JP6044975B2 - 半導体素子用エピタキシャル基板および半導体素子用エピタキシャル基板の作製方法 - Google Patents

半導体素子用エピタキシャル基板および半導体素子用エピタキシャル基板の作製方法 Download PDF

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Description

本発明は、半導体素子用のエピタキシャル基板に関し、特に、III族窒化物からなるエピタキシャル基板に関する。
AlNとGaNとの混晶であるAlGaNは、両者の混晶組成比に応じてバンドギャップが3.4eV〜6.2eVの間で変化する。係るAlGaNを用いて機能層を形成すれば、動作波長範囲が365nm〜210nmの紫外領域であるLED(発光ダイオード)やLD(レーザーダイオード)その他の受発光素子(光デバイス)を実現できる可能性がある。係る場合においては、AlGaNが高Al組成であるほど、動作波長は小さくなる。
このような紫外領域で機能する高効率のLEDやLDなどの光デバイス(紫外デバイス)を実現するには、AlGaNからなる発光層等の機能層形成用の下地基板として、高品質な単結晶基板を用いる必要がある。
青色〜青紫色で発光するLDや高効率のLEDの場合であれば、下地基板にGaN単結晶基板を用いることが可能である。GaN単結晶基板は、ハロゲン化物を用いた気相成長法であるHVPE(Hydride Vapor Epitaxy)法にて所定の単結晶基材の上にGaN層をエピタキシャル形成することによって作成された、結晶欠陥の少ないエピタキシャル基板である。
しかしながら、係るGaN単結晶基板の上に高Al組成のAlGaN層を形成した場合、GaNの格子定数がAlGaNの格子定数よりも大きいためにAlGaN層に引張応力が作用し、クラックの発生や結晶品質の劣化が生じる。すなわち、GaN単結晶基板は紫外デバイスの下地基板としては不適当である。
係るGaN単結晶基板に代わって着目されているのが、AlN単結晶基板である。これは、AlNがAlGaNよりも格子定数が小さいので、AlN単結晶基板上に形成したAlGaN層には圧縮応力が作用しクラックの発生が防げる、という理由や、AlGaNのバンドギャップよりもAlNのバンドギャップの方が大きいので、AlGaN層での発光をAlNが吸収することがなく、デバイス構造上有利である、といった理由による。
また、AlNは高い熱伝導性を持つことから、AlN単結晶基板は、光デバイスへの適用のみならず、高周波パワーアンプ用トランジスタや、電力制御用トランジスタなどの電子デバイスへの適用にも期待されている。
AlN単結晶基板は、自立基板として使用されるのが好ましいが、これまで、AlNバルク結晶を得る手法が確立されているとはいえない。なお、大気圧下ではAlNは高温で分解することから、融液からの結晶成長は困難である。具体的な作製手法としては、GaN単結晶基板と同様のHVPE法のほか、昇華法やフラックス法なども試みられている。なお、GaN単結晶基板の場合はSiOマスクを用いたELO(Epitaxially Lateral Overgrowth)技術が適用可能であるが、AlNがSiOと反応してしまうことや成長条件による成長モードの変化が大きくないなどの理由から、AlN単結晶基板の作製にELO技術を適用することは困難である。
上述した手法のうち、HVPE法によるAlN単結晶基板の作製は、基板の大面積化が比較的容易であり、かつ、数十〜数百μm/hという高速成長が得られる点で期待されている。HVPE法によるAlN単結晶を実現させるための技術としては、種々のものが公知である(例えば、特許文献1、非特許文献1、および非特許文献2参照)。
特開2005−252248号公報
2006年春季第53回応用物理学関係連合講演会予稿集 25p-ZE-14. 387ページ "Low-pressure HVPE growth of crack-free thick AlN on a trench-patterned AlN template" Y.Katagiri,S.Kishino,K.Okuura,H.Miyake,K.Hiramatsu, Journal of Crystal Growth, 311(2009)2831-2833.
特許文献1および非特許文献1に開示されている手法には、基板とAlNとの熱膨張率の違いから降温時にAlN層に強い引張応力が作用し、該AlN層にクラックが発生してしまう問題がある。
非特許文献2に開示されている手法は、AlN層におけるクラック発生の抑制には効果があるが、AlN層における低転位領域の確保という点では必ずしも十分な効果が得られないという問題がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、従来よりも表面における転位密度が小さく低転位領域が広いAlN単結晶厚膜層を備える、半導体素子用のエピタキシャル基板を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項の発明は、半導体素子用のエピタキシャル基板であって、サファイア単結晶基材と、AlNからなり、前記サファイア単結晶基材の上に形成された下地層と、AlNからなり、前記下地層の上に形成された厚膜層と、を備え、前記下地層が、所定の間隔で離間しかつ同一の延在方向に沿って延在する三角柱状の複数の凸部を上部に有してなり、前記厚膜層の内部であって、水平面内において隣り合う前記凸部の形成位置の略中間となる複数の位置に、前記延在方向に沿って延在する三角柱状のボイドを有する、ことを特徴とする。
請求項の発明は、請求項1に記載の半導体素子用のエピタキシャル基板であって、前記厚膜層の表面においては、前記ボイドの上方に位置する領域が転位偏在領域となっており、前記転位偏在領域以外の領域が前記転位偏在領域よりも相対的に転位密度の小さい低転位領域となっている、ことを特徴とする。
請求項の発明は、請求項1または請求項に記載の半導体素子用のエピタキシャル基板であって、前記複数の凸部のピッチが1μm以上20μm以下である、ことを特徴とする。
請求項の発明は、請求項1ないし請求項のいずれかに記載の半導体素子用のエピタキシャル基板であって、前記延在方向がAlNの<1−100>方向である、ことを特徴とする。
請求項の発明は、請求項1ないし請求項のいずれかに記載の半導体素子用のエピタキシャル基板であって、前記ボイドにおいては、当該ボイドの断面三角形の頂点となる位置が前記厚膜層の内部における最上端部となっており、前記厚膜層の表面から前記頂点までの距離が1μm以上20μm以下であり、かつ、前記ボイドの底部が前記下地層にある前記複数の凸部の上端より上に位置してなる、ことを特徴とする。
請求項の発明は、半導体素子用エピタキシャル基板の作製方法であって、サファイア単結晶基材の上にAlNからなる平坦層をエピタキシャル成長させる平坦層形成工程と、マスクパターンを用いて前記平坦層をウェットエッチングすることによって、AlNからなり、所定の間隔で離間しかつ同一の延在方向に沿って延在する三角柱状の複数の凸部を上部に備える下地層を形成する下地層形成工程と、HVPE法によって前記下地層の上にAlNからなる厚膜層をエピタキシャル成長させる厚膜層形成工程と、を備え、前記厚膜層形成工程においては、前記厚膜層の内部であって水平面内において隣り合う前記凸部の形成位置の略中間となる複数の位置に、前記延在方向に沿って延在する三角柱状のボイドを形成させつつ、前記厚膜層を成長させる、ことを特徴とする。
請求項の発明は、請求項に記載の半導体素子用エピタキシャル基板の作製方法であって、前記厚膜層形成工程においては、金属AlとHClガスとを500℃以上550℃以下で反応させて塩化アルミニウムガスを生成する第1工程と、前記塩化アルミニウムガスとアンモニアガスとを、1100℃以上1700℃以下に加熱した前記下地層形成後の前記サファイア単結晶基材の近傍で反応させることによってAlNを生成させ、前記下地層の上に前記厚膜層をエピタキシャル成長させる第2工程とを、雰囲気圧力を1kPa以上100kPa以下に保った反応管内で行う、ことを特徴とする。
請求項の発明は、請求項6または請求項7に記載の半導体素子用エピタキシャル基板の作製方法であって、前記厚膜層形成工程においては、前記厚膜層の表面から前記厚膜層の内部における前記ボイドの最上端部である当該ボイドの断面三角形の頂点までの距離が1μm以上20μm以下であるように、かつ、前記ボイドの底部が前記下地層にある三角柱状の複数の前記凸部の上端より上に位置するように、前記厚膜層を成長させる、ことを特徴とする
請求項1ないし請求項の発明によれば、クラックフリーであり、表面における転位密度が低くかつ低転位領域が広いエピタキシャル基板さらにはAlN単結晶自立基板を得ることができる。
エピタキシャル基板10の構成を概略的に示す断面図である。 凸部2aの様子を示すSEM像である。 凸部2aの部分拡大断面図である。 下地層の構造の違いが転位に与える影響を示す図である。 下地層2を得るために行う加工手順i)〜x)を模式的に示す図である。 HVPE装置20の構成を概略的に示す図である。 成長用基板10αの温度(基板温度)と、ガス供給タイミングとの関係を示す図である。 厚膜層3を形成するAlNの成長方向の、場所による相違について説明する図である。 厚膜層3の形成が時間tとともに進行する様子を示す図である。 実施例に係るエピタキシャル基板10の作製に用いる成長用基板10αの主要な箇所の寸法図である。 厚膜層3の光学顕微鏡像である。 比較例に係るエピタキシャル基板110の作製に用いる成長用基板110αの主要な箇所の寸法図である。 実施例に係るエピタキシャル基板10の断面SEM像である。 比較例に係るエピタキシャル基板10の断面SEM像である。 実施例に係るエピタキシャル基板10のレーザー顕微鏡像である。 比較例に係るエピタキシャル基板10のレーザー顕微鏡像である。
<エピタキシャル基板の構成>
図1は、本実施の形態に係るエピタキシャル基板10の構成を概略的に示す断面図である。本実施の形態に係るエピタキシャル基板10は、基材1と、下地層2と、厚膜層3とを備える。
基材1としては、公知のC面サファイア単結晶基板を用いることができる。その厚みに特段の制限はないが、取り扱いの便宜上、数百μm〜数mmの厚みを有することが好ましい。また、外形(平面形状)についても特段の制限はなく、矩形や円形など、適宜の形状のものを用いればよい。
下地層2は、AlNからなる層である。下地層2は、その上部に、所定の間隔Wで離間しかつ同一の延在方向に沿って延在するとともに、垂直断面における各々の断面形状が三角形である複数の凸部2aを有する。別の見方をすれば、これら複数の凸部2aを備えることで、下地層2の上部には、複数の溝部2gが形成されているともいえる。なお、下地層2がこのような断面三角形状の凸部2aを有する構造を、三角ストライプ構造とも称する。
図2は、凸部2aの様子を示すSEM(走査電子顕微鏡)像である。図3は、凸部2aの部分拡大断面図である。典型的には、下地層2はAlNの<0001>方向を成長方向として形成され、凸部2aは、図2に示すように三角柱状をなしている。これにより、凸部2aの断面は二等辺三角形状となる。係る場合の凸部2aの延在方向は<1−100>方向である。また、図3に示すように、凸部2aの2つの斜面S1、S2(図3では斜辺S1、S2)が下地層2の平坦部2sを含む水平面となす角をθとすると、係る場合においては、θは58°±10°の範囲内の値となる。なお、θ=58°のとき、斜面S1、S2はAlNの{11−22}面と略一致する。
間隔Wは1μm以上20μm以下であればよいが、3μm以上10μm以下であることがより好ましい。平坦部2sからの凸部2aの高さdは、10μm以下であればよいが、1μm以上3μm以下であることがより好ましい。凸部2aの幅wは、高さdと同程度かそれ以下であればよく、1μm以上3μm以下であることがより好ましい。また、平坦部2sの厚みは10μm以下であって、凸部2aの高さdと同程度かそれよりも大きい程度であればよい。
以上のような構成を有する下地層2は、MOCVD法などの公知のエピタキシャル成長手法によって基材1の上にAlNからなる平坦層2αをエピタキシャル形成したうえで、該平坦層2αの一部を除去することによって形成される。下地層2の形成についての詳細については後述する。
厚膜層3は、下地層2の上に形成された、AlNからなる数十μm程度の厚みを有する層である。厚膜層3は、下地層2の凸部2aによって形成された溝部2gを全て埋める態様にて形成されてなる。その一方で、厚膜層3の内部には、下地層2の凸部2aと同一の延在方向に延在し、断面形状が三角形である複数のボイド4が、形成されてなる。それぞれのボイド4は、水平面内において隣り合う凸部2aの形成位置の略中間となる位置に形成されてなる。すなわち、ボイド4の間隔Pは凸部2aの間隔Wと略同一である。
ボイド4の上端4tと厚膜層3の表面3sとの距離Dは、厚膜層3にクラックの生じない範囲で大きくすることが可能であり、5μm以上20μm以下での範囲であれば、クラックフリーでかつ厚みの大きな厚膜層3を有するエピタキシャル基板10が実現される。距離Dが20μmを上回ると、厚膜層3にクラックが生じる可能性がある。また、距離Dは、5μmを下回ってもよいが、あまりに小さいと、厚膜層3の表面3sの強度が十分に確保されなくなることから、距離Dは1μm以上であることが望ましい。
ボイド4の上端4tと下地層2の凸部2aの上端2tとの距離(これを上端4tの高さとも称する)は、数μm〜十数μm程度となる。なお、ボイド4の上端4tと平坦部2sとの距離(これを上端4tの高さとも称する)hと、凸部2aの間隔Wと高さdとの間には、縦横比rを用いて
−d=r(W/2)・・・・・・・・(1)
なる関係が成り立つ。ここで、縦横比rとは、厚膜層3の水平方向と高さ方向の成長速度の比を表すパラメータであり、縦横比rの値が大きいほど、縦方向成長が横方向に比べて支配的であることを表す。下地層2の三角ストライプ構造が同じであれば、成長温度に応じて異なる値を取る。
一方、ボイド4の下端(底面)4bと下地層2の平坦部2sとの距離(これを底面4bの高さとも称する)hは、数μm程度となる。なお、ボイド4の底面4bの高さhと、下地層2の凸部2aの間隔Wおよび高さdとの間には、
=k(W/d・・・・・・・・(2)
なる関係が成り立つことが実験的にわかっている(kは比例定数)。
厚膜層3は、下地層2の上にHVPE法によってエピタキシャル形成されてなる。また、係るエピタキシャル形成の過程においてボイド4が形成される。厚膜層3およびボイド4の形成についての詳細は後述する。
以上のような構成を有するエピタキシャル基板10は、厚膜層3がAlN単結晶にて形成されたAlN単結晶基板であるといえる。
係るエピタキシャル基板10は、従来のような台形ストライプ構造を有する下地層を用いて作製されたエピタキシャル基板に比して、転位密度が低減されるとともに、厚膜層3の表面における転位存在領域が偏在化されることによって、相対的に転位密度の小さい低転位領域がより拡大されたものとなっている。なお、台形ストライプ構造とは、下地層2の凸部2aが、所定の間隔で離間しかつ同一の延在方向に沿って延在するとともに、垂直断面における断面形状が台形となっているもののことをいう。
図4は、下地層の構造の違いが転位に与える影響を示す図である。図4(a)は、本実施の形態に係るエピタキシャル基板10における転位dの伝播の様子を模式的に示している。図4(b)は、対比のために示す、台形ストライプ構造が採用されたエピタキシャル基板110における転位dの伝播の様子を模式的に示している。なお、図4中における破線は、後述する厚膜層3の領域3a、3b、および3c(図8、図9参照)を区分する仮想的なものであり、実際に存在するものではない。
図4(a)に示す本実施の形態に係るエピタキシャル基板10の場合も、図4(b)に示すエピタキシャル基板110の場合も、基材1と下地層2との界面を起点とする転位dが下地層2を貫通して厚膜層3まで伝播しているが、その多くは、ボイド4において消失している。より具体的にいえば、それらは、起点から垂直に伝播しボイド4の底面で消失するか、起点から下地層2内を垂直に伝播した後、下地層2の凸部2aにて折れ曲がり、ボイド4の斜面で消失するか、あるいは凸部とボイドとの間で折れ曲がり、ボイド4の底面もしくは斜面で消失している。
それゆえ、本実施の形態に係るエピタキシャル基板10において厚膜層3の表面3sに現れるのは、ボイド4の上端4t近傍を起点として垂直に伝播した転位dや、凸部2aの上端2t近傍を通って垂直に伝播した転位dに限られる。後者のケースが生じるのは確率的に希であるので、実質的には、厚膜層3の表面3sにおいてはほとんどの領域が転位密度の小さい低転位領域RE1となっており、ボイド4の上端4tの上方近傍のみが転位偏在領域RE2となっている。
一方、エピタキシャル基板110の場合は、エピタキシャル基板10と同様に、ボイド4の上端4t近傍からの転位dの伝播があることに加えて、下地層2のテラス部2Tを伝播する転位dも無視できなくなる。そのため、低転位領域が十分に得られない。
以上のことから、本実施の形態に係るエピタキシャル基板10は、従来のエピタキシャル基板に比して、より転位密度が低減され、かつ、低転位領域が十分に確保されたものとなっているといえる。
<下地層の形成>
以降、上述のような構成を有するエピタキシャル基板10の作製手順について順次に説明する。まず、三角ストライプ構造を有する下地層2の形成について説明する。
初めに、C面サファイア単結晶基板である基材1の主面上に平坦層2αとしてのAlN層を所定の厚みにエピタキシャル形成する。係る平坦層2αの形成は、MOCVD法によって、特にその一態様であるアンモニアパルス供給多段成長法によって行うのが好適である。これによって、結晶品質の良好な平坦層2αが得られる。より具体的には、(0002)面のX線ロッキングカーブ半値幅が50秒〜200秒程度であり、(10−12)面のX線ロッキングカーブ半値幅が200秒〜1500秒程度であり、(10−10)面のX線ロッキングカーブ半値幅が300秒〜2000秒程度であり、転位密度が1×1010/cm程度以下である平坦層2αが得られる。平坦層2αがこのようにすぐれた結晶品質にて形成されることで、その上に形成される厚膜層3の結晶品質も良好なものとなる。
なお、<0001>方向を成長方位として結晶品質の優れたAlN層を形成出来るのであれば、MBE法など他の結晶成長を用いる態様であってもよい。
また、基材1に相当するサファイア単結晶基材上に、平坦層2αに相当する結晶品質および表面平坦性に優れたAlN層を形成してなる、いわゆるテンプレート基板を用意し、以降の処理に供する態様であってもよい。
次に、平坦層2αを加工することにより、下地層2を得る。図5は、下地層2を得るために行う以下の加工手順i)〜x)を模式的に示す図である。なお、以下においては、上述した構造を有する下地層2が得られるまでの途中状態にある基板を加工対象基板と総称する。
i)基板洗浄;
加工対象基板をアセトンとメタノールとによって順次に超音波洗浄し、純水でリンスした後、さらに、塩酸による洗浄と、フッ酸による酸化膜を除去とを行う。
ii)SiO堆積;
洗浄後の加工対象基板の平坦層2αの表面に、公知のプラズマCVD法によって、後段の工程においてエッチングマスクとなるSiO膜5を堆積させる。
iii)OAP塗布;
形成したSiO膜5の上に、ヘキサメチルジシラザン(OAP)を塗布し、スピナーによって均一化した後、ベーキングすることでOAP膜6を形成した。これは、SiO膜5と次に形成するレジスト膜7との密着性を向上させるために行う処理である。
iv)レジスト塗布;
OAP膜6の上にポジ型のレジストを塗布し、スピナーで均一化した後、プリベーキングを行うことによって、レジスト膜7を形成した。
v)露光;
Mask部分とWindow部分とが水平方向に交互に設けられたストライプパターンを有するCr製露光用マスク(図示せず)を用い、該ストライプパターンの延在方向を平坦層2αを構成しているAlNの<1−100>方向に一致させる態様にて加工対象基板を露光する。
vi)現像;
露光後の加工対象基板をポジ型レジスト用の現像液に浸し、レジスト膜7(厳密にはOAP膜6も含む)のうち、露光時にWindow部分にあった部分を除去する。その後、純水でリンスし、さらにポストベーキングを行って、加工対象基板において残存しているストライプ状にレジスト膜7を固化させる。
vii)ウェットエッチング;
バッファードフッ酸(NHHF)をエッチャントとしてSiO膜5のウェットエッチングを行う。エッチャントがレジスト膜7の下方に回り込むことでSiO膜5はアンダーカットされ、断面形状が三角形のストライプ状となる。
viii)レジスト除去;
アセトンを用いた超音波洗浄を行うことにより、レジストを溶解除去する。これにより、ストライプ状のSiO膜5が加工対象基板の表面に露出する。
ix)ドライエッチング;
RIE(Reactive Ion Etching)装置を用いて、加工対象基板をClガスによりドライエッチングする。エッチングの選択比は、おおよそAlN:SiO=2:1である。係るドライエッチングによって、平坦層2αの上面がその上に備わるストライプ状のSiO膜5の形状に応じてエッチングされる。
x)SiO除去;
最後に、フッ酸で残存しているSiOを完全に除去する。これにより、三角ストライプ構造を有する下地層2が得られる。
<HVPE装置>
次に、厚膜層3の形成に用いるHVPE装置20について概説する。図6は、HVPE装置20の構成を概略的に示す図である。
HVPE装置20は、概略、石英製の反応管21の中に配置されたサセプタ(試料台)22の上に、基材1と上述の態様にて三角ストライプ構造が形成された下地層2とを備える成長用基板10αを載置し、該成長用基板10αの表面に(下地層2の表面に)AlNからなる厚膜層3を形成するための装置である。
HVPE装置20は、サセプタ22の近傍に対してIII族原料ガスを供給するための第1供給経路23と、V族原料ガスを供給するための第2供給経路24とを備える。第1供給経路23の途中には、III族原料となる金属アルミニウム(Al)25がボート26に入れられた状態で配置されている。また、第1供給経路23には、図示しない供給源からHClガスがキャリアガスとしてのNガスおよび/またはHガスとともに供給される。一方、第2供給経路24には、図示しない供給源からNHガスがキャリアガスとしてのNガスおよび/またはHガスとともに供給される。なお、HClガスとしては、H2ガスによって5%希釈されたものを用いる。なお、反応管21の長手方向においてガスが供給される側を上流側と称する。
反応管21の内部は、ゾーンと称される4つの領域に区分される。具体的には、サセプタ22が設けられておりAlNの生成反応が生じる領域を反応ゾーンZ0と称し、最上流側であって、ボート26が配置されてなる領域を第1ゾーンZ1と称し、第1ゾーンZ1と反応ゾーンZ0との間の領域を第2ゾーンZ2と称し、反応ゾーンZ0よりも下流側の領域を第3ゾーンZ3と称する。
HVPE装置20には、それぞれのゾーンに対応させて個別の加熱手段が備わっている。反応ゾーンZ0においては、サセプタ22に載置された成長用基板10αを加熱するための加熱手段である基板加熱ヒータ30が付設されてなる。基板加熱ヒータ30は、反応ゾーンZ0の全体ではなく、その近傍に備わる成長用基板10αを優先的に加熱する局所加熱手段である。基板加熱ヒータ30は、例えばRF加熱や通電加熱ヒータである。あるいは、これらに代えて、ランプヒータを用いる態様であってもよい。
一方、反応管21の外周部であって、第1ゾーンZ1、第2ゾーンZ2、および第3ゾーンZ3に対応する箇所には、第1ゾーン加熱ヒータ31と、第2ゾーン加熱ヒータ32と、第3ゾーン加熱ヒータ33とが設けられてなる。第1ゾーン加熱ヒータ31と、第2ゾーン加熱ヒータ32と、第3ゾーン加熱ヒータ33とは、対応するゾーンを反応管21の外側から全体的に加熱する。第1ゾーン加熱ヒータ31と、第2ゾーン加熱ヒータ32と、第3ゾーン加熱ヒータ33とは、個別に制御されるので、ゾーン毎に異なる温度設定にて加熱を行うことが出来る。
また、反応管21の下流側には、反応後の残存ガスを排気するための図示を省略する排気経路が設けられている。
<HVPE法による厚膜層形成>
続いて、上述したHVPE装置20を用いた厚膜層3の形成プロセスについて説明する。厚膜層3を形成するにあたっては、まず、成長用基板10αに対し洗浄処理を施す。具体的には、成長用基板10αをアセトン、メタノールで順次に洗浄した後、純水による超音波洗浄する。そして、塩酸およびフッ酸で金属および酸化膜を除去する。
係る洗浄処理後の成長用基板10αをサセプタ22に載置した後、第1ゾーン加熱ヒータ31、第2ゾーン加熱ヒータ32、および第3ゾーン加熱ヒータ33によって、第1ゾーンZ1を500℃以上で550℃以下となるように加熱し、第2ゾーンZ2を第1ゾーンZ1より高温でかつ700℃以下となるように加熱し、さらには第3ゾーンZ3を700℃以上900℃以下となるように加熱する。
一方で、反応ゾーンZ0においては、基板加熱ヒータ30によって、成長温度が1200℃以上1600℃以下の所定の値となるように成長用基板10αを加熱する。
なお、反応管21内の圧力は、1kPa以上100kPa以下、さらに望ましくは1kPa以上10kPa以下に保つようにする。
図7は、成長用基板10αの温度(基板温度)と、ガス供給タイミングとの関係を示す図である。ただし、図7においては、厚膜層3の成長温度を1500℃に設定した場合を例示している。図7に示すように、基板加熱ヒータ30による加熱を開始する際には、これと併せて、第2供給経路24からのNHガスの供給も開始する。係るNHガスの供給は、厚膜層3の成長終了後の降温過程で基板温度が400℃に達するまで行う。これは、高温状態にあるAlNからのNの脱離を抑制するためである。
その後、成長用基板10αの温度が成長温度に達すると、第1供給経路23からのHClガスの供給を開始する。以降、所定の成長時間の間、該成長温度を保ちつつ、第1供給経路23からのHClガスの供給を継続する。
第1供給経路23から供給されたHClガスは、第1ゾーンZ1においてボート26に入れられた金属アルミニウム25と反応する。第1ゾーンZ1は550℃以下に保たれているので、両者の反応によって生成するのはAlClガスである。係るAlClガスは第2ゾーンZ2を経て反応ゾーンZ0へと達する。一方、第2供給経路24においては、NHガスが、第1ゾーンZ1、第2ゾーンZ2を経て反応ゾーンZ0へと達する。なお、AlClガスが生成する第1ゾーンZ1と反応ゾーンZ0との間に第1ゾーンZ1よりも高温の第2ゾーンZ2を設けているのは、NHガスの分解を促進し反応ゾーンZ0との温度差を小さくするためである。
反応ゾーンZ0においては、第1供給経路23から供給されたAlClガスと第2供給経路24から供給されたNHガスとの反応によってAlNが生成される。このようにして反応生成したAlNが成長用基板10α上に順次に堆積していくことによって、厚膜層3が形成される。
なお、第3ゾーンZ3においては、未反応のAlClxガスやNH3ガス、あるいは成長用基板10α上に析出しなかったAlNなどが分解される。
予定された反応時間が終了すると、HClガスの供給は停止され、成長用基板10αは降温される。上述のように、400℃になるとNHガスの供給も停止され、厚膜層3が形成された成長用基板10α、つまりはエピタキシャル基板10は、室温まで冷却される。
<ボイドの形成メカニズム>
以上が、HVPE法によってAlNからなる厚膜層3を形成するプロセスの概要であるが、本実施の形態に係るエピタキシャル基板10は、厚膜層3の内部にボイド4が形成される点で特徴的である。係るボイド4は、厚膜層3の成長過程において形成される。以下、そのメカニズムについて詳説する。図8は、厚膜層3を形成するAlNの成長方向の、場所による相違について説明する図である。図9は、厚膜層3の形成が時間tとともに進行する様子を示す図である。
図8に示すように、平坦部2sからその上方の領域3aにかけては、AlNはC面((0001面))を形成しつつ縦方向に成長する。一方、下地層2の凸部2aの斜面S1、S2からそれぞれの斜め上方の領域3bにかけては、AlNは斜めファセットを形成しつつ横方向に成長する。さらに、凸部2aの上端2tの上方の領域3cにおいては、AlNは領域3aと同様にC面を形成しつつ縦方向に成長する。このことはすなわち、厚膜層3は、AlNの成長態様が異なる3つの領域にて形成されることを意味している。
より具体的には、図9に示すように、厚膜層3の形成は縦方向成長をする領域3aと領域3cとの間に、横方向成長をする領域3bが介在する態様にて進行する。そのため、t=t1〜t2に示すように、領域3aにおいては成長が進むほど、左右の領域3bにおける横方向成長に阻まれていくことになる。そして、t=t2〜t3のように成長が進んで領域3bの間隔が狭まるにつれて、領域3aの上方にAlNが堆積しにくくなり、領域3aの上方には隙間4αが形成される。その後、t=t4〜t5のように、左右の領域3bが合体することで、隙間4αが閉じ、ボイド4として厚膜層3内に残存することとなる。
その一方で、凸部2aの上方であって2つの領域3bの間の領域3cにおいては、縦方向成長が進行する。領域3bが合体し、隙間4αが閉じてボイド4となった以降は、t=t5に示すように、領域3cの縦方向成長が支配的となる。以上のような過程を経ることで、図1に示した構造のエピタキシャル基板10が得られる。なお、得られたエピタキシャル基板10の表面(厚膜層3の表面)はAFM(原子間力顕微鏡)にて原子ステップが確認されるほどの優れた平坦性を示す。また、クラックが生じることもない。
このような厚膜層3およびボイド4の形成プロセスは、上述した、厚膜層3の表面における低転位化(転位の偏在化)と大いに関係がある。すなわち、下地層2からの貫通転位のうち、領域3aおよび領域3bに伝播したものは、ボイド4のところで消失する。厚膜層3の表面に現れるのは、ボイド4の上端4tあるいは凸部2aの上端2tから領域3cを貫通する転位のみとなっている。このことは、三角ストライプ構造を有するAlN下地層を備える成長用基板10αの上にHVPE法にてAlNからなる厚膜層3を形成することが、表面における転位密度が低く低転位領域が広いエピタキシャル基板10、つまりはAlN単結晶基板を得るうえにおいて有効であることを意味している。
なお、上述した下地層2の凸部2aの間隔W、高さd、および幅wの要件、さらには、斜面S1、S2が水平面となす角θの要件は、厚膜層3の形成過程においてボイド4が好適に形成され、これによってボイド4における転位の消失が好適に実現されるための要件でもある。例えば、間隔Wが小さすぎると、下地層2に平坦部2sがほとんど存在しないことになるため、領域3aに相当する部分の縦方向成長がほとんど起きず、結果としてボイド4が形成されなくなってしまい好ましくない。また、間隔Wが大きすぎると、逆に平坦部2sからの縦方向成長が支配的となって、結果としてボイド4が形成されなくなってしまい好ましくない。換言すれば、上述した間隔W、高さd、幅w、および角度θの範囲は、厚膜層3の形成において縦方向成長と横方向成長とがバランスし、転位の低減に効果的にボイド4形成されるための要件であるといえる。
以上、説明したように、本実施の形態によれば、サファイア単結晶基材の上に三角ストライプ構造を有するAlN下地層を設けた成長用基板に、HVPE法にてAlN厚膜層を形成することで、クラックフリーであり、表面における転位密度が低くかつ低転位領域が広いエピタキシャル基板を得ることができる。また、係るエピタキシャル基板10から切削や研磨やその他の公知の手法にて基材1を除去することで、AlN単結晶自立基板を得ることも可能である。
(実施例)
実施例として、上述の実施の形態に係るエピタキシャル基板10作製した。図10は、実施例に係るエピタキシャル基板10の作製に用いる成長用基板10αの主要な箇所の寸法図である。図10に示すように、成長用基板10αにおいては、W=10μmである。
まず、基材1としての直径2インチのC面サファイア単結晶基板の上に、平坦層2αとしてのAlN層が4μmの厚みに形成されてなるテンプレート基板を用意した。なお、AlN層の(0002)面のX線ロッキングカーブ半値幅は154秒であり、(10−10)面のX線ロッキングカーブ半値幅は507秒であった。
係るテンプレート基板に対し、アセトンとメタノールとで10分間ずつ超音波洗浄を行い、純水で5分間リンスした。さらにその後、塩酸で10分間洗浄し、最後にフッ酸で酸化膜を除去したうえで、図5に手順を示した三角ストライプ構造の形成に供した。
まず、プラズマCVD法により、平坦層2αの上にSiO膜5を2μmの厚みに堆積させた。続いて、SiO膜5の上にOAPを塗布し、スピナーで均一化した後、70℃で5分間のベーキングを行ってOAP膜6を形成した。
そして、このOAP膜6上にポジ型レジストを塗布し、スピナーで均一化した後、90℃で30minプリベーキングを行って、レジスト膜7を形成した。
続くレジスト露光は、Mask:Window=5μm:5μmのストライプパターンが設けられた露光用Crマスクを用いて行った。露光時間は8.5秒とした。
露光後、現像処理として、加工対象物をポジ型レジスト用現像液に35秒浸して露光された部分のレジストを除去し、純水で約25秒リンスし、120℃で30分間のポストベーキングを行った。
続いて、濃度22%の(NHHF)をエッチャントとしてSiO膜5のウェットエッチングを行った。エッチング時間は720秒とした。これらは、SiO膜5が約2.5μmエッチングされる条件である。ウェットエッチングによってSiO膜5は断面三角形状のストライプ構造を有するものとなった。その高さは約1μmであった。ウェットエッチング後、アセトンによる超音波洗浄によって、レジストを溶解除去した。
続いて、RIE装置を用い、ドライエッチングを行った。エッチング時間は9分とし、AlNを約2μm、SiOを約1μmエッチングした。最後に、最後にフッ酸でSiOを完全に除去した。これにより、図10に示す成長用基板10αが得られた。
得られた成長用基板10αを洗浄処理した後、HVPE装置20により、厚膜層3を形成した。なお、洗浄処理としては、アセトンとメタノールとで10分間ずつ有機洗浄を行い、純水で5分間の超音波洗浄を行った。さらにその後、塩酸での10分間の洗浄と、フッ酸での10分間の洗浄を行い、金属および酸化膜を除去した。
HVPE装置20による厚膜層3の形成においては、成長温度を1500℃、V/III比を500、HClガス(Hガスにて5%に希釈)の流量を6sccm、NHガスの流量を1.0sccm、成長時間を80分とした。また、第1ゾーンZ1、第2ゾーンZ2、および第3ゾーンZ3の温度はそれぞれ550℃、700℃、900℃とした。
図11は、得られた厚膜層3の光学顕微鏡像である。厚膜層3には、クラックは確認されなかった。
また、厚膜層3についてAFM観察を行ったところ、明瞭な原子ステップが観察された。係るAFM像から求められた1μm×1μm領域でのRMS値は0.121nmであった。すなわち、得られた厚膜層3の表面、つまりは、実施例に係るエピタキシャル基板10の表面は、原子レベルでの平坦性を有することが確認された。
また、得られた厚膜層3の(0002)面のX線ロッキングカーブ半値幅は176秒であり、(10−10)面のX線ロッキングカーブ半値幅は241秒であった。係る結果は、厚膜層3の総合的な結晶性が、下地層2となったAlN層に比べて優れていることを意味している。
(比較例)
比較例として、成長用基板が台形ストライプ構造を有するエピタキシャル基板110を作製した。図12は、比較例に係るエピタキシャル基板110の作製に用いる成長用基板110αの主要な箇所の寸法図である。成長用基板110αは、凸部2aの上端部にテラス部2Tが存在する点で、実施例において用いた成長用基板10αと相違する。なお、図12に示すように、成長用基板110αにおいても、W=10μmである。
成長用基板110αの形成は、バッファードフッ酸によるウェットエッチングの時間を実施例の半分の360秒としてSiO膜5のアンダーカットを生じさせないようにし、さらに、RIE装置によるドライエッチングの時間を実施例の半分の4分30秒としたほかは、同一の手順及び条件で行った。
また、成長用基板110αへの厚膜層3の形成は、実施例と同様の条件で行った。
得られたエピタキシャル基板110の厚膜層3についてAFM観察を行ったところ、実施例に係るエピタキシャル基板10と同様、明瞭な原子ステップが観察された。AFM像から求められた1μm×1μm領域でのRMS値は0.126nmであった。すなわち、実施例と同様、比較例に係るエピタキシャル基板110についても、原子レベルでの平坦性を有することが確認された。
(実施例と比較例の厚膜層の対比)
実施例に係るエピタキシャル基板10と比較例に係るエピタキシャル基板110とについて、SEMによる厚膜層3の形態観察と、レーザー顕微鏡によるエッチピット観察とを行った。エッチピット観察は、エピタキシャル基板10および110を、350℃のKOH+NaOH融液に2分間浸し、転位部分にエッチピットを形成させたうえで行った。
図13は、実施例に係るエピタキシャル基板10の断面SEM像である。図14は、比較例に係るエピタキシャル基板110の断面SEM像である。
図13および図14では、実施例、比較例ともに、厚膜層3の内部であって水平面内において隣り合う凸部2aの形成位置の略中間となる位置に、断面形状が三角形であるボイド4(黒色部分)が形成されていることが確認される。なお、実施例、比較例ともに、ボイド4の間隔Pは約10μmであった。また、両者のSEM像から凸部2aの上端とボイド4の上端の位置を測定し、(1)式に基づいて縦横比rを求めたところ、実施例ではr=2.6であり、比較例ではr=2.7となった。係る結果は、両者におけるAlNの成長態様には著しい相違が無く、得られた縦横比rの値からは、横方向成長が促進されているものと判断される。
また、図15は、実施例に係るエピタキシャル基板10のレーザー顕微鏡像である。図16は、比較例に係るエピタキシャル基板110のレーザー顕微鏡像である。両図ともに、図4に示したものと同様の転位の伝播の様子を示す模式図を付している。
図16に示すように、比較例の場合、破線L2を付した観察範囲の略全体に均一にエッチピットが観察された。ピット密度は9.9×10/cmであった。これに対して、実施例の場合、全体のピット密度は5.1×10/cmと比較例よりも小さく、しかも、図15に示すように、エッチピットは破線L1にて示すような直線状の領域に偏在し、それ以外の部分ではより少なくなっていた。
図15によれば、当該領域同士の間隔は約10μmである。また、その延在方向はAlNの<1−100>方向と一致しているので、この破線L1にて囲まれた領域は、ボイド4の上方に位置していると判断される。
以上の結果は、実施例に係るエピタキシャル基板10では、比較例に係るエピタキシャル基板110よりも、厚膜層3の表面における転位密度が小さいこと、および、図4(a)に模式的に示したように、転位の大半は直線状の転位偏在領域RE2に存在し、それ以外の広い範囲はより転位密度が小さい低転位領域RE1となっていることを示している。さらにいえば、以上の結果は、比較例のように台形ストライプ構造を採用したエピタキシャル基板では、クラックフリーは実現されるものの表面における転位の低減は十分ではなく、実施例のように三角ストライプ構造を採用することで初めて、クラックフリーでかつ表面における転位の少ないエピタキシャル基板が実現されることを意味している。
1 基材
2 下地層
2a (下地層の)凸部
2g (下地層の)溝部
2s (下地層の)平坦部
2t (下地層の)上端
2T テラス部
2α 平坦層
3 厚膜層
4 ボイド
4b (ボイドの)底面
4t (ボイドの)上端
10、110 エピタキシャル基板
10α、110α 成長用基板
20 HVPE装置
21 反応管
22 サセプタ
23 第1供給経路
24 第2供給経路
25 金属アルミニウム
30 基板加熱ヒータ
31 第1ゾーン加熱ヒータ
32 第2ゾーン加熱ヒータ
33 第3ゾーン加熱ヒータ
P (ボイドの)間隔
RE1 低転位領域
RE2 転位偏在領域
S1、S2 (凸部の)斜面
(凸部の)間隔

Claims (8)

  1. 半導体素子用のエピタキシャル基板であって、
    サファイア単結晶基材と、
    AlNからなり、前記サファイア単結晶基材の上に形成された下地層と、
    AlNからなり、前記下地層の上に形成された厚膜層と、
    を備え、
    前記下地層が、所定の間隔で離間しかつ同一の延在方向に沿って延在する三角柱状の複数の凸部を上部に有してなり、
    前記厚膜層の内部であって、水平面内において隣り合う前記凸部の形成位置の略中間となる複数の位置に、前記延在方向に沿って延在する三角柱状のボイドを有する、
    ことを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板。
  2. 請求項1に記載の半導体素子用のエピタキシャル基板であって、
    前記厚膜層の表面においては、前記ボイドの上方に位置する領域が転位偏在領域となっており、前記転位偏在領域以外の領域が前記転位偏在領域よりも相対的に転位密度の小さい低転位領域となっている、
    ことを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板。
  3. 請求項1または請求項2に記載の半導体素子用のエピタキシャル基板であって、
    前記複数の凸部のピッチが1μm以上20μm以下である、
    ことを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の半導体素子用のエピタキシャル基板であって、
    前記延在方向がAlNの<1−100>方向である、
    ことを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の半導体素子用のエピタキシャル基板であって、
    前記ボイドにおいては、当該ボイドの断面三角形の頂点となる位置が前記厚膜層の内部における最上端部となっており、前記厚膜層の表面から前記頂点までの距離が1μm以上20μm以下であり、かつ、当該ボイドの底部が前記下地層にある前記複数の凸部の上端より上に位置してなる、
    ことを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板。
  6. 半導体素子用エピタキシャル基板の作製方法であって、
    サファイア単結晶基材の上にAlNからなる平坦層をエピタキシャル成長させる平坦層形成工程と、
    マスクパターンを用いて前記平坦層をウェットエッチングすることによって、AlNからなり、所定の間隔で離間しかつ同一の延在方向に沿って延在する三角柱状の複数の凸部を上部に備える下地層を形成する下地層形成工程と、
    HVPE法によって前記下地層の上にAlNからなる厚膜層をエピタキシャル成長させる厚膜層形成工程と、
    を備え、
    前記厚膜層形成工程においては、前記厚膜層の内部であって水平面内において隣り合う前記凸部の形成位置の略中間となる複数の位置に、前記延在方向に沿って延在する三角柱状のボイドを形成させつつ、前記厚膜層を成長させる、
    ことを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板の作製方法。
  7. 請求項6に記載の半導体素子用エピタキシャル基板の作製方法であって、
    前記厚膜層形成工程においては、
    金属AlとHClガスとを500℃以上550℃以下で反応させて塩化アルミニウムガスを生成する第1工程と、
    前記塩化アルミニウムガスとアンモニアガスとを、1200℃以上1700℃以下に加熱した前記下地層形成後の前記サファイア単結晶基材の近傍で反応させることによってAlNを生成させ、前記下地層の上に前記厚膜層をエピタキシャル成長させる第2工程と、
    を、雰囲気圧力を1kPa以上100kPa以下に保った反応管内で行う、
    ことを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板の作製方法。
  8. 請求項6または請求項7に記載の半導体素子用エピタキシャル基板の作製方法であって、
    前記厚膜層形成工程においては、前記厚膜層の表面から前記厚膜層の内部における前記ボイドの最上端部である当該ボイドの断面三角形の頂点までの距離が1μm以上20μm以下であるように、かつ、前記ボイドの底部が前記下地層にある三角柱状の複数の前記凸部の上端より上に位置するように、前記厚膜層を成長させる、
    ことを特徴とする半導体素子用エピタキシャル基板の作製方法。
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