の端部のリップ先端間距離を、上記ダイスのリップ開口部のフィルム幅方向の中央部のリップ先端間距離よりも大きくなるように調節することにより行うことができる。したがって、本発明に係るポリイミドの製造方法は、上記ダイスのリップ開口部のフィルム幅方向の端部のリップ先端間距離が、上記ダイスのリップ開口部のフィルム幅方向の中央部のリップ先端間距離よりも大きくなるように調節する工程を含んでいてもよい。
ここで、ダイスのリップ開口部のフィルム幅方向の端部とは、リップ開口部のフィルムの幅方向の両端をそれぞれ含む一定の幅をいい、得られるゲルフィルムの当該一定の幅から押し出された部分が、(B)工程において、焼成炉で焼成するときに固定される領域を含んでいればよい。両端の上記端部の幅は、それぞれ、10mm〜200mmであることが好ましく、20mm〜190mmであることがより好ましく、30mm〜180mmであることがさらに好ましく、40mm〜170mmであることが特に好ましい。上記端部の幅が、10mm以上であることにより、(B)工程において、焼成炉で焼成するときに、固定できる程度の幅を確保することができる。また、上記端部の幅が、200mm以下であることにより、製品の収率を上げ効率的に製品を取得することが出来る。
なお、両端のそれぞれの端部の幅は、同じであっても異なっていてもよいが、同程度であることがより好ましい。
なお、リップ開口部の全幅、すなわち、リップ開口部における、フィルムの幅方向に対応する幅(図1において矢印B方向の長さ)は、特に限定されるものではなく、製造するフィルムの幅に応じて適宜設定され、通常、500mm〜3000mm程度であり、より好ましくは750mm〜2500mmである。
また、リップ先端間距離は、特に限定されるものではなく、製造するフィルムの厚みに応じて適宜設定され、通常、400μm〜3000μm程度であり、より好ましくは500μm〜2000μmである。
本発明において、上記ダイスのリップ開口部のフィルム幅方向の中央部とは、リップ開口部のフィルムの幅方向において、上記端部以外の部分をいい、中央部全体において、リップ先端間距離を一定とすることがより好ましい。
また、ここで、上記ダイスのリップ開口部のフィルム幅方向の端部のリップ先端間距離が、上記ダイスのリップ開口部のフィルム幅方向の中央部のリップ先端間距離よりも大きくなるとは、上記端部のリップ先端間距離が、上記中央部のリップ先端間距離よりも大きければよいが、好ましくは、上記端部のリップ先端間距離が、上記中央部のリップ先端間距離の1.2倍〜3倍であることが好ましく、1.3倍〜2.8倍であることがより好ましく、1.5倍〜2倍であることがさらに好ましい。あるいは、上記端部のリップ先端間距離は、上記中央部のリップ先端間距離よりも、100μm〜3000μm大きいことが好ましく、150μm〜2500μm大きいことがより好ましく、200μm〜2000μm大きいことがさらに好ましい。
上記の範囲においてダイスのリップ先端を調整することにより、焼成炉から出てくるポリイミドフィルムの端部の厚みは中央部よりも分厚くなり端部の脆性が解消される。リップ先端間距離を調整せず全幅に渡って同じ距離に設定した場合、ネックイン等の自然現象によっても端部の厚みは増すが、端部と中央部に大きな厚み差をつけることが出来ず安定的に搬送することは出来ない。
なお、上記説明においては、単層のポリイミドフィルムの製造方法を示したが、本発明に係る製造方法は、単層のポリイミドフィルムの製造方法に限定されるものではなく、多層のポリイミドフィルムを製造する場合にも好適に用いることができる。また、かかる場合に、多層フィルムを製造する方法としては、従来公知の多層フィルムの製造方法を適宜選択して用いることができる。
また、本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法は、ポリイミドフィルムの製造方法であればよく、得られるポリイミドフィルムが、熱可塑性ポリイミドであるか、非熱可塑性ポリイミドであるか、またはそれらの共重合体であるかを問わない。
(III)(B)工程
(B)工程では、(A)工程により得られたゲルフィルムを上記支持体から引き剥がし、端部を固定して焼成炉で焼成する。すなわち、本工程では、(A)工程により得られたゲルフィルムを支持体から引き剥がし、フィルムの幅方向の両端部を固定した状態で焼成炉を通し、残存する溶剤の除去ならびにイミド化を完了させることにより、ポリイミドフィルムを得る。ここで、固定される端部とは、上記液膜において、フィルム幅方向の端部の厚みが、当該液膜のフィルム幅方向の中央部の厚みよりも大きくなるように調整して樹脂溶液をダイスから押し出した、その端部に含まれる部分である。
ここで、本発明で用いられる焼成炉は、従来公知のものを好適に用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、ゲルフィルムの両端をクリップやテンターピンで固定して、ゲルフィルムを加熱焼成炉内に搬送するタイプのものを用いることが好ましい。
より具体的には、例えば、支持体から引き剥がしたゲルフィルムの両端部を、テンターピンと呼ばれる針状の固定手段に刺して固定する。固定化されたゲルフィルムは広がった状態で支えられており、この状態で焼成炉に搬入して焼成される。ゲルフィルムの焼成が完了し、完全にイミド化されることでポリイミドフィルムが得られるので、当該ポリイミドフィルムは、テンターピンから引き抜かれて回収される。また、上記固定手段として、例えばクリップ等のテンターピン以外の固定手段を用いてもよい。
このとき、ゲルフィルムを焼成してポリイミドフィルムを得る方法や条件は特に限定されるものではなく、ゲルフィルムを有効に加熱してポリイミドフィルムに焼成できる方法や条件であればよいが、例えば、フィルムの上方の面または下方の面、あるいは、両面から100℃以上の熱風をフィルム全体に噴射して加熱する方式、または遠赤外線をフィルムに照射する方式等を好適に用いることができる。上記焼成工程における焼成温度は、イミド化を完了できるとともに、残存成分を十分に蒸発できる温度範囲であれば特に限定されるものではないが、200℃〜600℃であることが好ましく、また、徐々に温度を上昇させることがより好ましい。焼成時間も特に限定されるものではなく、イミド化が完了できる時間であれば、従来公知の範囲内の時間で焼成することができる。
(B)工程により得られるポリイミドフィルムの全幅は、製造するフィルムの用途等に応じて適宜設定され、通常500mm〜3000mmであり、より好ましくは750mm〜2500mmである。
また、(B)工程により得られるポリイミドフィルムのフィルム幅方向の中央部の厚みは、製造するフィルムの用途等に応じて適宜設定され、通常3μm〜25μmであり、より好ましくは5μm〜16μmである。なお、ここで、(B)工程により得られるポリイミドフィルムの中央部とは、上記ダイスのリップ開口部のフィルム幅方向の中央部から押出された液膜の部分、または、液膜のフィルム幅方向の中央部に相当するフィルム幅方向の部分である。(B)工程により得られるポリイミドフィルムの端部とは、上記ダイスのリップ開口部のフィルム幅方向の端部から押出された液膜、または、液膜のフィルム幅方向の端部に相当するフィルム幅方向の部分である。
また、ここで、(B)工程により得られるポリイミドフィルムは、フィルム幅方向の端部の厚みが、フィルム幅方向の端部の中央部の厚みよりも大きくなっている。上記端部の厚みは、上記中央部の厚みよりも大きければよいが、好ましくは、上記ポリイミドフィルムの端部の厚みは、上記中央部の厚みの1.2倍〜4倍であることが好ましく、1.3倍〜3倍であることがより好ましく、1.4倍〜2倍であることがさらに好ましい。あるいは、上記ポリイミドフィルムの端部の厚みは、上記中央部の厚みよりも、5μm〜20μm大きいことが好ましく、6μm〜19μm大きいことがより好ましく、7μm〜18μm大きいことがさらに好ましい。
(B)工程において焼成炉から搬送されてきたフィルムの端部厚みと中央部の厚みを比較することで、リップ先端間の距離が調整され、液膜の厚みが調整されていることを推測することが出来る。
〔IV〕その他の工程
本発明に係るポリイミドの製造方法は、上記(A)工程および(B)工程を含んでいればよいが、さらに、(B)工程により得られたポリイミドフィルムのフィルム幅方向の端部を切り落としてフィルムを巻き取る工程を含んでいてもよい。
また、本発明に係るポリイミドの製造方法は、上記樹脂溶液を調製する樹脂溶液調製工程を含んでいてもよく、さらに、上記ポリアミド酸を合成する重合工程を含んでいてもよい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。以下の実施例および比較例において用いた樹脂溶液には、以下の顔料分散ワニスの製造例1〜2に示す方法により製造した顔料分散ワニスを用いた。また、実施例および比較例における具体的な成膜は、以下の成膜例1〜2に示す方法により行った。
〔顔料分散ワニスの製造例1〕
反応系を0℃に保った状態で、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと称する。)777.7kgに対して、4−4’−ジアミノジフェニルエーテル(以下、4,4’−ODAと称する。)を88.6kg投入して溶解させ、この溶液に、ピロメリット酸二無水物(以下、PMDAと称する。)を93.6kg徐々に添加して30分以上攪拌しポリアミド酸溶液を得た。
このポリアミド酸溶液に、顔料分散液、すなわち、BASF社製ルモゲンブラックFK4281をビーズミルを用いてDMF中に分散した10重量%の分散液80.5kgと、フジシリシア製多孔質シリカサイリシア350をビーズミルを用いてDMF中に分散した20重量%の分散液60.2kgとを添加し、攪拌した。
この顔料分散液を添加したポリアミド酸溶液に、PMDAの7重量%DMF溶液を40kg徐々に添加して増粘し、1200ポイズの顔料分散ワニスを得た。
〔顔料分散ワニスの製造例2〕
反応系を0℃に保った状態で、DMF778kgに対して、4−4’ODAを57kg投入して溶解させ、この溶液にPMDAを82.8kg徐々に添加して30分以上攪拌しポリアミド酸溶液を得た。
このポリアミド酸溶液に、パラフェニレンジアミンの20重量%DMF溶液を45kg徐々に添加して増粘し、3500ポイズのワニスを得た。
このワニスに、顔料分散液、すなわち、BASF社製ルモゲンブラックFK4280をビーズミルを用いてDMF中に分散した10重量%の分散液80.5kgと、フジシリシア製多孔質シリカサイロホービック250をビーズミルを用いてDMF中に分散した20重量%の分散液60.2kgとを添加し攪拌して、1200ポイズの顔料分散ワニスを得た。
〔成膜例1〕
顔料分散ワニスの製造例1で得られた顔料分散ワニスを68kg/時でポンプから連続的に送液し、またDMF/無水酢酸/イソキノリン=16/4/9の割合で混合した硬化剤を30kg/時で別のラインから送液し、ダイス直前に設置されたピンミキサー中で混合して樹脂溶液とし、即座にダイスより押し出して、ダイスの下25mmを10m/分の速度で走行しているステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。この液膜を130℃×100秒で加熱した後、エンドレスベルトから自己支持性のゲルフィルムを引き剥がしてテンターピンに固定し、連続的に焼成炉へ搬送して230℃×30秒、350℃×30秒、450℃×30秒で焼成しイミド化させた。
〔成膜例2〕
顔料分散ワニスの製造例2で得られた顔料分散ワニスを68kg/時でポンプから連続的に送液し、またDMF/無水酢酸/イソキノリン=16/4/9の割合で混合した硬化剤を30kg/時で別のラインから送液し、ダイス直前に設置されたピンミキサー中で混合して樹脂溶液とし、即座にダイスより押し出して、ダイスの下25mmを10m/分の速度で走行しているステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。この液膜を130℃×100秒で加熱した後、エンドレスベルトから自己支持性のゲルフィルムを引き剥がしてテンターピンに固定し、連続的に焼成炉へ搬送して230℃×30秒、350℃×30秒、450℃×30秒で焼成しイミド化させた。
〔実施例1〕
製膜例1において、ダイスとして、1300mmのリップ開口部の全幅を有し、ダイスのリップ開口部の両端から、それぞれ、0mm〜100mmの範囲(端部)のリップ先端間距離が1200μmに、かつ上記端部を除く中央部の先端間距離が800μmになるように、調整し、リップボルトを用いて調節を行ったものを使用した。この結果、10時間以上安定してポリイミドの製造を行うことができた。焼成炉内から出てきたポリイミドフィルムの分厚くなっている部分(端部)を切り落とし、6000mの長尺フィルムロールを取得した。切り落とした端部の厚みを測定したところ、19μmであり、巻き取ったフィルムの厚みの平均値は12.5μmであった。
〔実施例2〕
製膜例2において、ダイスとして、1300mmのリップ開口部の全幅を有し、ダイスのリップ開口部の両端から、それぞれ、0mm〜100mmの範囲(端部)のリップ先端間距離が1200μmに、かつ上記端部を除く中央部の先端間距離が800μmになるように、調整し、リップボルトを用いて調節を行ったものを使用した。この結果、10時間以上安定してポリイミドの製造を行うことができた。焼成炉内から出てきたフィルムが分厚くなっている部分(端部)を切り落とし、6000mの長尺フィルムロールを取得した。切り落とした端部の厚みを測定したところ、19μmであり、巻き取ったフィルムの厚みの平均値は12.5μmであった。
〔比較例1〕
製膜例1において、ダイスとして、1300mmのリップ開口部の全幅を有し、ダイスのリップ開口部の全幅に渡ってリップ先端間距離が800μmになるように型取りを行い、リップボルトを用いて調節を行ったものを使用した。この結果、焼成炉内から出てきたフィルムは冷却され収縮によってピンに刺さっている部分から裂け、連続的に搬送することはできなかった。避けた部分のフィルムの厚みを測定したところ12.5μmであり、中央部分のフィルムも12.8μmであった。
〔比較例2〕
製膜例2において、ダイスとして、1300mmリップ開口部の全幅を有し、ダイスのリップ開口部の全幅に渡ってリップ先端間距離が1200μmになるように型取りを行い、リップボルトを用いて調節を行ったものを使用した。この結果、焼成炉内から出てきたフィルムは冷却され収縮によってピンに刺さっている部分から裂け、連続的に搬送することはできなかった。避けた部分のフィルムの厚みを測定したところ12.5μmであり、中央部分のフィルムも12.8μmであった。
本発明によれば、顔料等を添加したポリイミドフィルムの製造工程においても、フィルム端部の靱性の低下による破断の問題を解決し、安定した生産を行うことができる。
それゆえ、本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法は、各種プリント基板の基材フィルム、プリント基板を保護するために使用されるカバーレイフィルム等として、ポリイミドを含むフィルムや積層体に代表される各種樹脂成形品を製造する分野に利用することができる。さらには、このようなフィルムや積層体を用いた電子部品の製造に関わる分野にも広く応用することが可能である。
1 ダイス
2 供給口部
3 リップ開口部

Claims (4)

  1. ポリアミド酸および硬化剤を含む樹脂溶液をダイスから押し出して、支持体上へキャストして乾燥し、ゲルフィルムとする(A)工程と、
    (A)工程により得られたゲルフィルムを前記支持体から引き剥がし、端部を固定して焼成炉で焼成する(B)工程と、
    を含むポリイミドフィルムの製造方法であって、
    (A)工程において、上記ダイスのリップ開口部のフィルム幅方向の端部のリップ先端間距離を、上記ダイスのリップ開口部のフィルム幅方向の中央部のリップ先端間距離よりも大きくなるように調節することにより、キャストされる液膜のフィルム幅方向の端部の厚みが、当該液膜のフィルム幅方向の中央部の厚みよりも大きくなるように調整して、樹脂溶液をダイスから押し出し、
    上記リップ開口部の幅が500mm以上のダイスを使用し、上記端部のリップ先端間距離が、上記中央部のリップ先端間距離の1.2倍〜3倍であるように調整し、
    上記端部の幅は、10mm〜200mmであり、
    (B)工程により得られたポリイミドフィルムのフィルム幅方向の中央部の厚みが3μm〜16μmであることを特徴とする、ポリイミドフィルムの製造方法。
  2. 上記樹脂溶液は、さらに不溶性添加物を含むことを特徴とする請求項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  3. 上記樹脂溶液に含まれる上記不溶性添加物の含有量は、ポリアミド酸固形分総重量に対して、1重量%以上であることを特徴とする請求項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  4. さらに、(B)工程により得られたポリイミドフィルムのフィルム幅方向の端部を切り落としてフィルムを巻き取る工程を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
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