JP6032094B2 - インフレーションフィルム成形用プロピレン系樹脂組成物およびフィルムの製造方法 - Google Patents

インフレーションフィルム成形用プロピレン系樹脂組成物およびフィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、インフレーションフィルム成形用プロピレン系樹脂組成物およびフィルムの製造方法に関し、詳しくは、インフレーション成形特有のウエルドマークあるいはスジあるいはムラと呼ばれる外観不良を抑制するインフレーションフィルム成形用プロピレン系樹脂組成物、およびインフレーションフィルムの製造方法に関する。
従来から、ポリプロピレン系樹脂は、引張強度、剛性、透明性などに優れ、かつ無毒性、無臭性などの食品衛生性に優れるため、特に食品包装分野で広く利用されている。通常、ポリプロピレン系樹脂を包装分野に使用する際、フィルム状にして使用されることが多い。
フィルムの製造方法には、Tダイ成形法、水冷インフレーション法、空冷インフレーション法、テンター式二軸延伸法、チューブラー式二軸延伸法等があり、経済性、フィルムの要求性能等を勘案し、適宜選択されている。このうち、空冷インフレーション法は、設備が簡単な上、ブロー比の調整だけでフィルムの幅替えが容易にできるので、作業性が良く、また、比較的低温にて成形できるので、低臭性も優れる特徴を有する。
しかしながら、インフレーション法では、管状樹脂を成形する環状ダイを用いるため、管状樹脂の同一円周上の形状が均一、均質でない場合に引き起こされる環状ダイ特有のウエルドマークあるいはスジあるいはムラと呼ばれる外観不良が知られている(例えば特許文献1参照)。ここでウエルドマークとは、インフレーション成形で一般的に使用される環状ダイで発生する特有の現象であり、環状ダイの構造上必ず生じる樹脂の合流部分の流動不均一性に起因するものと考えられている。
この問題を解決すべく、成形装置面では、例えば特許文献1また特許文献2に記載の方法が提案されているが、インフレーション成形機は必ずしもこれらの装置を備えているとは限らず、材料面での改善が求められていた。しかし、これまで材料面から上記外観不良を抑制する手法は知られていなかった。
また、空冷インフレーション法は、ポリエチレン系樹脂には広く用いられてきたが、ポリプロピレン系樹脂ではあまり使用されない。その理由として、Tダイ成形法、水冷インフレーション法では透明なフィルムが得られるプロピレン系樹脂材料であっても、空冷インフレーション法では全く透明性が得られない、といった問題があった。
そこで空冷インフレーション法における透明性の問題点を解決するために、様々な発明がなされてきた(例えば、特許文献3、4など参照。)
特許文献3では、メタロセン触媒を用いて重合され、MFRが1〜20g/分、融解ピーク温度(Tm)が110℃〜135℃、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.5〜3.5であるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)95〜99.9重量%、及び造核剤(B)0.1〜5重量%を含有するポリプロピレン樹脂組成物からなり、HAZEが5%以下である空冷インフレーション成形ポリプロピレンフィルムが開示されている。
また、特許文献4では、メタロセン触媒を用いて重合され、MFRが1〜20g/分、融解ピーク温度(Tm)が110℃〜135℃、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.5〜3.5であるアイソタクチックプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体からなる層を、メルトインデックスが0.1〜20g/分、密度が0.860〜0.925であるエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体からなる層の片側または両側に積層した空冷インフレーション成形ポリプロピレンフィルムが開示されている。
しかしながら、これらの方法で得られたポリプロピレンフィルムは、透明性については向上するものの、成形条件を変更することでウエルドマークあるいはスジあるいはムラなどと呼ばれる外観不良を引き起こす場合もあった。
特開2008−087362号公報 特開2004−330698号公報 特開2004−182967号公報 特開2004−322413号公報
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、インフレーション法にて、特殊な装置を用いることなく、ウエルドマークなどの外観不良が発生しにくいポリプロピレンフィルムを容易に製造できるプロピレン系樹脂組成物及びインフレーションフィルムの製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、プロピレン系重合体に特定のプロピレン−エチレン共重合体を特定量配合したプロピレン系樹脂組成物を用いることにより、インフレーション法にて、ウエルドマークなどの外観不良が発生しにくいポリプロピレンフィルムを容易に製造できることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、以下のインフレーションフィルム成形用プロピレン系樹脂組成物およびフィルムの製造方法を提供する。
[1]下記(A)及び(B)の合計100重量部基準で、下記(A−i)〜(A−iii)を満たすプロピレン系重合体(A)99〜50重量部と、下記(B−i)〜(B−ii)を満たすプロピレン−エチレン共重合体(B)1〜50重量部を含有するプロピレン系樹脂組成物であって、
前記プロピレン−エチレン共重合体(B)は、(B1)及び(B2)の合計100重量%基準で、下記(B1−i)を有するプロピレン系重合体成分(B1)65〜95重量%と、下記(B2−i)及び(B2−ii)を有するプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)5〜35重量%とからなることを特徴とするインフレーションフィルム成形用プロピレン系樹脂組成物。
(A−i)重合体(A)がプロピレン単独重合体またはプロピレン−αオレフィン共重合体である
(A−ii)重合体(A)のメルトフローレートが0.1〜30g/10minである
(A−iii)重合体(A)のGPC測定における重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2〜10である
(B−i)共重合体(B)中のエチレン含有量が0.4〜13重量%である
(B−ii)共重合体(B)のメルトフローレートが0.5〜20g/10minである
(B1−i)重合体成分(B1)中のエチレン含有量が0〜6.0重量%である
(B2−i)共重合体成分(B2)中のエチレン含有量が3〜25重量%である
(B2−ii)共重合体成分(B2)のメルトフローレートが0.0001〜0.5g/10minである
[2]上記[1]に記載のインフレーションフィルム成形用プロピレン系樹脂組成物を用いてインフレーション成形することを特徴とするフィルムの製造方法。
[3]インフレーション成形が空冷インフレーション成形である上記[2]に記載のフィルムの製造方法。
本発明のインフレーションフィルム成形用プロピレン系樹脂組成物は、インフレーション成形特有のウエルドマークあるいはスジあるいはムラと呼ばれる外観不良の発生が抑制され、これを用いてインフレーション成形することにより、透明性に優れ、外観不良のない良好なフィルムを容易に得ることができる。
[プロピレン系重合体(A)]
本発明に用いられるプロピレン系重合体(A)は、以下の条件(A−i)〜(A−iii)を有することが必要である。
(A−i)重合体(A)がプロピレン単独重合体またはプロピレン−αオレフィン共重合体である
(A−ii)重合体(A)のメルトフローレート(MFR(A))が0.1〜30g/10minである
(A−iii)重合体(A)のGPC測定における重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2〜10の範囲にある。
(A−i)
プロピレン系重合体(A)は、プロピレン単独重合体もしくはプロピレン−αオレフィン共重合体である必要がある。ここで、プロピレン−αオレフィン共重合体とは、プロピレンを主体とするプロピレン−αオレフィンランダム共重合体または、プロピレンを主体とするブロック共重合体を意味する。
プロピレン系重合体(A)がプロピレン単独重合体もしくはプロピレン−αオレフィン共重合体でない場合、例えばエチレンを主体とするエチレン−αオレフィン共重合体などの場合、後述のプロピレン−エチレン共重合体(B)との相容性が劣るため、透明性が不十分となるなどの問題が生じる。
プロピレン系重合体(A)は、プロピレン単独重合体もしくはプロピレン−αオレフィン共重合体であればよいが、透明性の観点からプロピレン−αオレフィン共重合体が好ましく、特にプロピレン−αオレフィンランダム共重合体が好ましく、より好ましくはプロピレンエチレンランダム共重合体である。
プロピレン系重合体(A)がプロピレンエチレンランダム共重合体である場合、エチレン含有量E(A)は、好ましくは0.1〜6.0重量%であり、より好ましくは0.5〜5.0重量%である。エチレン含有量が6.0重量%を超えると、結晶性が減少するために、耐ブロッキング性能が悪化する。
(A−ii)
プロピレン系重合体(A)のメルトフローレート(MFR(A))は、0.1〜30g/10minであり、好ましくは0.5〜25g/10minである。MFRが0.1g/10minよりも小さい場合には、成型加工性及び溶融流動性に劣り、MFRが30g/10minよりも大きい場合には、インフレーションフィルム成形時のバブル安定性が損なわれ、フィルム成形自体が困難となる。
なお、メルトフローレートMFR(A)は、JIS K7210に準拠し、荷重2.16kgにて測定される。
(A−iii)
プロピレン系重合体(A)のGPC測定における重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は2〜10であり、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜6である。Mw/Mnが10より大きい場合は、低分子量成分が増大し、フィルム表面の光沢を阻害したり、ブロッキング性能が悪化するといった悪影響を及ぼすため好ましくない。
プロピレン系重合体(A)は、公知の方法により得られたものを使用することが出来るが、特にメタロセン触媒を用いた重合により得られたものが好ましい。メタロセン触媒を用いたものは、チーグラー・ナッタ触媒を用いたものよりも、分子量分布が狭く、結晶性分布が狭く、低結晶性成分の生成量が少ないために、剛性が高く、耐ブロッキング性能に優れるという特徴があることに加え、特に空冷インフレーション成形を行った際、得られるフィルムが透明性に優れるという特徴がある。
[プロピレン−エチレン共重合体(B)]
本発明に用いられるプロピレン−エチレン共重合体(B)は、先ず以下の条件(B−i)〜(B−ii)を満足することが必要である。
(B−i)共重合体(B)中のエチレン含有量(E(B))が0.4〜13重量%である
(B−ii)共重合体(B)のメルトフローレート(MFR(B))が0.5〜20g/10である
(B−i)
プロピレン−エチレン共重合体(B)中のエチレン含有量E(B)は、0.4〜13重量%であり、好ましくは0.5〜12重量%である。共重合体中のエチレン含有量E(B)をこの範囲とすると充分なウエルドあるいはスジあるいはムラと呼ばれる外観不良の改善効果が得られる。また、0.4重量%未満である場合はインフレーションフィルム成形時に配向結晶化による外観不良を誘発する場合があり、13重量%を超えると、外観不良の改善効果が得られない場合がある。
(B−ii)
プロピレン−エチレン共重合体(B)のメルトフローレート(MFR(B))は、0.5〜20g/10minであり、好ましくは、1.0〜15g/10minである。0.5g/10minより小さい場合は、プロピレン系重合体(A)への分散性が劣り、フィルムにムラ模様が生じ、実用に耐えない外観となりやすい。20g/10minよりも大きい場合は、プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)との溶融流動特性差が顕著となり、プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の分散不良に起因したフィッシュアイやゲルが生じて、フィルムとして実用に耐えない結果となりやすくなるため好ましくない。
さらに、プロピレン−エチレン共重合体(B)は、(B1)及び(B2)の合計100重量%基準で、下記条件(B1−i)を有するプロピレン系重合体成分(B1):65〜95重量%と、下記条件(B2−i)〜(B2−ii)を有するプロピレン−エチレン共重合体成分(B2):5〜35重量%とからなるプロピレン−エチレン共重合体であることが必要である。
(B1−i)重合体成分(B1)中のエチレン含有量(E(B1))が0〜6.0重量%である
(B2−i)共重合体成分(B2)中のエチレン含有量(E(B2))が3〜25重量%である
(B2−ii)共重合体成分(B2)のメルトフローレート(MFR(B2))が0.0001〜0.5g/10minである
ここで、プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)のエチレン含有量(E(B2))は、プロピレン−エチレン共重合体(B)のエチレン含有量(E(B))、プロピレン系重合体成分(B1)のエチレン含有量(E(B1))、および、プロピレン−エチレン共重合体(B)におけるプロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比率を用いて、以下の式により定義した値とする。
E(B2)={E(B)−E(B1)×W(B1)}÷W(B2)
(ここで、W(B1)、W(B2)は、それぞれプロピレン−エチレン共重合体(B)におけるプロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比率であり、W(B1)+W(B2)=1の関係を満たす。)
同様に、MFR(B2)は、MFR(B)、MFR(B1)、および、プロピレン−エチレン共重合体(B)におけるプロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比率を用いて、粘度の対数加成則として良く知られている以下の式により定義した値とする。
MFR(B2)=exp{(log[MFR(B)]−W(B1)×log[MFR(B1)])÷W(B2)}
(ここで、MFR(B1)は、プロピレン系重合体成分(B1)のMFRであり、W(B1)およびW(B2)は、上記で定義したものである。)
プロピレン系重合体成分(B1)は結晶性を有する成分であり、そのエチレン含有量(E(B1))が0〜6.0重量%であり、好ましくは0〜5.0重量%、更に好ましくは0.5〜5.0重量%である。エチレン含有量E(B1)が6.0重量%を超えると、重合体の性状が極端に悪化し、重合設備での閉塞を誘発するだけでなく、フィルムのベタツキ性を悪化させる要因である低結晶性成分が増加する。
プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)は、環状ダイ内で生じる樹脂合流時等の流動不均一性を抑制する成分であり、極めて高い分子量成分を有する必要がある。そこで、成分(B2)は、MFR(B2)が0.0001〜0.5g/10minの範囲にあることが必要で、好ましくはその上限は0.2g/10min以下である。また、分子量が高すぎると、分散性が悪くなり、フィッシュアイやゲル発生の要因となるため、0.0001g/10min以上であり、好ましくは0.0005g/10min以上、特に好ましくは0.001g/10min以上である。
また、プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)は180℃程度の比較的低温にて押出成形を実施した場合、ダイ内流動において緩和時間が長い分子鎖の配向結晶化が生じないように、結晶性を抑制することが好ましい。結晶性はエチレン含有量で制御されるため、エチレン含有量E(B2)が3重量%以上であることが必要であり、好ましくは6重量%以上である。
一方、エチレン含有量E(B2)が高すぎると、成分(A)並びに成分(B1)のプロピレン分子鎖と、成分(B2)の分子鎖との相溶性が著しく低下し、透明性の悪化を引き起こすため、エチレン含有量E(B2)が25重量%以下であることが必要であり、好ましくは20重量%以下である。
プロピレン−エチレン共重合体(B)中の成分(B2)の割合は、成分(B2)は著しく分子量が高いため、成分(B2)の割合が多くなりすぎると、成分(B1)のMFRとの格差を大きくする必要があり、フィッシュアイやゲル発生の要因となるため、35重量%以下であることが必要であり、好ましくは30重量%以下である。一方、成分(B2)が少なすぎると、組成物中に成分(B)を過剰に含有する必要があり、分散性の悪化やフィルムの透明性の低下を招く恐れがあるため、5重量%以上であることが必要であり、好ましくは10重量%以上である。
本発明に用いるプロピレン−エチレン共重合体(B)は、前述した条件(B−i)〜(B−ii)を有するものであって、かつ、条件(B1−i)を有するプロピレン系重合体成分(B1)65〜95重量%と、条件(B2−i)〜(B2−ii)を有するプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)5〜35重量%とからなることを特徴とするプロピレン−エチレン共重合体であり、これを満たすものであれば、特に製造法を限定するものではない。
以下、好ましい具体的な例を挙げながら、本発明のプロピレン−エチレン共重合体(B)を製造する為の適正な形態を説明する。
1.触媒
プロピレン−エチレン共重合体(B)を製造する為の触媒は任意のものを用いることが出来るが、条件(B2−i)〜(B2−ii)を有するプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)を構成成分として製造する観点から、チーグラー・ナッタ触媒を用いる方が好ましい。チーグラー・ナッタ触媒を用いる場合、具体的な触媒の製造法は特に限定されるものではないが、一例として特開2007−254671号公報に開示された触媒を例示することが出来る。
具体的には、本発明のプロピレン−エチレン共重合体(B)の製造に好適なチーグラー・ナッタ触媒の代表的な例として、以下の構成成分、(a1)チタン、マグネシウム、ハロゲンを必須成分として含有する固体成分、(a2)有機アルミニウム化合物、(a3)電子供与体、からなる触媒を挙げることが出来る。
・固体成分(a1)
本発明のプロピレン−エチレン共重合体(B)の製造に好適なチーグラー・ナッタ触媒の構成成分である固体成分(a1)は、チタン(a1a)、マグネシウム(a1b)、ハロゲン(a1c)を必須成分として含有するものであり、任意成分として電子供与体(a1d)を用いることが出来る。ここで、「必須成分として含有する」ということは、挙示の三成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で任意の成分を任意の形態で含んでも良いということを示すものである。以下に詳述する。
・・チタン(a1a)
チタン源となるチタン化合物としては、任意のものを用いることが出来る。代表的な例としては特開平3−234707号公報に開示されている化合物を挙げることが出来る。チタンの価数に関しては、4価、3価、2価、0価の任意の価数を持つチタン化合物を用いることが出来るが、好ましくは4価および3価のチタン化合物、更に好ましくは4価のチタン化合物を用いることが望ましい。
4価のチタン化合物の具体例としては、四塩化チタンに代表されるハロゲン化チタン化合物類、テトラブトキシチタンに代表されるアルコキシチタン化合物類、テトラブトキシチタンダイマー(BuO)Ti−O−Ti(OBu)に代表されるTi−O−Ti結合を有するアルコキシチタンの縮合化合物類、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライドに代表される有機金属チタン化合物類、などを挙げることが出来る。この中で、四塩化チタンとテトラブトキシチタンが特に好ましい。
上記のチタン化合物類は単独で用いるだけではなく、複数の化合物を併用することも可能である。また、上記チタン化合物類の混合物や平均組成式がそれらの混合された式となる化合物(例えば、Ti(OBu)Cl4−m;0<m<4などの化合物)、また、フタル酸エステル等のその他の化合物との錯化物(例えば、Ph(COOBu)・TiClなどの化合物)、などを用いることが出来る。
・・マグネシウム(a1b)
マグネシウム源となるマグネシウム化合物としては、任意のものを用いることが出来る。代表的な例としては、特開平−234707号公報に開示されている化合物を挙げることが出来る。一般的には、塩化マグネシウムに代表されるハロゲン化マグネシウム化合物類、ジエトキシマグネシウムに代表されるアルコキシマグネシウム化合物類、金属マグネシウム、酸化マグネシウムに代表されるオキシマグネシウム化合物類、水酸化マグネシウムに代表されるヒドロキシマグネシウム化合物類、ブチルマグネシウムクロライドに代表されるグリニャール化合物類、ブチルエチルマグネシウムに代表される有機金属マグネシウム化合物類、炭酸マグネシウムやステアリン酸マグネシウムに代表される無機酸及び有機酸のマグネシウム塩化合物類、及びそれらの混合物や平均組成式がそれらの混合された式となる化合物(例えば、Mg(OEt)Cl2−m;0<m<2などの化合物)、などを用いることが出来る。この中で特に好ましいのは、塩化マグネシウム、ジエトキシマグネシウム、金属マグネシウム、ブチルマグネシウムクロライドである。
・・ハロゲン(a1c)
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、及びそれらの混合物を用いることが出来る。この中で塩素が特に好ましい。
ハロゲンは上記のチタン化合物類及び/又はマグネシウム化合物から供給されるのが一般的であるが、その他の化合物より供給することも出来る。代表的な例としては、四塩化ケイ素に代表されるハロゲン化ケイ素化合物類、塩化アルミニウムに代表されるハロゲン化アルミニウム化合物類、1,2−ジクロロエタンやベンジルクロライドに代表されるハロゲン化有機化合物類、トリクロロボランに代表されるハロゲン化ボラン化合物類、五塩化リンに代表されるハロゲン化リン化合物類、六塩化タングステンに代表されるハロゲン化タングステン化合物類、五塩化モリブデンに代表されるハロゲン化モリブデン化合物類、などを挙げることが出来る。これらの化合物は単独で用いるだけでなく、併用することも可能である。この中で、四塩化ケイ素が特に好ましい。
・・電子供与体(a1d)
固体成分(a1)は、任意成分として電子供与体を含有しても良い。電子供与体(a1d)の代表的な例としては、特開2004−124090号公報に開示されている化合物を挙げることが出来る。一般的には、有機酸及び無機酸並びにそれらの誘導体(エステル、酸無水物、酸ハライド、アミド)化合物類、エーテル化合物類、ケトン化合物類、アルデヒド化合物類、アルコール化合物類、アミン化合物類、などを用いることが望ましい。
電子供与体として用いることの出来る有機酸化合物としては、フタル酸に代表される芳香族多価カルボン酸化合物類、安息香酸に代表される芳香族カルボン酸化合物類、2−n−ブチル−マロン酸の様な2位に一つ又は二つの置換基を有するマロン酸や2−n−ブチル−コハク酸の様な2位に一つ又は二つの置換基若しくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸に代表される脂肪族多価カルボン酸化合物類、プロピオン酸に代表される脂肪族カルボン酸化合物類、ベンゼンスルホン酸やメタンスルホン酸に代表される芳香族及び脂肪族のスルホン酸化合物類、などを例示することが出来る。これらのカルボン酸化合物類及びスルホン酸化合物類は、芳香族・脂肪族に関わらず、マレイン酸の様に分子中の任意の場所に任意の数だけ不飽和結合を有しても良い。
電子供与体として用いることの出来る有機酸の誘導体化合物としては、上記有機酸のエステル、酸無水物、酸ハライド、アミド、などを例示することが出来る。
エステルの構成要素であるアルコールとしては、脂肪族及び芳香族アルコールを用いることが出来る。これらのアルコールの中でも、エチル基、ブチル基、イソブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ドデシル基、等の炭素数1から20の脂肪族の遊離基からなるアルコールが好ましい。更に好ましくは炭素数2から12の脂肪族の遊離基からなるアルコールが望ましい。また、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、等の脂環式の遊離基からなるアルコールを用いることも出来る。
酸ハライドの構成要素であるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、等を用いることが出来る。中でも、塩素が最も好ましい。多価有機酸のポリハライドの場合は複数のハロゲンが同一であっても異なっていても良い。
電子供与体として用いることの出来る無機酸化合物としては、炭酸、リン酸、ケイ酸、硫酸、硝酸、などを例示することが出来る。これらの無機酸の誘導体化合物としては、エステルを用いることが望ましい。テトラエトキシシラン(ケイ酸エチル)、テトラブトキシシラン(ケイ酸ブチル)、などを具体例として挙げることが出来る。
電子供与体として用いることの出来るエーテル化合物としては、ジブチルエーテルに代表される脂肪族エーテル化合物類、ジフェニルエーテルに代表される芳香族エーテル化合物類、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパンや2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパンの様な2位に一つ又は二つの置換基を有する1,3−ジメトキシプロパンに代表される脂肪族多価エーテル化合物類、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、に代表される芳香族の遊離基を分子内に有する多価エーテル化合物類、などを例示することが出来る。
電子供与体として用いることの出来るアルコール化合物としては、ブタノールや2−エチルヘキサノールに代表される脂肪族アルコール化合物類、フェノール、クレゾールに代表されるフェノール誘導体化合物類、グリセリンや1,1’−ビ−2−ナフトールに代表される脂肪族若しくは芳香族の多価アルコール化合物類、などを例示することが出来る。
これらの電子供与体は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。これらの中で好ましいのは、フタル酸ジブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘプチルに代表されるフタル酸エステル化合物類、フタロイルジクロライドに代表されるフタル酸ハライド化合物類、2−n−ブチル−マロン酸ジエチルの様な2位に一つ又は二つの置換基を有するマロン酸エステル化合物類、2−n−ブチル−コハク酸ジエチルの様な2位に一つ又は二つの置換基若しくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸エステル化合物類、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパンや2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパンの様な2位に一つ又は二つの置換基を有する1,3−ジメトキシプロパンに代表される脂肪族多価エーテル化合物類、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンに代表される芳香族の遊離基を分子内に有する多価エーテル化合物類、などである。
・・個体成分を構成する各成分の量比
固体成分(a1)を構成する各成分の使用量の量比は、触媒の性能を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次の範囲内が好ましい。
チタン化合物類の使用量は、使用するマグネシウム化合物類の使用量に対してモル比(チタン化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.0001から1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.01から10の範囲内が望ましい。マグネシウム化合物類及びチタン化合物類以外にハロゲン源となる化合物を使用する場合は、その使用量はマグネシウム化合物類及びチタン化合物類の各々がハロゲンを含むか含まないかに関わらず、使用するマグネシウム化合物類の使用量に対してモル比(ハロゲン源となる化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.01から1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.1から100の範囲内が望ましい。
固体成分(a1)を調製する際に任意成分として電子供与体を用いる場合の使用量は、使用するマグネシウム化合物の量に対してモル比(電子供与体のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.001から10の範囲内であり、特に好ましくは0.01から5の範囲内が望ましい。
固体成分(a1)は、上記の構成する各成分を上記の量比で接触して得られる。各成分の接触条件は、酸素を存在させないことが必要であるものの、本発明の効果を損なわない範囲で任意の条件を用いることが出来る。一般的には、次の条件が好ましい。
接触温度は、−50から200℃程度、好ましくは0から100℃である。接触方法としては、回転ボールミルや振動ミルなどによる機械的な方法、並びに、不活性希釈剤の存在下に撹拌により接触させる方法、などを例示することが出来る。
・有機アルミニウム化合物(a2)
本発明のプロピレン−エチレン共重合体(B)の製造に好適なチーグラー・ナッタ触媒の構成成分である有機アルミニウム化合物(a2)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることが出来る。一般的には、下記一般式にて表される化合物を用いることが望ましい。
AlX(OR
(式中、Rは炭化水素基を表す。Xはハロゲン若しくは水素を表す。Rは炭化水素基若しくはAlによる架橋基を表す。c≧1、0≦d≦2、0≦e≦2、c+d+e=3である。)
上記一般式中、Rは炭化水素基であり、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から8、特に好ましくは炭素数1から6、のものを用いることが望ましい。
の具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、などを挙げることが出来る。この中で、メチル基、エチル基、イソブチル基、が最も好ましい。
上記式中、Xはハロゲン若しくは水素である。Xとして用いることの出来るハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、などを例示することが出来る。この中で、塩素が特に好ましい。
また、上記式中、Rは炭化水素基若しくはAlによる架橋基である。Rが炭化水素基である場合には、Rの炭化水素基の例示と同じ群からRを選択することが出来る。また、有機アルミニウム化合物(a2)としてメチルアルモキサンに代表されるアルモキサン化合物類を用いることも可能であり、その場合RはAlによる架橋基を表す。
有機アルミニウム化合物(a2)として用いることの出来る化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、メチルアルモキサン、などを挙げることが出来る。中でも、トリエチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムが好ましい。
有機アルミニウム化合物(a2)は単独の化合を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。
・電子供与体(a3)
本発明のプロピレン−エチレン共重合体(B)の製造に好適なチーグラー・ナッタ触媒の構成成分である電子供与体(a3)として、アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物、若しくは、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物を例示することが出来る。
・・アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物
本発明のプロピレン−エチレン共重合体(B)の製造に好適なチーグラー・ナッタ触媒の構成成分であるアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることが出来る。一般的には、下記一般式にて表される化合物を用いることが望ましい。
Si(OR
(式中、Rは炭化水素基若しくはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。Rは水素、ハロゲン、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる任意の遊離基を表す。Rは炭化水素基を表す。0≦a≦2,1≦b≦3,a+b=3である。)
上記式中、Rは炭化水素基若しくはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。
として用いることの出来る炭化水素基は、一般に炭素数1から20、好ましくは炭素数3から10のものである。Rとして用いることの出来る炭化水素基の具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることが出来る。より好ましくは、Rとして分岐状脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を用いることが望ましく、とりわけ、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、テキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、ヘテロ原子が、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素から選ばれることが望ましく、とりわけ、窒素又は酸素であることが望ましい。Rのヘテロ原子含有炭化水素基の骨格構造としては、Rが炭化水素基である場合の例示から選ぶことが望ましい。とりわけ、N,N−ジエチルアミノ基、キノリノ基、イソキノリノ基、などが好ましい。
上記式中、Rは水素、ハロゲン、炭化水素基若しくはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。
として用いることの出来るハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、などを例示することが出来る。Rが炭化水素基である場合は、一般に炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10のものである。Rとして用いることの出来る炭化水素基の具体的な例としては、メチル基やエチル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることが出来る。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、Rがヘテロ原子含有炭化水素基である場合の例示から選ぶことが望ましい。とりわけ、N,N−ジエチルアミノ基、キノリノ基、イソキノリノ基、などが好ましい。
aの値が2の場合、二つあるRは同一であっても異なっても良い。また、aの値に関わらず、はRとR同一であっても異なっても良い。
上記式中、Rは炭化水素基を表す。Rとして用いることの出来る炭化水素基は、一般に炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から5のものである。Rとして用いることの出来る炭化水素基の具体的な例としては、メチル基やエチル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、などを挙げることが出来る。中でも、メチル基とエチル基が最も好ましい。bの値が2以上である場合、複数存在するRは同一であっても異なっても良い。
アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物の好ましい例としては、t−Bu(Me)Si(OMe)、t−Bu(Me)Si(OEt)、t−Bu(Et)Si(OMe)、t−Bu(n−Pr)Si(OMe)、c−Hex(Me)Si(OMe)、c−Hex(Et)Si(OMe)、c−PenSi(OMe)、i−PrSi(OMe)、i−BuSi(OMe)、i−Pr(i−Bu)Si(OMe)、n−Pr(Me)Si(OMe)、t−BuSi(OEt)、(EtN)Si(OMe)、EtN−Si(OEt)
などを挙げることが出来る。
これらの有機ケイ素化合物類は単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。
・・少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物
本発明のプロピレン−エチレン共重合体(B)の製造に好適なチーグラー・ナッタ触媒の構成成分である少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物としては、特開平3−294302号公報および特開平8−333413号公報に開示された化合物等を用いることが出来る。一般的には、下記一般式にて表される化合物を用いることが望ましい。
O−C(R−C(R−C(R−OR
(式中、R及びRは水素、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる任意の遊離基を表す。Rは炭化水素基若しくはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。)
上記式中、Rは水素、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる任意の遊離基を表す。
として用いることの出来る炭化水素基は、一般に炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10のものである。Rとして用いることの出来る炭化水素基の具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることが出来る。より好ましくは、Rとして分岐状脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を用いることが望ましく、とりわけ、i−プロピル基、i−ブチル基、i−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
二つのRは結合して一つ以上の環を形成しても良い。この際、環構造中に2個又は3個の不飽和結合を含むシクロポリエン系構造を取ることも出来る。また、他の環式構造と縮合していても良い。単環式、複環式、縮合の有無に関わらず、環上に炭化水素基を置換基として1つ以上有していても良い。環上の置換基は、一般に炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10のものである。具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることが出来る。
上記式中、Rは水素、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる任意の遊離基を表す。具体的には、RはRの例示から選ぶことが出来る。好ましくは水素である。
式中、Rは炭化水素基若しくはヘテロ原子含有炭化水素基を表すが、具体的には、RはRが炭化水素基である場合の例示から選ぶことが出来る。好ましくは、炭素数1から6の炭化水素基であることが望ましく、更に好ましくはアルキル基であることが望ましい。最も好ましくはメチル基である。
からRがヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、ヘテロ原子が、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素から選ばれることが望ましい。また、RからRが炭化水素基であるかヘテロ原子含有炭化水素基であるかに関わらず、任意にハロゲンを含んでいても良い。RからRがヘテロ原子及び/又はハロゲンを含む場合、その骨格構造は炭化水素基である場合の例示から選ばれることが望ましい。また、RからRの八個の置換基はお互いに同一であっても異なっても良い。
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物の好ましい例としては、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−tert−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,8−ジクロロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,7−ジシクロペンチルフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロフルオレン、1,1−ビス(1’−ブトキシエチル)シクロペンタジエン、1,1−ビス(α−メトキシベンジル)インデン、1,1−ビス(フェノキシメチル)−3,6−ジシクロヘキシルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)ベンゾナフテン、7,7−ビス(メトキシメチル)−2,5−ノボルナジネン、などを挙げることが出来る。
中でも、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、が特に好ましい。
これらの少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物は単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。また、固体成分(a1)中の任意成分(a1d)として用いられる多価エーテル化合物と同一であっても異なっても良い。
・触媒構成成分の使用量
上記に例示した触媒における各構成成分の使用量は特に制限されるものではないが、一般的には、次の範囲内が好ましい。
有機アルミニウム化合物(a2)の使用量は、固体成分(a1)を構成するチタン成分に対するモル比(有機アルミニウム化合物(a2)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは1から1,000の範囲内であり、特に好ましくは10から500の範囲内が望ましい。
電子供与体(a3)として有機ケイ素化合物を用いる場合の使用量は、固体成分(a1)を構成するチタン成分に対するモル比(有機ケイ素化合物のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01から10,000の範囲内であり、特に好ましくは0.5から500の範囲内が望ましい。
電子供与体(a3)として少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物を用いる場合の使用量は、固体成分(a1)を構成するチタン成分に対するモル比(少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01から10,000の範囲内であり、特に好ましくは0.5から500の範囲内が望ましい。
・予備重合
上記に例示した触媒は、本重合で使用する前に予備重合されていても良い。重合プロセスに先立って、予め少量のポリマーを触媒周囲に生成させることによって、触媒がより均一となり、微粉の発生量を抑えることができる。
予備重合におけるモノマーとしては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることが出来る。具体的な化合物の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、などに代表されるオレフィン類、スチレン、α−メチルスチレン、アリルベンゼン、クロロスチレン、などに代表されるスチレン類似化合物、及び、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、2,6−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,9−デカジエン、ジビニルベンゼン類、などに代表されるジエン化合物類、などを挙げることが出来る。中でも、エチレン、プロピレン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、スチレン、ジビニルベンゼン類、などが特に好ましい。
上記に例示した触媒と上記のモノマーとの反応条件は特に制限されるものではないが、一般的には以下の範囲内が好ましい。
固体成分(a1)1グラムあたりの基準で、予備重合量は0.001から100gの範囲内であり、好ましくは0.1から50g、更に好ましくは0.5から10gの範囲内が望ましい。予備重合時の反応温度は−150℃から150℃、好ましくは0から100℃である。そして、予備重合時の反応温度は本重合のときの重合温度よりも低くすることが望ましい。反応は、一般的に撹拌下に行うことが好ましく、そのときヘキサン、ヘプタン等の不活性溶媒を存在させることもできる。
予備重合は複数回行っても良く、この際用いるモノマーは同一であっても異なっても良い。また、予備重合後にヘキサン、ヘプタン等の不活性溶媒で洗浄を行うことも出来る。
2.プロピレン−エチレン共重合体(B)の製造方法
次に、本発明のプロピレン−エチレン共重合体(B)の製造方法について詳述する。
本発明におけるプロピレン−エチレン共重合体(B)は、条件(B1−i)を有するプロピレン系重合体成分(B1)65〜95重量%と、条件(B2−i)〜(B2−ii)を有するプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)5〜35重量%とからなることを特徴とするプロピレン−エチレン共重合体であり、プロピレン−エチレン共重合体(B)の製造に際しては、プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の2つの重合体成分を製造する必要がある。両重合体成分を個別に製造しておいて、その後ブレンドすることでも製造することが出来るが、相対的に分子量が高く粘度やMFRが低いプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)をプロピレン系重合体成分(B1)中にきれいに分散させてプロピレン−エチレン共重合体(B)本来の性能を発現させるという観点から、当該両成分を多段重合(以下「逐次重合」と呼ぶことがある)により製造する方が望ましい。
・逐次重合
具体的には、第1工程においてプロピレン系重合体成分(B1)を重合した後で、第2工程においてプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)を重合することが望ましい。製造順を逆にすることも可能ではあるが、プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)は、前記(B2−i)の規定から共重合体中のエチレン含有量E(B2)が3〜25重量%の範囲にあり、結晶性が低い重合体であるため、第1工程で製造すると重合槽内部で付着したり、移送配管を閉塞したりするなどの製造トラブルを起こす可能性が高く、あまり好ましくない。
逐次重合を行う際には、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には生産性の観点から連続法を用いることが望ましい。
バッチ法の場合には、時間と共に重合条件を変化させることにより単一の重合反応器を用いてプロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)を個別に重合することが可能である。本発明の効果を阻害しない限り、複数の重合反応器を並列に接続して用いてもよい。
連続法の場合にはプロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)を個別に重合する必要から2個以上の重合反応器を直列に接続した製造設備を用いる必要がある。プロピレン系重合体成分(B1)を製造する第1工程に対応する重合反応器とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)を製造する第2工程に対応する重合反応器については直列の関係になくてはならないが、第1工程、第2工程のそれぞれについて複数の重合反応器を直列及び/又は並列に接続して用いてもよい。
・・重合プロセス
重合プロセスは任意のものを用いることが出来る。
反応相については、液体の媒体を用いる手法であっても良いし、気体の媒体を用いる手法であっても良い。具体的な例として、スラリー法、バルク法、気相法を挙げることが出来る。バルク法と気相法の中間的な条件として超臨界条件を用いることも可能であるが、実質的には気相法と同等であるため、特に区別することなく気相法に含める。なお、多槽連続重合プロセスの場合、バルク法の重合反応器の後に気相法の重合反応器を付ける場合があるが、この場合は当業界の慣例に従ってバルク法と呼ぶことにする。また、バッチ法の場合に第1工程をバルク法で行い、第2工程を気相法で行うこともあるが、この場合も同様にバルク法と呼ぶことにする。この様に反応相は特に限定されるものではないが、スラリー法はヘキサンやヘプタンといった有機溶媒を用いる為に付属設備が多く、一般的に生産コストが高くなるという問題がある。従って、バルク法か気相法を用いる方が一層望ましい。
また、バルク法と気相法については、それぞれ種々のプロセスが提案されている。攪拌(混合)方法や除熱方法に違いがあるが、この観点において本発明は特段プロセス種を限定することはない。
・・一般的な重合条件
重合温度は通常用いられている温度範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。
重合圧力は選択するプロセスによって差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0より大きく200MPaまで、好ましくは0.1〜50MPaの範囲を用いることができる。この際に、窒素などの不活性ガスを共存させても問題はない。
また、プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)を製造する第2工程においては、エタノールや酸素などの重合抑制剤を添加することも出来る。この様な重合抑制剤を用いると、第2工程における重合量の制御が容易であるだけでなく、重合体粒子の性状を改良することも出来る。
3.プロピレン−エチレン共重合体(B)のインデックスの制御方法
次に、プロピレン−エチレン共重合体(B)の各インデックスの制御方法について詳述する。
・プロピレン系重合体成分(B1)のインデックス制御方法
まずエチレン含有量であるが、前述の通りプロピレン系重合体成分(B1)のエチレン含有量は0〜6.0重量%であり、より好ましくは0.5〜5.0重量%である。エチレン含有量を制御する手段として、重合槽に供給するエチレンの量を制御する方法を用いるのが簡便である。具体的には、重合槽に供給するエチレンのプロピレンに対する量比(エチレン供給量÷プロピレン供給量)を高くすれば、得られるプロピレン系重合体成分(B1)のエチレン含有量は高くなる。逆も同様である。重合槽に供給するプロピレンとエチレンの量比と得られるプロピレン系重合体成分(B1)のエチレン含有量との関係は使用するチーグラー・ナッタ触媒の種類によって異なるが、適宜供給量比を調整することによって目的のエチレン含有量を有するプロピレン系重合体成分(B1)を得ることは当業者にとって極めて容易なことである。
次にMFRについて述べる。プロピレン系重合体成分(B1)のMFR(B1)は特に限定されるものではないが、後述の様にプロピレン−エチレン共重合体(B)のMFR(B)を制御する手段として、プロピレン系重合体成分(B1)のMFR(B1)を制御することがある。プロピレン系重合体成分(B1)のMFR(B1)は水素を連鎖移動剤として用いることにより調整することが出来る。具体的には、連鎖移動剤である水素の濃度を高くするとプロピレン系重合体成分(B1)のMFR(B1)が高くなる。逆も又同様である。重合槽における水素の濃度を高くするには、重合槽への水素の供給量を高くすれば良く、当業者にとって調整は極めて容易である。
・プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)のインデックス制御方法
プロピレン−エチレン共重合体(B)の構成成分であるプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)は、共重合体中のエチレン含有量E(B2)が3〜25重量%の範囲にあり、共重合体成分(B2)のMFR(B2)が0.0001〜0.5g/10minの範囲にあることを特徴とするものである。エチレン含有量とMFRを制御する必要があるが、いずれもプロピレン系重合体成分(B1)と同様に制御することが出来る。
・プロピレン−エチレン共重合体(B)のインデックス制御方法
プロピレン−エチレン共重合体(B)は、共重合体中のエチレン含有量E(B)が0.4〜13重量%の範囲にあり、共重合体のMFR(B)が0.5〜20g/10minの範囲にあり、かつ、プロピレン系重合体成分(B1)65〜95重量%とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)5〜35重量%とからなるものである。従って、プロピレン−エチレン共重合体(B)のインデックスを制御する上で考慮すべき項目は、エチレン含有量E(B)、MFR(B)、プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比の3つである。
まず、プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比の制御方法から説明する。
プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比はプロピレン系重合体成分(B1)を製造する第1工程における製造量とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)を製造する第2工程における製造量によって制御する。例えば、プロピレン系重合体成分(B1)の量を増やしてプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の量を減らすためには、第1工程の製造量を維持したまま第2工程の製造量を減らせばよく、それは、第2工程の滞留時間を短くしたり、重合温度を下げたりすれば良い。また、エタノールや酸素などの重合抑制剤を添加したり、元々添加している場合にはその添加量を増やしたりすることでも制御することができる。その逆も又同様である。
通常、プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比は、プロピレン系重合体成分(B1)を製造する第1工程における製造量とプロピレン−エチレン共重合体(B2)を製造する第2工程における製造量で定義する。式を以下に示す。
成分(B1)の重量:成分(B2)の重量=W(B1):W(B2)
W(B1)=第1工程の製造量÷(第1工程の製造量+第2工程の製造量)
W(B2)=第2工程の製造量÷(第1工程の製造量+第2工程の製造量)
W(B1)+W(B2)=1
(ここで、W(B1)、W(B2)はそれぞれプロピレン−エチレン共重合体(B)におけるプロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比率である。)
工業的な製造設備では、各重合槽のヒートバランスやマテリアルバランスから製造量を求めるのが通常である。また、プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の結晶性が充分異なる場合には、TREF(温度昇温溶離分別法)などの分析手法を用いて両者を分離同定し量比を求めることでもよい。
ポリプロピレンの結晶性分布をTREF測定により評価する手法は当業者によく知られたものであり、G.Glokner,J.Appl.Polym.Sci:Appl.Poly.Symp.;45,1−24(1990)、L.Wild,Adv.Polym.Sci.;98,1−47(1990)、J.B.P.Soares,A.E.Hamielec,Polymer;36,8,1639−1654(1995)などの文献に詳細な測定法が示されている。
次に、エチレン含有量E(B)の制御方法について説明する。
プロピレン−エチレン共重合体(B)はプロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の混合物であるから、それぞれのエチレン含有量の間には以下の関係式が成立する。
E(B)=E(B1)×W(B1)+E(B2)×W(B2)
この式はエチレン含有量に関するマテリアルバランスを示すものである。なお、前述のとおり、プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)のエチレン含有量E(B2)を以下の式で定義しているので、上記式はその定義に使用した式を変形したに過ぎない。
E(B2)={E(B)−E(B1)×W(B1)}÷W(B2)
従って、プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比が決まれば、すなわち、W(B1)とW(B2)が決まれば、E(B)はE(B1)とE(B2)によって一意的に定まる。つまり、プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比、E(B1)、E(B2)の3つの因子を制御することによりE(B)を制御することが出来る。例えば、E(B)を高くする為にはE(B1)を高くしても良いし、E(B2)を高くしても良い。また、E(B2)がE(B1)よりも高いことに留意すれば、W(B1)を小さくしてW(B2)を大きくしても良いことも容易に理解できよう。逆方向の制御方法も同様である。
なお、実際に測定値を直接得られるのはE(B)とE(B1)であり、両者の測定値を使ってE(B2)を計算することになる。従って、仮にE(B)を高くする操作を行う際に、E(B2)を高くする操作、すなわち、第2工程に供給するエチレンの量を増やす操作を手段として選ぶ場合、測定値として直接確認できるのはE(B)であってE(B2)ではないが、E(B)が高くなる原因はE(B2)が高くなることにあるのは自明である。
最後に、MFR(B)の制御方法について説明する。エチレン含有量E(B)と同様に、MFR(B)についても以下の関係式が成立する。
log[MFR(B)]=
W(B1)×log[MFR(B1)]+W(B2)×log[MFR(B2)]
(ここで、logは、eを底とする対数である)
この式は粘度の対数加成則と呼ばれる経験式であり、当業界で日常的に使われるものである。なお、前述のとおり、プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)のMFR(B2)を以下の式で定義しているので、上記式はその定義に使用した式を変形したに過ぎない。
MFR(B2)=exp{(log[MFR(B)]−W(B1)×log[MFR(B1)])÷W(B2)}
いずれにせよ、プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比、MFR(B)、MFR(B1)、MFR(B2)は独立ではない。故に、MFR(B)を制御するには、プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比、MFR(B1)、MFR(B2)の3つの因子を制御すればよい。例えば、MFR(B)を高くする為にはMFR(B1)を高くしても良いし、MFR(B2)を高くしても良い。また、MFR(B2)がMFR(B)以下であることからMFR(B2)はMFR(B1)以下であることが分かるが、MFR(B2)がMFR(B1)より低い場合には、W(B1)を大きくしてW(B2)を小さくしてもMFR(B)を高くすることができることも容易に理解できよう。逆方向の制御方法も同様である。
なお、実際に測定値を直接得られるのはMFR(B)とMFR(B1)であり、両者の測定値を使ってMFR(B2)を計算することになる。従って、仮にMFR(B)を高くする操作を行う際に、MFR(B2)を高くする操作、すなわち、第2工程に供給する水素の量を増やす操作を手段として選ぶ場合、測定値として直接確認できるのはMFR(B)であってMFR(B2)ではないが、MFR(B)が高くなる原因はMFR(B2)が高くなることにあるのは自明である。
3.プロピレン系樹脂組成物
本発明のインフレーションフィルム成形用プロピレン系樹脂組成物は、(A)及び(B)の合計100重量部基準で、プロピレン系重合体(A)99〜50重量部とプロピレン−エチレン共重合体(B)1〜50重量部を含有する。この範囲を外れると、つまり、プロピレン系重合体(A)の量が99重量部を超えると、インフレーションフィルム成形用プロピレン系樹脂組成物中の含まれる高分子量成分(B2)が不足するため、ウエルドマークあるいはスジあるいはムラと呼ばれる外観不良の改良効果が劣る結果となり、外観に優れた成形体を得ることが出来なくなる。一方、プロピレン系重合体(A)の量が50重量部を下回ると、インフレーションフィルム成形用プロピレン系樹脂組成物中に含まれる高分子量成分(B2)が過剰に含まれることとなり、他成分との分散性が劣ることにより生じる模様が散見されるため、結果として外観の劣る成形体となる。
以上の観点から、プロピレン系重合体(A)は99〜50重量部、プロピレン−エチレン共重合体(B)は1〜50重量部であることが必要であり、プロピレン系重合体(A)98〜70重量部とプロピレン−エチレン共重合体(B)2〜30重量部がより好ましく、プロピレン系重合体(A)95〜70重量部とプロピレン−エチレン共重合体(B)5〜30重量部が特に好ましい。
本発明のインフレーションフィルム成形用プロピレン系樹脂組成物は、前述したプロピレン系重合体(A)とプロピレン−エチレン共重合体(B)を必須成分とする組成物であるが、本発明の目的を阻害しない範囲で、各種の他の成分を添加して用いることが出来る。
(1)他の添加剤
本発明のプロピレン系樹脂組成物には、本発明の効果を妨げない限り、プロピレン系樹脂に添加できる酸化防止剤などの添加剤を適宜加えることができる。
具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(BASFジャパン社製商品名「IRGANOX 1010」)やn−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(BASFジャパン社製商品名「IRGANOX 1076」)で代表されるフェノール系安定剤、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトやトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどで代表されるホスファイト系安定剤、高級脂肪酸アミドや高級脂肪酸エステルで代表される滑剤、炭素原子数8〜22の脂肪酸のグリセリンエステルやソルビタン酸エステル、ポリエチレングリコールエステルなどの帯電防止剤、シリカ、炭酸カルシウム、タルクなどで代表されるブロッキング防止剤などを添加しても良い。
(2)その他のポリマー
また、本発明のプロピレン系樹脂組成物には、本発明の効果を妨げない限り、プロピレン系樹脂に添加できるエラストマー、脂環式炭化水素樹脂などの改質剤を適宜加えることができる。
具体的には、エチレン−α−オレフィン共重合体、例えば低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンやエチレン系エラストマーなどで代表されるポリエチレン系樹脂、プロピレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの二元ランダム共重合体樹脂、プロピレンとエチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの三元ランダム共重合体樹脂を挙げることができる。ここで、α−オレフィンとしては、ブテンが好ましい。例えばプロピレンとブテンとの2元ランダム共重合体樹脂として三井化学(株)より「タフマーXM」の商品名で販売されており、適宜用いてもよい。また、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂、クマロンインデン樹脂、並びにそれらの水素添加誘導体等に代表される脂環式炭化水素樹脂を添加しても良い。
さらに、スチレン系エラストマーを加えることができ、スチレン系エラストマーとしては、市販されているものの中から適宜選択して使用することも出来、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物としてクレイトンポリマージャパン(株)より「クレイトンG」の商品名で、また、旭化成ケミカルズ(株)より「タフテック」の商品名で、スチレン−イソプレンブロック共重合体の水素添加物として(株)クラレより「セプトン」の商品名で、スチレン−ビニル化ポリイソプレンブロック共重合体の水素添加物として(株)クラレより「ハイブラー」の商品名で、スチレン−ブタジエンランダム共重合体の水素添加物としてJSR(株)より「ダイナロン」の商品名で販売されており、これらの商品群より適宜選択して用いてもよい。
(3)組成物の製造方法
本発明のインフレーションフィルム成形用プロピレン系樹脂組成物は、上記のプロピレン系重合体(A)、プロピレン−エチレン共重合体(B)および必要に応じて他の添加剤および/またはエラストマー等をヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により混練する方法により得られる。また、別の形態としては、上記のプロピレン系重合体(A)、プロピレン−エチレン共重合体(B)を個別に添加剤および/またはエラストマーなどをヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により混練、ペレット化したものをヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合したペレット混合物としても得ることが出来る。任意成分としてエラストマーやその他添加剤を使用する場合は、前記ペレット混合物を得る際に添加することも出来る。
(4)フィルムの成形方法
本発明のプロピレン系樹脂組成物をフィルム成形する方法は、インフレーション法であり、好ましくは空冷インフレーション法である。
空冷インフレーション法の好ましい態様は、プロピレン系樹脂組成物を環状ダイ付きの押出機により溶融させてチューブ状にして押出し、ブロアーなどから供給される空気を空冷リングから溶融チューブに吹き付けて冷却固化させた後、ガイド板を経てピンチロールにて折り畳み、引取機にて引き取る方法である。この成形方法で使用できる成形機、冷却リング、ブロアー、ガイド板、ピンチロール及びフィルムの引取機などは広く市場にて使用されている装置で構わず、特別なものは必要としない。
空冷インフレーション成形法によりフィルムを成形する条件としては、特に限定しないが、ダイ径は通常φ50mm〜φ500mm、ダイリップ幅は通常0.8mm〜4.0mm、成形温度は通常170〜250℃、好ましくは170〜220℃、成形速度は通常5〜100m/分、好ましくは10〜50m/分が好適である。
また、多層フィルムにする場合の成形方法は、ポリプロピレン系樹脂組成物を少なくとも一つの表層に配するように、複数の押出機及び共押出多層環状ダイ有するインフレーション成形法により成形して得る製造方法であり、好ましくは空冷インフレーション法に用いる方法である。
多層フィルムにする空冷インフレーション法の好ましい態様は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物と、プロピレン系樹脂もしくはエチレン系樹脂層を構成する樹脂を共押出多層環状ダイ付きの複数押出機により溶融させてチューブ状にして押出し、ブロアーなどから供給される空気を空冷リングから溶融チューブに吹き付けて冷却固化させた後、ガイド板を経てピンチロールにて折り畳み、引取機にて引き取る方法である。
この際に使用できる成形機、冷却リング、ブロアー、ガイド板、ピンチロール、及びフィルムの引取機などは広く市場にて使用されている装置で構わず、特別なものは必要としない。空冷インフレーション成形法フィルムを成形する条件としては、特に限定しないが、ダイ径は通常φ50mm〜φ500mm、ダイリップ幅は通常0.8mm〜4.0mm、成形温度は通常170〜250℃、好ましくは170〜220℃、成形速度は通常5〜100m/分、好ましくは10〜50m/分が好適である。
空冷インフレーション成形方法においては、チューブ状フィルムを外部および/または内部から空気冷却して成膜することができる。また、チューブフイルムの吹き込み成膜方法は、上向方式、水平方式または下向方式などの任意の方向が採用できるが、特に上向き方向による成膜方法が、本発明のポリプロピレン樹脂組成物に好適である。
空冷インフレーション法以外のインフレーション成形方法としては、水冷インフレーション法やチューブラー式二軸延伸形法などが挙げられ、これらの方法を適用してフィルムを製造することも可能である。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載により何ら限定して解釈されるものではない。
[物性等の測定法]
各実施例および比較例において、プロピレン系重合体(A)とプロピレン−エチレン共重合体(B)の物性等の測定は以下の方法で行った。
1.プロピレン系重合体(A)
・MFR(A)
JIS K7210 A法 条件Mに従い、以下の条件で測定した。
試験温度:230℃
公称荷重:2.16kg
ダイ形状:直径2.095mm、長さ8.00mm
・GPC測定と数平均分子量Mn、及び、重量平均分子量Mw
ゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法にて、以下により、測定した。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは、東ソー(株)製の、F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000を用い、各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。
較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用い、分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mα においては以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
GPCの測定条件は、以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器
測定波長:3.42μm
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料はODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
2.プロピレン−エチレン共重合体(B)
・プロピレン−エチレン共重合体(B)のエチレン含有量(E(B)およびE(B1))
プロピレン−エチレン共重合体(B)のエチレン含有量E(B)および逐次重合の第一工程後に重合槽より抜き出した重合体成分(B1)中のエチレン含有量E(B1)は、プロトン完全デカップリング法により、以下の条件に従って13C−NMRスペクトルを解析することにより求める。
機種:日本電子(株)製 GSX−400又は同等の装置(炭素核共鳴周波数100MHz以上)
溶媒:o−ジクロベンゼン+重ベンゼン(4:1(体積比))
濃度:100mg/mL
温度:130℃
パルス角:90°
パルス間隔:15秒
積算回数:5,000回以上
上記条件により測定されたスペクトルの帰属は、表1の通りである。表1中Sαα等の記号は、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
Figure 0006032094
以下、「P」を共重合体連鎖中のプロピレン単位、「E」をエチレン単位とすると、連鎖中にはPPP、PPE、EPE、PEP、PEE、およびEEEの6種類のトリアッドが存在し得る。Macromolecules 15,1150 (1982)などに記されているように、これらトリアッドの濃度と、スペクトルのピーク強度とは、以下の(1)〜(6)の関係式で結び付けられる。
[PPP]=k×I(Tββ) …(1)
[PPE]=k×I(Tβδ) …(2)
[EPE]=k×I(Tδδ) …(3)
[PEP]=k×I(Sββ) …(4)
[PEE]=k×I(Sβδ) …(5)
[EEE]=k×{I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} …(6)
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。したがって、
[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1…(7)
である。また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えば、I(Tββ)はTββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。上記(1)〜(7)の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含有量を求める。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
エチレン含有量のモル%から重量%への換算は以下の式を用いて行う。
エチレン含有量(重量%)=
(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100
ここで、Xはモル%表示でのエチレン含有量である。
・MFR(B1)、MFR(B)
第1工程後に得られたプロピレン−エチレン共重合体(B1)のMFR(B1)、および、第2工程後に得られたプロピレン−エチレン共重合体(B)のMFR(B)は、プロピレン−エチレン共重合体(A)のMFRと同じ方法で測定した。
・各成分量の重量比率W(B1)とW(B2)の特定
後記[製造例B−1]のような場合
前述の通り、プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比率W(B1)、W(B2)は以下の式で定義される。
W(B1)=第1工程の製造量÷(第1工程の製造量+第2工程の製造量)
W(B2)=第2工程の製造量÷(第1工程の製造量+第2工程の製造量)
後記[製造例B−1]において記載する様に、プロピレン−エチレン共重合体(B)の製造を行う際には、プロピレン系重合体成分(B1)を製造する第1工程が終わった後で得られたポリマーを一旦全量フラスコに抜き出し、第1工程の収量を測定した。得られたプロピレン系重合体成分(B1)のうち10gをサンプルとして取り分けた後、残りを全て重合槽に充填し、プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の製造を行う第2工程を行い、第2工程が終わった後、得られたプロピレン−エチレン共重合体(B)の収量を測定した。
この結果から、第1工程の製造量と第2工程の製造量を以下の式で計算し、その結果を用いてW(B1)とW(B2)を上記の式で計算した。
第1工程の製造量=第1工程の収量−10g(サンプリング量)
第2工程の製造量=プロピレン−エチレン共重合体(B)の収量−第1工程の製造量
後記[製造例B−2]のような場合
後記[製造例B−2]の場合のように、得られるプロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の分子量が大きく異なる場合には、前述のGPC測定により得られた分子量に対する溶出割合のプロットからピーク分離を行うことで各成分の比率W(B1)、W(B2)を特定することが出来る。
ピーク分離は、市販の計算ソフトを用い、各成分が正規分布を有するとし、2成分でのフィッティングを行い、各成分の割合と重量平均分子量を求めることが出来る。
・プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)中のエチレン含有量E(B2)
成分(B2)中のエチレン含有量E(B2)は、上記したエチレン含有量E(B1)、E(B)と、各成分量W(B1)とW(B2)を用いて、以下の式より算出した。
E(B2)={E(B)−E(B1)×W(B1)}÷W(B2)
・成分(B2)のメルトフローレートMFR(B2)
成分(B2)のMFR(B2)は、上述したMFR(B1)、MFR(B)と、W(B1)、W(B2)を用いて、前述の下記式より算出した。
MFR(B2)=exp{(log[MFR(B)]−W(B1)×log[MFR(B1)])÷W(B2)}
[プロピレン−エチレン共重合体(B)の製造例]
プロピレン−エチレン共重合体PP(B)の製造
[製造例B−1]
・触媒組成の分析方法
・・Ti含有量:
試料を精確に秤量し、加水分解した上で比色法を用いて測定した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含有量を計算した。
・・ケイ素化合物含有量:
試料を精確に秤量し、メタノールで分解した。ガスクロマトグラフィーを用いて標準サンプルと比較する事により、得られたメタノール溶液中のケイ素化合物濃度を求めた。メタノール中のケイ素化合物濃度と試料の重量から、試料に含まれるケイ素化合物の含有量を計算した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含有量を計算した。
・予備重合触媒の調製
・・固体成分の調製
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したトルエン2Lを導入した。ここに、室温で、Mg(OEt)を200g投入し、TiClを1Lゆっくりと添加した。温度を90℃に上げて、フタル酸ジ−n−ブチルを50ml導入した。その後、温度を110℃に上げて3hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiClを1L添加し、温度を110℃に上げて2hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiClを1L添加し、温度を110℃に上げて2hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。更に、精製したn−ヘプタンを用いて、トルエンをn−ヘプタンで置換し、固体成分のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分のTi含有量は2.7重量%であった。
次に、撹拌装置を備えた容量20Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、上記固体成分のスラリーを固体成分として100g導入した。精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分の濃度が25g/Lとなる様に調整した。SiClを50ml加え、90℃で1hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。
その後、精製したn−ヘプタンを導入して液レベルを4Lに調整した。ここに、ジメチルジビニルシランを30ml、t−BuMeSi(OMe)を30ml、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして80g添加し、40℃で2hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、固体触媒を得た。得られた固体触媒のスラリーの一部をサンプリングして乾燥し、分析を行った。固体触媒にはTiが1.2重量%、t−BuMeSi(OMe)が8.9重量%含まれていた。
・予備重合
上記で得られた固体触媒を用いて、以下の手順により予備重合を行った。上記のスラリーに精製したn−ヘプタンを導入して、固体触媒の濃度が20g/Lとなる様に調整した。スラリーを10℃に冷却した後、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして10g添加し、280gのプロピレンを4hrかけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に30min反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行って予備重合触媒Cを得た。この予備重合触媒Cは、固体触媒1gあたり2.5gのポリプロピレンを含んでいた。分析したところ、この予備重合触媒Cのポリプロピレンを除いた部分には、Tiが1.0重量%、t−BuMeSi(OMe)が8.3重量%含まれていた。
この予備重合触媒Cを用いて、以下の手順に従ってプロピレン−エチレン共重合体(B)の製造を行った。
<プロピレン−エチレン共重合体PP(B−1)の製造:>
第1工程:プロピレン系重合体成分(B1)の製造
撹拌および温度制御装置を有する内容積3Lのオートクレーブをプロピレンで充分置換した後に、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして550mg添加し、水素11NL、エチレン7.0g、続いて液体プロピレン750gを導入し、60℃に昇温しその温度を維持した。上記の予備重合触媒Cをn−ヘプタンでスラリー化し、固体触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)10mgを圧入し重合を開始した。槽内温度を60℃に維持して30分重合を継続した。その後、常圧まで残モノマーをパージし、さらに精製した窒素で完全に置換した。事前に窒素で充分に置換した2Lのガラスのフラスコを準備しておき、第1工程で得られたプロピレン系重合体成分(B1)ポリマーを、窒素気流下でポリテトラフルオロエチレン製チューブを通じて、このフラスコに全量抜き出した。秤量の結果、第1工程で得られたプロピレン系重合体成分(B1)は254gであった。このうち10gを取り分け、分析に使用した。
第2工程:プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の製造
第1工程が終了した後、重合に用いたオートクレーブを開放し、内部にポリマーが残存していない事を確認した。清掃した後に組み立てなおし、加熱しながら窒素を流して充分に乾燥した。乾燥終了後、室温まで冷却した。その後、第1工程で得られたプロピレン系重合体成分(B1)254gのうち、分析用に10gを取り分けた残りの244gを、窒素気流下でポリテトラフルオロエチレン製チューブを通じて、オートクレーブに全量充填した。
別途、撹拌および温度制御装置を有する内容積20Lのオートクレーブを用いて、第2工程で使用する混合ガスを調製した。調製温度は75℃、混合ガス組成はエチレン19vol%、プロピレン81vol%、水素320ppmであった。この混合ガスを3Lのオートクレーブに供給して2.0MPaGまで昇圧し、第2工程の重合を開始した。重合は70℃で13分継続した。その後、エタノールを10ml導入して重合を停止した。回収したポリマーはオーブンで充分に乾燥した。秤量の結果、得られたプロピレン−エチレン共重合体(B)は304gであった。このうち244gがプロピレン系重合体成分(B1)なので、得られたプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)は60gであった。これらの収量の値を基にプロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比率を計算した結果、W(B1)が0.80g/g、W(B2)が0.20g/gとなった。
第1工程の終了後に分析用に取り分けたプロピレン系重合体成分(B1)と第2工程の終了後に得られたプロピレン−エチレン共重合体(B)の分析を行い、エチレン含有量E(B1)、E(B)、MFR(B1)、MFR(B)の値を得た。
得られたプロピレン−エチレン共重合体(以下、PP(B−1)という。)の特性を表2に示す。また、W(B1)、W(B2)、E(B1)、E(B)、MFR(B1)、MFR(B)の値を用いて、E(B2)、MFR(B2)を計算した。これらの値も表2に示す。
上記重合操作を複数回行い、フィルム成形に必要な量のプロピレン−エチレン共重合体PP(B−1)を得た。
[製造例B−2]
・固体触媒成分(a)の製造
充分に窒素置換した内容積50リットルの攪拌機付槽に、脱水および脱酸素したn−ヘプタン、20リットルを導入し、次いでMgClを10モル、Ti(o−n−Cを20モル導入し、95℃で2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、次いでメチルヒドロポリシロキサン(20センチストークスのもの)を12リットル導入し、3時間反応させた。生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
次いで、前記攪拌機付槽を用いて該槽に、上記と同様に精製したn−ヘプタンを5リットル導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で3モル導入した。次いでn−ヘプタン2.5リットルにSiCl5モルを混合して30℃、30分間でフラスコへ導入し、70℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。
次いで前記攪拌機付槽へn−ヘプタン2.5リットル導入し、フタル酸クロライド0.3モルを混合して、70℃、30分間で導入し、90℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いでTiCl 2リットルを導入して110℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄して固体触媒成分(a)を製造するための固体成分(a1)を得た。この固体成分のチタン含有量は2.0重量%であった。
次いで、窒素置換した前記攪拌機付槽にn−ヘプタンを8リットル、上記で合成した固体成分(a1)を400グラム導入し、成分(a2)としてSiCl 0.6リットルを導入して90℃で2時間反応させた。反応終了後、さらに成分(a3)として(CH=CH)Si(CH 0.54モル、成分(a4)として(t−C)(CH)Si(OCH 0.27モルおよび成分(a5)としてAl(C 1.5モルを順次導入して30℃で2時間接触させた。接触終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄し、塩化マグネシウムを主体とする固体触媒成分(a)390gを得た。このもののチタン含有量は、1.8重量%であった。
・重合
内容積400リットルの攪拌機付きステンレス鋼製オートクレーブをプロピレンガスで充分に置換し、重合溶媒として脱水及び脱酸素したn−ヘプタン120リットルを入れた。次に温度70℃の条件下、トリエチルアルミニウム30g、水素70リットル、および前記固体触媒触媒(a)を10g加えた。オートクレーブを内温75℃に昇温した後、プロピレンを21.0kg/時、水素を79.8L/時の速度で供給し、重合を開始した。150分後プロピレン、水素の導入を停止。圧力は重合開始時0.34kg/cmG、プロピレン供給中に経時的に増加し、供給停止時点で5.4kg/cmGまで上昇した。その後、器内の圧力が3.5kg/cmGまで低下するまで残重合を行った後、未反応ガスを0.3kg/cmGまで放出した。この間、重合温度は75±1℃の範囲に維持した(1段重合)。
次いで、オートクレーブを内温65℃にセットした後、n−ブタノールを16.0cc導入、次いで、プロピレンを9.4kg/時、エチレンを0.6kg/時の速度で供給し、2段重合を開始した。135分後プロピレン、エチレンの導入を停止した。圧力は、プロピレン、エチレン供給中に経時的に増加し、供給停止時点で4.1kg/cmGまで上昇した。その後、器内の圧力が1.8kg/cmGまで低下するまで残重合を行った後、器内の未反応ガスを0.3kg/cmGまで放出した。この間、重合温度は65±1℃の範囲に維持した(2段重合)。
得られたスラリーは、次の攪拌機付き槽に移送し、ブタノールを5リットル加え、70℃で3時間処理し、更に次の攪拌機付き槽に移送、水酸化ナトリウム100gを溶解した純水100リットルを加え、1時間処理した後、水層を静置後分離、触媒残渣を除去した。スラリーは遠心分離機で処理し、ヘプタンを除去、80℃の乾燥機で3時間処理しヘプタンを完全に除去、56.4kgのプロピレン−エチレン共重合体(以下、PP(B−2)という。)を得た。
反応終了後、得られたポリマーの各種分析を行った。得られたプロピレン−エチレン共重合体PP(B−2)の各種分析結果を表2に示す。
Figure 0006032094
<造粒>
プロピレン−エチレン共重合体(B)として上記製造例B−1で得られたプロピレン−エチレン共重合体PP(B−1)100重量部に対して、以下の酸化防止剤、中和剤を下記の量で添加し、ヘンシェルミキサーにて充分に混合した。
・酸化防止剤:
テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン(商品名「IRGANOX1010」、BASFジャパン株式会社製) 500wtppm
トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名「IRGAFOS 168」、BASFジャパン株式会社製) 500wtppm
・中和剤:ステアリン酸カルシウム 500wtppm
引き続き、スクリュー口径15mmのテクノベル社製「KZW」二軸押出機にて、押出機温度200℃、スクリュー回転数300rpm、吐出量3.0kg/hの条件で溶融混合し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてストランドを直径3mm、長さ2mmに切断することでプロピレン−エチレン共重合体樹脂組成物ペレットPP(B−1)を得た。
また、上記製造例B−2で得られたプロピレンエチレン共重合体PP(B−2)についても、上記と同様にして、プロピレン−エチレン共重合体樹脂組成物ペレットPP(B−2)を得た。
<プロピレン系重合体(A)>
PP(A−1):
メタロセン触媒により重合された市販のプロピレンエチレンランダム共重合体(日本ポリプロ(株)製、商品名WFX4TA、MFR=7、Mw/Mn=2.4)を使用した。
PP(A−2):
以下の方法にて作成したメタロセン触媒により重合されたプロピレンエチレンランダム共重合体(MFR=3g/10min、Mw/Mn=2.8)を使用した。
(1)触媒の製造
攪拌翼と還流装置を取り付けた5Lセパラブルフラスコに、純水1,700gを投入し、98%硫酸500gを滴下した。そこへ、平均粒径18μmに造粒したモンモリロナイト(原料として水澤化学工業社製、商品名ベンクレイSLを用いた)を300g添加、攪拌した。その後90℃で2時間反応させた。このスラリーをろ過、ろ液のpHが4以上になるまで洗浄した。回収したケーキに27%硫酸リチウム水溶液1,230gを加え、90℃で2時間反応させた。このスラリーをろ過し、さらに、ろ液のpHが4以上となるまで洗浄した。回収したケーキを100℃で予備乾燥した後に篩分し、150μm以下の粉体を回収した。この粉体を200℃で2時間乾燥した。その結果、275gの化学処理モンモリロナイトを得た。
1Lフラスコに、化学処理モンモリロナイト20gを加え、ヘプタン129mlとトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液71ml(0.7mmol/ml)を加え、室温で1時間攪拌した。その後ヘプタンで残液率1/100まで洗浄し、最後にスラリー量を100mlに調製した。さらに、トリノルマルオクチルアルミニウムのヘプタン溶液3ml(0.4mmol/ml)を加えて、10分間室温で攪拌した。
200mlフラスコ中で、特開平10−226712号公報記載の方法で合成した(r)−ジメチルシリレンビス[1,1’−{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム(300μmol)にヘプタン(50ml)を加えてスラリーとした後、上記1Lフラスコに加えて室温で60分間攪拌した。その後、ヘプタンを181ml加えた。
(2)予備重合
窒素で十分置換を行った内容積1.0Lの撹拌式オートクレーブに、上記スラリーを全量導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを10g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロプレンの供給を停止し、さらに1時間維持した。予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ、十分窒素置換を行った1Lフラスコにスラリーを抜き出した。このスラリーを減圧乾燥して予備重合触媒を63.4g回収した。
(3)重合
内容積200Lの誘導撹拌機付オートクレーブ内をプロピレンで十分置換した後に、十分に脱水処理した液化プロピレン45,000gを導入し30℃に保持した。これに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液470ml(0.25mmol/ml)を加えた。水素2.5NL、エチレンを410g導入し、上記予備重合触媒1.7gをアルゴンで圧入した。温度65℃まで40分かけて昇温し、65℃で2時間反応させた。また、この間水素を0.15g/hrの定速で導入した。その後、エタノールを100ml圧入して反応を停止し、残ガスをパージした。その結果、15.8kgのプロピレン系重合体パウダーが得られた。
上記で得られたパウダー100重量部に対し、以下の酸化防止剤、中和剤、造核剤を下記の量で添加し、ヘンシェルミキサーにて充分に混合した。
・酸化防止剤:
テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン(商品名「IRGANOX1010」、BASFジャパン株式会社製) 500wtppm
トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名「IRGAFOS 168」、BASFジャパン株式会社製) 500wtppm
・中和剤:ステアリン酸カルシウム 500wtppm
・造核剤:商品名Hyperform HPN−20E(ミリケンジャパン株式会社製)500wtppm
引き続き、スクリュー口径25mmのテクノベル社製「KZW」二軸押出機にて、押出機温度200℃、スクリュー回転数300rpm、吐出量20kg/hの条件で溶融混合し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてストランドを直径3mm、長さ2mmに切断することでプロピレン系重合体ペレットPP(A−2)を得た。
PP(A−3):
チーグラー・ナッタ触媒により重合された市販のプロピレン単独重合体(日本ポリプロ(株)製、商品名FY6 MFR=2.4、Mw/Mn=5.0)を使用した。
(実施例1)
<フィルム成形>
・空冷インフレーション成形機
空冷インフレーション成形機として、外層用としてスクリュー口径40mmの単軸押出機(Ex1)、内層用としてスクリュー口径40mmの単軸押出機(Ex2)、中間層用としてスクリュー口径50mmの単軸押出機(Ex3)、(株)プラコー社製HA300型エアリング、直径200mmリップ2mmのスパイラル型3層ダイを備えた、三層空冷インフレーション成形機を用いた。
・フィルム成形
プロピレン系重合体(A)として上記ペレットPP(A−1)90重量%と、プロピレン−エチレン共重合体(B)として上記ペレットPP(B−1)10重量%からなるペレット混合物を、上記空冷インフレーション成形機のEx1、Ex2、Ex3の各押出機に投入し、押出機温度180℃、ダイ温度180℃、全吐出量が28kg/hとなる条件で押出し、フィルム折り幅480mm(ブロー比1.5)、引取速度50m/分の条件で成形し、実質的に単層構成である空冷インフレーションフィルムを得た。なお、ブロワーメモリは35Hzであった(値が大きいほどエアリングから供給される冷却空気の量が多い。)。
得られたフィルムは透明性に優れ、尚かつ外観不良が無いものであった。得られたフィルムの物性を表3に示した。
なお、フィルム物性の評価は、以下のようにして行った。
[フィルム物性の測定]
(1)ヘイズ[単位:%]:
得られたフィルムを23℃、50%RHの雰囲気下にて24時間以上状態調整した後、JIS K7136:2000に準拠して、ヘイズメーターで測定した。
得られた値が小さいほど透明性がよい。目安として、30μmフィルムで5.0%以下、60μmフィルムで10.0%以下であると良好な透明性であるといえ、30μmフィルムで3.5%以下、60μmフィルムで5.0%以下であると特に良好な透明性であるといえる。
(2)グロス[単位:%]:
得られたフィルムを23℃、50%RHの雰囲気下にて24時間以上状態調整した後、ASTM D2457−1970に準拠して入射角20°にて測定した。目安として100%以上であると良好な光沢性であるといえる。
(3)外観:
フィルムに、ウエルドマークもしくはスジもしくはムラと呼ばれる帯状の透明性の異なる部位が存在するものを外観不良有りとした。
外観不良有りのものについては、外観不良部のヘイズとグロスを、上記と同様にして、測定した。
(実施例2)
実施例1において、PP(A−1)の量を80重量%、PP(B−1)の量を20重量%とした以外は実施例1と同様にして、フィルム成形を行った。得られたフィルムは透明性に優れ、尚かつ外観不良が無いものであった。
得られたフィルムの物性を表3に示した。
(比較例1)
実施例1において、PP(A−1)のみを用い、PP(B−1)をブレンドしなかった以外は実施例1と同様にして、フィルム成形を行った。得られたフィルムは透明性に優れるものの、外観不良が見られた。
得られたフィルムの物性を表3に示した。
(参考例1)
実施例1において、引取速度を50m/分から20m/分に変えた以外は実施例1と同様にして、フィルム成形を行った。得られたフィルムは透明性に優れ、尚かつ外観不良が無いものであった。
得られたフィルムの物性を表3に示した。
(参考例2)
実施例2に於いて、引取速度を50m/分から20m/分に変えた以外は実施例2と同様にして、フィルム成形を行った。得られたフィルムは透明性に優れ、尚かつ外観不良が無いものであった。
得られたフィルムの物性を表3に示した。
(参考例3)
比較例1のフィルム成形において、引取速度を50m/分から20m/分に変えた以外は比較例1と同様にして、フィルム成形を行った。得られたフィルムは透明性に優れ、尚かつ外観不良が無いものであった。
得られたフィルムの物性を表3に示した。
Figure 0006032094
(実施例3)
・フィルム成形
プロピレン系重合体(A)として上記ペレットPP(A−2)95重量%と、プロピレン−エチレン共重合体(B)として上記ペレットPP(B−1)5重量%からなるペレット混合物を、上記空冷インフレーション成形機のEx1、Ex2、Ex3の各押出機に投入し、押出機温度220℃、ダイ温度220℃、全吐出量が30kg/hとなる条件で押出し、フィルム折り幅500mm(ブロー比1.6)、引取速度18.5m/分の条件で成形し、実質的に単層構成である空冷インフレーションフィルムを得た。なお、ブロワーメモリは30Hzであった。
得られたフィルムは透明性に優れ、尚かつ外観不良が無いものであった。得られたフィルムの物性を表4に示した。
(実施例4)
実施例3において、PP(A−2)の量を90重量%、PP(B−1)の量を10重量%とした以外は実施例3と同様にして、フィルム成形を行った。得られたフィルムは透明性に優れ、尚かつ外観不良が無いものであった。得られたフィルムの物性を表4に示した。
(実施例5)
実施例3において、PP(A−2)の量を80重量%、PP(B−1)の量を20重量%とした以外は実施例3と同様にして、フィルム成形を行った。得られたフィルムは透明性に優れ、尚かつ外観不良が無いものであった。得られたフィルムの物性を表4に示した。
(実施例6)
実施例4において、PP(B−1)をPP(B−2)に代えた以外は実施例4と同様にして、フィルム成形を行った。得られたフィルムは透明性に優れ、尚かつ外観不良が無いものであった。得られたフィルムの物性を表4に示した。
(実施例7)
実施例4において、引取速度を50m/分に変えた以外は実施例4と同様にして、フィルム成形を行った。得られたフィルムは透明性に優れ、尚かつ外観不良が無いものであった。得られたフィルムの物性を表4に示した。
(実施例8)
・フィルム成形
プロピレン系重合体(A)として上記PP(A−2)50重量%と、上記PP(A−3)30重量%と、プロピレン−エチレン共重合体(B)として上記ペレットPP(B−2)20重量%からなるペレット混合物を、上記空冷インフレーション成形機のEx1、Ex2、Ex3の各押出機に投入し、押出機温度220℃、ダイ温度220℃、全吐出量が30kg/hとなる条件で押出し、フィルム折り幅500mm(ブロー比1.6)、引取速度18.5m/分の条件で成形し、実質的に単層構成である空冷インフレーションフィルムを得た。なお、ブロワーメモリは30Hzであった。
得られたフィルムは透明性に優れ、尚かつ外観不良が無いものであった。得られたフィルムの物性を表4に示した。
(比較例2)
実施例3において、PP(A−2)のみを用い、PP(B−1)をブレンドしなかった以外は実施例3と同様にして、フィルム成形を行った。得られたフィルムは透明性に優れるものの、外観不良が見られた。得られたフィルムの物性を表4に示した。
(比較例3)
比較例2において、引取速度を50m/分に変えた以外は実施例4と同様にして、フィルム成形を行った。得られたフィルムは透明性がやや劣り、外観不良が見られた。得られたフィルムの物性を表4に示した。
(比較例4)
実施例5において、PP(B−1)をPP(A−3)に代えた以外は実施例5と同様にして、フィルム成形を行った。得られたフィルムは透明性に優れるものの、外観不良が見られた。得られたフィルムの物性を表4に示した。
Figure 0006032094
(実施例9)
・フィルム成形
プロピレン系重合体(A)として上記PP(A−1)90重量%と、プロピレン−エチレン共重合体(B)として上記ペレットPP(B−1)10重量%からなるペレット混合物を、上記空冷インフレーション成形機のEx1(外層用)、Ex2(内層用)の各押出機に投入し、上記PP(A−1)を上記インフレーション成形機のEx3(中間層用)に投入し、押出機温度180℃、ダイ温度180℃、Ex1およびEx2の吐出量がそれぞれ7kg/h、Ex3の吐出量が14kg/hとなる条件で押出し、フィルム折り幅480mm(ブロー比1.5)、引取速度50m/分の条件で成形し、二種三層構成である空冷インフレーションフィルムを得た。なお、ブロワーメモリは35Hzであった。
得られたフィルムは透明性に優れ、尚かつ外観不良が無いものであった。得られたフィルムの物性を表5に示した。
Figure 0006032094
比較例1と参考例3の比較から、プロピレン−エチレン共重合体(B)をブレンドしないものは成形条件によっては外観不良が発生することが分かるが、本発明の規定を満足するインフレーションフィルム成形用プロピレン系樹脂組成物を用いた実施例1および実施例2では、比較例1にて外観不良が発生する成形条件にも関わらず外観が良好なフィルムを得ることが出来ており、本発明のインフレーションフィルム成形用プロピレン系樹脂組成物が外観不良抑制に極めて有効であることが分かる。
実施例3〜6および実施例8と比較例2を対比し、また、実施例7と比較例3を対比することでも本発明のインフレーションフィルム成形用プロピレン系樹脂組成物が外観不良抑制に極めて有効であることが分かる。
また、比較例4は、PP(B−1)の代わりにプロピレン−エチレン共重合体(B)の条件を満たさないPP(A−3)を配合したものであり、この結果からも本発明のインフレーションフィルム成形用プロピレン系樹脂組成物が外観不良抑制に極めて有効であることが分かる。
本発明のインフレーションフィルム成形用プロピレン系樹脂組成物は、インフレーション成形特有のウエルドマークあるいはスジあるいはムラと呼ばれる外観不良の発生が抑制され、これを用いてインフレーション成形することにより、透明性に優れ、外観不良のない良好なフィルムを、外観不良が発生しやすい条件下においても、容易に得ることができるので、各種のフィルム製造に極めて有用である。

Claims (3)

  1. 下記(A)及び(B)の合計100重量部基準で、下記(A−i)〜(A−iii)を満たすメタロセン系プロピレン系重合体(A)99〜50重量部と、下記(B−i)〜(B−ii)を満たすプロピレン−エチレン共重合体(B)1〜50重量部を含有するプロピレン系樹脂組成物であって、
    前記プロピレン−エチレン共重合体(B)は、(B1)及び(B2)の合計100重量%基準で、下記(B1−i)を有するプロピレン系重合体成分(B1)65〜95重量%と、下記(B2−i)及び(B2−ii)を有するプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)5〜35重量%とからなることを特徴とするインフレーションフィルム成形用プロピレン系樹脂組成物。
    (A−i)重合体(A)がプロピレン単独重合体またはプロピレン−αオレフィン共重合体である
    (A−ii)重合体(A)のメルトフローレートが0.1〜30g/10minである
    (A−iii)重合体(A)のGPC測定における重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2〜10である
    (B−i)共重合体(B)中のエチレン含有量が0.4〜13重量%である
    (B−ii)共重合体(B)のメルトフローレートが0.5〜20g/10minである
    (B1−i)重合体成分(B1)中のエチレン含有量が0〜6.0重量%である
    (B2−i)共重合体成分(B2)中のエチレン含有量が3〜25重量%である
    (B2−ii)共重合体成分(B2)のメルトフローレートが0.0001〜0.5g/10minである
  2. 請求項1に記載のインフレーションフィルム成形用プロピレン系樹脂組成物を用いてインフレーション成形することを特徴とするフィルムの製造方法。
  3. インフレーション成形が空冷インフレーション成形である請求項2に記載のフィルムの製造方法。
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