JP2001192761A - 母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板およびその製造方法 - Google Patents
母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板およびその製造方法Info
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Abstract
に優れたフェライト系耐熱鋼板およびその製造方法を提
供すること。 【解決手段】 特定含有範囲のC、Si、Mn、P、
S、Cr、Al、Ti、Mg、Nと、特定含有範囲のM
o及びWの1種または2種、更に特定含有範囲のV、T
a、Nb、Zrの1種または2種以上を含有し、残部F
e及び不可避不純物からなり、粒子径が0.002〜
0.1μmのMg含有酸化物粒子、および、Mg含有酸
化物とこれを核として析出した炭窒化物とからなる粒子
径が0.005〜2μmの複合粒子の1種または2種を
合計で1×104 〜1×108 個/mm2含むフェライト
系耐熱鋼板。
Description
ラント等の耐熱構造物に不可欠な、フェライト系耐熱鋼
板に関するもので、母材のクリープ特性、靭性に加えて
溶接継手の熱影響部(HAZ)のクリープ特性及び靭性
にも優れたフェライト系耐熱鋼板とその製造方法に関す
るものである。
物用に高いクリープ強度を有するフェライト系耐熱鋼が
要求される。この種の用途に供される鋼の例としては、
JIS規格STBA24(2.25Cr−1Mo鋼)、
SCMV4(1.25Cr−0.5Mo−0.3V鋼)
等のCr−Mo鋼が挙げられる。さらに、最近は9〜1
2CrをベースとしてMoあるいはWを単独あるいは複
合添加した鋼や、これらにさらにNb、V、Ta等の炭
窒化物形成元素を添加した鋼が開発されている。
度、クリープ強度の向上には、Mo、W等の固溶強化、
炭窒化物による析出強化、分散強化が用いられている。
これらの強化機構を最大限発現するためには、鋼の熱間
圧延、熱処理等の製造方法を調整して、析出物を極力微
細分散させる必要があり、そのために焼きならし焼戻し
処理、焼入れ焼戻し処理、さらには加工熱処理(TMC
P)の適正化が図られている。
は、溶接施工が不可欠であるが、鋼板の溶接熱影響を受
けた部分(溶接熱影響部:以下、単にHAZという)
は、熱処理等によって最適化された組織、析出物分布が
変化してしまうため、熱影響を受けていない部分(母
材)に比べて高温強度、特にクリープ強度の低下が避け
られない。
−238347号公報に開示されているように、VとZ
rとの添加比率を制限することにより、熱影響部での析
出物の種類、分布を適正化し、母材クリープ強度とほぼ
同等のクリープ強度が得られることが見出されている
が、現状においては、母材のクリープ強度をさらに高め
ると同時に、溶接方法や溶接後熱処理(PWHT)条件
に依存せず、安定して、母材と同等のHAZクリープ強
度を達成するための方法については見出されていない。
溶接後熱処理(PWHT)条件に依存せず、安定して、
母材と同等のHAZクリープ強度が得られ、かつ、母
材、HAZともに、従来得られているよりも、高いクリ
ープ強度が得られ、かつ、構造物の安全性を高める上で
重要な低温靭性も、母材、HAZともに良好な、母材及
び溶接継手のクリープ強度及び靭性に優れたフェライト
系耐熱鋼板とその製造方法を提供することにある。
下は、溶接の熱影響を受けることにより、鋼が二相域〜
Ac3 変態点直上まで再加熱されて、母材の焼戻しマル
テンサイトのラス構造が崩れ、転位密度が低下し、析出
物が粗大化するためであり、特に、10000時間を超
えるような長時間クリープ特性においては、析出物の粗
大化が支配因子である。クリープ強度向上に有効な析出
物としては、Mo、Cr、W等からなる炭化物とNb、
Ta、V、Ti等からなる炭窒化物があるが、両方の析
出物ともHAZでは粗大化するが、特に前者のM23C6
タイプを主とする炭化物の粗大化が大きい。
再加熱されるHAZの熱履歴を受けても析出物が粗大化
しなければ、母材のクリープ特性に比較してHAZのク
リープ強度が低下することはなくなる。しかし、炭化
物、炭窒化物においては、二相域〜Ac3 変態点直上と
比較的低温に再加熱された場合は、完全に安定ではあり
えず、一方で、完全に固溶もしないため、一部固溶した
分が、未固溶の析出物の粗大化に使われる。すなわち、
二相域〜Ac3 変態点直上と比較的低温に再加熱された
場合にも完全に固溶する析出物か、全く変化しない析出
物であれば、母材に比べてHAZのクリープ強度が顕著
に低下することはなくなるはずである。
ープ強度向上に有効な析出物の研究を実施したが、二相
域〜Ac3 変態点直上再加熱領域で完全に溶体化し、そ
の後の熱履歴で微細に析出し、かつ、クリープ中にも粗
大化せずに安定に存在するような析出物は見あたらない
が、二相域〜Ac3 変態点直上再加熱領域ではほとんど
固溶せず、その後の熱履歴においても分散状態が変化せ
ず、かつ、初期の分散密度が、従来クリープ強度向上に
一般に用いられてきた、前記炭化物や炭窒化物よりも大
きい析出物の種類とその分散手段を発明した。該酸化物
はHAZの加熱オーステナイト粒径微細化にも有効で、
合わせてHAZ靭性の向上にも有用である。
上することから、母材の靭性向上も合わせて図ることに
より、構造物の安全性向上に有効であるとの観点から、
本発明者らは、母材靭性向上のための手段も種々検討
し、本発明を完成するに至った。その要旨とするところ
は以下に示す通りである。
2%、Si:0.01〜1%、Mn:0.01〜3%、
P :0.02%以下、S :0.01%以下、Cr:
0.5〜13%、Al:0.001〜0.1%、Ti:
0.003〜0.1%、Mg:0.0001〜0.01
5%、N :0.002〜0.1%を含有し、Mo:
0.3〜2%、W :0.5〜4%の1種または2種、
また、V :0.01〜0.5%、Ta:0.02〜1
%、Nb:0.005〜0.5%、Zr:0.005〜
0.1%の1種または2種以上を、さらに含有し、残部
Fe及び不可避不純物からなり、かつ、粒子径が0.0
02〜0.1μmのMg含有酸化物粒子、および、Mg
含有酸化物とこれを核として析出した炭窒化物とからな
る粒子径が0.005〜2μmの複合粒子の1種または
2種を合計で1×104 〜1×108 個/mm2 含むこと
を特徴とする、母材ならびに溶接継手のクリープ強度と
靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板。 (2) 質量%で、Cu:0.05〜1.5%、Ni:
0.05〜3%、Co:0.05〜5%、B :0.0
002〜0.005%の1種または2種以上を、さらに
含有することを特徴とする、前記(1)に記載の母材な
らびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライ
ト系耐熱鋼板。 (3) 質量%で、Y :0.001〜0.1%、C
a:0.0005〜0.01%、REM:0.005〜
0.1%の1種または2種以上を、さらに含有すること
を特徴とする、前記(1)または(2)に記載の母材な
らびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライ
ト系耐熱鋼板。
2%の溶鋼に、Mg、Ti、Alを同時に添加した後、
鋳造して鋼片とすることを特徴とする、前記(1)〜
(3)のいずれかに記載の母材ならびに溶接継手のクリ
ープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方
法。 (5) 溶存酸素量が0.001〜0.02%の溶鋼
に、Mg、Ti、Alを添加するに際して、Alを最後
に添加した後、鋳造して鋼片とすることを特徴とする、
前記(1)〜(3)のいずれかに記載の母材ならびに溶
接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱
鋼板の製造方法。
上、1150℃以下の温度で焼きならしあるいは焼入れ
を行い、さらに600℃以上、Ac1 変態点未満の温度
で焼き戻すことを特徴とする、前記(1)〜(3)のい
ずれかに記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と
靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。 (7) 鋼片を1050〜1300℃に加熱し、累積圧
下率が10〜50%で圧延開始温度が950℃以上、圧
延終了温度が900℃以上の粗圧延を行った後、引き続
き、累積圧下率が50〜90%で、圧延開始温度が90
0℃未満、圧延終了温度が700℃以上の仕上げ圧延を
行う熱間圧延の後、600℃以上、Ac1 変態点未満の
温度で焼き戻すことを特徴とする、前記(1)〜(3)
のいずれかに記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強
度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。 (8) 鋼片を1050〜1300℃に加熱し、累積圧
下率が10〜50%で圧延開始温度が950℃以上、圧
延終了温度が900℃以上の粗圧延を行った後、引き続
き、累積圧下率が50〜90%で、圧延開始温度が90
0℃未満、圧延終了温度が700℃以上の仕上げ圧延を
行う熱間圧延の後、300℃以下まで5〜100℃/s
で加速冷却し、さらに600℃以上、Ac1 変態点未満
の温度で焼き戻すことを特徴とする、前記(1)〜
(3)のいずれかに記載の母材ならびに溶接継手のクリ
ープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方
法。
上、1150℃以下の温度で焼きならしあるいは焼入れ
を行い、さらに600℃以上、Ac1 変態点未満の温度
で焼き戻すことを特徴とする、前記(4)または(5)
に記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に
優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。 (10) 鋼片を1050〜1300℃に加熱し、累積
圧下率が10〜50%で圧延開始温度が950℃以上、
圧延終了温度が900℃以上の粗圧延を行った後、引き
続き、累積圧下率が50〜90%で、圧延開始温度が9
00℃未満、圧延終了温度が700℃以上の仕上げ圧延
を行う熱間圧延の後、600℃以上、Ac1 変態点未満
の温度で焼き戻すことを特徴とする、前記(4)または
(5)に記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と
靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。 (11) 鋼片を1050〜1300℃に加熱し、累積
圧下率が10〜50%で圧延開始温度が950℃以上、
圧延終了温度が900℃以上の粗圧延を行った後、引き
続き、累積圧下率が50〜90%で、圧延開始温度が9
00℃未満、圧延終了温度が700℃以上の仕上げ圧延
を行う熱間圧延の後、300℃以下まで5〜100℃/
sで加速冷却し、さらに600℃以上、Ac1 変態点未
満の温度で焼き戻すことを特徴とする、前記(4)また
は(5)に記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度
と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。
する。先ず、本発明において、化学組成の限定理由を述
べる。Cは、固溶強化元素としてまた炭化物を生成し高
温クリープ強度を向上させる。またδ−フェライトの生
成を抑制し靭性を向上させる。クリープ強度向上にはC
は、0.03%以上必要である。一方、0.2%を超え
るとC自体の悪影響により靭性が劣化し、また、溶接性
も劣化するため、0.03%〜0.2%に限定する。
健全性を確保するためには0.01%以上必要である。
一方、1%を超えると靭性が低下するため、0.01%
〜1%に限定する。
する必要がある。一方、3%を超えるとMn偏析が顕著
になり靭性を低下させ、またクリープ特性も低下させる
傾向があるため、0.01%〜3%に限定する。
靭性を劣化させる元素であり、極力低減することが好ま
しい。耐熱鋼では、P、S量が高いとクリープ延性の低
下が問題となる。材質劣化が大きくなく、許容できる量
として、Pの上限を0.02%、Sの上限を0.01%
に限定する。
に、熱処理時の加熱オーステナイト微細化に有効な元素
である。さらに、後述するように、HAZクリープ特性
やHAZ靱性向上に必要なMgO、Mg含有酸化物の微
細分散に寄与する。効果を発揮するためには0.001
%以上含有する必要がある。一方、0.1%を超えて過
剰に含有すると、粗大な酸化物を形成して延性、靭性を
極端に劣化させるため、0.001%〜0.1%の範囲
に限定する必要がある。
与するとともに、高温でも安定なTiNの形成により加
熱オーステナイト粒径微細化にも有効な元素である。ま
た、後述するように、HAZクリープ特性、HAZ靱性
向上に必要なMgO、Mg含有酸化物の微細分散に寄与
する。効果を発揮するためには0.003%以上の含有
が必要である。一方、0.1%を超えると、粗大な析出
物、介在物を形成して靭性や延性を劣化させるため、上
限を0.1%とする。
HAZのクリープ特性を向上させ、かつ、HAZの加熱
オーステナイト粒径微細化によりHAZ靭性を向上させ
る、粒子径が0.002〜0.1μmのMg含有酸化物
粒子、および、Mg含有酸化物とこれを核として析出し
た炭窒化物とからなる粒子径が0.005〜2μmの複
合粒子の1種または2種を合計で1×104 〜1×10
8 個/mm2 含ませるために必須の元素である。該酸化物
あるいは該酸化物を核とする炭窒化物との複合粒子の必
要性、限定理由については、本発明の基本要件であるた
め、別途詳細に説明するが、全Mg含有量も、該粒子の
分布状態を達成するために限定する必要がある。すなわ
ち、全Mg量が0.0001%未満では粒子個数を確保
できず、0.015%超であると、Mgを含有する粒子
が極端に粗大となって、靭性を劣化させるため、Mg含
有量は0.0001〜0.015%の範囲とする。
高め、且つTaN、VN等の微細な析出物を形成し高温
クリープ強度を高める。そのためには0.002%以上
必要である。一方、0.1%を超える添加は鋳造性、靭
性を低下させるため、0.002〜0.1%に限定す
る。
高温強度特性とともに最も重要な高温での耐食性、耐酸
化性を向上させるために不可欠の元素である。高温での
耐食性、耐酸化性を向上のためにはCr量は多いほど好
ましいが、高温での耐食性、耐酸化性を発現するには最
低限、0.5%必要である。一方、過剰な添加はδ−フ
ェライトを生成し靭性を低下させるため、上限はδ−フ
ェライトの生成が他の元素とのバランスで抑制できるこ
とを考慮して13%とする。
に最も有効であり、また、ほぼ同様の効果を有する元素
である。Mo量については0.3%〜2%、Wについて
は0.5%〜4%の範囲が好ましい。Moについては、
その添加量が0.3%未満では高温強度、クリープ強度
向上効果が発揮されず、2%超では粗大な炭化物や金属
間化合物を形成して靱性を著しく劣化させるため好まし
くない。Wについては、Moと同様に高温クリープ強度
を著しく向上させるが、やはり、0.5%未満では効果
が明瞭でなく、逆に添加量が4%を超えて過剰になると
粗大な炭化物、金属間化合物を生じて靭性を著しく低下
させるため、0.5〜4%に限定する。なお、MoとW
とは、定性的な効果がほぼ同一で、加算的であるため、
MoとWのうちのどちらか1種でも、或いは両方を添加
しても効果を発揮することは可能である。
めには、V、Ta、Nb、Zrの1種または2種以上を
含有させる必要がある。Vは、固溶強化及び析出強化に
よって高温クリープ強度を高める。その効果は0.01
%以上で顕著となるが、0.5%を超える添加はδ−フ
ェライトの生成による靭性低下を招き且つ溶接性を低下
させるため、0.01〜0.5%に限定する。Taは、
析出強化により高温クリープ強度を向上させ、加熱γ粒
径の微細化に有効に働き、母材靭性を向上させる。これ
らのためには0.02%以上必要である。一方、1%を
超えると高温クリープ強度が逆に低下し、且つ溶接性を
低下させるため、0.02〜1%に限定する。Nbも、
主として析出強化により高温クリープ強度を向上させ
る。また加熱γ粒径の微細化に有効に働き、母材靭性を
向上させる。これらのためには0.005%以上必要で
ある。一方、0.5%を超えると高温クリープ強度が逆
に低下し、且つ溶接性を低下させるため、0.005〜
0.5%に限定する。Zrも、Nb、Taとほぼ同様の
作用を有するが、その効果を発揮させるためには、0.
005%以上必要であり、0.1%超ではやはり粗大な
酸化物、析出物を形成して靱性の劣化が著しくなるた
め、含有量を0.005〜0.1%に限定する。
るが、さらに必要に応じて、主として変態組織の制御を
通した強度、靱性向上を目的として、Cu、Ni、C
o、Bの内の1種または2種以上を添加することが可能
である。Niは、固溶靱化により靱性を向上させるとと
もに、マルテンサイト組織の安定形成、δ−フェライト
の生成抑制効果により、強度及び靱性を向上させる。そ
の効果を発揮させるためには0.05%以上必要である
が、3%を超えて含有させると、クリープ強度を低下さ
せる傾向があるため、0.05〜3%の範囲に限定す
る。Cuも、定性的にはNiとほぼ同様の効果を有し、
そのためには0.05%以上の添加が必要である。一
方、1.5%超では鋼片の高温割れ等の問題を生じるた
め、本発明においては上限を1.5%とする。Coも、
Niと類似の効果を有し、δ−フェライトの抑制を通し
て靱性やクリープ強度の向上に寄与する。そのために
は、0.05%以上含む必要がある。一方、5%超で
は、その効果が飽和するのと、焼入性が低下してマルテ
ンサイト相が不安定となって、逆に強度、靱性の劣化を
招く場合があるため、本発明では、Coを添加する場合
の含有量は0.05〜5%の範囲に限定する。Bは、微
量の含有でも、粒界に偏析することで鋼の焼入性を高め
ることが可能な元素であり、変態組織制御を通した強
度、靱性の向上のために必要に応じて添加が可能であ
る。ただし、0.0002%未満では十分な固溶量が確
保できず、焼入性向上効果が明瞭でなく、逆に0.00
5%を超えると粗大な化合物を形成して組織制御効果を
失うと同時に化合物自体が破壊の起点となって靱性を著
しく損なうため、0.0002〜0.005%の範囲に
限定する。
めに、必要に応じて、Y、Ca、REMのうち、1種ま
たは2種以上添加することができる。Yは、微細な酸化
物、硫化物を形成して、熱影響部のオーステナイト粒径
を微細化し、溶接性及び溶接継手の靱性を向上できる。
かつ、酸素、硫黄を固定することにより、クリープ延性
の向上に寄与する。その効果を発揮させるためには0.
001%以上必要であり、0.1%超では酸化物、硫化
物が粗大となって、逆に靱性を劣化させるため、0.0
01〜0.1%に限定する。Caも、微細な酸化物、硫
化物を形成して、熱影響部のオーステナイト粒径を微細
化し、溶接性及び溶接継手の靱性を向上できる。かつ、
酸素、硫黄を固定することにより、クリープ延性の向上
に寄与する。その効果を発揮させるためには0.000
5%以上必要であり、0.01%超では酸化物、硫化物
が粗大となって、逆に靱性を劣化させるため、0.00
05〜0.01%に限定する。REMも、定性的な効果
はCaとほぼ同様であるが、Mg、Caに比べて効果が
弱いため、0.005%以上含有させる必要がある。一
方、靱性に悪影響を及ぼす粗大介在物を形成させないた
めの上限は0.1%となる。
AZのクリープ強度、靭性を高めるために必要な粒子の
種類とその分散状態の限定理由を詳細に説明する。耐熱
鋼のHAZのクリープ強度が低下するのは、溶接の熱に
より鋼材が二相域〜Ac3 変態点直上に再加熱された領
域で、Mo、Cr、Wを主要構成元素とするM23C6 の
炭化物や、Nb、Ta、Vを主要構成元素とするM
(C、N)系の炭窒化物が鋼材での状態に比べて、粗大
化するためである。すなわち、二相域〜Ac3 変態点直
上では、無視できない程度の溶解度を有するため、該析
出物は完全には安定でなく、その後の過程(溶接熱履歴
における冷却過程、溶接後熱処理(PWHT)、クリー
プ試験中)での凝集・粗大化が避けられず、そのため、
析出強化、分散強化量が低下する。HAZでも、さらに
高温に加熱された領域では、加熱段階では一旦析出物が
全量固溶するため、その後の冷却過程や溶接後熱処理
(PWHT)の段階で再度析出物が微細析出するため、
母材とほぼ同程度にまで高温強度、クリープ強度は回復
する。
限りは、HAZの二相域〜Ac3 変態点直上加熱領域で
の析出物の凝集・粗大化は避けられない。該温度域でほ
とんど溶解度を持たず、安定な析出物が望ましいが、そ
のような性質の炭窒化物は存在しない。安定性からすれ
ば、第一に酸化物が考えられるが、一般的には酸化物は
微細分散が困難で、クリープ強度を高める効果をほとん
ど持たないと考えられる。
と同等以上の保持するためには、酸化物を活用する以外
にないと考え、クリープ強度を向上できる程度の酸化物
の微細分散を図るための手段を種々検討した。その結
果、「粒子径が0.002〜0.1μmのMg含有酸化
物粒子、および、Mg含有酸化物とこれを核として析出
した炭窒化物とからなる粒子径が0.005〜2μmの
複合粒子の1種または2種を合計で1×104 〜1×1
08 個/mm2 含む」ことにより、HAZのクリープ強度
を母材と同等以上に高められることを見出した。また、
該粒子の分散はHAZの溶融線(Fusion Lin
e:FL)直近で非常に高温にさらされたHAZの加熱
オーステナイト粒径微細化にも有効で、HAZ靭性の向
上も同時に図られることを知見した。
のは、強脱酸元素であるMgからなる酸化物でないと、
クリープ強度を高める、かつ、FL近傍のHAZの加熱
オーステナイト粒径を微細化するために必要な高温で安
定な粒子の高密度な分散を達成できないためである。
化物とこれを核として析出した炭窒化物とからなる粒子
基づく強化は分散強化によるものであるため、また、オ
ーステナイト粒の微細化は分散粒子のピン止め効果によ
るものであるため、酸化物は単独の形態でも、また、該
酸化物を核として、複合的あるいは周辺に析出した炭窒
化物より構成される形態でも構わない。炭窒化物の種類
も問わない。
主にはMgO、Mgを含有するスピネルがあるが、その
種類は問わず、酸化物中のMg含有量が質量%で5%以
上であるものを意味し、他の構成元素の種類は問わな
い。すなわち、構成元素にMg、O以外の元素、例え
ば、Ti、Al、Mn、Si、Ca等の脱酸元素が質量
%で20%程度未満含まれていても構わない。また、酸
化物の結晶構造も問わない。ただし、より安定に微細分
散する酸化物としては、Mgに加えてAl、Ti、Ca
の1種〜2種以上を主構成元素とするスピネル型酸化物
が好ましい。
これを核として析出した炭窒化物とからなる粒子の密度
は、クリープ強度向上が母材のクリープ強度向上に対す
る炭窒化物の寄与以上に生じるために必要な密度、及
び、FL直近におけるHAZのオーステナイト粒径が溶
接方法や溶接入熱に大きく依存せず、安定に微細化され
るために必要な密度から限定される。実験結果に基づい
て、本発明では、粒子径が0.002〜0.1μmのM
g含有酸化物あるいはMg含有酸化物とこれを核として
析出した炭窒化物とからなる粒子径が0.005〜2μ
mの複合粒子を1×104 〜1×108 個/mm2 に限定
する。粒子径の下限を規定したのは、下限未満の粒子径
では1個の粒子あたりの分散強化代が不十分であり、か
つ、HAZのオーステナイト成長抑制のためのピン止め
効果が不十分であるためである。一方、粒子径の上限を
規定したのは、粒子径が上限を超えた粗大な粒子は靱性
に悪影響を及ぼす可能性が大であるためである。
プ強度向上とFL直近HAZのオーステナイトに対する
ピン止め効果が不十分であり、上限超ではオーステナイ
ト粒径微細化効果が飽和する一方で、酸化物、炭窒化物
の含有率が過大であるために、鋼材の延性、靱性が劣化
する恐れがあるためである。
ズ、個数の測定は電子顕微鏡を用いて行われることが好
ましい。酸化物の分布状態によって観察、測定倍率は変
化させて構わないが、1〜3万倍程度で10視野以上に
ついて観察、測定し、粒子の種類の同定、平均粒子サイ
ズ、個数を求めることが望ましい。また、上記粒子の測
定は、鋼材の板厚中心部で行うことが望ましい。これ
は、凝固速度の最も小さい板厚中心部の酸化物個数の確
保が最も困難であるため、板厚中心部で本発明を満足し
ていれば、他の箇所の酸化物個数は確実に板厚中心部よ
り多くなっているためである。
化物とこれを核として析出した炭窒化物とからなる粒子
が本発明で規定される密度で分散していれば、その達成
手段によらず、効果を発揮するが、本発明では、該酸化
物あるいは該酸化物を核として析出した炭窒化物とから
なる粒子を最適に分散するための方法も提供する。すな
わち、鋼材、構造材料として用いるような板厚、サイズ
の鋼材において、該酸化物粒子を高密度に分散させるた
めには、該酸化物を構成する元素を脱酸元素として、溶
鋼中に添加して溶鋼中あるいは凝固中に酸化物として析
出させる方法(脱酸法)が実用的に最も有用である。本
発明者らは、脱酸法において、Mg含有酸化物を高密度
に分散させる手段を種々検討し、脱酸元素添加前のO
(酸素)量と、Mgと他の脱酸元素との添加順序が酸化
物のサイズ、個数に最も大きな影響を及ぼす因子である
ことを見いだした。具体的な要件としては、「溶存酸素
量が0.001〜0.02%の溶鋼にMg、Ti、Al
を同時に添加した後、鋳造して鋼片とすること」及び
「溶存酸素量が0.001〜0.02%の溶鋼にMg、
Ti、Alを添加するに際して、Alを最後に添加した
後、鋳造して鋼片とすること」を特徴とする。
めには、Mg添加前の溶鋼中の溶存酸素量を先ず限定す
る必要がある。これは、0.001%未満では形成され
る全酸化物量が不十分となりやすく、0.02%超では
粗大な酸化物が形成されて、微細な酸化物の個数が減少
し、かつ粗大な酸化物が靱性に悪影響を及ぼす恐れがあ
るためである。また、溶鋼中にMgを添加するに際して
は、Mgだけでなく、Mgと他の脱酸元素、特にTi、
Alの添加順序が大きな影響を及ぼし、Mg、Ti、A
lを同時に添加するか、別々に添加する場合には、Mg
とTiの添加順序は問わないが、Alについては最後に
添加することが好ましい。このように添加順序を限定す
ると、MgO、Mg含有酸化物のサイズ、個数がより安
定、多量に確保できる。また、CaもAlと類似の効果
を有するため、延性改善等の目的でCaを添加する場合
には、Mgと同時に添加するか、Mgと別々に添加する
場合には、Alと同時か、Alの後に添加することが好
ましい。
中へ添加する場合はの時間間隔の影響は工業的に実施で
きる範囲であれば粒子分散や材質への影響は大きくな
い。ただし、最初の添加から最後の添加完了までは2h
以内であることが望ましい。また、実験結果によれば、
添加間隔が30s以内と短時間である場合は、ほぼ同時
添加と同じ効果が得られるため、本発明では、添加間隔
が30s以内の場合は同時添加とみなす。
問わない。純Mgであっても、Fe、Si、Ni、Cu
等の1種または2種以上からなる合金を母合金とした原
料でも、歩留まりを考慮して、本発明の化学組成範囲と
なるように添加すれば、同様の効果を得られる。他の脱
酸元素についても同様である。母合金を用いる場合の、
母合金中のMg含有量も特に問わない。
化物を核として析出した炭窒化物とからなる粒子を適正
に分散させた鋼では、熱履歴に依存せずに、安定的にク
リープ強度とHAZ靭性が確保される。従って、本発明
は、アーク溶接一般、例えば、手溶接、CO2 溶接、サ
ブマージ溶接、TIG溶接、MIG溶接等々、また、エ
レクトロガスアーク溶接、エレクトロスラグ溶接等の大
入熱溶接、さらには電子ビーム溶接、レーザー溶接な
ど、いずれの溶接によってもほぼ同様の効果が得られ
る。
達成するための要件について説明する。本発明において
は、化学組成の適正化と、上記、Mg含有酸化物および
該酸化物を核として析出した炭窒化物とからなる粒子の
適正分散により、母材、HAZのクリープ強度向上と、
HAZ靭性の向上とが図られる。母材も化学組成が本発
明を満足していれば、HAZ靭性と同等の靭性確保は可
能であるが、本発明では、いっそうの母材靭性向上のた
めの方法も提供する。具体的には、 鋼片を熱間圧延により鋼板とした後、Ac3 変態点以
上、1150℃以下の温度で焼きならしあるいは焼入れ
を行い、さらに600℃以上、Ac1 変態点未満の温度
で焼き戻す。 鋼片を1050〜1300℃に加熱し、累積圧下率が
10〜50%で圧延開始温度が950℃以上、圧延終了
温度が900℃以上の粗圧延を行った後、引き続き、累
積圧下率が50〜90%で、圧延開始温度が900℃未
満、圧延終了温度が700℃以上の仕上げ圧延を行い、
300℃以下まで冷却の後、600℃以上、Ac1 変態
点未満の温度で焼き戻す、また、必要に応じて、圧延終
了後、300℃以下まで5〜50℃/sで加速冷却す
る。ことを特徴とする。
製造する場合で、焼きならしあるいは焼入れ処理後、焼
戻しを施す。焼きならしあるいは焼入れのオーステナイ
ト化温度はAc3 変態点以上、1150℃以下とする必
要があるが、Ac3 変態点未満であると、析出物の粗大
化が生じて、強度、靭性の劣化の恐れがあり、1150
℃超であると、加熱オーステナイト粒径が粗大となって
靭性が劣化する可能性が大であるためである。
は高いため、オーステナイト化後の冷却条件にはほとん
ど依存せずにベイナイトないしはマルテンサイト組織と
なるため、空冷程度で冷却する焼きならしと、水冷ある
いは油冷等による加速冷却で製造される焼入れとで変態
組織及びその結果としての機械的性質にほとんど差は生
じないため、本発明では焼きならしでも、焼入れでもか
まわない。ただし、熱処理によって、強度・靭性向上の
ために微細で均一な組織とする必要性があるため、徐冷
は好ましくない。最低でも0.2℃/s以上の冷却速度
で冷却することが望ましい。
+焼戻し処理により製造する場合、焼きならしあるいは
焼入れにおけるオーステナイト化の段階で、それまでの
履歴の影響は解消されるため、鋼板の熱間圧延条件は問
わない。ただし、鋼板の表面状態を良好に保持する必要
性がある場合は、熱間圧延における鋼片の再加熱温度は
1300℃未満とすることが好ましい。
法であり、加工熱処理によって、オーステナイトの微細
化とパンケーキ化(伸長オーステナイト化)による加工
歪の導入によって強度と靭性を向上させる。その要件
は、1050〜1300℃に加熱し、累積圧下率が10
〜50%で圧延開始温度が950℃以上、圧延終了温度
が900℃以上の粗圧延を行った後、引き続き、累積圧
下率が50〜90%で、圧延開始温度が900℃未満、
圧延終了温度が700℃以上の仕上げ圧延を行い、30
0℃以下まで冷却の後、600℃以上、Ac1 態点未満
の温度で焼き戻すことにある。
に限定するが、これは、加熱温度が1050℃未満であ
ると元素の溶体化が不十分となり、強度、クリープ特性
が低下するためであり、一方、1300℃超では加熱γ
粒径が粗大となり後の制御圧延によっても細粒化が不十
分で、靱性低下を招くためである。
う。粗圧延は仕上げ圧延前に板厚を調整することが主目
的であるが、ある程度γ粒径を微細化するための目的も
含めて、本発明においては、累積圧下率が10〜50%
で圧延開始温度が950℃以上、圧延終了温度が900
℃以上とする。累積圧下率は10%未満ではγの再結晶
が明確に生ぜず、異常粒成長を起こす懸念がある。γの
細粒化のためには累積圧下率は大きいほど好ましいが、
後の仕上げ圧延での累積圧下率を確保する必要があるた
め50%以下に限定する。また、該圧延の温度は、再結
晶で細粒化し、後の仕上げ圧延の自由度を高める点の両
方の要求から開始温度は950℃以上、終了温度は90
0℃以上に限定する。これは、開始温度が950℃超で
は細粒化不十分であり、終了温度が900℃未満である
と後の仕上げ圧延の温度が過剰に低下する可能性がある
ためである。
晶による細粒化と、未再結晶域での圧延による加工歪の
導入を目的として行う。γの細粒化は靱性の向上に、未
再結晶域での圧延による加工歪の導入は強度、クリープ
特性の向上に有効である。仕上げ圧延の条件は、累積圧
下率50〜90%、圧延開始温度900℃未満、圧延終
了温度700℃以上とする。累積圧下率が50%未満で
はγの細粒化が不十分である。累積圧下率が大きいほ
ど、γの細粒化、歪の導入に対しては有利であるが、9
0%超では効果が飽和する一方で、圧延温度の確保の困
難等の問題もあるから、現実的な範囲として50〜90
%に限定する。
れは900℃以上では強度向上に有効な転位の導入が不
十分なためである。また、圧延終了温度を700℃以上
とするするのは、終了温度が700℃未満に低下する
と、粗大な初析フェライトやベイナイトが圧延中または
圧延後に生成して強度・靱性を損なう可能性が高いため
である。
組成範囲で初析フェライト相が変態しない範囲であれ
ば、放冷、水冷、等手段は問わない。ただし、焼戻し処
理の前にマルテンサイト変態を完了させる必要があるた
め、冷却は300℃以下まで行う必要がある。また、化
学組成によっては所望の機械的性質を得るために加速冷
却が好ましい場合があるが、その場合には加速冷却の効
果を発揮するために、冷却速度は5℃/s以上とする必
要がある。冷却速度が大きければ大きいほど加速冷却の
効果は確実となるが、効果が飽和するためと、鋼板の変
形が過度にならないために加速冷却における冷却速度の
上限は100℃/s以下とする。
戻し処理が必須であるが、焼戻し温度は600℃以上、
Ac1 変態点未満の範囲とする。これは、本発明のよう
にCr、Wを含む鋼では焼戻しによるマトリクスの回復
と適切な析出物の分散を図る必要があり、そのために
は、焼戻し温度は600℃以上とする必要があるが、A
c1 変態点以上となると、逆変態γから焼戻しを受けて
いないマルテンサイトが生成して、クリープ特性や靱性
を劣化させるためである。
が、さらに、実施例に基づいて本発明の効果を示す。表
1に示す化学組成の供試鋼を用いて、表2、表3に示す
製造条件で鋼板を製造した。表2は鋼片の製造条件と、
Mg含有酸化物の分散状態を示している。製造した鋼板
の、機械的性質(鋼材母材の引張特性、靭性、クリープ
破断特性及び継手のクリープ破断特性、靭性)の測定結
果も合わせて表3に示す。
(C方向)の板厚中心部から丸棒引張試験片を採取し
て、室温及び600℃で試験を行った。母材のクリープ
破断特性も引張特性と類似の丸棒試験片をC方向板厚中
心部から採取して、試験温度600〜700℃、負荷応
力50〜200MPa で試験を行った。クリープ破断特性
の比較は、実測破断時間に基づいて推定した600℃×
10万h破断強度により行った。母材の靱性評価は2mm
Vノッチシャルピー衝撃試験における破面遷移温度(v
Trs)で評価したが、試験片は引張特性と同様、C方向
板厚中心部から採取した。
継手について評価した。レ形開先で多層盛溶接とし、ク
リープ破断試験片は平行部の中央が、溶融線(FL)が
垂直側となる熱影響部(HAZ)の中央になるように、
また、シャルピー試験片はノッチ位置がFLになるよう
に加工した。評価方法は母材と同様である。なお、板厚
25mm以下の鋼材の場合は元厚ままで、25mm超の場合
は25mmに減厚してから継手を作成した。また、試験片
は試験片中心部が鋼材の板厚中心部となるように採取し
た。
A17は、本発明の化学組成を有し、かつMg含有酸化
物、該酸化物と炭窒化物との複合化された粒子のサイ
ズ、密度が本発明を満足する鋼番号1〜15の鋼片を用
いて、本発明の製造方法により製造した鋼板であり、い
ずれも良好な母材の強度、クリープ破断特性、靱性、及
び良好な継手のクリープ破断特性、靱性とが同時に達成
されていることが明らかである。
逸脱している鋼材番号(試験板号)B1〜B9の比較例
の鋼板は、本発明により製造された鋼材番号A1〜A1
7の鋼板に比べて、母材特性あるいは継手特性のうちの
1つ以上の特性が大幅に劣っていることが明らかであ
る。
g含有酸化物、該酸化物と炭窒化物との複合化された粒
子のサイズ、密度が本発明を満足していないために、製
造方法は本発明を満足しているものの、十分な特性を達
成できなかった例である。すなわち、鋼材番号B1は、
Mgが添加されていないため、炉材あるいは不純物から
混入したMgに起因したMg含有酸化物は形成されるも
のの、Mg含有酸化物、あるいは該酸化物と炭窒化物と
の複合化された粒子の分散密度は非常に少なく、母材、
継手ともクリープ破断特性、靭性が劣る。鋼材番号B2
は、Mgは添加されているもののTiが添加されていな
いために、Mg含有酸化物、該酸化物と炭窒化物との複
合化された粒子の分散密度が十分でなく、母材、継手と
もクリープ破断特性、靭性が劣る。鋼材番号B3は、A
l量が過大なために、Mg含有酸化物の形成が阻害さ
れ、母材、継手ともクリープ破断特性、靭性が劣る。鋼
材番号B4は、C量が過剰なため、製造方法は本発明を
満足しているにもかかわらず、母材、継手ともに、特に
靭性劣化が顕著である。鋼材番号B5は、Moあるいは
Wが含有されていないために、特にクリープ特性が不十
分である。鋼材番号B6は、クリープ特性向上に有効な
微細析出物を形成する元素の添加がないために、特にク
リープ特性が不十分である。鋼材番号B7は、さらにM
gが添加されていないため、一層のクリープ特性の劣化
が明らかである。
びMg含有酸化物、該酸化物と炭窒化物との複合化され
た粒子のサイズ、密度は本発明を満足しているため、鋼
材番号B1〜B7に比べれば十分良好な特性は得られて
いるが、製造方法が本発明の範囲を逸脱しているため
に、本発明の方法によるよりも特性の劣化が生じている
例である。すなわち、鋼材番号B8は、加工熱処理によ
り製造された鋼板であるが、仕上げ圧延の温度が高すぎ
るため、オーステナイトの細粒化や転位の導入が不十分
で、母材のクリープ破断特性、靭性が若干劣る。鋼材番
号B9は、熱間圧延後に熱処理を行う製造方法におい
て、焼きならしの加熱温度が高すぎるため、加熱オース
テナイト粒径が過大となり、母材のクリープ破断特性、
靭性が若干劣る。
材の強度、クリープ破断特性、靱性、また、継手のクリ
ープ破断特性、靱性とがともに良好な鋼の製造が可能で
あることが明らかである。
接方法や溶接後熱処理(PWHT)条件に依存せず、安
定して、母材と同等のHAZクリープ強度が得られ、か
つ、母材、HAZともに、従来得られているよりも、高
いクリープ強度が得られ、かつ、構造物の安全性を高め
る上で重要な低温靭性も、母材、HAZともに良好な、
母材及び溶接継手のクリープ強度及び靭性に優れたフェ
ライト系耐熱鋼板が得られることが明らかであり、産業
上の効果は極めて大きい。
Claims (11)
- 【請求項1】 質量%で、 C :0.03〜0.2%、 Si:0.01〜1%、 Mn:0.01〜3%、 P :0.02%以下、 S :0.01%以下、 Cr:0.5〜13%、 Al:0.001〜0.1%、 Ti:0.003〜0.1%、 Mg:0.0001〜0.015%、 N :0.002〜0.1%を含有し、 Mo:0.3〜2%、 W :0.5〜4%の1種または2種、また、 V :0.01〜0.5%、 Ta:0.02〜1%、 Nb:0.005〜0.5%、 Zr:0.005〜0.1%の1種または2種以上を、
さらに含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、か
つ、粒子径が0.002〜0.1μmのMg含有酸化物
粒子、および、Mg含有酸化物とこれを核として析出し
た炭窒化物とからなる粒子径が0.005〜2μmの複
合粒子の1種または2種を合計で1×104 〜1×10
8 個/mm2 含むことを特徴とする、母材ならびに溶接継
手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼
板。 - 【請求項2】 質量%で、 Cu:0.05〜1.5%、 Ni:0.05〜3%、 Co:0.05〜5%、 B :0.0002〜0.005%の1種または2種以
上を、さらに含有することを特徴とする、請求項1に記
載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れ
たフェライト系耐熱鋼板。 - 【請求項3】 質量%で、 Y :0.001〜0.1%、 Ca :0.0005〜0.01%、 REM:0.005〜0.1%の1種または2種以上
を、さらに含有することを特徴とする、請求項1または
2に記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性
に優れたフェライト系耐熱鋼板。 - 【請求項4】 溶存酸素量が0.001〜0.02%の
溶鋼に、Mg、Ti、Alを同時に添加した後、鋳造し
て鋼片とすることを特徴とする、請求項1〜3のいずれ
か1項に記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と
靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。 - 【請求項5】 溶存酸素量が0.001〜0.02%の
溶鋼に、Mg、Ti、Alを添加するに際して、Alを
最後に添加した後、鋳造して鋼片とすることを特徴とす
る、請求項1〜3のいずれか1項に記載の母材ならびに
溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライト系耐
熱鋼板の製造方法。 - 【請求項6】 熱間圧延の後、Ac3 変態点以上、11
50℃以下の温度で焼きならしあるいは焼入れを行い、
さらに600℃以上、Ac1 変態点未満の温度で焼き戻
すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記
載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れ
たフェライト系耐熱鋼板の製造方法。 - 【請求項7】 鋼片を1050〜1300℃に加熱し、
累積圧下率が10〜50%で圧延開始温度が950℃以
上、圧延終了温度が900℃以上の粗圧延を行った後、
引き続き、累積圧下率が50〜90%で、圧延開始温度
が900℃未満、圧延終了温度が700℃以上の仕上げ
圧延を行う熱間圧延の後、600℃以上、Ac1 変態点
未満の温度で焼き戻すことを特徴とする、請求項1〜3
のいずれか1項に記載の母材ならびに溶接継手のクリー
プ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方
法。 - 【請求項8】 鋼片を1050〜1300℃に加熱し、
累積圧下率が10〜50%で圧延開始温度が950℃以
上、圧延終了温度が900℃以上の粗圧延を行った後、
引き続き、累積圧下率が50〜90%で、圧延開始温度
が900℃未満、圧延終了温度が700℃以上の仕上げ
圧延を行う熱間圧延の後、300℃以下まで5〜100
℃/sで加速冷却し、さらに600℃以上、Ac1 変態
点未満の温度で焼き戻すことを特徴とする、請求項1〜
3のいずれか1項に記載の母材ならびに溶接継手のクリ
ープ強度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方
法。 - 【請求項9】 熱間圧延の後、Ac3 変態点以上、11
50℃以下の温度で焼きならしあるいは焼入れを行い、
さらに600℃以上、Ac1 変態点未満の温度で焼き戻
すことを特徴とする、請求項4または5に記載の母材な
らびに溶接継手のクリープ強度と靭性に優れたフェライ
ト系耐熱鋼板の製造方法。 - 【請求項10】 鋼片を1050〜1300℃に加熱
し、累積圧下率が10〜50%で圧延開始温度が950
℃以上、圧延終了温度が900℃以上の粗圧延を行った
後、引き続き、累積圧下率が50〜90%で、圧延開始
温度が900℃未満、圧延終了温度が700℃以上の仕
上げ圧延を行う熱間圧延の後、600℃以上、Ac1 変
態点未満の温度で焼き戻すことを特徴とする、請求項4
または5に記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強度
と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。 - 【請求項11】 鋼片を1050〜1300℃に加熱
し、累積圧下率が10〜50%で圧延開始温度が950
℃以上、圧延終了温度が900℃以上の粗圧延を行った
後、引き続き、累積圧下率が50〜90%で、圧延開始
温度が900℃未満、圧延終了温度が700℃以上の仕
上げ圧延を行う熱間圧延の後、300℃以下まで5〜1
00℃/sで加速冷却し、さらに600℃以上、Ac1
変態点未満の温度で焼き戻すことを特徴とする、請求項
4または5に記載の母材ならびに溶接継手のクリープ強
度と靭性に優れたフェライト系耐熱鋼板の製造方法。
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