以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態に係る画像形成装置1の一例の概念図である。
本実施の形態の画像形成装置1は、例えばタンデム型のカラープリンタであり、複数の作像ユニット20と、中間転写ベルト(像保持体の一例)30と、バックアップロール41および二次転写ロール(転写手段の一例)42の対と、用紙供給トレイ50a,50bと、用紙搬送系60と、定着装置70とを備えている。
作像ユニット20は、例えばイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色のトナー像を形成する4つのカラー用の作像ユニット20Y,20M,20C,20Kと、例えば透明色のトナー像を転写する透明色用の作像ユニット20CL,20CLとを備えており、各色の画像情報に応じて形成したトナー像を中間転写ベルト30に一次転写するようになっている。
これら6基の作像ユニット20CL,20Y、20M、20C、20Kは中間転写ベルト30の回転方向に沿って透明色、透明色、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色の順に配置されている。なお、透明色に代えて、例えばライトイエロー、ライトマゼンタ、ライトシアンまたはライトブラックのような淡色のトナー像を転写する淡色用の作像ユニットを設けても良い。また、透明色用の作像ユニット20CLと淡色用の作像ユニットとの両方を並べて設けても良い。
各作像ユニット20は、感光体ドラム21と、感光体ドラム21の表面を規定の電位に帯電させる帯電装置22と、帯電された感光体ドラム21上にレーザ光Lを照射して静電潜像を形成する露光装置23と、露光装置23により感光体ドラム21上に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置24と、感光体ドラム21上のトナー像を一次転写部において中間転写ベルト30に転写する一次転写ロール25と、トナー像を転写した後の感光体ドラム21の表面から残留トナーや紙粉を除去するドラムクリーナ26とを備えている。なお、各作像ユニット20の上方には、現像装置24に現像剤を供給するトナーカートリッジ27が設置されている。
各作像ユニット20の一次転写ロール25は、各感光体ドラム21との間に中間転写ベルト30を挟むようにして配置されている。そして、各一次転写ロール25にトナーの帯電電極に対して逆極性の転写バイアス電圧が印加されることにより、感光体ドラム21と一次転写ロール25との間に電界が形成され、感光体ドラム21上で電荷を帯びているトナー像がクーロン力により中間転写ベルト30に転写されるようになっている。なお、感光体ドラム21は一次転写に際して時計回りの方向に回転する。
上記中間転写ベルト30は、各作像ユニット20により形成された各色成分のトナー像が順次転写(一次転写)され保持される部材である。この中間転写ベルト30は、複数の支持ロール31a〜31fおよびバックアップロール41に掛け渡された状態で無端状に形成されており、反時計回りの周方向に回転しながら各色の作像ユニット20CL,20Y,20M,20C,20Kで形成されたトナー像の一次転写を受けるようになっている。
上記バックアップロール41および二次転写ロール42の対は、中間転写ベルト30上に多重転写されたトナー像を用紙(記録媒体の一例)等に一括転写(二次転写)してフルカラー画像を形成するための機構部であり、中間転写ベルト30を挟んで互いに対向した状態で配置されている。バックアップロール41と、二次転写ロール42との対向部が二次転写部になっている。
バックアップロール41は、中間転写ベルト30の裏面側に回転自在に設置され、二次転写ロール42は、中間転写ベルト30のトナー像転写面に対向した状態で回転自在に設置されている。バックアップロール41と二次転写ロール42とは、その各々の回転軸方向(図1紙面に垂直な方向)が互いに沿うように配置されている。
中間転写ベルト30のトナー像の転写においては、バックアップロール41にトナーの帯電極性と同極性の電圧を印加するか、または、二次転写ロール42にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加する。これにより、バックアップロール41と二次転写ロール42との間に転写電界が形成され、中間転写ベルト30上に保持された未定着トナー像が用紙上に転写される。
上記用紙供給トレイ50a,50bには、各種のサイズおよび厚さの用紙等が収容されている。用紙供給トレイ50a,50b内の用紙は、用紙搬送系60のピックアップロール(図示せず)により引き出された後、用紙搬送系60のレジストロール62によりタイミングが制御され二次転写部に導入されてトナー像が転写され、さらにその後、用紙搬送系60の搬送ベルト63,64を通じて定着装置70へと搬送される。
定着装置70は、二次転写部において用紙等に転写された未定着のトナー像を熱圧着により用紙に定着させる装置であり、定着ロール(第1の加熱手段の一例)71と、これに対向する位置に設けられた加圧ロール(加圧手段の一例)72と、それらの間の定着ニップ部Nを通過するように設けられた定着ベルト(加熱部材の一例)73とを備えている。
二次転写後の用紙は、定着ロール71と加圧ロール72との対向間の定着ニップ部Nに搬送され、定着ベルト73と加圧ロール72とに挟まれた状態で排出される。この時、用紙等が定着ロール71および定着ベルト73により加熱されるとともに、加圧ロール72により加圧されることにより、トナー像が用紙等に定着される。この定着装置70を通過した用紙等は、搬送ベルト65を通じて排出ロール(図示せず)に送られ、画像形成装置1の外部に排出されるようになっている。
次に、図2は図1の定着装置70の一例の概念図を示している。
定着装置70は、上記した定着ロール71、加圧ロール72および定着ベルト73の他に、剥離パッド74、内部加熱ロール(第2の加熱手段の一例)75、外部加熱ロール(第3の加熱手段の一例)76、支持ロール77a,77bおよび冷却ファン78を備えている。
定着ロール71は、例えばアルミニウム、鉄またはステンレスのような金属により形成された円筒状ロールである。この定着ロール71と加圧ロール72との間に第1の定着ニップ部N1が形成される。なお、定着ロール71の熱容量は内部加熱ロール75および外部加熱ロール76の熱容量よりも大きい。
この定着ロール71の筒内には、例えば、ハロゲンランプのような加熱源71Lが3本設置されており、この加熱源71Lにより定着ロール71が予め設定された温度になるように加熱され、その定着ロール71により用紙Pおよび定着ベルト73が予め設定された温度になるように加熱される。
ただし、加熱源71Lの本数は、2本以下または4本以上でも良い。また、用紙Pのサイズに応じて最適な温度分布が形成されるように発熱量が異なる加熱源71Lを複数本配置し、それらの加熱源71Lを用紙Pのサイズに応じて使い分けても良い。また、用紙Pの幅方向(図2紙面に垂直な方向)の中央と端部とで温度差が生じる場合には、用紙Pの面内温度が均一になるように用紙Pの幅方向の中央と端部との各々に対応するように加熱源71Lを配置しても良い。
また、定着ロール71の外周には、定着ロール71の温度を検出する温度検出センサ71Sが定着ロール71の外周に接触した状態で設置されている。この温度検出センサ71Sは、例えばサーミスタからなり、定着ロール71の長手方向(図2紙面に対して垂直な方向)の中央に配置されている。ただし、温度検出センサ71Sを定着ロール71の長手方向の両端(非通紙領域)に配置しても良い。
また、定着ロール71は、加圧ロール72および定着ベルト73を回転駆動する機能を備えており、回転駆動モータ(図示せず)からの回転駆動力を受けて反時計回りの方向に回転自在の状態で設置されている。この定着ロール71の回転により用紙Pが搬送されるとともに、加圧ロール72および定着ベルト73が回転(従動)するようになっている。
この定着ロール71の横(用紙Pの搬送下流側)には、上記した剥離パッド74が定着ロール71の軸方向全域に隣接した状態で設置されている。剥離パッド74は、定着処理後の用紙Pを定着ベルト73から剥離する機能を備えている。また、剥離パッド74と加圧ロール72との間に第2の定着ニップ部N2が形成されている。すなわち、定着装置70の定着ニップ部Nは、第1の定着ニップ部N1と第2の定着ニップ部N2とで構成されており、剥離パッド74が無い場合よりも定着ニップ部Nが長くなっている。
このような定着ロール71および剥離パッド74と定着ベルト73との間には、オイルが介在されている。これにより、定着ロール71および剥離パッド74と定着ベルト73との接触抵抗が低減されるので、定着ベルト73の回転移動が滑らかになる。また、そのため、定着ロール71および剥離パッド74と定着ベルト73との接触に起因する定着ベルト73の損傷が抑制または防止される。
上記した加圧ロール72は、中空円筒状の芯金72Aと、その外周を覆う弾性層72Bと、その弾性層72Bの外周を覆う離型層72Cとを備えている。芯金72Aは、例えばアルミニウム、鉄またはステンレス等のような金属からなり、弾性層72Bは、例えばシリコーンゴムのような耐熱性を有する絶縁材料からなり、離型層72Cは、例えばフッ素系の樹脂からなる。
この加圧ロール72は、定着ロール71に近づく方向および定着ロール71から離れる方向に移動自在の状態で設置されており、定着処理に際しては弾性部材(バネ等)により定着ロール71に押しつけられるようになっている。これにより、定着ロール71および剥離パッド74と加圧ロール72との対向間に上記した第1、第2の定着ニップ部N1,N2が形成される。
また、加圧ロール72の外周には、加圧ロール72の温度を検出する温度検出センサ72Sが加圧ロール72の外周に接触した状態で設置されている。この温度検出センサ72Sは、例えばサーミスタからなり、加圧ロール72の長手方向(図2紙面に対して垂直な方向)の中央に配置されている。ただし、温度検出センサ72Sを加圧ロール72の長手方向の両端(非通紙領域)に配置しても良い。
上記した定着ベルト73は、例えばポリイミド樹脂のような耐熱性絶縁基材上に、例えばフッ素系の樹脂からなる離型層が積層された無端状ベルトからなり、定着ロール71と、内部加熱ロール75と、支持ロール77a,77bに掛け渡された状態で周方向(反時計回りの方向)に回転自在に設けられている。
この定着ベルト73は、上記した第1、第2の定着ニップ部N1,N2を通過するように掛け渡されている。第1、第2の定着ニップ部N1,N2に搬送された用紙Pは、定着ベルト73と加圧ロール72に挟まれた状態で定着ロール71および定着ベルト73により加熱されるとともに加圧ロール72により加圧される。これにより、用紙Pの未定着のトナー像は、用紙Pに定着される。なお、用紙Pのトナー像の形成面には定着ベルト73の外周面(離型層)が接するようになっている。
定着ベルト73を用いず定着ロール71のみで用紙を加熱する場合、定着処理時に定着ロール71の熱が用紙Pに奪われ定着ロール71の加熱温度が低下するが、定着ロール71の熱容量が大きいので再び必要な温度まで上げるのに時間がかかる結果、続く用紙Pの定着処理時に用紙Pに対する加熱温度が低下してしまう。
これに対して定着ベルト73を用いた場合、定着ベルト73は定着ロール71よりも熱容量が小さいので必要な温度まで速く昇温される。このため、続く用紙Pの定着処理時に用紙Pに対する加熱温度の低下が抑制される。また、定着ベルト73を用いた場合、用紙Pの搬送方向の長さよりもベルト長さを長くとれるので、用紙Pの搬送方向全域に渡り加熱温度が均一になるように加熱される。このため、光沢段差の発生も抑制または防止される。
上記した内部加熱ロール75は、例えばアルミニウム、鉄またはステンレスのような金属により形成された円筒状ロールであり、定着ロール71および外部加熱ロール76よりも加圧ロール72から離れた位置に定着ベルト73の回転に従動するように回転自在の状態で設置されている。なお、内部加熱ロール75の熱容量は外部加熱ロール76の熱容量よりも大きい。
この内部加熱ロール75の筒内には、例えばハロゲンランプ等のような加熱源75Lが4本設置されており、この加熱源75Lにより内部加熱ロール75が予め設定された温度になるように加熱され、その内部加熱ロール75により定着ベルト73が予め設定された温度になるように定着ベルト73の内周面側から加熱される。
ただし、加熱源75Lの本数は、3本以下または5本以上でも良い。また、用紙Pのサイズに応じて最適な温度分布が形成されるように発熱量が異なる加熱源75Lを複数本配置し、それらの加熱源75Lを用紙Pのサイズに応じて使い分けても良い。また、用紙Pの幅方向(図2紙面に垂直な方向)の中央と端部とで温度差が生じる場合には、用紙Pの面内温度が均一になるように用紙Pの幅方向の中央と端部との各々に対応するように加熱源75Lを配置しても良い。
また、内部加熱ロール75の外周には、内部加熱ロール75の温度を検出する温度検出センサ75Sが内部加熱ロール75の外周に接触した状態で設置されている。この温度検出センサ75Sは、例えばサーミスタからなり、内部加熱ロール75の長手方向(図2紙面に対して垂直な方向)の中央に配置されている。ただし、温度検出センサ75Sを内部加熱ロール75の長手方向の両端(非通紙領域)に配置しても良い。
上記した外部加熱ロール76は、例えばアルミニウム、鉄またはステンレスのような金属により形成された円筒状ロールであり、定着ロール71と内部加熱ロール75との間であって定着ベルト73の枠外に定着ベルト73を枠内側に押し込むように接触した状態で設置されている。また、外部加熱ロール76も定着ベルト73の回転に従動するように回転自在の状態で設置されている。
この外部加熱ロール76の筒内には、例えばハロゲンランプ等のような加熱源76Lが3本設置されており、この加熱源76Lにより外部加熱ロール76が予め設定された温度になるように加熱され、その外部加熱ロール76により定着ベルト73が予め設定された温度になるように定着ベルト73の外周面側から加熱される。
ただし、加熱源76Lの本数は、2本以下または4本以上でも良い。また、用紙Pのサイズに応じて最適な温度分布が形成されるように発熱量が異なる加熱源76Lを複数本配置し、それらの加熱源76Lを用紙Pのサイズに応じて使い分けても良い。また、用紙Pの幅方向(図2紙面に垂直な方向)の中央と端部とで温度差が生じる場合には、用紙Pの面内温度が均一になるように用紙Pの幅方向の中央と端部との各々に対応するように加熱源76Lを配置しても良い。
また、外部加熱ロール76の外周には、外部加熱ロール76の温度を検出する温度検出センサ76Sが外部加熱ロール76の外周に接触した状態で設置されている。この温度検出センサ76Sは、例えばサーミスタからなり、外部加熱ロール76の長手方向(図2紙面に対して垂直な方向)の中央に配置されている。ただし、温度検出センサ76Sを外部加熱ロール76の長手方向の両端(非通紙領域)に配置しても良い。
次に、図3は、上記した画像形成装置1の要部の回路ブロック図を示している。
CPU(Central Processing Unit:制御手段の一例)は、画像形成装置1の画像処理を制御する装置である。CPUには、メモリMEが電気的に接続されている他、上記した加熱源71L,75L,76Lに対して電力を供給する電力供給源71LG,75LG,76LGや上記した温度検出センサ71S,75S,76S等が電気的に接続されている。
定着処理に際しては、各温度検出センサ71S,75S,76Sで検出された温度の情報は、CPUに送られる。CPUでは、その温度情報に基づいて、電力供給源71LG,75LG,76LGを後述のように制御することにより、定着ロール71、内部加熱ロール75および外部加熱ロール76の各々の温度が予め決められた温度に設定されるようになっている。
次に、図4は用紙Pが定着装置70を通過した後の定着ベルト73の予め決められた位置の温度の推移を示し、図5は本実施の形態の画像形成装置1における定着装置70の定着ロール71、内部加熱ロール75および外部加熱ロール76の各種パラメータを示している。なお、図4の符号Rは定着ベルト73の1回転分を示している。
図4に示すように、定着ベルト73の温度は、定着ロール71の定着ニップ部Nで急激に下がり、定着ニップ部Nを通過したところから上昇し始め、外部加熱ロール76の位置で高くなり、外部加熱ロール76を通過したところで再び若干下がり始め、内部加熱ロール75で再び上昇し始めるように推移する。
ここで、定着処理に際して、定着ベルト73に対する熱の供給効率を考えた場合、用紙Pが搬送される定着ニップ部Nにある定着ロール71の加熱源71Lに供給される電力を最も高くして定着ロール71の温度を最も高くすれば定着ベルト73に対する熱の供給効率が向上するように考えられる。しかし、実際は、高速処理をしているので、定着ニップ部Nで定着ロール71から定着ベルト73に熱を加えても定着ベルト73の表面温度が確保される前に用紙Pが通過してしまう。
そこで、本実施の形態においてCPU(図3参照)は、定着処理に際して、定着ロール71、内部加熱ロール75および外部加熱ロール76のうち、定着ロール71の加熱源71Lに供給する電力が最も低くなるように制御するようになっている。これにより、加熱源71L,75L,76Lの全体に供給される総電力は決まっているので、図5(ランプ出力)に示すように、定着ベルト73を加熱するのに適した内部加熱ロール75および外部加熱ロール76に供給される電力を増やせる。このため、定着ベルト73に対する熱供給効率が向上する。したがって、定着ベルト73の温度の低下が抑制または防止される。
次に、定着ベルト73に対して熱を効率的に供給するには、定着ベルト73とロール(定着ロール71、内部加熱ロール75および外部加熱ロール76)との接触面積(ラップ量)が大きく、定着ベルト73との温度差が大きい位置のロールの加熱源に対する供給電力を大きくすることが好ましい。
ここで、図4に示すように、外部加熱ロール76の手前の位置が定着ベルト73との温度差が大きいので外部加熱ロール76の加熱源76Lに対する供給電力を大きくすることが好ましいと考えられる。しかし、図4および図5(ラップ量)に示すように、外部加熱ロール76は、定着ベルト73との接触面積(ラップ量)が、内部加熱ロール75に比べて小さい。これは、定着装置70の構造上、外部加熱ロール76が他の構成に邪魔され定着ベルト73の枠内に深く押し込められない等の理由からである。
そこで、本実施の形態においてCPUは、定着処理に際して、定着ベルト73とのラップ量の大きい内部加熱ロール75の加熱源75Lに対する供給電力が最も大きくなるように制御するようになっている。これにより、図5(ランプ出力)に示すように、定着ベルト73を加熱するのに適した内部加熱ロール75に供給される電力を増やせる。このため、定着ベルト73に対する熱供給効率が向上する。したがって、定着ベルト73の温度の低下が抑制または防止される。
また、例えば定着ベルト73の外周面(用紙Pのトナー像の形成面に接する側の面)においては用紙Pが接触した箇所と、用紙Pが接触しない用紙隣接箇所とで温度差が生じている。このため、用紙Pのトナー像の形成面内に光沢段差が生じる場合がある。
そこで、本実施の形態においてCPUは、図4および図5(対ベルト設定温度の温度差)に示すように、外部加熱ロール76の手前で定着温度に対する定着ベルト73の温度差が大きいので、図5の設定温度に示すように、定着ロール71、内部加熱ロール75および外部加熱ロール76のうち、外部加熱ロール76の温度が最も高くなるように制御するようになっている。そして、図5のランプ出力に示すように、外部加熱ロール76の加熱源76Lに対する供給電力を2番目に高くする。このように外部加熱ロール76の温度を高くして、外部加熱ロール76により定着ベルト73の外周面側から熱を供給することにより、定着ベルト73の外周面の用紙Pの接した箇所と用紙隣接箇所との温度差を小さくすることができるので、用紙Pでの光沢段差が抑制または防止される。
さらに、定着ロール71の温度が定着ベルト73の温度よりも低いと定着ベルト73の熱が定着ロール71に移ってしまい定着ベルト73が効率的に加熱されない。そこで、本実施の形態においてCPUは、定着処理に際して、定着ロール71の温度を定着ベルト73の温度以上になるように制御する。これにより、定着ベルト73の熱が定着ロール71に逃げてしまうことが防止されるので、定着ベルト73に対する熱供給効率が向上する。したがって、定着ベルト73の温度の低下が抑制または防止される。
次に、定着装置70の定着動作の一例について図1および図2等を参照して説明する。
画像形成装置1の二次転写部においてトナー像が静電転写された用紙Pは、搬送ベルト64を通じて定着装置70の定着ニップ部Nに搬送される。そして、定着ニップ部Nを通過する用紙Pの表面の未定着のトナー像は、主に第1の定着ニップ部N1に作用する熱および圧力により用紙Pに定着される。
第1の定着ニップ部N1で作用する熱は、主に定着ベルト73によって用紙Pに供給される。定着ベルト73は、定着ロール71内の加熱源71Lから定着ロール71を介して供給される熱と、外部加熱ロール76の加熱源76Lから外部加熱ロール76を介して供給される熱と、内部加熱ロール75の加熱源75Lから内部加熱ロール75を介して供給される熱とによって加熱される。
これにより、第1の定着ニップ部N1において、定着ロール71、内部加熱ロール75および外部加熱ロール76の3つの加熱ロールから用紙Pに対して熱エネルギーが供給されるので、高速処理でも充分な熱量が確保される。
また、定着ベルト73は、定着ロール71等よりも熱容量が極めて小さい。しかも、定着ベルト73は、定着ロール71、内部加熱ロール75および外部加熱ロール76のそれぞれに対して広いラップ面積(大きなラップ角度)で接触される。このため、定着ベルト73が1回転する短い期間に、定着ロール71、内部加熱ロール75および外部加熱ロール76から充分な熱量が定着ベルト73に供給されるので、定着ベルト73の温度は必要な定着温度に短時間で復帰される。これにより、第1の定着ニップ部N1においては、予め定められた定着温度が維持される。
したがって、本実施の形態の定着装置70においては、高速で連続通紙されても必要な定着温度が維持される。また、高速での定着動作の開始時に定着温度が落ち込む現象、いわゆる温度ドループ現象の発生が抑制される。特に熱容量の大きな厚紙等に対する定着温度においても、定着温度の維持および温度ドループ現象の発生が抑制され、さらには、紙種に対応させて定着温度を途中で上昇または下降に切り替える必要がある場合でも、定着ベルト73の熱容量が小さいので、加熱源71L,75L,76Lの出力調整により定着温度の切り替えが容易となる。
また、定着ロール71はアルミニウム等で形成され、加圧ロール72は弾性層を有する構成とされているため、第1の定着ニップ部N1では、定着ロール71は殆ど撓まず、加圧ロール72の表面が撓むことによって定着ベルト73の進行方向に幅を持った定着ニップ部が形成される。このため、第1の定着ニップ部N1では、定着ベルト73がラップされている側の定着ロール71が殆ど変形しない。そのため、定着ベルト73は移動速度を予め設定された速度に維持しながら第1の定着ニップ部N1を通過する。これにより、第1の定着ニップ部N1において定着ベルト73にシワや歪みが生じることが抑制されるので、良質で安定した定着画像が得られる。
また、本実施の形態においては、定着処理に際して、定着ロール71、内部加熱ロール75および外部加熱ロール76のうち、定着ロール71の加熱源71Lに供給する電力が最も低くなるように制御される。これにより、定着ベルト73への熱供給効率が向上する。したがって、定着ベルト73の温度の低下が抑制または防止される。
また、本実施の形態においては、定着処理に際して、定着ベルト73とのラップ量の大きい内部加熱ロール75の加熱源75Lに対する供給電力が最も大きくなるように制御される。これにより、定着ベルト73に対する熱供給効率が向上する。したがって、定着ベルト73の温度の低下が抑制または防止される。
また、本実施の形態においては、定着処理に際して、定着ロール71、内部加熱ロール75および外部加熱ロール76のうち、外部加熱ロールの温度が最も高くなるように制御される。そして、外部加熱ロール76の加熱源76Lに対する供給電力が2番目に高くなるように制御される。これにより、用紙Pでの光沢段差が抑制または防止される。
さらに、本実施の形態においては、定着処理に際して、定着ロール71の温度が定着ベルト73の温度以上になるように制御される。これにより、定着ベルト73への熱供給がさらに効率的に行われる。したがって、定着ベルト73の温度の低下が抑制または防止される。
続いて、第1の定着ニップ部N1を通過した用紙Pは、第2の定着ニップ部N2に搬送される。第2の定着ニップ部N2では、加圧ロール72が定着ベルト73を介して剥離パッド74に押し付けられている。このため、上記第1の定着ニップ部N1の形状は、定着ロール71の曲率により下に凸の湾曲状であるのに対し、第2の定着ニップ部N2の形状は加圧ロール72の曲率により上に凸の湾曲状である。
このため、第1の定着ニップ部N1において定着ロール71の曲率のもとで加熱および加圧された用紙Pは、第2の定着ニップ部N2において加圧ロール72による相反する方向に向いた曲率に進行方向が変化させられる。その際、用紙P上のトナー像と定着ベルト73の外周面との間で微少なマイクロスリップが生じる。これにより、トナー像と定着ベルト73との付着力が弱められ、用紙Pは定着ベルト73から剥離され易い状態とされる。このように第2の定着ニップ部N2は、最終の剥離工程で確実に剥離が行われるための準備段階にもなっている。
第2の定着ニップ部N2の出口では、定着ベルト73が剥離パッド74に巻き付くように搬送されるので、定着ベルト73の搬送方向はそこで急激に変化する。すなわち、定着ベルト73は、剥離パッド74の外側面に沿って移動するため、定着ベルト73の屈曲は大きなものとなる。そのため、第2の定着ニップ部N2において、定着ベルト73との付着力が弱められた用紙Pは、用紙P自身の弾力(コシ)によって定着ベルト73から分離される。定着ベルト73から剥離された用紙Pは、搬送ベルト65等を通じて冷却ユニット(図示せず)に向けて搬送される。
(第2の実施の形態)
図6は本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置1の定着装置70の概念図を示している。
本実施の形態の定着装置70においては、上記した定着ロール71および剥離パッド74に代えて定着パッド71pが設置されている。この定着パッド71pと加圧ロール72との間に定着ニップ部Nが形成される。この場合、定着ニップ部Nに変曲点がないので画像ずれが抑制または防止される。このため、画質欠陥が抑制または防止される。
定着パッド71pは、例えばアルミニウム、鉄またはステンレスのような金属により形成されている。ただし、定着パッド71pにおいて定着ベルト73との接触面に摺動負荷を下げるための滑りシートを設けても良い。また、その場合、定着ベルト73内のオイル供給部材を通じて定着ベルト73の内面と滑りシートの表面との間に微少オイルが供給される。
この定着パッド71pの筒内には、例えばハロゲンランプ等のような加熱源71pLが1本設置されており、この加熱源71pLにより定着パッド71pが予め設定された温度になるように加熱され、その定着パッド71pにより用紙Pおよび定着ベルト73が予め設定された温度になるように加熱される。
ただし、加熱源71pLの本数は、2本以上でも良い。また、用紙Pのサイズに応じて最適な温度分布が形成されるように発熱量が異なる加熱源71pLを複数本配置し、それらの加熱源71pLを用紙Pのサイズに応じて使い分けても良い。また、用紙Pの幅方向(図2紙面に垂直な方向)の中央と端部とで温度差が生じる場合には、用紙Pの面内温度が均一になるように用紙Pの幅方向の中央と端部との各々に対応するように加熱源71pLを配置しても良い。
また、定着パッド71pの外周には、定着パッド71pの温度を検出する温度検出センサ71pSが定着パッド71pの外周に接触した状態で設置されている。この温度検出センサ71pSは、例えばサーミスタからなり、定着パッド71pの長手方向(図2紙面に対して垂直な方向)の中央に配置されている。ただし、温度検出センサ71pSを定着パッド71pの長手方向の両端(非通紙領域)に配置しても良い。
この場合、加圧ロール72が、定着ベルト73の回転駆動源になっており、回転駆動モータ等のような回転駆動体により時計回りの方向に回転自在に設置されている。すなわち、加圧ロール72の回転により、用紙Pが下流に搬送されるとともに、定着ベルト73が周方向(反時計回りの方向)に回転(従動)するようになっている。そして、この定着ベルト73の回転により内部加熱ロール75および外部加熱ロール76が回転(従動)するようになっている。
定着処理に際しては、定着パッド71p、内部加熱ロール75および外部加熱ロール76のうち、定着パッド71pの加熱源71pLに供給する電力が最も低くなるように制御される。これにより、前記第1の実施の形態と同様に、定着ベルト73に対する熱供給効率が向上する。したがって、定着ベルト73の温度の低下が抑制または防止される。
また、定着処理に際しては、定着ベルト73とのラップ量の大きい内部加熱ロール75の加熱源75Lに対する供給電力が最も大きくなるように制御される。これにより、定着ベルト73に対する熱供給効率が向上する。したがって、定着ベルト73の温度の低下が抑制または防止される。
また、定着処理に際しては、定着パッド71p、内部加熱ロール75および外部加熱ロール76のうち、外部加熱ロール76の温度が最も高くなるように制御される。また、外部加熱ロール76の電力が2番目になるように制御される。これにより、前記第1の実施の形態と同様に、用紙Pでの光沢段差が抑制または防止される。
さらに、定着処理に際しては、定着パッド71pの温度が定着ベルト73の温度以上になるように制御される。これにより、前記第1の実施の形態と同様に、定着ベルト73に対する熱供給効率が向上する。したがって、定着ベルト73の温度の低下が抑制または防止される。
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではないと考えるべきである。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
例えば、前記実施の形態においては、中間転写ベルトに転写されたトナー像を用紙に転写する中間転写方式の画像形成装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、感光体ドラム(像保持体の一例)のトナー像を用紙等に直接転写する直接転写方式の画像形成装置に適用しても良い。
また、前記実施の形態においては、カラー画像を形成する場合について説明したが、例えばモノクロ画像を形成する場合に適用しても良い。
また、前記実施の形態においては、記録媒体として用紙に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、フィルム、はがき等、画像が形成される様々なものに適用しても良い。