JP6039929B2 - 注射シミュレータおよび模擬血管の交換方法 - Google Patents

注射シミュレータおよび模擬血管の交換方法 Download PDF

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Description

本発明は、注射手技の実習に用いられて好適な注射シミュレータおよび模擬血管の交換方法に関するものである。
近年、看護基礎教育や卒後教育の現場で注射技術に対する教育あるいは再教育の重要性が問われている。教育の現場では、倫理的配慮から学生同士での注射実施は難しく、また臨地実習においても無資格者である学生が患者を対象として実施することはできない状況にある。
新卒者を教育する臨床現場でも、リスクマネジメントの観点から、患者に実施する前に院内で演習を実施しているのが現状である。これらのことから、注射シミュレータの需要は教育現場および臨床の双方で拡大している。
図7には、従来の注射シミュレータの全体斜視図が示されている。なお、この種の従来の注射シミュレータは、例えば特許文献1にて知られている。
実開平6−4768号公報
図7に示される従来の注射シミュレータ100は、腕または脚の肢体に装着して注射手技を練習するための練習器であって、その本体部分を構成するベース101を備えている。
ベース101は、所要の収容スペースを有して上方に開口された箱形形状とされ、このベース101の収容スペース内に模擬血管102,103が敷設されるとともに、肉質感を高めるためのスポンジ(模擬筋肉)104が充填され、これら模擬血管102,103とスポンジ104を覆ってベース101の開口を塞ぐように模擬表皮材105がその開口縁に装着されている。
ここで、模擬血管102,103において、ベース101内に埋設されている部分以外の部分は、ベース101の端面に設けられた模擬血管挿通孔111,113,112,114を通してベース101の外部に取り出されている。
ところで、従来の注射シミュレータ100では、ベース101が樹脂製で箱形形状を保つために比較的硬く、しかもベース101に対する模擬血管102,103の位置を定めるため、模擬血管挿通孔111,113,112,114に対し模擬血管102,103がタイトに嵌め込まれている。
このため、使用に伴い傷んだ古い模擬血管102,103をベース101から模擬血管挿通孔111,113,112,114を通して抜き取るのが困難であるとともに、スポンジ104が充填されているベース101の内部を縫うようにして新しい模擬血管102,103を元の位置に模擬血管挿通孔111,113,112,114を通して差し込むのも困難であり、模擬血管102,103だけが交換されることは殆どなく、模擬血管102,103に加えてスポンジ104や模擬表皮材105などが纏めて交換されることが多く、ランニングコストが嵩むという問題点がある。
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、模擬血管を容易に交換することができる注射シミュレータおよび模擬血管の交換方法を提供することを目的とするものである。
前記目的を達成するために、第1発明による注射シミュレータは、
注射を練習するための注射シミュレータであって、
模擬表皮部を有する表側シート材とその表側シート材の下側に配されるシート材とを含む複数のシート材が積層されてなり、腕または脚の肢体に巻き掛け可能な可撓性シート体と、前記表側シート材の下側に配されるシート材の裏側に配されるように前記可撓性シート体に組み込まれその可撓性シート体の形状を保持する板ばね体とを備え、
前記可撓性シート体における前記表側シート材の前記肢体に沿う縦方向の一端部および他端部にそれぞれ模擬血管挿通孔を設け、これら模擬血管挿通孔を通して模擬血管を前記表側シート材における前記模擬表皮部とその模擬表皮部の下側に配されるシート材との間に組み込むとともに、前記模擬血管が、前記模擬表皮部またはその模擬表皮部の下側に配されるシート材に近接する位置に配されるようにし
前記板ばね体は、前記模擬表皮部の全体を載せることができる大きさであり、弾性力に従って前記肢体と直交する横方向で裏側に丸く巻かれた巻き形状と、この巻き形状から弾性力に抗して横方向に展開された展開形状とに変形可能で、前記巻き形状から前記展開形状に変形させたときにその展開形状を維持するために前記肢体に沿う縦方向で表側に反りを持たせてなることを特徴とするものである。
また、第2発明による注射シミュレータは、
注射を練習するための注射シミュレータであって、
模擬表皮部を有する表側シート材とその表側シート材の下側に配されるシート材とを含む複数のシート材が積層されてなり、腕または脚の肢体に巻き掛け可能な可撓性シート体と、前記表側シート材の下側に配されるシート材の裏側に配されるように前記可撓性シート体に組み込まれその可撓性シート体の形状を保持する板ばね体とを備え、
前記可撓性シート体における前記表側シート材の前記肢体に沿う縦方向の一端部および他端部にそれぞれ模擬血管挿通孔を設け、これら模擬血管挿通孔を通して模擬血管を前記表側シート材における前記模擬表皮部とその模擬表皮部の下側に配されるシート材との間に組み込むとともに、前記模擬血管が、前記模擬表皮部に近接する位置に配される第1模擬血管と、前記模擬表皮部の下側に配されるシート材に近接する位置に配される第2模擬血管とを有するものとし、
前記板ばね体は、前記模擬表皮部の全体を載せることができる大きさであり、弾性力に従って前記肢体と直交する横方向で裏側に丸く巻かれた巻き形状と、この巻き形状から弾性力に抗して横方向に展開された展開形状とに変形可能で、前記巻き形状から前記展開形状に変形させたときにその展開形状を維持するために前記肢体に沿う縦方向で表側に反りを持たせてなることを特徴とするものである。
次に、第3発明による模擬血管の交換方法は、
第1発明または第2発明に係る注射シミュレータの模擬血管の交換方法であって、
展開形状に維持された前記板ばね体の保形作用によって前記可撓性シート体が平板形状に保たれた状態で、前記表側シート材における前記模擬表皮部とその模擬表皮部の下側に配されるシート材との間に組み込まれている古い模擬血管の端部と別途用意されている新しい模擬血管の端部とを継手で連結する新旧模擬血管連結工程と、
前記古い模擬血管を前記模擬血管挿通孔を通して引き抜くに伴いその引き抜き動作に連動して前記新しい模擬血管を前記模擬血管挿通孔を通して前記表側シート材における前記模擬表皮部とその模擬表皮部の下側に配されるシート材との間に組み込む新旧模擬血管差替え工程と、
を含むことを特徴とするものである。
本発明の注射シミュレータにおいては、可撓性シート体における表側シート材の肢体に沿う縦方向の一端部および他端部にそれぞれ設けられた模擬血管挿通孔を通して模擬血管が表側シート材における模擬表皮部とその模擬表皮部の下側に配されるシート材との間に組み込まれるとともに、模擬血管が、表側シート材における模擬表皮部またはその模擬表皮部の下側に配されるシート材に近接する位置に配される、あるいは模擬血管が、表側シート材における模擬表皮部に近接する位置に配される第1模擬血管と、表側シート材における模擬表皮部の下側に配されるシート材に近接する位置に配される第2模擬血管とを有するものとされる。さらに、本発明の注射シミュレータにおいては、板ばね体が展開形状の状態にされると、可撓性シート体の表面側および裏面側のいずれにも引張力や圧縮力が生じないので、可撓性シート体と模擬血管との間に互いに押し付け合うような力が作用せず、両者間の摩擦力が微小なものとなる。これにより、模擬血管挿通孔を通して古い模擬血管を容易に引き抜くことができるとともに、模擬血管挿通孔を通して新しい模擬血管を容易に差し込むことができる。
本発明の注射シミュレータにおいて、模擬血管を交換するにあたっては、まず、展開形状に維持された板ばね体の保形作用によって可撓性シート体が平板形状に保たれた状態で、表側シート材における模擬表皮部とその模擬表皮部の下側に配されるシート材との間に組み込まれている古い模擬血管の端部と別途用意されている新しい模擬血管の端部とが継手で連結される(新旧模擬血管連結工程)。次いで、古い模擬血管が模擬血管挿通孔を通して引き抜かれるに伴いその引き抜き動作に連動して新しい模擬血管が模擬血管挿通孔を通して表側シート材における模擬表皮部とその模擬表皮部の下側に配されるシート材との間に組み込まれる(新旧模擬血管差替え工程)。
したがって、例えばスポンジ等が肉質感を高めるために可撓性シート体の内部に充填されていたとしても、可撓性シート体の内部を縫うようにして新しい模擬血管を元の位置に模擬血管挿通孔を通して差し込むことができ、模擬血管だけを容易に交換することができる。
本発明の一実施形態に係る注射シミュレータの全体斜視図で、巻き状態図(a)および展開状態図(b) 図1のA−A線断面図 図1のB−B線断面図 可撓性シート体の分解斜視図 板ばね体の全体斜視図で、展開形状を表わす図(a)、展開形状と巻き形状との変わり目の形状を表わす図(b)および巻き形状を表わす図(c) 模擬血管の交換方法の説明図 従来の注射シミュレータの全体斜視図
次に、本発明による注射シミュレータおよび模擬血管の交換方法の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
<注射シミュレータの概略説明の説明>
図1(a)に示される注射シミュレータ1は、主として人体の腕や脚の肢体(本例では腕2)に装着されて、血管注射をよりリアルに練習するための練習器であって、人体の皮膚を模擬した可撓性シート体3を備えている。
なお、以下においては、主として、人体の腕2(またはその模型)に装着するタイプの注射シミュレータについて説明するが、人体の脚(またはその模型)に装着するタイプの注射シミュレータについてはその基本構造が同じであるので、その詳細な説明は省略することとする。
<可撓性シート体の説明>
可撓性シート体3は、図1(b)に示される展開状態において、腕2と直交する横方向と腕2に沿う縦方向とに広がりを有する四角平板形状を呈し、樹脂製の比較的軟らかい可撓性を有する複数のシート材3a,3b,3cが積層されて構成されている。
すなわち、図3に示されるように、可撓性シート体3は、人体の腕2に巻き掛け可能な裏側シート材3a上に、仕切シート材3bを介して、表側シート材3cを重ね合わせ、これら裏側シート材3a、仕切シート材3bおよび表側シート材3cの外周縁を一体的に接合して構成されている。
表側シート材3cは、所要の大きさの窓部4aを有する四角枠状の表側シート材本体4を備え、人体の表皮を模擬した薄い可撓性シート状の模擬表皮材5をその表側シート材本体4の窓部4aに嵌め合わせ、両者を接着剤等で接合して構成されている。ここでは、表側シート材本体4に模擬表皮材5を嵌め付けることで、表側シート材3cに模擬表皮材5からなる模擬表皮部を部分的に設けた例を示したが、表側シート材3cを模擬表皮材5のみで構成して表側シート材3c全体を模擬表皮材5からなる模擬表皮部とする態様もあり得る。
ここで、裏側シート材3a、仕切シート材3b、表側シート材本体4および模擬表皮材5の材質としては、人体への注射針や採血針の刺入感を模擬できるよう適度に軟質で、所要の強度、耐久性、耐熱性、耐薬品性、安全性等を有するものであれば特に制限されないものであり、例えば、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ゴム、低密度ポリエチレン、ブチルゴム、軟質ポリ塩化ビニル、アクリル酸エステルの共重合体等のアクリル系ゴム、ポリエステル系エラストマー、ポリエステルポリウレタン、ポリウレタン、シリコーンゴムなどの合成ゴム類や軟質合成樹脂類、あるいは織布、メリヤス、不織布等に上記の合成ゴム類や軟質合成樹脂を含浸させた適度の伸縮性を有する布地などが挙げられる。
<模擬筋肉の説明>
仕切シート3bと模擬表皮材5との間には、肉質感を高めるための模擬筋肉6が組み込まれている。
ここで、模擬筋肉6は、人体の筋肉を模擬するものであり、その材質としては、適度の弾性率のものであれば特に制限されないものであり、先に例示した合成ゴム類、軟質合成樹脂類の他、それらの発泡体、例えばポリウレタンフォームなどが好適に使用される。
<模擬血管挿通孔の説明>
図1(a)に示されるように、表側シート材本体4において、腕2に沿う縦方向の一端部には、横方向に所定間隔を存して第1模擬血管挿通孔11および第2模擬血管挿通孔12がそれぞれ穿設されるとともに、腕2に沿う縦方向の他端部には、横方向に所定間隔を存して第3模擬血管挿通孔13および第4模擬血管挿通孔14がそれぞれ穿設されている。
<模擬血管の説明>
図2に示されるように、可撓性シート体3における仕切シート材3bと模擬表皮材5との間には、人体の血管を模擬した第1模擬血管15および第2模擬血管16がそれぞれ組み込まれている。これら模擬血管15,16は、いずれも実際の血管に類似した状態とするため弾性チューブで構成されている。
ここで、模擬血管15,16を構成する弾性チューブの材質としては、天然ゴムや、先に例示した合成ゴム類、軟質合成樹脂類が挙げられるが、特に天然ゴムまたはシリコーンゴム等が好ましい。これら模擬血管15,16の外径や肉厚は、訓練対象となる血管に応じて種々選択されるものである。
第1模擬血管15および第2模擬血管16は、模擬表皮材5と仕切シート材3bとの間において横方向に並設されている。これら模擬血管15,16のうち、第1模擬血管15は、模擬表皮材5に近接する位置に配されて比較的浅い位置にある血管の注射手技の練習に用いられ、一方、第2模擬血管16は、仕切シート材3bに近接する位置に配されて比較的深い位置にある血管の注射手技の練習に用いられる。
図1(a)に示されるように、第1模擬血管15において、一端側は第1模擬血管挿通孔11を通して、他端側は第3模擬血管挿通孔13を通して、それぞれ可撓性シート体3の外部に取り出されている。
また、第2模擬血管16においても同様に、一端側は第2模擬血管挿通孔12を通して、他端側は第4模擬血管挿通孔14を通して、それぞれ可撓性シート体3の外部に取り出されている。
こうして、可撓性を有する可撓性シート体3に設けられた模擬血管挿通孔11,13;12,14に模擬血管15;16が挿通されるため、模擬血管挿通孔11,13;12,14に対して模擬血管15;16を容易に抜き差しすることができる。
第1模擬血管15および第2模擬血管16のそれぞれの一端部は、三又管21を介して止水アジャスト22が装着された上流側ホース23の他端部と接続されている。この上流側ホース23の一端部は、血液を模した模擬血液が充填された模擬血液バッグ24に接続されている。模擬血液バッグ24中の模擬血液は、上流側ホース23から三又管21を介して第1模擬血管15および第2模擬血管16にそれぞれ流れる。なお、符号25にて示されるものは、模擬血液バッグ24を吊り下げ支持するためのスタンドである。
第1模擬血管15および第2模擬血管16のそれぞれの他端部は、三又管26を介して止水アジャスト27が装着された下流側ホース28の一端部と接続されている。
なお、止水アジャスト22,27は、上流側ホース23または下流側ホース28の任意の位置で模擬血液の流れを止める役目をする。
<板ばね体の説明>
図4に示されるように、可撓性シート体3における裏側シート材3aと仕切シート材3bとの間には、板ばね体30が組み込まれている。
図5(a)に示されるように、板ばね体30は、ステンレスまたは鉄製の比較的薄い四角形状の平板状ばね鋼からなり、弾性力に従って腕2と直交する横方向で裏側シート材3a側に丸く巻かれた巻き形状(同図(c)参照)と、この巻き形状から弾性力に抗して横方向に展開された展開形状(同図(a)参照)とに変形可能で、巻き形状から展開形状に変形させたときにその展開形状を維持するために腕2に沿う縦方向で仕切シート材3b(表側シート材3c)側に反り30aを持たせてなるものである。
板ばね体30が図5(a)に示されるような展開形状にあるときにおいて、その板ばね体30に設けられた反り30aを、展開形状と巻き形状との変わり目の形状(同図(b)参照)を越えて巻き形状へと変形させるように押し潰すことにより、その反り30aによって展開形状が維持されていた板ばね体30が弾性力に抗しきれずにその弾性力に従って同図(c)に示されるような巻き形状とされる。
板ばね体が図5(c)に示されるような巻き形状にあるときにおいて、その板ばね体30の弾性力に抗して横方向に展開して、巻き形状と展開形状との変わり目の形状(同図(b)参照)を越えて展開形状へと変形させることにより、その板ばね体30の反り30aによって同図(a)に示されるような展開形状が維持される。
なお、金属製の板ばね体30が裏側シート材3aと仕切シート材3bとの間に設けられることにより、注射針が模擬表皮材5を突き抜けても板ばね体30によってそれ以上の刺入動作が遮られ、可撓性シート体3を注射針が貫通するのを確実に防止することができる。また、板ばね体30の材質として、上記の形状変化を可能とする弾性を有するものであれば特に制限されないものであり、例えば樹脂製のものも使用可能である。
以上に述べたように構成される注射シミュレータ1においては、板ばね体30が巻き形状(図5(c)参照)から弾性力に抗して横方向に展開された展開形状(図5(a)参照)とされたとき、板ばね体30に設けられた反り30aによってその展開形状が維持され、展開形状に維持された板ばね体30の保形作用によって可撓性シート体3が図1(b)に示されるような平板形状に保たれる。
<腕への着脱動作の説明>
注射シミュレータ1を腕2に装着するにあたっては、図1(b)に示されるような平板形状に保たれた可撓性シート体3を腕2に巻き掛けるように押し付けて板ばね体30に設けられた反り30aを、展開形状と巻き形状との変わり目の形状(図5(b)参照)を越えて巻き形状へと変形させるように押し潰す。これにより、反り30aによって展開形状が維持されていた板ばね体30が弾性力に抗しきれずにその弾性力に従って図5(c)に示されるような巻き形状とされ、これに伴って可撓性シート体3がその板ばね体30の弾性力によって自動的に腕2に巻き掛けられる。こうして、平板形状に保たれた可撓性シート体3を腕2に巻き掛けるように押し付けるだけで板ばね体30の弾性力によって可撓性シート体3が腕2に自動的に巻き掛けられるので、腕2にワンタッチで装着することができる。
注射シミュレータ1を腕2から取り外すにあたっては、腕2に巻き掛けられた状態にある可撓性シート体3を板ばね体30の弾性力に抗して横方向に展開して、巻き形状と展開形状との変わり目の形状(図5(b)参照)を越えて図5(a)に示されるような展開形状へと変形させることにより、展開形状に維持された板ばね体30の保形作用によって可撓性シート体3が図1(b)に示されるような平板形状に保たれ、可撓性シート体3を腕2から容易に取り外すことができる。
ところで、板ばね体30が図5(c)に示されるような巻き形状の状態においては、図2に示されるように、可撓性シート3の表面側に引張力が、裏面側に圧縮力がそれぞれ生じ、これによって可撓性シート体3と模擬血管15,16とが互いに押し付け合うような力が作用し、両者間の摩擦力が増して、可撓性シート体3に対して模擬血管15,16の位置が固定され、可撓性シート体3に対して模擬血管15,16を抜き差しすることが困難なものとなる。
これに対して、板ばね体30が図5(a)に示されるような展開形状の状態においては、図3に示されるように、可撓性シート3の表面側および裏面側のいずれにも引張力や圧縮力が生じないので、可撓性シート体3と模擬血管15,16との間に互いに押し付け合うような力が作用せず、両者間の摩擦力が微小なものとなり、可撓性シート体3に対して模擬血管15,16の位置が可変とされ、可撓性シート体3に対して模擬血管15,16を容易に抜き差しすることができる。
<模擬血管の交換方法の説明>
使用に伴い模擬血管15,16の損傷がある許容範囲を超えれば新しい模擬血管15´,16´と交換する必要がある。
模擬血管15,16の交換作業は、図5(a)に示されるような展開形状に維持された板ばね体30の保形作用によって可撓性シート体3が図1(b)に示されるような平板形状に保たれた状態で以下の手順に従って実施される。
まず、図6(a)に示されるように、可撓性シート体3に取り付けられている古い模擬血管15,16の端部と別途用意されている新しい模擬血管15´,16´の端部とを継手31,31で連結する(新旧模擬血管連結工程)。
次いで、図6(b)〜(c)に示されるように、古い模擬血管15;16を模擬血管挿通孔11,13;12,14を通して引き抜くに伴いその引き抜き動作に連動して新しい模擬血管15´;16´を模擬血管挿通孔11,13;12,14を通して可撓性シート体3に差し込む(新旧模擬血管差替え工程)。
そして、古い模擬血管15,16と新しい模擬血管15´,16´との継手31,31による連結を解除する(新旧模擬血管連結解除工程)。
<作用効果の説明>
本実施形態の注射シミュレータ1によれば、以下の(1)〜(3)のような作用効果を得ることができる。
(1)可撓性のシート材からなる可撓性シート体3を腕2に巻き掛け装着する構成とされているので、薄型でフィット感に優れる。
(2)平板形状に保たれた可撓性シート体3を腕2に巻き掛けるように押し付けるだけで板ばね体30の弾性力によって可撓性シート体3が自動的に腕2に巻き掛けられるので、腕2にワンタッチで装着することができる。
(3)上記の新旧模擬血管連結工程と新旧模擬血管差替え工程とを実施することにより、たとえ模擬筋肉6が可撓性シート体3の内部に充填されていたとしても、可撓性シート体3の内部を縫うようにして新しい模擬血管15´;16´を元の位置に模擬血管挿通孔11,13;12,14を通して差し込むことができ、古い模擬血管15,16だけを新しい模擬血管15´,16´と容易に交換することができて、ランニングコストを下げることができる。
以上、本発明の注射シミュレータおよび模擬血管の交換方法について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
本発明の注射シミュレータおよび模擬血管の交換方法は、模擬血管を容易に交換することができるという特性を有していることから、教育現場や臨床現場における注射手技の練習の用途に好適に用いることができる。
1 注射シミュレータ
3 可撓性シート体
3a 裏側シート材
3b 仕切シート材
3c 表側シート材
4 表側シート材本体
5 模擬表皮材
6 模擬筋肉
11〜14 模擬血管挿通孔
15,16 模擬血管
30 板ばね体
30a 反り

Claims (3)

  1. 注射を練習するための注射シミュレータであって、
    模擬表皮部を有する表側シート材とその表側シート材の下側に配されるシート材とを含む複数のシート材が積層されてなり、腕または脚の肢体に巻き掛け可能な可撓性シート体と、前記表側シート材の下側に配されるシート材の裏側に配されるように前記可撓性シート体に組み込まれその可撓性シート体の形状を保持する板ばね体とを備え、
    前記可撓性シート体における前記表側シート材の前記肢体に沿う縦方向の一端部および他端部にそれぞれ模擬血管挿通孔を設け、これら模擬血管挿通孔を通して模擬血管を前記表側シート材における前記模擬表皮部とその模擬表皮部の下側に配されるシート材との間に組み込むとともに、前記模擬血管が、前記模擬表皮部またはその模擬表皮部の下側に配されるシート材に近接する位置に配されるようにし
    前記板ばね体は、前記模擬表皮部の全体を載せることができる大きさであり、弾性力に従って前記肢体と直交する横方向で裏側に丸く巻かれた巻き形状と、この巻き形状から弾性力に抗して横方向に展開された展開形状とに変形可能で、前記巻き形状から前記展開形状に変形させたときにその展開形状を維持するために前記肢体に沿う縦方向で表側に反りを持たせてなることを特徴とする注射シミュレータ。
  2. 注射を練習するための注射シミュレータであって、
    模擬表皮部を有する表側シート材とその表側シート材の下側に配されるシート材とを含む複数のシート材が積層されてなり、腕または脚の肢体に巻き掛け可能な可撓性シート体と、前記表側シート材の下側に配されるシート材の裏側に配されるように前記可撓性シート体に組み込まれその可撓性シート体の形状を保持する板ばね体とを備え、
    前記可撓性シート体における前記表側シート材の前記肢体に沿う縦方向の一端部および他端部にそれぞれ模擬血管挿通孔を設け、これら模擬血管挿通孔を通して模擬血管を前記表側シート材における前記模擬表皮部とその模擬表皮部の下側に配されるシート材との間に組み込むとともに、前記模擬血管が、前記模擬表皮部に近接する位置に配される第1模擬血管と、前記模擬表皮部の下側に配されるシート材に近接する位置に配される第2模擬血管とを有するものとし、
    前記板ばね体は、前記模擬表皮部の全体を載せることができる大きさであり、弾性力に従って前記肢体と直交する横方向で裏側に丸く巻かれた巻き形状と、この巻き形状から弾性力に抗して横方向に展開された展開形状とに変形可能で、前記巻き形状から前記展開形状に変形させたときにその展開形状を維持するために前記肢体に沿う縦方向で表側に反りを持たせてなることを特徴とする注射シミュレータ。
  3. 請求項1または2に記載の注射シミュレータの模擬血管の交換方法であって、
    展開形状に維持された前記板ばね体の保形作用によって前記可撓性シート体が平板形状に保たれた状態で、前記表側シート材における前記模擬表皮部とその模擬表皮部の下側に配されるシート材との間に組み込まれている古い模擬血管の端部と別途用意されている新しい模擬血管の端部とを継手で連結する新旧模擬血管連結工程と、
    前記古い模擬血管を前記模擬血管挿通孔を通して引き抜くに伴いその引き抜き動作に連動して前記新しい模擬血管を前記模擬血管挿通孔を通して前記表側シート材における前記模擬表皮部とその模擬表皮部の下側に配されるシート材との間に組み込む新旧模擬血管差替え工程と、
    を含むことを特徴とする模擬血管の交換方法。
JP2012135598A 2012-06-15 2012-06-15 注射シミュレータおよび模擬血管の交換方法 Active JP6039929B2 (ja)

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