JP4237904B2 - 母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、火力発電、化学プラント等の耐熱構造物に不可欠な、フェライト系耐熱鋼板に関するもので、母材のクリープ特性、靭性に加えて溶接継手の熱影響部(HAZ)のクリープ特性及び靭性にも優れたフェライト系耐熱鋼板とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高温、高応力下で長時間使用される構造物用に高いクリープ強度を有するフェライト系耐熱鋼が要求される。この種の用途に供される鋼の例としては、JIS規格STBA24(2.25Cr−1Mo鋼)、SCMV4(1.25Cr−0.5Mo−0.3V鋼)等のCr−Mo鋼が挙げられる。さらに、最近は9〜12CrをベースとしてMoあるいはWを単独あるいは複合添加した鋼や、これらにさらにNb、V、Ta等の炭窒化物形成元素を添加した鋼が開発されている。
【0003】
上記フェライト系耐熱鋼における高温強度、クリープ強度の向上には、Mo、W等の固溶強化、炭窒化物による析出強化、分散強化が用いられている。これらの強化機構を最大限発現するためには、鋼の熱間圧延、熱処理等の製造方法を調整して、析出物を極力微細分散させる必要があり、そのために焼きならし焼戻し処理、焼入れ焼戻し処理、さらには加工熱処理(TMCP)の適正化が図られている。
【0004】
しかしながら、この種の構造物の製作には、溶接施工が不可欠であるが、鋼板の溶接熱影響を受けた部分(溶接熱影響部:以下、単にHAZという)は、熱処理等によって最適化された組織、析出物分布が変化してしまうため、熱影響を受けていない部分(母材)に比べて高温強度、特にクリープ強度の低下が避けられない。
【0005】
HAZの強度の向上方法として、特開平7−238347号公報に開示されているように、VとZrとの添加比率を制限することにより、熱影響部での析出物の種類、分布を適正化し、母材クリープ強度とほぼ同等のクリープ強度が得られることが見出されているが、現状においては、母材のクリープ強度をさらに高めると同時に、溶接方法や溶接後熱処理(PWHT)条件に依存せず、安定して、母材と同等のHAZクリープ強度を達成するための方法については見出されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、溶接方法や溶接後熱処理(PWHT)条件に依存せず、安定して、母材と同等のHAZクリープ強度が得られ、かつ、母材、HAZともに、従来得られているよりも、高いクリープ強度が得られ、かつ、構造物の安全性を高める上で重要な低温靭性も、母材、HAZともに良好な、母材及び溶接継手のクリープ強度及び靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板とその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
HAZクリープ強度の低下は、溶接の熱影響を受けることにより、鋼が二相域〜Ac3 変態点直上まで再加熱されて、母材の焼戻しマルテンサイトのラス構造が崩れ、転位密度が低下し、析出物が粗大化するためであり、特に、10000時間を超えるような長時間クリープ特性においては、析出物の粗大化が支配因子である。クリープ強度向上に有効な析出物としては、Mo、Cr、W等からなる炭化物とNb、Ta、V、Ti等からなる炭窒化物があるが、両方の析出物ともHAZでは粗大化するが、特に前者のM23C6 タイプを主とする炭化物の粗大化が大きい。
【0008】
従って、特に二相域〜Ac3 変態点直上に再加熱されるHAZの熱履歴を受けても析出物が粗大化しなければ、母材のクリープ特性に比較してHAZのクリープ強度が低下することはなくなる。しかし、炭化物、炭窒化物においては、二相域〜Ac3 変態点直上と比較的低温に再加熱された場合は、完全に安定ではありえず、一方で、完全に固溶もしないため、一部固溶した分が、未固溶の析出物の粗大化に使われる。すなわち、二相域〜Ac3 変態点直上と比較的低温に再加熱された場合にも完全に固溶する析出物か、全く変化しない析出物であれば、母材に比べてHAZのクリープ強度が顕著に低下することはなくなるはずである。
【0009】
本発明者らは、上記観点から、HAZクリープ強度向上に有効な析出物の研究を実施したが、二相域〜Ac3 変態点直上再加熱領域で完全に溶体化し、その後の熱履歴で微細に析出し、かつ、クリープ中にも粗大化せずに安定に存在するような析出物は見あたらないが、二相域〜Ac3 変態点直上再加熱領域ではほとんど固溶せず、その後の熱履歴においても分散状態が変化せず、かつ、初期の分散密度が、従来クリープ強度向上に一般に用いられてきた、前記炭化物や炭窒化物よりも大きい析出物の種類とその分散手段を発明した。該酸化物はHAZの加熱オーステナイト粒径微細化にも有効で、合わせてHAZ靭性の向上にも有用である。
【0010】
上記酸化物分散により、HAZの靭性が向上することから、母材の靭性向上も合わせて図ることにより、構造物の安全性向上に有効であるとの観点から、本発明者らは、母材靭性向上のための手段も種々検討し、本発明を完成するに至った。その要旨とするところは以下に示す通りである。
【0011】
(1) 質量%で、
C :0.03〜0.2%、
Si:0.01〜1%、
Mn:0.01〜3%、
P :0.02%以下、
S :0.01%以下、
Cr:0.5〜13%、
Al:0.001〜0.1%、
Ti:0.003〜0.1%、
Mg:0.0001〜0.015%、
N :0.002〜0.1%を含有し、
Mo:0.3〜2%、
W :0.5〜4%の1種または2種、また、
V :0.01〜0.5%、
Ta:0.02〜1%、
Nb:0.005〜0.5%、
Zr:0.005〜0.1%の1種または2種以上を、さらに含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、かつ、粒子径が0.002〜0.1μmのMg含有酸化物粒子、および、Mg含有酸化物とこれを核として析出した炭窒化物とからなる粒子径が0.005〜2μmの複合粒子の1種または2種を合計で1×104 〜1×108 個/mm2 含むことを特徴とする、母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板。
(2) 質量%で、
Cu:0.05〜1.5%、
Ni:0.05〜3%、
Co:0.05〜5%、
B :0.0002〜0.005%の1種または2種以上を、さらに含有することを特徴とする、前記(1)に記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板。
(3) 質量%で、
Y :0.001〜0.1%、
Ca:0.0005〜0.01%、
REM:0.005〜0.1%の1種または2種以上を、さらに含有することを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板。
【0012】
(4) 溶存酸素量が0.001〜0.02%の溶鋼に、Mg、Ti、Alを同時に添加した後、鋳造して鋼片とすることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。
(5) 溶存酸素量が0.001〜0.02%の溶鋼に、Mg、Ti、Alを添加するに際して、Alを最後に添加した後、鋳造して鋼片とすることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。
【0013】
(6) 熱間圧延の後、Ac3 変態点以上、1150℃以下の温度で焼きならしあるいは焼入れを行い、さらに600℃以上、Ac1 変態点未満の温度で焼き戻すことを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。
(7) 鋼片を1050〜1300℃に加熱し、累積圧下率が10〜50%で圧延開始温度が950℃以上、圧延終了温度が900℃以上の粗圧延を行った後、引き続き、累積圧下率が50〜90%で、圧延開始温度が900℃未満、圧延終了温度が700℃以上の仕上げ圧延を行う熱間圧延の後、600℃以上、Ac1 変態点未満の温度で焼き戻すことを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。
(8) 鋼片を1050〜1300℃に加熱し、累積圧下率が10〜50%で圧延開始温度が950℃以上、圧延終了温度が900℃以上の粗圧延を行った後、引き続き、累積圧下率が50〜90%で、圧延開始温度が900℃未満、圧延終了温度が700℃以上の仕上げ圧延を行う熱間圧延の後、300℃以下まで5〜100℃/sで加速冷却し、さらに600℃以上、Ac1 変態点未満の温度で焼き戻すことを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。
【0014】
(9) 熱間圧延の後、Ac3 変態点以上、1150℃以下の温度で焼きならしあるいは焼入れを行い、さらに600℃以上、Ac1 変態点未満の温度で焼き戻すことを特徴とする、前記(4)または(5)に記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。
(10) 鋼片を1050〜1300℃に加熱し、累積圧下率が10〜50%で圧延開始温度が950℃以上、圧延終了温度が900℃以上の粗圧延を行った後、引き続き、累積圧下率が50〜90%で、圧延開始温度が900℃未満、圧延終了温度が700℃以上の仕上げ圧延を行う熱間圧延の後、600℃以上、Ac1 変態点未満の温度で焼き戻すことを特徴とする、前記(4)または(5)に記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。
(11) 鋼片を1050〜1300℃に加熱し、累積圧下率が10〜50%で圧延開始温度が950℃以上、圧延終了温度が900℃以上の粗圧延を行った後、引き続き、累積圧下率が50〜90%で、圧延開始温度が900℃未満、圧延終了温度が700℃以上の仕上げ圧延を行う熱間圧延の後、300℃以下まで5〜100℃/sで加速冷却し、さらに600℃以上、Ac1 変態点未満の温度で焼き戻すことを特徴とする、前記(4)または(5)に記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
先ず、本発明において、化学組成の限定理由を述べる。
Cは、固溶強化元素としてまた炭化物を生成し高温クリープ強度を向上させる。またδ−フェライトの生成を抑制し靭性を向上させる。クリープ強度向上にはCは、0.03%以上必要である。一方、0.2%を超えるとC自体の悪影響により靭性が劣化し、また、溶接性も劣化するため、0.03%〜0.2%に限定する。
【0016】
Siは、脱酸元素として必要であり、鋼の健全性を確保するためには0.01%以上必要である。一方、1%を超えると靭性が低下するため、0.01%〜1%に限定する。
【0017】
Mnは、脱酸剤として0.01%以上添加する必要がある。一方、3%を超えるとMn偏析が顕著になり靭性を低下させ、またクリープ特性も低下させる傾向があるため、0.01%〜3%に限定する。
【0018】
P、Sは、不純物元素で、一般的に延性、靭性を劣化させる元素であり、極力低減することが好ましい。耐熱鋼では、P、S量が高いとクリープ延性の低下が問題となる。材質劣化が大きくなく、許容できる量として、Pの上限を0.02%、Sの上限を0.01%に限定する。
【0019】
Alは、脱酸元素として有効であるとともに、熱処理時の加熱オーステナイト微細化に有効な元素である。さらに、後述するように、HAZクリープ特性やHAZ靱性向上に必要なMgO、Mg含有酸化物の微細分散に寄与する。効果を発揮するためには0.001%以上含有する必要がある。一方、0.1%を超えて過剰に含有すると、粗大な酸化物を形成して延性、靭性を極端に劣化させるため、0.001%〜0.1%の範囲に限定する必要がある。
【0020】
Tiは、析出強化により母材強度向上に寄与するとともに、高温でも安定なTiNの形成により加熱オーステナイト粒径微細化にも有効な元素である。また、後述するように、HAZクリープ特性、HAZ靱性向上に必要なMgO、Mg含有酸化物の微細分散に寄与する。効果を発揮するためには0.003%以上の含有が必要である。一方、0.1%を超えると、粗大な析出物、介在物を形成して靭性や延性を劣化させるため、上限を0.1%とする。
【0021】
Mgは、後述するように、分散強化によりHAZのクリープ特性を向上させ、かつ、HAZの加熱オーステナイト粒径微細化によりHAZ靭性を向上させる、粒子径が0.002〜0.1μmのMg含有酸化物粒子、および、Mg含有酸化物とこれを核として析出した炭窒化物とからなる粒子径が0.005〜2μmの複合粒子の1種または2種を合計で1×104 〜1×108 個/mm2 含ませるために必須の元素である。該酸化物あるいは該酸化物を核とする炭窒化物との複合粒子の必要性、限定理由については、本発明の基本要件であるため、別途詳細に説明するが、全Mg含有量も、該粒子の分布状態を達成するために限定する必要がある。すなわち、全Mg量が0.0001%未満では粒子個数を確保できず、0.015%超であると、Mgを含有する粒子が極端に粗大となって、靭性を劣化させるため、Mg含有量は0.0001〜0.015%の範囲とする。
【0022】
Nは、δフェライトの生成を抑制し靭性を高め、且つTaN、VN等の微細な析出物を形成し高温クリープ強度を高める。そのためには0.002%以上必要である。一方、0.1%を超える添加は鋳造性、靭性を低下させるため、0.002〜0.1%に限定する。
【0023】
Crは、耐熱鋼の具備すべき特性のうち、高温強度特性とともに最も重要な高温での耐食性、耐酸化性を向上させるために不可欠の元素である。高温での耐食性、耐酸化性を向上のためにはCr量は多いほど好ましいが、高温での耐食性、耐酸化性を発現するには最低限、0.5%必要である。一方、過剰な添加はδ−フェライトを生成し靭性を低下させるため、上限はδ−フェライトの生成が他の元素とのバランスで抑制できることを考慮して13%とする。
【0024】
MoとWは、高温強度、クリープ強度向上に最も有効であり、また、ほぼ同様の効果を有する元素である。Mo量については0.3%〜2%、Wについては0.5%〜4%の範囲が好ましい。Moについては、その添加量が0.3%未満では高温強度、クリープ強度向上効果が発揮されず、2%超では粗大な炭化物や金属間化合物を形成して靱性を著しく劣化させるため好ましくない。Wについては、Moと同様に高温クリープ強度を著しく向上させるが、やはり、0.5%未満では効果が明瞭でなく、逆に添加量が4%を超えて過剰になると粗大な炭化物、金属間化合物を生じて靭性を著しく低下させるため、0.5〜4%に限定する。なお、MoとWとは、定性的な効果がほぼ同一で、加算的であるため、MoとWのうちのどちらか1種でも、或いは両方を添加しても効果を発揮することは可能である。
【0025】
さらに、クリープ強度を安定的に高めるためには、V、Ta、Nb、Zrの1種または2種以上を含有させる必要がある。
Vは、固溶強化及び析出強化によって高温クリープ強度を高める。その効果は0.01%以上で顕著となるが、0.5%を超える添加はδ−フェライトの生成による靭性低下を招き且つ溶接性を低下させるため、0.01〜0.5%に限定する。
Taは、析出強化により高温クリープ強度を向上させ、加熱γ粒径の微細化に有効に働き、母材靭性を向上させる。これらのためには0.02%以上必要である。一方、1%を超えると高温クリープ強度が逆に低下し、且つ溶接性を低下させるため、0.02〜1%に限定する。
Nbも、主として析出強化により高温クリープ強度を向上させる。また加熱γ粒径の微細化に有効に働き、母材靭性を向上させる。これらのためには0.005%以上必要である。一方、0.5%を超えると高温クリープ強度が逆に低下し、且つ溶接性を低下させるため、0.005〜0.5%に限定する。
Zrも、Nb、Taとほぼ同様の作用を有するが、その効果を発揮させるためには、0.005%以上必要であり、0.1%超ではやはり粗大な酸化物、析出物を形成して靱性の劣化が著しくなるため、含有量を0.005〜0.1%に限定する。
【0026】
以上が、本発明の基本成分の限定理由であるが、さらに必要に応じて、主として変態組織の制御を通した強度、靱性向上を目的として、Cu、Ni、Co、Bの内の1種または2種以上を添加することが可能である。
Niは、固溶靱化により靱性を向上させるとともに、マルテンサイト組織の安定形成、δ−フェライトの生成抑制効果により、強度及び靱性を向上させる。その効果を発揮させるためには0.05%以上必要であるが、3%を超えて含有させると、クリープ強度を低下させる傾向があるため、0.05〜3%の範囲に限定する。
Cuも、定性的にはNiとほぼ同様の効果を有し、そのためには0.05%以上の添加が必要である。一方、1.5%超では鋼片の高温割れ等の問題を生じるため、本発明においては上限を1.5%とする。
Coも、Niと類似の効果を有し、δ−フェライトの抑制を通して靱性やクリープ強度の向上に寄与する。そのためには、0.05%以上含む必要がある。一方、5%超では、その効果が飽和するのと、焼入性が低下してマルテンサイト相が不安定となって、逆に強度、靱性の劣化を招く場合があるため、本発明では、Coを添加する場合の含有量は0.05〜5%の範囲に限定する。
Bは、微量の含有でも、粒界に偏析することで鋼の焼入性を高めることが可能な元素であり、変態組織制御を通した強度、靱性の向上のために必要に応じて添加が可能である。ただし、0.0002%未満では十分な固溶量が確保できず、焼入性向上効果が明瞭でなく、逆に0.005%を超えると粗大な化合物を形成して組織制御効果を失うと同時に化合物自体が破壊の起点となって靱性を著しく損なうため、0.0002〜0.005%の範囲に限定する。
【0027】
さらに、靱性、特に溶接継手靱性向上のために、必要に応じて、Y、Ca、REMのうち、1種または2種以上添加することができる。
Yは、微細な酸化物、硫化物を形成して、熱影響部のオーステナイト粒径を微細化し、溶接性及び溶接継手の靱性を向上できる。かつ、酸素、硫黄を固定することにより、クリープ延性の向上に寄与する。その効果を発揮させるためには0.001%以上必要であり、0.1%超では酸化物、硫化物が粗大となって、逆に靱性を劣化させるため、0.001〜0.1%に限定する。
Caも、微細な酸化物、硫化物を形成して、熱影響部のオーステナイト粒径を微細化し、溶接性及び溶接継手の靱性を向上できる。かつ、酸素、硫黄を固定することにより、クリープ延性の向上に寄与する。その効果を発揮させるためには0.0005%以上必要であり、0.01%超では酸化物、硫化物が粗大となって、逆に靱性を劣化させるため、0.0005〜0.01%に限定する。
REMも、定性的な効果はCaとほぼ同様であるが、Mg、Caに比べて効果が弱いため、0.005%以上含有させる必要がある。一方、靱性に悪影響を及ぼす粗大介在物を形成させないための上限は0.1%となる。
【0028】
次に、本発明の基本要件の一つである、HAZのクリープ強度、靭性を高めるために必要な粒子の種類とその分散状態の限定理由を詳細に説明する。
耐熱鋼のHAZのクリープ強度が低下するのは、溶接の熱により鋼材が二相域〜Ac3 変態点直上に再加熱された領域で、Mo、Cr、Wを主要構成元素とするM23C6 の炭化物や、Nb、Ta、Vを主要構成元素とするM(C、N)系の炭窒化物が鋼材での状態に比べて、粗大化するためである。すなわち、二相域〜Ac3 変態点直上では、無視できない程度の溶解度を有するため、該析出物は完全には安定でなく、その後の過程(溶接熱履歴における冷却過程、溶接後熱処理(PWHT)、クリープ試験中)での凝集・粗大化が避けられず、そのため、析出強化、分散強化量が低下する。HAZでも、さらに高温に加熱された領域では、加熱段階では一旦析出物が全量固溶するため、その後の冷却過程や溶接後熱処理(PWHT)の段階で再度析出物が微細析出するため、母材とほぼ同程度にまで高温強度、クリープ強度は回復する。
【0029】
炭窒化物による析出強化、分散強化による限りは、HAZの二相域〜Ac3 変態点直上加熱領域での析出物の凝集・粗大化は避けられない。該温度域でほとんど溶解度を持たず、安定な析出物が望ましいが、そのような性質の炭窒化物は存在しない。安定性からすれば、第一に酸化物が考えられるが、一般的には酸化物は微細分散が困難で、クリープ強度を高める効果をほとんど持たないと考えられる。
【0030】
発明者らは、HAZのクリープ強度を母材と同等以上の保持するためには、酸化物を活用する以外にないと考え、クリープ強度を向上できる程度の酸化物の微細分散を図るための手段を種々検討した。
その結果、「粒子径が0.002〜0.1μmのMg含有酸化物粒子、および、Mg含有酸化物とこれを核として析出した炭窒化物とからなる粒子径が0.005〜2μmの複合粒子の1種または2種を合計で1×104 〜1×108 個/mm2 含む」ことにより、HAZのクリープ強度を母材と同等以上に高められることを見出した。また、該粒子の分散はHAZの溶融線(Fusion Line:FL)直近で非常に高温にさらされたHAZの加熱オーステナイト粒径微細化にも有効で、HAZ靭性の向上も同時に図られることを知見した。
【0031】
酸化物の種類をMg含有酸化物に限定するのは、強脱酸元素であるMgからなる酸化物でないと、クリープ強度を高める、かつ、FL近傍のHAZの加熱オーステナイト粒径を微細化するために必要な高温で安定な粒子の高密度な分散を達成できないためである。
【0032】
Mg含有酸化物粒子、および、Mg含有酸化物とこれを核として析出した炭窒化物とからなる粒子基づく強化は分散強化によるものであるため、また、オーステナイト粒の微細化は分散粒子のピン止め効果によるものであるため、酸化物は単独の形態でも、また、該酸化物を核として、複合的あるいは周辺に析出した炭窒化物より構成される形態でも構わない。炭窒化物の種類も問わない。
【0033】
なお、本発明でMg含有酸化物としては、主にはMgO、Mgを含有するスピネルがあるが、その種類は問わず、酸化物中のMg含有量が質量%で5%以上であるものを意味し、他の構成元素の種類は問わない。すなわち、構成元素にMg、O以外の元素、例えば、Ti、Al、Mn、Si、Ca等の脱酸元素が質量%で20%程度未満含まれていても構わない。また、酸化物の結晶構造も問わない。ただし、より安定に微細分散する酸化物としては、Mgに加えてAl、Ti、Caの1種〜2種以上を主構成元素とするスピネル型酸化物が好ましい。
【0034】
Mg含有酸化物あるいはMg含有酸化物とこれを核として析出した炭窒化物とからなる粒子の密度は、クリープ強度向上が母材のクリープ強度向上に対する炭窒化物の寄与以上に生じるために必要な密度、及び、FL直近におけるHAZのオーステナイト粒径が溶接方法や溶接入熱に大きく依存せず、安定に微細化されるために必要な密度から限定される。実験結果に基づいて、本発明では、粒子径が0.002〜0.1μmのMg含有酸化物あるいはMg含有酸化物とこれを核として析出した炭窒化物とからなる粒子径が0.005〜2μmの複合粒子を1×104 〜1×108 個/mm2 に限定する。粒子径の下限を規定したのは、下限未満の粒子径では1個の粒子あたりの分散強化代が不十分であり、かつ、HAZのオーステナイト成長抑制のためのピン止め効果が不十分であるためである。一方、粒子径の上限を規定したのは、粒子径が上限を超えた粗大な粒子は靱性に悪影響を及ぼす可能性が大であるためである。
【0035】
粒子個数については、下限未満ではクリープ強度向上とFL直近HAZのオーステナイトに対するピン止め効果が不十分であり、上限超ではオーステナイト粒径微細化効果が飽和する一方で、酸化物、炭窒化物の含有率が過大であるために、鋼材の延性、靱性が劣化する恐れがあるためである。
【0036】
なお、本発明における粒子の同定、サイズ、個数の測定は電子顕微鏡を用いて行われることが好ましい。酸化物の分布状態によって観察、測定倍率は変化させて構わないが、1〜3万倍程度で10視野以上について観察、測定し、粒子の種類の同定、平均粒子サイズ、個数を求めることが望ましい。また、上記粒子の測定は、鋼材の板厚中心部で行うことが望ましい。これは、凝固速度の最も小さい板厚中心部の酸化物個数の確保が最も困難であるため、板厚中心部で本発明を満足していれば、他の箇所の酸化物個数は確実に板厚中心部より多くなっているためである。
【0037】
以上、Mg含有酸化物あるいはMg含有酸化物とこれを核として析出した炭窒化物とからなる粒子が本発明で規定される密度で分散していれば、その達成手段によらず、効果を発揮するが、本発明では、該酸化物あるいは該酸化物を核として析出した炭窒化物とからなる粒子を最適に分散するための方法も提供する。すなわち、鋼材、構造材料として用いるような板厚、サイズの鋼材において、該酸化物粒子を高密度に分散させるためには、該酸化物を構成する元素を脱酸元素として、溶鋼中に添加して溶鋼中あるいは凝固中に酸化物として析出させる方法 (脱酸法)が実用的に最も有用である。本発明者らは、脱酸法において、Mg含有酸化物を高密度に分散させる手段を種々検討し、脱酸元素添加前のO(酸素)量と、Mgと他の脱酸元素との添加順序が酸化物のサイズ、個数に最も大きな影響を及ぼす因子であることを見いだした。具体的な要件としては、「溶存酸素量が0.001〜0.02%の溶鋼にMg、Ti、Alを同時に添加した後、鋳造して鋼片とすること」及び「溶存酸素量が0.001〜0.02%の溶鋼にMg、Ti、Alを添加するに際して、Alを最後に添加した後、鋳造して鋼片とすること」を特徴とする。
【0038】
すなわち、Mg含有酸化物の微細分散のためには、Mg添加前の溶鋼中の溶存酸素量を先ず限定する必要がある。これは、0.001%未満では形成される全酸化物量が不十分となりやすく、0.02%超では粗大な酸化物が形成されて、微細な酸化物の個数が減少し、かつ粗大な酸化物が靱性に悪影響を及ぼす恐れがあるためである。また、溶鋼中にMgを添加するに際しては、Mgだけでなく、Mgと他の脱酸元素、特にTi、Alの添加順序が大きな影響を及ぼし、Mg、Ti、Alを同時に添加するか、別々に添加する場合には、MgとTiの添加順序は問わないが、Alについては最後に添加することが好ましい。このように添加順序を限定すると、MgO、Mg含有酸化物のサイズ、個数がより安定、多量に確保できる。また、CaもAlと類似の効果を有するため、延性改善等の目的でCaを添加する場合には、Mgと同時に添加するか、Mgと別々に添加する場合には、Alと同時か、Alの後に添加することが好ましい。
【0039】
Mg、Ti、Al、及びCaを別々に溶鋼中へ添加する場合はの時間間隔の影響は工業的に実施できる範囲であれば粒子分散や材質への影響は大きくない。ただし、最初の添加から最後の添加完了までは2h以内であることが望ましい。また、実験結果によれば、添加間隔が30s以内と短時間である場合は、ほぼ同時添加と同じ効果が得られるため、本発明では、添加間隔が30s以内の場合は同時添加とみなす。
【0040】
なお、溶鋼中に添加するMgの形態は特に問わない。純Mgであっても、Fe、Si、Ni、Cu等の1種または2種以上からなる合金を母合金とした原料でも、歩留まりを考慮して、本発明の化学組成範囲となるように添加すれば、同様の効果を得られる。他の脱酸元素についても同様である。母合金を用いる場合の、母合金中のMg含有量も特に問わない。
【0041】
以上のように、Mg含有酸化物および該酸化物を核として析出した炭窒化物とからなる粒子を適正に分散させた鋼では、熱履歴に依存せずに、安定的にクリープ強度とHAZ靭性が確保される。従って、本発明は、アーク溶接一般、例えば、手溶接、CO2 溶接、サブマージ溶接、TIG溶接、MIG溶接等々、また、エレクトロガスアーク溶接、エレクトロスラグ溶接等の大入熱溶接、さらには電子ビーム溶接、レーザー溶接など、いずれの溶接によってもほぼ同様の効果が得られる。
【0042】
次に、本発明が目的としている母材特性を達成するための要件について説明する。本発明においては、化学組成の適正化と、上記、Mg含有酸化物および該酸化物を核として析出した炭窒化物とからなる粒子の適正分散により、母材、HAZのクリープ強度向上と、HAZ靭性の向上とが図られる。母材も化学組成が本発明を満足していれば、HAZ靭性と同等の靭性確保は可能であるが、本発明では、いっそうの母材靭性向上のための方法も提供する。具体的には、
▲1▼鋼片を熱間圧延により鋼板とした後、Ac3 変態点以上、1150℃以下の温度で焼きならしあるいは焼入れを行い、さらに600℃以上、Ac1 変態点未満の温度で焼き戻す。
▲2▼鋼片を1050〜1300℃に加熱し、累積圧下率が10〜50%で圧延開始温度が950℃以上、圧延終了温度が900℃以上の粗圧延を行った後、引き続き、累積圧下率が50〜90%で、圧延開始温度が900℃未満、圧延終了温度が700℃以上の仕上げ圧延を行い、300℃以下まで冷却の後、600℃以上、Ac1 変態点未満の温度で焼き戻す、また、必要に応じて、圧延終了後、300℃以下まで5〜50℃/sで加速冷却する。
ことを特徴とする。
【0043】
▲1▼の方法は、再加熱熱処理によって鋼板を製造する場合で、焼きならしあるいは焼入れ処理後、焼戻しを施す。焼きならしあるいは焼入れのオーステナイト化温度はAc3 変態点以上、1150℃以下とする必要があるが、Ac3 変態点未満であると、析出物の粗大化が生じて、強度、靭性の劣化の恐れがあり、1150℃超であると、加熱オーステナイト粒径が粗大となって靭性が劣化する可能性が大であるためである。
【0044】
本発明範囲の化学組成を有する鋼の焼入性は高いため、オーステナイト化後の冷却条件にはほとんど依存せずにベイナイトないしはマルテンサイト組織となるため、空冷程度で冷却する焼きならしと、水冷あるいは油冷等による加速冷却で製造される焼入れとで変態組織及びその結果としての機械的性質にほとんど差は生じないため、本発明では焼きならしでも、焼入れでもかまわない。ただし、熱処理によって、強度・靭性向上のために微細で均一な組織とする必要性があるため、徐冷は好ましくない。最低でも0.2℃/s以上の冷却速度で冷却することが望ましい。
【0045】
なお、本発明の焼きならしあるいは焼入れ+焼戻し処理により製造する場合、焼きならしあるいは焼入れにおけるオーステナイト化の段階で、それまでの履歴の影響は解消されるため、鋼板の熱間圧延条件は問わない。ただし、鋼板の表面状態を良好に保持する必要性がある場合は、熱間圧延における鋼片の再加熱温度は1300℃未満とすることが好ましい。
【0046】
▲2▼の方法は、加工熱処理による靭性向上方法であり、加工熱処理によって、オーステナイトの微細化とパンケーキ化(伸長オーステナイト化)による加工歪の導入によって強度と靭性を向上させる。その要件は、1050〜1300℃に加熱し、累積圧下率が10〜50%で圧延開始温度が950℃以上、圧延終了温度が900℃以上の粗圧延を行った後、引き続き、累積圧下率が50〜90%で、圧延開始温度が900℃未満、圧延終了温度が700℃以上の仕上げ圧延を行い、300℃以下まで冷却の後、600℃以上、Ac1 態点未満の温度で焼き戻すことにある。
【0047】
鋼片の加熱温度は、1050〜1300℃に限定するが、これは、加熱温度が1050℃未満であると元素の溶体化が不十分となり、強度、クリープ特性が低下するためであり、一方、1300℃超では加熱γ粒径が粗大となり後の制御圧延によっても細粒化が不十分で、靱性低下を招くためである。
【0048】
圧延は粗圧延と仕上げ圧延とに分けて行う。粗圧延は仕上げ圧延前に板厚を調整することが主目的であるが、ある程度γ粒径を微細化するための目的も含めて、本発明においては、累積圧下率が10〜50%で圧延開始温度が950℃以上、圧延終了温度が900℃以上とする。累積圧下率は10%未満ではγの再結晶が明確に生ぜず、異常粒成長を起こす懸念がある。γの細粒化のためには累積圧下率は大きいほど好ましいが、後の仕上げ圧延での累積圧下率を確保する必要があるため50%以下に限定する。また、該圧延の温度は、再結晶で細粒化し、後の仕上げ圧延の自由度を高める点の両方の要求から開始温度は950℃以上、終了温度は900℃以上に限定する。これは、開始温度が950℃超では細粒化不十分であり、終了温度が900℃未満であると後の仕上げ圧延の温度が過剰に低下する可能性があるためである。
【0049】
粗圧延の後の仕上げ圧延はγの加工・再結晶による細粒化と、未再結晶域での圧延による加工歪の導入を目的として行う。γの細粒化は靱性の向上に、未再結晶域での圧延による加工歪の導入は強度、クリープ特性の向上に有効である。 仕上げ圧延の条件は、累積圧下率50〜90%、圧延開始温度900℃未満、圧延終了温度700℃以上とする。累積圧下率が50%未満ではγの細粒化が不十分である。累積圧下率が大きいほど、γの細粒化、歪の導入に対しては有利であるが、90%超では効果が飽和する一方で、圧延温度の確保の困難等の問題もあるから、現実的な範囲として50〜90%に限定する。
【0050】
圧延開始温度は900℃未満とするが、これは900℃以上では強度向上に有効な転位の導入が不十分なためである。また、圧延終了温度を700℃以上とするするのは、終了温度が700℃未満に低下すると、粗大な初析フェライトやベイナイトが圧延中または圧延後に生成して強度・靱性を損なう可能性が高いためである。
【0051】
圧延を終わった後の冷却は、本発明の化学組成範囲で初析フェライト相が変態しない範囲であれば、放冷、水冷、等手段は問わない。ただし、焼戻し処理の前にマルテンサイト変態を完了させる必要があるため、冷却は300℃以下まで行う必要がある。また、化学組成によっては所望の機械的性質を得るために加速冷却が好ましい場合があるが、その場合には加速冷却の効果を発揮するために、冷却速度は5℃/s以上とする必要がある。冷却速度が大きければ大きいほど加速冷却の効果は確実となるが、効果が飽和するためと、鋼板の変形が過度にならないために加速冷却における冷却速度の上限は100℃/s以下とする。
【0052】
熱間圧延後は強度・靱性の調整のために焼戻し処理が必須であるが、焼戻し温度は600℃以上、Ac1 変態点未満の範囲とする。これは、本発明のようにCr、Wを含む鋼では焼戻しによるマトリクスの回復と適切な析出物の分散を図る必要があり、そのためには、焼戻し温度は600℃以上とする必要があるが、Ac1 変態点以上となると、逆変態γから焼戻しを受けていないマルテンサイトが生成して、クリープ特性や靱性を劣化させるためである。
【0053】
【実施例】
以上が、本発明の要件についての説明であるが、さらに、実施例に基づいて本発明の効果を示す。
表1に示す化学組成の供試鋼を用いて、表2、表3に示す製造条件で鋼板を製造した。表2は鋼片の製造条件と、Mg含有酸化物の分散状態を示している。製造した鋼板の、機械的性質(鋼材母材の引張特性、靭性、クリープ破断特性及び継手のクリープ破断特性、靭性)の測定結果も合わせて表3に示す。
【0054】
母材の引張特性は圧延方向に直角な方向(C方向)の板厚中心部から丸棒引張試験片を採取して、室温及び600℃で試験を行った。母材のクリープ破断特性も引張特性と類似の丸棒試験片をC方向板厚中心部から採取して、試験温度600〜700℃、負荷応力50〜200MPa で試験を行った。クリープ破断特性の比較は、実測破断時間に基づいて推定した600℃×10万h破断強度により行った。母材の靱性評価は2mmVノッチシャルピー衝撃試験における破面遷移温度(vTrs)で評価したが、試験片は引張特性と同様、C方向板厚中心部から採取した。
【0055】
継手特性は入熱1.5kJ/mmのTIG溶接継手について評価した。レ形開先で多層盛溶接とし、クリープ破断試験片は平行部の中央が、溶融線(FL)が垂直側となる熱影響部(HAZ)の中央になるように、また、シャルピー試験片はノッチ位置がFLになるように加工した。評価方法は母材と同様である。なお、板厚25mm以下の鋼材の場合は元厚ままで、25mm超の場合は25mmに減厚してから継手を作成した。また、試験片は試験片中心部が鋼材の板厚中心部となるように採取した。
【0056】
表3のうちの鋼材番号(試験板号)A1〜A17は、本発明の化学組成を有し、かつMg含有酸化物、該酸化物と炭窒化物との複合化された粒子のサイズ、密度が本発明を満足する鋼番号1〜15の鋼片を用いて、本発明の製造方法により製造した鋼板であり、いずれも良好な母材の強度、クリープ破断特性、靱性、及び良好な継手のクリープ破断特性、靱性とが同時に達成されていることが明らかである。
【0057】
一方、同様に表1、表2で本発明の範囲を逸脱している鋼材番号(試験板号)B1〜B9の比較例の鋼板は、本発明により製造された鋼材番号A1〜A17の鋼板に比べて、母材特性あるいは継手特性のうちの1つ以上の特性が大幅に劣っていることが明らかである。
【0058】
鋼材番号B1〜B7は化学組成あるいはMg含有酸化物、該酸化物と炭窒化物との複合化された粒子のサイズ、密度が本発明を満足していないために、製造方法は本発明を満足しているものの、十分な特性を達成できなかった例である。 すなわち、鋼材番号B1は、Mgが添加されていないため、炉材あるいは不純物から混入したMgに起因したMg含有酸化物は形成されるものの、Mg含有酸化物、あるいは該酸化物と炭窒化物との複合化された粒子の分散密度は非常に少なく、母材、継手ともクリープ破断特性、靭性が劣る。
鋼材番号B2は、Mgは添加されているもののTiが添加されていないために、Mg含有酸化物、該酸化物と炭窒化物との複合化された粒子の分散密度が十分でなく、母材、継手ともクリープ破断特性、靭性が劣る。
鋼材番号B3は、Al量が過大なために、Mg含有酸化物の形成が阻害され、母材、継手ともクリープ破断特性、靭性が劣る。
鋼材番号B4は、C量が過剰なため、製造方法は本発明を満足しているにもかかわらず、母材、継手ともに、特に靭性劣化が顕著である。
鋼材番号B5は、MoあるいはWが含有されていないために、特にクリープ特性が不十分である。
鋼材番号B6は、クリープ特性向上に有効な微細析出物を形成する元素の添加がないために、特にクリープ特性が不十分である。
鋼材番号B7は、さらにMgが添加されていないため、一層のクリープ特性の劣化が明らかである。
【0059】
一方、鋼材番号B8〜B9は、化学組成及びMg含有酸化物、該酸化物と炭窒化物との複合化された粒子のサイズ、密度は本発明を満足しているため、鋼材番号B1〜B7に比べれば十分良好な特性は得られているが、製造方法が本発明の範囲を逸脱しているために、本発明の方法によるよりも特性の劣化が生じている例である。
すなわち、鋼材番号B8は、加工熱処理により製造された鋼板であるが、仕上げ圧延の温度が高すぎるため、オーステナイトの細粒化や転位の導入が不十分で、母材のクリープ破断特性、靭性が若干劣る。
鋼材番号B9は、熱間圧延後に熱処理を行う製造方法において、焼きならしの加熱温度が高すぎるため、加熱オーステナイト粒径が過大となり、母材のクリープ破断特性、靭性が若干劣る。
【0060】
以上の実施例からも、本発明によれば、母材の強度、クリープ破断特性、靱性、また、継手のクリープ破断特性、靱性とがともに良好な鋼の製造が可能であることが明らかである。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明により、溶接方法や溶接後熱処理(PWHT)条件に依存せず、安定して、母材と同等のHAZクリープ強度が得られ、かつ、母材、HAZともに、従来得られているよりも、高いクリープ強度が得られ、かつ、構造物の安全性を高める上で重要な低温靭性も、母材、HAZともに良好な、母材及び溶接継手のクリープ強度及び靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板が得られることが明らかであり、産業上の効果は極めて大きい。
Claims (11)
- 質量%で、
C :0.03〜0.2%、
Si:0.01〜1%、
Mn:0.01〜3%、
P :0.02%以下、
S :0.01%以下、
Cr:0.5〜13%、
Al:0.001〜0.1%、
Ti:0.003〜0.1%、
Mg:0.0001〜0.015%、
N :0.002〜0.1%を含有し、
Mo:0.3〜2%、
W :0.5〜4%の1種または2種、また、
V :0.01〜0.5%、
Ta:0.02〜1%、
Nb:0.005〜0.5%、
Zr:0.005〜0.1%の1種または2種以上を、さらに含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、かつ、粒子径が0.002〜0.1μmのMg含有酸化物粒子、および、Mg含有酸化物とこれを核として析出した炭窒化物とからなる粒子径が0.005〜2μmの複合粒子の1種または2種を合計で1×104 〜1×108 個/mm2 含むことを特徴とする、母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板。 - 質量%で、
Cu:0.05〜1.5%、
Ni:0.05〜3%、
Co:0.05〜5%、
B :0.0002〜0.005%の1種または2種以上を、さらに含有することを特徴とする、請求項1に記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板。 - 質量%で、
Y :0.001〜0.1%、
Ca :0.0005〜0.01%、
REM:0.005〜0.1%の1種または2種以上を、さらに含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板。 - 溶存酸素量が0.001〜0.02%の溶鋼に、Mg、Ti、Alを同時に添加した後、鋳造して鋼片とすることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。
- 溶存酸素量が0.001〜0.02%の溶鋼に、Mg、Ti、Alを添加するに際して、Alを最後に添加した後、鋳造して鋼片とすることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。
- 熱間圧延の後、Ac3 変態点以上、1150℃以下の温度で焼きならしあるいは焼入れを行い、さらに600℃以上、Ac1 変態点未満の温度で焼き戻すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。
- 鋼片を1050〜1300℃に加熱し、累積圧下率が10〜50%で圧延開始温度が950℃以上、圧延終了温度が900℃以上の粗圧延を行った後、引き続き、累積圧下率が50〜90%で、圧延開始温度が900℃未満、圧延終了温度が700℃以上の仕上げ圧延を行う熱間圧延の後、600℃以上、Ac1 変態点未満の温度で焼き戻すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。
- 鋼片を1050〜1300℃に加熱し、累積圧下率が10〜50%で圧延開始温度が950℃以上、圧延終了温度が900℃以上の粗圧延を行った後、引き続き、累積圧下率が50〜90%で、圧延開始温度が900℃未満、圧延終了温度が700℃以上の仕上げ圧延を行う熱間圧延の後、300℃以下まで5〜100℃/sで加速冷却し、さらに600℃以上、Ac1 変態点未満の温度で焼き戻すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。
- 熱間圧延の後、Ac3 変態点以上、1150℃以下の温度で焼きならしあるいは焼入れを行い、さらに600℃以上、Ac1 変態点未満の温度で焼き戻すことを特徴とする、請求項4または5に記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。
- 鋼片を1050〜1300℃に加熱し、累積圧下率が10〜50%で圧延開始温度が950℃以上、圧延終了温度が900℃以上の粗圧延を行った後、引き続き、累積圧下率が50〜90%で、圧延開始温度が900℃未満、圧延終了温度が700℃以上の仕上げ圧延を行う熱間圧延の後、600℃以上、Ac1 変態点未満の温度で焼き戻すことを特徴とする、請求項4または5に記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。
- 鋼片を1050〜1300℃に加熱し、累積圧下率が10〜50%で圧延開始温度が950℃以上、圧延終了温度が900℃以上の粗圧延を行った後、引き続き、累積圧下率が50〜90%で、圧延開始温度が900℃未満、圧延終了温度が700℃以上の仕上げ圧延を行う熱間圧延の後、300℃以下まで5〜100℃/sで加速冷却し、さらに600℃以上、Ac1 変態点未満の温度で焼き戻すことを特徴とする、請求項4または5に記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。
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