JP6036884B2 - 大入熱溶接特性および延性に優れた非調質高張力鋼板の製造方法。 - Google Patents

大入熱溶接特性および延性に優れた非調質高張力鋼板の製造方法。 Download PDF

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Description

本発明は、船舶や建築・土木等の分野における各種鋼構造物に使用される鋼材に関わり、特に溶接入熱量が200kJ/cm以上となる大入熱溶接を施した場合においても優れた溶接部靭性を有する、降伏応力が460MPa以上、板厚50mm以下の延性に優れた非調質高張力鋼板の製造方法に関する。
鋼材の高強度化、厚肉化に伴い、溶接施工に、サブマージアーク溶接、エレクトロガス溶接およびエレクトロスラグ溶接など生産能率に優れる大入熱溶接が適用されることが増加している。
大入熱溶接された溶接熱影響部(HAZという場合がある)の靭性は低下する。そのため、溶接熱影響部の靭性の向上を目的とした種々の大入熱溶接用鋼が提案され、TiNを鋼中に微細分散させ、溶接熱影響部のオーステナイト粒の粗大化を抑制したり、また、溶接熱影響部でのフェライト変態核として利用する技術が実用化されている。
しかし、溶接熱影響部がTiNが溶解する温度域では靭性の向上効果は得られず、さらに地組織が固溶Tiおよび固溶Nにより脆化して靭性が著しく低下するという問題があった。
そのため、溶接熱影響部が高温域でも溶解しないTi酸化物のうち、粒度5μm以下のTiOx(但し、x:0.65〜1.3)を、鋼中に微細分散させて、溶接熱影響部における針状フェライトの生成核として利用したり(特許文献1)、鋼組成におけるB、Nおよびsol.Al量を調整して、溶接熱影響部を微細化させるBNを積極的に析出させたりして(特許文献2)、溶接熱影響部の靭性を向上させる技術が提案されている。Ti酸化物を利用する技術では酸化物を均一に微細分散させることが困難なため、酸化物の複合化などで分散能を改善する検討が行われている。
また、鋼組成においてTi−B−N量をHAZ靭性が高靭性領域となるように調整し、更にCaまたはCeを添加して介在物の形態制御による靭性改善効果を付与したり(特許文献3)、鋼組成を低N−低Ti系として、溶接のボンド部においても安定な硫・酸化物を形成するREMを添加することで大入熱溶接部の靭性を改善する技術も提案されている(特許文献4)。
しかし、特許文献1〜4記載の技術では200kJ/cmを超える大入熱溶接で溶接熱影響部のオーステナイトの粒成長を十分に抑制することが困難である。これを受けて、特許文献5では、変態核となって溶接熱影響部でのフェライト変態を促進するCa系非金属介在物(Ca、O、S含有量)を適正に制御することで、Ca系非金属介在物を鋼中に微細分散させ、400kJ/cmを超える大入熱溶接の溶接熱影響部靭性を向上させることが開示されている。
特開昭57−51243号公報 特開昭62−170459号公報 特開昭60−204863号公報 特公平4−14180号公報 特許第3546308号公報
ところで、近年、大入熱溶接は、降伏強度が460MPaクラスを超える高強度鋼材に適用されることが増加している。特許文献2や特許文献5に記載の粒内フェライトの生成によりHAZ靭性を改善する技術は降伏強度が390MPaクラスの鋼材が対象で、降伏強度が460MPaクラスを超えると大入熱溶接時の遅い冷却速度でも炭素等量が高いために粒内はフェライトとベイナイトの混合組織となり靭性は改善されない。
鋼材の需要分野においては、鋼板の高強度化により重量を低減した高効率運搬船用として、板厚25mmから50mm程度までの中厚の高張力鋼板に対する需要が高まっている。当該高張力鋼板に対し大入熱溶接部の継手靭性が確保されるように合金設計を行い、母材強度を確保するため、冷却工程を含む製造方法を適用する。冷却速度の遅い鋼板の板厚内部に対し、冷却速度の速い鋼板表面が著しく硬化するため、延性が低下するようになる。
そこで本発明は、溶接入熱が200kJ/cm以上となる大入熱溶接熱影響部での優れた靭性、および優れた母材延性(全伸びが19%以上)を備えた、板厚が50mm以下で、母材の降伏強さが460MPa以上の非調質高張力鋼板が得られる製造方法を提案することを目的とする。
発明者等は上記課題を解決するため種々の検討を重ね、以下の知見を得た。
1.大入熱溶接熱影響部の靭性向上には、高温領域でのオーステナイト粒の粗大化を抑制し、その後の冷却過程で粒内フェライトを生成させ、ベイナイト中の島状マルテンサイト(MAという場合がある。)量を低減させることが肝要で、そのためには鋼組成におけるC、Si、P量の低減が肝要である。
2.母材延性の向上には表層組織の硬度低減および微細化が必要であり、圧延後の冷却を冷却途中で一旦停止させ、復熱後、再度冷却を開始する二段冷却とすることで、鋼板表面における、一段階目の冷却停止温度と二段階目の冷却開始温度を制御することが有効である。
3.上記2の二段冷却によって、鋼板表面の組織が微細なフェライト主体組織となり、適切な圧延条件と組み合わせることで板厚が50mm以下であっても降伏強度が460MPa以上で延性に優れた高張力鋼板の製造が可能である。
本発明は、得られた知見をもとに更に検討を加えて完成したもので、本発明の要旨は以下の通りである。
[1]鋼組成が、質量%で、C:0.030〜0.100%、Si:0.01〜0.15%、Mn:0.80〜2.00%、P:0.020%以下、S:0.0005〜0.0050%、Al:0.005〜0.100%、Nb:0.003〜0.030%、Ti:0.005〜0.050%、Ni:0.30〜2.00%、N:0.0030〜0.0100%、B:0.0003〜0.0025%、Ca:0.0005〜0.0030%、O:0.0040%未満、かつ、下記(1)式を満たすように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、1050℃〜1200℃に加熱後、鋼板表面温度が900℃以下の温度域で累積圧下率:30%以上、圧延終了温度:Ar変態点以上の熱間圧延を施し、冷却速度:2℃/秒以上で(Ar変態点−100℃)以下の温度域に一次冷却を実施した後、冷却を停止して、Ac変態点以上Ac変態点以下の温度域に復熱させ、その後、板厚方向中央の温度がAr変態点以上の温度域から冷却速度:2℃/秒以上で450℃未満まで二次冷却後、空冷することを特徴とする大入熱溶接特性および延性に優れた非調質高張力鋼板の製造方法。
0<(Ca−(0.18+130×Ca)×O)/1.25/S<1 ・・・(1)
但し、各元素記号は各元素の含有量(質量%)を示す。
[2]鋼組成が、質量%で、C:0.030〜0.100%、Si:0.01〜0.15%、Mn:0.80〜2.00%、P:0.020%以下、S:0.0005〜0.0050%、Al:0.005〜0.100%、Nb:0.003〜0.030%、Ti:0.005〜0.050%、Ni:0.30〜2.00%、N:0.0030〜0.0100%、B:0.0003〜0.0025%、Ca:0.0005〜0.0030%、O:0.0040%未満、かつ、下記(1)式を満たすように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、1050℃〜1200℃に加熱後、鋼板表面温度が900℃以下の温度域で累積圧下率:30%以上、圧延終了温度:Ar変態点以上の熱間圧延を施し、その後、直ちに、冷却速度:2℃/秒以上で(Ar変態点−100℃)以下の温度域に一次冷却を実施した後、冷却を停止して、Ac変態点以上Ac変態点以下の温度域に復熱させ、その後、板厚方向中央の温度がAr変態点以上の温度域から冷却速度:2℃/秒以上で450℃未満まで二次冷却後、空冷することを特徴とする大入熱溶接特性および延性に優れた非調質高張力鋼板の製造方法。
0<(Ca−(0.18+130×Ca)×O)/1.25/S<1 ・・・(1)
但し、各元素記号は各元素の含有量(質量%)を示す。
[3]鋼組成が、更に、質量%で、V:0.200%以下を含有することを特徴とする上記[1]または[2]に記載の大入熱溶接特性および延性に優れた非調質高張力鋼板の製造方法。
[4]鋼組成が、更に、質量%で、Cu:0.50%以下、Cr:0.40%以下およびMo:0.40%以下の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする上記[1]乃至[3]の何れか一つに記載の大入熱溶接特性および延性に優れた非調質高張力鋼板の製造方法。
[5]鋼組成が、更に、質量%で、Mg:0.0005〜0.0050%、Zr:0.0010〜0.0200%、REM:0.0010〜0.0200%の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする上記[1]乃至[4]の何れか一つに記載の大入熱溶接特性および延性に優れた非調質高張力鋼板の製造方法。
本発明によれば、溶接入熱が200kJ/cm以上となる大入熱溶接熱影響部での優れた靭性、および優れた母材延性(全伸びが19%以上)を備えた、板厚が50mm以下で、母材の降伏強さが460MPa以上の非調質高張力鋼板を製造する方法が得られ、産業上極めて有用である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。まず、本発明の鋼板が有すべき成分組成について説明する。説明において、化学成分に関する%表示は全て質量%を意味する。
C:0.030〜0.100%
Cは、鋼材の強度を高める元素であり、構造用鋼として必要な強度を確保するためには、0.030%以上含有させる必要がある。一方、Cが0.100%を超えると、ボンド部のHAZで島状マルテンサイトが生成し易くなるため、上限は0.100%とする。好ましい上限は0.080%とする。ここでボンド部とは、溶融線直近のHAZ中で最も粗粒化が著しい領域のことを意味する。
Si:0.01〜0.15%、
Siは、鋼を溶製する際の脱酸剤として添加される元素であり、0.01%以上の添加が必要である。しかし、0.15%を超えると、母材の靱性が低下するほか、大入熱溶接したボンド部のHAZに島状マルテンサイトが生成し、靱性の低下を招きやすくなる。よって、Siは0.01〜0.15%の範囲とする。
Mn:0.80〜2.00%
Mnは、母材の強度を確保するために、0.80%以上添加する。一方、2.00%を超えるとHAZの靭性を著しく劣化させる。よって、Mnは、0.80〜2.00%、好ましくは1.20〜2.00%とする。
P:0.020%以下
Pは、ボンド部のHAZでのMA生成を促進し、靭性を大きく低下させるため、0.020%以下の含有とする。好ましくは、0.012%以下であり、さらに好ましくは0.010%以下である。
S:0.0005〜0.0050%、
Sはフェライトの核生成サイトとして作用するMnSあるいはCaSを形成するために必要な元素である。このため0.0005%以上を含有させる。しかしながら過度に含有すると母材靭性の低下を招くため、上限は0.0050%とする。
Al:0.005〜0.100%
Alは、鋼の脱酸のために添加される元素であり、0.005%以上含有させる必要がある。しかし、0.100%を超えて含有すると、母材の靱性のみならず、溶接金属の靱性をも低下させる。よって、Alは0.005〜0.100%の範囲とする。好ましくは0.010〜0.100%の範囲である。
Nb:0.003〜0.030%
Nbは、フェライト変態を抑制し、より硬質な変態組織の割合を増加させることで母材強度を確保するのに有効な元素である。また、未再結晶温度域を拡大し、未再結晶温度域圧延による母材低温靭性の向上を可能にする。しかし、0.003%未満の含有では、上記効果が小さい。上記母材低温靭性の向上効果と強度を確保するため、Nbは0.003以上含有する。一方、0.030%を超えて含有すると、ボンド部のHAZに島状マルテンサイトが生成してボンド部の靱性を低下させるようになる。よって、Nbは0.003〜0.030%の範囲とする。好ましくは0.006〜0.027%である。
Ti:0.005〜0.050%、
Tiは、溶鋼の凝固時にTiNとなって母材中に析出し、オーステナイト粒の粗大化を抑制することで母材靭性の向上に寄与するとともに、Nを低減して固溶Bを確保し、母材強度を向上させる。また、溶接時には溶接熱影響部のTiNがフェライトの変態核となって、その高靱性化に寄与する。斯かる効果を得るためには、0.005%以上の添加が必要であり、0.015%以上添加することが好ましい。一方、0.050%を超えて含有すると、析出したTiNが粗大化し、上記効果が得られなくなる。よって、Tiは、0.005〜0.050%の範囲とする。
Ni:0.30〜2.00%
Niは、母材の靭性を向上させるとともに、強度も上昇させる。これらの効果を得るため、0.30%以上、好ましくは0.42%以上添加する。一方、2.00%を超えると上記効果が飽和する。よって、Niは、0.30〜2.00%とする。
N:0.0030〜0.0100%、
Nは、TiNを生成させるため、0.0030%以上とする。一方、0.0100%を超えると溶接熱サイクルによりTiNが溶解する領域において、固溶Nが増大して靭性を劣化させる。よって、Nは、0.0030〜0.0100%とする。
B:0.0003〜0.0025%
Bは、溶接熱影響部でBNを生成して、固溶Nを低減し、また、フェライト変態核となりフェライトを生成して靭性を向上させる。これらの効果を得るため、0.0003%以上添加する。しかし、0.0025%を超えて含有すると、母材である鋼板およびHAZの靱性低下を招く。このため、Bは、0.0003〜0.0025%とする。
Ca:0.0005〜0.0030%
CaはSを固定して靭性を改善させる。その効果を得るため0.0005%以上とする。一方、0.0030%を超えると効果が飽和する。よって、Caは、0.0005〜0.0030%とする。
O:0.0040%未満
OはCaS上にMnSが析出した複合硫化物の生成に間接的に影響を与えるため、0.0040%未満、好ましくは0.0030%未満とする。
0<(Ca−(0.18+130×Ca)×O)/1.25/S<1 ・・・(1)
ここで、Ca、O、Sは各成分(各元素)の含有量(質量%)
本パラメータ式は、上記成分組成を有する鋼板を大入熱溶接した際、溶接熱影響部の靭性を良好たらしめるもので、Ca、O、Sの含有量を本パラメータ式を満足させるように規定すると、CaS上にMnSが析出した複合粒化物が生成、微細分散し、溶接熱影響部の靭性を向上させる。
(Ca−(0.18+130×Ca)×O)/1.25/Sの値(以下、A値と称する)が0以下の場合、CaSが晶出せずSはMnS単体として析出して、鋼板製造時に圧延方向に伸長して母材靭性を低下させる。また、溶接熱影響部においてMnSが溶融されるため優れた靭性を得られない。
一方、A値が1以上の場合、SがほとんどCaによって固定され、フェライト生成核となるMnSがCaS上に析出しないため、溶接熱影響部にフェライトが生成せず、靭性向上効果が得られない。
以上が本発明の基本成分組成で、残部Feおよび不可避的不純物である。さらに、本発明に係る鋼板は、上記必須成分に加えて、Vを選択的元素として下記の範囲で含有することができる。
V:0.200%以下
Vは、VNとして析出し、母材の強度・靱性の向上に寄与すると共に、フェライト生成核としても作用するので、含有することができる。この効果を発揮するためには、0.005%以上の含有が好ましい。しかし、過剰の含有は、却って靱性の低下を招くので、上限は0.200%とするのが好ましい。
本発明の鋼材は、上記成分に加えてさらに、強度向上などを目的として、Cu、CrおよびMoの中から選ばれる1種以上を選択的元素として下記の範囲で含有することができる。
Cu:0.50%以下、Cr:0.40%以下、およびMo:0.40%以下の中から選ばれる1種以上
Cu、CrおよびMoは、母材の高強度化に有効な元素であり、その効果を得るためにはCuは0.05%以上、Cr、Moはそれぞれ0.02%以上の含有が好ましい。しかし、いずれの元素も多量に含有すると、靱性に悪影響を及ぼし、合金コスト増加にもつながるため、含有する場合には、Cuは0.50%以下、Cr、Moはそれぞれ0.40%以下とするのが好ましい。
また、本発明の鋼板は、上記成分に加えてさらに、Mg、ZrおよびREMから選ばれる1種以上を選択的元素として下記の範囲で含有することができる。
Mg:0.0005〜0.0050%、Zr:0.0010〜0.0200%、REM:0.0010〜0.0200%の中から選ばれる1種以上
Mg、ZrおよびREMはいずれも、酸化物の分散による靱性改善効果を有する元素である。このような効果を発現させるには、Mgは0.0005%以上、ZrおよびREMはそれぞれ0.0010%以上含有させることが好ましい。一方、Mgは0.0050%超え、ZrおよびREMはそれぞれ0.0200%を超えて含有しても、その効果は飽和するだけである。よって、これらの元素を含有する場合は、上記範囲とするのが好ましい。
次に、本発明の製造工程について説明する。上記組成の溶鋼を、転炉、電気炉、真空溶解炉などの通常の方法で溶製し、連続鋳造法、造塊法などの通常の鋳造方法でスラブ等の圧延素材とし、加熱後、熱間圧延し、その後冷却する。
本発明で規定する温度条件は、特に指定しない限り、鋼材・鋼板の内部温度、具体的には、板厚中心部の温度について規定するものである。但し、圧延終了温度と一次冷却に関する温度標記は全て鋼板表面温度とする。板厚中心部の温度は、板厚、表面温度および冷却条件等から、シミュレーション計算等により求められる。例えば、差分法を用い、板厚方向の温度分布を計算することにより、板厚中心温度が求められる。
スラブ加熱温度:1050〜1200℃
鋼中のNb炭窒化物を完全に固溶して所望の鋼板強度を確保するため、1050℃以上に加熱する。一方、1200℃を超える温度に加熱するとTiNが粗大化して靭性が劣化するようになる。よって、スラブ加熱温度は、1050〜1200℃とする。
熱間圧延
900℃以下の温度域(未再結晶温度域)で累積圧下率:30%以上
熱間圧延は、鋼板のミクロ組織を微細化するために、900℃以下の温度域で、すなわち、未再結晶温度域で、累積圧下率30%以上の圧延を行う。900℃以下の温度域での累積圧下率が30%に満たない場合は、組織が粗大化して鋼板の靭性が低下する。
圧延終了温度:Ar変態点以上
圧延終了温度がAr変態点よりも低下すると圧延中あるいは圧延後にフェライトが生成し、粗大化して靭性の低下を招くとともに組織の一部が加工フェライトとなり靭性および伸びの両立が困難となるため、圧延終了温度はAr変態点以上とする。なお、熱間圧延条件で規定する温度は鋼板の表面温度とする。熱間圧延では、900℃以下の温度域で累積圧下率30%以上の圧延を含めばよく、他の圧延を排除するものではない。たとえば、オーステナイト再結晶温度域において、累積圧下率が30%以上の圧延を実施すると、フェライトやベイナイトなどの組織へ変態する前のオーステナイト組織を細粒化することができ、最終的に室温で得られる金属組織のサイズも小さくなり、靭性向上に寄与するので好ましい。Ar変態点は下記式を用いて算出した値を用いるものとする。
Ar変態点(℃)=900−332C+6Si−77Mn−20Cu−50Ni−18Cr−68Mo
(各元素記号は各元素の含有量(質量%)、含有しない場合は0とする。)
一次冷却−復熱−二次冷却工程
本発明では、熱間圧延終了後の鋼板を、まず一次冷却し、途中で冷却を停止して復熱させ、引き続いて二次冷却したのち、空冷する。以下、これらの工程における製造条件について説明する。
一次冷却は、Ar変態点以上の温度から実施することが好ましい。また、一次冷却は圧延終了後、直ちに行うことが好ましい。
圧延終了後、冷却速度が2℃/秒以上となるように(Ar変態点−100℃)以下の温度域にて冷却を停止し、その後、空冷する。
一次冷却の冷却速度:2℃/秒以上
特に表層組織の粗大化を防ぐ目的で、一次冷却における冷却速度は2℃/秒以上とする。一次冷却時の冷却速度が2℃/秒未満では組織の粗大化が進行し、延性および靭性の低下の原因となる。
一次冷却の冷却停止温度:(Ar変態点−100℃)以下
一次冷却の冷却停止温度が(Ar変態点−100℃)超えの場合、冷却停止後の復熱による温度上昇が大きくなりすぎ、鋼板表面を含む広い範囲に粗大なフェライトが生成して強度の確保が困難となる。よって、一次冷却停止温度は(Ar変態点−100℃)以下とする。一次冷却の停止温度の下限は特に限定されないが、過度に低い温度で一次冷却を停止すると、後述の復熱温度の規定を確保できないおそれがあるので、復熱温度が確保できるように、一次冷却停止温度を設定するものとする。たとえば、一次冷却を500℃以上で停止すればよい。
なお、一次冷却に関する温度条件のうち、一次冷却速度および一次冷却停止温度は、いずれも、鋼板の表面温度について規定するものとする。
復熱温度:Ac変態点以上Ac変態点以下
一次冷却を停止後、鋼板をAc変態点以上、Ac変態点以下まで複熱させる。一次冷却を停止した鋼板は、表面よりも内部のほうが高温なので、鋼板表面温度は一次冷却停止の後は上昇する。この温度上昇の最高到達温度を、本発明では復熱温度と称する。鋼板の延性は母材表面組織の細かさおよび硬度に大きく影響を受けるため、高延性確保のためには表面近傍組織の微細化および硬さ低減が必要となる。本発明では、加速冷却後の複熱による逆変態を活用することで鋼板表面組織を微細化するとともに、フェライトを生成させることで表面硬度を抑える事を狙いとしている。一度目の冷却停止後、復熱により表面温度がAc変態点を超えると復熱後の組織がオーステナイト単相となり、二次冷却後の表層近傍組織のフェライト分率が低下するため延性の確保が困難となる。一方、復熱後の温度がAc変態点未満であると逆変態が起きず、表層近傍の組織はベイナイトおよびマルテンサイトとなり、フェライトを含まないことになるため伸びの低下が懸念される。なお、本発明において、Ac変態点およびAc変態点は、下記式を用いて算出した値を用いるものとする。
Ac変態点(℃)=750.8−26.6C+17.6Si−11.6Mn−22.9Cu−23Ni+24.1Cr+22.5Mo−39.7V−5.7Ti+232.4Nb−169.4Al−894.7B
Ac変態点(℃)=937.2−436.5C+56Si−19.7Mn−16.3Cu−26.6Ni−4.9Cr+38.1Mo+124.8V+136.3Ti−19.1Nb+198.4Al+3315B
(各元素記号は各元素の含有量(質量%)、含有しない場合は0とする。)
二次冷却の開始温度:Ar変態点以上、二次冷却の冷却速度:2℃/秒以上、二次冷却の停止温度:450℃未満
Ac変態点以上Ac変態点以下に復熱させた後、Ar変態点以上の温度域から2℃/秒以上の冷却速度で450℃未満まで二次冷却を行う。好ましくは、Ac変態点以上Ac変態点以下に復熱させた後、直ちに二次冷却を行う。二次冷却の冷却速度が2℃/秒未満および/または二次冷却の冷却停止温度が450℃以上の場合、鋼板内部のミクロ組織がベイナイト主体組織とならず強度が不足する。二次冷却停止後の鋼板は空冷する。
本発明では、鋼の成分組成、熱間圧延条件および熱間圧延後の一次冷却−復熱−二次冷却条件を適正に調整するので、溶接入熱が200kJ/cm以上となる大入熱溶接熱影響部の優れた継手靭性および全伸びが19%以上の優れた母材延性を備えた、板厚が50mm以下で、母材の降伏強さが460MPa以上の非調質高張力鋼板を安定的に製造することが可能である。
150kgの高周波溶解炉を用いて表1に示す成分組成を有するNo.1〜23の鋼を溶製し、鋳造して鋼塊としたのち、熱間圧延して種々の厚さの鋼片とした。得られた鋼片を種々の圧延および加速冷却条件により厚さが50mm以下の鋼板とした。次いで、上記の鋼板から試験片長手方向が板幅方向と一致するようにJISZ2201に記載の1A号試験片を採取し降伏応力:YS(MPa)、引張強さ:TS(MPa)および全伸び:El(%)を計測した。
また、板厚の1/4となる位置からJISZ2202に記載のVノッチシャルピー衝撃試験片を採取し、試験温度:−100〜40℃の範囲で適宜シャルピー衝撃試験を行い延性破面率50%となる破面遷移温度vTrs(℃)を求め母材靭性を評価した。母材靭性はvTrsで−60℃以下が好ましい。
ボンド部のHAZ靭性を評価するために、上記厚鋼板から幅80mm×長さ80mm×厚さ15mmの試験片を採取し、1450℃に加熱後、800〜500℃間を300秒で冷却する再現熱サイクルを施した後、これらの試験片から2mmVノッチシャルピー試験片を採取した。得られたシャルピー試験片について試験温度:−100〜40℃の範囲で適宜シャルピー衝撃試験を行い延性破面率50%となる破面遷移温度vTrs(℃)を求め、ボンド部の靭性を評価した。上記再現熱サイクル条件は、想定最大入熱にあたる板厚50mmでの1パス溶接を模擬した、入熱量400kJ/cmのエレクトロガス溶接の場合のボンド部の熱サイクルに相当する。
表2、3に圧延条件、加速冷却条件と、上記手順にて評価を行った母材の引張特性(YS(MPa)、TS(MPa)、El(%))、およびボンド部HAZ靭性の試験結果を併せて示す。
Figure 0006036884
Figure 0006036884
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発明例である鋼板No.1〜22は降伏応力:YSが460MPa以上、引張強さ:TSが570MPa以上、全伸び:Elが19%以上の優れた母材特性を有し、ボンド部HAZ靭性:vTrs(℃)も−40℃以下で、大入熱溶接部において優れた靭性が得られていた。
一方、鋼の成分組成、熱間圧延条件、および加速冷却条件の少なくとも一つが本発明範囲外の比較例である鋼板No.23〜43においては母材の引張特性およびボンド部HAZ靭性のいずれかもしくは両方が、発明例に対し、低位の値となっている。

Claims (5)

  1. 鋼組成が、質量%で、C:0.030〜0.100%、Si:0.01〜0.15%、Mn:0.80〜2.00%、P:0.020%以下、S:0.0005〜0.0050%、Al:0.005〜0.100%、Nb:0.003〜0.030%、Ti:0.005〜0.050%、Ni:0.30〜2.00%、N:0.0030〜0.0100%、B:0.0003〜0.0025%、Ca:0.0005〜0.0030%、O:0.0040%未満、かつ、下記(1)式を満たすように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、
    1050℃〜1200℃に加熱後、鋼板表面温度が900℃以下の温度域で累積圧下率:30%以上、圧延終了温度:Ar変態点以上の熱間圧延を施し、
    冷却速度:2℃/秒以上で(Ar変態点−100℃)以下の温度域に一次冷却を実施した後、
    冷却を停止して、Ac変態点以上Ac変態点以下の温度域に復熱させ、
    その後、板厚方向中央の温度がAr変態点以上の温度域から冷却速度:2℃/秒以上で450℃未満まで二次冷却後、空冷することを特徴とする大入熱溶接特性および延性に優れた非調質高張力鋼板の製造方法。
    0<(Ca−(0.18+130×Ca)×O)/1.25/S<1 ・・・(1)
    但し、各元素記号は各元素の含有量(質量%)を示す。
  2. 鋼組成が、質量%で、C:0.030〜0.100%、Si:0.01〜0.15%、Mn:0.80〜2.00%、P:0.020%以下、S:0.0005〜0.0050%、Al:0.005〜0.100%、Nb:0.003〜0.030%、Ti:0.005〜0.050%、Ni:0.30〜2.00%、N:0.0030〜0.0100%、B:0.0003〜0.0025%、Ca:0.0005〜0.0030%、O:0.0040%未満、かつ、下記(1)式を満たすように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、
    1050℃〜1200℃に加熱後、鋼板表面温度が900℃以下の温度域で累積圧下率:30%以上、圧延終了温度:Ar変態点以上の熱間圧延を施し、
    その後、直ちに、冷却速度:2℃/秒以上で(Ar変態点−100℃)以下の温度域に一次冷却を実施した後、
    冷却を停止して、Ac変態点以上Ac変態点以下の温度域に復熱させ、
    その後、板厚方向中央の温度がAr変態点以上の温度域から冷却速度:2℃/秒以上で450℃未満まで二次冷却後、空冷することを特徴とする大入熱溶接特性および延性に優れた非調質高張力鋼板の製造方法。
    0<(Ca−(0.18+130×Ca)×O)/1.25/S<1 ・・・(1)
    但し、各元素記号は各元素の含有量(質量%)を示す。
  3. 鋼組成が、更に、質量%で、V:0.200%以下を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の大入熱溶接特性および延性に優れた非調質高張力鋼板の製造方法。
  4. 鋼組成が、更に、質量%で、Cu:0.50%以下、Cr:0.40%以下およびMo:0.40%以下の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の大入熱溶接特性および延性に優れた非調質高張力鋼板の製造方法。
  5. 鋼組成が、更に、質量%で、Mg:0.0005〜0.0050%、Zr:0.0010〜0.0200%、REM:0.0010〜0.0200%の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の大入熱溶接特性および延性に優れた非調質高張力鋼板の製造方法。
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