JP6038157B2 - アセトニトリルの精製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アセトニトリルの精製方法に関する。
現在、一般に市販されているアセトニトリルは、主に、プロピレン又はイソブテンと、アンモニアと、酸素と、の接触的アンモ酸化反応によってアクリロニトリル又はメタクリロニトリルを製造する際に副生成物として得られる粗アセトニトリルを回収、精製したものである。
アセトニトリルは、化学反応用の溶媒、特には医薬中間体の合成や精製に用いられる溶媒や、高速液体クロマトグラフィーの移動層溶媒などに用いられる。また、最近はDNA合成・精製溶媒、有機EL材料合成用溶媒、電子部品の洗浄溶剤などにもアセトニトリルが用いられるようになってきている。上記したような用途の場合、特に高純度に精製されたアセトニトリルが要求される。
アンモ酸化反応によって得られた粗アセトニトリルには、様々な不純物が含まれている。現在までに、粗アセトニトリルを精製するための方法として、粗アセトニトリルとアルカリとを混合する方法が提案されている。
特許文献1には、不純物を含む粗製アセトニトリルを精製するにあたって、アルカリを添加することによりpH10〜13.5の範囲になるように調整し、加熱処理した後、更にホルムアルデヒド調整液で処理してアクリロニトリル及び青酸を分解する方法が開示されている。粗製アセトニトリルに添加するアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアが挙げられている。
特許文献2には、含水アセトニトリルにアルカリを加え、10℃〜50℃で撹拌して水性相を分離して除去するアセトニトリルの脱水精製方法が開示されている。分離された水性相にはアルカリと水の他に、シアン化水素、アクリロニトリルが含まれており、この水性相は、特許文献1に記載のアセトニトリルの精製工程におけるアルカリ源として用いることができることが記載されている。
特許文献3には、アンモ酸化反応によって副生したアセトニトリルを60℃でアルカリ処理し、シアン化水素及びアクリロニトリルを分解させた後、脱水塔で更にアルカリを加えてアセトニトリルを脱水する方法が開示されている。アセトニトリルの処理に用いたアルカリ水溶液は加熱濃縮して回収され、脱水塔に供給されるアルカリ源として再利用されている。
特開昭48−81816号公報 特開昭55−153757号公報 特開2000−128847号公報
上記特許文献に開示されたアセトニトリルの精製工程においては、いずれもアルカリ源として水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムなどの金属水酸化物及び/又はアンモニアが用いられている。しかしながら、本発明者らが検討した結果、従来の手法では、アルカリを用いて不純物を分解する際、アセトニトリルも同時に加水分解されていることが明らかになった。アセトニトリルが分解されると、当該アセトニトリルは酢酸等の有機酸に変化するため、高純度アセトニトリルの生産量を低下させる要因となる。また、上記のように有機酸が生じることによりpHが低下し、不純物の分解にはより多くのアルカリが必要になることも問題となる。アセトニトリルの加水分解はアルカリによって促進されるため、アルカリ添加量を増やすことは好ましい方法とは言えない。
上記の従来技術が有する課題に鑑み、本発明は、不純物を分解させる際にアセトニトリルの加水分解を抑制し、高純度アセトニトリルの生産量を向上させることのできるアセトニトリルの精製方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、粗アセトニトリルに含まれるアクリロニトリル、青酸といった不純物を分解させる反応槽中に、アセトアミド及び/又は酢酸を供給することによりアセトニトリルの加水分解が抑制されることを発見し、本発明に到達した。さらに、精製プロセス中で発生するアセトアミド及び酢酸に着目し、これを利用する方法を検討したところ、前記アセトアミド及び/又は酢酸を含むアルカリを用いた場合においても、アセトニトリルの加水分解が抑制されることを見出した。
即ち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
アンモ酸化反応により得られた粗アセトニトリルと、アルカリと、アセトアミド及び/又は酢酸と、を反応槽に供給して反応液を得る工程(i)と、
前記工程(i)の後、前記反応液を蒸留塔に導入し、当該反応液を蒸留して留出液を得ると共に前記反応槽での反応物を含む高沸物を除去する工程(ii)と、
前記工程(ii)の後、前記留出液を脱水塔に供給し、アルカリ水溶液を前記脱水塔に加えてアセトニトリル相を得ると共に当該アルカリ水溶液を含む水相を分離する工程(iii)と、
を含み
記反応槽に供給される前記アルカリが、前記水相の一部を含む、アセトニトリルの精製方法。
[2]
前記水相中のアセトアミド及び/又は酢酸濃度が、0.50質量%以上25質量%以下である、請求項1に記載のアセトニトリルの精製方法。
[3]
前記アルカリ水溶液を40℃以上90℃以下で前記脱水塔に加えることを含む、上記[1]又は[2]記載のアセトニトリルの精製方法。
[4]
上記[1]〜[3]のいずれか記載のアセトニトリルの精製方法を用いてアセトニトリルを精製することを含む、高純度アセトニトリルの製造方法。
本発明のアセトニトリルの精製方法によれば、不純物を分解させる反応槽でのアセトニトリルの加水分解を抑制し、高純度アセトニトリルの生産量を向上させることができる。
図1は、本発明の一実施形態に係るアセトニトリル製造装置の概略図の一例である。 図2は、本発明の一実施形態に係るアセトニトリル製造装置の概略図の別の一例である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。装置や部材の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
本実施形態におけるアセトニトリルの精製方法は、アンモ酸化反応により得られた粗アセトニトリルと、アルカリと、を反応槽に供給して反応液を得る工程と、前記反応液を蒸留して留出液を得る工程と、前記反応槽にアセトアミド及び/又は酢酸を供給する工程と、を含む。
図1に示すとおり、本実施形態におけるアセトニトリルの精製装置の一例としては、粗アセトニトリルが導入される濃縮塔1を有し、かつ、濃縮塔1に反応槽2を介して高沸分離塔3、脱水塔4、低沸分離塔5及び製品塔6がこの順に接続された構成を有する。
粗アセトニトリルは、例えば、プロピレン、プロパン、イソブテン、イソブタンから接触的アンモ酸化反応によってアクリロニトリル又はメタクリロニトリルを製造する際に、副生成物として得られる。一般的には、アンモ酸化反応の生成物を抽出蒸留し、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルを主成分として含む留分とは別の留分として、粗アセトニトリルが回収される。ここで、「粗アセトニトリル」とは、アンモ酸化反応の生成物を抽出蒸留することによって得られる留分のうち、アセトニトリルの含有量が最も高いものを示す。粗アセトニトリルは、一般的には大部分のアクリロニトリル又はメタクリロニトリルを回収する蒸留塔から分離され、通常、5〜40質量%のアセトニトリル、50〜95質量%の水の他、シアン化水素、アリルアルコール、オキサゾール、アクリロニトリル、プロピオニトリル、アセトン、青酸、メタクリロニトリル、cis−及びtrans−クロトンニトリル、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクロレイン、メタクロレイン、アンモニア等の多くの種類の不純物を含む。
粗アセトニトリルは、ライン7からアセトニトリル濃縮塔1の中段に送られる。アセトニトリル濃縮塔1は、直立の蒸留塔であって、その塔底には図示しないリボイラーを、塔頂には図示しないコンデンサーを、それぞれ有している。塔頂部(ライン8)よりシアン化水素を、塔底部(ライン9)より水を除去しながら、塔中間部(ライン10)から濃縮した粗アセトニトリルを抜き出す。以下では、上記抜き出された粗アセトニトリルを「濃縮粗アセトニトリル」ともいう。ライン10には図示しないサイドカットコンデンサーが備わっており、そのサイドカットコンデンサーによりガス状の濃縮粗アセトニトリルを凝縮するようになっている。サイドカットコンデンサーから流出した液状の濃縮粗アセトニトリルは反応槽2に流入する。濃縮塔1から反応槽2に供給される濃縮粗アセトニトリル中のアセトニトリル濃度は、通常50〜70質量%であり、その他に水25〜70質量%、シアン化水素、アクリロニトリル、アリルアルコール等その他の不純物を含んでいる。
反応槽2において濃縮粗アセトニトリルをアルカリで処理することにより、不純物として含まれるアクリロニトリルやシアン化水素を、スクシノニトリルやダイマー等の重合物に変換する。重合反応を十分に進行させる観点から、反応槽2の温度は50℃以上80℃以下であることが好ましく、より好ましくは60℃以上75℃以下で3.0時間以上15時間以下、更に好ましくは60℃以上75℃以下で4.0時間以上10時間以下反応させる。
本実施形態における精製方法においては、ライン11などから反応槽2に、アセトアミド及び/又は酢酸を添加することができる。アセトニトリルは高温で加水分解を起こし、特に50℃以上の温度で当該加水分解が顕著になる。したがって、反応槽2における反応条件下では、アセトニトリルは容易に加水分解によりアセトアミドを経て酢酸とアンモニアに分解され、アセトニトリルの回収量は減少するのが通常である。ところが、アセトアミド及び/又は酢酸を反応槽2に供給すると、反応槽2におけるアセトニトリルの加水分解が抑制され、アセトニトリルの回収量が向上することがわかった。反応槽2に供給するアセトアミド及び/又は酢酸の濃度は、特に限定されないが、ライン11等の供給液中のアセトアミド及び/又は酢酸濃度は、0.50質量%以上25質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.0質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以上15質量%以下である。濃縮塔1から反応槽2への流入量とライン11等の供給液量を考慮すると、反応槽2におけるアセトアミド及び/又は酢酸濃度は、0.050質量%以上2.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.25質量%以上1.5質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上1.5質量%以下である。つまり、ライン11等の供給液に含まれるアセトアミド及び/又は酢酸の濃度が0.5質量%以上であると、アセトニトリルの加水分解抑制効果が顕著に出現する傾向にある。また、25質量%以下とする場合には、前記効果を十分に確保することができるだけでなく、上記供給液の粘性を低減することができ、十分な取り扱い性を確保できる傾向にある。
なお、ライン11から供給されるアルカリ中のアセトアミド及び/又は酢酸濃度は、脱水塔4に供給するアルカリ水溶液の温度及び滞留時間を調節することによって調節することができる。
アセトニトリルは、塩基性下でアセトアミドに変換され、さらにアンモニアを遊離し、酢酸へと逐次的に加水分解される。本発明者らの検討から、アセトニトリルがアセトアミドに変換される反応の速度は、アセトアミドが酢酸に変換される速度より遅いことが分かった。すなわち、アセトニトリルが酢酸に加水分解される反応は、アセトニトリルがアセトアミドに変換される反応が律速となる。
アセトアミド及び/又は酢酸は、アセトニトリル分解反応の速度を低下させる効果を有し、アセトニトリルの分解を抑制すると考えられる。アセトニトリルの工業的製造は、多くの場合、連続プロセスで行われており、反応槽への原料供給と反応混合物の抜き出しとは常にバランスするように調節されている。特定の成分のみが滞留することはほぼ起こり得えないため、アセトニトリルの分解反応の速度を低下させるには、アセトアミド及び/又は酢酸の供給が必要となる。また、アセトニトリルを非連続プロセスで製造する場合は、アセトニトリルがアセトアミド、酢酸に分解され、ある一定量のアセトアミド及び/又は酢酸が生成した時点で、アセトニトリル分解反応の速度低下は自然に起き得る現象と考えられる。しかしながら、反応槽においてアセトニトリルが分解されると、酢酸が生成してpHが低下するため、アクリロニトリルやシアン化水素といった不純物の分解が遅くなる。これを防ぐには新たなアルカリを反応槽に供給しなければならないが、アセトニトリル分解反応はアルカリによって促進されるため、アセトニトリル分解反応が更に進行する。この場合においても、アセトアミド及び/又は酢酸の相対的な量を増やすことにより、アセトニトリルの分解抑制効果が高まるため、系外からアセトアミド及び/又は酢酸を供給することは有効である。
よって、連続プロセス、非連続プロセスのいずれの場合も、反応槽にアセトアミド及び/又は酢酸を供給することにより、アセトニトリルの分解を抑制しつつ、不純物を分解することが可能となる。
反応槽に供給される酢酸は、純粋に酢酸として存在している必要はない。酢酸は、酢酸イオン又は酢酸塩(酢酸ナトリウムや酢酸カリウムなど)いずれかの形態でも問題なく、アセトニトリルの分解を抑制することが可能である。
反応槽2の反応液を、ライン12を通じて、高沸分離塔3に送る。高沸物の分離の観点で、高沸分離塔3は、減圧蒸留塔であるのが好ましい。高沸分離塔3の塔頂よりアセトニトリルを水との共沸組成混合物、あるいはそれに近い組成混合物として回収し、図示していないコンデンサーで液化させる。凝縮液の一部は、図示していないラインで高沸分離塔3に還流し、残部はライン14より、脱水塔4に送る。高沸分離塔3の塔底のライン13より反応槽2で生成したスクシノニトリルやダイマー等の重合物、アルカリ、酢酸塩、アリルアルコール、プロピオニトリル、水及び少量のアセトニトリルを分離し、廃水処理設備等に送る。塔底には、蒸留に必要な熱を与える図示しないリボイラーが設置されており、蒸留に必要な熱を供給する。
高沸分離塔3の圧力は、高沸物の分離の観点及び反応槽2で生成したスクシノニトリルやダイマー等の分解を抑制する観点から、絶対圧で80mmHg以上760mmHg以下であることが好ましく、より好ましくは100mmHg以上300mmHg以下である。圧力を上記範囲に設定した場合、塔底部温度は30℃以上80℃以下であることが好ましく、より好ましくは40℃以上60℃以下であり、塔頂部温度は、20℃以上70℃以下であることが好ましく、より好ましくは30℃以上50℃以下である。
脱水塔4では、高沸分離塔3の塔頂から得られる留出液に加え、当該留出液中に存在する水を抽出するのに十分な量のアルカリを40℃以上75℃以下で水溶液としてライン15より加えて混合される。次いで、10℃以上50℃以下で0.10時間以上3.0時間以下かけて抽出分離した水相を脱水塔4の塔底より除去することによって、ライン17からアセトニトリル相を得ることができる。アルカリ水溶液としては、特に限定されないが、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムの水溶液を用いることが好ましい。
図2に示すとおり、本実施形態におけるアセトニトリルの精製装置の概略図の別の一例としては、脱水塔4から分離された水相の一部を反応槽2に循環していること以外は、図1と同様の装置である。すなわち、脱水塔4から分離された水相の一部は、ライン11より反応槽2に供給される。
本実施形態における精製方法においては、脱水塔4から分離された水相の一部を循環させ、反応槽2に供給するアルカリ源として用いることができる。脱水塔4で分離した水相を用いることにより、系外から新たにアルカリを供給する必要が無いか、或いは系外からのアルカリの供給量を低減することができ、精製工程全体のアルカリの供給量を削減することに寄与する。
脱水塔4においても、アセトニトリルはわずかに分解され、アセトアミド及び/又は酢酸が生成する。このとき、脱水塔4におけるアセトアミド及び/又は酢酸の生成を制御する観点から、脱水塔4に供給するアルカリ水溶液を温めておくことが好ましい。脱水塔4に供給するアルカリ水溶液の温度は、好ましくは40℃以上90℃以下、より好ましくは45℃℃以上75℃以下、さらに好ましくは45℃以上65℃以下である。脱水塔4での滞留時間は0.10時間以上3.0時間以下、より好ましくは0.20時間以上2.8時間以下である。脱水塔4から抽出分離された水相にはアルカリ、アセトアミド及び/又は酢酸が含まれることになるため、この水相を反応槽2に導入するとアセトニトリルの加水分解を抑制する効果を奏する。一方、反応槽2の滞留時間は3.0時間以上15時間以下、より好ましくは4.0時間以上10時間以下であり、脱水塔4の滞留時間と比較して長い。ゆえに、反応槽2の方がアセトニトリルの加水分解が進み易い傾向にある。脱水塔4で加水分解されるアセトニトリルの分を加味しても、アセトアミド及び/又は酢酸の供給による、反応槽2でのアセトニトリル分解抑制効果の寄与が大きく、高純度アセトニトリルの収量はむしろ増加する傾向にある。従って、脱水塔4から分離された水相の一部を循環させ、反応槽2に供給するアルカリ源とすることは、精製工程全体のアルカリ供給量削減と、反応槽2におけるアセトニトリルの分解抑制の二つを同時に達成する観点で好ましい。
脱水塔4における抽出温度は、ライン17から流出するアセトニトリル中の水分を低くする観点及び必要以上のアセトニトリルの加水分解を抑制する観点から、5℃以上40℃以下であることが好ましく、10℃以上35℃以下であることがより好ましい。前記抽出温度に保持するため、ライン14からの液を予め冷却して脱水塔4に供給したり、脱水塔4本体を冷却してもよい。ここで、抽出温度とは、脱水塔4内の温度のことを示し、より具体的には、脱水塔4内の、高沸分離塔3の塔頂液フィード位置からアルカリフィード位置の内部液の温度を示す。
脱水塔4におけるアルカリの使用量は、アセトニトリル中の含有水分によって変わるが、通常はアセトニトリル中の含有水分に対して10質量%以上90質量%以下、好ましくは30質量%以上60質量%以下の範囲である。アルカリによって水分を抽出する方法により、アセトニトリル中の水分の量を好ましくは10質量%以下、より好ましくは3質量%以下にする。
脱水塔4の塔底液(水相)の少なくとも一部を、ライン11を通して反応槽2に送る場合、脱水塔4の塔底液余剰分は、ライン16を通して廃水処理設備に送り、処理する。脱水塔4の塔底液には、主にアルカリとしての水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムや水の他、アセトアミド、酢酸(アルカリ塩も含む)及び少量のアセトニトリル等が含まれている。
脱水塔4の塔底液の反応槽2への送液量は、アクリロニトリル及びシアン化水素をアセトニトリルから除去する観点及びアセトニトリルの加水分解を抑制する観点から、反応槽2の内液のシアン化水素1モル当たり1.0モル以上3.5モル以下の水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムとなるよう調整されることが好ましい。この場合の反応槽2内の混合液のpHは12.0±1.5となる。脱水塔4の塔底液の反応槽2へのリサイクルにより、反応槽2に添加するアルカリの不要化又は低減化、及び脱水塔4の塔底液の廃水処理量の削減が達成できる。さらに、脱水塔4の塔底液に少量含まれているアセトニトリルの回収を行うことができるという利点も有する。
反応槽2におけるアセトニトリルの分解量が減少することで、最終の蒸留塔である製品塔6の塔頂ライン21から回収されるアセトニトリルの質量が増加する。生産する高純度アセトニトリルの質量が同じ場合、アセトニトリル精製装置に供給する粗アセトニトリル質量が削減でき、アセトニトリル精製装置の小型化が達成できる。また、分解するアセトニトリルが減少するので、処理しなければならない廃水量が削減でき、廃水処理設備の小型化及び環境負荷を低減できる。
脱水塔4で脱水後、アセトニトリルに比べて低沸点の化合物及び高沸点の化合物を分離除去するために、2本以上の蒸留塔を用いることが好ましい。具体的には、まず低沸分離塔5で塔頂からライン18を通じて低沸点化合物を分離除去し、低沸分離塔5の塔底液をライン19を通じて製品塔6に送る。この後、製品塔6で高沸点化合物を塔底からライン20を通じて分離し、塔頂のライン21から精製したアセトニトリルを得るのが好ましい。
低沸分離塔5及び製品塔6において、還流比や低沸点化合物及び高沸点化合物の抜き出し量は、目的に合う精製度になるように適宜決定することができる。目的とする精製度にもよるが、低沸分離塔5及び製品塔6の還流比は1以上50以下とするのが好ましく、より好ましくは2以上30以下である。還流比は蒸留塔に還流される質量を蒸留塔外に排出される質量で割った値として定義される。還流比は、蒸留による不純物の分離除去を効率よく行う観点から、定められた値を運転中安定的に保持することが、高純度のアセトニトリルを精製する上で好適である。低沸分離塔5及び製品塔6の圧力の下限は、当該蒸留塔において分離すべき成分がそれぞれ適切な沸点を示すように設定され、絶対圧で0.05MPa以上であることが好ましく、より好ましくは0.08MPa以上、更に好ましくは0.09MPa以上である。圧力の上限は、絶対圧で0.27MPa以下であることが好ましく、より好ましくは0.20MPa以下、更に好ましくは0.15MPa以下である。上記好ましい圧力に設定した場合、低沸分離塔5及び製品塔6の塔底温度は80℃以上95℃以下であることが好ましく、より好ましくは80℃以上88℃以下であり、塔頂温度は70℃以上90℃以下であることが好ましく、より好ましくは75℃以上85℃以下である。
低沸分離塔5及び製品塔6は、塔頂にコンデンサー、塔底にリボイラーをそれぞれ有する棚段塔又は充填塔であるのが好ましい。棚段塔の例としては、ダウンカマーを有する十字流接触型やダウンカマーの無い向流接触型等が挙げられる。また、トレイの開口部として泡鐘型、多孔板型、バルブ型等のものを用いることができる。この蒸留塔の段数としては10段以上あれば特に制限はないが、30段以上80段以下であることが好ましい。充填塔の例としては、充填物として不規則充填物及び/又は規則充填物を充填した塔を用いることができる。不規則充填物としては、例えば、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インターロックサドル、テラレットパッキング、ディクソンリング又はマクマホンパッキング等が使用できる。規則充填物としては、網目構造の充填物を用いることができる。これら不規則及び規則充填物の材質としては、磁製、金属製、プラスチック製又はカーボン製等のものを使用することができる。また、該充填塔は適当な高さの所に液再分布板を設けて気液の接触効率を高めることもできる。
低沸分離塔5及び製品塔6のリボイラーに供給する蒸気の圧力は、被加熱液体との温度差を適正にする観点から、1.0MPaG以下にすることが好ましく、より好ましくは0.6MPaG以下とする。
以上のとおり、本実施形態において、アセトニトリルの精製方法は、アンモ酸化反応により得られた粗アセトニトリルと、アルカリと、アセトアミド及び/又は酢酸とを反応槽に供給して反応液を得る第一の工程と、前記反応液と前記アセトアミド及び/又は酢酸との混合液を蒸留して留出液を得る第二の工程と、を含むことが好ましい。
本実施形態における高純度アセトニトリルの製造方法は、上述した精製方法を用いてアセトニトリルを精製することを含む製造方法である。ここで、高純度アセトニトリルの製造においては、本実施形態における精製方法を用いること以外は、従来公知の方法を用いることができる。ここで、高純度アセトニトリルの「高純度」とは、99.9質量%以上の純度を意味する。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
アセトニトリル、アクリロニトリル、アリルアルコール、オキサゾール、プロピオニトリル及びアセトアミドの濃度測定には、ガスクロマトグラフィーを用い、そのときの条件は以下のとおりであった。
ガスクロマトグラフィーは、ヒューレッドパッカード社製HP−6890を用い、カラムは、アジレントテクノロジーズ社製DB−624を用いた。すなわち、上記カラムとしては、長さ60m×内径0.32mm、膜厚5.0μmであった。検出器としてはFIDを用い、キャリヤーガスにはヘリウムを用いた。
カラム温度条件は、以下のとおりであった。
初期温度: 70℃
初期時間: 10分
昇温速度: 5.0℃/分
中間温度: 120℃
ポストタイム: 10分
最終温度: 250℃
シアン化水素濃度測定は硝酸銀滴定法、アンモニア濃度測定はイオンクロマトグラフィー、水濃度測定はカールフィッシャー法で行った。
酢酸濃度測定に際して、その一部がアルカリ塩となっていると考えられるため、硫酸でpHを6に調整することにより酢酸として解離させ、前記ガスクロマトグラフィーで分析した。
水酸化ナトリウム濃度測定は、酢酸による中和滴定法により水酸化物イオン濃度を求め換算した。さらにイオンクロマトグラフィーでナトリウムイオンの濃度を求め、換算して確認を行った。
アセトアミド濃度及び酢酸濃度は、液温及び分析に要する時間に影響を受けることを考慮し、サンプリング後、液を冷却すると共に分析をすばやく実施した。場合によりアセトアミドと酢酸の合計濃度として表示した。
上記以外の物質は、同定及び定量せず、その他物質としてバランスさせた。特に反応槽2では、アクリロニトリル及びシアン化水素が単独及び複合的に反応及び重合して消失するため、これら生成物はその他にカウントした。
分析用サンプルは、図1又は2における指定されたラインに設置されているノズルからその部位における代表サンプルとなるよう分析で必要な量を採取し、前記方法で分析した。
[実験例1]
混合器に、アセトニトリル(MeCN)65質量%及び水35質量%からなる濃縮粗アセトニトリル500gと、水、水酸化ナトリウム及びアセトアミドからなるアルカリ液53.4gとを入れて混合液とした。この混合液を70℃でかき混ぜながら、5時間保持した。前記アルカリ液中の水酸化ナトリウム濃度は25質量%、アセトアミド濃度は1質量%であった。
各液の組成及びアセトニトリル(MeCN)分解率を表1に示す。なお、アセトニトリル分解率は、下式で定義される値とした。
アセトニトリル分解率(%)=(1−反応液中のアセトニトリル質量/濃縮粗アセトニトリル中のアセトニトリル質量)×100
Figure 0006038157
[実験例2]
アルカリ液中の酢酸濃度を3質量%にしたこと以外は、実験例1と同様にして、70℃で5時間撹拌を行った。各液の組成及びアセトニトリル分解率を表2に示す。
Figure 0006038157
[実験例3]
アルカリ液中のアセトアミド及び酢酸濃度をそれぞれ5.0質量%及び4.0質量%にしたこと以外は、実験例1と同様にして、70℃で5時間撹拌を行った。各液の組成及びアセトニトリル分解率を表3に示す。
Figure 0006038157
[実験例4]
アルカリ液中のアセトアミド及び酢酸濃度をそれぞれ7.0質量%及び8.0質量%にしたこと以外は、実験例1と同様にして、70℃で5時間撹拌を行った。各液の組成及びアセトニトリル分解率を表4に示す。
Figure 0006038157
[実施例1]
図2に示す精製装置を用いてアセトニトリルの精製を行った。プロピレンのアンモ酸化反応の副生物であるアセトニトリルを15質量%含有する粗アセトニトリルを、ライン7よりアセトニトリル濃縮塔1に供給した。ライン8よりシアン化水素、ライン9より水の一部を分離除去した。ライン10より蒸気を抜き出して、ライン10に設置されている図示しないコンデンサーで凝縮させ、アセトニトリルを65質量%含む濃縮粗アセトニトリルを得た。濃縮粗アセトニトリルのその他の組成としては、水32質量%、シアン化水素1.1質量%、アクリロニトリル360質量ppm、アンモニア100質量ppmであり、その他にアリルアルコール、オキサゾール及びプロピオニトリル等を含んでいた。
濃縮粗アセトニトリル2580kg/hをライン10を通じて反応槽2に供給した。反応槽2には、ライン11より後述する脱水塔4の塔底液230kg/hを加え、73℃において8時間反応させた。
反応槽2の反応液2810kg/hをライン12を通じて、高沸分離塔3に送った。塔底に設置されているリボイラーに、0.4MPaGの蒸気2.8t/hを流し、蒸留を行った。塔頂圧及び塔底圧は、それぞれ絶対圧で235mmHg及び255mmHg、塔頂温度及び塔底温度は、それぞれ41.5℃及び58.9℃であった。塔底よりアリルアルコール、プロピオニトリル、水酸化ナトリウム及び水などを含有する液770kg/hを抜き出し、廃水処理した。塔頂から留出する蒸気をコンデンサーで凝縮させた。凝縮液3940kg/hを高沸分離塔3に還流し、留出液2040kg/hをライン14から図示していない熱交換器で冷却して脱水塔4の下部に供給した。
脱水塔4の上部のライン15から温度80℃の48質量%水酸化ナトリウム水溶液300kg/hを供給し、ライン14から供給した温度7.1℃の留出液と液−液接触させた。脱水塔4は、その外側にジャケットを有し、冷却が可能な構成とした。脱水塔4の塔底から水相を抜き出し、内230kg/hをライン11から反応槽2に供給した。塔底液の残りは、ライン16から図示しない廃水処理設備に送り、処理した。ライン16から抜き出した量は260kg/hでバランスした。ライン17から25.9℃のアセトニトリル相1850kg/hを抜き出した。
反応槽2のマテリアルバランスを採取したところ、表5のとおりであった。
Figure 0006038157
[実施例2]
ライン15から供給する48質量%水酸化ナトリウム水溶液の温度を65℃にしたこと以外は実施例1と同じ条件で運転操作を行った。反応槽2のマテリアルバランスを採取したところ、表6のとおりであった。
Figure 0006038157
[実施例3]
ライン15から供給する48質量%水酸化ナトリウム水溶液の温度を45℃にしたこと以外は実施例1と同じ条件で運転操作を行った。反応槽2のマテリアルバランスを採取したところ、表7のとおりであった。
Figure 0006038157
[実施例4]
実施例1におけるライン17から抜き出したアセトニトリル相を低沸分離塔5に供給した。低沸分離塔5のリボイラーに、0.4MPaGの蒸気2.6t/hを流し、蒸留を行った。塔頂圧及び塔底圧は、それぞれ絶対圧で0.1172MPa及び0.1181MPa、塔頂温度及び塔底温度は、それぞれ78.8℃及び86.4℃であった。塔頂から留出する蒸気をコンデンサーで凝縮させた。コンデンサーの冷媒としては、28℃の水を用いた。凝縮液4150kg/hを低沸分離塔5に還流し、300kg/hをライン18から抜き出し、オキサゾール及び低沸点物質を除去した。ライン18の液は、廃水処理した。ライン19から抜き出した1550kg/hの液を製品塔6に送った。
製品塔6のリボイラーに、0.4MPaGの蒸気1.6t/hを流し、蒸留を行った。塔頂圧及び塔底圧は、それぞれ絶対圧で0.1100MPa及び0.1112MPa、塔頂温度及び塔底温度は、それぞれ81.2℃及び82.2℃であった。ライン20からプロピオニトリルや高沸点物質を含む液70kg/hを抜き出し、廃水処理した。塔頂から留出する蒸気をコンデンサーで凝縮させ、還流ドラムに流下させた。コンデンサーの冷媒としては、28℃の水を用いた。還流ドラム内の凝縮液4380kg/hをポンプを用いて製品塔6に還流し、1480kg/hをライン21から抜き出し、精製した高純度アセトニトリルを得た。
高純度アセトニトリル中の不純物を分析したところ、表8に示す結果を得た。
Figure 0006038157
[実施例5]
実施例2におけるライン17から抜き出したアセトニトリル相を低沸分離塔5に供給したこと以外は実施例4と同じ条件で運転操作を行った。
ライン21から精製した高純度アセトニトリル1484kg/hを抜き出した。高純度アセトニトリル中の不純物を分析したところ、表9に示す結果を得た。
Figure 0006038157
[実施例6]
実施例3におけるライン17から抜き出したアセトニトリル相を低沸分離塔5に供給したこと以外は実施例4と同じ条件で運転操作を行った。
ライン21から精製した高純度アセトニトリル1485kg/hを抜き出した。高純度アセトニトリル中の不純物を分析したところ、表10に示す結果を得た。
Figure 0006038157
[比較実験例1]
混合器に、アセトニトリル65質量%及び水35質量%からなる濃縮粗アセトニトリル500gと、水及び水酸化ナトリウムからなるアルカリ液53.4gとを入れて混合液とした。この混合液を70℃でかき混ぜながら、5時間保持した。各液の組成及びアセトニトリル分解率を表11に示す。
Figure 0006038157
[比較実験例2]
混合器に、アセトニトリル65質量%及び水35質量%からなる濃縮粗アセトニトリル500gと、水、水酸化ナトリウム及びアンモニアからなるアルカリ液53.4gとを入れて混合液とした。この混合液を70℃でかき混ぜながら、5時間保持した。各液の組成及びアセトニトリル分解率を表12に示す。
Figure 0006038157
[比較例1]
図1に示す精製装置を用いてアセトニトリルの精製を行った。脱水塔4の塔底液は全てライン16から抜き出し、廃水処理設備に送り、反応槽2には、ライン11から水酸化ナトリウム水溶液を添加した。これら以外は、実施例1と同様の設備でアセトニトリルを精製した。
プロピレンのアンモ酸化反応の副生物である粗アセトニトリルを15質量%含有する液をライン7よりアセトニトリル濃縮塔1に供給した。ライン8よりシアン化水素、ライン9より水の一部を分離除去した。ライン10より蒸気を抜き出して、ライン10に設置されている図示しないコンデンサーで凝縮させ、アセトニトリルを65質量%含む濃縮粗アセトニトリルを得た。濃縮粗アセトニトリルのその他の組成としては、水32質量%、シアン化水素1.1質量%、アクリロニトリル360質量ppm、アンモニア100質量ppmであり、その他にアリルアルコール、オキサゾール及びプロピオニトリル等が含まれていた。
濃縮粗アセトニトリル2580kg/hをライン10を通じて反応槽2に供給した。反応槽2には、ライン11より48質量%水酸化ナトリウム水溶液180kg/hを加え、73℃において8時間反応させた。
反応槽2の反応液2760kg/hをライン12を通じて、高沸分離塔3に送った。塔底に設置されているリボイラーに、0.4MPaGの蒸気2.8t/hを流し、蒸留を行った。塔頂圧及び塔底圧は、それぞれ絶対圧で235mmHg及び255mmHg、塔頂温度及び塔底温度は、それぞれ41.5℃及び58.9℃であった。塔底よりアリルアルコール、プロピオニトリル、水酸化ナトリウム及び水などを含有する液790kg/hを抜き出し、廃水処理した。塔頂から留出する蒸気をコンデンサーで凝縮させ、凝縮させた液を3940kg/hを高沸分離塔3に還流し、留出液1970kg/hをライン14から図示しない熱交換器で冷却して、脱水塔4の下部に供給した。
脱水塔4の上部のライン15から温度50℃の48質量%水酸化ナトリウム水溶液300kg/hを供給し、ライン14から供給した温度7.3℃の留出液と液−液接触させた。脱水塔4は、その外側にジャケットを有し、冷却が可能な構成とした。脱水塔4の塔底から水相475kg/hを抜き出し、ライン16から図示しない廃水処理設備に送り、処理した。前記水相の温度は、15.5℃であった。
ライン17からアセトニトリル相1795kg/hを抜き出し、低沸分離塔5に供給した。前記アセトニトリル相の温度は、25.7℃であった。
反応槽2のマテリアルバランスを採取したところ、表13のとおりであった。
Figure 0006038157
[比較例2]
比較例1におけるライン17から抜き出したアセトニトリル相を低沸分離塔5に供給した。低沸分離塔5のリボイラーに、0.4MPaGの蒸気2.5t/hを流し、蒸留を行った。塔頂圧及び塔底圧は、それぞれ絶対圧で0.1172MPa及び0.1181MPa、塔頂温度及び塔底温度は、それぞれ78.8℃及び86.4℃であった。塔頂から留出する蒸気をコンデンサーで凝縮させた。コンデンサーの冷媒としては、28℃の水を用いた。凝縮液4150kg/hを低沸分離塔5に還流し、300kg/hをライン18から抜き出し、オキサゾール及び低沸点物質を除去した。ライン18の液は、廃水処理した。ライン19から抜き出した1495kg/hの液を製品塔6に送った。
製品塔6のリボイラーに、0.4MPaGの蒸気1.6t/hを流し、蒸留を行った。塔頂圧及び塔底圧は、それぞれ絶対圧で0.1100MPa及び0.1112MPa、塔頂温度及び塔底温度は、それぞれ81.2℃及び82.2℃であった。ライン20からプロピオニトリルや高沸点物質を含む液70kg/hを抜き出し、廃水処理した。塔頂から留出する蒸気をコンデンサーで凝縮させ、還流ドラムに流下させた。コンデンサーの冷媒としては、28℃の水を用いた。還流ドラム内の凝縮液4380kg/hをポンプを用いて製品塔6に還流し、1425kg/hをライン21から抜き出し、精製した高純度アセトニトリルを得た。
高純度アセトニトリルの不純物を分析したところ、表14に示す結果を得た。
Figure 0006038157
[実施例7]
プロパンのアンモ酸化反応の副生物であるアセトニトリルを12質量%含有する粗アセトニトリルを実施例1と同様の設備に供給し、アセトニトリルの精製を行った。
粗アセトニトリルをライン7よりアセトニトリル濃縮塔1に供給した。ライン8よりシアン化水素、ライン9より水の一部を分離除去した。ライン10より蒸気を抜き出して、ライン10に設置されている図示しないコンデンサーで凝縮させ、アセトニトリルを65質量%含む濃縮粗アセトニトリルを得た。濃縮粗アセトニトリルのその他の組成としては、水32質量%、シアン化水素1.3質量%、アクリロニトリル350質量ppm、アンモニア100質量ppmであり、その他にアリルアルコール及びプロピオニトリル等を含んでいた。
濃縮粗アセトニトリル2580kg/hをライン10を通じて反応槽2に供給した。反応槽2には、ライン11より後述する脱水塔4の塔底液230kg/hを加え、73℃において8時間反応させた。
反応槽2の反応液2810kg/hをライン12を通じて、高沸分離塔3に送った。塔底に設置されているリボイラーに、0.4MPaGの蒸気2.8t/hを流し、蒸留を行った。塔頂圧及び塔底圧は、それぞれ絶対圧で235mmHg及び255mmHg、塔頂温度及び塔底温度は、それぞれ41.5℃及び58.9℃であった。塔底よりアリルアルコール、プロピオニトリル、水酸化ナトリウム及び水などを含有する液770kg/hを抜き出し、廃水処理した。塔頂から留出する蒸気をコンデンサーで凝縮させ、凝縮させた液3940kg/hを高沸分離塔3に還流し、留出液2040kg/hをライン14から図示しない熱交換器で冷却して脱水塔4の下部に供給した。
脱水塔4の上部のライン15から温度50℃の48質量%水酸化ナトリウム水溶液300kg/hを供給し、ライン14から供給した温度7.1℃の留出液と液−液接触させた。脱水塔4は、その外側にジャケットを有し、冷却が可能な構成とした。脱水塔4の塔底から水相を抜き出し、内230kg/hをライン11から反応槽2に供給した。塔底液の残りは、ライン16から図示しない廃水処理設備に送り、処理した。ライン16から抜き出した量は260kg/hでバランスした。
ライン17から25.9℃のアセトニトリル相1850kg/hを抜き出した。反応槽2のマテリアルバランスを採取したところ、表15のとおりであった。
Figure 0006038157
[実施例8]
実施例7におけるライン17から抜き出したアセトニトリル相を低沸分離塔5に供給した。低沸分離塔5のリボイラーに、0.4MPaGの蒸気2.6t/hを流し、蒸留を行った。塔頂圧及び塔底圧は、それぞれ絶対圧で0.1172MPa及び0.1181MPa、塔頂温度及び塔底温度は、それぞれ78.8℃及び86.4℃であった。塔頂から留出する蒸気をコンデンサーで凝縮させた。コンデンサーの冷媒としては、28℃の水を用いた。凝縮液4150kg/hを低沸分離塔5に還流し、300kg/hをライン18から抜き出し、低沸点物質を除去した。ライン18の液は、廃水処理した。ライン19から抜き出した1550kg/hの液を製品塔6に送った。
製品塔6のリボイラーに、0.4MPaGの蒸気1.6t/hを流し、蒸留を行った。塔頂圧及び塔底圧は、それぞれ絶対圧で0.1100MPa及び0.1112MPa、塔頂温度及び塔底温度は、それぞれ81.2℃及び82.2℃であった。ライン20からプロピオニトリルや高沸点物質を含む液70kg/hを抜き出し、廃水処理した。塔頂から留出する蒸気をコンデンサーで凝縮させ、還流ドラムに流下させた。コンデンサーの冷媒としては、28℃の水を用いた。還流ドラム内の凝縮液4380kg/hをポンプを用いて製品塔6に還流し、1486kg/hをライン21から抜き出し、精製した高純度アセトニトリルを得た。
高純度アセトニトリル中の不純物を分析したところ、表16に示す結果を得た。
Figure 0006038157
上記実施例及び比較例の結果から、高純度のアセトニトリルを精製するプロセスにおいて、反応槽2にアセトアミド及び/又は酢酸を供給することにより、高純度アセトニトリルの品質に変化を及ぼすことなくアセトニトリル回収率を向上できることが分かる。さらに、脱水塔4の塔底液を反応槽2のアルカリ源として利用することで、アルカリ使用量を低減できることが分かる。
本出願は、2012年8月31日出願の日本特許出願(特願2012−192215号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明のアセトニトリルの精製方法は、廃水処理量及び精製に用いられるケミカル使用量が少なく、精製設備も工程も簡易なプロセスである。また、本発明の方法によれば、医薬中間体の合成・精製の溶媒、DNA合成・精製溶媒、有機EL材料合成用溶媒、電子部品の洗浄溶剤などの用途向けに使用可能な高純度アセトニトリルを効率よく精製することができる。
1 アセトニトリル濃縮塔
2 反応槽
3 高沸分離塔
4 脱水塔
5 低沸分離塔
6 製品塔
7〜21 ライン

Claims (4)

  1. アンモ酸化反応により得られた粗アセトニトリルと、アルカリと、アセトアミド及び/又は酢酸と、を反応槽に供給して反応液を得る工程(i)と、
    前記工程(i)の後、前記反応液を蒸留塔に導入し、当該反応液を蒸留して留出液を得ると共に前記反応槽での反応物を含む高沸物を除去する工程(ii)と、
    前記工程(ii)の後、前記留出液を脱水塔に供給し、アルカリ水溶液を前記脱水塔に加えてアセトニトリル相を得ると共に当該アルカリ水溶液を含む水相を分離する工程(iii)と、
    を含み
    記反応槽に供給される前記アルカリが、前記水相の一部を含む、アセトニトリルの精製方法。
  2. 前記水相中のアセトアミド及び/又は酢酸濃度が、0.50質量%以上25質量%以下である、請求項1に記載のアセトニトリルの精製方法。
  3. 前記アルカリ水溶液を40℃以上90℃以下で前記脱水塔に加えることを含む、請求項1又は2記載のアセトニトリルの精製方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のアセトニトリルの精製方法を用いてアセトニトリルを精製することを含む、高純度アセトニトリルの製造方法。
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