以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態は、調湿空間(S)を除湿する除湿システム(10)に関するものである。この除湿システム(10)は、室外空気(OA)を除湿し、この空気を給気(SA)として室内へ供給する。除湿対象となる調湿空間(S)は、低露点空気が求められるリチウム電池の製造ラインのドライクリーンエリアであり、図1の除湿システム(10)はリチウムイオン電池の製造ラインの一部を構成するものである。本実施形態では、調湿空間(S)に給気口(58b)と排気口(58a)とが連通している。調湿空間(S)に連通する環気口は設けられていない。
図1に示すように、除湿システム(10)は、第1除湿ユニット(20)と、第2除湿ユニット(30)と、第3除湿ユニット(60)とを備えている。
この除湿システム(10)は、室外空気(OA)を除湿して給気(SA)として室内へ供給するための給気通路(40)を備えている。給気通路(40)は、第1から第3までの給気路(41,42,43)を有している。第1給気路(41)は、第1除湿ユニット(20)の上流側に形成されている。第2給気路(42)は、第1除湿ユニット(20)と第2除湿ユニット(30)の間に形成され、中間冷却器を介さずに第1除湿ユニット(20)と第2除湿ユニット(30)を直接に接続している。第3給気路(43)は、第2除湿ユニット(30)の下流側に形成されている。この給気通路(40)を流れる空気が、本発明の処理側空気を構成する。
また、除湿システム(10)は、給気通路(40)の一部の空気を排気(EA)として室外へ排出するための排気通路(50)を備えている。排気通路(50)は、第1から第4までの排気路(51,52,53,54)を備えている。排気通路(50)は、流入端が第2給気路(42)に接続し、流出端が室外に連通している。この排気通路(50)を流れる空気が、本発明の再生側空気を構成する。
前記給気通路(40)は調湿空間(S)へ供給される空気が通過する通路であり、排気通路(50)は室外へ排出される空気が通過する通路であって、この給気通路(40)と排気通路(50)により、空気通路(40,50)が構成されている。そして、この空気通路(40,50)には、前記第3除湿ユニット(60)と第1除湿ユニット(20)と第2除湿ユニット(30)が、室内へ供給される空気である室外空気の入口側から順に配置されている。
第3除湿ユニット(60)は、前記室外空気を冷却して除湿する外気冷却熱交換器(61)と、外気冷却熱交換器(61)で凝縮した水を回収するドレンパン(62)とを備え、外気冷却熱交換器(61)が第1給気路(41)に設けられている。また、第2給気路(42)には、空気を室内へ搬送するための給気ファン(63)が設けられている。第3給気路(43)には、空気を加熱する再熱熱交換器(64)が設けられている。
第1除湿ユニット(20)は、圧縮機(21)、第1吸着熱交換器(22)、膨張弁(23)、第2吸着熱交換器(24)、及び四方切換弁(25)が接続された除湿側冷媒回路(20a)を備え、図示していないケーシング内に機器が収納されている。ここで、除湿側冷媒回路(20a)が、本発明の冷媒回路を構成し、四方切換弁(25)が、本発明の冷媒流路切換機構(25)を構成する。各吸着熱交換器(22,24)はフィンアンドチューブ式の熱交換器の表面に吸着剤が担持されたものであり、ケーシング内には、第1吸着熱交換器(22)を収納する収容室と、第2吸着熱交換器(24)を収納する収容室が設けられている(図示せず)。
四方切換弁(25)は、第1から第4までのポートを有し、第1ポートが圧縮機(21)の吐出側と、第2ポートが圧縮機(21)の吸入側と、第3ポートが第1吸着熱交換器(22)の端部と、第4ポートが第2吸着熱交換器(24)の端部とそれぞれ接続されている。四方切換弁(25)は、第1ポートと第3ポートとが連通するとともに第2ポートと第4ポートとが連通する第1状態(図1の実線で示す状態)と、第1ポートと第4ポートとが連通するとともに且つ第2ポートと第3ポートとが連通する第2状態(図1の破線で示す状態)とに切換可能に構成されている。
第1除湿ユニット(20)は、2つの吸着熱交換器(22,24)へ流入する空気の流れを変更する第1流路切換部(26)と、2つの吸着熱交換器(22,24)を流出した空気の流れを変更する第2流路切換部(27)とを備えている。各流路切換部(26,27)は、開閉式の複数のダンパによって構成されている。ここで、第1流路切換部(26)及び第2流路切換部(27)とが、本発明の空気側切換機構(26,27)を構成する。各流路切換部(26,27)は、図1の実線で示す状態と、図2の実線で示す状態とに、空気の流路を切換可能に構成されている。
第2除湿ユニット(30)は、吸着ロータ(31)と再生熱交換器(空気加熱器)(65)とを有している。ここで、再生熱交換器(65)が、本発明の空気加熱器を構成する。吸着ロータ(31)は、円板状の多孔性の基材の表面に吸着剤が担持されることにより構成されている。吸着ロータ(31)は、給気通路(40)と排気通路(50)に跨って配置されるとともに、駆動機構(図示省略)によって駆動されて、両通路(40,50)の間の軸心を中心として回転するように構成されている。
吸着ロータ(31)には、給気通路(40)の第3給気路(43)を流れる空気が通過する第1吸着部(32)と、排気通路(50)の第1排気路(51)を流れる空気が通過する第2吸着部(33)と、排気通路(50)の第2排気路(52)を流れる空気が通過する再生部(34)とが形成されている。第1吸着部(32)と第2吸着部(33)とでは、空気中の水分が吸着され、再生部(34)では、吸着剤中の水分が空気中へ放出される。
第1排気路(51)は、吸着ロータ(31)の第2吸着部(33)の上流側に形成されている。第2排気路(52)は、吸着ロータ(31)の第2吸着部(33)と、該吸着ロータ(31)の再生部(34)との間に形成されている。第3排気路(53)は、吸着ロータ(31)の再生部(34)と第1除湿ユニット(20)の間に形成されている。また、第4排気路(54)は、第1除湿ユニット(20)の下流側に形成されている。
第2排気路(52)には、吸着ロータ(31)を再生するために空気を加熱する前記再生熱交換器(65)が、吸着ロータ(31)への再生側空気の入口側に設けられている。第4排気路(54)には、空気を室外へ放出するための排気ファン(66)が設けられる。また、第3排気路(53)は、分岐路(55)を介して第1給気路(41)と接続されている。
吸着熱交換器(22,24)と吸着ロータ(31)には異なる性質の吸着剤が用いられている。具体的には、前段側に位置する吸着熱交換器(22,24)には、高い水蒸気分圧(相対湿度)で吸着剤を操作するため、高分子収着剤やB型シリカゲルのように吸着等温線が右上がりの直線に対して下に凸の吸着等温線を有する吸着剤が用いられ、後段側に位置する吸着ロータ(31)には、低い水蒸気分圧(相対湿度)で吸着剤を操作するため、A型シリカゲルやゼオライトのように吸着等温線が右上がりの直線に対して上に凸の吸着等温線を有する吸着剤が用いられている。
つまり、吸着熱交換器(22,24)では、相対湿度が比較的高いときに含水率が大きく、かつ空気の相対湿度が高くなるほど相対湿度の単位増加量当たりの吸着量が大きくなる吸着等温線を有する吸着剤が選定され、吸着ロータ(31)では、相対湿度が比較的低いときに含水率が大きく、かつ空気の相対湿度が低くなるほど相対湿度の単位増加量当たりの吸着量が大きくなる吸着等温線を有する吸着剤が選定されている。
第3除湿ユニット(60)の外気冷却熱交換器(61)による冷却除湿は露点が約8℃以上の領域で、第1除湿ユニット(20)の吸着熱交換器(22,24)による吸着除湿は露点が約10℃〜−20℃の領域で、第2除湿ユニット(30)の吸着ロータ(31)による乾式除湿は露点が約−20℃〜−80℃の領域で用いるのに適している。
図3に示すように、本実施形態の除湿システム(10)は、前記各熱交換器(61,64,65,83,88)が接続される冷媒回路(70a)を有する冷凍ユニット(70)を備えている。本実施形態の冷媒回路(70a)は、1つの閉回路を冷媒が循環する一元冷凍サイクル式の冷媒回路である。
冷媒回路(70a)には、圧縮機(80)が接続されている。圧縮機(80)は、ロータリー式、スイング式、スクロール式等の回転式流体機械である。圧縮機(80)は、インバータ回路によって回転数が調節される可変容量式に構成されている。
圧縮機(80)の吐出側は、第1吐出ライン(71)と第2吐出ライン(72)とに分岐している。第1吐出ライン(71)には、上流側から下流側に向かって順に、前記再生熱交換器(65)、第1膨張弁(81)、前記再熱熱交換器(64)、及び第2膨張弁(82)が接続されている。第2吐出ライン(72)には、上流側から下流側に向かって順に、凝縮圧力調整熱交換器(83)と第3膨張弁(84)とが接続されている。凝縮圧力調整熱交換器(83)の近傍には、室外空気を送風する第1室外ファン(85)が設けられている。
圧縮機(80)の吸入側は、第1吸入ライン(73)と第2吸入ライン(74)とに分岐している。第1吸入ライン(73)には、上流側から下流側に向かって順に、前記外気冷却熱交換器(61)、逆止弁(86)が接続されている。第1吸入ライン(73)には、外気冷却熱交換器(61)及び逆止弁(86)をバイパスするバイパス管(77)が接続されている。バイパス管(77)には、電磁式の開閉弁(92)が設けられている。第2吸入ライン(74)には、上流側から下流側に向かって順に、第4膨張弁(87)と蒸発圧力調整熱交換器(88)とが接続されている。蒸発圧力調整熱交換器(88)の近傍には、室外空気を送風する第2室外ファン(89)が設けられる。
各吐出ライン(71,72)の流出端と各吸入ライン(73,74)の流入端との間には、1本の合流管(75)が接続されている。合流管(75)には、気液分離器(79)が設けられる。気液分離器(79)の気相部には、インジェクション管(76)の流入端が接続している。インジェクション管(76)の流出端は、圧縮機(80)の吸入管に接続している。インジェクション管(76)には、第5膨張弁(91)が設けられる。
再生熱交換器(65)、再熱熱交換器(64)、及び凝縮圧力調整熱交換器(83)は、冷媒が空気へ放熱して凝縮する凝縮器を構成する。外気冷却熱交換器(61)及び蒸発圧力調整熱交換器(88)は、冷媒が空気から吸熱して蒸発する蒸発器を構成する。上述した各膨張弁(81,82,84,87,91)は、例えば電子膨張弁であり、冷媒の圧力を調整する減圧機構を構成している。
除湿システム(10)は、各種のセンサを備えている。具体的に、除湿システム(10)は、冷媒回路(70a)の高圧圧力(凝縮圧力)を検出する高圧圧力センサ(95)と、冷媒回路(70a)の低圧圧力(蒸発圧力)を検出する低圧圧力センサ(96)とを備えている。また、除湿システム(10)は、再生熱交換器(65)、再熱熱交換器(64)及び外気冷却熱交換器(61)の必要能力を検出するための負荷検出手段を備えている。この負荷検出手段は、例えば、再生熱交換器(65)の下流側の空気温度を検知する第1空気温度センサ(101)、再熱熱交換器(64)の下流側の空気温度を検知する第2空気温度センサ(102)及び外気冷却熱交換器(61)の下流側の空気温度を検知する第3空気温度センサ(103)で構成される。
除湿システム(10)は、コントローラ(110)を備えている。コントローラ(110)は、上述した各種のセンサの検出値や、ユーザーによって入力される各種の設定値に基づいて、圧縮機(80)の回転数、各膨張弁(81,82,84,87,91)の開度、各室外ファン(85,89)の送風量等を制御する。
−運転動作−
除湿システム(10)の運転動作について説明する。
〈第1除湿ユニットの基本動作〉
除湿システム(10)の運転時には、第1除湿ユニット(20)が図1に示す第1動作と図2に示す第2動作とを所定時間おきに(例えば5分間隔で)交互に行う。
第1動作では、第2吸着熱交換器(24)で空気を除湿すると同時に、第1吸着熱交換器(22)の吸着剤を再生する。第1動作では、第2吸着熱交換器(24)が本発明の吸着側の熱交換器を構成し、第1吸着熱交換器(22)が本発明の再生側の熱交換器を構成する。
具体的に、第1動作中の除湿側冷媒回路(20a)では、四方切換弁(25)が図1の状態となり、膨張弁(23)が所定開度に制御される。第1流路切換部(26)は、第1給気路(41)と第2吸着熱交換器(24)の収容室(図示省略)とを連通させ、且つ第3排気路(53)と第1吸着熱交換器(22)の収容室(図示省略)とを連通させる。また、第2流路切換部(27)は、第2吸着熱交換器(24)の収容室と第2給気路(42)とを連通させ、且つ第1吸着熱交換器(22)の収容室と第4排気路(54)とを連通させる。
第1動作において、圧縮機(21)で圧縮された冷媒は、四方切換弁(25)を通過して、凝縮器としての第1吸着熱交換器(22)を流れる。第1吸着熱交換器(22)では、冷媒によって吸着剤が加熱され、吸着剤中の水分が空気へ放出される。第1吸着熱交換器(22)で放熱して凝縮した冷媒は、膨張弁(23)で減圧された後、蒸発器としての第2吸着熱交換器(24)を流れる。第2吸着熱交換器(24)では、空気中の水分が吸着剤に吸着され、この際に生じる吸着熱が冷媒に付与される。第2吸着熱交換器(24)で吸熱して蒸発した冷媒は、圧縮機(21)に吸入されて圧縮される。
第2動作では、第1吸着熱交換器(22)で空気を除湿すると同時に、第2吸着熱交換器(24)の吸着剤を再生する。第2動作では、第1吸着熱交換器(22)が本発明の吸着側熱交換器を構成し、第2吸着熱交換器(24)が本発明の再生側熱交換器を構成する。
第2動作中の除湿側冷媒回路(20a)では、四方切換弁(25)が図2の状態となり、膨張弁(23)が所定開度に制御される。第1流路切換部(26)は、第1給気路(41)と第1吸着熱交換器(22)の収容室(図示省略)とを連通させ、且つ第3排気路(53)と第2吸着熱交換器(24)の収容室(図示省略)とを連通させる。また、第2流路切換部(27)は、第1吸着熱交換器(22)の収容室と第2給気路(42)とを連通させ、且つ第2吸着熱交換器(24)の収容室と第4排気路(54)とを連通させる。
第2動作において、圧縮機(21)で圧縮された冷媒は、四方切換弁(25)を通過して、凝縮器としての第2吸着熱交換器(24)を流れる。第2吸着熱交換器(24)では、冷媒によって吸着剤が加熱され、吸着剤中の水分が空気へ放出される。第2吸着熱交換器(24)で放熱して凝縮した冷媒は、膨張弁(23)で減圧された後、蒸発器としての第1吸着熱交換器(22)を流れる。第1吸着熱交換器(22)では、空気中の水分が吸着剤に吸着され、この際に生じる吸着熱が冷媒に付与される。第1吸着熱交換器(22)で吸熱して蒸発した冷媒は、圧縮機(21)に吸入されて圧縮される。
〈冷凍ユニットの基本動作〉
除湿システムの運転時には、冷凍ユニット(70)で冷凍サイクルが行われる。冷凍ユニット(70)の基本動作時には、第1膨張弁(81)、第2膨張弁(82)、及び第5膨張弁(91)の開度が適宜調節され、第3膨張弁(84)と第4膨張弁(87)とが全閉状態となる。また、第1室外ファン(85)と第2室外ファン(89)とが停止状態となる。
圧縮機(80)で圧縮された冷媒は、第1吐出ライン(71)に送られ、再生熱交換器(65)を流れる。再生熱交換器(65)では、冷媒が空気へ放熱して凝縮する。再生熱交換器(65)で凝縮した冷媒は、第1膨張弁(81)でやや低い圧力まで減圧された後、再熱熱交換器(64)を流れる。再熱熱交換器(64)では、冷媒が空気へ放熱して凝縮する。再熱熱交換器(64)で凝縮した冷媒は、第2膨張弁(82)で低圧まで減圧されて気液分離器(90)を通過し、第1吸入ライン(73)に送られる。なお、第2膨張弁(82)の開度は、圧縮機(80)の吸入側の冷媒の過熱度によって制御される。
第1吸入ライン(73)に送られた冷媒は、外気冷却熱交換器(61)を流れる。外気冷却熱交換器(61)では、冷媒が空気から吸熱して蒸発する。外気冷却熱交換器(61)で蒸発した冷媒は、逆止弁(86)を通過した後に圧縮機(80)に吸入されて圧縮される。
〈除湿システムの運転動作〉
次いで、除湿システム(10)の運転動作について説明する。除湿システム(10)の運転時には、第1除湿ユニット(20)が第1動作と第2動作とを交互に行う。また、給気ファン(63)と排気ファン(66)とが運転される。
室外空気(OA)は、給気通路(40)の第1給気路(41)に流入する。この空気は、比較的高温高湿の空気である。第1給気路(41)を流れる空気は、第3除湿ユニット(60)の外気冷却熱交換器(61)によって冷却される。冷却時に空気中から発生した凝縮水は、ドレンパン(62)に回収される。第1動作では、外気冷却熱交換器(61)で冷却及び除湿された空気は、第1除湿ユニット(20)の第2吸着熱交換器(24)を通過する。第2吸着熱交換器(24)では、空気中の水分が吸着剤に吸着される。また、第2動作では、外気冷却熱交換器(61)で冷却及び除湿された空気は、第1除湿ユニット(20)の第1吸着熱交換器(22)で除湿される。
各吸着熱交換器(22,24)で吸着剤に水分が吸着されるときに発生する吸着熱は、吸着熱交換器(22,24)を流れる冷媒に与えられる。また、給気通路(40)を流れる空気は冷媒による冷却作用を受けるので、除湿されて湿度が低下するとともに冷却されて温度も低下する。
第1除湿ユニット(20)で除湿された空気は、第2給気路(42)を流れ、吸着ロータ(31)の第1吸着部(32)を通過する。その結果、この空気中の水分が吸着ロータ(31)の吸着剤に吸着される。吸着ロータ(31)で除湿された空気は、再熱熱交換器(64)で温度が調整された後、給気(SA)として室内へ供給される。室内の空気は、第1除湿ユニット(20)及び第2除湿ユニット(30)へ戻ることなく、直接的に排気(EA)として室外へ排出される。
第2給気路(42)を流れる空気の一部は、排気通路(50)に流入し、吸着ロータ(31)の第2吸着部(33)を通過する。その結果、この空気中の水分が吸着ロータ(31)の吸着剤に吸着される。第2吸着部(33)は高温の再生側空気が通過した再生部(34)が第1吸着部(32)へ移動する途中の段階であり、第2吸着部(33)に第2給気路(42)の空気が流れることにより、第2吸着部(33)が冷やされる作用も生じることになる。
吸着ロータ(31)の第2吸着部(33)で除湿された空気は、第2排気路(52)を流れて再生熱交換器(65)で加熱される。加熱された空気は、吸着ロータ(31)の再生部(34)を通過する。その結果、吸着ロータ(31)の吸着剤から空気中へ水分が脱離し、吸着剤が再生される。吸着ロータ(31)の再生に利用された空気は、第3排気路(53)を流れ、分岐路(55)から送られてくる空気と混合される。これにより、分岐路(55)から送られてくる空気のみを再生側の吸着熱交換器(22,24)へ流す場合に比べて、再生側空気の入口温度を上昇させることができる。
第1動作において、この空気は、第1除湿ユニット(20)の第1吸着熱交換器(22)を通過する。第1吸着熱交換器(22)では、吸着剤から空気中へ水分が脱離し、吸着剤が再生される。第1吸着熱交換器(22)の吸着剤の再生に利用された空気は、第4排気路(54)を流れ、排気(EA)として室外へ排出される。また、第2動作では、空気が第2吸着熱交換器(24)の吸着剤を再生した後、排気(EA)として室外へ排出される。このように、本実施形態では、吸着ロータ(31)を再生した後の空気が吸着熱交換器(22,24)の再生にも用いられる。
〈除湿システムの省エネルギー化〉
本実施形態では、二段目に冷媒回路の吸着熱交換器(22,24)を設けることで、空気の除湿と同時に冷却が可能になり、三段目の吸着ロータ(31)の前の冷却コイルが不要になる。
室外空気は、外気冷却熱交換器(61)を通過することにより温度と湿度が低下する。この空気は、吸着熱交換器(22,24)を通過することでさらに温度と湿度が低下する。この空気は、さらに吸着ロータ(31)を通過することにより、実質的に水蒸気を含まない低露点(約−50℃)の空気になって室内に供給される。
二段目の除湿ユニットとして吸着熱交換器(22,24)による吸着除湿を行うことにより、低露点の空気が得られると同時に乾球温度も下げることができる。直列に吸着ロータ(31)を並べる場合に比べて、達成の困難な理想的な除湿が可能となる。つまり、吸着熱交換器(22,24)で温度と湿度を下げておけば、空気が低温になっているために3段目の吸着ロータ(31)で発生する吸着熱が少なくなって温度上昇を抑えることができるうえ、吸着熱交換器(22,24)では製造上の問題から吸着面積を大きくしにくいのに対して吸着ロータ(31)では吸着面積を吸着熱交換器(22,24)よりも稼げるために除湿量も大きくなり、低湿度で低温の空気を得ることができる。
そして、従来の除湿システムでは、低露点空気(露点−50℃)を得るための再生温度は約140℃の高温が必要であったが、本実施形態のシステムでは、再生熱交換器(65)により加熱した60℃の空気を再生側空気として用いることにより、同様の低露点空気を得ることが可能となり、吸着ロータ(31)の再生に要するエネルギーを低減できる。吸着ロータ(31)を通過した空気は、分岐路(55)の空気と混合されて、吸着熱交換器(22,24)の再生に用いられる。
吸着ロータ(31)の再生温度を下げることは、2段目に設置した吸着熱交換器(22,24)で除湿した低露点の空気を用いることで達成することが可能となったものである。言い換えると、吸着ロータ(31)に低露点の空気を供給するようにしているので、上述したように水分を多く吸着して低湿度にしても吸着熱がほとんど発生せず、再生温度を下げることができる。また、再生温度が60℃になるため、再生の熱源にヒートポンプで加熱する対応が従来は実現が困難であったのに対し、その実現が可能となる。
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、室外空気が吸着熱交換器(22,24)と吸着ロータ(31)との順で除湿された後に調湿空間(S)へ供給され、調湿空間(S)の空気が直接的に室外へ排出されるようにしたので、調湿空間(S)の空気を第1除湿ユニット(20)及び第2除湿ユニット(30)へ戻さないようにすることができる。
また、吸着熱交換器(22,24)を前段側に配置し、吸着ロータ(31)を後段側に配置するようにしたので、前段側に吸着ロータを配置する場合に比べて、後段側の吸着ロータ(31)へ低温で低露点の処理側空気を供給することができる。これにより、後段側の吸着ロータ(31)で水分を多く吸着して湿度を下げても吸着熱がほとんど発生しないから、吸着ロータ(31)の温度上昇が抑えられる。この結果、後段側の吸着ロータ(31)の再生側空気の温度を下げることができ、再生熱交換器(65)の入力を下げることができる。
以上より、調湿空間(S)の空気が汚染された場合に、その汚染された空気を循環させずに室外へ排出しながら、吸着ロータ(31)の再生側空気の温度をできるだけ低くすることにより、除湿システム(10)の省エネルギー化を図ることができる。
また、本実施形態によれば、給気通路(40)を流れる処理側空気の一部が排気通路(50)を通じて、再生側の吸着熱交換器(22,24)及び吸着ロータ(31)の再生部(34)へ供給されるようにしたので、調湿空間(S)の空気を排気通路(50)へ戻さなくてもよくなる。このことから、除湿ユニット(20,30)において、万一、排気通路(50)から給気通路(40)へ再生側空気が洩れた場合でも、汚染された調湿空間(S)の空気が排気通路(50)へ供給されないので、調湿空間(S)の汚染された空気が給気通路(40)を通じて調湿空間(S)へ戻ることがない。
また、本実施形態によれば、再生熱交換器(65)で加熱された再生側空気が吸着ロータ(31)の再生部(34)と再生側の吸着熱交換器(22,24)との順で排気通路(50)を流れるようにしたので、室外から取り込んだ空気を直接的に再生側の吸着熱交換器(22,24)へ流す場合に比べて、凝縮器となる再生側の吸着熱交換器(22,24)の再生側空気の入口温度を高くすることができる。これにより、冷凍サイクルの冷媒回路(20a)の高圧圧力を高い状態で維持することができ、再生側の吸着熱交換器(22,24)の再生能力を向上させることができるとともに、蒸発器となる吸着側の吸着熱交換器(22,24)に低温の処理側空気が供給された場合でも、冷媒回路(20a)の低圧圧力異常又は蒸発器となる吸着側の吸着熱交換器(22,24)の氷結等が起きないようにすることができる。
また、再生熱交換器(65)で加熱された再生側空気が吸着ロータ(31)の再生部(34)と再生側の吸着熱交換器(22,24)との順で排気通路(50)を流れるようにしたので、吸着ロータ(31)の再生部(34)から流出した再生側空気を全て室外へ排出する場合に比べて、除湿システムの効率を上げることができる。
つまり、吸着ロータ(31)の再生部(34)から流出した再生側空気を室外へ流出させてしまうと、再生側の吸着熱交換器(22,24)へ供給される空気の風量を保つため、除湿システムへ室外空気を多く取り込まなければならず、室外空気の量が多くなると、外気冷却熱交換器(61)の消費エネルギが増加する分だけ、除湿システムの効率が下がってしまう。また、吸着ロータ(31)の再生部(34)から流出した再生側空気を室外へ流出させてしまうと、吸着ロータ(31)の再生側空気の温度よりも低い空気(外気冷却熱交換器(61)の出口空気)を再生側の吸着熱交換器(22,24)へ供給しなければならず、再生側の吸着熱交換器(22,24)の再生能力が低下して、除湿システムの効率が下がってしまう。
しかしながら、本実施形態の除湿システムでは、吸着ロータ(31)の再生部(34)の再生側空気を再生側の吸着熱交換器(22,24)へ供給することにより、除湿システムの効率を向上させることができる。
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
本実施形態では、再生側の吸着熱交換器(22,24)へ外気冷却熱交換器(61)で除湿した空気を供給し、吸着ロータ(31)の再生部(34)へ吸着側の吸着熱交換器(22,24)で除湿した空気を供給していたが、これに限定されず、例えば、室外から取り込んだ空気を直接的に再生側の吸着熱交換器(22,24)と吸着ロータ(31)の再生部(34)とに供給するようにしてもよい。この場合であっても、本実施形態と同様に、調湿空間(S)の空気を排気通路(50)へ戻さなくてもよくなり、万一、排気通路(50)から給気通路(40)へ再生側空気が洩れた場合でも、汚染された調湿空間(S)の空気が排気通路(50)へ供給されないので、調湿空間(S)の汚染された空気が給気通路(40)を通じて調湿空間(S)へ戻ることがない。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。