以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。なお、同一の又は対応する要素には全ての図を通じて同一の符号を付し、重複説明を省略する。
(第1実施形態)
―構成―
図1は、第1実施形態に係る締結構造100の分解斜視図である。図1に示すように、締結構造100は、第1部材10、第2部材20及び1以上の締結機構30を備えている。第2部材20は、外壁部21と、外壁部21の裏面と対向する対向壁部22とを有している。
第1部材10は、外壁部21の表面に重ねられる重合壁部11を有している。第1部材10は、重合壁部11を外壁部21の表面に重ねた状態で、締結機構30で第2部材20に締結される。第1部材10が第2部材20に複数の締結点Pで締結される場合、互いに同様に構成される複数の締結機構30が複数の締結点Pに一対一で設けられる。
各締結機構30は、ボルト31、ナット32、固定具33及びワッシャ34を有している。ボルト31は、ナット32及び固定具33と螺合する。第1部材10は、各締結点Pで、ボルト31が挿通可能な挿通孔12を有している。挿通孔12は、第1部材10の重合壁部11を貫通している。第2部材20は、各締結点Pで、外壁部21を貫通する貫通穴23を有している。
貫通穴23は、締結作業前に外壁部21の表面側から外壁部21に穿孔加工を施すことで形成される。貫通穴23は、後述のとおり、固定具33の形状を考慮に入れた寸法及び形状に形成される。挿通孔12も、締結作業前に第1部材10に穿孔加工を施すことで形成される。
図2は、図1に示す締結構造100を組立て状態で示す断面図である。図2に示すように、組立て状態において、挿通孔12は、貫通穴23と連通する。ボルト31は、挿通孔12及び貫通穴23に挿通される。ボルト31の一端部は、貫通穴23より外壁部21の裏面側に突出し、対向壁部22の内面に当てられる。ボルト31の他端部は、挿通孔12より第1部材10の表面側に突出する。ナット32は、ボルト31と螺合し、重合壁部11の表面に締め付けられる。固定具33は、ボルト31と螺合し、外壁部21の裏面に締め付けられる。
第1及び第2部材10,20は、ナット32及び固定具33で挟み込まれることで互いに締結される。各締結機構30は、対応する締結点Pで両ナット方式の締結を実現しており、ボルト31、ナット32及び固定具33は、両ナットボルト、表ナット及び裏ナットとして機能する。
外壁部21と対向壁部22との間の壁間寸法D20は、特に限定されないが、例えば数cmであり、外壁部21の裏面に固定具33(裏ナット)を設置するための余地は存在する。第2部材20は、例えば、外壁部21及び対向壁部22を一体に有する管材である。その場合、外壁部21と対向壁部22との間の空間が閉じられるので、前述した余地自体は存在するものの、締結作業時のみならず締結作業前から外壁部21の裏面側に手を入れることが困難となる。
締結構造100では、締結作業前から外壁部21の裏面側に手を入れられなくても、第1及び第2部材10,20の表面側で締結作業を完結させることができる。その実現のため、貫通穴23及び固定具33は、固定具33が貫通穴23を通過するのを許容される通過可能状態と、固定具33が貫通穴23の周縁に当たって貫通穴23を通過できない阻止状態との間で固定具33の状態を切り換えることができるように形成されている。
本実施形態では、この状態の切換えが、固定具33の軸心が貫通穴23内に位置し、固定具33の軸方向が貫通穴23の貫通方向に向けられた状態で、固定具33が貫通穴23に対して固定具33の軸周りに相対回転することによって実現される。なお、「固定具33の軸方向」は、固定具33がボルト31に螺合した状態でボルト31の軸方向と一致し、「貫通穴23の貫通方向」は、外壁部21の板厚方向と一致する。
図3(a)は、図1に示す固定具33を軸方向に見て示す図である。図3(a)に示すように、固定具33は、軸方向に見たときに一方向(以下、「長手方向」という)に長寸である外形を有する。逆にいえば、固定具33は、軸方向に見たときに長手方向に垂直な方向(以下、「短手方向」という)に短寸である外形を有する。
固定具33は、ボルト31(図1参照)と螺合する雌ねじ穴41が貫通する穴形成部42と、穴形成部42から互いに反対側に突出する一対のフランジ部43,44とを有し、フランジ部43,44の突出方向が外形の長手方向となっている。穴形成部42は、フランジ部43,44よりも軸方向に突出する凸部45を有する。
第1フランジ部43の正面43a、凸部45の正面45a及び第2フランジ部44の正面44aは、軸方向に見たときに長手方向に連なり、固定具33の外形を一体となって形成する。各正面43a〜45aは、軸方向他方側の端面であり、軸に直交している。
雌ねじ穴41は、凸部45の正面45aに開口している。第1フランジ部43の正面43aは、第2フランジ部44bの正面44aと面積が等しい。正面43aは、正面44aと180度回転対称であり且つ固定具33の短手方向に延びる対称軸に対して線対称である。
図3(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線に沿って切断して示す断面図である。図3(b)に示すように、フランジ部43,44は、穴形成部42から軸直交方向に突出する。フランジ部43の正面43aとフランジ部44の正面44aとは、凸部45を間において長手方向に離れるが、同一の軸直交平面上に位置する。
凸部45の正面45aは、凸部45の第1側面45bを介して第1フランジ部43の正面43aと繋がり、凸部45の第2側面45cを介して第2フランジ部44の正面44aと繋がる。第1及び第2側面45b,45cは、互いに平行な平面であり、長手方向に離れて配置され、軸方向及び短手方向に延び、各正面43a〜45aに対し垂直である。
凸部45の側面幅A45は、固定具33の外形の短手寸法B33と等しい。凸部45の高さH45は、外壁部21の板厚t21(図2参照)と略同じである(僅かに小さい)。なお、側面幅A45は、第1側面45bから第2側面45cまでの長手方向距離であり、高さH45は、第1フランジ部43の正面43a(又は正面44a)から凸部45の正面45aまでの軸方向距離である。
図3(c)は、図1に示す貫通穴23の正面図である。図3(c)に示すように、貫通穴23は長穴である。貫通穴23は、一対の長エッジ23a,23bと、長エッジ23a,23bの一端同士を結ぶ第1短エッジ23cと、長エッジ23a,23bの他端同士を結ぶ第2短エッジ23dとで囲まれている。「エッジ」は、貫通穴23の内周面と、当該内周面と外壁部21の表面又は裏面とが成す角部とを含む。長エッジ23a,23bの延在方向が貫通穴23の長手方向となっており、長エッジ23a,23bの離間方向が貫通穴23の幅方向(長手方向及び貫通方向に垂直)となっている。
なお、第1短エッジ23cは、長エッジ23a,23bの一端同士を結ぶ直線上又はその外側を通過する。外側通過の一例として、第1短エッジ23cは、貫通穴23の貫通方向に見たときに中心が貫通穴23側に位置する円弧状であってもよい。第2短エッジ23dも同様である。
図3(a)及び(c)を参照すると、一対の長エッジ23a,23bは、正面視で平行な直線を成す。貫通穴23の幅W23は、固定具33の外形の短手寸法B33(及び凸部45の側面幅A45)と略同じである(僅かに大きい)。貫通穴23の長さL23は、固定具33の外形の長手寸法A33よりも大きい。外形が長方形の場合、長エッジ23a,23bの長さL23aが、外形の長手寸法A33(すなわち、長辺長さ)よりも大きい。
外形の短手寸法B33は、外形に外接する任意の2本の平行線を引いた場合における線間距離の最小値(いわゆる、最小フェレ径)として定義されてもよい。その場合、2線の延在方向が前述した長手方向に相当し、2線の離間方向が前述した短手方向に相当する。外形の長手寸法A33は、最小フェレ径を規定する平行線に垂直であり且つ外形に外接する2平行線の線間距離となる。
図4(a)は、通過可能状態を示す貫通穴23及び固定具33の正面図、図4(b)は、阻止状態を示す貫通穴23及び固定具33の正面図、図4(c)は、図4(b)のIVc−IVc線に沿って切断して示す断面図である。図4において、固定具33の軸方向は貫通穴23の貫通方向に向けられ、固定具33の軸心は貫通穴23内に位置する。特段断らない場合、固定具33の軸心は、貫通穴23の幅方向中心上に位置し続ける。
図4(a)に示すように、貫通穴23は長穴であり、固定具33は軸方向に見たときに一方向に長寸の外形を有している。外形の長手方向が貫通穴23の長手方向に向けられることにより、換言すれば、外形の短手方向が貫通穴23の幅方向に向けられることにより、固定具33が通過可能状態となる。短手寸法B33は貫通穴23の幅W23と略同じである(僅かに小さい)。よって、外形が貫通穴23内に収まって固定具33が軸方向に移動することで、固定具33は、長手方向に延びる固定具33の側面33a,33bが長エッジ23a,23bと接近する状態で、貫通穴23を通過することができる。
図4(b)に示すように、固定具33が通過可能状態から固定具33の軸周りに貫通穴23に対して相対回転し、外形の長手方向が貫通穴23の長手方向と異なる向きに向けられると、外形が貫通穴23から部分的にハミ出し、固定具33が阻止状態となる。
固定具33が通過可能状態からの回転量が大きくなるにつれ、外形の貫通穴23からのハミ出し量が大きくなっていく(図4(a)の二点鎖線参照)。固定具33が通過可能状態から90度回転すると、ハミ出し量が最大化する。180度回転すると固定具33は通過可能状態に戻る。通過可能状態は180度回転するたび離散的に実現される一方、阻止状態はこれを除いた広い回転角度範囲で実現されるところ、図4(b)では、固定具33が通過可能状態から90度回転し、外形の長手方向が貫通穴23の長手方向に垂直(すなわち、貫通穴23の幅方向)に向けられている場合を示している。
図4(a)に示すように、固定具33が通過可能状態になっているとき、凸部45の第1及び第2側面45b,45cは、長エッジ23a,23bの離間方向に平行(長エッジ23a,23bの延在方向に垂直)に位置決めされ、一対の長エッジ23a,23bの間に収まる。固定具33が通過可能状態から回転していくと、第1及び第2側面45b,45cは、長エッジ23a,23bの離間方向にも延在方向にも傾斜していくことになる。
図4(b)に示すように、固定具33が通過可能状態から90度回転し、外形の長手方向が貫通穴23の幅方向に向けられると、第1及び第2側面45b,45cは、長エッジ23a,23bの延在方向と平行になる。凸部45の側面幅A45は、固定具33の短手寸法B33と同じである。このため、固定具33を軸方向に移動させることで、凸部45は、第1及び第2側面45b,45cが一対の長エッジ23a,23bそれぞれと接近する状態で、貫通穴23内に進入することができる。
第1及び第2側面45b,45cは軸方向に延びる平行な平面であり、一対の長エッジ23a,23bは平行に直線的に延在し、凸部45の側面幅A45は貫通穴23の幅W23と略同じである。このため、凸部45が一旦貫通穴23内に進入してしまえば、固定具33を貫通穴23の幅方向に移動させようとしても、側面45b,45cが長エッジ23a,23bに当たり、固定具33の移動が規制される。また、固定具33が軸周りに回転しようとしても、側面45b,45cが長エッジ23a,23bに当たり、固定具33の回転は規制される。逆にいえば、固定具33が通過可能状態から回転し始めると、固定具33が90度回転するまでは、凸部45は貫通穴23に進入できない。
第1及び第2側面45b,45cの長さは、外形の短手寸法B33よりも長くなり得ない(外形が長方形の場合、短手寸法B33と等しくなる)。一方、貫通穴23の長さL23は、外形の長手寸法A33よりも大きいので、側面45b,45cの長さよりも大きい。このため、阻止状態で凸部45を貫通穴23内に進入させると、その進入した状態を維持して固定具33を貫通穴23の長手方向に移動させることができる。長エッジ23a,23bは、側面45b,45cと協働して固定具33の当該移動を案内する。
図4(c)に示すように、凸部45が貫通穴23に進入し続けると、貫通穴23から貫通穴23の幅方向両側にハミ出した一対のフランジ部43,44の正面43a,44aが貫通穴23の周縁に当たる。2つの正面43a,44aは同一の軸直交平面上に位置しているので、2つの正面43a,44aが両方とも貫通穴23の周縁に当たる。これにより固定具33は貫通穴23を通過できない。2つの正面43a,44aは面積が等しく、180度回転対称であり線対称である。固定具33から外壁部21に押付け力が付与されるとき、その力は2つの正面43a,44aから均等に付与される。
図4(b)に示すように、阻止状態で凸部45が貫通穴23内に進入すると、固定具33の幅方向の移動が規制される。よって、固定具33は、貫通穴23の幅方向両側で貫通穴23の周縁に当たる状態に維持される。また、外形の長手方向が貫通穴23の幅方向に向けられた状態で固定具33の回転が規制される。よって、固定具33は、外形の貫通穴23からのハミ出し量を最大化した状態に維持される。すなわち、固定具33は、貫通穴23を通過できない状態に、極力高い信頼性を持って維持される。
固定具33の外形は、非円形状及び非正多角形状である。図示されている長方形の場合、長辺方向、短辺方向、長辺長さ及び短辺長さが、前述した長手方向、短手方向、長手寸法A33及び短手寸法B33(最小フェレ径)に相当する。他例として、楕円又は菱形でもよく、楕円の場合、長軸方向、短軸方向、長軸長さ及び短軸長さが相当し、菱形の場合、長対角方向、短対角方向、長対角線長さ及び短対角線長さが相当する。長方形の場合、阻止状態で凸部45が貫通穴23内に進入したときに、フランジ部43,44の外壁部21への接触面積を大きく確保することができるので有益である。
なお、図2に示すように、ボルト31は頭部を有していない。これにより、後述する第1例に係る締結手順を容易に実行できる。挿通孔12は、貫通穴23と同寸同形である(図1も参照)。これにより、固定具33が挿通孔12を通過でき、後述する第2例に係る締結手順を容易に実行できる。両方の構成を備えることで、第1例及び第2例に係る締結手順を両方とも容易に実行できる。挿通孔12が貫通穴23と同寸同形で、それにより挿通孔12がボルト31に対して大きくなっても、ワッシャ34で締結信頼性を確保することができる。
ナット32は、貫通した雌ねじ穴を有している。ボルト31の呼び長さL31は、壁間間隔D20、外壁部21の板厚t21、重合壁部11の板厚t11、ワッシャ34の板厚t34及びナット32の高さm32の和を上回る。ボルト31は、他端部の端面に工具を係合させるための窪み31aを有する。窪み31aの形状は、例えば六角穴又はすり割りである。ボルト31の一端部の端面が軸に直交する平面である。ボルト31の先端形状は、例えば面取り先である。外壁部21の裏面と対向壁部22の内面とは互いに平行な平面である。角管は、裏面及び内面が平行な平面となる管材の典型例であり、第2部材20の一好適例である。
―締結手順―
以下、締結構造100における締結作業の手順を説明する。締結作業は、基本的には作業者の人手によって実行されるが、産業用ロボットによる自動化も可能である。図5及び図6を参照して、第1例に係る締結手順を説明する。
[A11] 先ず、ボルト31に固定具33を装着する(図5(a)参照)。
[A12] 次に、ボルト31の他端部を摘まみ、固定具33が通過可能状態となるように貫通穴23に対する固定具33の位置及び姿勢を合わせ、ボルト31を軸方向に移動操作し、ボルト31の一端部及び固定具33を外壁部21の表面側から貫通穴23を介して外壁部21の裏面側へ進入させる(図4(a)及び図5(a)参照)。この操作が行われることで、ボルト31は、貫通穴23に挿通され、固定具33は、ボルト31と螺合して外壁部21と対向壁部22との間に通過可能状態で配置される(図5(b)参照)。
[A13] 次に、ボルト31の他端部を摘まみ、ボルト31を回転操作する(図4(a)の二点鎖線及び図5(b)参照)。回転操作すると、固定具33の軸心が貫通穴23内に位置する状態で固定具33が貫通穴23に対して相対回転する。これにより、固定具33の状態が通過可能状態から阻止状態に切り換わる(図4(b)及び図5(c)参照)。
なお、固定具33は当然にボルト31から径方向に突出する。その固定具33が貫通穴23を通過するのを許容される。よって、固定具33が外壁部21の裏面側に進入してボルト31が貫通穴23に挿通されている状態で、ボルト31の外周面と貫通穴23の内周面との間には、最低でも固定具33の径方向突出量相当の遊びが存在する。ボルト31の回転操作はこの遊びによって許容されるので、外壁部21の表面側でボルト31を回転操作して固定具33の状態を切り換えるのは容易である。
[A14] 次に、ボルト31の他端部を摘まみ、ボルト31を手前に引っ張って、阻止状態となっている固定具33を外壁部21の裏面に押し当てる(図5(c)及び(d)参照)。
本実施形態では、固定具33が凸部45を有している。そこで、手順[A14]では、固定具33の長手方向が貫通穴23の幅方向に向けられるまでボルト31を回転してから、ボルト31を手前に引っ張る。この操作を行うことで、凸部45が貫通穴23内に外壁部21の裏面側から嵌め込まれ、第1フランジ部43の正面43a及び第2フランジ部44の正面44aが外壁部21の裏面に押し当てられる。
[A15] 次に、固定具33を外壁部21の裏面に押し当てた状態で、ボルト31を回転操作する(図5(d)参照)。固定具33と外壁部21の裏面との間に摩擦力が生じるので、固定具33の連れ回りが抑止される。よって、回転操作に伴い、ボルト31は外壁部21の裏面側へと進入していき、対向壁部22の内面に到達する(図6(a)参照)。
本実施形態では、凸部45が貫通穴23内に嵌合し、固定具33の回転が規制される。このため、固定具33を強く引っ張って強い摩擦力を生じさせなくても、固定具33の連れ回りを抑止できる。このため、ボルト31の回転操作を簡便に行うことができる。
[A16] 次に、固定具33が外壁部21の裏面に当たってボルト31の一端部が対向壁部に当たる状態で、ボルト31を更に回転操作する(図6(a)参照)。この操作が行われることで、固定具33が外壁部21の裏面に締付け力を与え、ボルト31が対向壁部22に締付け力を与える。ボルト31は、対向壁部22から垂直に立って他端部を外壁部21の表面側に突出させ、第2部材20に装着される。固定具33は、ボルト31に螺合して外壁部21の裏面に締め付けられる。
本実施形態では、外形の長手方向が貫通穴23の幅方向に向けられる。また、外形が長方形である。このため、固定部33の外壁部21との接触面積を極力大きくすることができ、固定具33の取付け信頼性が高くなる。
本実施形態では、固定具33を締め付けるときに、第1フランジ部43の正面43a及び第2フランジ部44の正面44aが座面となる。これら2つの正面43a,44aは、同一の軸直交平面上に位置しているので、両方とも外壁部21の裏面に当たる。よって、固定具33の取付け信頼性が高くなる。また、2つの正面43a,44aは面積が等しく、180度回転対称であり線対称である。このため、固定具33からの締付け力は、第1フランジ部43と第2フランジ部44とから略均等に外壁部21に与えられる。このため、固定具33の取付け信頼性が高くなる。本実施形態では、凸部45が貫通穴23内に嵌合し、固定具33の回転が規制され且つ固定具33の幅方向の移動が規制される。このため、フランジ部43,44の正面43a,44aが上記のように外壁部21に締め付けられている状態を維持できるので、固定具33の取付け信頼性が高くなる。
本実施形態では、ボルト31が他端部に窪み31aを有している。このため、工具を用いてボルト31を強く締め付けることができる。
本実施形態では、外壁部21の裏面と対向壁部22の内面とが平行な平面であり、ボルト31の一端部の端面が軸に直交する平面である。このため、ボルト31の一端部を対向壁部22の内面に面接触させてボルト31の軸方向を外壁部21の裏面及び対向壁部22の内面に直交させることができる。よって、固定具33及びボルト31が締付け力を軸方向において互いに反対側へと適切に向けることができ、ボルト31及び固定具33を第2部材20に安定的に取り付けることができる。ボルト31の先端形状が面取り先であれば、ボルト31と対向壁部22との接触面積が極力大きくなるので有益である。
[A17] 次に、第1部材10を外壁部21の表面に重ね合わせる(図6(b)参照)。このとき、ボルト31が第1部材10の挿通孔12に挿通され、ボルト31の他端部が第1部材10の表面から突出する。
本実施形態では、凸部45が貫通穴23内に進入するが、凸部45の高さH45が外壁部21の板厚t21と略同じである(僅かに小さい)。凸部45は外壁部21から表面側に突出しない。第1部材10を重ね合わせるときに、凸部45を挿通孔12に進入させなくてもよく、ボルト31のみ挿通させればよい。
[A18] 次に、第1部材10及び第2部材20の重合状態を保ちながら、ワッシャ34をボルト31に通したうえでナット32をボルト31に螺合装着する(図6(c)参照)。ナット32を回転操作し、ナット32を第1部材10の表面に締め付ける(図2参照)。
以上の第1例に係る締結手順を踏むことで、第1及び第2部材10,20は、固定具33及びナット32で挟み込まれることで互いに締結される。作業者は、全手順[A11]〜[A18]を第1及び第2部材10,20の表面側で行うことができ、外壁部21の裏面側に手を入れる必要がない。外壁部21の裏面側に手を入れにくい状況下でも、第1部材10を第2部材20に容易に締結できる。上記手順[A11]〜[A18]を逆にすれば、第1及び第2部材10,20の表面側で、第1部材10を第2部材20から取り外して締結機構30を第1及び第2部材10,20から取り外すことができる。
第2部材20へのタップ加工やナット設置は不要である。このため、仮に第1及び第2部材10,20が大型で締結点Pが多くても、締結構造100の製造が煩雑になるのを抑えられる。
対向壁部22はボルト31の進入を食い止める。これにより、第2部材20の表面側でボルト31を回転操作するという簡単な操作で、外壁部21と対向壁部22との間に配置された固定具23を外壁部21の裏面に締め付けることができる。また、ナット32の締付けを行わずとも、ボルト31を第2部材20に強固に取り付けることができる。よって、ボルト31を第2部材20に預けた状態で、第1部材10を第2部材20に重ね合わせることが許容される。
その場合、重ね合わせ時に、ボルト31を第1部材10の挿通孔12に挿通することになるので、ボルト31を用いて第1部材10を第2部材20に位置決めしたり、ボルト31で第1部材10を支持することもができる。このため、仮に第1及び第2部材10,20が大型である場合でも、第1部材10を第2部材20に重ね合わせる作業や、重合状態を保ちながらナット32を締め付ける作業を簡便に行うことができる。
本実施形態では、ボルト31が頭部を有していない。このため、ボルト31を一旦第2部材20に預け、その後からナット32をボルト31に装着することが可能になる。
締結機構30は、ねじ込み方式ではなく両ナット方式の締結を実現している。このため、第2部材20の材料又は板厚に関わらず、ボルト31、ナット32及び固定具33のねじ部長さ及び呼び径を必要な締結強度に応じて決めることができ、締結構造の汎用性が高くなる。
ボルト31の取付けに溶接は不要である。このため、第2部材20の材料が溶接に適さなくても、この締結構造を利用可能になる。また、腐食の懸念が抑えられ、付帯作業(ねじさらい等)も不要である。
ボルト31の外周面と貫通穴23の内周面との間に遊びが存在するので、遊びを利用して第2部材20に対するボルト31の位置を調整できる。このため、締結作業時に寸法誤差や組付け誤差を吸収できる。本実施形態では、凸部45が貫通穴23内に嵌合し、固定具33は、回転及び幅方向移動が規制されたうえで、貫通穴23の長手方向に移動可能である。よって、固定具33が適切に外壁部21の裏面に接触する状態を維持して、ボルト31の位置を調整することができる。
貫通穴23は外壁部21の裏面側に手を入れずに形成できる。このため、仮に締結作業前から外壁部21の裏面側に手を入れにくい場合でも、この締結構造を実現できる。
次に、図7及び図8を参照して、第2例に係る締結手順を説明する。
[A21] 先ず、ボルト31に固定具33を装着する(図7(a)参照)。ワッシャ34及びナット32は、固定具33と共にボルト31に装着されてもよく、後述の手順[A28]まで装着されなくてもよい。
[A22] 次に、第1部材10を外壁部21の表面に重ね合わせ、挿通孔12を貫通穴23と連通させる(図7(a)参照)。
[A23] 次に、第1及び第2部材10,20の重合状態を保ちながら、ボルト31の他端部を摘まみ、固定具33が通過可能状態となるように貫通穴23に対する固定具33の位置及び姿勢を合わせ、ボルト31を軸方向に移動操作し、ボルト31の一端部及び固定具33を第1部材10の表面側から挿通孔12及び貫通穴23を順に通過させて外壁部21の裏面側へと進入させる(図7(a)参照)。この操作が行われることで、ボルト31が、挿通孔12及び貫通穴23に挿通され、固定具33は、ボルト31と螺合して外壁部21と対向壁部22との間に通過可能状態で配置される(図7(b)参照)。
本実施形態では、挿通孔12が貫通穴23と同形同寸であるので、固定具33が挿通孔12を無理なく通過することができる。
[A24] 次に、重合状態を保ちながら、上記手順[A13]と同様に、ボルト31を回転操作する(図7(b)参照)。固定具33の状態が通過可能状態から阻止状態に切り換わる(図7(c)参照)。
[A25] 次に、重合状態を保ちながら、上記手順[A14]と同様に、阻止状態となっている固定具33を外壁部21の裏面に押し当てる(図7(c)及び(d)参照)。
[A26] 次に、重合状態を保ちながら、上記手順[A15]と同様に、ボルト31を回転操作し(図7(d)参照)、ボルト31を対向壁部22の内面に到達させる(図8(a)参照)。
[A27] 次に、重合状態を保ちながら、上記手順[A16]と同様に、ボルト31を更に回転操作し(図8(a)参照)、ボルト31を第2部材20に取り付け、固定具33を外壁部21の裏面に締め付ける。
[A28] 次に、重合状態を保ちながら、ナット32を回転操作し(図8(b)参照)、ナット32を第1部材10の表面に締め付ける(図2参照)。
第2例に係る締結手順を踏んでも、第1例に係る締結手順を踏んだときと同一の締結構造100が完成する。作業者は、全手順[A21]〜[A28]を第1及び第2部材10,20の表面側で行うことができ、外壁部21の裏面側に手を入れる必要がない。外壁部21の裏面側に手を入れにくい状況下でも、第1部材10を第2部材20に容易に締結できる。
この締結構造100では、ボルト31を第2部材20に取り付けるのを先とするのか、第1部材10を第2部材20に重ね合わせるのを先とするのか選択の余地がある。作業者は、状況に応じて手順を選択することができる。
どちらの手順を選択する場合でも、作業者は第1及び第2部材10,20の表面側でボルト31の他端部を摘まんで締結作業を進めていくことになる。ボルト31の呼び長さL31(図2参照)が前述したように設定されているので、ボルト31の他端部を第1及び第2部材10,20の表面側に十分に突出させることができ、締結作業を簡便に行うことができる。ナット32は貫通した雌ねじ穴を有しているので、ボルト31を表面側に大きく突出させてもナット32を第1部材10に強く締め付けることができる。
組立て状態で、凸部45は貫通穴23内に嵌まり込んでいる。このため、固定具33に外部から荷重が作用してもフランジ部23が裏面に当たっている状態を維持しやすく、締結構造100の信頼性が高くなる。
―適用例―
図1に戻り、本締結構造100は、例えば、冷却塔のルーバーパネル51のフレーム52への取付けに用いられる。つまり、第1部材10がルーバーパネル51で、第2部材20がフレーム52であってもよい。フレーム52は、充填材(図示せず)が充填されると共に水が流れる内空間を規定する箱枠を構成し、複数の側開口52A(箱枠が直方体状であれば4つ)を有する。各側開口52Aは、鉛直に延在する一対の柱52Bと、鉛直方向に離れて配置されて水平に延在する一対の梁52Cとで囲まれ、各梁52Cは2本の柱52Bを接続する。柱52B及び梁52Cはフレーム52を構成する。ルーバーパネル51は、1つの側開口52Aを塞ぐ。
この場合、前述の外壁部21が、当該1つの側開口52Aを規定するフレーム29の柱52B及び梁52Cによって正面視で概略矩形枠状に形成される。前述の重合壁部11が、ルーバーパネル51の縁部によって正面視で外壁部51と同様の形状に形成される。例えば、複数の締結点Pが、各柱52Bに鉛直方向に間隔をおいて設定される。
ルーバーパネル51は、重合壁部11の内域にルーバー部51Aを有し、ルーバーパネル51がフレーム52に取り付けられた状態において、ルーバー部51Aが側開口52Aとオーバラップする。冷却塔は屋外に設置される。冷却塔の使用時、外気がルーバー部51Aを介してフレーム52の内空間に取り入れられ、水の冷却に利用される。ルーバーパネル51は、メンテナンスのため適時に取り外される。その際、開放された側開口52Aをフレーム52の内空間に手を入れるためのメンテナンス口に用い、充填材の交換作業を行ってもよい。メンテナンス終了後、ルーバーパネル51はフレーム52に再び取り付けられる。
ルーバーパネル51は、例えばFRPで製造される。これにより、大型であっても極力軽量化され、作業者が重機を使わず締結作業及び取外し作業を行うことができる。また、屋外に晒されても耐候性及び耐食性を確保することができる。冷却塔のフレーム52は、角管などの管材で製造される。その際、管材は例えばステンレス鋼で製造され、屋外に晒されても耐候性又は耐食性を確保することができる。フレーム52が角型鋼管であれば、冷却塔の強度を確保できる。
締結構造100を適用する場合、フレーム52に貫通穴23を形成し、ルーバーパネル11に挿通孔12を形成すればよい。このため、冷却塔の製造が、締結構造100の適用によって煩雑になるのを抑えることができる。ルーバーパネル51が大型で、締結点Pが多くても、簡便にルーバーパネル51の取付け及び取外しを行うことができ、メンテナンス作業も簡便となる。
締結構造100は、冷却塔の他の締結点に適用されてもよく、冷却塔以外でパネル材をフレームに締結する際に適用されてもよい。パネルの締結以外の用途に適用されてもよい。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る締結構造200について、第1実施形態との相違を中心に説明する。
図9は、第2実施形態に係る締結構造200の分解斜視図である。図9に示すように、第2部材220は、外壁部221を貫通する貫通穴223を有し、締結機構330は、ボルト31と螺合する固定具233を有する。貫通穴223及び固定具233は、通過可能状態と阻止状態との間で固定具233の状態を切り換えることができるように形成されている。本実施形態では、この状態の切換えが、固定具233の軸心が貫通穴223内に位置し、固定具233の軸方向が貫通穴223の貫通方向に向けられた状態で、固定具233が貫通穴223に対して固定具233の径方向に相対移動することによって実現される。
貫通穴223は、第1実施形態と同様、締結作業前に外壁部211の表面側から外壁部221に穿設加工を施すことによって形成される。なお、第1部材210の重合壁部211には挿通孔211が形成されている。挿通孔211は、貫通穴223と同寸同形に形成されていてもよいし、ボルト31を挿通可能であるものの固定具233が通過できないような寸法及び形状に形成されていてもよい。
固定具233は、第1実施形態のような外形を有していなくてもよい。固定具233は、ボルト31と螺合するために貫通した雌ねじ穴241を有していればよく、軸方向に見たときに円形でも正多角形でもよい。固定具233は例えば六角ナットでもよい。
図10(a)は、通過可能状態を示す貫通穴223及び固定具233の正面図、図10(b)は、阻止状態を示す貫通穴223及び固定具233の正面図である。図10(a)及び(b)に示すように、貫通穴223は、大穴部224と、大穴部224と連続する長穴の幅狭部225とを有し、全体として鍵穴状に形成されている。
大穴部224の内寸は、軸方向に見たときにおける固定具233の外形よりも大きい。例えば、固定具233が六角ナットであれば、大穴部224は、固定具233(六角ナット)の対角距離E233よりも僅かに大きい直径D224を有する円形である。
幅狭部225は、固定具233の外形(例えば、六角ナットの対角距離E233)よりも小さく且つボルト31の呼び径D31よりも大きい幅W225を有する。貫通穴223の貫通方向が水平である場合、幅狭部225は、大穴部224から鉛直下向きに延びていてもよい。幅狭部225は対を成していてもよく、その場合、大穴部224から互いに反対側に延びる。
図10(a)に示すように、固定具233は、軸方向に大穴部224と重なることで通過可能状態となる。図10(b)に示すように、固定具233は、通過可能状態から径方向に移動し、軸方向に幅狭部225と重なることで、固定具233の正面233aが貫通穴223から部分的にハミ出し、阻止状態となる。なお、固定具233が六角ナットの場合、阻止状態において対角方向を幅狭部225の幅方向に一致させ、対面方向を幅狭部225の長手方向に一致させることで、固定具233の外壁部221への接触面積を極力大きくすることができる。
図11は、図9に示す締結構造200を組立て状態で示す断面図である。この締結構造200においても、第1実施形態と同様の手順を踏むことで、同様の構成が得られる。つまり、ボルト31は、貫通穴223及び挿通孔212に挿通され、ボルト31の一端部が外壁部221の裏面側に突出して対向壁部22に当てられ、ボルト31の他端部が第1部材210の表面側に突出する。固定具233は、ボルト31と螺合し、外壁部221と対向壁部22との間に阻止状態で配置されて外壁部221の裏面に締め付けられる。ナット32は、ボルト31と螺合して第1部材210の表面に締め付けられる。第1及び第2部材210,220は、固定具233及びナット32で挟み込まれることで互いに締結される。作業者は、第1及び第2部材210,220の表面側で締結作業を行うことができ、外壁部221の裏面側に手を入れる必要がない。
なお、第1実施形態における第1例に係る締結手順に準じて締結作業を行う場合、手順[A13]の回転操作に代えて、ボルト31の他端部を摘まみ、ボルト31が幅狭部に挿通されて固定具233が軸方向に幅狭部と重なるように、ボルト31を径方向に移動操作する。それにより固定具233の状態が通過可能状態から阻止状態に切り換わる。第2例に係る締結手順に準ずる場合も、手順[A24]の回転操作に代えて、第1及び第2部材210,220の重合状態を保ちながら、同様の移動操作が行われる。
(変形例)
上記実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更、削除及び追加可能である。
フランジ部43,44の正面43a,43bは、軸心から離れるほど凸部45の突出方向に向かうように傾斜してもよい。それにより、固定具33を外壁部21の裏面に締め付けたときに、フランジ部43,44の弾発力が外壁部21に作用し、フランジ部43,44が外壁部21から離れにくくなる。
また、凸部45の側面45b,45cはフランジ部43,44に対して垂直に形成されていなくとも良くテーパが形成されても良い。フランジ部43a、44a側から凸部45の正面45aに向けて径が縮小するようにテーパを設けても良い。
また、凸部45の高さH45は外壁部21の厚さt21よりもわずかに小さく形成しているが、これに限定されず、厚さt21よりもわずかに大きく形成し、第1部材10の厚さt11と第2部材20の厚さt21の合計厚さよりもわずかに小さく形成するようにしても良い。固定具33の凸部45を利用して第1部材10の位置を締結前に固定することができる。
また、第1部材に形成される挿通孔の形状と第2部材に形成される貫通穴の形状は同じである必要は無く、それぞれ異なる形状であっても良い。さらに第1部材に形成される挿通孔と第2部材に形成される貫通穴をそれぞれ長方形(楕円形含む)形状に形成し、それぞれが90度ずれた形状となるように挿通孔と貫通穴を配置しても良い。このように配置することで上下方向と左右方向に位置を調整することが容易となる。
第2実施形態に係る固定具233に、幅狭部235に嵌合可能な凸部を設けてもよく、それにより第1実施形態と同様、阻止状態になっている固定具233の回転を規制することができる。