JP6458698B2 - 発泡成形用ポリプロピレン樹脂および成形体 - Google Patents

発泡成形用ポリプロピレン樹脂および成形体 Download PDF

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本発明は、ポリプロピレン樹脂組成物、該ポリプロピレン樹脂組成物を用いて製造した発泡成形体およびその成形製品に関する。
ポリプロピレンの重要な成形加工法の一つに発泡成形がある。押出発泡成形や射出発泡成形で得られた各種の成形製品は、断熱性や遮音性、クッション性、エネルギー吸収特性などの優れた特性を有しており、幅広い用途で使用されている。近年では、材料の軽量化と環境負荷の低減が重要な開発要素となってきており、原料である樹脂に対しても、発泡特性などのさらなる向上が望まれている。
一般的なポリプロピレンは、分子構造が線状であり分子量が高くないものが多いことから、溶融張力が低く、発泡成形を行うことが難しい。そこで、ポリプロピレンの溶融張力を向上させるべく、様々な技術開発がなされてきた。代表的な方法の1つに高エネルギーイオン化放射線または有機過酸化物によりラジカルを発生させて長鎖分岐(long chain branch:LCB)を導入する方法がある。長鎖分岐とは、炭素数が数十以上、分子量では数百以上の分子鎖による分岐構造を言い、溶融張力を向上させる効果があると考えられている。このほか、特定の構造を有するメタロセン触媒を用いてモノマーを重合することにより末端不飽和結合を有するマクロモノマーを製造し、それをプロピレンと共重合することによって、長鎖分岐を形成することもできる(特許文献1)。
ポリプロピレンの溶融張力を向上させる他の方法として、多段重合または予備重合により極めて分子量の高い成分を導入する、または複数のポリプロピレンをブレンドする方法がある。さらに、長鎖分岐ポリプロピレンにプロピレン−エチレン共重合体のような特定のインパクトコポリマーを含有させることにより、押出発泡成形に適した溶融張力と延展性のバランスをとることが検討されている(特許文献2、3)。
特開2009−299029号公報 特開2013−199643号公報 特開2015−40213号公報
ここで、発泡成形用ポリプロピレン樹脂を用いて成形製品を製造すると、通常はシートの外縁部や、打ち抜き加工や熱成形時に製品として利用される部分以外で端材が生じることは避けられない。端材は再度溶融して成形工程に付すこともできる。しかし、本発明者らが調査、検討したところによると、一度発泡成形工程を経た樹脂は溶融張力が大きく低下し、十分な発泡特性を満足できなくなることが明らかとなった。十分な発泡特性を満足できない樹脂を用いた発泡成形では、再利用の都度成形条件の大きな変更を必要としたり、発泡シートまたは成形製品の品質劣化を招いたりもする。品質面の問題などから端材となった樹脂を再利用しないのであれば、このような樹脂は廃材とするしかない。したがって、環境への配慮、コスト面から、発泡成形用ポリプロピレン樹脂の、成形製品の製造工程における繰り返し成形性を高めることが望まれる。
ポリプロピレン樹脂が有する溶融張力などの物性と繰り返し成形性との関係では、特許文献3ではポリマーの分岐鎖との関係が示唆されていたが、押出発泡成形においては樹脂の溶融張力と延展性のバランスが重要となるため、これら諸物性をバランスよく維持するためにはどのようなポリプロピレン樹脂が適しているのか、どのような樹脂をどのような配合で用いることが有効であるか、どの程度の維持率を有することで繰り返し成形性を満足することができるかは明らかではなかった。したがって、繰り返し成形性に優れた物性を有するポリプロピレン樹脂を探索する必要があった。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、溶融張力が特定の値以上であり、かつ一度溶融、固化させた後の溶融張力の変化が特定の範囲であるプロピレン単独重合体を用いることで、繰り返し成形性に優れたポリプロピレン樹脂を得るに至った。
すなわち、本発明は、以下の各項の発明に関する。
(1)230℃における溶融張力MTが3g以上であり、かつ、230℃での押出造粒操作を1回行った後の230℃における溶融張力MTが、MTを1としたときに0.3以上であるプロピレン単独重合体(X)を含む、発泡成形用ポリプロピレン樹脂である。
(2)230℃での押出造粒操作を2回行った後の230℃における溶融張力MTが、MTを1としたときに0.2以上であるプロピレン単独重合体(X)を含む、前記(1)に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂である。
(3)230℃での押出造粒操作を3回行った後の230℃における溶融張力MTが、MTを1としたときに0.1以上であるプロピレン単独重合体(X)を含む、前記(2)に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂である。
(4)プロピレン単独重合体(X)のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)が0.9〜15g/10分の範囲であり、かつ、230℃での押出造粒操作を1回行った後のプロピレン単独重合体のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)が、MFRを1としたときに2以下である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂である。
(5)プロピレン単独重合体(X)が下記の特性(X−i)〜(X−iv)を満たす、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂である。
特性(X−i)長鎖分岐を有する。
特性(X−ii)230℃における溶融張力が3〜25gである。
特性(X−iii)メルトフローレート(230℃、2.16kg)が0.9〜15g/10分である。
特性(X−iv)25℃でキシレン可溶成分量(CXS)がプロピレン単独重合体(X)全量に対し5wt%未満である。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載のプロピレン単独重合体(X)10〜99wt%およびプロピレン系ブロック共重合体(Y)1〜90wt%を含有し、230℃における溶融張力が1g以上である、発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物である。
(7)プロピレン系ブロック共重合体(Y)が、10重量%以下のコモノマーを含んでもよいプロピレン(共)重合体(Y−1)およびプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)からなり、下記の特性(Y−i)〜(Y−v)を満たす、前記(6)に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物である。
特性(Y−i)プロピレン系ブロック共重合体(Y)の全量を100wt%としたとき、10wt%以下のコモノマーを含んでもよいプロピレン(共)重合体(Y−1)を50〜99wt%、プロピレンエチレン共重合体(Y−2)を1〜50wt%含有する。
特性(Y−ii)メルトフローレート(230℃、2.16kg)が0.1〜200g/10分である。
特性(Y−iii)融点が155℃以上である。
特性(Y−iv)プロピレン−エチレン共重合体(Y−2)中のエチレン含量が11〜38wt%である。
特性(Y−v)プロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の135℃のデカリン中での固有粘度が5.3dl/g以上である。
(8)プロピレン系ブロック共重合体(Y)が、逐次重合法により製造されたものである前記(7)に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物である。
(9)前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂または前記(6)〜(8)のいずれかに記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物100重量部に対し、発泡剤を0.05〜6.0重量部含有する、ポリプロピレン樹脂発泡成形材料である。
(10)前記(9)に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形材料を押出成形してなる、ポリプロピレン樹脂発泡成形体である。
(11)前記(10)に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形体からなる発泡層と、熱可塑性樹脂組成物からなる非発泡層とを、共押出してなるポリプロピレン樹脂積層発泡成形体である。
(12)前記熱可塑性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂100重量部に対し、50重量部以下の無機充填剤を含む、前記(11)に記載のポリプロピレン樹脂積層発泡成形体である。
(13)シート状である、前記(10)〜(12)のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂発泡成形体である。
(14)前記(10)〜(12)のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂発泡成形体または積層発泡成形体を、熱成形してなる成形品である。
(15)前記(9)に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形材料を射出成形、熱成形、ブロー成形またはビーズ発泡成形のいずれかの方法により成形して得られる成形品である。
(16)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂または前記(6)〜(8)のいずれかに記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物の、発泡シートの製造のための使用である。
本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂は、繰り返して押出成形工程に付した場合でも溶融張力の低下率が小さく、繰り返し成形性に優れる。また、溶融張力をはじめとした物性の変化率が小さいため、成形条件を大きく変えることなく、一定の品質のポリプロピレン樹脂成形体を得ることができる。
実施例と比較例でのポリプロピレン樹脂の、繰り返し成形による溶融張力の変化を示す図である。 実施例と比較例でのポリプロピレン樹脂の、繰り返し成形によるメルトフローレートの変化を示す図である。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。
本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂は、特定の物性を有するプロピレン単独重合体を含むことを特徴とする。
I.プロピレン単独重合体(X)
<溶融張力(MT)とその維持率>
発泡成形用ポリプロピレン樹脂に用いられるプロピレン単独重合体(X)は、230℃における溶融張力MTが3g以上であり、かつ、230℃での押出造粒操作(以下、「繰り返し押出操作」ということもある)を1回行った後の230℃における溶融張力MTが、MTを1としたときに0.3以上である。以下、繰り返し押出操作をn回行った後の重合体の溶融張力を「MT」で表し、MTに対するMTの比MT/MTを、「繰り返し押出回数n回後のMT維持率」または単に「MT維持率」ということもある。
溶融張力は、発泡成形に重要な因子の一つであり、プロピレン単独重合体(X)としては、溶融張力は3g以上である。溶融張力を3g以上とすることで、発泡セル形成の際に張力不足による破泡が起こりにくくなる。このため、発泡体中で気泡が連続して存在する割合を表す連続気泡率を低くすることができる。加えて、セル径が小さくなり、セルサイズが均一なものになりやすくなる。溶融張力の上限については、25g以下であることが好ましく、より好ましくは24g以下であり、さらに好ましくは20g以下、特に好ましくは15g以下である。溶融張力の上限をこの範囲とすることで、押出成形の際の延展性が良好になり、シート、フィルム、成形体などの外観が良好なものとなりやすくなる。また、延展不良による破泡を防ぎ、発泡倍率の低下を抑えると同時に、連続気泡率を低くすることができる。
溶融張力は発泡成形に重要な因子であるため、繰り返し成形用の樹脂においても溶融張力を維持することは、発泡成形性を保つために重要である。そのため、プロピレン単独重合体(X)は、繰り返し押出回数1回後のMT維持率が0.3以上である。
繰り返し押出回数1回後のMT維持率が0.3以上であると、発泡成形性の指標である連続気泡率の上昇を抑え、かつ発泡倍率の低下も小さくなり、そのまま繰り返し成形に用いても成形体の外観など、製品の質の低下が起こりにくくなる。またこの繰り返し押出回数1回の樹脂を端材として新たに調製した(繰り返し押出回数0回の)ポリプロピレン樹脂に混ぜて発泡成形する場合においても、成形条件の大きな変更をすることなく良好な成形体を得やすい。これらの効果をよりよく発揮するため、繰り返し押出回数1回後のMT維持率は、好ましくは0.35以上であり、より好ましくは0.4以上である。
ここで、溶融張力は、以下の条件で測定した値とする。
[MT測定条件]
測定装置:(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1B
キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm
シリンダー径:9.55mm
ピストン押出速度:20mm/分
引き取り速度:4.0m/分(但し、MTが高すぎて樹脂が破断してしまう場合には、引き取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度で測定する。)
温度:230℃
通常、端材をリサイクルしながら発泡成形をする場合には、繰り返し押出回数が1回の樹脂が混ぜられるだけではなく、2回以上繰り返し押出操作に付された樹脂が含まれうる。このため、プロピレン単独重合体(X)においては、繰り返し押出操作を2回以上行った後でも溶融張力の低下が小さいことが好ましい。したがって、プロピレン単独重合体(X)においては、繰り返し押出操作を2回行った後の230℃における溶融張力MTが、MTを1としたときに0.2以上であることが好ましい。
繰り返し押出回数2回後のMT維持率が0.2以上であると、繰り返し押出操作に付した樹脂単独で用いる場合に製品の質の低下が起こりにくくなるだけでなく、新たに調製した樹脂に混ぜた場合でも均質な製品を製造しやすい。これらの効果をよりよく発揮するため、繰り返し押出回数2回後のMT維持率は、より好ましくは0.25以上であり、さらに好ましくは0.3以上である。
さらに、プロピレン単独重合体(X)においては、繰り返し押出操作を3回行った後の230℃における溶融張力MTが、MTを1としたときに0.1以上であることが好ましい。繰り返し押出回数3回後のMT維持率は、より好ましくは0.15以上であり、さらに好ましくは0.2以上である。
<メルトフローレート(MFR)とその変化率>
発泡成形用ポリプロピレン樹脂に用いられるプロピレン単独重合体(X)は、メルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)が0.9〜15g/10分の範囲であり、かつ、230℃で溶融させ、繰り返し押出操作を1回行った後のプロピレン単独重合体のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)が、MFRを1としたときに2以下であることが好ましい。以下、繰り返し押出操作をn回行ったときのMFRを「MFR」と表し、MFRとMFRの比MFR/MFRを「繰り返し押出回数n回後のMFR変化率」または単に「MFR変化率」ということもある。
MFRは、ポリプロピレンの成形加工において基本的な因子の一つである。繰り返し押出操作を行う前のプロピレン単独重合体のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)は、0.9〜15g/10分の範囲であることが好ましい。プロピレン単独重合体のMFRの下限に関しては、より好ましくは1.0g/10分以上であり、さらに好ましくは1.1g/10分以上であり、特に好ましくは1.2g/10分以上であり、最も好ましくは1.5g/10分以上である。MFRをこの範囲とすることで、押出成形の際の延展性を良好にし、シート、フィルム、成形体などの外観が良好になりやすくなる。また、延展不良による破泡を防ぎ、連続気泡率を低くすることができる。MFRの上限に関しては、より好ましくは14g/10分以下であり、さらに好ましくは13g/10分以下であり、特に好ましくは12g/10分以下であり、最も好ましくは10g/10分以下である。MFRをこの範囲とすることで、発泡セル形成の際に過剰に引き伸ばされる部分が生じにくくなり、破泡を防ぎ連続気泡率を低くすることができる。加えて、セル径を小さくし、セルサイズが均一になりやすくなる。
MFRを上記の範囲に調整する具体的な方法として、重合時に添加する水素の量を変更する方法を挙げることができる。水素は、プロピレンの重合において、連鎖移動剤として作用するため、水素の添加量を増やせば、MFRが上がり、逆に添加量を下げれば、MFRを下げることができる。重合槽内部の水素濃度に対するMFRの値は、使用する触媒や他の重合条件によって異なるが、触媒種やその他の重合条件に応じて事前に水素濃度とMFRの関係を把握し、望みのMFRの値となるよう水素濃度を調整することができる。
ここで、プロピレン単独重合体(X)のMFRは、JIS K7210:1999「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレート(MFR)およびメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のA法、条件M(230℃、2.16kg)に準拠して測定した値である。
繰り返し成形においてMFRを維持することは、溶融張力と同じく、樹脂の発泡成形性を保つために重要な要素である。そのため、プロピレン単独重合体(X)は、繰り返し押出操作1回後のMFR変化率が2以下であることが好ましい。繰り返し押出操作1回後のMFR変化率が2以下であると、押出成形の際の延展性を保ち、同じ条件での押出操作を行ってもダイ圧力の低下などが起こりにくいため、ダイ内発泡を引き起こすことなく、外観が良好なシート、フィルム、成形体などが得やすくなる。繰り返し押出操作1回後のMFR変化率は、より好ましくは1.8以下であり、さらに好ましくは1.6以下である。
また、プロピレン単独重合体(X)においては、繰り返し押出操作を2回行った後のプロピレン単独重合体のMFRが、MFRを1としたときに2.5以下であることが好ましい。繰り返し押出回数2回後のMFR変化率は、より好ましくは2.25以下であり、さらに好ましくは2以下である。
<プロピレン単独重合体(X)のその他の特性>
また、プロピレン単独重合体(X)は、下記の特性(X−i)〜(X−iv)を満たすことが好ましい。
特性(X−i):長鎖分岐を有する。
特性(X−ii):230℃で測定した溶融張力が3〜25gの範囲である。
特性(X−iii):メルトフローレート(230℃、2.16kg)が0.9〜15g/10分の範囲である。
特性(X−iv):25℃でキシレンに可溶な成分の割合(CXS)がプロピレン単独重合体全量に対し5wt%未満である。
このようなプロピレン単独重合体(X)の中でも、下記の特性(X−v)を満たすものがより好ましく、下記の特性(X−vi)を満たすものがさらに好ましい。
特性(X−v):絶対分子量Mabsが100万における分岐指数g’が0.3以上、1.0未満である。
特性(X−vi):伸張粘度の測定における歪硬化度(λmax)が5〜15である。
I−1.特性(X−i):長鎖分岐
プロピレン単独重合体(X)は、長鎖分岐を有するものが好ましい。長鎖分岐とは、炭素数が数十以上、分子量では数百以上の分子鎖による分岐構造をいい、1−ブテンなどのα−オレフィンと共重合を行うことにより形成される炭素数数個の短鎖分岐とは区別される。
プロピレン重合体中に長鎖分岐があるかどうかを調べる方法は、幾つかあるが、特性(X−ii)(X−vi)に示すような樹脂のレオロジー特性によるものが簡便に用いられる。より厳密な同定方法としては、特性(X−v)に示すように、分子量と粘度との関係を用いる方法や、13C−NMRを用いる方法などがある。後者については、Macromol.Chem.Phys.2003,vol.204,1738に詳細な説明があるので、参照されたい。
I−2.特性(X−ii):溶融張力(MT)
プロピレン単独重合体(X)は、その溶融張力が3〜25gの範囲であることが好ましい。溶融張力のより好ましい範囲、溶融張力の測定方法は、先に述べたとおりである。
I−3.特性(X−iii):メルトフローレート(MFR)
プロピレン単独重合体(X)は、MFRが0.9〜15g/10分の範囲であることが好ましい。MFRのより好ましい範囲、MFRの測定方法は、先に述べたとおりである。
I−4.特性(X−iv):25℃でキシレンに可溶な成分の割合(CXS)
プロピレン単独重合体(X)は、25℃でキシレンに可溶な成分の割合(CXS)が5wt%未満であることが好ましい(ここで、プロピレン単独重合体の全量を100wt%とする)。本発明におけるCXSは、以下の手順で測定した値である。
[CXS測定手順]
2gの試料を300mLのp−キシレン(0.5mg/mLのジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含む)に130℃で溶解させ溶液とした後、25℃で12時間放置する。その後、析出したポリマーを濾別し、濾液からp−キシレンを蒸発させ、さらに100℃で12時間減圧乾燥し25℃でのキシレンに可溶な成分を回収する。この回収成分の重量の仕込み試料重量に対する割合[wt%]をCXSとする。
CXSは、低結晶性のポリマー成分を表す一般的な指標であり、この値が高いとプロピレン単独重合体(X)中の低結晶性成分の含有率が高くなり、成形時や製品自体に問題が生じる恐れがある。例えば、押出発泡成形時にメヤニや発煙の問題が生じたり、シート、フィルム、製品の表面がべたついたりする問題が生じやすい。プロピレン単独重合体(X)は、CXSが5wt%未満であることが好ましい。CXSは、より好ましくは3wt%未満、さらに好ましくは1wt%未満、特に好ましくは0.5wt%未満である。CXSの下限値については、特に制限はないが、0.01wt%以上、好ましくは0.05wt%以上であると、添加剤の効果が発現しやすくなる。CXSを上記の範囲に調整する方法として、触媒の選定を挙げることができる。公知の触媒の中から、上記CXSの要件を満たすことが可能なプロピレン単独重合体合成用の触媒を選定すればよい。触媒の具体例は後述する。
I−5.特性(X−v):分岐指数g’
プロピレン単独重合体(X)は、上記特性(X−i)〜(X−iv)を満たすことが好ましいが、さらに、絶対分子量Mabsが100万における分岐指数g’が0.3以上、1.0未満であることがより好ましい。
分岐指数g’は、長鎖分岐に関する、より直接的な指標として知られている。「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983)に詳細な説明があるが、分岐指数g’の定義は、以下のとおりである。
分岐指数g’=[η]br/[η]lin
[η]br:長鎖分岐構造を有するポリマー(br)の固有粘度
[η]lin:ポリマー(br)と同じ分子量を有する線状ポリマーの固有粘度
一般的にポリマーの粘度は同じ分子量であれば分岐構造を有している方が小さくなるため、上記定義より、長鎖分岐構造が存在すると、分岐指数g’は、1よりも小さな値をとり、長鎖分岐構造が増えるほど分岐指数g’の値は小さくなる。ポリプロピレン樹脂の発泡では、分子鎖の絡み合いが重要であるため、分子量の大きい成分に長鎖分岐構造が存在すれば、効率よく絡み合いを促進し、発泡特性を高めることができる。故に、プロピレン単独重合体は、絶対分子量Mabsが100万となる時の分岐指数g’の値が特定の範囲内であるものが好ましい。絶対分子量Mabsが100万となる時の分岐指数g’の値を知るためには、絶対分子量Mabsの関数として分岐指数g’の値を得なくてはならない。この点については、以下の測定方法、解析方法、算出方法を用いることができる。
[測定方法]
GPC:Alliance GPCV2000(Waters社)
検出器:接続順に記載
多角度レーザー光散乱検出器(MALLS):DAWN−E(Wyatt Technology社)
示差屈折計(RI):GPC付属
粘度検出器(Viscometer):GPC付属
移動相溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン(Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)
移動相流量:1mL/分
カラム:東ソー社 GMHHR−H(S) HTを2本連結
試料注入部温度:140℃
カラム温度:140℃
検出器温度:全て140℃
試料濃度:1mg/mL
注入量(サンプルループ容量):0.2175mL
[解析方法]
多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)から得られる絶対分子量(Mabs)、二乗平均慣性半径(Rg)、および、Viscometerから得られる固有粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行う。
参考文献:
1.「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983. Chapter1.)
2.Polymer, 45, 6495−6505(2004)
3.Macromolecules, 33, 2424−2436(2000)
4.Macromolecules, 33, 6945−6952(2000)
[分岐指数g’の算出方法]
分岐指数g’は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる固有粘度([η]br)と、別途、線状ポリマーを測定して得られる固有粘度([η]lin)との比([η]br/[η]lin)として算出する。
ここで、[η]linを得るための線状ポリマーとしては、市販のホモポリプロピレン(日本ポリプロ社製ノバテックPP(登録商標) グレード名:FY6)を用いる。線状ポリマーの[η]linの対数は、分子量の対数と線形の関係があることは、Mark−Houwink−Sakurada式として公知であり、[η]linは、低分子量側や高分子量側に、適宜外挿して数値を得ることとする。
プロピレン単独重合体(X)は、絶対分子量Mabsが100万となるときの分岐指数g’の値が0.3以上、1.0未満であることが好ましい。より好ましくは0.55以上、0.98以下、さらに好ましくは0.75以上、0.96以下、特に好ましくは0.78以上、0.95以下である。分岐指数g’が上記の範囲にあると、混練を繰り返した際の溶融張力の低下度合いがより小さくなるため、生産工程における材料リサイクルの際に物性や成形性の低下がより小さくなり好ましい。分岐指数g’を上記の範囲に調整する方法として、触媒の選定を挙げることができる。公知の触媒の中から分岐指数g’の要件を満たすプロピレン単独重合体を合成可能なものを選定すればよい。触媒の具体例は、後述する。
I−6.特性(X−vi):伸張粘度の測定における歪硬化度(λmax
プロピレン単独重合体は、前記特性(X−i)〜(X−iv)を満たすことが好ましいが、加えて、特性(X−vi)として、伸張粘度の測定における歪硬化度(λmax)が5〜15であることが好ましい。
歪硬化度(λmax)も、発泡成形に重要な因子の一つである。プロピレン単独重合体の歪硬化度(λmax)は、より好ましくは、6〜14.5であり、さらに好ましくは、7〜14である。歪硬化度の値がこの範囲内にあると、延展性と発泡時のセル形成のバランスが特に良好となる傾向がある。歪硬化度を上記の範囲に制御する具体的な手法としては、触媒製造法(特に錯体の担持比率)を調整することで長鎖分岐の数を変える方法や、特性(X−iii)の範囲内でMFRを調整する方法がある。長鎖分岐の数を増やしたり、MFRを低くしたりすると、歪硬化度は高くなる。歪硬化度を低くするには、逆方向に調整すればよい。
λmaxの算出においては、以下の条件で測定した伸張粘度の値を使用する。
装置:Rheometorics社製Ares
冶具:ティーエーインスツルメント社製Extentional Viscosity Fixture
測定温度:180℃
歪み速度:0.1/sec
試験片の作成方法:プレス成形
試験片の形状:18mm×10mm、厚さ0.7mmのシート
次に、得られた伸張粘度の値から、λmaxを算出する方法を説明する。
まず、横軸に時間t(秒)、縦軸に伸長粘度ηE(Pa・秒)を両対数グラフでプロットし、その両対数グラフ上で歪み硬化を起こす直前の粘度を直線で近似する。具体的には、まず伸張粘度を時間に対してプロットした際の各々の時刻での傾きを求めるが、伸張粘度の測定データは離散的であることを考慮し、隣接データの傾きをそれぞれ求め、周囲数点の移動平均をとる方法を用いる。
伸張粘度は、低歪み量の領域では、単純増加関数となり、次第に一定値に漸近し、歪み硬化がなければ充分な時間経過後にトルートン粘度に一致するが、歪み硬化のある場合には、一般的に歪み量(=歪み速度×時間)1程度から、伸張粘度が時間と共に増大を始める。すなわち、上記傾きは、低歪み領域では時間と共に減少する傾向があるが、歪み量1程度から逆に増加傾向となり、伸張粘度を時間に対してプロットした際の曲線上に、変曲点が存在する。そこで歪み量が0.1〜2.5程度の範囲で、上記で求めた各々の時刻の傾きが最小値をとる点を求めて、その点で接線を引き、直線を歪み量が4.0となるまで外挿する。歪み量4.0となるまでの伸長粘度ηEの最大値(ηmax)を求め、また、その時間までの上記近似直線上の粘度をηlinとする。ηmax/ηlinを、λmax(0.1)と定義する。
I−7.その他の特性(X−vii):mm分率
プロピレン単独重合体の好ましい特性については、先に述べたとおりであるが、その他に、特性(X−vii)として、13C−NMRにより求めたアイソタクチックトライアッド分率(mm分率)が95%以上であると、より一層好ましい。
ここで、mm分率は、プロピレン単位3連鎖において隣接するメチル基の立体関係がメソとなるものが2つ連続したものの存在率を示し、本発明における定義、13C−NMRの測定条件は、特開2009−275207号公報の記載に従うものとする。
mm分率は、立体規則性の指標であり、数値が高い程ポリマー鎖中でプロピレン単位が規則正しく並んでいることを意味し、結晶化度が高くなりやすい。従って、mm分率が高い程、耐熱性や剛性が高くなるので好ましい。プロピレン単独重合体(X)において、mm分率は95%以上であることが好ましく、より好ましくは96%以上であり、さらに好ましくは97%以上である。mm分率を上記の範囲に調整する具体的な方法として、触媒の選定を挙げることができる。公知の触媒の中からmm分率の要件を満たすプロピレン単独重合体を合成可能なものを選定すればよい。触媒の具体例は、後述する。
II.プロピレン単独重合体(X)の製造方法
本発明におけるプロピレン単独重合体(X)は、上記した(X−i)〜(X−iv)の特性を満たす限り、特に製造方法を限定するものではないが、前述のように、高い立体規則性、低い低結晶性成分量、比較的広い分子量分布、分岐指数g’の範囲、高い溶融張力などの全ての条件を満足するための好ましい製造方法は、メタロセン触媒の組み合わせを利用したマクロマー共重合法を用いる方法である。このような方法の例としては、例えば、特開2009−57542号公報に開示される方法が挙げられる。
この手法は、マクロマー生成能力を有する特定の構造の触媒成分と、高分子量でマクロマー共重合能力を有する特定の構造の触媒成分とを組み合わせた触媒を用いて、長鎖分岐構造を有するポリプロピレンを製造する方法であり、これによれば、バルク重合や気相重合といった工業的に有効な方法で、特に実用的な圧力温度条件下の単段重合で、しかも、分子量調整剤である水素を用いて、目的とする物性を有する長鎖分岐構造を有するポリプロピレンの製造が可能である。
また、従来は、立体規則性の低いポリプロピレン成分を使用して結晶性を落とすことによって、分岐生成効率を高めなければならなかったが、上記の方法では、充分に立体規則性の高いポリプロピレン成分を、側鎖に簡便な方法で、導入することが可能であり、本発明に用いるプロピレン単独重合体(X)として好ましい、高い立体規則性と低い低結晶性成分量に係る(X−iv)および(X−v)の特性を満足するのに好適である。
また、上記手法を用いれば、重合特性の大きく異なる二種の触媒を使用することで、分子量分布を広くすることができ、本発明に用いる長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体(X)に必要な(X−i)〜(X−iii)の特性を同時に満たすことが可能であり、好ましい。
以下、この方法をプロピレン単独重合体(X)の製造方法の具体例として選び、詳細に説明する。
II−1.触媒
下記の触媒成分(A)、(B)および(C)からなる触媒を用いることが好ましい。
触媒成分(A):下記一般式(a1)で表される化合物である成分[A−1]から少なくとも1種類、および下記一般式(a2)で表される化合物である成分[A−2]から少なくとも1種類を選んだ2種以上の混合物
触媒成分(B):イオン交換性層状珪酸塩
触媒成分(C):有機アルミニウム化合物
以下、触媒成分(A)、(B)および(C)について、詳細に説明する。
(1)触媒成分(A)
(i)成分[A−1]:一般式(a1)で表される化合物
[一般式(a1)中、各々R11およびR12は、独立して、炭素数4〜16の窒素、酸素または硫黄を含有する複素環基を表す。各々R13およびR14は、独立して、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リンもしくはこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜16のアリール基、または炭素数6〜16の窒素、酸素もしくは硫黄を含有する複素環基を表す。X11およびY11は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基、炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、または炭素数1〜20のリン含有炭化水素基を表す。Q11は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基もしくはゲルミレン基を表す。]
上記R11およびR12の、炭素数4〜16の窒素、酸素または硫黄を含有する複素環基としては、好ましくは2−フリル基、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、置換された2−フルフリル基であり、より好ましくは、置換された2−フリル基である。
また、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、置換された2−フルフリル基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数1〜6のアルキル基、フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基、トリアルキルシリル基などが挙げられる。これらのうち、メチル基、トリメチルシリル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
さらにR11およびR12として、特に好ましくは、2−(5−メチル)−フリル基である。また、R11およびR12は、互いに同一である場合が好ましい。
上記R13およびR14の、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン、またはこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜16のアリール基としては、炭素数6〜16になる範囲で、アリール環状骨格上に、1つ以上の、炭素数1〜6の炭化水素基、炭素数1〜6の珪素含有炭化水素基、炭素数1〜6のハロゲン含有炭化水素基などを置換基として有していてもよい。
13およびR14としては、好ましくは、少なくとも1つが、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−i−プロピルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−トリメチルシリルフェニル基、2,3―ジメチルフェニル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニル基、4−フェニル−フェニル基、クロロフェニル基、ナフチル基、またはフェナンスリル基であり、より好ましくはフェニル基、4−i−プロピルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−トリメチルシリルフェニル基、4−クロロフェニル基である。また、R13およびR14が互いに同一である場合が好ましい。
一般式(a1)中、X11およびY11は、補助配位子であり、触媒成分(B)と反応して、オレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限り、X11およびY11は、前記定義の範囲で配位子の種類が制限されるものではない。
一般式(a1)中、Q11は、二つの共役五員環を架橋する結合性基であり、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基もしくはゲルミレン基を示す。シリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
上記のQ11の具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレンなどのアルキレン基;ジフェニルメチレンなどのアリールアルキレン基;シリレン基;メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレンなどのアルキルシリレン基、メチル(フェニル)シリレンなどの(アルキル)(アリール)シリレン基;ジフェニルシリレンなどのアリールシリレン基;テトラメチルジシリレンなどのアルキルオリゴシリレン基;ゲルミレン基;上記の2価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;(アルキル)(アリール)ゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることができる。これらの中では、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基または炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、アルキルシリレン基、アルキルゲルミレン基がより好ましい。
上記一般式(a1)で表される化合物のうち、好ましい化合物として、以下に具体的に例示する。
ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジフェニルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−トリメチルシリル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−フェニル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−ベンゾフリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−メチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フルフリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−フルオロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリフルオロメチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、などを挙げることができる。
これらのうち、さらに好ましいのは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−メチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、である。
また、さらに好ましいのは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、である。
(ii)成分[A−2]:一般式(a2)で表される化合物
[一般式(a2)中、各々R21およびR22は、独立して、炭素数1〜6の炭化水素基を表す。各々R23およびR24は、独立して、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リンまたはこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜16のアリール基である。X21およびY21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基を表し、Q21は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基もしくはゲルミレン基を表す。M21は、ジルコニウムまたはハフニウムである。]
上記R21およびR22は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、好ましくはアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。具体的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシルなどが挙げられ、好ましくはメチル、エチル、n−プロピルである。
上記R23およびR24は、それぞれ独立して、炭素数6〜16の、好ましくは炭素数6〜12の、ハロゲン、ケイ素、あるいは、これらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよいアリール基である。好ましい例としてはフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、4−メチルフェニル、4−i−プロピルフェニル、4−t−ブチルフェニル、4−トリメチルシリルフェニル、4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)、4−(2−クロロ−4−ビフェニリル)、1−ナフチル、2−ナフチル、4−クロロ−2−ナフチル、3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル、3,5−ジメチル−4−t−ブチルフェニル、3,5−ジメチル−4−トリメチルシリルフェニル、3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニルなどが挙げられる。
上記X21およびY21は、補助配位子であり、触媒成分(B)と反応して、オレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限り、X21およびY21の種類は上記定義の範囲で制限されない。
上記Q21は、二つの共役五員環を架橋する結合性基であり、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基もしくはゲルミレン基を示す。シリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。好ましくは置換シリレン基あるいは置換ゲルミレン基である。
ケイ素、ゲルマニウムに結合する置換基は、炭素数1〜12の炭化水素基が好ましく、二つの置換基が連結していてもよい。具体的な例としては、メチレン、ジメチルメチレン、エチレン−1,2−ジイル、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジフェニルシリレン、メチルフェニルシリレン、9−シラフルオレン−9,9−ジイル、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジフェニルシリレン、メチルフェニルシリレン、9−シラフルオレン−9,9−ジイル、ジメチルゲルミレン、ジエチルゲルミレン、ジフェニルゲルミレン、メチルフェニルゲルミレンなどが挙げられる。
さらに上記M21は、ジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはハフニウムである。
上記一般式(a2)で表されるメタロセン化合物の非限定的な例として下記のものを挙げることができる。
ただし、以下は煩雑な多数の例示を避けて代表的例示化合物のみ記載しており、本発明はこれら化合物に限定し解釈されるものではなく、種々の配位子や架橋結合基あるいは補助配位子を任意に使用しうることは自明である。
また中心金属がハフニウムの化合物を記載したが、ジルコニウムに代替した化合物も同様に使用することができ、それらも本願明細書に開示されたものとして取り扱われる。
ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)}ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−メチル−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(1−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−クロロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(9−フェナントリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−n−プロピル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−メチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、などを挙げることができる。
これらのうち、より好ましいのは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、である。
また、さらに好ましいのは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、である。
(2)触媒成分(B)
プロピレン単独重合体(X)を製造するのに好ましく使用される触媒成分(B)は、イオン交換性層状珪酸塩である。
(i)イオン交換性層状珪酸塩の種類
イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に珪酸塩と略記することもある)とは、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、かつ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライトなど)が含まれることが多いが、それらを含んでもよい。それら夾雑物の種類、量、粒子径、結晶性、分散状態によっては純粋な珪酸塩以上に好ましいことがあり、そのような複合体も、触媒成分(B)に含まれる。本発明で使用するイオン交換性層状珪酸塩は、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよく、また、それらを含んでもよい。
珪酸塩の具体例としては、例えば、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が挙げられる。
すなわち、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイトなどのスメクタイト族、バーミキュライトなどのバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石などの雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群などである。
珪酸塩は、主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であることが好ましく、スメクタイト族であることがより好ましく、モンモリロナイトがさらに好ましい。層間カチオンの種類は特に限定されないが、工業原料として比較的容易かつ安価に入手し得る観点から、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を層間カチオンの主成分とする珪酸塩が好ましい。
(ii)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
本発明に係る触媒成分(B)としてのイオン交換性層状珪酸塩は、特に処理を行うことなくそのまま用いることができるが、化学処理を施すことが好ましい。ここで、イオン交換性層状珪酸塩の化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と粘土の構造に影響を与える処理のいずれをも用いることができ、具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。
<酸処理>:
酸処理は、珪酸塩表面の不純物を取り除くほか、結晶構造のAl、Fe、Mgなどの陽イオンの一部または全部を溶出させることができる。酸処理で用いられる酸は、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸から選択される。処理に用いる酸は、2種以上を組み合わせたものであってもよい。
<塩類処理>:
塩類で処理される前の、珪酸塩の含有する交換可能な金属陽イオンの40%以上、好ましくは60%以上を、下記に示す塩類より解離した陽イオンとイオン交換することもまた好ましい。
このようなイオン交換を目的とした塩類処理で用いられる塩類は、その種類に特に制限はない。例えば、周期表第1〜14族原子からなる群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンと、ハロゲン陰イオン、無機酸由来の陰イオンおよび有機酸由来の陰イオンからなる群より選ばれた少なくとも一種の陰イオンとからなる化合物が好ましい例として挙げられる。ここで、酸由来の陰イオンとは、酸から少なくとも1個の水素陽イオンが脱離した陰イオンのことである。例えば、HNOのような1価の無機酸の場合には、その酸由来の陰イオンは、NO であり、HPOのような3価の無機酸の場合には、その酸由来の陰イオンは、HPO 、HPO 2−、PO 3−の3種類が存在する。有機酸由来の陰イオンの場合も同様である。さらに好ましくは、陽イオンが金属イオン、陰イオンが無機酸由来の陰イオンまたはハロゲン陰イオンからなる塩類である。また、2種以上の塩類を組み合わせたものであってもよい。
このような塩類の具体例としては、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiSO、Li(CHCOO)、LiCO、LiHCO、Li、LiClO、LiPO、CaCl、CaSO、CaC、Ca(NO、MgCl、MgBr、MgSO、Mg(PO、Mg(ClO、MgC、Mg(NO、Mg(CHCOO)などの、アルカリ金属または2族元素の塩が挙げられる。
また、Ti(CHCOO)、Ti(CO、Ti(NO、Ti(SO、TiF、TiCl、Zr(CHCOO)、Zr(CO、Zr(NO、Zr(SO、ZrF、ZrCl、Hf(CHCOO)、Hf(CO、Hf(NO、Hf(SO、HfF、HfCl、V(CHCOCHCOCH、VOCl、VCl、VCl、VBr、Cr(CHCOCHCOCH、Cr(NO、Cr(ClO、CrPO、Cr(SO、CrF、CrCl、CrBr、CrI、Mn(CHCOO)、Mn(CHCOCHCOCH、MnCO、Mn(NO、MnO、Mn(ClO、MnF、MnCl、Fe(CHCOO)、Fe(CHCOCHCOCH、FeCO、Fe(NO、Fe(ClO、FePO、FeSO、Fe(SO、FeF、FeCl、Co(CHCOO)、Co(CHCOCHCOCH、CoCO、Co(NO、CoC、Co(ClO、Co(PO、CoSO、CoF、CoCl、NiCO、Ni(NO、NiC、Ni(ClO、NiSO、NiCl、NiBrなどの、遷移金属の塩が挙げられる。
さらに、Zn(CHCOO)、Zn(CHCOCHCOCH、ZnCO、Zn(NO、Zn(ClO、Zn(PO、ZnSO、ZnF、ZnCl、AlF、AlCl、AlBr、AlI、Al(SO、Al(C、Al(CHCOCHCOCH、Al(NO、AlPO、GeCl、GeBr、GeIなどの、12〜14族元素の塩が挙げられる。
酸または塩類による処理条件は、特には制限されないが、通常、酸または塩濃度は、0.1〜50重量%、処理温度は、室温〜処理溶液の沸点、処理時間は、5分〜24時間であり、珪酸塩を構成している物質の少なくとも一部を溶出する条件で行うことが好ましい。また、酸および塩類は、一般的には水溶液で用いられる。また、上記酸類および塩類を組み合わせたものを処理剤として用いてもよい。
<アルカリ処理>:
酸、塩処理の他に、必要に応じてアルカリ処理や有機物処理を行ってもよい。アルカリ処理で用いられる処理剤としては、LiOH、NaOH、KOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)などが例示される。
<有機物処理>:
有機物処理に用いられる有機物処理剤の例としては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、トリフェニルホスホニウムなどが挙げられる。また、有機物処理剤を構成する陰イオンとしては、先に例示した塩類処理用の塩を構成する陰イオンのほか、ヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレートなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
また、これらの処理剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの組み合わせは、処理開始時に添加する処理剤について組み合わせて用いてもよいし、処理の途中で添加する処理剤について、組み合わせて用いてもよい。また化学処理は、同一または異なる処理剤を用いて複数回行うことも可能である。
イオン交換性層状珪酸塩には、通常、吸着水および層間水が含まれる。これらの吸着水および層間水を除去して触媒成分(B)として使用することが好ましい。珪酸塩の吸着水および層間水の加熱処理方法は、特に制限されないが、層間水が残存しないように、また、構造破壊を生じないよう条件を選ぶことが必要である。加熱時間は0.5時間以上、好ましくは1時間以上である。その際、除去した後の触媒成分(B)の水分含有率が、温度200℃、圧力1mmHgの条件下で2時間脱水した場合の水分含有率を0重量%とした時、3重量%以下、好ましくは1重量%以下である。
触媒成分(B)として、特に好ましいものは、塩類処理および/または酸処理を行って得られた、水分含有率が3重量%以下のイオン交換性層状珪酸塩である。
イオン交換性層状珪酸塩は、触媒形成または触媒として使用する前に、後述する有機アルミニウム化合物の触媒成分(C)で処理を行うことが可能であり、また処理を行うことが好ましい。珪酸塩1gに対する触媒成分(C)の使用量に制限は無いが、通常20mmol以下、好ましくは0.5mmol以上、10mmol以下で行う。処理温度や時間の制限は無く、処理温度は、通常0℃以上、70℃以下、処理時間は10分以上、3時間以下で行う。処理後に洗浄することも可能であり、また処理後の洗浄が好ましい。溶媒は、後述する予備重合やスラリー重合で使用する溶媒と同じ炭化水素溶媒を使用する。
また、触媒成分(B)は、平均粒径が5μm以上の球状粒子を用いることが好ましい。粒子の形状が球状であれば、天然物または市販品をそのまま使用してもよいし、造粒、分粒、分別などにより粒子の形状および粒径を制御したものを用いてもよい。ここで用いられる造粒法は、例えば攪拌造粒法、噴霧造粒法が挙げられる。また、造粒の際に、有機物、無機溶媒、無機塩、各種バインダ−を用いてもよい。上記のようにして得られた球状粒子は、重合工程での破砕や微粉の生成を抑制するためには0.2MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上の圧縮破壊強度を有することが好ましい。このような粒子強度の場合には、特に予備重合を行う場合に、粒子性状の改良効果が有効に発揮される。
(3)触媒成分(C)
触媒成分(C)は、有機アルミニウム化合物である。触媒成分(C)として用いられる有機アルミニウム化合物は、一般式:(AlR31 3−qで示される化合物が適当である。この式で表される化合物を単独で、複数種混合してあるいは併用して使用することができる。この式中、R31は、炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Zは、ハロゲン、水素、アルコキシ基、アミノ基を示す。qは1〜3の、pは1〜2の整数を各々表す。R31としては、アルキル基が好ましく、またZは、それがハロゲンの場合には塩素が、アルコキシ基の場合には炭素数1〜8のアルコキシ基が、アミノ基の場合には炭素数1〜8のアミノ基が、好ましい。
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは、p=1、q=3のトリアルキルアルミニウムまたはアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、R31が炭素数1〜8のアルキル基である、トリアルキルアルミニウムである。
(4)触媒の形成・予備重合について
触媒は、上記の各触媒成分(A)〜(C)を(予備)重合槽内で、同時にもしくは連続的に、または一度にもしくは複数回にわたって、接触させることによって形成させることができる。各成分の接触は、例えば、脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素溶媒中で行われる。接触温度は、特に限定されないが、−20℃から150℃の間であることが好ましい。接触順序としては、合目的的な任意の組み合わせが可能であるが、好ましいものを各成分について示せば、次の通りである。
触媒成分(A)と触媒成分(B)を接触させる前に、触媒成分(A)と、あるいは触媒成分(B)と、または触媒成分(A)および触媒成分(B)の両方に触媒成分(C)を接触させること、または、触媒成分(A)と触媒成分(B)を接触させるのと同時に触媒成分(C)を接触させること、または、触媒成分(A)と触媒成分(B)を接触させた後に触媒成分(C)を接触させることが可能であるが、好ましくは、触媒成分(A)と触媒成分(B)を接触させる前に触媒成分(C)を接触させる方法である。また、各成分を接触させた後、脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素溶媒にて洗浄することが可能である。
触媒成分(A)、(B)および(C)の使用量は任意である。例えば、触媒成分(B)に対する触媒成分(A)の使用量は、触媒成分(B)1gに対し、好ましくは0.1μmol〜1,000μmol、より好ましくは0.5μmol〜500μmolの範囲である。また触媒成分(A)に対する触媒成分(C)の量は、遷移金属のモル比で、好ましくは0.01〜5×10、より好ましくは0.1〜1×10の範囲内である。
本発明で使用する前記成分[A−1](一般式(a1)で表される化合物)と前記成分[A−2](一般式(a1)で表される化合物)の割合は、プロピレン系重合体の前記特性を満たす範囲において任意であるが、各成分[A−1]と[A−2]の合計量に対する[A−1]の遷移金属のモル比で、好ましくは0.30以上、0.99以下である。
この割合を変化させることで、溶融物性と触媒活性のバランスを調整することが可能である。つまり、成分[A−1]からは、低分子量の末端ビニルマクロマーを生成し、成分[A−2]からは、一部マクロマーを共重合した高分子量体を生成する。したがって、成分[A−1]の割合を変化させることで、生成する重合体の平均分子量、分子量分布、分子量分布の高分子量側への偏り、非常に高い分子量成分、分岐(量、長さ、分布)を制御することができ、そのことにより、歪硬化度、溶融張力、溶融延展性といった溶融物性を制御することができる。
より高い歪硬化度のプロピレン単独重合体(X)を製造するために、[A−1]と[A−2]の割合は、0.30以上が必要であり、好ましくは0.40以上であり、さらに好ましくは0.5以上である。また、上限に関しては0.99以下であり、高い触媒活性で効率的にプロピレン単独重合体(X)を得るためには、好ましくは0.95以下であり、さらに好ましくは0.90以下の範囲である。
また、上記範囲で成分[A−1]を使用することにより、水素量に対する、平均分子量と触媒活性のバランスを調整することが可能である。
本発明に係る触媒は、これにオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付される。予備重合処理を行うことにより、本重合を行った際に、ゲルの生成を防止できる。その理由としては、本重合を行った際の重合体粒子間で長鎖分岐を均一に分布させることができるためと考えられ、また、そのことにより溶融物性を向上することができる。
予備重合時に使用するオレフィンの種類は特に限定されないが、プロピレン、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを例示することができる。オレフィンのフィード方法は、オレフィンを反応槽に定速的にまたは定圧状態になるように維持するフィード方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。予備重合温度、重合時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合により得られるポリマー量は、触媒成分(B)100重量部に対し、好ましくは0.01〜100重量部、より好ましくは0.1〜50重量部である。また、予備重合時に触媒成分(C)を添加または追加することもできる。また、予備重合終了後に洗浄することも可能である。
また、上記の各成分の接触の際または接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの重合体、シリカ、チタニアなどの無機酸化物の固体を共存させるなどの方法も可能である。
II−2.重合方法
重合様式は、前記触媒成分(A)、(B)および(C)を含むオレフィン重合用触媒とモノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー重合法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンモノマー自体を溶媒として用いる、所謂バルク重合法、溶液重合法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相重合法などを採用することができる。また、連続重合、回分式重合を行う方法も適用することができる。また、単段重合以外に、2段以上の多段重合をすることも可能である。スラリー重合法の場合は、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの飽和脂肪族または芳香族炭化水素の単独または混合物が用いられる。
重合温度は、0℃以上150℃以下である。特に、バルク重合法を用いる場合には、40℃以上が好ましく、より好ましくは50℃以上である。また上限は80℃以下が好ましく、より好ましくは75℃以下である。
さらに、気相重合法を用いる場合には、40℃以上が好ましく、より好ましくは50℃以上である。また上限は100℃以下が好ましく、より好ましくは90℃以下である。
重合圧力は、1.0MPa以上5.0MPa以下であることが好ましい。特に、バルク重合法を用いる場合には、1.5MPa以上が好ましく、より好ましくは2.0MPa以上である。また上限は4.0MPa以下が好ましく、より好ましくは3.5MPa以下である。
さらに、気相重合を用いる場合には、1.5MPa以上が好ましく、より好ましくは1.7MPa以上である。また上限は2.5MPa以下が好ましく、より好ましくは2.3MPa以下である。
さらに、分子量調節剤として、また活性向上効果のために、補助的に水素をプロピレンに対してモル比で1.0×10−6以上、1.0×10−2以下の範囲で用いることができる。
また、使用する水素の量を変化させることで、生成する重合体の平均分子量の他に、分子量分布、分子量分布の高分子量側への偏り、非常に高い分子量成分、分岐(量、長さ、分布)を制御することができ、そのことにより、MFR、歪硬化度、溶融張力(MT)、溶融延展性といった、長鎖分岐構造を有するポリプロピレンを特徴付ける溶融物性を制御することができる。
そこで水素は、プロピレンに対するモル比で、1.0×10−6以上で用いるのがよく、好ましくは1.0×10−5以上であり、さらに好ましくは1.0×10−4以上用いるのがよい。また上限に関しては、1.0×10−2以下で用いるのがよく、好ましくは0.9×10−2以下であり、さらに好ましくは0.8×10−2以下である。
また、プロピレンモノマー以外に、用途に応じて、プロピレンを除く炭素数2〜20のα−オレフィンコモノマー、例えば、エチレンおよび/または1−ブテンをコモノマーとして使用する共重合をおこなってもよい。
そこで、本発明に用いるプロピレン単独重合体(X)として、触媒活性と溶融物性のバランスのよいものを得るためには、エチレンおよび/または1−ブテンを、プロピレンに対して15モル%以下で使用することが好ましく、より好ましくは10.0モル%以下であり、さらに好ましくは7.0モル%以下である。
ここで例示した触媒、重合法を用いてプロピレンを重合すると、触媒成分[A−1]由来の活性種から、β−メチル脱離と一般に呼ばれる特殊な連鎖移動反応により、ポリマー片末端が主としてプロペニル構造を示し、所謂マクロマーが生成する。このマクロマーは、より高分子量を生成することができ、より共重合性がよい触媒成分[A−2]由来の活性種に取り込まれ、マクロマー共重合が進行すると考えられる。したがって、生成する長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂の分岐構造としては、櫛型鎖が主であると、考えられる。
III.プロピレン系ブロック共重合体(Y)
上記した長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体(X)とともに配合されるプロピレン系ブロック共重合体(Y)としては、10wt%以下のコモノマーを含んでもよいプロピレン(共)重合体(Y−1)およびプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)からなるプロピレン系ブロック共重合体(Y)を用いることが好ましい。より好ましくは、従来公知の逐次重合法によって多段階の重合を行って製造されたものである。
ここで用いるブロック共重合体という語は、各段階で重合された成分同士が化学結合によって結合された、いわゆる(リアル)ブロック共重合体あるいはグラフト共重合体とは異なるものである。多段階重合それぞれの工程で製造された成分は、化学的には結合していないため、一般に、それぞれの成分間の結晶性や分子量、または溶媒への溶解度などの差を利用して、結晶性分別や分子量分別、あるいは溶解度分別などの手法によって、各工程で製造された成分それぞれを、分離することが可能である。
また、従来公知の逐次重合法によるプロピレン系ブロック共重合体(Y)には、前記プロピレン単独重合体(X)のような化学結合による長鎖分岐構造は、分析可能な精度では存在が認められない。
本発明におけるプロピレン系ブロック共重合体(Y)は、下記の特性(Y−i)〜(Y−v)を有することが、前記長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体(X)が剪断流動下で形成する構造の形成を抑制しやすく、好ましい。
特性(Y−i):プロピレン系ブロック共重合体(Y)の全量を100wt%としたとき、10wt%以下のコモノマーを含んでもよいプロピレン(共)重合体(Y−1)を50〜99wt%、プロピレン−エチレン共重合体(Y−2)を1〜50wt%含有する。
特性(Y−ii):メルトフローレート(230℃、2.16kg)が0.1〜200g/10分の範囲である。
特性(Y−iii):融点が155℃以上である。
特性(Y−iv):プロピレン−エチレン共重合体(Y−2)中のエチレン含量が11〜38wt%である。
特性(Y−v):プロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の135℃のデカヒドロナフタレン中での固有粘度が5.3dl/g以上である。
III−1.特性(Y−i):プロピレン(共)重合体とプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の重量割合
プロピレン(共)重合体(Y−1)とプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の重量割合は、(Y−1)の割合が好ましくは50〜99wt%、より好ましくは55〜97wt%、さらに好ましくは60〜95wt%である。これに対応して、(Y−2)の割合は好ましくは1〜50wt%、より好ましくは3〜45wt%、さらに好ましくは5〜40wt%である。
但し、(Y−1)、(Y−2)の重量割合については、プロピレン系ブロック共重合体(Y)の全量を100wt%とする。
このプロピレン系ブロック共重合体(Y)を、長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体(X)に配合することにより、良好な延展性が付与され、各種の成形法での成形加工可能な温度範囲が広くなる、外観が良好になる、衝撃特性などの力学物性が良好になるなどの利点がある。(Y−2)成分の量を上記範囲の下限以上に設定すると、これらの利点が得られやすくなり、一方、上記範囲の上限以下に設定することにより、結晶性成分である(Y−1)を高く維持し、組成物の耐熱性や剛性を良好に保つことができる。
プロピレン(共)重合体(Y−1)とプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の重量割合は、プロピレン(共)重合体(Y−1)を製造する第1工程における製造量とプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)を製造する第2工程における製造量によって制御することができる。
例えば、プロピレン(共)重合体(Y−1)の量を増やしてプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の量を減らすためには、第1工程の製造量を維持したまま第2工程の製造量を減らせばよく、そのためには、第2工程の滞留時間を短くしたり、重合温度を下げたりすればよい。また、エタノールや酸素などの重合抑制剤を添加したり、元々重合抑制剤を添加している場合には、その添加量を増減することでも、(Y−1)成分と(Y−2)成分の重量割合を制御することができる。
III−2.特性(Y−ii):メルトフローレート(MFR)
本発明で使用するプロピレン系ブロック共重合体(Y)のMFRは、0.1〜200g/10分の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.2〜190g/10分の範囲であり、さらに好ましくは0.5〜180g/10分の範囲であり、特に好ましくは2.1〜170g/10分の範囲である。
これは、各種の成形に供する樹脂のMFRの範囲として、常用の範囲であって、この範囲の下限以上に設定することにより、押出機の負荷を適正に、樹脂の流動を安定に保つことができ、上限以下に設定することにより、押出成形時のネックインを小さく、シート引き取りを容易にすることができる。なお、MFRの測定法は、前述のプロピレン単独重合体(X)における測定方法と同じである。
次に、プロピレン系ブロック共重合体(Y)のMFRの制御方法について説明する。プロピレン系ブロック共重合体(Y)のMFR(Y)については、プロピレン(共)重合体(Y−1)のMFR(Y−1)およびプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)のMFR(Y−2)との間で、以下の関係式が成立する。
log[MFR(Y)]=W(Y−1)×log[MFR(Y−1)]+W(Y−2)×log[MFR(Y−2)]
(ここで、logは、eを底とする対数である。また、W(Y−1)とW(Y−2)は、それぞれプロピレン系ブロック共重合体(Y)におけるプロピレン(共)重合体(Y−1)とプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の重量分率であり、W(Y−1)+W(Y−2)=1である。)
この関係式は、粘度の対数加成則と呼ばれる経験式であり、当業界で日常的に使われるものである。つまり、プロピレン(共)重合体(Y−1)とプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の重量比、MFR(Y)、MFR(Y−1)、MFR(Y−2)は、独立ではない。故に、MFR(Y)を制御するには、プロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の重量比、MFR(Y−1)、MFR(Y−2)の3つの因子を制御すればよい。例えば、MFR(Y)を高くするためには、MFR(Y−1)を高くしてもよいし、MFR(Y−2)を高くしてもよい。また、MFR(Y−2)がMFR(Y−1)より低い場合には、W(Y−1)を大きくしてW(Y−2)を小さくしても、MFR(Y)を高くできることは容易に理解できるであろう。逆方向の制御も同様である。
このうちどの方法がより好ましいかを述べると、後述の特性(Y−v)の規定から、MFR(Y−2)はある程度低い値に制御する必要があり、MFR(Y)を制御する際には、MFR(Y−1)および/または(Y−1)と(Y−2)の重量比を制御する方法を用いることが好ましい。さらに言えば、(Y−1)と(Y−2)の重量比は、上述の特性(Y−i)の規定があるため、MFR(Y−1)を制御する方法を用いることが特に好ましい。
MFR(Y−1)やMFR(Y−2)を制御する方法としては、水素を連鎖移動剤として用いる方法が最も簡便である。具体的には、連鎖移動剤である水素の濃度を高くするとプロピレン(共)重合体(Y−1)のMFR(Y−1)が高くなる。逆も又同様である。重合槽における水素の濃度を高くするには、重合槽への水素の供給量を高くすればよく、当業者にとって調整は極めて容易である。MFR(Y−2)の制御も同様である。
MFR(Y−1)は、1〜100g/10分であることが好ましい。この上限値以下であると、プロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の分散がよくなり、製品の外観などがよくなる。より好ましくは70g/10分以下、さらに好ましくは60g/10分以下、特に好ましくは50g/10分以下である。一方、下限値以上であると、プロピレン系ブロック共重合体(Y)の流動性が向上し、発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物の延展性がよくなり、発泡時の破泡を防ぎシートやフィルムの表面外観が良好となり、さらには最終製品の外観が良好になることに繋がるので好ましい。より好ましくは5g/10分以上、さらに好ましくは10g/10分以上、特に好ましくは15g/10分以上である。
なお、MFRの測定法は、プロピレン単独重合体(X)におけるMFRの測定方法と同じである。
III−3.特性(Y−iii):融点
本発明で使用するプロピレン系ブロック共重合体(Y)の融点は、シートの耐熱性の維持の観点から、155℃を超えることが好ましく、157℃以上であるとより好ましい。融点の上限値は、特に制限されないが、事実上、融点が170℃を超えるものを製造することは困難である。ここで、融点は、示差走査熱量測定(DSC)を用い、一旦200℃まで温度を上げて熱履歴を消去した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度とする。
プロピレン系ブロック共重合体(Y)の融点は、主にプロピレン(共)重合体(Y−1)の融点で決まるので、プロピレン系ブロック共重合体(Y)の融点を制御する際には、プロピレン(共)重合体(Y−1)の融点を制御することがよい。プロピレン系ブロック共重合体(Y)の融点は、プロピレン(共)重合体(Y−1)のMFR(Y−1)とコモノマー含量によって決まる。MFR(Y−1)を高くすると(Y−1)の融点は低くなり、コモノマー含量を高くしても(Y−1)の融点は低くなる。事前にMFR(Y−1)やコモノマー含量と融点との関係を調べておき、所望の融点となるようにMFR(Y−1)やコモノマー含量を調整することができる。
III−4.特性(Y−iv):プロピレン−エチレン共重合体成分(Y−2)中のエチレン含量
本発明のプロピレン系ブロック共重合体(Y)における、プロピレン−エチレン共重合体成分(Y−2)中のエチレン含量が11〜38wt%であることが好ましい(ただし、成分(Y−2)を構成するモノマーの全量を100wt%とする。)。プロピレン−エチレン共重合体成分(Y−2)中のエチレン含量のより好ましい範囲としては、16〜36wt%であり、さらに好ましくは18〜35wt%である。
プロピレン−エチレン共重合体成分(Y−2)中のエチレン含量の制御は、重合槽に供給するエチレンのプロピレンに対する量比を適宜調整することによって行うのが通例である。用いる触媒の共重合特性を事前に調べておいて、重合槽のガス組成が望みのエチレン含量に対応する値になるようモノマーの供給量比を調整すればよい。
エチレン含量が上記の範囲のものを使用すると、長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体(X)が剪断流動下で形成する構造の形成を抑制する効果が現れ、これを外れる場合には、抑制効果が小さくなる。その理由については、本発明者らは、以下のように推測している。
本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体(Y)は、長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体(X)が剪断下で特異な構造を形成するのを抑制する働きを有する。その構造とは、いわゆるシシ−ケバブ構造(あるいはその前駆体)であるから、なるべく結晶性の低い成分、かつ、構造が成長するのを抑制するために、なるべく運動性が低い、すなわち分子量の高い成分が好ましいと考えられる。しかるに、エチレン含量がこの規定範囲を下回るものであっては、(Y−2)そのものが結晶性を有することとなり、シシ−ケバブ構造の形成を抑制することができなくなる。一方、(Y−2)のエチレン含量が高すぎる場合には、(Y−2)成分は、(Y−1)成分と海島構造を形成してしまい、全く別の相として存在してしまうために、シシ−ケバブ構造形成に対して、作用することができなくなる。すなわち、(Y−2)中のエチレン含量としては、ある程度結晶性プロピレン成分と相溶性を保ちつつ、結晶性をあまり有さない範囲であることが必要である。
III−5.特性(Y−v):プロピレン−エチレン共重合体成分(Y−2)の固有粘度
本発明のプロピレン系ブロック共重合体(Y)における、プロピレン−エチレン共重合体成分(Y−2)の135℃でのデカリンを溶媒として測定される固有粘度値は、5.3dl/g以上であることが好ましい。より好ましくは6.0dl/g以上であり、さらに好ましくは7.0dl/g以上であり、特に好ましくは7.5dl/g以上である。
本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体(Y)は、分子量の高い成分が好ましいと考えられ、また分子量は粘度と相関関係にあることから、固有粘度値をこの範囲の下限以上に設定することにより、シシ−ケバブ構造形成を抑制する効果を増すことができる。
(Y−2)成分の固有粘度値は5.3dl/g以上であれば、上限値は特に規定する必要はないが、あまり高すぎるとゲルの発生の原因となるため、好ましくは15.0dl/g以下、より好ましくは14.0dl/g以下、さらに好ましくは13.0dl/g以下、最も好ましくは12.0dl/g以下である。
ここでの固有粘度は、温度135℃、溶媒にデカリンを用い、ウベローデ型毛管粘度計を用いて測定した値とする。(Y−2)成分の固有粘度を求めるためには、前述のCXSの記載と同じ手法を用いて、(Y−2)成分を25℃でキシレンに可溶な成分として回収し、この固有粘度測定を行うものとする。ただし、(Y−2)成分のエチレン含有率が15wt%を下回ると、CXSの手法によっては十分に(Y−2)成分を分離することが難しくなる。このような場合には、逐次重合途中のプロピレン(共)重合体(Y−1)成分を少量抜き取って、固有粘度測定を行い、さらに、逐次重合終了後のプロピレン系ブロック共重合体(Y)全体の固有粘度を測定し、以下の式によって求めるものとする。
(Y−2)成分の固有粘度=[(Y)全体の固有粘度−{(Y−1)成分の固有粘度×(Y−1)成分の重量分率/100}]/{(Y−2)成分の重量分率/100}
固有粘度[η]は、分子量に対応する量であり、固有粘度[η]の制御は、MFRと同様に、水素を連鎖移動剤として用いる方法が最も簡便である。具体的には、連鎖移動剤である水素濃度を高くすると、プロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の固有粘度[η]が小さくなる。逆もまた同様である。重合槽における水素の濃度を高くするには、重合槽への水素の供給量を高くすればよく、当業者にとって調整は極めて容易である。
ここで、プロピレン系ブロック共重合体(Y)中の(Y−1)と(Y−2)の比率や、(Y−2C)中のエチレン含有率は、従来公知のIRやNMR、あるいは溶解度分別法とIR法を組み合わせた分析手法などによって、決定することができる。プロピレン系ブロック共重合体(Y)の各種のインデックスは、主に以下に記載のクロス分別法とFT−IR法を組み合わせた手法により決定した。
(1)使用する分析装置
(i)クロス分別装置
ダイヤインスツルメンツ社製CFC T−100(CFCと略す)
(ii)フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析
FT−IR、パーキンエルマー社製 1760X
CFCの検出器として取り付けられていた波長固定型の赤外分光光度計を取り外して、代わりにFT−IRを接続し、このFT−IRを検出器として使用する。CFCから溶出した溶液の出口からFT−IRまでの間のトランスファーラインは1mの長さとし、測定の間を通じて140℃に温度保持する。FT−IRに取り付けたフローセルは、光路長1mm、光路幅5mmφのものを用い、測定の間を通じて140℃に温度保持する。
(iii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
CFC後段のGPCカラムは、昭和電工製AD806MSを3本直列に接続して使用する。
(2)CFCの測定条件
(i)溶媒:オルトジクロルベンゼン(ODCB)
(ii)サンプル濃度:4mg/mL
(iii)注入量:0.4mL
(iv)結晶化:140℃から40℃まで約40分かけて降温する。
(v)分別方法:
昇温溶出分別時の分別温度は、40、100、140℃とし、全部で3つのフラクションに分別する。なお、40℃以下で溶出する成分(フラクション1)、40〜100℃で溶出する成分(フラクション2)、100〜140℃で溶出する成分(フラクション3)の溶出割合(単位wt%)を各々W40、W100、W140と定義する。W40+W100+W140=100である。また、分別した各フラクションは、そのままFT−IR分析装置へ自動輸送される。
(vi)溶出時溶媒流速:1mL/分
(3)FT−IRの測定条件
CFC後段のGPCから試料溶液の溶出が開始した後、以下の条件でFT−IR測定を行い、上述した各フラクション1〜3について、GPC−IRデータを採取する。
(i)検出器:MCT
(ii)分解能:8cm−1
(iii)測定間隔:0.2分(12秒)
(iv)一測定当たりの積算回数:15回
(4)測定結果の後処理と解析
各温度で溶出した成分の溶出量と分子量分布は、FT−IRによって得られる2945cm−1の吸光度をクロマトグラムとして使用して求める。溶出量は、各溶出成分の溶出量の合計が100%となるように規格化する。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。具体的な手法は、上に記載したものと同じである。
各溶出成分のエチレン含有率分布(分子量軸に沿ったエチレン含有率の分布)は、GPC−IRによって得られる2956cm−1の吸光度と2927cm−1の吸光度との比を用い、ポリエチレンやポリプロピレンや13C−NMR測定などによりエチレン含有率が既知となっているエチレン−プロピレン−ラバー(EPR)およびそれらの混合物を使用して、予め作成した検量線により、エチレン含有率(wt%)に換算して求める。
(5)プロピレン−エチレン共重合体の含有量
プロピレン系ブロック共重合体(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の含有量は、下記式(I)で定義され、以下のような手順で求められる。
(Y−2)含有量(wt%)=W40×A40/B40+W100×A100/B100+W140×A140/B140 (I)
40、W100、W140は、上述した各フラクションでの溶出割合(単位:wt%)であり、A40、A100、A140は、W40、W100、W140に対応する各フラククションにおける実測定の平均エチレン含有量(単位:wt%)であり、B40、B100、B140は、各フラクションに含まれる(Y−2)成分のエチレン含有量(単位:wt%)である。
40、A100、A140、B40、B100、B140の求め方は後述する。
(I)式の意味は、以下の通りである。(I)式右辺の第一項は、フラクション1(40℃に可溶な部分)に含まれる(Y−2)の量を算出する項である。フラクション1が(Y−2)のみを含み、PPを含まない場合には、W40がそのまま全体の中に占めるフラクション1由来のY−2含有量に寄与するが、フラクション1には、(Y−2)由来の成分のほかに少量のPP由来の成分(極端に分子量の低い成分およびアタクチックポリプロピレン)も含まれるため、その部分を補正する必要がある。そこで、W40にA40/B40を乗ずることにより、フラクション1のうち、(Y−2)成分由来の量を算出する。例えば、フラクション1の平均エチレン含有量(A40)が30重量%であり、フラクション1に含まれる(Y−2)のエチレン含有量(B40)が40重量%である場合、フラクション1の30/40=3/4(即ち75重量%)は(Y−2)由来、残りの1/4はPP由来ということになる。このように右辺第一項でA40/B40を乗ずる操作は、フラクション1の重量%(W40)から(Y−2)の寄与を算出することを意味する。右辺第二項以後も同様であり、各々のフラクションについて、(Y−2)の寄与を算出して加え合わせたものが(Y−2)含有量となる。
(i)上述したように、CFC測定により得られるフラクション1〜3に対応する平均エチレン含有量をそれぞれA40、A100、A140とする(単位はいずれもwt%である)。平均エチレン含量の求め方は後述する。
(ii)フラクション1の微分分子量分布曲線におけるピーク位置に相当するエチレン含有量をB40とする(単位はwt%である)。フラクション2および3については、ゴム部分が40℃ですべて溶出してしまうと考えられ、同様の定義で規定することができないので、本発明ではB100=B140=100と定義する。B40、B100、B140は、各フラクションに含まれる(Y−2)のエチレン含有量であるが、この値を分析的に求めることは実質的には不可能である。その理由は、フラクションに混在するPPと(Y−2)を完全に分離・分取する手段がないからである。種々のモデル試料を使用して検討を行った結果、B40はフラクション1の微分分子量分布曲線のピーク位置に相当するエチレン含有量を使用すると、材料物性の改良効果をうまく説明することができることがわかった。また、B100、B140は、エチレン連鎖由来の結晶性を持つこと、および、これらのフラクションに含まれる(Y−2)の量がフラクション1に含まれる(Y−2)の量に比べて相対的に少ないことの2点の理由により、ともに100と近似する方が、実態にも近く、計算上も殆ど誤差を生じない。そこでB100=B140=100として、解析を行うこととしている。
(iii)以下の式に従い、(Y−2)含有量を求める。
(Y−2)含有量(wt%)=W40×A40/B40+W100×A100/100+W140×A140/100 (II)
つまり、(II)式右辺の第一項であるW40×A40/B40は、結晶性を持たない(Y−2)含有量(重量%)を示し、第二項と第三項の和であるW100×A100/100+W140×A140/100は、結晶性を持つ(Y−2)含有量(wt%)を示す。
ここで、B40およびCFC測定により得られる各フラクション1〜3の平均エチレン含有量A40、A100、A140は、次のようにして求める。
結晶分布の違いによって分別されたフラクション1をCFC分析装置の一部を構成するGPCカラムで分子量分布を測定した曲線、および、当該GPCカラムの後ろに接続されたFT−IRによって、分子量分布曲線に対応して測定されるエチレン含有量の分布曲線を求める。微分分子量分布曲線のピーク位置に対応するエチレン含有量がB40となる。
また、測定時にデータポイントとして取り込まれる、各データポイント毎の重量割合と各データポイント毎のエチレン含有量の積の総和が、平均エチレン含有量A40となる。
なお、上記3種類の分別温度を設定した意義は、次の通りである。
本発明のCFC分析においては、40℃とは、結晶性を持たないポリマー(例えば、(Y−2)の大部分、もしくはプロピレン重合体成分(PP)の中でも極端に分子量の低い成分およびアタクチックな成分)のみを分別するのに必要十分な温度条件である意義を有する。また、100℃とは、40℃では不溶であるが100℃では可溶となる成分(例えば、(Y−2)中、エチレンおよび/またはプロピレンの連鎖に起因して結晶性を有する成分、および結晶性の低いPP)のみを溶出させるのに必要十分な温度である。さらに、140℃とは、100℃では不溶であるが140℃では可溶となる成分(例えば、PP中特に結晶性の高い成分、および(Y−2)中の極端に分子量が高くかつエチレン結晶性を有する成分)のみを溶出させ、かつ分析に使用するプロピレン系ブロック共重合体(Y)の全量を回収するのに必要十分な温度である。なお、W140に含まれるEP成分は、極めて少量であり、実質的には無視できる。
(Y−2)中のエチレン含有量(wt%)=(W40×A40+W100×A100+W140×A140)/[Y−2] (III)
但し、[Y−2]は、先に求めた(Y−2)含有量(wt%)である。
(Y−2)のうち、結晶性を持たない部分のエチレン含有量(E)(重量%)は、ゴム部分の溶出が殆ど40℃以下で完了することから、B40の値をもって近似する。
しかしながら、上述のクロス分別法とFT−IRの組み合わせによる分析方法では、(Y−2)のエチレン含量が15wt%を下回り、(Y−1)との結晶性に大きな差がなくなり、温度による分別が充分に行うことができないような場合では、正確な分析が難しくなる。このような場合は、逐次重合の途中で(Y−1)成分を抜き取っておき、その分子量(コモノマーを共重合する場合には、コモノマー含量も測定する)を測定し、さらに、マテリアルバランスによる計算によって、(Y−1)と(Y−2)成分の量比を決定し、さらに、逐次重合終了時の成分(Y)全体のコモノマー含量を測定することで、以下の重量の単純な加成則を使用することで、(Y−2)成分のコモノマー含量を求めることが好ましい。コモノマーとして、エチレンを使用する場合、以下の式によって(Y−2)のエチレン含量を求めるものとする。
(Y−2)成分のエチレン含量=[(Y)全体のエチレン含量−{(Y−1)成分のエチレン含量×(Y−1)成分の重量分率/100}]/{(Y−2)成分の重量分率/100}
(Y−1)成分と(Y−2)成分の量比を求める他の手法については、(Y−1)成分と(Y−2)成分の平均分子量がある程度異なるものを製造する場合には、逐次重合終了後の(Y)全体のGPC測定を行って、得られる多峰性の分子量分布曲線を市販のデータ解析ソフトウェアなどを用いてピーク分離し、その重量比を計算することで、求めることも可能である。
IV.プロピレン系ブロック共重合体(Y)の製造方法
プロピレン系ブロック共重合体(Y)は、前記特性(Y−i)〜(Y−v)を満たすものであれば、特に製造方法は限定されない。
以下、具体的な例を挙げながら、プロピレン系ブロック共重合体(Y)の製造方法を詳細に説明する。
IV−1.触媒
プロピレン系ブロック共重合体(Y)を製造するための触媒は、任意のものを用いることができるが、プロピレン−エチレン共重合体(Y−2)を構成成分として製造する観点から、チーグラー・ナッタ触媒を用いることが好ましい。チーグラー・ナッタ触媒を用いる場合、具体的な触媒の製造法は特に限定されないが、一例として、特開2007−254671号公報に開示された触媒を例示することができる。
具体的には、プロピレン系ブロック共重合体(Y)の製造に好適なチーグラー・ナッタ触媒の代表的な例として、以下の構成成分、
(ZN−1):チタン、マグネシウム、ハロゲンを必須成分として含有する固体成分、
(ZN−2):有機アルミニウム化合物、および
(ZN−3):電子供与体、
からなる触媒を挙げることができる。
(1)固体成分(ZN−1)
本発明のプロピレン系ブロック共重合体(Y)の製造に好適なチーグラー・ナッタ触媒の構成成分である固体成分(ZN−1)は、チタン(ZN−1a)、マグネシウム(ZN−1b)、ハロゲン(ZN−1c)を必須成分として含有するものであり、任意成分として、電子供与体(ZN−1d)を用いることができる。ここで、「必須成分として含有する」ということは、挙示の三成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の成分を任意の形態で含んでもよいということを示すものである。以下に詳述する。
(ZN−1a):チタン
チタン源となるチタン化合物としては、任意のものを用いることができる。代表的な例としては、特開平3−234707号公報に開示されている化合物を挙げることができる。チタンの価数に関しては、4価、3価、2価、0価の任意の価数を持つチタン化合物を用いることができるが、4価のチタン化合物を用いることが好ましい。
(ZN−1b):マグネシウム
マグネシウム源となるマグネシウム化合物としては、任意のものを用いることができる。代表的な例としては、特開平00−234707号公報に開示されている化合物を挙げることができる。一般的には、塩化マグネシウム、ジエトキシマグネシウム、金属マグネシウム、ブチルマグネシウムクロライドが用いられることが多い。
(ZN−1c):ハロゲン
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素およびこれらの混合物を用いることができる。この中で塩素が好ましい。
(ZN−1d):電子供与体
固体成分(ZN−1)は、任意成分として電子供与体を含有してもよい。電子供与体(ZN−1d)の代表的な例としては、特開2004−124090号公報に開示されている化合物を挙げることができる。一般的には、有機酸および無機酸、ならびにそれらの誘導体(エステル、酸無水物、酸ハライド、アミド)、エーテル化合物、ケトン化合物、アルデヒド化合物、アルコール化合物、アミン化合物などを用いることが好ましい。
これらの中で好ましいものは、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘプチルに代表されるフタル酸エステル化合物類、フタロイルジクロライドに代表されるフタル酸ハライド化合物類、2−n−ブチル−マロン酸ジエチルのような2位に一つまたは二つの置換基を有するマロン酸エステル化合物類、2−n−ブチル−コハク酸ジエチルのような2位に一つまたは二つの置換基もしくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸エステル化合物類、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパンや2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパンのような2位に一つまたは二つの置換基を有する1,3−ジメトキシプロパンに代表される脂肪族多価エーテル化合物類、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンに代表される芳香族の遊離基を分子内に有する多価エーテル化合物類などである。
(2)有機アルミニウム化合物(ZN−2)
有機アルミニウム化合物(ZN−2)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物などを用いることができる。そのなかでも、下記一般式(2)にて表される化合物を用いることが好ましい。
AlX(OR10 …(2)
(一般式(2)中、Rは、炭化水素基を表す。Xは、ハロゲンまたは水素原子を表す。R10は、炭化水素基またはAlによる架橋基を表す。c≧1、0≦d≦2、0≦e≦2、c+d+e=3である。)
一般式(2)で示される化合物の具体的な例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、メチルアルモキサンなどを挙げることができる。
(3)電子供与体(ZN−3)
電子供与体(ZN−3)として、アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物(ZN−3a)または少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(ZN−3b)を例示することができる。
(ZN−3a):アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物
プロピレン系ブロック共重合体(Y)の製造に好適なチーグラー・ナッタ触媒の構成成分であるアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物(ZN−3a)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物などを用いることができる。そのなかでも、下記一般式(3)にて表される化合物を用いることが好ましい。
Si(OR …(3)
(一般式(3)中、Rは、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基およびヘテロ原子含有炭化水素基からなる群から選ばれる任意の遊離基を表す。Rは、炭化水素基を表す。0≦a≦2、1≦b≦3、a+b=3である。)
一般式(3)で示される化合物の具体的な例として、t−Bu(Me)Si(OMe)、t−Bu(Me)Si(OEt)、t−Bu(Et)Si(OMe)、t−Bu(n−Pr)Si(OMe)、c−Hex(Me)Si(OMe)、c−Hex(Et)Si(OMe)、c−PenSi(OMe)、i−PrSi(OMe)、i−BuSi(OMe)、i−Pr(i−Bu)Si(OMe)、n−Pr(Me)Si(OMe)、t−BuSi(OEt)、(EtN)Si(OMe)、EtN−Si(OEt)などを挙げることができる。
(ZN−3b):少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(ZN−3b)としては、特開平3−294302号公報および特開平8−333413号公報に開示された化合物などを用いることができる。そのなかでも、下記一般式(4)にて表される化合物を用いることが好ましい。
O−C(R−C(R−C(R−OR …(4)
(一般式(4)中、RおよびRは、各々独立して、水素原子、炭化水素基およびヘテロ原子含有炭化水素基からなる群から選ばれる任意の遊離基を表す。Rは、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。)
一般式(4)で示される化合物の具体的な例として、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンなどを挙げることができる。
(4)予備重合
上記に例示した触媒は、本重合で使用する前に予備重合されていてもよい。重合プロセスに先立って、予め少量のポリマーを触媒周囲に生成させることによって、触媒がより均一となり、微粉の発生量を抑えることができる。
予備重合におけるモノマーとしては、特開2004−124090号公報に開示された化合物などを用いることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、スチレン、ジビニルベンゼンなどが好ましい。上記に例示した触媒と上記のモノマーとの反応条件は、特に制限されないが、一般的には以下の範囲内が好ましい。予備重合量は、固体成分(ZN−1)1gあたり0.001〜100gの範囲内であり、好ましくは0.1〜50g、より好ましくは0.5〜10gの範囲内である。予備重合時の反応温度は−150〜150℃、好ましくは0〜100℃である。そして、予備重合時の反応温度は本重合のときの重合温度よりも低くすることが好ましい。反応は、一般的に撹拌下に行うことが好ましく、そのときヘキサン、ヘプタンなどの不活性溶媒を存在させることもできる。
IV−2.重合方法
(1)逐次重合
次に、本発明のプロピレン系ブロック共重合体(Y)の製造方法について詳述する。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体(Y)は、プロピレン(共)重合体(Y−1)およびプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)とからなるリアクターブレンドであることが好ましく、その製造に際しては、プロピレン重合体(Y−1)とプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の2つの重合体成分を製造する必要がある。相対的に分子量が高く粘度やMFRが低いプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)をプロピレン(共)重合体(Y−1)中に均一に分散させてプロピレン系ブロック共重合体(Y)本来の性能を発現させるという観点から、当該両成分を、逐次重合により製造することが好ましい。
具体的には、第1工程において、プロピレン(共)重合体(Y−1)を重合した後で、第2工程において、プロピレン−エチレン共重合体(Y−2)を重合することが好ましい。製造順を逆にすることも可能ではあるが、プロピレン−エチレン共重合体(Y−2)は、(Y−iv)の規定からエチレン含量が11〜38wt%と結晶性が低い重合体であるため、第1工程で製造すると重合槽内部で付着したり、移送配管を閉塞したりするなどの製造トラブルを起こす可能性があり、あまり好ましくない。逐次重合を行う際には、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には生産性の観点から、連続法を用いることが好ましい。バッチ法の場合には、時間と共に重合条件を変化させることにより、単一の重合反応器を用いてプロピレン(共)重合体(Y−1)とプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)を個別に重合することが可能である。本発明の効果を阻害しない限り、複数の重合反応器を並列に接続して用いてもよい。
連続法の場合には、プロピレン(共)重合体(Y−1)とプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)を個別に重合する必要から2個以上の重合反応器を直列に接続した製造設備を用いる必要がある。プロピレン(共)重合体(Y−1)を製造する第1工程に対応する重合反応器とプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)を製造する第2工程に対応する重合反応器については、直列の関係になくてはならないが、第1工程、第2工程のそれぞれについて複数の重合反応器を直列および/または並列に接続して用いてもよい。
(2)重合プロセス
重合プロセスは、任意のものを用いることができる。
反応相については、液体の媒体を用いる手法であってもよいし、気体の媒体を用いる手法であってもよい。具体的な例として、スラリー法、バルク法、気相法を挙げることができる。バルク法と気相法の中間的な条件として、超臨界条件を用いることも可能であるが、実質的には気相法と同等であるため、特に区別することなく気相法に含める。なお、多槽連続重合プロセスの場合、バルク法の重合反応器の後に気相法の重合反応器を付ける場合があるが、この場合は、当業界の慣例に従ってバルク法と呼ぶ。また、バッチ法の場合に、第1工程をバルク法で行い、第2工程を気相法で行うこともあるが、この場合も同様にバルク法と呼ぶことにする。この様に反応相は、特に限定されるものではないが、スラリー法は、ヘキサンやヘプタンといった有機溶媒を用いるために付属設備が多く、一般的に生産コストが高くなるという問題がある。従って、バルク法または気相法を用いる方が一層好ましい。また、バルク法と気相法については、それぞれ種々のプロセスが提案されている。攪拌(混合)方法や除熱方法に違いがあるが、この観点において本発明は、特段プロセス種を限定することはない。
(3)一般的な重合条件
重合温度は、通常用いられる温度範囲であれば、特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。
重合圧力は、選択するプロセスによって差異が生じるが、通常用いられる圧力範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0〜200MPaの範囲、好ましくは0.1〜50MPaの範囲で重合を行うことができる。この際に、窒素などの不活性ガスを共存させてもよい。また、プロピレン−エチレン共重合体(Y−2)を製造する工程においては、エタノールや酸素などの重合抑制剤を添加することもできる。このような重合抑制剤を用いると、重合量の制御が容易であるだけでなく、重合体粒子の性状を改良することもできる。
逐次重合の前段で製造するプロピレン(共)重合体(Y−1)は、プロピレン単独重合体か、あるいは本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、少量のコモノマーを共重合させたプロピレンランダム共重合体である。コモノマーとしては、エチレン、ブテン、ヘキセンといった炭素数が3を除く10程度までのα−オレフィンが通常用いられる。
上記コモノマーの含量に特に制限はないが、10wt%以下であることが好ましく、より好ましくは3wt%以下、特に好ましくは1wt%以下である。コモノマー含量の制御は、重合槽に供給するモノマーの量比(例:プロピレンに対するエチレンの量比)を適宜調整することによって行うのが通例である。用いる触媒の共重合特性を事前に調べておいて、重合槽のガス組成が望みのコモノマー含量に対応する値になるようモノマーの供給量比を調整すればよい。
V.ポリプロピレン樹脂組成物
本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物は、前記プロピレン単独重合体(X)と、場合により前記プロピレン系ブロック共重合体(Y)を含む樹脂組成物であることが好ましい。さらに、ポリプロピレン樹脂組成物は、以下の特性(Z−i)〜(Z−iii)を満たすことが好ましい。
特性(Z−i):プロピレン単独重合体(X)10〜99wt%およびプロピレン系ブロック共重合体(Y)1〜90wt%を含有する。
特性(Z−ii):230℃で測定した溶融張力が1g以上である。
特性(Z−iii):MFRが0.1〜20g/10分である。
V−1.特性(Z−i)プロピレン単独重合体(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)の含有率
発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物は、前記プロピレン単独重合体(X)10〜99wt%およびプロピレン系ブロック共重合体(Y)1〜90wt%を含有することが好ましい。
ポリプロピレン樹脂組成物におけるプロピレン単独重合体(X)の含有率は、好ましくは10〜99wt%、より好ましくは10〜90wt%、さらに好ましくは15〜80wt%である。これに対応して、ポリプロピレン樹脂組成物におけるプロピレン系ブロック共重合体(Y)の含有率は、好ましくは1〜90wt%、より好ましくは10〜90wt%、さらに好ましくは20〜85wt%である(ここで、プロピレン単独重合体(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)の合計を100wt%とする)。
プロピレン単独重合体(X)の含有率を上記範囲の下限以上に設定することにより、発泡成形体の連続気泡率の上昇が抑えられ、熱成形の際にドローダウンを小さくすることができる。プロピレン単独重合体(X)の含有率を上記範囲の上限以下に設定することにより、延展性を高く維持しシートやフィルムの外観を改善し、押出量を増やして生産性を改善することができる。プロピレン単独重合体(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)の含有率は、樹脂組成物を作る際のブレンド量比を調整すれば、所望の範囲に調整することができる。
V−2.特性(Z−ii):溶融張力(MT)
ポリプロピレン樹脂組成物は、230℃で測定した溶融張力が1g以上である。下限は好ましくは1.5g以上、より好ましくは2g以上、さらに好ましくは3g以上であり、上限は好ましくは20g以下、より好ましくは15g以下、さらに好ましくは10g以下である。ここで、ポリプロピレン樹脂組成物の溶融張力は、プロピレン単独重合体(X)の特性(X−ii)の溶融張力と同じ測定方法を用いて得られる値である。溶融張力を上記の下限値以上に設定することにより、発泡時のセルの形成や成長を良好に保ち連続気泡率の上昇を抑制し、セルの大きさを均一にすることができる。また、溶融張力を上記の値の上限以下に設定することにより、延展性を高め、シートやフィルムの外観を改善し、押出量を増やして生産性を改善することができる。
溶融張力を上記の値に調整する方法は幾つかある。例えば、プロピレン単独重合体(X)の溶融張力を変更してもよいし、プロピレン単独重合体(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)の配合量を変更することでも調整することができる。一般に、プロピレン単独重合体(X)の含有率を高くすると、樹脂組成物の溶融張力を高くすることができる。
V−3.特性(Z−iii):MFR
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、MFRが0.1〜20g/10分であることが好ましい。より好ましくは1〜15g/10分の範囲であり、さらに好ましくは2〜10g/10分の範囲であり、特に好ましくは3〜8g/10分の範囲である。MFRをこの範囲に設定することにより、延展性を高めシートやフィルムの外観を改善し、押出量を増やして生産性を改善することができる。MFRを上記の範囲の上限以下に設定することにより、発泡成形体の連続気泡率の上昇を抑え、気泡の大きさを均一に保ち、熱成形の際のドローダウンを抑制することができる。
MFRを上記の範囲に調整する方法は、幾つかある。例えば、プロピレン単独重合体(X)やプロピレン系ブロック共重合体(Y)のMFRを調整することで、ポリプロピレン樹脂組成物のMFRを調整することができる。また、プロピレン単独重合体(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)のMFRが異なる場合、両者の配合量を変更することでもポリプロピレン樹脂組成物のMFRを調整することができる。例えば、プロピレン単独重合体(X)のMFRがプロピレン系ブロック共重合体(Y)のMFRよりも高い場合、プロピレン単独重合体(X)の配合量を高くすると、ポリプロピレン樹脂組成物のMFRは高くなる。
V−4.希釈:プロピレン(共)重合体(H)
特に、発泡成形などの高い溶融張力を求められる分野においては、製品の物性と経済性の両立の観点から、溶融張力の高い樹脂組成物を、さらに他の樹脂で希釈して使用することが求められる場合が多い。
本発明におけるポリプロピレン樹脂組成物は、その構成成分であるプロピレン単独重合体(X)と場合により含まれるプロピレン系ブロック共重合体(Y)が、各々に発泡性能を向上させる役割を担っており、これらを阻害する樹脂での希釈は、本発明の効果を阻害し得る。
したがって、希釈用の他の樹脂は、本発明の効果を著しく阻害することがない範囲で用いることが好ましい。本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、プロピレン単独重合体(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)とが有機的に影響し合って、発泡性能に関して高い効果を発現するため、希釈用の他の樹脂で薄めても、複数回押出成形した場合であっても高い効果が維持されやすい。
本発明において発泡性能を維持しながら経済性を向上させるための希釈に用いられる好ましい樹脂としては、プロピレン単独重合体、または、エチレンおよび炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとプロピレンとの共重合体(H)であり、プロピレン(共)重合体(H)が共重合体の場合には、プロピレン(共)重合体(H)中のエチレンおよびα−オレフィンの含有率が0〜3wt%の範囲であるプロピレン(共)重合体(H)が好適である。
これは、本発明の構成要件であるプロピレン系ブロック共重合体(Y)に含まれるプロピレン(共)重合体(Y−1)と同様の性能を有するプロピレン(共)重合体(H)を希釈材として用いるのであれば、希釈後の樹脂組成物中におけるプロピレン単独重合体(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の含量を、本発明の樹脂組成物の範囲内に維持できる場合において、発泡特性を悪化させることが無いことに基づいている。
一方で、本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体(Y)の要件を満たさない他のプロピレン系ブロック共重合体やポリエチレン系樹脂を希釈材として用いた場合、それらがプロピレン系ブロック共重合体(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の改良効果を阻害し、本発明の効果を著しく阻害することがあるため、希釈材の選択には注意を要する。
なお、本発明の効果を著しく阻害しているかどうかは、希釈材を用いた場合と希釈材を用いない場合と比較して、例えば、連続気泡率が3倍程度の値を示すかどうかを目安にすることができる。
プロピレン(共)重合体(H)の配合量は、ポリプロピレン樹脂組成物100重量部に対し、好ましくは0.1〜1000重量部、より好ましくは1〜500重量部、さらに好ましくは10〜300重量部である。希釈後の樹脂組成物中におけるプロピレン単独重合体(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の含量をポリプロピレン樹脂組成物の規定の範囲内に維持できる範囲が好ましく、ポリプロピレン樹脂組成物中における、(Y−2)の割合が、X、YおよびHの合計量に対して、好ましくは0.01〜47.5wt%、より好ましくは1〜36wt%、さらに好ましくは4〜25.5wt%となるように、プロピレン(共)重合体(H)の配合量を定めることが好ましい。
V−5.添加剤
本発明のポリプロピレン樹脂組成物には、前述のプロピレン(共)重合体(H)の他、各種添加剤を任意成分として配合することができる。具体的には、従来公知のポリオレフィン樹脂用配合剤として使用される酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、金属不活性化剤、安定剤、中和剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、核剤、過酸化物、充填剤、抗菌防黴剤、蛍光増白剤のような各種添加剤を、本発明の効果を損ねない範囲で加えることができる。これら添加剤の配合量は、ポリプロピレン樹脂組成物100wt%中、0.0001〜3wt%、好ましくは0.001〜1wt%である。
まず酸化防止剤から説明する。
ポリオレフィンの酸化劣化は、熱、光、機械力、金属イオンなどと酸素との作用により生ずるパーオキサイドラジカルやハイドロパーオキサイド化合物を経由したラジカル連鎖反応であり、一般的に自動酸化と呼ばれている。この自動酸化を抑制する為に用いられるのが酸化防止剤であり、ラジカル連鎖反応のどの段階に作用するかによって、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤の3種に大別される。フェノール系酸化防止剤は、ラジカル補足剤であり、パーオキサイドラジカルなどと反応して生じるラジカルが比較的安定であることから系中のラジカル濃度を下げることができる。一般的には、置換フェノール化合物、特に、オルト位に嵩高い置換基を有する置換フェノール化合物が用いられる。
以下、フェノール系酸化防止剤として、代表的な化合物を例示する。
モノフェノール型の化合物では、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(通称:BHT)、トコフェロール(ビタミンE)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(商品名:Irganox1076、スミライザーBP−76)を例示することができる。
ビスフェノール型の化合物では、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名:スミライザーMDP−S)、1,1−ビス(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ブタン(商品名:スミライザーBBM−S、アデカスタブAO−40)、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(商品名:スミライザーGA−80、アデカスタブAO−80)を例示することができる。
トリフェノール型の化合物では、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(商品名:アデカスタブAO−30)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(商品名:Irganox1330、アデカスタブAO−330)、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート(商品名:Irganox3114、アデカスタブAO−20)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート(商品名:スミライザーBP−179、Cyanox1790)、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−イソシアヌレート(商品名:ケミノックス314)を例示することができる。
テトラフェノール型の化合物では、テトラキス{メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン(商品名:Irganox1010)を例示することができる。
リン系酸化防止剤は、ハイドロパーオキサイド化合物を還元する作用があり、ハイドロパーオキサイド分解剤とも呼ばれる。単独でも酸化防止効果があるが、上記のフェノール系酸化防止剤と併用すると、相乗効果が発生してさらに酸化防止効果が高まるため、通常は両者を併用して用いることが多い。この相乗効果は、フェノール系酸化防止剤と自動酸化に関わるラジカル種との反応で発生したフェノキシラジカル種をリン系酸化防止剤が還元することにより、フェノール系酸化防止剤が再生するために生じると考えられている。
以下、リン系酸化防止剤として、代表的な化合物を例示する。
ホスファイト型の化合物では、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名:Irgafos168、スミライザーP−16、アデカスタブ2112)、トリスノニルフェニルホスファイト(商品名:スミライザーTNP、アデカスタブ1178)、トリス(ミックスド,モノ−ジノニルフェニルホスファイト)(商品名:アデカスタブ329K)、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト(通称:P−EPQ)、環状ネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニルフォスファイト)(商品名:アデカスタブPEP−36)を例示することができる。
硫黄系酸化防止剤も、リン系酸化防止剤と同様に、ハイドロパーオキサイド化合物を還元する作用があり、ハイドロパーオキサイド分解剤とも呼ばれる。こちらもリン系酸化防止剤と同様に、フェノール系酸化防止剤との併用による相乗効果があると言われている。以下、硫黄系酸化防止剤として、代表的な化合物を例示する。
スルフィド型の化合物では、ジラウリル−3,3’−チオ−ジプロピオネート(通称:DLTDP)、ジ−ミリスチル−3,3’−チオ−ジプロピオネート(通称:DMTDP)、ジステアリル−3,3’−チオ−ジプロピオネート(通称:DSTDP)、ペンタエリスリトール−テトラキス−(3−ラウリルチオ−プロピオネート)(商品名:スミライザーTP−D、アデカスタブAO−412S)を例示することができる。
次に紫外線吸収剤と光安定剤について説明する。
光劣化を抑制するための添加剤が紫外線吸収剤と光安定剤である。ポリプロピレンに紫外線が当たると、ラジカルが生成して自動酸化が起こる。紫外線吸収剤は、紫外線を吸収することにより、ラジカルの生成を抑制する作用があり、光安定剤は、紫外線により生成したラジカルを捕捉・不活性化する作用がある。
紫外線吸収剤は、紫外線領域に吸収帯を持つ化合物であり、トリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ニッケルキレート系、無機微粒子系などが知られている。この中で最も汎用的に用いられているのは、トリアゾール系である。
以下、紫外線吸収剤として代表的な化合物を例示する。
トリアゾール系の化合物では、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ200、TinuvinP)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ340、Tinuvin399)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ320、Tinuvin320)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ350、Tinuvin328)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ300、Tinuvin326)を例示することができる。
ベンゾフェノン系の化合物では、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(商品名:スミソーブ110)、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン(商品名:スミソーブ130)を例示することができる。
サリシレート系の化合物では、4−t−ブチルフェニルサリシレート(商品名:シーソーブ202)を例示することができる。
シアノアクリレート系の化合物では、エチル(3,3−ジフェニル)シアノアクリレート(商品名:シーソーブ501)を例示することができる。
ニッケルキレート系の化合物では、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(商品名:アンチゲンNBC)を例示することができる。
無機微粒子系の化合物では、TiO、ZnO、CeOを例示することができる。
光安定剤は、ヒンダードアミン系の化合物を用いることが一般的であり、HALSと呼ばれる。HALSは、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格を持ち、紫外線を吸収することはできないが、多種多様な機能により光劣化を抑制する。主な機能は、ラジカルの捕捉、ハイドロキシパーオキサイド化合物の分解、ハイドロキシパーオキサイドの分解を加速する重金属の捕捉、の3つと言われている。
以下、HALSとして代表的な化合物を例示する。
セバケート型の化合物では、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(商品名:アデカスタブLA−77、Tinuvin770)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(商品名:Tinuvin765)を例示することができる。
ブタンテトラカルボキシレート型の化合物では、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(商品名:アデカスタブLA−57)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(商品名:アデカスタブLA−52)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールおよびトリデシルアルコールとの縮合物(商品名:アデカスタブLA−67)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールおよびトリデシルアルコールとの縮合物(商品名:アデカスタブLA−62)を例示することができる。
コハク酸ポリエステル型の化合物では、コハク酸と1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの縮合重合体を例示することができる。
トリアジン型の化合物では、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス{N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ}−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物(商品名:Chimassorb199)、ポリ{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}(商品名:Chimassorb944)、ポリ(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}(商品名:Chimasorb3346)を例示することができる。
その他の添加剤についても、幾つか説明しておく。
滑剤は、成形性や流動性を高めるために用いる添加剤であり、成形機や押出機の中でポリマー分子間の摩擦力やポリマーと成形機内壁との間の摩擦力を低減する作用を持つ。滑剤として用いられる化合物は、パラフィンやワックスなどの炭化水素化合物、ステアリルアルコールやプロピレングリコールなどのアルコール、n−ブチルステアレートなどの高級脂肪酸エステル、オレイン酸アミドやステアリン酸アミドなどの高級脂肪酸アミド、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸塩、ステアリン酸モノグリセリドなどの多価アルコールの部分エステル、シリコンオイルなどがある。
このうち、高級脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリル酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルシン酸アミド、ベヘン酸アミドを挙げることができる。脂肪酸アミド化合物は、アルキル鎖上や窒素上に置換基を有していてもよい。置換基を有する脂肪酸アミド化合物の例としては、ヒドロキシステアリン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−ステアリルエルシン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドを挙げることができる。
安定剤は、そもそもポリ塩化ビニル(PVC)向けの添加剤であり、PVCから塩酸(HCl)が脱離して劣化することを防ぐ目的で使用される。各種安定剤のうち幾つかの化合物は、中和剤としての機能も有していることから、ポリオレフィンの添加剤としても用いられることがある。
中和剤は、ポリオレフィンの製造に用いられるチーグラー触媒に由来する塩素成分を中和するのに用いられる化合物である。中和剤としては、中和能力があるカルボン酸塩を用いることが多いが、塩素イオンの捕捉能力がある無機化合物も用いることができる。安定剤は、基本的に塩素原子を含まないメタロセン触媒を用いる場合には、本来必要のない添加剤であるが、塩素原子は容易にコンタミネーションを起こす化学種であるため、安定生産の観点から、保険的に用いられる場合が多い。
以下、中和剤として代表的な化合物を例示する。
カルボン酸塩型の化合物では、ステアリン酸カルシウムとステアリン酸亜鉛を例示することができる。無機化合物の中和剤では、ハイドロタルサイト、ならびに、水酸化アルミニウムと炭酸リチウムの包摂物(商品名:ミズカラック)を例示することができる。
V−6.ポリプロピレン樹脂組成物の製造方法
本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物の調製には、公知の方法を用いることができる。例えば、プロピレン単独重合体(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)、および任意の添加剤の各々所定量を、ドライブレンド、ヘンシェルミキサーなどで混合することにより樹脂組成物を調製することができる。また、これらを単軸押出機、二軸混練機、ニーダなどによって、溶融混練してもよい。このとき、押出成形に用いるためには、溶融混練し、樹脂組成物は、ペレット化されていることが好ましい。樹脂組成物のペレット化の方法としては、
a.プロピレン単独重合体(X)と、プロピレン系ブロック共重合体(Y)と、任意の添加剤とを混合したものを溶融混練しペレット化する。
b.プロピレン単独重合体(X)と任意の添加剤を混合したものを溶融混練しペレット化し、プロピレン系ブロック共重合体(Y)と任意の添加剤にプロピレン単独重合体(X)のペレットをさらに混合してから、溶融混練しペレット化する。
b’.プロピレン系ブロック共重合体(Y)と任意の添加剤を混合したものを溶融混練しペレット化し、プロピレン単独重合体(X)と任意の添加剤にさらに混合してから溶融混練する。
c.プロピレン単独重合体(X)と任意の添加剤を混合したものと、プロピレン系ブロック共重合体(Y)と任意の添加剤を混合したものを各々溶融混練し、各々のペレットを得て、得られた各々のペレットを混合する。
d.プロピレン単独重合体(X)と任意の添加剤を混合したものと、プロピレン系ブロック共重合体(Y)と任意の添加剤を混合したものを各々溶融混練し、各々のペレットを得て、得られた各々のペレットを混合し、さらにこれを溶融混練しペレット化する。
などの方法を用いることができる。
ここで、樹脂組成物のペレット化の方法として上記のb、cおよびdに記載された「プロピレン単独重合体(X)と任意の添加剤を混合したものを溶融混練しペレット化する。」ことによって、本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂を調製することができる。ここで、プロピレン系ブロック共重合体(Y)は逐次重合法により製造されたものであることが好ましく、プロピレン系ブロック共重合体(Y)を逐次重合により製造すること、ならびに、プロピレン単独重合体(X)およびプロピレン系ブロック共重合体(Y)を混合することを含む、発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物の製造方法もまた、本発明の一態様である。
ここで、ポリプロピレン樹脂組成物は、前記特性(Z−i)〜(Z−iii)を満たすことが好ましいが、特性(Z−ii)で規定するMTおよび特性(Z−iii)で規定するMFRは、共にプロピレン単独重合体(X)プロピレン系ブロック共重合体(Y)を溶融混練したものを用いて測定した値である。従って、これらを単純に混合して用いる場合や、cのようにプロピレン単独重合体(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)を混合(ドライブレンド)し、両者を溶融混練せずに押出発泡用樹脂組成物として用いる場合には、プロピレン単独重合体(X)、プロピレン系ブロック共重合体(Y)、任意成分に関して同一の配合を用いて別途溶融混練を実施し、得られたペレットを用いてMTとMFRの測定を実施し、こうして得られた値を押出発泡用ポリプロピレン樹脂組成物のMTとMFRの値と定める。この場合、後述の実施例に記載の方法を用いて溶融混練を実施することとする。
以下、本発明のポリプロピレン樹脂組成物を用いた材料、成形体、成形品などについて、順に詳説する。
VI.ポリプロピレン樹脂発泡成形材料
本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂および発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物を用いて、発泡成形を行う際には、発泡剤を含有させてポリプロピレン樹脂発泡成形材料とする。
<発泡剤>
本発明のポリプロピレン樹脂発泡成形材料を得るために用いる発泡剤の種類に特に制限はなく、プラスチックやゴムなどに使用されている公知の発泡剤を使用することができる。発泡剤の種類にも特に制限はなく、物理発泡剤、分解性発泡剤(化学発泡剤)、熱膨張剤を含有させたマイクロカプセルなど、いずれの種類を用いてもよい。
物理発泡剤の具体例としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、クロロジフルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロメタン、ジクロロメタン、クロロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、ジクロロフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ジフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、トリフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、クロロペンタフルオロエタン、パーフルオロシクロブタンなどのハロゲン化炭化水素、水、炭酸ガス、窒素などの無機ガスなどを例示することができる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、複数の化合物を併用してもよい。
中でも、プロパン、ブタン、ペンタンのような脂肪族炭化水素および炭酸ガスが、安価であり、本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂および発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物への溶解性が高いという点から好ましい。特に、炭酸ガスを用いる場合には、7.4MPa以上、31℃以上の超臨界条件とすると、重合体への拡散、溶解性に優れた状態となるので一層好ましい。
物理発泡剤を用いる場合には、必要に応じて、気泡調整剤を使用することができる。気泡調整剤としては、炭酸アンモニウム、重曹、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムなどの無機系分解性発泡剤、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリルおよびジアゾアミノベンゼンなどのアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタンメチレンテトラミンおよびN,N′−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミドなどのニトロソ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン、バリウムアゾジカルボキシレートなどの分解性発泡剤、タルク、シリカなどの無機粉末、多価カルボン酸などの酸性塩、多価カルボン酸と炭酸ナトリウムまたは重曹との反応混合物などを例示することができる。これらの気泡調整剤は、単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。
気泡調整剤を使用する際には、気泡調整剤の配合量は、プロピレン単独重合体(X)とプロピレン系ブロック共重合体(Y)の合計100重量部に対して、純分で0.01〜5重量部の範囲とすることが好ましい。
分解性発泡剤(化学発泡剤)の具体例としては、重炭酸ソーダとクエン酸などの有機酸の混合物、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウムなどのアゾ系発泡剤、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミドなどのニトロソ系発泡剤、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジドなどのスルホヒドラジド系発泡剤、トリヒドラジノトリアジンなどが挙げられる。
上記の発泡剤の配合量は、プロピレン単独重合体(X)と場合によりプロピレン系ブロック共重合体(Y)の合計100重量部に対し、好ましくは0.05〜6.0重量部の範囲であり、より好ましくは0.05〜3.0重量部、さらに好ましくは0.5〜2.5重量部、特に好ましくは1.0〜2.0重量部である。
VII.ポリプロピレン樹脂発泡成形体
VII−1.ポリプロピレン樹脂押出発泡成形体
本発明のポリプロピレン樹脂発泡成形材料は、押出成形、射出成形、熱成形、カレンダー成形、プレス成形などに供することができるが、気泡の保持性に優れ、かつ、適度な溶融張力により延展性がよいために、各種の押出発泡成形に、特に適したものである。どのような押出発泡成形を用いるかは、特に制限されない。
代表的な押出発泡成形として、発泡シート成形、発泡フィルム成形、発泡ブロー成形などによる発泡成形がある。
発泡シート成形の場合、公知の押出機とダイスの組み合わせを用いることができる。本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂または発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物の、発泡シートの製造のための使用もまた、本発明の一態様である。
押出機は、単軸であっても二軸であってもよい。ダイはTダイでもよいし、円形(サーキュラー)であってもよい。発泡フィルム成形の場合も、同様である。発泡フィルム成形の場合には、さらに延伸を行ってもよい。延伸方法は、公知の方法を制限なく用いることができる。例えば、チューブラー法、テンター式延伸法、ロール延伸法、パンタグラフ式バッチ延伸法などを例示することができる。発泡ブロー成形の場合も、公知の方法を用いればよい。具体例として、ダイレクトブロー成形機またはアキューム式ブロー成形機を挙げることができる。
VII−2.ポリプロピレン樹脂積層発泡成形体
ポリプロピレン樹脂発泡積層体を製造する際には、積層発泡成形体とすることもできる。具体的には、本発明のポリプロピレン樹脂組成物または成形材料を用いる発泡層と、熱可塑性樹脂組成物とからなる非発泡層とを、共押出成形すればよい。例えば、ポリプロピレン樹脂積層発泡成形体は、ポリプロピレン樹脂発泡成形体からなる層と、熱可塑性樹脂組成物からなる非発泡層とを、共押出して得られる。この際、複数の押出機を用いたフィードブロックやマルチダイなどによる公知の共押出方法を用いることができる。
ポリプロピレン樹脂組成物を発泡層に用いるポリプロピレン樹脂積層発泡成形体に用いられる非発泡層は、発泡層のいずれの面に設けられていてもよく、また、発泡層を非発泡層の間に存在させた構成(サンドイッチ構造)とすることもできる。
ポリプロピレン樹脂積層発泡成形体がシート状であるとき、シートの厚みは、特に限定されないが、0.3mm〜10mm程度が好ましい。さらに好ましくは0.5mm〜5mmである。また、ポリプロピレン樹脂積層発泡シートにおける非発泡層の厚さは、発泡層の気泡の成長を妨げないように、得られるポリプロピレン樹脂積層発泡成形体の全厚みの1〜50%、より好ましくは5〜20%になるように形成することが好ましい。
非発泡層が設けられたポリプロピレン樹脂積層発泡成形体は、強度において優れたものとなり、少なくとも該発泡層の外側に、非発泡層が設けられることにより、表面平滑性や外観においても、優れたものとなる。さらに、非発泡層に機能性の熱可塑性樹脂を使用することにより、抗菌性、ソフト感、耐受傷性などの付加的機能をポリプロピレン樹脂積層発泡成形体に兼備させることが容易にできる点からも、好ましい。
非発泡層に用いられる熱可塑性樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂としては、本発明の効果を阻害しない範囲で、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィンコポリマー、ポリ−4−メチル−ペンテン−1などのポリオレフィン、エチレン−プロピレンエラストマーなどのオレフィン系エラストマー、またはこれらと共重合可能な他の単量体、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルなどの共重合体および混合物などを選択することができる。
中でも、リサイクル性をより高めつつ、接着性、耐熱性、耐油性、剛性などを確保する点から、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィンコポリマーが好適である。プロピレン−α−オレフィンコポリマーとしては、プロピレン重合体とエチレン−プロピレンランダム共重合体を複数または単槽の重合槽を使用して、多段階重合して得られた、プロピレン系ブロック共重合体を含む。
これらのうち、プロピレン系ブロック共重合体は、剛性と耐衝撃性のバランスに優れるため、より好ましく、プロピレン系ブロック共重合体(Y)が満たす要件を満たすプロピレン系ブロック共重合体(ただし、(Y)と同一であってもよいし、異なってもよい)を含むポリプロピレン樹脂組成物を非発泡表面層に用いた場合には、得られたシートは、表面外観が良く、かつ、熱成形時のセルの保持性が高いといった特徴を有するため好適である。この際、非発泡表面層に用いるポリプロピレン樹脂組成物中のプロピレン系ブロック共重合体の含有率は、0.1〜100wt%であることが好ましい。
また、特に熱成形体として用いる場合に、成形体の剛性は、非常に重要である。剛性を向上させるためには、表面層に非発泡層を設け、非発泡層に無機充填剤を配合することが好ましい。非発泡層に用いられる熱可塑性樹脂組成物においては、熱可塑性樹脂100重量部に対し、無機充填剤50重量部以下を配合することが好ましい。50重量部以下であると、ダイス出口でのメヤニ発生を防止しシートの外観が良好になりやすい。無機充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、ハイドロタルサイト、ゼオライト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどが例示できる。
VII−3.ポリプロピレン樹脂発泡成形シート
本発明においては、ポリプロピレン樹脂発泡成形体の形状や成形方法を制限するものではないが、好ましい形状は、シート状である。発泡シートの厚みは、0.3mm〜10mm程度が好ましい。より好ましくは0.5mm〜5mmである。ポリプロピレン樹脂発泡成形体は、熱成形により二次加工され、各種容器などを中心に広く産業上に用いられている。そして、ポリプロピレン樹脂発泡成形体は、軽量であることを利点に、各種用途での利用が広がっている。
ここでポリプロピレン樹脂発泡成形シートは、成形体中に多くの気泡(セル)を含んでいるため、セルが粗かったり不揃いであったりすると、これらがシート表面に現れ、表面外観を悪化させ、商品価値が低下してしまう。さらに、熱成形を行う際には、金型を転写するために十分に加熱して行う必要があるが、発泡成形体においては、加熱時にセルも膨張する。その結果、発泡セルが粗いと、表面が悪化しやすく、また、不揃いであると成形体、特にシートが加熱中に破れてしまうといった問題がある。これらの問題を解決するには、独立気泡率が高く、緻密でサイズの揃った発泡セルを形成することが必要であると考えられるが、本発明の発泡成形用ポロプロピレン樹脂または発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物を用いることで、これらが実現し、発泡シートとしては、外観に優れ、熱成形適性が高いシートを得ることができる。
本発明のポリプロピレン樹脂発泡成形体の発泡セルの状態については、セルの大きさが小さく緻密で、大きさが揃っていて、独立性の高い状態が好ましい。具体的には、平均気泡径が500μm以下であることが好ましく、400μm以下がより好ましく、300μm以下がさらに好ましい。平均気泡径が500μm以下であれば、ポリプロピレン樹脂発泡成形体、例えばシート状の成形体を熱成形する際に、熱成形体に対し、穴開きなどの外観不良が発生しにくくなる。なお、平均気泡径は実施例に記載の方法により光学顕微鏡を用いて求めた値とする。
また、セルの独立性に関しては、連続気泡率で判断することができる。連続気泡率は、30%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下である。連続気泡率が30%以下であれば、熱成形する際に、発泡成形体内の発泡セルの膨張が生じ、熱成形体の厚みが増加しやすくなるため、好ましい。また、熱成形体の断熱性能の向上にも繋がる。
VIII.成形品
本発明の成形品には、上記のポリプロピレン樹脂発泡成形体もしくはポリプロピレン樹脂積層発泡成形体を熱成形したもの、または、ポリプロピレン樹脂発泡成形材料を射出成形、熱成形、ブロー成形もしくはビーズ発泡成形のいずれかの方法により成形して得られる成形品が含まれる。
熱成形法は、特に制限されるものではなく、例えば、プラグ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、プラグアシスト成形、プラグアシスト・リバースドロー成形、エアスリップ成形、スナップバック成形、リバースドロー成形、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形などの方法を例示することができる。上記VII.およびVIII.の項にて説明した各種方法による、本発明のポリプロピレン樹脂発泡成形材料を用いた、ポリプロピレン樹脂発泡成形体、ポリプロピレン樹脂積層発泡成形体又は成形品の製造方法もまた、本発明の一態様である。
VIIII.用途
本発明のポリプロピレン樹脂発泡成形体は、均一微細な発泡セルを有し、外観、熱成形性、耐衝撃性、軽量性、剛性、耐熱性、断熱性、耐油性などに優れているため、トレー、皿、カップなどの食品容器や自動車ドアトリム、自動車トランクマットなどの車両内装材、包装、文具、建材などに好適に利用できる。
また、本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂および発泡成形用ポリプロピレン組成物は、繰り返しの熱履歴や剪断履歴に対して溶融張力などの粘弾性物性の変化率が小さいため、発泡成形体やその成形品を製造する過程で生じた端材を、再度溶融して利用することができ、経済効果に優れている。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の記載において、実施例1〜3、8、9以外の実施例は、参考例として扱われるものである。
1.諸物性の測定方法
(i)MFR
JIS K7210:1999のA法、条件M(230℃、2.16kg)に準拠して測定した。単位はg/10分である。
(ii)溶融張力(MT)
東洋精機製作所製キャピログラフを用いて、以下の条件で測定した。
・キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm
・シリンダー径:9.55mm
・ピストン押出速度:20mm/分
・引き取り速度:4.0m/分
・温度:230℃
MTが極めて高い場合には、引き取り速度4.0m/分では、樹脂が破断してしまう場合があり、このような場合には、引き取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度における張力をMTとする。単位はグラムである。
(iii)25℃のキシレン可溶な成分の割合(CXS)
以下の方法を用いてCXSの値を得た。
2gの試料を300mLのp−キシレン(0.5mg/mLのBHTを含む)に130℃で溶解させ溶液とした後、25℃で12時間放置する。その後、析出したポリマーを濾別し、濾液からp−キシレンを蒸発させ、さらに100℃で12時間減圧乾燥し25℃キシレン可溶成分を回収する。この回収成分の重量の仕込み試料重量に対する割合[重量%]をCXSと定義する。
(iv)分岐指数g’
示差屈折計(RI)、粘度検出器(Viscometer)、光散乱検出器(MALLS)を検出器として備えたGPCを用いて、絶対分子量Mabsが100万となる時の分岐指数g’を求めた。具体的な測定方法、解析方法、算出方法は、上述の通りである。
(v)歪硬化度(λmax
Rheometorics社製Aresを用いて伸張粘度の測定を行い、その結果から歪硬化度(λmax)を求めた。具体的な測定方法、算出方法は、上述の通りである。
(vi)アイソタクチックトライアッド分率(mm分率)、長鎖分岐の有無
日本電子社製、GSX−400、FT−NMRを用い、上述の通り、特開平2009−275207号公報の段落[0025]〜[0065]に記載の方法で測定した。mm分率の単位は%である。
(vii)融点:
示差操作熱量計(DSC)を用い、一旦200℃まで温度を上げて熱履歴を消去した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度を融点とした。
(viii)分子量分布Mw/MnおよびMz/Mn:
以下のGPC測定により求めた。
・装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
・検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
・カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本直列)
・移動相溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
・測定温度:140℃
・流速:1.0mL/min
・注入量:0.2mL
・試料の調製:試料はODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
GPC測定で得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレン(PS)による検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
なお、分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
(ix)プロピレン(共)重合体(Y−1)とプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)の比率、Y−2中のエチレン含有率
明細書中に記載のクロス分別法とFT−IR法の組み合わせの手法により決定した。
(x)プロピレン系ブロック共重合体(Y−2)の固有粘度
上記(iii)に記載の方法により得られたプロピレン系ブロック共重合体(Y)のCXS成分を用いて、固有粘度の測定を行った。固有粘度の測定はウベローデ型毛管粘度計を用い、温度135℃、デカリン溶媒の条件で行った。
2.使用材料
2−1.プロピレン単独重合体(X)
下記の製造例1〜3で得られたポリプロピレン:X1〜X3、およびBorealis社製ホモポリプロピレンDaployTMWB140HMSをプロピレン単独重合体(X)として使用した。
[製造例1:ポリプロピレン単独重合体(X1)の製造]
<触媒成分[A−1]の合成>
ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムの合成:(成分[A−1](錯体1)の合成):
(i)4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの合成
500mLのガラス製反応容器に、4−i−プロピルフェニルボロン酸15g(91mmol)、ジメトキシエタン(DME)200mLを加え、炭酸セシウム90g(0.28mol)と水100mLの溶液を加え、4−ブロモインデン13g(67mmol)、テトラキストリフェニルホスフィノパラジウム5g(4mmol)を順に加え、80℃で6時間加熱した。
放冷後、反応液を蒸留水500mL中に注ぎ、分液ロートに移しジイソプロピルエーテルで抽出した。エーテル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの無色液体15.4g(収率99%)を得た。
(ii)2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの合成
500mLのガラス製反応容器に4−(4−i−プロピルフェニル)インデン15.4g(67mmol)、蒸留水7.2mL、DMSO 200mLを加え、ここにN−ブロモスクシンイミド17g(93mmol)を徐々に加えた。そのまま室温で2時間撹拌し、反応液を氷水500mL中に注ぎ入れ、トルエン100mLで3回抽出した。トルエン層を飽和食塩水で洗浄し、p−トルエンスルホン酸2g(11mmol)を加え、水分を除去しながら3時間加熱還流した。反応液を放冷後、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの黄色液体19.8g(収率96%)を得た。
(iii)2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの合成
500mLのガラス製反応容器に、2−メチルフラン6.7g(82mmol)、DME100mLを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに1.59mol/Lのn−ブチルリチウム−n−ヘキサン溶液51mL(81mmol)を滴下し、そのまま3時間撹拌した。−70℃に冷却し、そこにトリイソプロピルボレート20mL(87mmol)とDME50mLの溶液を滴下した。滴下後、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
反応液に蒸留水50mLを加え加水分解した後、炭酸カリウム223gと水100mLの溶液、2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデン19.8g(63mmol)を順に加え、80℃で加熱し、低沸分を除去しながら3時間反応させた。
放冷後、反応液を蒸留水300mL中に注ぎ、分液ロートに移しジイソプロピルエーテルで3回抽出し、エーテル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、2−(2−メチル−5−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの無色液体19.6g(収率99%)を得た。
(iv)ジメチルビス(2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シランの合成
500mLのガラス製反応容器に、2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデン9.1g(29mmol)、THF200mLを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに、1.66mol/Lのn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液17mL(28mmol)を滴下し、そのまま3時間撹拌した。−70℃に冷却し、1−メチルイミダゾール0.1mL(2mmol)、ジメチルジクロロシラン1.8g(14mmol)を順に加え、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
反応液に蒸留水を加え、分液ロートに移し食塩水で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウムを加え反応液を乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、ジメチルビス(2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シランの淡黄色固体8.6g(収率88%)を得た。
(v)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムの合成
500mLのガラス製反応容器に、ジメチルビス(2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シラン8.6g(13mmol)、ジエチルエーテル300mLを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに1.66mol/Lのn−ブチルリチウム−n−ヘキサン溶液15mL(25mmol)を滴下し、3時間撹拌した。反応液の溶媒を減圧で留去し、トルエン400mL、ジエチルエーテル40mLを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。そこに、四塩化ハフニウム4.0g(13mmol)を加えた。その後、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
溶媒を減圧留去し、ジクロロメタン−ヘキサンで再結晶を行い、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)}]ハフニウムのラセミ体を黄色結晶として7.6g(収率65%)得た。
得られたラセミ体についてのH−NMRによる同定値を以下に記す。
H−NMR(C)同定結果
ラセミ体:δ0.95(s,6H),δ1.10(d,12H),δ2.08(s,6H),δ2.67(m,2H),δ5.80(d,2H),δ6.37(d,2H),δ6.74(dd,2H),δ7.07(d,2H),δ7.13(d,4H),δ7.28(s,2H),δ7.30(d,2H),δ7.83(d,4H)。
<触媒成分[A−2]の合成>
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウムの合成:(成分[A−1](錯体2)の合成):
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウムの合成は、特開平11−240909号公報の実施例1に記載の方法と同様にして、実施した。
<触媒成分(B)の合成>
(i)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
セパラブルフラスコ中で蒸留水2,264gに96%硫酸(668g)を加えその後、層状珪酸塩としてモンモリロナイト(水沢化学社製ベンクレイSL:平均粒径19μm)400gを加えた。このスラリーを90℃で210分加熱した。この反応スラリーに蒸留水4,000gを加えた後に、ろ過したところ、ケーキ状固体810gを得た。
次に、セパラブルフラスコ中に、硫酸リチウム432g、蒸留水1,924gを加え硫酸リチウム水溶液としたところへ、上記ケーキ状固体を全量投入した。このスラリーを室温で120分反応させた。このスラリーに蒸留水4Lを加えた後にろ過し、さらに蒸留水でpH5〜6まで洗浄し、ろ過を行ったところ、ケーキ状固体760gを得た。
得られた固体を窒素気流下100℃で一昼夜予備乾燥後、直径53μm以上の粗大粒子を除去し、さらに200℃、2時間、減圧乾燥することにより、化学処理スメクタイト220gを得た。
この化学処理スメクタイトの組成は、Al:6.45重量%、Si:38.30重量%、Mg:0.98重量%、Fe:1.88重量%、Li:0.16重量%であり、Al/Si=0.175[mol/mol]であった。
<予備重合触媒1の調製>
i)触媒調製および予備重合
3つ口フラスコ(容積1L)中に、上記の触媒成分(B)で得られた化学処理スメクタイト20gを入れ、ヘプタン(132mL)を加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム(25mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を68.0mL)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで残液率が1/100になるまで洗浄し、全容量を100mLとなるようにヘプタンを加えた。
また、別のフラスコ(容積200mL)中で、上記の触媒成分[A−1]の合成で得られたrac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウム(180μmol)をトルエン(42mL)に溶解し(溶液1)、さらに、別のフラスコ(容積200mL)中で、上記の触媒成分[A−2]の合成で得られたrac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム(120μmol)をトルエン(18mL)に溶解した(溶液2)。
上記の化学処理スメクタイトが入った1Lフラスコにトリイソブチルアルミニウム(0.84mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を1.2mL)を加えた後、上記溶液1を加えて20分間室温で撹拌した。その後さらにトリイソブチルアルミニウム(0.36mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を0.50mL)を加えた後、上記溶液2を加えて、1時間室温で攪拌した。
その後、ヘプタンを338mL追加し、このスラリーを、1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にしたのち、プロピレンを10g/時の速度でフィードし、4時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、1時間残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、残った部分に、トリイソブチルアルミニウム(6mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を17.0mL)を加えて5分攪拌した。
この固体を1時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒60.0gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.00g/g−触媒であった。
以下、このものを「予備重合触媒1」という。
<重合>
内容積200リットルの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、十分に脱水した液化プロピレン40kgを導入した。
これに水素7.2L(0.64g)、トリイソブチルアルミニウム(0.12mol:濃度50g/Lのヘプタン溶液を0.47L)を加えた後、内温を70℃まで昇温した。次いで予備重合触媒1を2.4g(予備重合ポリマーを除いた重量で)、アルゴンで圧入して重合を開始させ、内部温度を70℃に維持した。
2時間経過後に、エタノールを100mL圧入し、未反応のプロピレンをパージし、オートクレーブ内を窒素置換することにより重合を停止した。
得られたポリマーを90℃窒素気流下で1時間乾燥し、17.8kgの重合体PP−1を得た。触媒活性は7.4kg−PP/g−触媒であった。
<造粒>
上記の重合で得られたポリプロピレン重合体PP−1の100重量部に対し、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート(商品名:Cyanox1790、日本サイテックインダストリーズ株式会社製)0.05重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名:IRGAFOS 168、BASFジャパン株式会社製)0.10重量部、ポリ{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}(商品名:Chimassorb944、BASFジャパン株式会社製)0.03重量部、ステアリン酸アミド0.09重量部、を配合し充分に撹拌した後、2軸押出機(テクノベル社製KZW25TW−45MG−NH)を用いて220℃で溶融混練し、押出されたストランドを切断しペレット化し、ポリプロピレン単独重合体(X1)を得た。
得られたポリプロピレン単独重合体(X1)を分析した結果を表1に示す。13C−NMR測定の結果、このポリプロピレン単独重合体(X1)に長鎖分岐があることを確認した。また分岐指数g’が0.88であり、1よりも小さな値であることも、このポリプロピレン単独重合体(X1)に長鎖分岐が存在することを示している。
[製造例2:ポリプロピレン単独重合体(X2)の製造]
<重合>
水素量を7.6L(0.68g)とした以外は、上記製造例1と同様の方法で重合操作を行ない、18.6kgの重合体PP−2を得た。触媒活性は7.8kg−PP/g−触媒であった。
<造粒>
上記の重合で得られた重合体PP−2を用いて製造例1と同様にして造粒を行ない、ポリプロピレン単独重合体(X2)を得た。
得られたポリプロピレン単独重合体(X2)を分析した結果を表1に示す。
[製造例3:ポリプロピレン単独重合体(X3)の製造]
<重合>
水素量を9.9L(0.88g)とした以外は、上記製造例1と同様の方法で重合操作を行ない、23.4kgの重合体PP−3を得た。触媒活性は9.7kg−PP/g−触媒であった。
<造粒>
上記の重合で得られた重合体PP−3を用いて製造例1と同様にして造粒を行ない、ポリプロピレン単独重合体(X3)を得た。
得られたポリプロピレン単独重合体(X3)を分析した結果を表1に示す。
2−2.プロピレン系ブロック共重合体(Y)
[製造例4:プロピレン系ブロック共重合体(Y1)の製造]
1.固体触媒成分の製造
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したトルエンを2L導入した。ここに、室温で、ジエトキシマグネシウムMg(OEt)を200g、四塩化チタンを1L添加した。温度を90℃に上げて、フタル酸−n−ブチルを50mL導入した。その後、温度を110℃に上げて3時間反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。
次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温で四塩化チタンを1L添加し、温度を110℃に上げて2時間反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。さらに、精製したn−ヘプタンを用いて、トルエンをn−ヘプタンで置換し、固体触媒成分のスラリーを得た。
このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体触媒成分のチタン含有量は2.7重量%、マグネシウム含有量は18重量%であった。また、固体触媒成分の平均粒径は33μmであった。
次に、攪拌装置を備えた容量20Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、上記固体触媒成分のスラリーを固体触媒成分として100g導入した。精製したn−ヘプタンを導入して、固体触媒成分の濃度が25g/Lとなるように調整した。四塩化珪素SiClを50mL加え、90℃で1時間反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。
その後、精製したn−ヘプタンを導入して液レベルを4Lに調整した。ここに、ジメチルジビニルシランを30mL、t−ブチルメチルジメトキシシラン(t−C)(CH)Si(OCHを30mL、トリエチルアルミニウムEtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして80g添加し、40℃で2時間反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、得られたスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分には、チタンが1.2重量%、(t−C)(CH)Si(OCHが8.8重量%含まれていた。
上記で得られた固体成分を用いて、以下の手順により予備重合を行った。
上記のスラリーに精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分の濃度が20g/Lとなるように調整した。スラリーを10℃に冷却した後、トリエチルアルミニウムEtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして10g添加し、280gのプロピレンを4時間かけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、さらに30分間反応を継続した。
次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行って固体触媒成分(触媒1)を得た。この固体触媒成分(触媒1)は、固体成分1gあたり2.5gのポリプロピレンを含んでいた。分析したところ、固体触媒成分(触媒1)のポリプロピレンを除いた部分には、チタンが1.0重量%、(t−C)(CH)Si(OCHが8.2重量%含まれていた。
2.プロピレン系ブロック共重合体の製造
内容積2000リットルの流動床式反応器を二個連結してなる連続反応装置を用いて、重合を行った。
まず、第一反応器で、重合温65℃、プロピレン分圧1.8MPa(絶対圧)、分子量制御剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.015となるように、連続的に供給するとともに、トリエチルアルミニウムを4.0g/hrで、上記の触媒1をモノマーの重合速度が16kg/hrになるように供給した。第一反応器で重合したパウダー(結晶性プロピレン重合体)を、反応器内のパウダー保有量が40kgとなるように16kg/hrの抜出し速度で連続的に抜き出し、第二反応器に連続的に移送した(第一段目重合工程)。
次に、第二反応器で、重合温度70℃で、モノマー圧力1.5MPaになるように、プロピレンとエチレンをエチレン/プロピレンのモル比で0.29となるように連続的に供給し、さらに、分子量制御剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.0008となるように、連続的に供給すると共に、エチルアルコールを、第一反応器に供給するトリエチルアルミニウムに対して1.17倍モルになるように、供給した。
第二反応器で重合したパウダーは、反応器内のパウダー保有量を60kgとなるように連続的にベッセルに抜き出し、水分を含んだ窒素ガスを供給して反応を停止させ、プロピレン−エチレンブロック共重合体を得た(第二段目重合工程)。
得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体のパウダー100重量部に対して、酸化防止剤として「IRGASTAB FS 301 FF」(BASF社製)0.2重量部、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−ターシャルブチルベンゾイル)イソシアネート(ソンウォン社製、商品名:SONGNOX1790)0.1重量部、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(ADEKA社製、商品名:アデカスタブPEP−36)0.05重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウム0.03重量部を添加し、スーパーミキサー(株式会社カワタ製)で5分間混合した。
得られたブレンド物を用いて、以下の装置、条件下で水中カット造粒法により、プロピレン系ブロック共重合体(Y1)を得た。
・2軸押出機(テクノベル社製KZW25TW−45MG−NH)
・口径30mm、L/D=25(アイ・ケー・ジー社製PMS30−25)
・スクリュ:フルフライトCR2.0、Feed部溝深さ4mm+ダルメージ
・スクリュ回転数:60rpm
・設定温度:ホッパー下水冷、C1〜C4各220、200、200、200℃
・ダイ:ストランドダイ
・造粒体の処理レート:200kg/hr
・冷却水温度:43℃
・スクリーンメッシュ:BMT140ZZ(石川金網(株)より入手、特殊綾畳織)
[製造例5:プロピレン系ブロック共重合体(Y2)の製造]
1.固体触媒成分の製造
製造例4の固体触媒成分製造法の、(t−C)(CH)Si(OCHの代わりに、(i−Pr)Si(OCHを用いた以外は、製造例4に準じて実施した。
2.プロピレン系ブロック共重合体の製造
上記で調製した触媒を用いて、上記製造例4のプロピレン・エチレンブロック共重合体の製造手順に従って、第1段目重合における水素/プロピレンのモル比を0.016に変更し、また、第2段重合における水素/プロピレンのモル比を0.00015に、プロピレンとエチレンをエチレン/プロピレンのモル比で0.26となるように、エチルアルコールの投入量を第一反応器に供給するトリエチルアルミニウムに対して1.19倍モルとして、プロピレン・エチレンブロック共重合体を製造し、製造例4と同様の造粒を行うことで、プロピレン系ブロック共重合体(Y2)を得た。
Y1およびY2の物性は、以下の表2に示すとおりである。
2−3.ポリプロピレン樹脂組成物[製造例6:ポリプロピレン樹脂組成物(A)の製造]
ポリプロピレン単独重合体(X1)とプロピレン系ブロック共重合体(Y1)を70:30(重量比)でブレンドし充分に撹拌した後、単軸押出機を用いて以下の条件で溶融混練し、押し出したストランドをファンカッターで切断してペレット化しポリプロピレン樹脂組成物(A)を得た。
・押出機:口径30mm、L/D=25(IKG社製PMS30−25)
・スクリュ:フルフライト CR=2.0、フィード部溝深さ4mm+ダルメージ
・スクリュ回転数:60rpm
・設定温度:ホッパー下水冷、C1/C2/C3/C4=220/200/200/200℃
・ダイ:1mmφストランドダイ
[製造例7:ポリプロピレン樹脂組成物(B)の製造]
ポリプロピレン単独重合体を(X2)とした以外は製造例6と同様の方法でポリプロピレン樹脂組成物(B)を得た。
[製造例8:ポリプロピレン樹脂組成物(C)の製造]
ポリプロピレン単独重合体を(X3)とした以外は製造例6と同様の方法でポリプロピレン樹脂組成物(C)を得た。
[製造例9:ポリプロピレン樹脂組成物(D)の製造]
プロピレン−エチレンブロック共重合体を(Y2)とした以外は製造例8と同様の方法でポリプロピレン樹脂組成物(D)を得た。
ポリプロピレン組成物(A)〜(D)の物性は、以下の表3に示すとおりである。
<実施例・比較例>
各実施例、比較例における発泡シートの特性評価は以下の方法で実施した。
(1)密度
実施例および比較例により得られたポリプロピレン系(多層)発泡シートから試験片を切出し、試験片重量(g)を、該試験片の外形寸法から求められる体積(cm)で割って求めた。JIS K7222に準じて測定し、密度を求めた。
(2)発泡倍率
ポリプロピレン樹脂の密度0.9g/cmを上記の発泡シート試験片の密度で割った値を発泡倍率とした。
(3)シートの外観評価
各実施例および比較例で得られたポリプロピレン樹脂発泡シートの外観評価は、以下の基準により評価した。
◎:厚み斑が非常に少なく平滑。表面に局所な凹凸は無く美麗。気泡形状が微細。
○:厚み斑が少ない。表面に局所的な凹凸は殆どない。気泡形状が均一。
△:厚み斑がある。気泡形状は均一だが局所的な凹凸が見られる。
×:厚み斑が多い。気泡の合一が見られ、局所的な凹部(ヒケ)がある。
(4)発泡層気泡径
実施例および比較例において得られたポリプロピレン系樹脂発泡シートから、25mm角のサンプルを切り出した。実体顕微鏡(ニコン製:SMZ−1000−2型)を用いて発泡層断面を拡大投影し、断面中の気泡数と気泡径より、押出方向断面およびその垂直方向の断面の気泡径をそれぞれ算出、その平均値を発泡層の平均気泡径とした。
(5)連続気泡率
実施例および比較例により得られたポリプロピレン系(多層)発泡シートから試験片を切出し、エアピクノメター(東京サイエンス(株)製)を用いて、ASTM D2856に記載の方法に準じて測定した。
溶融張力、メルトフローレートの測定については、先に述べたとおりである。
[実施例1]
プロピレン単独重合体(X1)を単軸押出機により溶融して押し出し、押し出した溶融ストランドをダイ直近に設置した水温10〜15℃の冷水槽で充分に固化させた後にエアーで充分に水切りを行いながら引取機で引き取った。ストランド径が約1mmφとなるように引取機の速度を調整した後、ファンカッターでカットしてペレット化した。ストランドのカット長はストランド径の1〜2倍に収まるようにした。押出条件の詳細は以下の通りである。
・押出機:口径30mm、L/D=25(IKG社製PMS30−25)
・スクリュ:フルフライト CR=2.0、フィード部溝深さ4mm+ダルメージ
・スクリュ回転数:30rpm
・設定温度:ホッパー下水冷、C1/C2/C3/アダプター/ダイ=230/230/230/230/230℃
・ダイ:1mmφストランドダイ
得られたペレットは100℃に設定したオーブンで2時間乾燥し、繰り返し押出回数=1回のペレットX1−R1とした。
その溶融張力(MT1)およびメルトフローレート(MFR1)を先述の方法で測定したところ、それぞれ13.0(g)、2.1(g/10分)であり、元のペレット(繰り返し押出回数=0回)の溶融張力(MT0)=23.1(g)、メルトフローレート(MFR0)=1.6(g/10分)との比から、MT維持率(MT1/MT0)=0.56、MFR変化率(MFR1/MFR0)=1.34の値を得た。
同様の押出造粒操作を繰り返して、繰り返し押出回数=2回のペレットX1−R2とした。その溶融張力(MT2)は7.2(g)であり、MT維持率(MT2/MT0)=0.31の値を得た。
さらに同様の押出造粒操作を繰り返して、繰り返し押出回数=3回のペレットX1−R3を得た。その溶融張力(MT3)は5.1(g)であり、MT維持率(MT3/MT0)=0.22の値を得た。結果を表4に示す。
[実施例2]
プロピレン単独重合体をX2とした以外は、実施例1と同様の方法で繰り返し押出回数=1回、2回、3回のペレット、X2−R、X2−R2、X2−R3を得た。MT、MFR、MT維持率、MFR変化率の結果を表4に示す。
[実施例3]
プロピレン単独重合体をX3とした以外は、実施例1と同様の方法で繰り返し押出回数=1回、2回、3回のペレット、X3−R1、X3−R2、X3−R3を得た。MT、MFR、MT維持率、MFR変化率の結果を表4に示す。
[実施例4]
プロピレン単独重合体X1とプロピレン−エチレン共重合体Y1の70/30(重量比)からなるポリプロピレン樹脂組成物Aを用いた以外は、実施例1と同様の方法で繰り返し押出回数=1回、2回、3回のペレット、A−R1、A−R2、A−R3を得た。MT、MFR、MT維持率、MFR変化率の結果を表4に示す。
[実施例5]
プロピレン単独重合体X2とプロピレン−エチレン共重合体Y1の70/30(重量比)からなるポリプロピレン樹脂組成物Bを用いた以外は、実施例1と同様の方法で繰り返し押出回数=1回、2回、3回のペレット、B−R、B−R、B−Rを得た。MT、MFR、MT維持率、MFR変化率の結果を表4に示す。
[実施例6]
プロピレン単独重合体X3とプロピレン−エチレン共重合体Y1の70/30(重量比)からなるポリプロピレン樹脂組成物Cを用いた以外は、実施例1と同様の方法で繰り返し押出回数=1回、2回、3回のペレット、C−R、C−R、C−Rを得た。MT、MFR、MT維持率、MFR変化率の結果を表4に示す。
[実施例7]
プロピレン単独重合体X3とプロピレン−エチレン共重合体Y2の70/30(重量比)からなるポリプロピレン樹脂組成物Dを用いた以外は、実施例1と同様の方法で繰り返し押出回数=1回、2回、3回のペレット、D−R、D−R、D−Rを得た。MT、MFR、MT維持率、MFR変化率の結果を表4に示す。
[比較例1]
プロピレン単独重合体としてX4を用いた以外は、実施例1と同様の方法で繰り返し押出回数=1回、2回、3回のペレット、X4−R、X4−R、X4−Rを得た。MT、MFR、MT維持率、MFR変化率の結果を表4に示す。MTは繰り返し押出回数1回で大きく低下し、各MT維持率も低い値となった。MFRも繰り返し押出回数1回で大きく上昇し、MT変化率は大きな値となった。
発泡実施例・比較例(サーキュラー発泡)
[実施例8]
プロピレン単独重合体(X2)を100重量部と、気泡調整剤として化学発泡剤(商品名:ポリスレンEE275F、永和化成製)0.5重量部をリボンブレンダーにより均一に攪拌混合し、スクリュ径がそれぞれ40mmΦ、50mmΦのタンデム型押出機に投入した。一段目押出機のシリンダー設定温度を230℃として樹脂を加熱溶融して可塑化するとともに、気泡調整剤を分解させながら、該混合物100重量部に対して、0.88重量部のブタン(イソブタン/ノルマルブタン=60/40wt%)を高圧ポンプで注入混練して発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物とした後、2段目押出機の設定温度を180℃として速やかに冷却を実施し、押出機先端に取付けられたサーキュラーダイ(設定温度175℃、口径50mmφ、ギャップ=0.75mm)よりそのプロピレン樹脂組成物を大気中に押し出して発泡させた。なお、1段目押出機の回転数は90rpm、2段目押出機の回転数は6rpmとした。
ダイから押し出された該発泡体を水温10℃の通水をした外径120mmφの冷却マンドレルに通して内面を冷却すると同時に、ダイ直近に取りつけたエアリングから空気を吹き付けて外面を冷却した。その後、ロータリーカッターにより切り開いてシートとした後、引取ロールの速度で厚みを調整し、ピンチロールおよび巻取ロールによってシートの巻取を行った。得られた発泡シートは、密度が0.18g/cm、平均気泡径80μm、連続気泡率が7%で、コルゲートの発生は少なく、外観良好なものであった。得られた発泡シートの評価結果を表5に示す。
[実施例9]
プロピレン単独重合体をX2−R(X2を1回繰り返し押出して得られたペレット)とした以外は実施例8と同様の方法で発泡シートを製造した。得られた発泡シートは、密度が0.19g/cm、平均気泡径100μm、連続気泡率が15%で、コルゲートの発生は少なく、外観良好なものであった。得られた発泡シートの評価結果を表5に示す。
[比較例2]
プロピレン単独重合体をX4、2段目押出機の設定温度を175℃とした以外は、実施例8と同様の方法で発泡シートを製造した。得られた発泡シートは、密度が0.18g/cm、平均気泡径80μm、連続気泡率が10%で、コルゲートの発生はなかったが、シート表面に局所的な凹凸が見られた。得られた発泡シートの評価結果を表5に示す。
[比較例3]
プロピレン単独重合体をX4−R(X4を1回繰り返し押出して得られたペレット)とした以外は、比較例2と同様の方法で発泡シートを製造した。得られた発泡シートは、密度が0.25g/cm、平均気泡径70μm、連続気泡率が35%で、ダイ内発泡によると思われる表面荒れが見られた。得られた発泡シートの評価結果を表5に示す。
表5から明らかなように、本発明のMT維持率を有するポリプロピレン樹脂組成物は、押出溶融操作を経た後でも、高い発泡倍率および低い連続気泡率を維持しており、発泡成形用樹脂として良好な性質を維持していることが示された。これにより、本発明のポリプロピレン樹脂は、優れた発泡成形性を有し、かつ繰り返し成形に適した樹脂であることが示された。

Claims (14)

  1. 230℃における溶融張力MTg以上であり、メルトフローレート(230℃、2.16kg)が1.1g/10分以上であり、かつ、230℃での押出造粒操作を1回行った後の230℃における溶融張力MTが、MTを1としたときに0.3以上であるプロピレン単独重合体(X)からなる、発泡成形用ポリプロピレン樹脂。
  2. 230℃での押出造粒操作を2回行った後の230℃における溶融張力MTが、MTを1としたときに0.2以上であるプロピレン単独重合体(X)からなる、請求項1に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂。
  3. 230℃での押出造粒操作を3回行った後の230℃における溶融張力MTが、MTを1としたときに0.1以上であるプロピレン単独重合体(X)からなる、請求項2に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂。
  4. プロピレン単独重合体(X)のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)が1.1〜15g/10分の範囲であり、かつ、230℃での押出造粒操作を1回行った後のプロピレン単独重合体のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)が、MFRを1としたときに2以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂。
  5. プロピレン単独重合体(X)が下記の特性(X−i)〜(X−iv)を満たす請求項1〜4のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂。
    特性(X−i)長鎖分岐を有する。
    特性(X−ii)230℃における溶融張力が〜25gである。
    特性(X−iii)メルトフローレート(230℃、2.16kg)が1.1〜15g/10分である。
    特性(X−iv)25℃でキシレン可溶成分量(CXS)がプロピレン単独重合体(X)全量に対し5wt%未満である。
  6. 25℃でキシレン可溶成分量(CXS)がプロピレン単独重合体(X)全量に対し1wt%未満である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂。
  7. 請求項1〜のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂に対し、発泡剤を0.05〜6.0重量部含有する、ポリプロピレン樹脂発泡成形材料。
  8. 請求項に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形材料を押出成形してなる、ポリプロピレン樹脂発泡成形体。
  9. 請求項に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形体からなる発泡層と、熱可塑性樹脂組成物からなる非発泡層とを、共押出してなるポリプロピレン樹脂積層発泡成形体。
  10. 前記熱可塑性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂100重量部に対し、50重量部以下の無機充填剤を含む、請求項に記載のポリプロピレン樹脂積層発泡成形体。
  11. シート状である、請求項8〜10のいずれか一項に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形体。
  12. 請求項8〜10のいずれか一項に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形体または積層発泡成形体を、熱成形してなる成形品。
  13. 請求項に記載のポリプロピレン樹脂発泡成形材料を射出成形、熱成形、ブロー成形またはビーズ発泡成形のいずれかの方法により成形して得られる成形品。
  14. 請求項1〜のいずれか一項に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂の、発泡シートの製造のための使用。
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