本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、有機機能層が電子輸送層、正孔輸送層または発光層であり、該有機機能層の少なくとも1層が、粒子を含む膜厚5〜100nmの範囲の層であり、粒子の粒子径分布として、2つ以上の極大値を有し、該粒子の短軸に対する長軸の比率(長軸/短軸)の平均値が、1.0以上、2.0未満の範囲であり、かつ2つ以上の極大値を形成する粒子が、いずれも有機物で構成されている粒子であることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項9に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の目的効果をより発現することができる観点から、粒子の粒子径分布における2つ以上の極大値のうち、最大の極大値Aが10nm以上、50nm以下の値の範囲であり、かつ最小の極大値Bが3.0nm以上、10nm未満の値の範囲であることが好ましい。
また、本発明においては、粒子が、前記有機機能層の構成材料を含有していることが好ましい。また、本発明においては、最大の極大値Aと最小の極大値Bとの差が、20nm以上であることが、上述のとおり、粒子間の間隙が埋まり、より充填率が高くなることにより、優れた出力効率及び素子寿命を得ることができる点で好ましい。また、本発明においては、最大の極大値A(nm)が、前記粒子を含有する層の膜厚(nm)の0.8倍以上、1.2倍以下の範囲であることが、より優れた出力効率及び素子寿命を得ることができる点で好ましい。また、本発明においては、最小の極大値B(nm)が、前記粒子を含有する層の膜厚(nm)の0.15倍以下であることが、より優れた出力効率及び素子寿命を得ることができる点で好ましい。また、本発明においては、発光層が含有するドーパント材料の少なくとも1種が、前記一般式(1)で表される化合物であること、発光層が含有するホスト材料の少なくとも1種が、前記一般式(2)で表される化合物であることが、好ましい態様である。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本発明において示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《有機機能層形成用粒子》
はじめに、本発明に係る有機機能層を形成する粒子と該粒子を含有する分散液の調製方法について説明する。
本発明の有機EL素子においては、有機機能層の少なくとも1層が、粒子を含む膜厚が5〜100nmの範囲の層であり、該粒子の粒子径分布として、2つ以上の極大値を有する粒子を含み、2つ以上の極大値を形成する粒子が、いずれも有機物で構成されている粒子を含む分散液を基板上に塗布して形成することを特徴とする。
はじめに、本発明に係る粒子の調製方法について説明する。
本発明に係る粒子を調製する方法としては、乾式粉砕、湿式粉砕のトップダウン法、液相成長法や気相成長法のようなボトムアップ法のいずれの方法でも良いが、得られる粒子の大きさを小さくできる点から、ボトムアップ法が好ましい。
液相成長法とは、例えば、溶質を良溶媒に溶かしておき、そこに貧溶媒を加えることで、微粒子を析出させるマイクロミキサを用いた再沈法を使用することができ、有機物をナノ粒子化したい場合は、この方法を好適に用いることができる。本発明で好適に用いることができる粒子の調製装置としては、例えば、日本大学生産工学部第42回学術講演会要旨5−23に記載されているような装置を用いることができる。
また、他には、特開2008−12453号公報に記載のような超臨界状態媒体中での合成反応法も適用することができ、これらの方法で調製した粒子を媒質に分散して分散液を調製して使用しても良い。超臨界状態の媒質としては、例えば、水、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、メタノール、エタノール、アセトンを使用できるが、これに限らない。無機粒子をナノ粒子化したい場合は、この方法が好適に用いられる。
有機機能層の構成材料である溶質の溶解度を、溶媒ごとに測定し、溶解度の低いものを使用することができるが、その他にも、例えば、溶質と貧溶媒の溶解度パラメーター(SP値)の差を溶解度の指標とすることができる。このとき、SP値が近すぎると、溶質が溶解してしまうため、大きな粒子を形成することができなくなるが、SP値の差が極めて大きい場合、溶質を含んだ超臨界媒質に貧溶媒を加えた瞬間に結晶核が多く発生するため、小さい結晶となる。SP値の差が2〜10(MPa1/2)、好ましくは3〜6(MP
a1/2)であれば、貧溶媒を加えたときに適度な量の結晶核が生成するため、核が成長
する反応場の温度や反応時間を調整することで、数十nmの粒径の粒子を調製することができる。また、溶解する有機機能層の構成材料である溶質は何種類であっても良く、この場合、粒子の粒径が幅広い分布を持つことがある。
本発明においては、粒子の粒子径分布における2つ以上の極大値のうち、最大の極大値Aが10nm以上、50nm以下の値の範囲であり、かつ最小の極大値Bが3.0nm以上、10nm未満の値の範囲であることが好ましい態様である。
すなわち、本発明においては、良溶媒と貧溶媒のSP値の差が大きいほど、平均粒子径が小さい粒子を調製することができる。ここで、平均粒子径が10〜50nmの範囲の粒子を調製するには、SP値の差が2〜8の良溶媒と貧溶媒との組み合わせを好適に用いることができ、さらに好ましくは3〜6である。良溶媒としてSP値が8.8であるトルエンを使用した場合、貧溶媒としては下記に限るものではないが、例えばn−ブタノール、n−プロパノール、エタノール、メタノールなどのアルコールやフェノールを用いることができる。一方、最小の極大値Bで規定する3〜10nmの範囲に粒子径を有する粒子を調製するには、SP値の差が8〜20の良溶媒と貧溶媒の組み合わせを好適に用いることができ、さらに好ましくは12〜18である。良溶媒としてトルエンを用いた場合、貧溶媒として例えば水を用いることができる。
また、平均粒子径が異なる2種の粒子を含む分散液を用いることもできる。ここで、2種の粒子は互いに同一種からなるものでも、異種でも良い。例えば、発光層に用いた場合、例えばホスト化合物と青ドーパント化合物からなる平均粒子径が30nmの粒子とホスト化合物と緑や赤ドーパントからなる平均粒子径が9nmの粒子を含む液を用いても良い。
また、溶質を溶解した良溶媒に加える貧溶媒として、上記の方法で調製した粒子を含む液を使用しても良い。このときには、新たに発生した核が成長して別の粒子を形成する過程と、もともと含まれる粒子をさらに成長させる過程の2種類の過程があるため、粒子の粒径分布としては複数の極大値が発現する。加える貧溶媒に含まれる一次粒子物質は良溶媒中に溶解している溶質と同じであってもなくても良い。
生成する粒子の形は、材料によって様々ではあるが、本発明に係る粒子においては、粒子の短軸に対する長軸の比率(長軸/短軸)の平均値が1.0以上、2.0未満の範囲であることを特徴とする。例えば、ラグビーボール型の粒子であった場合は、長軸と短軸の長さの割合に相当し、球に近い方がより好ましい。粒子の形は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影した粒子画像を観察することにより求めることができ、300個の粒子の最長距離(長軸)と最短距離(短軸)を測定し、その平均を本発明で用いる平均(長軸/短軸)比とする。ここで、長軸は粒子の外周の2点に接する円の直径であり、短軸は粒子に2点で内接する円の直径を表す。
また、本発明に係る粒子では、図2で示すような横軸に粒子径、縦軸にその粒子数をプロットした粒子径分布曲線を作成した際に、2つ以上の極大値を有することを特徴とする。
より具体的には、後述する方法で粒子を含む分散液を調製する際に、分散条件、良溶媒の種類と比率、貧溶媒の種類と比率を適宜選択して、高い単分散性を有し、それぞれ平均粒子径が異なる粒子を含む分散液を2種以上混合して、図2に示すような粒子径分布を備えた有機機能層形成用塗布液を調製する方法が、出力効率及び素子寿命に優れた有機EL素子を得ることができる観点から、特に好ましい。
更に、好ましい製造方法としては、例えば、最大の極大値Aを形成する単分散性の高い粒子を含む分散液Aと、最小の極大値Bを形成する単分散性の高い粒子を含む分散液Bとを、それぞれ最適条件で調製した後、有機機能層の塗布を行うコータの直前で、分散液Aと分散液Bとを、スタチックミキサー等を用いてインラインミックスし、図2に示すような粒子径分布を有する塗布液として調製する方法が特に好ましい。このとき、最大の極大値Aを形成する粒子と、最小の極大値Bを形成する粒子との混合比率は、特に制限は無く、最大の極大値Aを形成する粒子(質量%)/最小の極大値Bを形成する粒子(質量%)としては、所望の特性に応じて、1/99〜99/1の範囲の任意の比率を設定することができる。
本発明に係る粒子の粒子径分布は、以下の方法により求めることができる。
作製した有機EL素子について、本発明に係る粒子を含有する有機機能層の断面を、透過型電子顕微鏡を用い、倍率として25万倍で観察し、約300個の粒子の粒子径測定を行い、横軸に粒子径(nm)、縦軸に粒子数をプロットし、図2に示すような粒子径分布を求める、なお、粒子径分布で用いる粒子径は、粒子の長軸と短軸の平均値とする。
また、本発明においては、図2に示すような粒子径分布において、2つ以上の極大値のうち、最大の極大値A(図2でいう右側のピーク)が10nm以上、50nm以下の値の範囲であり、かつ最小の極大値B(図2でいう左側のピーク)が3.0nm以上、10nm未満の値の範囲であることが好ましい。
また、最大の極大値Aと最小の極大値Bとの差が、20nm以上(図2では25nmの例を示してある)であることが好ましい。
本発明においては、最大の極大値A(nm)が、粒子を含有する有機機能層の膜厚(nm)の0.8倍以上、1.2倍以下の範囲であること、あるいは、最小の極大値B(nm)が、粒子を含有する有機機能層の膜厚(nm)の0.15倍以下であることが好ましい態様である。
粒子を含む有機機能層の膜厚は、有機EL素子の断面を、TEM観察を行って求めることのできる層厚の平均値とする。1μmの視野を倍率25万倍で見て、層の厚みの平均を求め、これを有機機能層の膜厚とする。
次いで、本発明に係る粒子を含む分散液の調製装置について説明する。
図3は、本発明に係る粒子を含む分散液の調製に用いる分散装置の一例であるマイクロミキサ装置(マイクロリアクター装置ともいう)の概略構成図である。
図3に示すように、マイクロミキサ装置31は、左側に、攪拌機32を備えた貧溶媒タンク33を有し、反対側には、攪拌機39を備えた溶質/良溶媒タンク40を有している。
ここでいう溶質とは、粒子を構成する材料であり、具体的には、各有機機能層の構成材料、例えば、詳細については後述する正孔輸送材料、電子輸送材料、発光層を形成する発光材料(ドーパント化合物)、ホスト化合物等を挙げることができる。
また、本発明でいう良溶媒とは、これらの有機機能層の構成材料に対し高い溶解能を有している溶媒であり、貧溶媒とは、溶質に対し溶解能が低い溶媒である。従って、本発明では、良溶媒、あるいは貧溶媒を一義的に決めることはできず、使用する溶質に対する溶解性により分類される。
本発明にかかる粒子の調製方法においては、上記良溶媒に溶解した溶質溶液を、多量の貧溶媒と会合させることにより、溶質を含む微粒子を形成する。このとき、粒子が析出する際には、溶媒分子と溶質分子の相互作用が低いため、形成された粒子中へ貧溶媒が取り込まれることはなく、また、粒子表面に配向した溶媒分子も非常に弱い相互作用で粒子についているため、有機機能膜を形成した後、低エネルギーで乾燥して蒸発させることができる。なお、膜中に残留した溶媒量は、例えば、昇温脱離ガス分析(TDS)で測定することができる。
図3において、貧溶媒タンク33に貯留した貧溶媒は、ポンプ34を介して、T型マイクロミキサ35の流路aに導かれる。一方、溶質/良溶媒タンク40に貯留した良溶媒に溶解した溶質溶液を、ポンプ38を介してT型マイクロミキサ35の流路bに導く。そして、各ポンプ34、38の送液条件を制御しながら両液を流路の中央部で会合させ、溶質より形成される粒子を析出させ、粒子を含む分散液を流路cより排出し、粒子の貯留タンク36に貯留する。
各粒子の粒子径の制御は、溶質の濃度、良溶媒、貧溶媒の種類、貧溶媒と良溶媒に溶解した溶質溶液との会合比率、会合速度、会合時間等を制御することができる。
なお、本発明においては、貧溶媒と良溶媒に溶解した溶質溶液との会合比率(貧溶媒:良溶媒に溶解した溶質溶液 体積比率)としては、5:1〜50:1の範囲であることが好ましく、5:1〜25:1の範囲がより好ましく、8:1〜15:1の範囲が更に好ましい。
上記のようにして調製された本発明に係る粒子を含む分散液は、希釈または濃縮することにより、塗布に適した濃度に調整することができる。このような操作を行ったときや、塗布前には、超音波分散などにより、二次凝集を解く処理を施すことも好ましい。また、この分散液に溶解するバインダーとなる有機低分子化合物を溶解しても良い。溶解する場合は、単分子であり、微結晶化して粒子とならない限りは本発明の対象となる粒子ではない。本発明でいう粒子とは、0.5nm以上の大きさの粒子のこととする。
《有機エレクトロルミネッセンス素子の構成》
次いで、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の構成の詳細について説明する。
図1は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の概略的な構成の一例を示す断面図である。
図1に示すように、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子100(以下、有機EL素子100ともいう)は、可撓性支持基板1を有している。可撓性支持基板1上には陽極2が形成され、陽極2上には有機機能層20が形成され、有機機能層20上には陰極8が形成されている。
有機機能層20とは、陽極2と陰極8との間に設けられている各層をいう。具体的には、有機機能層20には、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6、電子注入層7が含まれ、そのほかに正孔ブロック層や電子ブロック層等が含まれてもよい。
可撓性支持基板1上の陽極2、有機機能層20、陰極8は封止接着剤9を介して可撓性封止部材10によって封止されている。
なお、有機EL素子100のこれらの層構造(図1参照)は単に好ましい具体例を示したものであり、本発明はこれらに限定されない。例えば、本発明の有機EL素子100としては、下記(i)〜(viii)の層構造を有していてもよい。
(i)可撓性支持基板/陽極/発光層/電子輸送層/陰極/熱伝導層/封止用接着剤/封止部材
(ii)可撓性支持基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極/熱伝導層/封止用接着剤/封止部材
(iii)可撓性支持基板/陽極/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/
陰極/熱伝導層/封止用接着剤/封止部材
(iv)可撓性支持基板/陽極/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極/熱伝導層/封止用接着剤/封止部材
(v)可撓性支持基板/陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極/熱伝導層/封止用接着剤/封止部材
(vi)ガラス支持体/陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極/封止部材
(vii)ガラス支持体/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極/
封止部材
(viii)ガラス支持体/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極/封止部材
〔有機EL素子の有機機能層〕
次いで、本発明の有機EL素子を構成する有機機能層の詳細について説明する。
(1:注入層 正孔注入層、電子注入層)
本発明の有機EL素子においては、注入層は必要に応じて設けることができる。注入層としては電子注入層と正孔注入層があり、上記の如く陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。
本発明でいう注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機機能層間に設けられる層で、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層と電子注入層とがある。
正孔注入層としては、例えば、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、正孔注入層に適用可能な正孔注入材料としては、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体等を含むポリマーやアニリン系共重合体、ポリアリールアルカン誘導体、または導電性ポリマーが挙げられ、好ましくはポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体であり、さらに好ましくはポリチオフェン誘導体である。
電子注入層は、例えば、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的には、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。本発明においては、上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、フッ化カリウム、フッ化ナトリウムが好ましい。その膜厚は0.1nm〜5μm程度、好ましくは0.1〜100nm、さらに好ましくは0.5〜10nm、最も好ましくは0.5〜4nmである。
(2:正孔輸送層)
本発明に係る正孔輸送層を構成する正孔輸送材料としては、上記正孔注入層で適用するのと同様の化合物を使用することができるが、さらには、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
さらに、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。本発明においては、正孔輸送層の上層に発光層を塗布するため、これら高分子材料が好適に用いることができる。
また、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、特開2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)、特表2003−519432号公報に記載されているような、いわゆるp型半導体的性質を有するとされる正孔輸送材料を用いることもできる。
本発明において、正孔輸送層は、本発明の技術的特徴である正孔輸送材料を含む粒子を分散状態で含有する分散液を用い、湿式塗布法(例えば、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法等)を用いて、塗布、乾燥することにより形成することができる。また、その他の正孔輸送層の形成方法としては、上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、ラングミュア−ブロジェット法(LB法)等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
正孔輸送層の膜厚については、特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。この正孔輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
以下、本発明の有機EL素子の正孔輸送材料に用いられる化合物の好ましい化合物例(例示化合物(1)〜(60))を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
なお、上記例示化合物に記載のnは重合度を表し、重量平均分子量が50,000〜200,000の範囲となる整数を表す。重量平均分子量は60,000〜100,000の範囲であることがさらに好ましい。高分子を一次粒子化したい場合は、上記の分子量の範囲よりも高分子量側を使用することが好ましく、200,000〜1000,000の範囲で使用することがより好ましい。
これらの高分子化合物は、例えば、Makromol.Chem.,193,909頁(1992)等に記載の公知の方法で合成することができる。
(3:電子輸送層)
本発明に係る有機機能層の一つである電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔ブロック層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層で用いてもよいし、複数層設けることもできる。例えば、正孔ブロック層/電子輸送層の組み合わせを用いることができる。
従来、単層の電子輸送層、及び複数層とする場合は発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔ブロック材料を兼ねる)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、フルオレン誘導体、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、シロール誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、8−キノリノール誘導体等の金属錯体等が挙げられる。
その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。
これらの中でもカルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、ピリジン誘導体等が本発明では好ましく、アザカルバゾール誘導体であることがより好ましい。
本発明において、電子輸送層は、本発明の技術的特徴である電子輸送材料を含む粒子を分散状態で含有する分散液を用い、湿式塗布法(例えば、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法等)を用いて、塗布、乾燥することにより形成することができる。また、その他の電子輸送層の形成方法としては、上記電子輸送材料を、例えば、真空蒸着法、ラングミュア−ブロジェット法(LB法)等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。電子輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
また、本発明には半導体ナノ粒子を使用しても良く、例えば、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化チタンなどの酸化物を用いる事ができるが、この限りではない。
また、本発明の半導体ナノ粒子の他に、不純物をゲスト材料としてドープしたn性の高い電子輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
本発明における電子輸送層には、有機物のアルカリ金属塩を含有することが好ましい。有機物の種類としては特に制限はないが、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸、酪酸塩、吉草酸塩、カプロン酸塩、エナント酸塩、カプリル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩、イソフタル酸塩、テレフタル酸塩、サリチル酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、アジピン酸塩、メシル酸塩、トシル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩が挙げられ、好ましくはギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、カプロン酸塩、エナント酸塩、カプリル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、より好ましくはギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩等の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩が好ましく、脂肪族カルボン酸の炭素数が4以下であることが好ましい。最も好ましくは酢酸塩である。
有機物のアルカリ金属塩のアルカリ金属の種類としては特に制限はないが、Na、K、Csが挙げられ、好ましくはK、Cs、さらに好ましくはCsである。有機物のアルカリ金属塩としては、前記有機物とアルカリ金属の組み合わせが挙げられ、好ましくは、ギ酸Li、ギ酸K、ギ酸Na、ギ酸Cs、酢酸Li、酢酸K、酢酸Na、酢酸Cs、プロピオン酸Li、プロピオン酸Na、プロピオン酸K、プロピオン酸Cs、シュウ酸Li、シュウ酸Na、シュウ酸K、シュウ酸Cs、マロン酸Li、マロン酸Na、マロン酸K、マロン酸Cs、コハク酸Li、コハク酸Na、コハク酸K、コハク酸Cs、安息香酸Li、安息香酸Na、安息香酸K、安息香酸Cs、より好ましくは酢酸Li、酢酸K、酢酸Na、酢酸Cs、最も好ましくは酢酸Csである。
これらドープ材の含有量は、添加する電子輸送層に対し、好ましくは1.5〜35質量%の範囲であり、より好ましくは3〜25質量%の範囲であり、最も好ましくは5〜15質量%の範囲である。
(4:発光層)
以下、有機EL素子を構成する有機機能層の一つである発光層について詳述する。
有機EL素子を構成する発光層は、電極または電子輸送層および正孔輸送層から注入されてくる電子および正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
本発明の好ましい実施形態では、発光層の層厚は、10〜500nmの範囲であることが好ましく、10〜100nmの範囲であることがさらに好ましい。
本発明において、発光層は、本発明の技術的特徴である下記発光層の構成材料、例えば、発光材料(ドーパント化合物)、ホスト化合物等を含む粒子を分散状態で含有する分散液を用い、湿式塗布法(例えば、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法等)を用いて、塗布、乾燥することにより形成することができる。また、その他の発光層の形成方法としては、上記発光層材料を、例えば、真空蒸着法、ラングミュア−ブロジェット法(LB法)等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
発光層は、主にドーパント化合物とホスト化合物とが含有されて構成されている。
以下、ホスト材料及びドーパント材料についてそれぞれ説明する。
〈4.1:ホスト化合物〉
本発明の有機EL素子の発光層に含有されるホスト化合物としては、室温(25℃)における燐光発光の燐光量子収率が0.1未満の化合物が好ましい。さらに好ましくは燐光量子収率が0.01未満である。また、前記非発光性有機材料にはホスト化合物を含んでいてもよい。
ホスト化合物としては、公知のホスト化合物をまた、後述する発光材料を複数種用いることで異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物が挙げられる。例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等が挙げられる。
本発明に用いられるホスト化合物は、カルバゾール誘導体であることが好ましい。
本発明においては、ホスト化合物として、下記一般式(2)で示される化合物を用いルことが好ましい。
上記一般式(2)において、XはNR′、O、S、CR′R″またはSiR′R″を表す。R′、R″は各々水素原子または置換基を表す。Arは芳香族環を表す。nは0〜8の整数を表す。
一般式(2)におけるXにおいて、R′、R″で各々表される置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素環基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基またはヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)等が挙げられる。これらの置換基は上記の置換基によって更に置換されていてもよい。これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
中でも、XとしてはNR′またはOが好ましく、また、R′としては、芳香族炭化水素基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基)、または芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)が特に好ましい。
上記の芳香族炭化水素基、芳香族複素環基は、各々一般式(2)のXにおいて、R′、R″で各々表される置換基を有してもよい。
一般式(2)において、Arにより表される芳香族環としては、芳香族炭化水素環または芳香族複素環が挙げられる。また、該芳香族環は単環でもよく、縮合環でもよく、更に未置換でも、一般式(2)のXにおいて、R′、R″で各々表される置換基を有してもよい。
一般式(2)において、Arにより表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。これらの環は更に、一般式(a)で表される部分構造のXにおいて、R′、R″で各々表される置換基を有してもよい。
一般式(2)において、Arにより表される芳香族複素環としては、例えば、フラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の一つが更に窒素原子で置換されている環を示す)等が挙げられる。
これらの環は、更に一般式(2)において、R′、R″で各々表される置換基を有してもよい。
上記の中でも、一般式(2)において、Arにより表される芳香族環として好ましく用いられるのは、カルバゾール環、カルボリン環、ジベンゾフラン環、ベンゼン環であり、更に好ましく用いられるのは、カルバゾール環、カルボリン環、ベンゼン環であり、より好ましくは置換基を有するベンゼン環であり、特に好ましくはカルバゾリル基を有するベンゼン環が挙げられる。
また、一般式(2)において、Arにより表される芳香族環としては、各々3環以上の縮合環が好ましい一態様であり、3環以上が縮合した芳香族炭化水素縮合環としては、具体的には、ナフタセン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ヘキサセン環、フェナントレン環、ピレン環、ベンゾピレン環、ベンゾアズレン環、クリセン環、ベンゾクリセン環、アセナフテン環、アセナフチレン環、トリフェニレン環、コロネン環、ベンゾコロネン環、ヘキサベンゾコロネン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フルオランテン環、ペリレン環、ナフトペリレン環、ペンタベンゾペリレン環、ベンゾペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピラントレン環、コロネン環、ナフトコロネン環、オバレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。なお、これらの環は、更に上記の置換基を有していてもよい。
また、3環以上が縮合した芳香族複素環としては、具体的には、アクリジン環、ベンゾキノリン環、カルバゾール環、カルボリン環、フェナジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、カルボリン環、サイクラジン環、キンドリン環、テペニジン環、キニンドリン環、トリフェノジチアジン環、トリフェノジオキサジン環、フェナントラジン環、アントラジン環、ペリミジン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭素原子の任意の一つが窒素原子で置き換わったものを表す)、フェナントロリン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ナフトフラン環、ナフトチオフェン環、ベンゾジフラン環、ベンゾジチオフェン環、ナフトジフラン環、ナフトジチオフェン環、アントラフラン環、アントラジフラン環、アントラチオフェン環、アントラジチオフェン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、チオファントレン環(ナフトチオフェン環)等が挙げられる。なお、これらの環は更に置換基を有していてもよい。
また、一般式(2)において、nは0〜8の整数を表すが、0〜2であることが好ましく、特にXがO、Sである場合には1または2であることが好ましい。
本発明においては、特に、ジベンゾフラン環とカルバゾール環をともに有するホスト化合物が好ましい。
以下に、一般式(2)で表されるホスト化合物の具体例(a−1〜a−41)を示すが、これらに限定されるものではない。
〈4.2:発光材料(発光ドーパント)〉
本発明に係る発光材料(発光ドーパント)としては、蛍光性化合物、燐光発光材料(燐光性化合物、燐光発光性化合物等ともいう)を用いることができるが、燐光発光材料であることが好ましい。
本発明において、燐光発光材料とは励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には室温(25℃)にて燐光発光する化合物であり、燐光量子収率が25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましい燐光量子収率は0.1以上である。
上記燐光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中での燐光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明において燐光発光材料を用いる場合、任意の溶媒のいずれかにおいて上記燐光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
燐光発光材料の発光原理としては2種挙げられ、一つはキャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーを燐光発光材料に移動させることで燐光発光材料からの発光を得るというエネルギー移動型、もう一つは燐光発光材料がキャリアトラップとなり、燐光発光材料上でキャリアの再結合が起こり燐光発光材料からの発光が得られるというキャリアトラップ型であるが、いずれの場合においても、燐光発光材料の励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
燐光発光材料は、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、好ましくは元素の周期表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、さらに好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、または白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
以下に、本発明に係る一般式(1)で表される燐光発光ドーパントについて詳細に説明する。
一般式(1)において、R1は置換基を表す。Zは5〜7員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。n1は0〜5の整数を表す。B1〜B5は炭素原子、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を表し、少なくとも一つは窒素原子を表す。M1は元素周期表における8族〜10族の金属を表す。X1及びX2は炭素原子、窒素原子または酸素原子を表し、L1はX1及びX2と共に2座の配位子を形成する原子群を表す。m1は1、2、または3の整数を表し、m2は0、1、または2の整数を表すが、m1+m2は2または3である。
本発明に係る一般式(1)で表される燐光性化合物は、最高被占軌道(Highest
Occupied Molecular Orbital;HOMO)のエネルギー準位が−5.15〜−3.50eVの範囲であり、最低空軌道(Lowest Unoccupied Molecular Orbital;LUMO)のエネルギー準位が−1.25〜+1.00eVの範囲であり、好ましくはHOMOのエネルギー準位が−4.80〜−3.50eVの範囲で、LUMOのエネルギー準位が−0.80〜+1.00eVの範囲である。
一般式(1)で表される燐光性化合物において、R1で表される置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素環基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基またはヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)等が挙げられる。これらの置換基のうち、好ましいものはアルキル基もしくはアリール基である。
Zは、5〜7員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。Zにより形成される5〜7員環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピロール環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環及びチアゾール環等が挙げられる。これらのうちで好ましいものは、ベンゼン環である。
B1〜B5は、炭素原子、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を表し、少なくとも一つは窒素原子を表す。これら5つの原子により形成される芳香族含窒素複素環としては単環が好ましい。例えば、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサジアゾール環及びチアジアゾー環ル等が挙げられる。これらのうちで好ましいものは、ピラゾール環、イミダゾール環であり、特に好ましくはB2、B5が窒素原子であるイミダゾール環である。これらの環は上記の置換基によって更に置換されていてもよい。置換基として好ましいものはアルキル基及びアリール基であり、更に好ましくはアリール基である。
L1は、X1、X2と共に2座の配位子を形成する原子群を表す。X1−L1−X2で表される2座の配位子の具体例としては、例えば、置換または無置換のフェニルピリジン、フェニルピラゾール、フェニルイミダゾール、フェニルトリアゾール、フェニルテトラゾール、ピラザボル、ピコリン酸及びアセチルアセトン等が挙げられる。これらの基は上記の置換基によって更に置換されていてもよい。
m1は、1、2または3の整数を表し、m2は0、1または2の整数を表すが、m1+m2は2または3である。中でも、m2は0である場合が好ましい。M1で表される金属としては、元素周期表の8〜10族の遷移金属元素(単に遷移金属ともいう)が用いられるが、中でもイリジウム、白金が好ましく、更に好ましくはイリジウムである。
以下に、一般式(1)で表される燐光性化合物の具体的な化合物(D−1〜D−133)を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔陽極〕
有機EL素子を構成する陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In2O3−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状パターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合(100μm以上程度)は、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常は、10〜1000nmの範囲であり、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
〔陰極〕
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陰極に上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に形成することで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する有機EL素子を作製することができる。
〔支持基板〕
本発明の有機EL素子に用いることのできる支持基板(以下、基体、基板、基材、支持体等ともいう)としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また透明であっても不透明であってもよい。支持基板側から光を取り出す場合には、支持基板は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な支持基板としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。リジットな基板よりもフレキシブルな基板において、高温保存安定性や色度変動を抑制する効果が大きく現れるため、特に好ましい支持基板は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な可撓性を備えた樹脂フィルムである。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)あるいはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
樹脂フィルムの表面には、無機物、有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が0.01g/(m2・24h)以下のバリア性フィルムであることが好ましく、さらには、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定した酸素透過度が、1×10−3cm3/(m2・24h・atm)以下、水蒸気透過度が1×10−3g/(m2・24h)以下の高バリア性フィルムであることが好ましく、前記の水蒸気透過度が1×10−5g/(m2・24h)以下であることがさらに好ましい。
バリア膜を形成する材料としては、水分や酸素等の有機EL素子の劣化を招く因子の浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。さらに該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機機能層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
バリア膜の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
不透明な支持基板としては、例えば、アルミ、ステンレス等の金属板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
本発明の有機EL素子において、発光の室温における外部取り出し効率は、1%以上であることが好ましく、より好ましくは5%以上である。ここに、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
〔封止:封止接着剤、封止部材〕
本発明の有機EL素子に適用可能な封止手段としては、例えば、封止部材と電極、支持基板とを接着剤で接着する方法を挙げることができる。
封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されておればよく、凹板状でも平板状でもよい。また透明性、電気絶縁性は特に問わない。
具体的には、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる一種以上の金属または合金からなるものが挙げられる。
本発明においては、素子を薄膜化できるということからポリマーフィルム、金属フィルムを好ましく使用することができる。さらには、ポリマーフィルムは、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10−3cm3/(m2・24h・atm)以下、JIS K 719−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が1×10−3g/(m2・24h)以下のものであることが好ましい。
封止部材を凹状に加工するのは、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等が使われる。
接着剤としては、具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。なお、有機EL素子が熱処理により劣化する場合があるので、室温から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、接着剤中に乾燥剤を分散させておいてもよい。封止部分への接着剤の塗布は市販のディスペンサを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
また、有機機能層を挟み支持基板と対向する側の電極の外側に該電極と有機機能層を被覆し、支持基板と接する形で無機物、有機物の層を形成し封止膜とすることも好適にできる。この場合、該膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。さらに該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることが好ましい。これらの膜の形成方法については、特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙には、気相及び液相を形成することを目的として、窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、沃化バリウム、沃化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
封止にはケーシングタイプの封止(缶封止)と密着タイプの封止(固体封止)があるが、薄型化の観点からは固体封止が好ましい。また、可撓性の有機EL素子を作製する場合は、封止部材にも可撓性が求められるため、固体封止が好ましい。
以下に、固体封止を行う場合の好ましい態様を説明する。
本発明に係る封止用接着剤には、熱硬化接着剤や紫外線硬化樹脂などを用いることができるが、好ましくはエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン樹脂など熱硬化接着剤、より好ましくは耐湿性、耐水性に優れ、硬化時の収縮が少ないエポキシ系熱硬化型接着性樹脂である。
本発明に係る封止用接着剤の含水率は、300ppm以下であることが好ましく、0.01〜200ppmの範囲であることがより好ましく、0.01〜100ppmの範囲であることが最も好ましい。
本発明でいう含水率は、いかなる方法により測定しても構わないが、例えば容量法水分計(カールフィッシャ−)、赤外水分計、マイクロ波透過型水分計、加熱乾燥重量法、GC/MS、IR、DSC(示差走査熱量計)、TDS(昇温脱離分析)が挙げられる。また、精密水分計AVM−3000型(オムニテック社製)等を用い、水分の蒸発によって生じる圧力上昇から水分を測定でき、フィルムまた固形フィルム等の水分率の測定を行うことができる。
本発明おいて、封止用接着剤の含水率は、例えば、露点温度が−80℃以下、酸素濃度0.8ppmの窒素雰囲気下に置き時間を変化させることで調整することができる。また、100Pa以下の真空状態で置き時間を変化させて乾燥させることもできる。また、封止用接着材は接着剤のみで乾燥させることもできるが、封止部材へ予め配置し乾燥させることもできる。
密着封止(固体封止)を行う場合、封止部材としては、例えば、50μm厚のPET(ポリエチレンテレフタレート)にアルミ箔(30μm厚)をラミネートしたものを用いる。これを封止部材として、アルミニウム面にディスペンサを使用して均一に塗布し封止用接着剤を予め配置しておき、樹脂基板1と封止部材5を位置合わせ後、両者を圧着して(0.1〜3MPa)、温度80〜180℃で密着・接合(接着)して、密着封止(固体封止)する。
接着剤の種類また量、そして面積等によって加熱また圧着時間は異なるが、0.1〜3MPaの範囲の圧力で仮接着、また80〜180℃の範囲の温度で、熱硬化時間は5秒〜10分間の範囲で選べばよい。
加熱した圧着ロールを用いると圧着(仮接着)と加熱が同時にでき、且つ内部の空隙も同時に排除でき好ましい。
また、接着層の形成方法としては、材料に応じて、ディスペンサを用い、ロールコート、スピンコート、スクリーン印刷法、スプレーコートなどのコーティング法、印刷法を用いることができる。
固体封止は以上のように封止部材と有機EL素子基板との間に空間がなく硬化した樹脂で覆う形態である。封止部材としては、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム合金等の金属、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル等のプラスチック、およびこれらの複合物、ガラス等が挙げられ、必要に応じて、特に樹脂フィルムの場合には、樹脂基板と同様、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素等のガスバリア層を積層したものを用いることができる。ガスバリア層は、封止部材成形前に封止部材の両面若しくは片面にスパッタリング、蒸着等により形成することもできるし、封止後に封止部材の両面若しくは片面に同様な方法で形成してもよい。これについても、酸素透過度が1×10−3ml/(m2・24h・atm)以下、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m2・24h)以下のものであることが好ましい。
封止部材としては、アルミニウム等の金属箔をラミネートしたフィルム等でも良い。金属箔の片面にポリマーフィルムを積層する方法としては、一般に使用されているラミネート機を使用することができる。接着剤としてはポリウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系、アクリル系等の接着剤を用いることができる。必要に応じて硬化剤を併用してもよい。ホットメルトラミネーション法やエクストルージョンラミネート法および共押出しラミネーション法も使用できるがドライラミネート方式が好ましい。
また、金属箔をスパッタや蒸着等で形成し、導電性ペースト等の流動性電極材料から形成する場合は、逆にポリマーフィルムを基材としてこれに金属箔を成膜する方法で作成してもよい。
〔保護膜、保護板〕
有機機能層を挟み支持基板と対向する側の封止膜、あるいは封止用フィルムの外側に、有機EL素子の機械的強度を高めるため、保護膜あるいは保護板を設けてもよい。特に、封止が封止膜により行われている場合には、その機械的強度は必ずしも高くないため、このような保護膜、保護板を設けることが好ましい。これに使用することができる材料としては、前記封止に用いたのと同様なガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等を用いることができるが、軽量かつ薄膜化ということからポリマーフィルムを用いることが好ましい。
本発明において、可撓性支持基板から陽極との間、あるいは可撓性支持基板から光出射側の何れかの場所に光取出し部材を有することが好ましい。
光取出し部材としては、プリズムシートやレンズシートおよび拡散シートが挙げられる。また、全反射を起こす界面もしくはいずれかの媒質中に導入される回折格子や拡散構造等が挙げられる。
通常、基板から光を放射するような有機エレクトロルミネッセンス素子においては、発光層から放射された光の一部が基板と空気との界面において全反射を起こし、光を損失するという問題が発生する。この問題を解決するために、基板の表面にプリズムやレンズ状の加工を施す、もしくは基板の表面にプリズムシートやレンズシートおよび拡散シートを貼り付けることにより、全反射を抑制して光の取り出し効率を向上させる。
また、光取り出し効率を高めるためには、全反射を起こす界面もしくはいずれかの媒質中に回折格子を導入する方法や拡散構造を導入する方法が知られている。
《有機EL素子の製造方法》
本発明の有機EL素子の製造方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の製造方法を説明する。
はじめに、適当な基体上に所望の電極物質、例えば、陽極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の薄膜形成方法により形成させて、陽極を作製する。
次に、この上に有機EL素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の有機機能層(有機化合物薄膜)を形成させるが、本発明においては、有機機能層の少なくとも1層が、長軸に対する短軸の比率(長軸/短軸)が1.0以上、2.0未満の範囲である粒子で、かつ該粒子の粒子径分布として、2つ以上の極大値を有する粒子群を含む分散液を用いて形成されることを特徴とする。
有機機能層を形成する工程は、主に、その有機機能層を構成する塗布液を、支持基板の陽極上に塗布・積層する工程と、塗布・積層後の塗布液を、乾燥させる工程とで構成される。塗布・乾燥する工程は大気下で行ってもかまわないが、乾燥する工程は窒素などの不活性ガス雰囲気で行われることが好ましく、さらには塗布する工程も不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。ここで不活性ガス雰囲気は水や酸素を100ppm以下含むことが好ましく、さらに好ましくは10ppm以下であり、さらに好ましくは1ppm以下である。
本発明に係る粒子を含む分散液を用いた形成方法として、ウェットプロセス(例えば、スピンコート法、キャスト法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、インクジェット法、印刷法、スプレーコート法、カーテンコート法、LB法(ラングミュア・ブロジェット(Langmuir Blodgett法)等を挙げることができる。)を用いることができる。本発明においてはウェットプロセスの中でも、スピンコート法、キャスト法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、インクジェット法等の塗布法による成膜が好ましい。また、そのほかには、蒸着法を用いて形成することもできる。
本発明に係る有機EL材料を溶解または分散する液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の有機溶媒を用いることができる。また分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法および超臨界溶媒中への貧溶媒への添加により分散することができる。
また、本発明に係る有機EL材料を溶解または分散する調液行程は不活性ガス雰囲気下であることが好ましく、前述のウェットプロセスにより基材上に塗布されるまで溶液が塗布雰囲気に曝されない行程であることが好ましい。
これらの層の塗布・積層および乾燥工程は枚葉製造であっても、ライン製造であっても良い。また、各層を塗布する際の雰囲気は共通でも良いが、揮発する溶媒の影響の観点から各層の塗布ブースが隔壁などで囲まれ、雰囲気の循環がそれぞれ独立していることが好ましい。更に、乾燥工程はライン上で搬送中に行っても良いが、生産性の観点から堆積あるいはロール状に非接触で巻き取り乾燥しても良い。
これらの層を乾燥後、その上に陰極用物質からなる薄膜を、1μm以下、好ましくは50nm〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより、所望の有機EL素子が得られる。
該加熱処理後に前記密着封止あるいは封止部材と電極、支持基板とを接着剤で接着することで有機EL素子を製造することができる。
《用途》
本発明の有機EL素子は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。
発光光源として、例えば、家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源、さらには表示装置を必要とする一般の家庭用電気器具等広い範囲の用途が挙げられるが、特にカラーフィルターと組み合わせた液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
本発明の有機EL素子においては、必要に応じ成膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は、電極のみをパターニングしてもよいし、電極と発光層をパターニングしてもよいし、素子全層をパターニングしてもよく、素子の作製においては、従来公知の方法を用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
《有機EL素子の作製》
〔有機EL素子1の作製:比較例〕
(1:可撓性フィルムの作製)
可撓性フィルムとして、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン社製フィルム、以下、PENと略記する)を用いた。その可撓性フィルムの陽極を形成する側の全面に、特開2004−68143号公報に記載の構成からなる大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、連続して、SiOxからなる無機物のガスバリア膜を厚さ500nmとなるように形成し、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度0.001ml/m2/day以下、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が0.001g/m2/day以下のガスバリア性の可撓性フィルムを作製した。
(2:陽極層の形成)
準備したガスバリア性の可撓性フィルム上に、厚さ120nmのITO(インジウムチンオキシド)をスパッタ法により成膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、陽極を形成した。なお、パターンは、発光面積が50mm平方になるようなパターンとした。
(3:正孔注入層の形成)
パターニング後のITO基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。この基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSSと略記、Bayer製、Baytron P Al 4083)を純水で70%に希釈した溶液を、3000rpm、30秒でスピンコート法により製膜した。製膜は、大気雰囲気下において行った。その後、200℃にて1時間乾燥して、膜厚30nmの正孔注入層を設けた。
(4:正孔輸送層の形成)
この基板を、窒素ガス雰囲気下に移し、前記正孔輸送材料である例示化合物(60)(Mw=80,000)をクロロベンゼンに0.5%溶解した溶液を、1500rpm、30秒でスピンコート法により製膜し、130℃で30分間乾燥し、膜厚30nmの正孔輸送層とした。
(5:発光層1の形成)
次いで、下記組成の発光層組成物1と基板は室温の状態で維持し、1500rpm、30秒でスピンコート法により、正孔輸送層上に発光層組成物1を製膜し、120℃で30分間乾燥し、発光層1を形成した。別にガラス基板に同様の方法で発光層を成膜したところ、膜厚は40nmであった。
〈発光層組成物1の調製〉
非発光性有機材料
例示化合物a−1 11.60質量部
発光性ドーパント
例示化合物D−66 2.88質量部
例示化合物D−67 0.008質量部
例示化合物D−80 0.008質量部
溶媒
トルエン 2000質量部
(6:電子輸送層の形成)
続いて、20mgの下記化合物Aを、4mlのテトラフルオロプロパノール(TFPO)に溶解した溶液を、1500rpm、30秒でスピンコート法により製膜し、120℃で30分間乾燥し、膜厚30nmの電子輸送層とした。
(7:電子注入層および陰極の形成)
続いて、基板を大気に曝露することなく、真空蒸着装置へ取り付けた。また、モリブデン製抵抗加熱ボートにフッ化カリウムを入れたものを真空蒸着装置に取り付け、真空槽を4×10−5Paまで減圧した後、前記ボートに通電して加熱してフッ化カリウムを0.02nm/秒で前記電子輸送層上に膜厚2nmの電子注入層を形成した。引き続き、アルミニウムを、100nmの厚さで蒸着して陰極を形成した。
(8:封止及び有機EL素子の作製)
引き続き、市販のロールラミネート装置を用いて封止部材を接着し、有機EL素子1を作製した。
なお、封止部材としては、可撓性の厚さ30μmのアルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製)に、ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム(12μm厚)をドライラミネーション用の接着剤(2液反応型のウレタン系接着剤)を用いラミネートした(接着剤層の厚み1.5μm)ものを用いた。
アルミニウム面に封止用接着剤として、熱硬化性接着剤を、ディスペンサを使用してアルミ箔の接着面(つや面)に沿って厚さ20μmで均一に塗布した。これを100Pa以下の真空下で12時間乾燥させた。さらに露点温度が−80℃以下、酸素濃度0.8ppmの窒素雰囲気下へ移動し、12時間以上乾燥させ、封止用接着剤の含水率を100ppm以下となるように調整した。
熱硬化接着剤としては下記の(A)〜(C)を混合したエポキシ系接着剤を用いた。
(A)ビスフェノールA
(B)ジグリシジルエーテル(DGEBA)
(C)ジシアンジアミド(DICY)エポキシアダクト系硬化促進剤
以上のようにして、図1に記載の形態になるよう、封止基板を、取り出し電極および電極リードの接合部を覆うようにして密着・配置して、圧着ロールを用いて圧着条件、圧着ロール温度120℃、圧力0.5MPa、装置速度0.3m/minで密着封止して、有機EL素子1を作製した。
〔有機EL素子2の作製〕
上記有機EL素子1の作製において、発光層の形成を、発光層組成物1(非発光性有機材料(ホスト化合物):発光ドーパント=80:20(質量比))に代えて、下記の発光層組成物2(非発光性有機材料(ホスト化合物):発光ドーパント=70:30(質量比)を用いた以外は同様にして、有機EL素子2を作製した。
〈発光層組成物2の調製〉
非発光性有機材料
例示化合物a−1 10.15質量部
発光性ドーパント
例示化合物D−66 4.33質量部
例示化合物D−67 0.008質量部
例示化合物D−80 0.008質量部
溶媒
トルエン 2000質量部
〔有機EL素子3の作製〕
上記有機EL素子1の作製において、発光層の形成を下記の方法に変更した以外は同様にして、有機EL素子3を作製した。
(発光層3の形成)
〈発光層組成物3の調製〉
非発光性有機材料
例示化合物a−1 130.5質量部
発光性ドーパント
例示化合物D−66 14.3質量部
例示化合物D−67 0.08質量部
例示化合物D−80 0.08質量部
溶媒
トルエン 2,000質量部
良溶媒に溶解した溶質溶液として、上記発光層組成物3を調製し、図3に示すT型マイクロミキサ35に導入した。ここで、マイクロミキサ管の長さは任意に変更でき、液の混合後の反応時間を自由に変えることができる。ポンプ34により、貧溶媒タンク33より貧溶媒としてエタノールを送液し、各ポンプ34、38の回転数を調製し良溶媒に溶解した溶質溶液である発光層組成物3のT型マイクロミキサ35への送液量を4ml/分とし、貧溶媒であるエタノールの送液量を40ml/分として、流路内径150μmのT型マイクロミキサ35内で、両液をマイクロミキサ35の中央部で高速会合させて、非発光性有機材料及び発光ドーパントを析出させた粒子を含む発光層組成物3分散液(第1液)を調製した。このとき、両液が会合してから、粒子を含む分散液として、T型マイクロミキサ35から排出されるまでの所要時間は1秒であった。
上記調製した発光層組成物3が含有する粒子を、電子顕微鏡を用いて25万倍で撮影し、粒子の長軸/短軸を測定し、(長軸+短軸)/2をその粒子の粒子径として、約300個の粒子について測定し、その平均値を求めた結果、31nmであった。
上記調製した発光層組成物3分散液(第1液)を正孔輸送層まで塗布した基板の上に滴下し、1500rpm、30秒でスピンコート法により製膜し、120℃で30分間乾燥し、発光層3を形成した。
上記作製した有機EL素子3の断面を、電子顕微鏡を用いて25万倍で撮影し、300個の粒子について(長軸/短軸)比を測定した結果、平均(長軸/短軸)比は2.3であり、横軸に粒子径((長軸+短軸)/2)、縦軸に粒子数をプロットした粒子径分布曲線を作成した結果、極大ピークは一つで、31nmであった。
〔有機EL素子4の作製〕
上記有機EL素子3の作製において、発光層の形成を下記の方法に変更した以外は同様にして、有機EL素子4を作製した。
(発光層4の形成)
〈発光層組成物4の調製〉
非発光性有機材料
例示化合物a−1 116.0質量部
発光性ドーパント
例示化合物D−66 28.8質量部
例示化合物D−67 0.08質量部
例示化合物D−80 0.08質量部
溶媒
トルエン 2,000質量部
良溶媒に溶解した溶質溶液として、上記発光層組成物4を調製し、図3に示すT型マイクロミキサ35に導入した。ポンプ34により、貧溶媒タンク33より貧溶媒としてエタノールを送液し、各ポンプ34、38の回転数を調製し良溶媒に溶解した溶質溶液である発光層組成物4のT型マイクロミキサ35への送液量を4ml/分とし、貧溶媒であるエタノールの送液量を40ml/分として、流路内径150μmのT型マイクロミキサ35内で、両液をマイクロミキサ35の中央部で高速会合させて、非発光性有機材料及び発光ドーパントを析出させた粒子を含む発光層組成物4分散液(第1液)を調製した。このとき、両液が会合してから、粒子を含む分散液として、T型マイクロミキサ35から排出されるまでの所要時間は1.2秒であった。
上記調製した発光層組成物4が含有する粒子を、電子顕微鏡を用いて25万倍で撮影し、粒子の長軸/短軸を測定し、(長軸+短軸)/2をその粒子の粒子径として、約300個の粒子について測定し、その平均値を求めた結果、30nmであった。
上記調製した発光層組成物4分散液(第1液)を正孔輸送層まで塗布した基板の上に滴下し、1500rpm、30秒でスピンコート法により製膜し、120℃で30分間乾燥し、発光層4を形成した。
上記作製した有機EL素子4の断面を、電子顕微鏡を用いて25万倍で撮影し、300個の粒子について(長軸/短軸)比を測定した結果、平均(長軸/短軸)比は1.6であり、横軸に粒子径((長軸+短軸)/2)、縦軸に粒子数をプロットした粒子径分布曲線を作成した結果、極大ピークは一つで、30nmであった。
〔有機EL素子5の作製〕
上記有機EL素子3の作製において、発光層の形成を下記の方法に変更した以外は同様にして、有機EL素子5を作製した。
(発光層5の形成)
〈発光層組成物5の調製〉
非発光性有機材料
例示化合物a−1 101.5質量部
発光性ドーパント
例示化合物D−66 43.3質量部
例示化合物D−67 0.08質量部
例示化合物D−80 0.08質量部
溶媒
トルエン 2,000質量部
良溶媒に溶解した溶質溶液として、上記発光層組成物5を調製し、図3に示すT型マイクロミキサ35に導入した。ポンプ34により、貧溶媒タンク33より貧溶媒としてエタノールを送液し、各ポンプ34、38の回転数を調製し良溶媒に溶解した溶質溶液である発光層組成物5のT型マイクロミキサ35への送液量を4ml/分とし、貧溶媒であるエタノールの送液量を40ml/分として、流路内径150μmのT型マイクロミキサ35内で、両液をマイクロミキサ35の中央部で高速会合させて、非発光性有機材料及び発光ドーパントを析出させた粒子を含む発光層組成物5分散液(第1液)を調製した。このとき、両液が会合してから、粒子を含む分散液として、T型マイクロミキサ35から排出されるまでの所要時間は1.2秒であった。
上記調製した発光層組成物5が含有する粒子を、電子顕微鏡を用いて25万倍で撮影し、粒子の長軸/短軸を測定し、(長軸+短軸)/2をその粒子の粒子径として、約300個の粒子について測定し、その平均値を求めた結果、29nmであった。
上記調製した発光層組成物5分散液(第1液)を正孔輸送層まで塗布した基板の上に滴下し、1500rpm、30秒でスピンコート法により製膜し、120℃で30分間乾燥し、発光層5を形成した。
上記作製した有機EL素子5の断面を、電子顕微鏡を用いて25万倍で撮影し、300個の粒子について(長軸/短軸)比を測定した結果、平均(長軸/短軸)比は1.6であり、横軸に粒子径((長軸+短軸)/2)、縦軸に粒子数をプロットした粒子径分布曲線を作成した結果、極大ピークは一つで、29nmであった。
〔有機EL素子6の作製〕
上記有機EL素子3の作製において、発光層の形成を下記の方法に変更した以外は同様にして、有機EL素子6を作製した。
(発光層6の形成)
〈第1液:発光層組成物6Aの調製〉
非発光性有機材料
例示化合物a−1 116.0質量部
発光性ドーパント
例示化合物D−66 28.8質量部
例示化合物D−67 0.08質量部
例示化合物D−80 0.08質量部
溶媒
トルエン 2,000質量部
良溶媒に溶解した溶質溶液として、上記発光層組成物6Aを調製し、図3に示すT型マイクロミキサ35に導入した。ポンプ34により、貧溶媒タンク33より貧溶媒としてエタノールを送液し、各ポンプ34、38の回転数を調製し良溶媒に溶解した溶質溶液である発光層組成物6AのT型マイクロミキサ35への送液量を4ml/分とし、貧溶媒であるエタノールの送液量を40ml/分として、流路内径150μmのT型マイクロミキサ35内で、両液をマイクロミキサ35の中央部で高速会合させて、非発光性有機材料及び発光ドーパントを析出させた粒子を含む発光層組成物6A分散液(第1液)を調製した。このとき、両液が会合してから、粒子を含む分散液として、T型マイクロミキサ35から排出されるまでの所要時間は1.0秒であった。
上記調製した発光層組成物6Aが含有する粒子を、電子顕微鏡を用いて25万倍で撮影し、粒子の長軸/短軸を測定し、(長軸+短軸)/2をその粒子の粒子径として、約300個の粒子について測定し、その平均値を求めた結果、30nmであった。
〈第2液:発光層組成物6Bの調製〉
非発光性有機材料
例示化合物a−1 116.0質量部
発光性ドーパント
例示化合物D−66 28.8質量部
例示化合物D−67 0.08質量部
例示化合物D−80 0.08質量部
溶媒
トルエン 2,000質量部
良溶媒に溶解した溶質溶液として、上記発光層組成物6Bを調製し、図3に示すT型マイクロミキサ35に導入した。ポンプ34により、貧溶媒タンク33より貧溶媒として水を送液し、各ポンプ34、38の回転数を調製し良溶媒に溶解した溶質溶液である発光層組成物6BのT型マイクロミキサ35への送液量を4ml/分とし、貧溶媒である水の送液量を40ml/分として、流路内径150μmのT型マイクロミキサ35内で、両液をマイクロミキサ35の中央部で高速会合させて、非発光性有機材料及び発光ドーパントを析出させた粒子を含む発光層組成物6B分散液(第2液)を調製した。このとき、両液が会合してから、粒子を含む分散液として、T型マイクロミキサ35から排出されるまでの所要時間は1.0秒であった。
上記調製した発光層組成物6Bが含有する粒子を、電子顕微鏡を用いて25万倍で撮影し、粒子の長軸/短軸を測定し、(長軸+短軸)/2をその粒子の粒子径として、約300個の粒子について測定し、その平均値を求めた結果、11nmであった。
次いで、上記調製した発光層組成物6A分散液(第1液)と発光層組成物6B分散液(第2液)とを、塗布直前にインラインミキサーを用いて1:1の質量比で混合した後、直ちに正孔輸送層まで塗布した基板の上に滴下し、1500rpm、30秒でスピンコート法により製膜し、120℃で30分間乾燥し、発光層6を形成した。
上記作製した有機EL素子6の断面を、電子顕微鏡を用いて25万倍で撮影し、300個の粒子について、横軸に粒子径((長軸+短軸)/2)、縦軸に粒子数をプロットした粒子径分布曲線を作成した結果、極大ピークは極大ピークは2つ存在し、最大の極大値Aは30nmであり、最小の極大値Bは11nmであった。
また、最大の極大値Aを構成する粒子の平均(長軸/短軸)比は1.6であり、最小の極大値Bを構成する粒子の平均(長軸/短軸)比は1.3であった。
〔有機EL素子7〜11の作製〕
上記有機EL素子6の作製において、発光層の作製に用いる第1液の発光層組成物分散液及び第2液の発光層組成物分散液のそれぞれの調製において、反応時間(会合時間)を表1に記載のように変更した以外は同様にして、有機EL素子7〜11を作製した。
〔有機EL素子12の作製〕
上記有機EL素子7の作製において、発光層の膜厚を25nmに変更した以外は同様にして、有機EL素子12を作製した。
〔有機EL素子13〜15の作製〕
上記有機EL素子9の作製において、発光層の膜厚を表1に記載のように変更した以外は同様にして、有機EL素子13〜15を作製した。
《有機EL素子の評価》
上記作製した有機EL素子1〜15について、下記の各評価を行った。
〔残留溶媒量の測定〕
上記有機EL素子1〜15の作製と全く同条件で、各発光層をシリコン基板上に単膜として形成した後、120℃で5分間加熱乾燥を行った。次いで、乾燥済みの発光層を有する基板を、昇温脱離ガス分析装置(Rigaku社製 TPD typeV)にかけて、残留溶媒量を測定した。
表2には、有機EL素子1の残留溶媒量を100とした相対値で表示した。
〔パワー効率の測定〕
上記作製した各有機EL素子に対し、2.5mA/cm2の定電流を印加したときのパワー効率(lm/W)を測定した。なお、測定には分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタセンシング製)を用いた。有機EL素子1〜11のパワー効率は、有機EL素子1の測定値を100とした相対値で表した。数値が高いほどパワー効率が高いことを示す。
〔素子寿命の評価〕
上記作製した各有機EL素子を半径が5cmの金属製円柱に巻きつけ、有機EL素子を折り曲げた状態で連続駆動させ、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタセンシング社製)を用いて輝度を測定し、測定した輝度が半減するまでの時間(LT50)を求めた。駆動条件は、連続駆動開始時に4000cd/m2となる電流値とした。
有機EL素子1のLT50を100とした相対値を求め、これを素子寿命(連続駆動安定性)の尺度とした。数値が高いほど寿命が良いことを示す。
以上により得られた結果を、表2に示す。
表2に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する構成からなる有機EL素子は、形成した発光層の残留溶媒量が少なく、効率のよい乾燥条件を設定することができ、かつ素子としてのパワー効率及び素子寿命に優れていることが分かる。