JP6232832B2 - 発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物 - Google Patents

発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、発泡成形に好適なポリプロピレン樹脂組成物に関するものであり、詳しくは、独立気泡率が高く、緻密で、サイズの揃った発泡セルを形成することができるポリプロピレン樹脂組成物に関するものであり、更には、その樹脂組成物を用いて製造した発泡シート、並びに、そのシートを熱成型した成形体に関する。
ポリプロピレンの重要な成形加工法の一つに発泡成形がある。押出発泡成形や射出発泡成形で得られた各種の成形体は、断熱性や遮音性、クッション性、エネルギー吸収特性などの優れた特性を有しており、幅広い用途で使用されている。特に近年は、環境問題の観点から、材料の軽量化と環境負荷の低減が重要な開発要素となってきており、原料である樹脂に対しても、発泡特性の更なる向上が望まれている。
一般的に、ポリプロピレンは、線状の分子構造と標準的な分子量分布を持つことから溶融張力が低く、発泡成形を行うことが難しい。その欠点を補うために、ポリプロピレンの溶融張力を向上させる方法として、過去に様々な技術開発がなされてきた。
代表的な方法の1つにラジカルを発生させて長鎖分岐[long chain branch]を導入する方法がある。長鎖分岐とは、主鎖炭素数が数十以上、分子量では数百以上からなる分子鎖による分岐構造を言い、溶融張力を向上させる効果があると考えられている。具体的な方法としては、高エネルギーイオン化放射線を用いる方法(特許文献1参照。)や有機過酸化物を用いる方法(特許文献2参照。)などが開示されている。
しかしながら、高エネルギーイオン化放射線を用いる方法は、放射線を用いるための特殊な設備が必要であり、どうしても製造コストが高くなる。また、高エネルギーイオン化放射線により生成したラジカルが残留するために、黄変などの外観の問題が発生したり、時間の経過と共に物性が変化して、安定しなかったり、といった品質上の問題を抱えている。また、有機過酸化物を用いる方法では、有機過酸化物の分解生成物による汚染、臭気、黄変、といった品質上の問題があり、さらに、有機化酸化物が不安定であるために、製造時の安全性の観点で大きな課題を抱えている。
ポリプロピレンの溶融張力を向上させる他の方法として、極めて分子量の高い成分を導入する方法がある。具体的な方法としては、多段重合により超高分子量成分を製造する方法(特許文献3、4参照。)や予備重合で超高分子量ポリエチレン成分を製造する方法(特許文献5参照。)などが知られている。
しかしながら、この様な方法で製造されたポリプロピレンは、長鎖分岐を有するポリプロピレンと較べて溶融張力が随分と低く、従って、その発泡特性は、満足できるものではなく、適用可能な範囲が限られるといった問題を抱えている。
この様な課題や問題を解決するために、ラジカルを発生させることなく、長鎖分岐を形成する技術の開発が進められてきた(特許文献6〜8参照。)。特定の構造を有するメタロセン触媒を用いてモノマーを重合することにより末端不飽和結合を有するマクロモノマーを製造し、それをプロピレンと共重合することによって、長鎖分岐を形成する技術である。これらの方法によって、ラジカル発生に伴う臭気等の課題を解決することができたが、一方で、長鎖分岐の形成量が少なく、溶融張力が不充分となり、発泡特性が悪かったり、溶融張力を高くできた場合でも、発泡時のセル形成は良好であっても延展性が低いためにシート形成時にセルが破泡したり、シート表面の外観が悪くなったり、あるいは、流動性が低くなって、押出レートを高くすることができず、生産性が悪くなったり、といった問題が発生している。特に、発泡セルの形成と延展時のセル破壊の防止を両立することができていない点が、大きな問題である。
発泡成形に適した樹脂組成物の開発という観点では、特定の添加剤配合を用いる方法(特許文献9参照。)や複数のポリプロピレンをブレンドする方法(特許文献10〜14参照。)が開示されている。
しかしながら、上記特許文献9で開示されている技術は、ヒンダードフェノール、イオウ系酸化防止剤、金属不活性剤を用いることにより、耐金属腐食性を改良するものであり、所謂一般的な発泡特性を改良するものではない。また、上記特許文献10〜14では、種々のポリプロピレンのブレンドを開示しているものの、充分な発泡特性が得られているとは言い難い。特にマクロモノマーを用いて長鎖分岐を導入する際に生じる溶融張力不足、流動性不足、外観不良、といった問題に対しては、何ら改良するものではなく、単に高価な長鎖分岐を有するポリプロピレンを希釈してコストを低下させる程度のものである。
また、発泡体の利用において、発泡セルの形状は、非常に重要である。例え発泡体の発泡倍率が高くても、セルを充分に保持できず連続気泡になっていると、熱成型性等の2次加工性は、劣るものになってしまうし、連続気泡率が低くてもセルが粗大であったり、サイズが揃っていなかったりすると、外観が悪化したり、2次成型時にさらに粗大化し、成形体の商品価値を低下させたりするという問題を生じる。これらに対して、従来は、発泡剤による改良に主眼がおかれ、化学発泡剤として重曹とクエン酸の混合物を用いることでセルの微細化、均一化をはかっており、また、COなどの物理発泡剤を用いた発泡においても、これらの化学発泡剤を併用することが一般的となっている。
特開昭62−121704号公報 特表2001−524565号公報 WO99/07752号公報 特開2001−335666号公報 WO97/14725号公報 特表2001−525460号公報 特開2009−293020号公報 特開2009−299029号公報 特開2010−018659号公報 特開2001−226510号公報 特開2002−356573号公報 特開2010−121054号公報 特開2009−275210号公報 特開2011−068819号公報
本発明の目的は、従来技術の現状に鑑み、上記の課題や問題を解決し、発泡成形に好適なポリプロピレン樹脂組成物を提供することにある。詳しくは、発泡時のセル形成と延展時のセル破壊防止を両立することにより、独立気泡率が高く(連続気泡率が低く)、緻密で、サイズの揃った発泡セルを形成することができる発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物を提供するものであり、更には、その樹脂組成物を用いることにより、高品質の発泡シート、発泡成形体を製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の添加剤配合を用いることにより、発泡特性を著しく高めることに成功した。更には、この特定の添加剤配合を、特定の特性を有するポリプロピレンに適用することにより、極めて良好な発泡成形を達成することが可能となった。本発明の本質は、発泡成形時における複数の化学種間の反応を制御することにある。特に、発泡剤である重曹及びクエン酸と、ポリプロピレンの劣化防止に用いられる酸化防止剤及び流動性向上に用いられる滑剤との間の反応を制御する点に、公知の技術にはない特徴がある。したがって、特定の構造を有する酸化防止剤と特定の構造を有する滑剤を特定量用いることが重要である。
特定の添加剤が何故発泡成形に好適であるかは、未だ研究の途上にあるが、本発明者らの考えを、以下に示しておく。
発泡成形には、発泡剤によりガスを生成させる化学発泡とガスを直接成形機に吹き込むガス発泡の2種類があるが、ガス発泡の場合にも、発泡核の形成のために化学発泡剤を用いることが一般的であるので、以下は、化学発泡について説明することにする。
化学発泡の際に用いられる発泡剤は、通常、重曹とクエン酸の混合物であり、前者は塩基性化合物、後者はブレンステッド酸である。従って、ポリプロピレンに発泡剤を加え成形機に掛けると、溶融が進むと共に重曹とクエン酸が接触し、中和が生じた結果、炭酸ガスが発生する。こうして、中和反応を好適な速度で生じせしめることにより、成形機の好適な箇所で好適な速度でガス発生を行い、ポリプロピレンの発泡を制御するというのが発泡剤の技術的思想である。
一方で、ポリプロピレンは、分子鎖中に3級炭素を有するために、熱安定性が低く、通常は酸化防止剤を添加した上で加工される。ポリプロピレンの場合、通常、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤を併用することが、一般的であるが、前者は酸性を示すフェノール性水酸基を分子内に持っている。従って、酸化防止剤自体が酸塩基反応の観点で反応性を有しており、発泡剤に含まれる重曹やクエン酸と反応してしまうのである。仮に、僅かな量の酸化防止剤が発泡剤と反応しても、繊細に設計された重曹とクエン酸との反応パターンを乱し、引いては、発泡挙動を悪化させてしまうと、考えられる。その様な状況に対し、本発明では、汎用で用いられる一般的な酸化防止剤の使用を抑制し、特定の構造を有する化合物を酸化防止剤として用いることにより、重曹とクエン酸との反応への悪影響を充分に抑制することができているのではないかと、考察している。本発明者らの検討によれば、エステルが多量に存在すると、発泡に悪い影響を与えていると、考えられ、エステルの使用量を抑制する代わりに、アミン、アミド、などを用いると、良好な発泡特性が得られる。
また、流動性の向上のために、滑剤を用いるが、滑剤も、酸化防止剤と同様に酸塩基反応に影響を与える化合物が多く、脂肪酸アミド化合物を用いることが必要である。
なお、ここに示した様な技術思想、及び、後述の具体的な実施形態は、上記に挙げた様な公知の特許文献には、全く示唆されていないことを明記しておきたい。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ポリプロピレン100重量部に対し、以下の式(1)で表される構造を有するヒンダードアミン0.001〜0.3重量部、及び、脂肪酸アミド化合物0.001〜0.5重量部、を含むことを特徴とする発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物が提供される。
Figure 0006232832
(式中、Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、Oのヘテロ原子を含んでいても良い。また、2個のRは、同一であっても異なっていても良く、互いに結合して環を形成していても良い。Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、Oのヘテロ原子を含んでいても良い。R、Rは、それぞれ、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、Oのヘテロ原子を含んでいても良い。)
また、本発明の第2の発明によれば、ポリプロピレン100重量部に対し、以下の式(2)で表される構造を有するヒンダードアミン0.001〜0.3重量部、及び、脂肪酸アミド化合物0.001〜0.5重量部、を含むことを特徴とする発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物が提供される。
Figure 0006232832
(式中、Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、Oのヘテロ原子を含んでいても良い。また、2個のRは、同一であっても異なっていても良く、互いに結合して環を形成していても良い。Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、Oのヘテロ原子を含んでいても良い。Rは、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、Oのヘテロ原子を含んでいても良い。nは、カッコ内の構造の繰り返しを示す。)
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、ポリプロピレン100重量部に対し、さらに、式(4)で表される構造を有するフェノール0.001〜0.3重量部を含むことを特徴とする発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物が提供される。
Figure 0006232832
(式中、R、R、Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、Oのヘテロ原子を含んでいても良い。R、R、Rは、お互いに異なっていても良く、そのうちの任意の2つ若しくは全部が同一であっても良い。また、R、R、Rのうちの少なくとも1つは、フェノール構造を有する置換基である。)
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、前記ポリプロピレンは、以下の特性(X−i)〜(X−iv)を満たすポリプロピレン(X)を含むことを特徴とする発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物が提供される。
特性(X−i):長鎖分岐を有する。
特性(X−ii):230℃で測定した溶融張力(MT)が2〜30gである。
特性(X−iii):MFRが0.1〜30g/10分である。
特性(X−iv):25℃キシレン可溶成分量(CXS)がポリプロピレン(X)全量に対し5wt%未満である。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、前記ポリプロピレンは、以下の特性(YH−i)〜(YH−ii)を満たすプロピレン(共)重合体(YH)と以下の特性(YC−i)〜(YC−ii)を満たすプロピレン−エチレン共重合体(YC)からなり、以下の特性(Y−i)を満たすインパクトコポリマー(Y)を含むことを特徴とする発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物が提供される。
特性(YH−i):プロピレン単独重合体、又は、エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとプロピレンとの共重合体であって、プロピレン(共)重合体(YH)が共重合体の場合には、(YH)中のエチレン及びα−オレフィンの含量が0を超え、3wt%以下である。
特性(YH−ii):MFRが1〜100g/10分である。
特性(YC−i):プロピレン−エチレン共重合体(YC)中のエチレン含量がプロピレン−エチレン共重合体(YC)全量に対し10〜90wt%である。
特性(YC−ii):135℃デカリン中で測定した固有粘度が5〜20dl/gである。
特性(Y−i):インパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量がインパクトコポリマー(Y)全量に対し1wt%以上、50wt%未満である。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明に係る発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物を用いて製造してなることを特徴とするポリプロピレン系発泡シートが提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第6の発明に係るポリプロピレン系発泡シートを熱成型することにより製造してなることを特徴とする成形体が提供される。
本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物は、発泡成形時のセルの形成が非常に均一であり、高い独立気泡率で、緻密でサイズの揃ったセルを有する発泡成形体を製造することができる。また、流動性、並びに、延展性が非常に高く、高い押出レートで外観の綺麗な発泡シートを製造することが可能となる。また、この様な高い発泡特性を有しながら、熱成型性も良好である。
この様にして得られた発泡成形体は、外観、熱成型性、耐衝撃性、軽量性、剛性、耐熱性、断熱性、耐油性等に優れていることより、トレー、皿、カップなどの食品容器や自動車ドアトリム、自動車トランクマットなどの車両内装材、包装、文具、建材などに好適に利用することができる。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。
以下、項目毎に、詳細に述べる。
I.ヒンダードアミン
本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物(以下、樹脂組成物ともいう。)においては、以下の式(1)で表される構造を有するヒンダードアミンを用いることが必要である。
Figure 0006232832
(式中、Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、O等のヘテロ原子を含んでいても良い。また、2個のRは、同一であっても異なっていても良く、互いに結合して環を形成していても良い。Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、O等のヘテロ原子を含んでいても良い。R、Rは、それぞれ、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、O等のヘテロ原子を含んでいても良い。)
式(1)において、Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、O等のヘテロ原子を含んでいても良い。好ましくは、水素原子または脂肪族炭化水素基である。
が脂肪族炭化水素基である場合、炭素数1〜50個、より好ましくは炭素数2〜20個、更に好ましくは炭素数4〜10個である。脂肪族炭化水素基の構造としては、直鎖、分岐状、環状、のいずれの構造を有していても構わない。Rが脂肪族炭化水素基である場合の具体例として、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、の様な分岐のない鎖状アルキル基、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、の様な分岐のある鎖状アルキル基、cyc−ペンチル基、cyc−ヘキシル基、の様な環状のアルキル基、を挙げることができる。最も好ましい例は、水素原子、n−ブチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、である。Rがヘテロ原子を含む場合、N、S、Oであることが望ましい。RがNを含む場合、ピペリジン等のアミノ基であることが好ましい。RがSを含む場合、アルキルスルフィド等のスルフィド基であることが好ましい。RがOを含む場合、アルキルエーテル等のエーテル基、ヒドロキシアルキル基、であることが好ましく、特に、2個のRがお互いに結合して環を形成したモルフィリン基であることが好ましい。
式(1)において、Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、O等のヘテロ原子を含んでいても良い。好ましくは、水素原子または脂肪族炭化水素基である。
が脂肪族炭化水素基である場合、炭素数1〜10個、より好ましくは炭素数1〜4個である。脂肪族炭化水素基の構造としては、直鎖、分岐状、環状、のいずれの構造を有していても構わない。Rが脂肪族炭化水素基である場合の具体例として、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、を挙げることができる。最も好ましい例は、水素、メチル基、である。
式(1)において、R、Rは、それぞれ、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、O等のヘテロ原子を含んでいても良い。R、Rは、ヒンダードアミンの骨格形成に関わる置換基であり、比較的分子量が高い方が好ましい。また、R、Rは、エステル構造を含まないものが好ましい。
高分子材料の添加剤として用いられるヒンダードアミン類は、HALSと呼ばれ、元々は光安定剤として開発されたものであるが、その作用機構の研究が進むにつれ、高いラジカル補足能による酸化防止剤としての働きが重視される様になってきた。
従って、ポリプロピレン樹脂組成物に通常用いられるフェノール系酸化防止剤と同様に、上記構造を有するヒンダードアミンを、酸化防止剤として用いることができる。
式(1)で表される構造を有するヒンダードアミンは、酸化防止性能を発現するヒンダードアミン部分と分子の骨格部分とを、トリアジン構造を含むC−N結合でつないでいる点が重要である。エステル結合を有する化合物は、使用を抑制する方が好ましいので、分子内にエステル結合を持たない化合物を選ぶことが望ましい。
後述する様に、本発明のヒンダードアミンは、フェノール系酸化防止剤と組み合わせて用いることが可能であり、中でも特定の構造を有するフェノール系酸化防止剤と組み合わせて用いることが好ましいが、これは、式(1)に示す通り、ヒンダードアミンの骨格中にアミン性窒素原子が複数存在するために、フェノールの酸性プロトンと相互作用して、発泡剤との反応を抑制しているのではないかと、本発明者らは、考えている。
式(1)で表される構造を有するヒンダードアミンの中でも、以下の式(2)で表される構造を有するヒンダードアミンが更に好ましい。
Figure 0006232832
(式中、Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、O等のヘテロ原子を含んでいても良い。また、2個のRは、同一であっても異なっていても良く、互いに結合して環を形成していても良い。Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、O等のヘテロ原子を含んでいても良い。Rは、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、O等のヘテロ原子を含んでいても良い。nはカッコ内の構造の繰り返しを示す。)
式(2)で表される構造を有するヒンダードアミンは、繰り返し単位を有するオリゴマーである点に特徴がある。発泡成形の際に、添加剤と発泡剤との反応を制御するという観点から、添加剤の分子量は、重要であり、低分子よりも高分子の方が好ましい。重合度を示すnには、特に制限がないが、nは1〜100、好ましくは2〜10である。式(2)で表される構造を有するヒンダードアミンの分子量は、1,000〜10,000であることが好ましく、より好ましくは2,000〜5,000である。
式中のR、Rの好ましい構造は、式(1)で説明したものと同じである。
式(2)において、Rは、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、O等のヘテロ原子を含んでいても良い。Rは、隣接する繰り返し単位との結合を形成する基であり、直鎖アルキル基であることが望ましい。
が直鎖アルキル基である場合の具体例として、メチレン基、1,2−エチレン基、1,4−ブチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、などを挙げることができる。RがNを含む場合、アミノ基、アミド基であることが好ましい。RがSを含む場合、アルキルスルフィド等のスルフィド基であることが好ましい。RがOを含む場合、アルキルエーテル等のエーテル基であることが好ましい。また、Rは、側鎖を持っていても良く、好ましい側鎖の例として、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル基や、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル基など挙げることができる。
式(2)で表される構造を有するヒンダードアミンの中でも、以下の式(3)で表される構造を有するヒンダードアミンが更に好ましい。
Figure 0006232832
(式中、Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、O等のヘテロ原子を含んでいても良い。また、2個のRは、同一であっても異なっていても良く、互いに結合して環を形成していても良い。Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、O等のヘテロ原子を含んでいても良い。また、2個のRは、同一であっても異なっていても良い。nは、カッコ内の構造の繰り返しを示す。mも同様である。)
式(3)において、R、Rの好ましい構造は、式(1)で説明したものと同じであり、nは、式(2)で説明したものと同じである。mは、メチレン基の繰り返しを表す価であり、mは、1〜20であることが好ましく、より好ましくは2〜10である。式(3)で表される構造を有するヒンダードアミンの分子量は、1,000〜10,000であることが好ましく、より好ましくは2,000〜5,000である。
式(1)〜(3)で表される構造を有するヒンダードアミンの具体的な例としては、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス{N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ}−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物(商品名:Chimassorb199)、ポリ{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}(商品名:Chimassorb944)、ポリ(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}(商品名:Chimassorb3346)を例示することができる。
この中で最も好ましいのは、ポリ{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}である。
式(1)〜(3)で表される構造を有するヒンダードアミンの添加量は、ポリプロピレン100重量部に対し、0.001〜0.3重量部であるが、好ましくは0.003〜0.2重量部であり、更に好ましくは0.005〜0.1重量部である。ヒンダードアミンの添加量が上記の範囲内にあると、発泡剤の化学反応に著しい影響を与えることなく、ポリプロピレンの酸化劣化を抑制できるので好ましい。
II.脂肪酸アミド化合物
本発明においては、脂肪酸アミド化合物を用いることが必要である。脂肪酸アミド化合物は、ポリマー用滑剤として、通常用いられるものを好適に使用することができる。
脂肪酸アミド化合物の具体例としては、ラウリル酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルシン酸アミド、ベヘン酸アミド、を挙げることができる。
また、脂肪酸アミド化合物は、アルキル鎖上やN上に置換基を有していても良い。置換基を有する脂肪酸アミド化合物の例としては、ヒドロキシステアリン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−ステアリルエルシン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、を挙げることができる。
本発明における脂肪酸アミド化合物の添加量は、ポリプロピレン100重量部に対し、0.001〜0.5重量部であるが、好ましくは0.01〜0.4重量部であり、更に好ましくは0.02〜0.3重量部である。脂肪酸アミドの添加量が上記の範囲内にあると、発泡剤とその他の添加剤の間の反応を抑制できるため、良好な発泡特性が得られるので好ましい。
III.フェノール
本発明においては、上記の特定の構造を有するヒンダードアミンと脂肪酸アミド化合物を用いることが必要であるが、所望に応じて、フェノール系酸化防止剤を併用する場合は、以下の式(4)で表される構造を有するフェノールを用いることが好ましい。
Figure 0006232832
(式中、R、R、Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、O等のヘテロ原子を含んでいても良い。また、R、R、Rは、お互いに異なっていても良く、そのうちの任意の2つ若しくは全部が同一であっても良い。R、R、Rのうちの少なくとも1つは、フェノール構造を有する置換基である。)
式(4)において、R、R、Rのうちの少なくとも1つは、フェノール構造を有する置換基である。フェノール性水酸基の位置は、特に限定はないが、m位にあるのが特に好ましい。
フェノール構造中の芳香環上のその他の置換基については、特に限定がないが、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であることが好ましい。
フェノール構造中の芳香環上のその他の置換基が脂肪族炭化水素基である場合の具体例として、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、の様な分岐のない鎖状アルキル基、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、の様な分岐のある鎖状アルキル基、cyc−ペンチル基、cyc−ヘキシル基、の様な環状のアルキル基、を挙げることができる。フェノール構造中の芳香環上のその他の置換基が芳香族炭化水素基である場合の具体例として、フェニル基、トルイル基、ジメチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、などを挙げることができる。
フェノール構造中の芳香環上のその他の置換基として、特に好ましいのは、メチル基、t−ブチル基である。
式(4)のトリアジントリオン骨格のNとR、R、Rの少なくとも1つのフェノール構造の芳香環は、直接結合していても良いが、アルキレン基を介して結合していても良い。この様なアルキレン基の具体例として、メチレン基、1,2−エチレン基、1,4−ブチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、などを挙げることができる。
、R、Rのうちフェノール構造を有する置換基ではないものは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、O等のヘテロ原子を含んでいても良い。具体例として、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、の様な分岐のない鎖状アルキル基、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、の様な分岐のある鎖状アルキル基、cyc−ペンチル基、cyc−ヘキシル基、の様な環状のアルキル基、フェニル基、トルイル基、ジメチルフェニル基、t−ブチルフェニル基の様なアリール基、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル基、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル基の様なアミノアルキル基、などを挙げることができる。
式(4)で表される構造を有するフェノールの中でも、以下の式(5)で表される構造を有するフェノールが更に好ましい。
Figure 0006232832
(式中、R、Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、O等のヘテロ原子を含んでいても良い。また、R、Rは、お互いに異なっていても良く、同一であっても良い。Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基または水酸基であり、5個のRのうちの少なくとも1つは、水酸基である。)
式(5)において、5個のRのうちの少なくとも1つは、水酸基である。5個のRのうちの水酸基の数は、1〜5であり、好ましくは1〜2であり、1が最も好ましい。水酸基以外のRは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基である。
が脂肪族炭化水素基である場合の具体例として、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、の様な分岐のない鎖状アルキル基、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、の様な分岐のある鎖状アルキル基、cyc−ペンチル基、cyc−ヘキシル基、の様な環状のアルキル基、を挙げることができる。水酸基以外のRの最も好ましい例は、水素原子、メチル基、t−ブチル基、である。R、Rの好ましい構造は、式(4)で説明したものと同じである。
式(5)で表される構造を有するフェノールの中でも、以下の式(6)で表される構造を有するフェノールが更に好ましい。
Figure 0006232832
(式中、R10は、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基である。3個のR10は、お互いに同一であっても異なっていても良い。)
式(6)において、R10は、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基である。R10が脂肪族炭化水素基である場合の具体例として、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、の様な分岐のない鎖状アルキル基、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、の様な分岐のある鎖状アルキル基、cyc−ペンチル基、cyc−ヘキシル基、の様な環状のアルキル基、を挙げることができる。R10の最も好ましい例は、t−ブチル基である。
式(4)〜(6)で表される構造を有するフェノールの具体的な例としては、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート(商品名:Irganox3114、アデカスタブAO−20)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート(商品名:スミライザーBP−179、Cyanox1790)、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−イソシアヌレート(商品名:ケミノックス314)、を挙げる個とができる。最も好ましいのは、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレートである。
式(4)〜(6)で表される構造を有するフェノールに関しても、式(1)〜(3)で表される構造を有するヒンダードアミンの場合と同様に、分子内にエステル結合を持たない化合物を選ぶことが望ましい。
本発明において、式(4)〜(6)で表される構造を有するフェノールは、任意成分であるが、これらのフェノールを用いる場合の添加量は、ポリプロピレン100重量部に対し、0.001〜0.3重量部であることが好ましく、より好ましくは0.005〜0.2重量部であり、更に好ましくは0.01〜0.1重量部である。式(4)〜(6)で表される構造を有するフェノールの添加量が上記の範囲内にあると、発泡剤の化学反応に著しい影響を与えることなく、ポリプロピレンの酸化劣化を抑制できるので好ましい。
また、フェノール系酸化防止剤を用いる場合に、通常のエステル結合を含む化合物を使用することもできるが、その場合には、式(4)〜(6)で表される構造を有するフェノールと併用し、かつ、通常のエステル結合を含む化合物の使用量(重量部)を、式(4)〜(6)で表される構造を有するフェノールの使用量(重量部)未満とすることが好ましい。その様な使用量とすることにより、エステルによる発泡への悪影響を抑制することができる。
IV.その他の添加剤
本発明においては、上記の通り、式(1)〜(3)で表される構造を有するヒンダードアミンと脂肪酸アミド化合物が必須成分であり、式(4)〜(6)で表される構造を有するフェノールを、任意成分として用いることができる。
一方、その他の任意成分として、従来公知のポリオレフィン樹脂用配合剤として使用される酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属不活性化剤、安定剤、中和剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、核剤、過酸化物、充填剤、抗菌防黴剤、蛍光増白剤のような各種添加剤を、本発明の効果を著しく損ねない範囲で加えることができる。これら添加剤の配合量は、樹脂組成物全量に対し、一般にそれぞれ0.0001〜3wt%、好ましくは0.001〜1wt%である。
まず、酸化防止剤について説明する。ポリプロピレンに用いられる酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、の3種に大別されるのが一般的である。このうち、フェノール系酸化防止剤については、既述の通り、式(4)〜(6)で表される構造を有するフェノールを用いることが好ましく、その他のフェノール系酸化防止剤を使用する場合には、その使用量を式(4)〜(6)で表される構造を有するフェノールの使用量未満とすることが好ましい。
リン系酸化防止剤は、ハイドロパーオキサイド化合物を還元する作用があり、ハイドロパーオキサイド分解剤とも呼ばれる。単独でも酸化防止効果があるが、上記のフェノール系酸化防止剤と併用すると、相乗効果が発生して、更に酸化防止効果が高まるため、通常は両者を併用して用いることが多い。この相乗効果は、フェノール系酸化防止剤と自動酸化に関わるラジカル種との反応で発生したフェノキシラジカル種をリン系酸化防止剤が還元することにより、フェノール系酸化防止剤が再生するために生じると考えられている。
以下、リン系酸化防止剤として、代表的な化合物を例示する。
ホスファイト型の化合物では、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名:Irgafos168、スミライザーP−16、アデカスタブ2112)、トリスノニルフェニルホスファイト(商品名:スミライザーTNP、アデカスタブ1178)、トリス(ミックスド,モノ−ジノニルフェニルホスファイト)(商品名:アデカスタブ329K)、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト(通称:P−EPQ)を、例示することができる。
硫黄系酸化防止剤も、リン系酸化防止剤と同様に、ハイドロパーオキサイド化合物を還元する作用があり、ハイドロパーオキサイド分解剤とも呼ばれる。こちらも、リン系酸化防止剤と同様に、フェノール系酸化防止剤との併用による相乗効果があると、言われている。
硫黄系酸化防止剤の具体的な例としては、ステアリルチオプロピオンアミド(商品名:ケミノックス18−AD)、ジオクタデシルジスルフィド(商品名:HostanoxSE10)、2−メルカプトベンズイミダゾール(商品名:スミライザーMB)、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール(商品名:ノクラックMMB)、1,1’−チオビス(2−ナフトール)(商品名:Plastanox61)、を挙げることができる。
硫黄系酸化防止剤に関しても、式(1)〜(3)で表される構造を有するヒンダードアミンや式(4)〜(6)で表される構造を有するフェノールの場合と同様に、分子内にエステル結合を持たない化合物を選ぶことが望ましい。
紫外線吸収剤は、紫外線領域に吸収帯を持つ化合物であり、トリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ニッケルキレート系、無機微粒子系、などが知られている。この中で最も汎用的に用いられているのは、トリアゾール系である。
以下、紫外線吸収剤として、代表的な化合物を例示する。
トリアゾール系の化合物では、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ200、TinuvinP)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ340、Tinuvin399)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ320、Tinuvin320)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ350、Tinuvin328)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(商品名:スミソーブ300、Tinuvin326)を例示することができる。
ベンゾフェノン系の化合物では、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(商品名:スミソーブ110)、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン(商品名:スミソーブ130)を例示することができる。
V.ポリプロピレン(X)
本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物において、ポリプロピレンは、任意のものを使用することができるが、中でも下記の特性(X−i)〜(X−iv)のいずれか1以上を満たす、好ましくは2以上を満たす、より好ましくはすべてを満たすポリプロピレン(X)を含むポリプロピレンを用いることが好ましい。
特性(X−i):長鎖分岐を有する。
特性(X−ii):230℃で測定した溶融張力(MT)が2〜30gである。
特性(X−iii):MFRが0.1〜30g/10分である。
特性(X−iv):25℃キシレン可溶成分量(CXS)がポリプロピレン(X)全量に対し5wt%未満である。
この様なポリプロピレン(X)の中でも、下記の特性(X−v)および/または特性(X−vi)を満たすものがより好ましい。
特性(X−v):絶対分子量Mabsが100万における分岐指数gが0.3以上、1.0未満である。
特性(X−vi):伸張粘度の測定における歪硬化度(λmax)が5〜20である。
以下、順に詳説する。
V−1.特性(X−i):長鎖分岐
ポリプロピレン(X)は、長鎖分岐を有するものであることが好ましい。長鎖分岐とは、主鎖炭素数が数十以上、分子量では数百以上からなる分子鎖による分岐構造を言い、1−ブテンなどのα−オレフィンと共重合を行うことにより形成される炭素数数個の短鎖分岐とは区別される。
ポリプロピレン中に長鎖分岐があるかどうかを調べる方法は幾つかあるが、特性(X−ii)(X−vi)に示す様な樹脂のレオロジー特性によるもの、が簡便に用いられる。より厳密な同定方法としては、特性(X−v)に示す様に、分子量と粘度との関係を用いる方法や、13C−NMRを用いる方法などがある。後者については、特開2009−275207号公報やMacromol.Chem.Phys.2003,vol.204,1738に詳細な説明があるので参照されたい。
V−2.特性(X−ii):溶融張力(MT)
ポリプロピレン(X)は、特性(X−ii)に示す通り、その溶融張力(MT)が2〜30gであることが好ましい。
MTの下限については、MTが3g以上であることが好ましい。MTの上限については、MTが25g以下であることが好ましく、更に好ましくはMTが20g以下である。MTが上記の範囲内にあると、延展性や連続気泡率がより良くなるので好ましい。
MTを上記の範囲に制御する具体的な手法としては、触媒製造法(特に錯体の担持比率)を調整することで長鎖分岐の数を変える方法や、特性(X−iii)の範囲内でMFRを調整する方法がある。長鎖分岐の数を増やしたり、MFRを低くしたりすると、MTは高くなる。MTを低くするには、逆方向に調整すれば良い。
なお、本発明におけるMTは以下の条件で測定した値とする。
[MT測定条件]
測定装置:(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1B
キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm
シリンダー径:9.55mm
シリンダー押出速度:20mm/分
引き取り速度:4.0m/分
(但し、MTが高すぎて樹脂が破断してしまう場合には、引き取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度で測定する。)
温度:230℃
V−3.特性(X−iii):MFR
ポリプロピレン(X)は、特性(X−iii)に示す通り、MFRが0.1〜30g/10分であることが好ましい。
MFRの下限に関しては、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上である。MFRの上限に関しては、好ましくは17.0g/10分以下、より好ましくは15.0g/10分以下、更に好ましくは13g/10分以下、最も好ましくは10g/10分以下である。MFRが上記の範囲内にあると、延展性や連続気泡率がより良くなるので好ましい。
MFRを上記の範囲に調整する具体的な方法として、重合時に添加する水素の量を変更する方法を挙げることができる。水素は、プロピレンの重合において、連鎖移動剤として作用するため、水素の添加量を増やせばMFRが上がり、逆に添加量を下げればMFRを下げることができる。重合槽内部の水素濃度に対するMFRの値は、使用する触媒や他の重合条件によって異なるが、触媒種やその他の重合条件に応じて事前に水素濃度とMFRの関係を把握し、望みのMFRの値となるよう水素濃度を調整することは当業者にとって極めて容易なことである。
なお、本発明におけるMFRは、JIS K7210:1999「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)およびメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した値である。
V−4.特性(X−iv):25℃キシレン可溶成分量(CXS)
ポリプロピレン(X)は、特性(X−iv)に示す通り、25℃キシレン可溶成分量(CXS)が5.0wt%未満であることが好ましい(但し、ポリプロピレン(X)全量を100wt%とする)。
CXSが、好ましくは3wt%未満、より好ましくは1wt%未満、最も好ましくは0.5wt%未満であることが望ましい。CXSの下限値については、特に制限はないが、0.01wt%以上、好ましくは0.05wt%以上あると、添加剤の効果が発現し易くなる。CXSは、低結晶性のポリマー成分を表す一般的な指標であり、その値が上記の範囲内にあると、発泡成形時に目やにや発煙の問題が発生し難く好ましい。
CXSを上記の範囲に調整する具体的な方法として、触媒の選定を挙げることができる。長鎖分岐を有するポリプロピレンのCXSを決定する最も重要な因子は、触媒であり、公知の触媒の中からCXSを満たすものを選定すればよい。触媒の具体例は、後述する。
なお、本発明におけるCXSは、以下の手順で測定した値である。
[CXS測定手順]
2gの試料を300mlのp−キシレン(0.5mg/mlのBHTを含む)に130℃で溶解させ溶液とした後、25℃で12時間放置する。その後、析出したポリマーを濾別し、濾液からp−キシレンを蒸発させ、さらに100℃で12時間減圧乾燥し25℃キシレン可溶成分を回収する。この回収成分の重量の仕込み試料重量に対する割合[重量%]をCXSと定義する。
V−5.特性(X−v):分岐指数g
ポリプロピレン(X)は、特性(X−i)〜(X−iv)のいずれかを満たすものであるが、更に、以下の特性(X−v)を満たすことが好ましい。
特性(X−v):絶対分子量Mabsが100万における分岐指数gが0.3以上、1.0未満である。
分岐指数gは、長鎖分岐に関するより直接的な指標として知られている。
「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983)に詳細な説明があるが、分岐指数gの定義は、以下の通りである。
分岐指数g=[η]br/[η]lin
[η]br:長鎖分岐構造を有するポリマー(br)の固有粘度
[η]lin:ポリマー(br)と同じ分子量を有する線状ポリマーの固有粘度
定義から明らかな通り、長鎖分岐構造が存在すると、分岐指数gは、1よりも小さな値を取り、長鎖分岐構造が増えるほど分岐指数gの値は小さくなっていく。ポリプロピレンは、一般に分子量分布を有しているため、かなり分子量の大きい成分に長鎖分岐構造が存在すれば、効率よく絡み合いを促進し、発泡特性を高めることに寄与することができる。故に、ポリプロピレン(X)のうち、絶対分子量Mabsが100万となる時の分岐指数gの値が特定の範囲に入っているものが特に好ましい。
絶対分子量Mabsが100万となる時の分岐指数gの値を知るためには、絶対分子量Mabsの関数として分岐指数gの値を得なくてはならない。この点については、本発明においては、以下の測定方法、解析方法、算出方法を用いるものとする。
[測定方法]
GPC:Alliance GPCV2000(Waters社)
検出器:接続順に記載
多角度レーザー光散乱検出器(MALLS):DAWN−E(Wyatt Technology社)
示差屈折計(RI):GPC付属
粘度検出器(Viscometer):GPC付属
移動相溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン(Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)
移動相流量:1mL/分
カラム:東ソー社 GMHHR−H(S) HTを2本連結
試料注入部温度:140℃
カラム温度:140℃
検出器温度:全て140℃
試料濃度:1mg/mL
注入量(サンプルループ容量):0.2175mL
[解析方法]
MALLSから得られる絶対分子量(Mabs)、二乗平均慣性半径(Rg)、および、Viscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行う。
参考文献:
1.「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983. Chapter1.)
2.Polymer, 45, 6495−6505(2004)
3.Macromolecules, 33, 2424−2436(2000)
4.Macromolecules, 33, 6945−6952(2000)
[分岐指数g’の算出方法]
分岐指数g’は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度([η]br)と、別途、線状ポリマーを測定して得られる極限粘度([η]lin)との比([η]br/[η]lin)として算出する。ここで、[η]linを得るための線状ポリマーとしては、市販のホモポリプロピレン(日本ポリプロ社製ノバテックPP(登録商標) グレード名:FY6)を用いる。線状ポリマーの[η]linの対数は分子量の対数と線形の関係があることは、Mark−Houwink−Sakurada式として公知であり、[η]linは低分子量側や高分子量側に適宜外挿して数値を得ることとする。
ポリプロピレン(X)は、絶対分子量Mabsが100万となる時の分岐指数gの値が0.3以上、1.0未満であることが好ましい。より好ましくは0.55以上、0.98以下、更に好ましくは0.75以上、0.96以下、最も好ましくは0.78以上0.95以下である。
分岐指数g’が上記の範囲にあると、混練を繰り返した際の溶融張力の低下度合いが小さくなるため、生産工程における材料リサイクルの際に物性や成形性の低下が小さくなり好ましい。
分岐指数g’を上記の範囲に調整する具体的な方法として、触媒の選定を挙げることができる。長鎖分岐を有するポリプロピレンの分岐指数g’を決定する最も重要な因子は、触媒であり、公知の触媒の中から分岐指数g’を満たすものを選定すればよい。触媒の具体例は、後述する。
V−6.特性(X−vi):伸張粘度の測定における歪硬化度(λmax)
ポリプロピレン(X)は、特性(X−i)〜(X−iv)のいずれかを満たすものであり、特性(X−v)を満たすことが好ましいが、これに加えてまたは特性(X−v)に替えて、以下の特性(X−vi)を満たすことが好ましい。
特性(X−vi):伸張粘度の測定における歪硬化度(λmax)が5〜20である。
本発明におけるλmaxの算出においては、以下の条件で測定した伸張粘度の値を使用する。
装置:Rheometorics社製Ares
冶具:ティーエーインスツルメント社製Extentional Viscosity Fixture
測定温度:180℃
歪み速度:0.1/sec
試験片の作製方法:プレス成形
試験片の形状:18mm×10mm、厚さ0.7mm、のシート
次に、得られた伸張粘度の値からλmaxを算出する方法を説明する。
まず、横軸に時間t(秒)、縦軸に伸長粘度η(Pa・秒)を両対数グラフでプロットし、その両対数グラフ上で歪み硬化を起こす直前の粘度を直線で近似する。具体的には、まず伸張粘度を時間に対してプロットした際の各々の時刻での傾きを求めるが、それに当っては伸張粘度の測定データは離散的であることを考慮し、隣接データの傾きをそれぞれ求め、周囲数点の移動平均をとる方法を用いる。
伸張粘度は、低歪み量の領域では、単純増加関数となり、次第に一定値に漸近し、歪み硬化がなければ充分な時間経過後にトルートン粘度に一致するが、歪み硬化のある場合には、一般的に歪み量(=歪み速度×時間)1程度から、伸張粘度が時間と共に増大を始める。すなわち、上記傾きは、低歪み領域では時間と共に減少傾向があるが、歪み量1程度から逆に増加傾向となり、伸張粘度を時間に対してプロットした際の曲線上に、変曲点が存在する。そこで歪み量が0.1〜2.5程度の範囲で、上記で求めた各々の時刻の傾きが最小値をとる点を求めて、その点で接線を引き、直線を歪み量が4.0となるまで外挿する。歪み量4.0となるまでの伸長粘度ηの最大値(ηmax)を求め、また、その時間までの上記近似直線上の粘度をηlinとする。ηmax/ηlinを、λmax(0.1)と定義する。
ポリプロピレン(X)は、歪硬化度(λmax)が5〜20であることが好ましい。より好ましくは、歪硬化度(λmax)が6〜15であり、更に好ましくは、7〜10である。ポリプロピレン(X)のうち、歪硬化度(λmax)の値がこの範囲内にあるものは、延展性と発泡時のセル形成のバランスが特に良好となり一層好ましい。
歪硬化度(λmax)を上記の範囲に制御する具体的な手法としては、触媒製造法(特に錯体の担持比率)を調整することで長鎖分岐の数を変える方法や、特性(X−iii)の範囲内でMFRを調整する方法がある。長鎖分岐の数を増やしたり、MFRを低くしたりすると歪硬化度(λmax)は高くなる。歪硬化度(λmax)を低くするには、逆方向に調整すれば良い。
V−7.その他の特性(X−vii):mm分率
ポリプロピレン(X)の特性については、上述の通りであるが、その他に、下記の特性(X−vii)を満たすものを用いると、より一層好ましい。
特性(X−vii):13C−NMRにより求めたアイソタクチックトライアッド分率(mm分率)が95%以上である。
ここで、mm分率は、プロピレン単位3連鎖において隣接するメチル基の立体関係がメソとなるものが2つ連続したものの存在率を示し、本発明における定義は、特開2009−275207号公報の段落
の記載に従うものとする。13C−NMRの測定条件も特開2009−275207号公報に従う。
mm分率は、立体規則性の指標であり、数値が高い程ポリマー鎖中でプロピレン単位が規則正しく並んでいることを意味し、結晶化度が高くなりやすい。従って、mm分率が高い程、耐熱性や剛性が高くなるので好ましい。本発明において、mm分率は95.0%以上が好ましく、より好ましくは96.0%以上であり、さらに好ましくは97.0%以上である。
mm分率を上記の範囲に調整する具体的な方法として、触媒の選定を挙げることができる。長鎖分岐を有するポリプロピレンのmm分率を決定する最も重要な因子は、触媒であり、公知の触媒の中からmm分率を満たすものを選定すればよい。触媒の具体例は、後述する。
VI.ポリプロピレン(X)の製造方法
ポリプロピレン(X)は、特に製造方法を限定するものではない。各種方法の中でもメタロセン触媒の組み合わせを利用したマクロマー共重合法を用いることが、上記の特性(X−i)〜(X−iv)をすべて満たすポリプロピレンが容易に得られるので好ましく、例えば、特開2009−57542号公報に開示されている方法を例として挙げることができる。この手法は、マクロマー生成能力を有する特定の構造の触媒成分と、高分子量でマクロマー共重合能力を有する特定の構造の触媒成分とを組み合わせた触媒を用いて、長鎖分岐構造を有するポリプロピレンを製造する方法である。
以下、この方法をポリプロピレン(X)の製造方法の具体例として選び、詳細に説明する。
VI−1.触媒
下記の触媒成分(A)、(B)および(C)からなる触媒を用いることが好ましい。
触媒成分(A):下記一般式(a1)で表される化合物である成分[A−1]から少なくとも1種類、および下記一般式(a2)で表される化合物である成分[A−2]から少なくとも1種類を選んだ2種以上の周期表4族の遷移金属化合物。
成分[A−1]:一般式(a1)で表される化合物
成分[A−2]:一般式(a2)で表される化合物
触媒成分(B):イオン交換性層状珪酸塩
触媒成分(C):有機アルミニウム化合物
以下、触媒成分(A)、(B)および(C)について、詳細に説明する。
(1)触媒成分(A)
(i)成分[A−1]:一般式(a1)で表される化合物
Figure 0006232832
(一般式(a1)中、各々R11およびR12は、独立して、炭素数4〜16の窒素または酸素、硫黄を含有する複素環基を示す。また、各々R13およびR14は、独立して、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン又はこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜16のアリール基、炭素数6〜16の窒素または酸素、硫黄を含有する複素環基を表す。さらに、X11およびY11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基を表し、Q11は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基またはゲルミレン基を表す。)
上記R11およびR12の炭素数4〜16の窒素または酸素、硫黄を含有する複素環基としては、好ましくは2−フリル基、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、置換された2−フルフリル基であり、さらに好ましくは、置換された2−フリル基である。
また、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、置換された2−フルフリル基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、トリアルキルシリル基、が挙げられる。これらのうち、メチル基、トリメチルシリル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
さらに、R11およびR12として、特に好ましくは、2−(5−メチル)−フリル基である。また、R11およびR12は、互いに同一である場合が好ましい。
上記R13およびR14の炭素数6〜16の、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン、あるいは、これらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよいアリール基としては、炭素数6〜16になる範囲で、アリール環状骨格上に、1つ以上の、炭素数1〜6の炭化水素基、炭素数1〜6の珪素含有炭化水素基、炭素数1〜6のハロゲン含有炭化水素基を置換基として有していてもよい。
13およびR14としては、好ましくは少なくとも1つが、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−i−プロピルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−トリメチルシリルフェニル基、2,3―ジメチルフェニル基、3,5―ジ−t−ブチルフェニル基、4−フェニル−フェニル基、クロロフェニル基、ナフチル基、又はフェナンスリル基であり、更に好ましくはフェニル基、4−i−プロピルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−トリメチルシリルフェニル基、4−クロロフェニル基である。また、R13およびR14が互いに同一である場合が好ましい。
一般式(a1)中、X11およびY11は、補助配位子であり、触媒成分(B)の助触媒と反応して、オレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限り、X11とY11は、配位子の種類が制限されるものではなく、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基を示す。
一般式(a1)中、Q11は、二つの五員環を結合する、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基またはゲルミレン基の何れかを示す。上述のシリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
上記のQ11の具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン、等のアルキレン基;ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基;シリレン基;メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン等のアルキルシリレン基、メチル(フェニル)シリレン等の(アルキル)(アリール)シリレン基;ジフェニルシリレン等のアリールシリレン基;テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基;ゲルミレン基;上記の2価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;(アルキル)(アリール)ゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることができる。これらの中では、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、アルキルシリレン基、アルキルゲルミレン基が特に好ましい。
上記一般式(a1)で表される化合物のうち、好ましい化合物として、以下に具体的に例示する。
ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジフェニルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−トリメチルシリル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−フェニル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウムジクロライド、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−ベンゾフリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−メチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フルフリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−フルオロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリフルオロメチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、などを挙げることができる。
これらのうち、更に好ましいのは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−メチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、である。
また、特に好ましいのは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、である。
(ii)成分[A−2]:一般式(a2)で表される化合物
Figure 0006232832
(一般式(a2)中、各々R21およびR22は、独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、R23およびR24は、それぞれ独立して、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン又はこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜16のアリール基である。X21およびY21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基を表し、Q21は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基またはゲルミレン基を表す。M21は、ジルコニウムまたはハフニウムである。)
上記R21およびR22は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、好ましくはアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。具体的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル等が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、n−プロピルである。
また、上記R23およびR24は、それぞれ独立して、炭素数6〜16の、好ましくは炭素数6〜12 の、ハロゲン、ケイ素、あるいは、これらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよいアリール基である。好ましい例としてはフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、4−メチルフェニル、4−i−プロピルフェニル、4−t−ブチルフェニル、4−トリメチルシリルフェニル、4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)、4−(2−クロロ−4−ビフェニリル)、1−ナフチル、2−ナフチル、4−クロロ−2−ナフチル、3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル、3,5−ジメチル−4−t−ブチルフェニル、3,5−ジメチル−4−トリメチルシリルフェニル、3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル等が挙げられる。
また、上記X21およびY21は、補助配位子であり、触媒成分(B)の助触媒と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限りX21およびY21は、配位子の種類が制限されるものではなく、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基を示す。
また、上記Q21は、二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基であり、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基または炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基であり、好ましくは置換シリレン基あるいは置換ゲルミレン基である。
ケイ素、ゲルマニウムに結合する置換基は、炭素数1〜12の炭化水素基が好ましく、二つの置換基が連結していてもよい。具体的な例としては、メチレン、ジメチルメチレン、エチレン−1,2−ジイル、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジフェニルシリレン、メチルフェニルシリレン、9−シラフルオレン−9,9−ジイル、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジフェニルシリレン、メチルフェニルシリレン、9−シラフルオレン−9,9−ジイル、ジメチルゲルミレン、ジエチルゲルミレン、ジフェニルゲルミレン、メチルフェニルゲルミレン等が挙げられる。
さらに、上記M21は、ジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはハフニウムである。
上記一般式(a2)で表されるメタロセン化合物の非限定的な例として、下記のものを挙げることができる。中心金属がハフニウムの化合物を記載したが、ジルコニウムに代替した化合物も同様に非限定的な例として取り扱う。
ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)}ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−メチル−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(1−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−クロロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(9−フェナントリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−n−プロピル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−メチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、などが挙げられる。
これらの中で好ましくは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、である。
また、特に好ましくは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、である。
(2)触媒成分(B)
触媒成分(B)はイオン交換性層状珪酸塩であることが好ましい。
(i)イオン交換性層状珪酸塩の種類
イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に珪酸塩と略記することもある。)とは、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、かつ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライト等)が含まれることが多いが、それらを含んでもよい。それら夾雑物の種類、量、粒子径、結晶性、分散状態によっては純粋な珪酸塩以上に好ましいことがあり、そのような複合体も、触媒成分(B)に含まれる。
本発明で使用する珪酸塩は、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよく、また、それらを含んでもよい。
珪酸塩の具体例としては、例えば、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が挙げられる。
すなわち、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群等である。
珪酸塩は、主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であることが好ましく、スメクタイト族であることが更に好ましく、モンモリロナイトが特に好ましい。層間カチオンの種類は、特に限定されないが、工業原料として比較的容易に且つ安価に入手し得る観点から、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を層間カチオンの主成分とする珪酸塩が好ましい。
(ii)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
本発明に係る触媒成分(B)のイオン交換性層状珪酸塩は、特に処理を行うことなくそのまま用いることができるが、化学処理を施すことが好ましい。ここでイオン交換性層状珪酸塩の化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と粘土の構造に影響を与える処理のいずれをも用いることができ、具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等が挙げられる。
<酸処理>:
酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造のAl、Fe、Mg、等の陽イオンの一部または全部を溶出させることができる。
酸処理で用いられる酸は、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸から選択される。
処理に用いる塩類(次項で説明する)および酸は、2種以上であってもよい。塩類および酸による処理条件は、特には制限されないが、通常、塩類および酸濃度は、0.1〜50重量%、処理温度は、室温〜沸点、処理時間は、5分〜24時間の条件を選択して、イオン交換性層状珪酸塩から成る群より選ばれた少なくとも一種の化合物を構成している物質の少なくとも一部を溶出する条件で行うことが好ましい。また、塩類および酸は、一般的には水溶液で用いられる。
なお、以下の酸類、塩類を組み合わせたものを処理剤として用いてもよい。また、これら酸類、塩類の組み合わせであってもよい。
<塩類処理>:
塩類で処理される前の、イオン交換性層状珪酸塩の含有する交換可能な金属陽イオンの40%以上、好ましくは60%以上を、下記に示す塩類より解離した陽イオンと、イオン交換することが好ましい。
このようなイオン交換を目的とした塩類処理で用いられる塩類は、有機陽イオン、無機陽イオンおよび金属イオンからなる群から選ばれた少なくとも一種の陽イオンと、有機陰イオン及び無機陰イオンからなる群から選ばれた少なくとも一種の陰イオンとから構成される塩類が、例示される。例えば、周期表第1〜14族原子から成る群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンと、ハロゲン陰イオン、並びに、無機酸および有機酸由来の陰イオンから成る群より選ばれた少なくとも一種の陰イオンとから成る化合物が好ましい例として挙げられる。ここで、酸由来の陰イオンとは、酸から少なくとも1個の水素陽イオンが脱離した陰イオンのことである。例えば、HNOの様な1価の無機酸の場合には、その酸由来の陰イオンは、NO であり、HPOの様な3価の無機酸の場合には、その酸由来の陰イオンは、HPO 、HPO 2−、PO 3−、の3種類が存在する。有機酸由来の陰イオンの場合も同様である。更に好ましくは、陽イオンが金属イオン、陰イオンが無機酸由来の陰イオンやハロゲン陰イオンとから成る化合物である。
このような塩類の具体例としては、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiSO、Li(CHCOO)、LiCO、LiHCO、Li、LiClO、LiPO、CaCl、CaSO、CaC、Ca(NO、MgCl、MgBr、MgSO、Mg(PO、Mg(ClO、MgC、Mg(NO、Mg(CHCOO)等が、挙げられる。
また、Ti(CHCOO)、Ti(CO、Ti(NO、Ti(SO、TiF、TiCl、Zr(CHCOO)、Zr(CO、Zr(NO、Zr(SO、ZrF、ZrCl、Hf(CHCOO)、Hf(CO、Hf(NO、Hf(SO、HfF、HfCl、V(CHCOCHCOCH、VOCl、VCl、VCl、VBr等が、挙げられる。
また、Cr(CHCOCHCOCH、Cr(NO、Cr(ClO、CrPO、Cr(SO、CrF、CrCl、CrBr、CrI、Mn(CHCOO)、Mn(CHCOCHCOCH、MnCO、Mn(NO、MnO、Mn(ClO、MnF、MnCl、Fe(CHCOO)、Fe(CHCOCHCOCH、FeCO、Fe(NO、Fe(ClO、FePO、FeSO、Fe(SO、FeF、FeCl等が、挙げられる。
また、Co(CHCOO)、Co(CHCOCHCOCH、CoCO、Co(NO、CoC、Co(ClO、Co(PO、CoSO、CoF、CoCl、NiCO、Ni(NO、NiC、Ni(ClO、NiSO、NiCl、NiBr等が、挙げられる。
さらに、Zn(CHCOO)、Zn(CHCOCHCOCH、ZnCO、Zn(NO、Zn(ClO、Zn(PO、ZnSO、ZnF、ZnCl、AlF、AlCl、AlBr、AlI、Al(SO、Al(C、Al(CHCOCHCOCH、Al(NO、AlPO、GeCl、GeBr、GeI等が、挙げられる。
<アルカリ処理>:
酸、塩処理の他に、必要に応じて下記のアルカリ処理や有機物処理を行ってもよい。アルカリ処理で用いられる処理剤としては、LiOH、NaOH、KOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)などが例示される。
<有機物処理>:
また、有機物処理に用いられる有機処理剤の例としては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、トリフェニルホスホニウム、等が挙げられる。
また、有機物処理剤を構成する陰イオンとしては、塩類処理剤を構成する陰イオンとして例示した陰イオン以外にも、例えばヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレートなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
また、これらの処理剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの組み合わせは、処理開始時に添加する処理剤について組み合わせて用いてもよいし、処理の途中で添加する処理剤について、組み合わせて用いてもよい。また化学処理は、同一または異なる処理剤を用いて複数回行うことも可能である。
これらイオン交換性層状珪酸塩には、通常、吸着水および層間水が含まれる。これらの吸着水および層間水を除去して触媒成分(B)として使用するのが好ましい。
イオン交換性層状珪酸塩の吸着水および層間水の加熱処理方法は、特に制限されないが、層間水が残存しないように、また、構造破壊を生じないよう条件を選ぶことが必要である。加熱時間は0.5時間以上、好ましくは1時間以上である。その際、除去した後の触媒成分(B)の水分含有率が、温度200℃、圧力1mmHgの条件下で2時間脱水した場合の水分含有率を0重量%とした時、3重量%以下、好ましくは1重量%以下、であることが好ましい。
以上のように、触媒成分(B)として、特に好ましいものは、塩類処理および/または酸処理を行って得られた、水分含有率が3重量%以下の、イオン交換性層状珪酸塩である。
イオン交換性層状珪酸塩は、触媒形成または触媒として使用する前に、後述する有機アルミニウム化合物の触媒成分(C)で処理を行うことが可能で、好ましい。イオン交換性層状珪酸塩1gに対する触媒成分(C)の使用量に制限は無いが、通常20mmol以下、好ましくは0.5mmol以上、10mmol以下で行う。処理温度や時間の制限は無く、処理温度は、通常0℃以上、70℃以下、処理時間は10分以上、3時間以下で行う。処理後に洗浄することも可能で、好ましい。溶媒は、後述する予備重合やスラリー重合で使用する溶媒と同様の炭化水素溶媒を使用する。
また、触媒成分(B)は、平均粒径が5μm以上の球状粒子を用いるのが好ましい。粒子の形状が球状であれば、天然物あるいは市販品をそのまま使用してもよいし、造粒、分粒、分別等により粒子の形状および粒径を制御したものを用いてもよい。
ここで用いられる造粒法は、例えば攪拌造粒法、噴霧造粒法が挙げられるが、市販品を利用することもできる。
また、造粒の際に、有機物、無機溶媒、無機塩、各種バインダ−を用いてもよい。
上記のようにして得られた球状粒子は、重合工程での破砕や微粉の生成を抑制するためには0.2MPa以上、特に好ましくは0.5MPa以上の圧縮破壊強度を有することが望ましい。このような粒子強度の場合には、特に予備重合を行う場合に、粒子性状改良効果が有効に発揮される。
(3)触媒成分(C)
触媒成分(C)は、有機アルミニウム化合物である。触媒成分(C)として用いられる有機アルミニウム化合物は、一般式:(AlR31 3−qで示される化合物が適当である。この式で表される化合物を単独で、複数種混合してあるいは併用して使用することができる。この式中、R31は、炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Zは、ハロゲン、水素、アルコキシ基、アミノ基を示す。qは1〜3の、pは1〜2の整数を各々表す。R31としては、アルキル基が好ましく、またZは、それがハロゲンの場合には塩素が、アルコキシ基の場合には炭素数1〜8のアルコキシ基が、アミノ基の場合には炭素数1〜8のアミノ基が、好ましい。
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、p=1、q=3のトリアルキルアルミニウムまたはアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、R31が炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
(4)触媒の形成・予備重合について
触媒は、上記の各触媒成分(A)〜(C)を(予備)重合槽内で、同時にもしくは連続的に、あるいは一度にもしくは複数回にわたって、接触させることによって形成させることができる。
各成分の接触は、脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素溶媒中で行うのが普通である。接触温度は、特に限定されないが、−20℃から150℃の間で行うのが好ましい。接触順序としては、合目的的な任意の組み合わせが可能であるが、特に好ましいものを各成分について示せば、次の通りである。
触媒成分(A)と触媒成分(B)を接触させる前に、触媒成分(A)と、あるいは触媒成分(B)と、または触媒成分(A)および触媒成分(B)の両方に触媒成分(C)を接触させること、または、触媒成分(A)と触媒成分(B)を接触させるのと同時に触媒成分(C)を接触させること、または、触媒成分(A)と触媒成分(B)を接触させた後に触媒成分(C)を接触させることが可能であるが、好ましくは、触媒成分(A)と触媒成分(B)を接触させる前に、触媒成分(C)といずれかに接触させる方法である。
また、各成分を接触させた後、脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素溶媒にて洗浄することが可能である。
触媒成分(A)、(B)および(C)の使用量は任意である。例えば、触媒成分(B)に対する触媒成分(A)の使用量は、触媒成分(B)1gに対し、好ましくは0.1μmol〜1,000μmol、特に好ましくは0.5μmol〜500μmolの範囲である。また触媒成分(A)に対する触媒成分(C)の量は、遷移金属のモル比で、好ましくは0.01〜5×10、特に好ましくは0.1〜1×10、の範囲内が好ましい。
ここで、本触媒系における成分[A−1](一般式(a1)で表される化合物)と成分[A−2](一般式(a2)で表される化合物)の機能を説明しておく。
本触媒系は、モノマーの重合によりマクロマーを形成し、そのマクロマーとモノマーとの共重合によって、長鎖分岐を有するポリプロピレンを製造することができるものである。成分[A−1]は、相対的に分子量が小さく、かつ、末端にビニル基を有する所謂マクロマーを生成する触媒成分であり、成分[A−2]は、相対的に分子量の大きな鎖状のポリプロピレン鎖の他に、[A−1]から生成したマクロマーをプロピレンと共重合して、長鎖分岐を有する高分子量のポリプロピレン鎖を生成する触媒成分である。
従って、成分[A−1]と成分[A−2]の使用比率を変化させることで、ポリプロピレン中の長鎖分岐の数を制御することができる。成分[A−1]の使用比率を高くするほどマクロマーの生成量が増え、ポリプロピレン中の長鎖分岐が増える。そうすると、ポリプロピレン(X)のMTが高くなり、分岐指数gが小さくなり、λmaxが高くなる。成分[A−2]の使用比率を高くすれば、逆方向に変化する。実際にどの程度長鎖分岐が生成するかは用いる成分[A−1]と成分[A−2]によって変化するが、実際に成分[A−1]と成分[A−2]の使用比率を変化させて長鎖分岐の生成量を把握し、望みの値に調整することは、当業者にとって容易なことである。長鎖分岐の生成量を制御できれば、MT、分岐指数g、λmaxを制御できることは自明である。
また、[A−1]の選択によってマクロマーの分子量を調整することにより、長鎖分岐の長さを変えることもできる。
また、ポリプロピレン(X)のCXSとmm分率についても、上述の好ましい例の範囲で適宜条件や化合物を選定しながら調整すれば、特性(X−iv)、(X−vii)を望みの値に調整することは、容易である。
上記の通り、成分[A−1]と成分[A−2]の使用比率は、ポリプロピレン(X)の特性に合わせて適宜調整すれば良いが、一般的には、遷移金属のモル比で、成分[A−1]と成分[A−2]の合計に対する[A−1]の比率が、0.30以上、0.99以下であることが好ましい。
以上の様に例示した触媒は、本重合の前に少量のオレフィンと接触させて予備重合を行っても良い。予備重合を行うことにより、重合体粒子の急激な成長を防止し、形状の良好なポリプロピレン粒子を形成することができる。
予備重合時に使用するオレフィンは、特に限定はないが、プロピレン、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレン等を例示することができる。オレフィンのフィード方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持するフィード方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせる等、任意の方法が可能である。
予備重合温度、時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が触媒成分(B)に対し、好ましくは0.01〜100、さらに好ましくは0.1〜50である。また、予備重合時に触媒成分(C)を添加、又は追加することもできる。また、予備重合終了後に洗浄することも可能である。
また、上記の各成分の接触の際もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体、シリカ、チタニア等の無機酸化物の固体を共存させる等の方法も可能である。
VI−2.重合方法
(1)触媒の使用/プロピレン重合について
重合様式は、前記触媒成分(A)、触媒成分(B)および触媒成分(C)を含むオレフィン重合用触媒とモノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。
具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いる、所謂バルク法、溶液重合法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相法などが採用できる。また、連続重合、回分式重合を行う方法も適用される。また、単段重合以外に、2段以上の多段重合することも可能である。
スラリー重合の場合は、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。
(2)重合条件
また、重合温度は、0℃以上150℃以下である。特に、バルク重合を用いる場合には、40℃以上が好ましく、更に好ましくは50℃以上である。また上限は80℃以下が好ましく、更に好ましくは75℃以下である。
さらに、気相重合を用いる場合には、40℃以上が好ましく、更に好ましくは50℃以上である。また上限は100℃以下が好ましく、更に好ましくは90℃以下である。
重合圧力は、1.0MPa以上5.0MPa以下であることが好ましい。特に、バルク重合を用いる場合には、1.5MPa以上が好ましく、更に好ましくは2.0MPa以上である。また上限は4.0MPa以下が好ましく、更に好ましくは3.5MPa以下である。
さらに、気相重合を用いる場合には、1.5MPa以上が好ましく、更に好ましくは1.7MPa以上である。また上限は2.5MPa以下が好ましく、更に好ましくは2.3MPa以下である。
さらに、分子量調節剤として、水素をプロピレンに対してモル比で1.0×10−6以上、1.0×10−2以下の範囲で用いることができる。
また、エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンをコモノマーとして使用し、プロピレンと共重合を行うことも可能である。ポリプロピレン(X)がプロピレン共重合体である場合、コモノマーはエチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンであり、ポリプロピレン(X)中のコモノマーの含量は、3wt%以下である。ポリプロピレン(X)は、プロピレン単独重合体である方が、耐熱性や剛性が高く好ましい。
VII.インパクトコポリマー(Y)
インパクトコポリマー(Y)は、以下の特性(YH−i)〜(YH−ii)を満たすプロピレン(共)重合体(YH)と特性(YC−i)〜(YC−ii)を満たすプロピレン−エチレン共重合体(YC)からなり、更に、特性(Y−i)を満たすものである。
特性(YH−i):プロピレン単独重合体、又は、エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとプロピレンとの共重合体であって、プロピレン(共)重合体(YH)が共重合体の場合には(YH)中のエチレン及びα−オレフィンの含量が0を超え、3wt%以下である。
特性(YH−ii):MFRが1.0〜100g/10分である。
特性(YC−i):プロピレン−エチレン共重合体(YC)中のエチレン含量がプロピレン−エチレン共重合体(YC)全量に対し10〜90wt%である。
特性(YC−ii):135℃デカリン中で測定した固有粘度が5〜20dl/gである。
特性(Y−i):インパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量がインパクトコポリマー(Y)全量に対し1wt%以上、50wt%未満である。
インパクトコポリマーとは、通常、結晶性のプロピレン(共)重合体とプロピレン−エチレン共重合体のリアクターブレンドであって、古くはプロピレン−エチレンブロック共重合体と呼ばれていた。インパクトコポリマー(Y)は、特性(YH−i)〜(YH−ii)を満たすプロピレン(共)重合体(YH)と特性(YC−i)〜(YC−ii)を満たすプロピレン−エチレン共重合体(YC)とのリアクターブレンドである。プロピレン(共)重合体(YH)、プロピレン−エチレン共重合体(YC)、インパクトコポリマー(Y)の順に詳細を説明する。
VII−1.プロピレン(共)重合体(YH)
インパクトコポリマー(Y)の構成成分であるプロピレン(共)重合体(YH)は、インパクトコポリマー(Y)の結晶部を構成する主な成分であって、結晶性と流動性の2点が重要な制御ポイントである。
VII−1−1.特性(YH−i)
インパクトコポリマー(Y)の構成成分であるプロピレン(共)重合体(YH)は、プロピレン単独重合体、又は、エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとプロピレンとの共重合体である。
プロピレン(共)重合体(YH)が共重合体の場合には、(YH)中のエチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンの含量が0を超え、3wt%以下である。エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンの含量が3wt%を超えると、最終製品の耐熱性が悪くなり好ましくない。
炭素数4〜10のα−オレフィンの具体例としては、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、を挙げることができる。エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンの中で最も好ましいのは、エチレンと1−ブテンである。
プロピレン(共)重合体(YH)が共重合体である場合、エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンの含量の制御は、重合槽に供給するモノマーの量比(例:プロピレンに対するエチレンの量比)を適宜調整することによって行うのが通例である。用いる触媒の共重合特性を事前に調べておいて、重合槽のガス組成が望みのコモノマー含量に対応する値になるようモノマーの供給量比を調整すればよい。
耐熱性の観点から、プロピレン(共)重合体(YH)は、プロピレン単独重合体であることが好ましい。
VII−1−2.特性(YH−ii):MFR
インパクトコポリマー(Y)の構成成分であるプロピレン(共)重合体(YH)は、MFRが1〜100g/10分である。上限値に関しては、プロピレン(共)重合体(YH)のMFRは、より好ましくは70g/10分以下、更に好ましくは60g/10分以下、最も好ましくは50g/10分以下である。下限値に関しては、プロピレン(共)重合体(YH)のMFRは、より好ましくは5g/10分以上、更に好ましくは10g/10分以上、最も好ましくは15g/10分以上、である。MFRが上記の範囲内にあると、プロピレン(共)重合体(YH)とプロピレン−エチレン共重合体(YC)の馴染みが良くなり、輝点等が向上するので好ましい。
MFRを上記の範囲に調整する具体的な方法として、重合時に添加する水素の量を変更する方法を挙げることができる。詳細はポリプロピレン(X)の特性(X−iii)の説明と同じであるので割愛する。
なお、MFRの測定法は、前述のポリプロピレン(X)におけるMFRの測定方法と同じである。
VII−2.プロピレン−エチレン共重合体(YC)
インパクトコポリマー(Y)の構成成分であるプロピレン−エチレン共重合体(YC)は発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物において、配向結晶化能を有するポリプロピレン(X)の剪断下の構造形成を抑制する成分であって、非晶性と運動性の2点が重要な制御ポイントである。
発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物に用いられるポリプロピレンは、通常のポリプロピレンと比較して、高いMTを示すものを用いることが多い。この様なポリプロピレンは、発泡セルが形成され成長する際に、歪硬化を起こすことにより、発泡セルを強化する効果があると考えられている。一方で、押出機内の様に剪断が掛かる条件下では、高いMTを示すポリプロピレンを中心とした運動を阻害されたポリマー鎖が徐々に集まってきて、ある種の構造を形成する様になる。この構造は、いわゆるシシ−ケバブ構造(或いはその前駆体)であり、ポリプロピレン、又は、ポリプロピレン樹脂組成物の他の部分に較べて強度が高く、異物として振る舞ってしまう。そのため、特に延展に対して、抗う振る舞いを示し、特に押出発泡成形の場合では、シートやフィルム表面の荒れを生じたり、発泡時のセルの成長の際にセル隔壁が破れて、連続気泡率が高くなったり、といった問題を生じてしまう。つまり、発泡成形においては、高いMTを示すポリプロピレン鎖は、ポリプロピレン、又は、ポリプロピレン樹脂組成物中に広く分散しているのが望ましい状態であり、局在化して構造を形成するのは望ましくない状態なのである。構造形成を阻害するためには、自身が結晶とならないポリマー鎖であって、かつ、自身の運動性が低くて(かつ、自身は構造形成の原因となりづらく)周囲のポリマーの運動を阻害して構造を形成する位置に移動できない様にすれば良い。すなわち、非晶性の高分子量ポリマーが有効であるとの考えにいたる。これが、インパクトコポリマー(Y)の構成成分であるプロピレン−エチレン共重合体(YC)であり、非晶性と運動性の2点が重要な制御ポイントとなる所以である。
インパクトコポリマー(Y)の構成成分であるプロピレン−エチレン共重合体(YC)は、プロピレンとエチレンの共重合体であるが、効果を阻害しない範囲で他のモノマーを共重合したものでも良い。具体的には、炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンを用いることができる。この様なα−オレフィンの具体例としては、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、を挙げることができる。この中で、特に1−ブテンが好ましい。プロピレン−エチレン共重合体(YC)がプロピレンとエチレン以外のモノマー単位を含む場合、その含量は10〜40wt%であることが好ましい。プロピレンとエチレン以外のモノマー単位が多すぎると、結晶性を示す場合があり好ましくない。
VII−2−1.特性(YC−i):プロピレン−エチレン共重合体(YC)中のエチレン含量
インパクトコポリマー(Y)の構成成分であるプロピレン−エチレン共重合体(YC)は、プロピレン−エチレン共重合体(YC)中のエチレン含量が10〜90wt%である(但し、プロピレン−エチレン共重合体(YC)全量を100wt%とする)。
プロピレン−エチレン共重合体(YC)中のエチレン含量は、プロピレン−エチレン共重合体(YC)の非晶性を決める重要な因子である。プロピレン−エチレン共重合体(YC)中のエチレン含量が上記の範囲内にあると、プロピレン−エチレン共重合体(YC)が結晶性を示さず、剪断下の構造形成を抑制できるので、好ましい。
プロピレン−エチレン共重合体(YC)は、インパクトコポリマー(Y)中の分散性が高い方が好ましく、その観点で、プロピレン−エチレン共重合体(YC)中のエチレン含量は、高すぎない方が好ましい。具体的には、プロピレン−エチレン共重合体(YC)中のエチレン含量は、好ましくは70wt%以下、より好ましくは60wt%以下、更に好ましくは50wt%以下、最も好ましくは40wt%以下である。一方、エチレン含量の下限値については、プロピレン−エチレン共重合体(YC)の結晶性分布を考慮すると、低すぎない方が安定して剪断下の構造形成抑制効果を期待できる。具体的には、プロピレン−エチレン共重合体(YC)中のエチレン含量は、好ましくは15wt%以上、更に好ましくは20wt%以上、最も好ましくは25wt%以上である。
プロピレン−エチレン共重合体(YC)中のエチレン含量を上記の範囲に調整する具体的な方法として、重合時に添加するプロピレンとエチレンの比率を変更する方法を挙げることができる。プロピレン−エチレン共重合体(YC)を製造する際には、プロピレンとエチレンを共重合するのであるから、重合槽内におけるプロピレンとエチレンの比率によって、プロピレン−エチレン共重合体(YC)中のエチレン含量が決まる。重合槽内におけるプロピレンとエチレンの比率とプロピレン−エチレン共重合体(YC)中のエチレン含量の関係は、触媒や温度等の重合条件によって異なるが、用いる触媒や重合条件の下で重合槽内におけるプロピレンとエチレンの比率とプロピレン−エチレン共重合体(YC)中のエチレン含量の関係を事前に把握しておき、望みのエチレン含量となる様にプロピレンとエチレンの比率を調整することは当業者にとって容易なことである。重合槽内におけるプロピレンとエチレンの比率を調整するには、重合時に添加するプロピレンとエチレンの比率を調整すればよい。
VII−2−2.特性(YC−ii):固有粘度
インパクトコポリマー(Y)の構成成分であるプロピレン−エチレン共重合体(YC)は、135℃デカリン中で測定した固有粘度が5〜20dl/gである。
プロピレン−エチレン共重合体(YC)の固有粘度は、プロピレン−エチレン共重合体(YC)の運動性を決める重要な因子である。上述の通り、剪断下の構造形成を抑制するためには、プロピレン−エチレン共重合体(YC)の運動性が低い方が好ましく、従って、その固有粘度は高い方が望ましい。つまり、プロピレン−エチレン共重合体(YC)の固有粘度がある程度高いと、剪断下の構造形成を抑制できるので好ましい。プロピレン−エチレン共重合体(YC)の固有粘度の下限値については、好ましくは6dl/g以上、更に好ましくは7dl/g以上、最も好ましくは8dl/g以上である。プロピレン−エチレン共重合体(YC)の固有粘度の上限値については、あまり高すぎない方がインパクトコポリマー(Y)中で上手く分散し、剪断下の構造形成抑制効果が大きくなり、また、輝点の問題も起き難いので好ましい。具体的には、プロピレン−エチレン共重合体(YC)の固有粘度は、好ましくは16dl/g以下、更に好ましくは13dl/g以下、最も好ましくは10dl/g以下である。
プロピレン−エチレン共重合体(YC)の固有粘度を上記の範囲に調整する具体的な方法として、重合時に添加する水素の量を変更する方法を挙げることができる。詳細は、ポリプロピレン(X)の特性(X−iii)の説明と同じであるので割愛する。
VII−3.インパクトコポリマー(Y)
インパクトコポリマー(Y)は、上記に説明したプロピレン(共)重合体(YH)とプロピレン−エチレン共重合体(YC)からなり、更に、特性(Y−i)を満たすものである。
VII−3−1.特性(Y−i):インパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量
インパクトコポリマー(Y)は、インパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量が1〜50wt%である(但し、インパクトコポリマー(Y)全量を100wt%とする)。
インパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量の下限値については、好ましくは5wt%以上、より好ましくは10wt%以上、更に好ましくは15wt%以上、最も好ましくは20wt%以上である。インパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量の上限値については、好ましくは45wt%以下、より好ましくは40wt%以下、更に好ましくは35wt%以下、最も好ましくは30wt%以下である。
なお、インパクトコポリマー(Y)全量を100wt%とするので、インパクトコポリマー(Y)中のプロピレン(共)重合体(YH)の含量は、100wt%からプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量を減じた値となる。インパクトコポリマー(Y)の構成成分であるプロピレン−エチレン共重合体(YC)は、既に述べた通り、高いMTを示すポリプロピレンが剪断下で構造形成するのを抑制する働きを持つ、極めて重要な成分であり、インパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量が上記の範囲内にあると、この構造形成抑制効果が充分に発揮され、また、耐熱性も維持できるので好ましい。
インパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量を上記の範囲に調整する具体的な方法として、インパクトコポリマー(Y)を製造する際に、プロピレン(共)重合体(YH)とプロピレン−エチレン共重合体(YC)の製造量を調整する方法を挙げることができる。インパクトコポリマーは、リアクターブレンドであるので、製造工程中にプロピレン(共)重合体(YH)を製造する工程とプロピレン−エチレン共重合体(YC)を製造する工程がある。例えば、インパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量を下げる際は、プロピレン(共)重合体(YH)の相対量を増やして、プロピレン−エチレン共重合体(YC)の相対量を減らせばよい。その場合、プロピレン(共)重合体(YH)の製造量を変更せずに、プロピレン−エチレン共重合体(YC)の製造量を減らしても良いし、プロピレン(共)重合体(YH)の製造量を増やして、プロピレン−エチレン共重合体(YC)の製造量を変更しないことでも良いし、プロピレン(共)重合体(YH)の製造量を増やして、プロピレン−エチレン共重合体(YC)の製造量を減らしても良い。
また、インパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量を上げる際は、逆の考え方を用いればよい。プロピレン(共)重合体(YH)の製造量を上げるには、プロピレン(共)重合体(YH)を製造する工程の滞留時間を長くしたり、重合圧力を高くしたりすれば良い。プロピレン(共)重合体(YH)の製造量を下げるには逆の操作を行えばよい。プロピレン−エチレン共重合体(YC)の製造量を変更する場合も同様である。また、プロピレン−エチレン共重合体(YC)を製造する工程で、エタノールや酸素などの重合抑制剤を用いている場合には、その添加量を増減することでも、制御することができる。重合抑制剤の添加量を増やせば、プロピレン−エチレン共重合体(YC)の製造量が下がる。逆も同様に調整が可能である。
VII−3−2.MFR
インパクトコポリマー(Y)は、インパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量が1〜50wt%であるが、その様なインパクトコポリマー(Y)の中でも、以下の特性(Y−ii)を満たすものが好ましい。
特性(Y−ii):MFRが0.1〜20g/10分である。
インパクトコポリマー(Y)のMFRは0.1〜20g/10分であることが好ましいが、より好ましくは0.5〜10g/10分、更に好ましくは0.7〜5.0g/10分、最も好ましくは1.0〜3.0g/10分である。インパクトコポリマー(Y)のMFRが上記の範囲内にあると、押出挙動が安定し、ネックインも抑制できるので好ましい。
次に、インパクトコポリマー(Y)のMFRを制御する方法を説明する。
インパクトコポリマー(Y)は、上記に説明したプロピレン(共)重合体(YH)とプロピレン−エチレン共重合体(YC)のリアクターブレンドであるので、インパクトコポリマー(Y)のMFRを変更する手法としては、プロピレン(共)重合体(YH)のMFRを変更する方法、プロピレン−エチレン共重合体(YC)のMFRを変更する方法、インパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量を変更する方法、の3つの方法がある。特性(X−iii)、特性(YC−ii)から明らかな様に、プロピレン(共)重合体(YH)のMFRは、プロピレン−エチレン共重合体(YC)のMFRよりも高い値を有する。従って、インパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量を増やすと、MFRの低い成分の量が増えるために、インパクトコポリマー(Y)のMFRは下がる。逆もまた同様である。
従って、インパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量を変えることで、インパクトコポリマー(Y)のMFRを制御することができる。プロピレン(共)重合体(YH)のMFRとインパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量の変更方法については、既に説明した通りである。プロピレン−エチレン共重合体(YC)のMFRも、プロピレン(共)重合体(YH)と同様に水素の添加量を変化させることで制御が可能である。
なお、MFRの測定法は、前述のポリプロピレン(X)におけるMFRの測定方法と同じである。
VII−3−3.インパクトコポリマー(Y)のインデックスの決定方法
インパクトコポリマーは、一般にプロピレン(共)重合体とプロピレン−エチレン共重合体のリアクターブレンドであり、通常は、プロピレン(共)重合体を製造する工程を先に実施し、その後でプロピレン−エチレン共重合体を製造する工程を行う。従って、普通は、プロピレン−エチレン共重合体だけを直接分析することができない。直接的に分析可能なのは、プロピレン(共)重合体とインパクトコポリマー全体の2つである。
この様に、直接分析することができないプロピレン−エチレン共重合体のインデックスを決める方法は2つある。一つは分別を用いる方法である。CXSの様な分別手法を用いて、その構成成分であるプロピレン(共)重合体とプロピレン−エチレン共重合体を分離し、個々にインデックスを求める方法である。もう一つは、直接的に分析可能なプロピレン(共)重合体とインパクトコポリマー全体の分析結果、並びに、プロピレン(共)重合体とプロピレン−エチレン共重合体の生産バランスを用いて、プロピレン−エチレン共重合体のインデックスを求める方法である。
本発明においては、インパクトコポリマー(Y)のインデックス、すなわち、インパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量、プロピレン−エチレン共重合体(YC)の固有粘度とエチレン含量については、以下の方法で求めた値を用いることと規定する。
手順1.インパクトコポリマー(Y)を25℃キシレンで可溶分(CXS成分)と不溶分(CXIS成分)に分離し、CXS成分を13C−NMRで分析してエチレン含量を求める。
手順2.13C−NMRによる分析の結果、CXS成分のエチレン含量が15wt%以上となる場合は、CXS成分をプロピレン−エチレン共重合体(YC)と見なす。つまり、CXSの値(wt%)をプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量(wt%)とし、CXS成分のエチレン含量をプロピレン−エチレン共重合体(YC)中のエチレン含量とする。同様に、プロピレン−エチレン共重合体(YC)の固有粘度はこのCXS成分を分析することにより決定する。
手順3.13C−NMRによる分析の結果、CXS成分のエチレン含量が15wt%未満となる場合には、プロピレン(共)重合体とインパクトコポリマー全体の分析結果、並びに、ロピレン(共)重合体とプロピレン−エチレン共重合体の生産バランス、を用いて、プロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量、プロピレン−エチレン共重合体(YC)の固有粘度とエチレン含量、を決定する。
以下、順に詳説する。
(1)25℃キシレンによる分別方法
ポリプロピレン(X)の特性(X−iv)の所で説明した方法を用いて、インパクトコポリマー(Y)のCXSの測定を行い、25℃キシレン可溶分(CXS成分)回収する。このCXS成分を用いて、次の(2)に記載の方法によりエチレン含量を求める。
(2)13C−NMRによるエチレン含量の測定方法
CXS成分のエチレン含量の測定の際には、下記の測定条件を用いることとする。
[エチレン含量測定用の13C−NMR測定条件]
機種:日本電子(株)製 GSX−400
溶媒:o−ジクロベンゼン+重ベンゼン(4:1(体積比))
濃度:100mg/mL
温度:130℃
パルス角:90°
パルス間隔:15秒
積算回数:5,000回以上
スペクトルの帰属は、例えば、Macromolecules 17,1950 (1984)などを参考に行えばよい。上記条件により測定されたスペクトルの帰属は、表1の通りである。表1中Sαα等の記号はCarmanら(Macromolecules 10,536(1977))の表記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
Figure 0006232832
以下、「P」を共重合体連鎖中のプロピレン単位、「E」をエチレン単位とすると、連鎖中にはPPP、PPE、EPE、PEP、PEE、およびEEEの6種類のトリアッドが存在し得る。Macromolecules 15,1150 (1982)などに記されているように、これらトリアッドの濃度と、スペクトルのピーク強度とは、以下の(1)〜(6)の関係式で結び付けられる。
[PPP]=k×I(Tββ) …(1)
[PPE]=k×I(Tβδ) …(2)
[EPE]=k×I(Tδδ) …(3)
[PEP]=k×I(Sββ) …(4)
[PEE]=k×I(Sβδ) …(5)
[EEE]=k×{I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} …(6)
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。したがって、
[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1 … (7)
である。また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えば、I(Tββ)はTββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。上記(1)〜(7)の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含有量が求まる。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
なお、メタロセン触媒を用いてインパクトコポリマー(Y)を製造した場合には、少量のプロピレン異種結合(2,1−結合及び/又は1,3−結合)が生成し、それにより、表2の微小なピークを生じる。
Figure 0006232832
正確なエチレン含有量を求めるには、これら異種結合に由来するピークも考慮して計算に含める必要があるが、異種結合由来のピークの完全な分離・同定が困難であり、また異種結合量が少量であることから、エチレン含有量は、実質的に異種結合を含まないチーグラー・ナッタ系触媒で製造された共重合体の解析と同じく式(1)〜(7)の関係式を用いて求めることとする。
エチレン含有量のモル%から重量%への換算は以下の式を用いて行う。
エチレン含有量(重量%)=(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100
ここで、Xはモル%表示でのエチレン含有量である。
(3)CXS成分の分析により固有粘度を求める方法
CXS成分を13C−NMRで分析した結果、CXS成分のエチレン含量が15wt%以上であれば、25℃キシレンによる溶媒分別によりプロピレン−エチレン共重合体(YC)を正しく分離できていると判断する。従って、手順2に記載の通り、CXSの値(wt%)をプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量(wt%)とし、CXS成分のエチレン含量をプロピレン−エチレン共重合体(YC)中のエチレン含量とする。同様に、プロピレン−エチレン共重合体(YC)の固有粘度も、このCXS成分を分析することにより決定する。
具体的には、上記の通り回収したCXS成分を用いて固有粘度を測定する。固有粘度の測定は、ウベローデ型毛管粘度計を用い、温度135℃、デカリン溶媒、の条件で行うこととする。
(4)プロピレン(共)重合体とインパクトコポリマー全体の分析結果から計算する方法
CXS成分を13C−NMRで分析した結果、CXS成分のエチレン含量が15wt%未満の場合には、プロピレン−エチレン共重合体(YC)の結晶性を無視できなくなるので、プロピレン(共)重合体(YH)とプロピレン−エチレン共重合体(YC)を25℃キシレンで分別できていないと、考えなくてはならない。この場合には、以下の(4)−1〜3の手順によって、インパクトコポリマー(Y)のインデックスを定めることとする。
(4)−1.インパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量の決定
まず、インパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量を生産バランスから決める。具体的には、プロピレン(共)重合体(YH)を製造する工程の生産量(以下、PR−YHと記載。単位はT/h。)とプロピレン−エチレン共重合体(YC)を製造する工程の生産量(以下、PR−YCと記載。単位はT/h。)を求め、両方の値を用いて、以下の式(III)からインパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量([YC]、単位はwt%。)を求める。
[YC]=PR−YC÷(PR−YH+PR−YC)x100 (III)
PR−YH、PR−YCは、ヒートバランスから求めることが一般的である。特に障害がない場合、本発明では、13C−NMRの結果、CXS成分のエチレン含量が15wt%未満の場合には、PR−YHとPR−YCは、ヒートバランスから求めることとする。PR−YCをヒートバランスから求めることが事実上不可能である場合には、PR−YCの代わりにインパクトコポリマー(Y)全体の生産量(以下、PR−Yと記載。単位はT/h。)を用いて、以下の式(IV)からインパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量を求めることとする。
[YC]=(PR−Y − PR−YH)÷PR−Yx100 (IV)
(4)−2.プロピレン−エチレン共重合体(YC)中のエチレン含量の決定
次に、プロピレン−エチレン共重合体(YC)中のエチレン含量([E−YC]、単位はwt%。)を求める。この際、上記(4)−1で求めたインパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量([YC]、単位はwt%。)の他に、プロピレン(共)重合体(YH)中のエチレン含量([E−YH]、単位はwt%。)とインパクトコポリマー(Y)中のエチレン含量([E−Y]、単位はwt%。)を用いる。具体的には、以下の式(V)から計算する。
[E−YC]=[[E−Y]−{[E−YH]×(100 − [YC])÷100}]÷[YC]x100 (V)
ここで、[E−YH]と[E−Y]は、直接13C−NMRによる分析から求めることができる。この場合の分析条件、解析方法は、上記(2)13C−NMRによるエチレン含量の測定方法の項で記載した通りとする。
(4)−3.プロピレン−エチレン共重合体(YC)の固有粘度の決定
最後に、プロピレン−エチレン共重合体(YC)の固有粘度([η−YC]、単位はdl/g。)を求める。この場合は、上記(4)−1で求めたインパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量([YC]、単位はwt%。)の他に、プロピレン(共)重合体(YH)の固有粘度([η−YH]、単位はdl/g。)とインパクトコポリマー(Y)の固有粘度([η−Y]、単位はdl/g。)を用いる。具体的には、以下の式(VI)から計算する。
[η−YC]=[[η−Y]−{[η−YH]×(100 − [YC])÷100}]÷[YC]x100 (VI)
ここで、プロピレン(共)重合体(YH)の固有粘度[η−YH]、インパクトコポリマー(Y)の固有粘度[η−Y]は、ウベローデ型毛管粘度計を用い、温度135℃、デカリン溶媒、の条件で行うこととする。
VIII.インパクトコポリマー(Y)の製造方法
インパクトコポリマー(Y)は、上記の特性(Y−i)を満たすものであって、かつ、上記の特性(YH−i)〜(YH−ii)を満たすプロピレン(共)重合体(YH)と、上記の特性(YC−i)〜(YC−ii)を満たすプロピレン−エチレン共重合体(YC)とからなるものであり、本要件を有するものであれば、特に製造方法を限定するものではない。
以下、具体的な例を挙げながら、インパクトコポリマー(Y)を製造するための適正な形態を説明する。
VIII−1.触媒
インパクトコポリマー(Y)を製造するための触媒は、任意のものを用いることができるが、特性(YC−i)〜(YC−ii)を満たすプロピレン−エチレン共重合体(Y−2)を構成成分として製造する観点から、チーグラー・ナッタ触媒を用いる方が好ましい。チーグラー・ナッタ触媒を用いる場合、具体的な触媒の製造法は、特に限定されるものではないが、一例として特開2007−254671号公報に開示された触媒を、例示することができる。
具体的には、インパクトコポリマー(Y)の製造に好適なチーグラー・ナッタ触媒の代表的な例として、以下の構成成分、
(ZN−1):チタン、マグネシウム、ハロゲンを必須成分として含有する固体成分、
(ZN−2):有機アルミニウム化合物、
(ZN−3):電子供与体、
からなる触媒を挙げることができる。
(1)固体成分(ZN−1)
インパクトコポリマー(Y)の製造に好適なチーグラー・ナッタ触媒の構成成分である固体成分(ZN−1)は、チタン(ZN−1a)、マグネシウム(ZN−1b)、ハロゲン(ZN−1c)を必須成分として含有するものであり、任意成分として、電子供与体(ZN−1d)を用いることができる。ここで、「必須成分として含有する」ということは、挙示の三成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の成分を任意の形態で含んでも良いということを示すものである。以下に詳述する。
(ZN−1a):チタン
チタン源となるチタン化合物としては、任意のものを用いることができる。代表的な例としては、特開平3−234707号公報に開示されている化合物を挙げることができる。チタンの価数に関しては、4価、3価、2価、0価の任意の価数を持つチタン化合物を用いることができるが、4価のチタン化合物を用いることが望ましい。
(ZN−1b):マグネシウム
マグネシウム源となるマグネシウム化合物としては、任意のものを用いることができる。代表的な例としては、特開平−234707号公報に開示されている化合物を挙げることができる。一般的には、塩化マグネシウム、ジエトキシマグネシウム、金属マグネシウム、ブチルマグネシウムクロライドが用いられる場合が多い。
(ZN−1c):ハロゲン
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、及びそれらの混合物を用いることができる。この中で塩素が特に好ましい。
(ZN−1d):電子供与体
固体成分(ZN−1)は、任意成分として電子供与体を含有しても良い。電子供与体(ZN−1d)の代表的な例としては、特開2004−124090号公報に開示されている化合物を挙げることができる。一般的には、有機酸及び無機酸、並びにそれらの誘導体(エステル、酸無水物、酸ハライド、アミド)化合物類、エーテル化合物類、ケトン化合物類、アルデヒド化合物類、アルコール化合物類、アミン化合物類、などを用いることが望ましい。
これらの中で好ましいのは、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘプチルに代表されるフタル酸エステル化合物類、フタロイルジクロライドに代表されるフタル酸ハライド化合物類、2−n−ブチル−マロン酸ジエチルの様な2位に一つ又は二つの置換基を有するマロン酸エステル化合物類、2−n−ブチル−コハク酸ジエチルの様な2位に一つ又は二つの置換基若しくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸エステル化合物類、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパンや2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパンの様な2位に一つ又は二つの置換基を有する1,3−ジメトキシプロパンに代表される脂肪族多価エーテル化合物類、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンに代表される芳香族の遊離基を分子内に有する多価エーテル化合物類、などである。
(2)有機アルミニウム化合物(ZN−2)
有機アルミニウム化合物(ZN−2)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。一般的には、下記一般式(5)にて表される化合物を用いることが望ましい。
AlX(OR10 …(5)
(一般式(5)中、Rは、炭化水素基を表す。Xは、ハロゲン又は水素原子を表す。R10は、炭化水素基またはAlによる架橋基を表す。c≧1、0≦d≦2、0≦e≦2、c+d+e=3である。)
具体的な例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、メチルアルモキサン、などを挙げることができる。
(3)電子供与体(ZN−3)
電子供与体(ZN−3)として、アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物(ZN−3a)、又は少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(ZN−3b)を例示することができる。
(ZN−3a):アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物
本発明に係るインパクトコポリマー(Y)の製造に好適なチーグラー・ナッタ触媒の構成成分であるアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物(ZN−3a)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。一般的には、下記一般式(3)にて表される化合物を用いることが望ましい。
Si(OR …(3)
(一般式(3)中、Rは、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基からなる群から選ばれる任意の遊離基を表す。Rは、炭化水素基を表す。0≦a≦2,1≦b≦3,a+b=3である。)
具体的な例として、t−Bu(Me)Si(OMe)、t−Bu(Me)Si(OEt)、t−Bu(Et)Si(OMe)、t−Bu(n−Pr)Si(OMe)、c−Hex(Me)Si(OMe)、c−Hex(Et)Si(OMe)、c−PenSi(OMe)、i−PrSi(OMe)、i−BuSi(OMe)、i−Pr(i−Bu)Si(OMe)、n−Pr(Me)Si(OMe)、t−BuSi(OEt)、(EtN)Si(OMe)、EtN−Si(OEt)、などを挙げることができる。
(ZN−3b):少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(ZN−3b)としては、特開平3−294302号公報および特開平8−333413号公報に開示された化合物等を用いることができる。一般的には、下記一般式(4)にて表される化合物を用いることが望ましい。
O−C(R−C(R−C(R−OR …(4)
(一般式(4)中、R及びRは、水素原子、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基からなる群から選ばれる任意の遊離基を表す。Rは、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。)
具体的な例として、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、などを挙げることができる。
(4)予備重合
上記に例示した触媒は、本重合で使用する前に予備重合されていても良い。重合プロセスに先立って、予め少量のポリマーを触媒周囲に生成させることによって、触媒がより均一となり、微粉の発生量を抑えることができる。
予備重合におけるモノマーとしては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、スチレン、ジビニルベンゼン類、などが特に好ましい。
上記に例示した触媒と上記のモノマーとの反応条件は、特に制限されるものではないが、一般的には以下の範囲内が好ましい。
固体成分(ZN−1)1gあたりの基準で、予備重合量は0.001〜100gの範囲内であり、好ましくは0.1〜50g、更に好ましくは0.5〜10gの範囲内が望ましい。予備重合時の反応温度は−150〜150℃、好ましくは0〜100℃である。そして、予備重合時の反応温度は本重合のときの重合温度よりも低くすることが望ましい。反応は、一般的に撹拌下に行うことが好ましく、そのときヘキサン、ヘプタン等の不活性溶媒を存在させることもできる。
VIII−2.重合方法
(1)逐次重合
次に、インパクトコポリマー(Y)の製造方法について、詳述する。
インパクトコポリマー(Y)は、プロピレン(共)重合体(YH)およびプロピレン−エチレン共重合体(YC)とからなるリアクターブレンドであり、インパクトコポリマー(Y)の製造に際しては、プロピレン(共)重合体(YH)とプロピレン−エチレン共重合体(YC)の2つの重合体成分を製造する必要がある。相対的に分子量が高く粘度やMFRが低いプロピレン−エチレン共重合体(YC)をプロピレン(共)重合体(YH)中にきれいに分散させてインパクトコポリマー(Y)本来の性能を発現させるという観点から、当該両成分を、逐次重合により製造することが望ましい。
具体的には、第1工程において、プロピレン(共)重合体(YH)を重合した後で、第2工程において、プロピレン−エチレン共重合体(YC)を重合することが望ましい。製造順を逆にすることも可能ではあるが、プロピレン−エチレン共重合体(YC)は、(YC−i)の規定から共重合体中のエチレン含有量が10〜90wt%の範囲にあり、結晶性が低い重合体であるため、第1工程で製造すると重合槽内部で付着したり、移送配管を閉塞したりするなどの製造トラブルを起こす可能性が高く、あまり好ましくない。
逐次重合を行う際には、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には生産性の観点から、連続法を用いることが望ましい。
バッチ法の場合には、時間と共に重合条件を変化させることにより単一の重合反応器を用いてプロピレン(共)重合体(YH)とプロピレン−エチレン共重合体(YC)を個別に重合することが可能である。本発明の効果を阻害しない限り、複数の重合反応器を並列に接続して用いてもよい。
連続法の場合には、プロピレン(共)重合体(YH)とプロピレン−エチレン共重合体(YC)を個別に重合する必要から2個以上の重合反応器を直列に接続した製造設備を用いる必要がある。プロピレン(共)重合体(YH)を製造する第1工程に対応する重合反応器とプロピレン−エチレン共重合体(YC)を製造する第2工程に対応する重合反応器については、直列の関係になくてはならないが、第1工程、第2工程のそれぞれについて複数の重合反応器を直列及び/又は並列に接続して用いてもよい。
(2)重合プロセス
重合プロセスは、任意のものを用いることができる。
反応相については、液体の媒体を用いる手法であっても良いし、気体の媒体を用いる手法であっても良い。具体的な例として、スラリー法、バルク法、気相法を挙げることができる。バルク法と気相法の中間的な条件として、超臨界条件を用いることも可能であるが、実質的には気相法と同等であるため、特に区別することなく気相法に含める。なお、多槽連続重合プロセスの場合、バルク法の重合反応器の後に気相法の重合反応器を付ける場合があるが、この場合は、当業界の慣例に従ってバルク法と呼ぶことにする。また、バッチ法の場合に、第1工程をバルク法で行い、第2工程を気相法で行うこともあるが、この場合も同様にバルク法と呼ぶことにする。この様に反応相は、特に限定されるものではないが、スラリー法は、ヘキサンやヘプタンといった有機溶媒を用いるために付属設備が多く、一般的に生産コストが高くなるという問題がある。従って、バルク法か気相法を用いる方が一層望ましい。
また、バルク法と気相法については、それぞれ種々のプロセスが提案されている。攪拌(混合)方法や除熱方法に違いがあるが、この観点において本発明は、特段プロセス種を限定することはない。
(3)一般的な重合条件
重合温度は、通常用いられている温度範囲であれば、特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。
重合圧力は、選択するプロセスによって差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0より大きく200MPaまで、好ましくは0.1〜50MPaの範囲を用いることができる。この際に、窒素などの不活性ガスを共存させても問題はない。
また、プロピレン−エチレン共重合体(YC)を製造する第2工程においては、エタノールや酸素などの重合抑制剤を添加することもできる。この様な重合抑制剤を用いると、第2工程における重合量の制御が容易であるだけでなく、重合体粒子の性状を改良することもできる。
IX.発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物
本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物は、上記の通り、プロピレンに、特定の構造を有するヒンダードアミンと脂肪酸アミドを、それぞれ特定量添加したものである。好ましくは、ポリプロピレンが、特性(X−i)〜(X−iv)を満たすポリプロピレン(X)を含むものであり、また、好ましくは上記の特性(YH−i)〜(YH−ii)を満たすプロピレン(共)重合体(YH)と特性(YC−i)〜(YC−ii)を満たすプロピレン−エチレン共重合体(YC)からなり、更に、特性(Y−i)を満たすインパクトコポリマー(Y)を含有するものである。
以下、順に詳説する。
IX−1.樹脂組成物の製造方法
本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物の調製方法は、公知のものを用いることができる。例えば、ポリプロピレンと特定の構造を有するヒンダードアミンと脂肪酸アミドを、ドライブレンド、ヘンシェルミキサー等で混合することにより樹脂組成物を調製することができる。また、これらを単軸、二軸混練機、ニーダ等によって、溶融混練してもよい。このとき、溶融混練し、樹脂組成物は、ペレット化されていることが好ましい。
IX−2.ポリプロピレン(X)とインパクトコポリマー(Y)の含量
本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物におけるポリプロピレンとして、上記のポリプロピレン(X)を用いる場合、ポリプロピレン(X)の含量は、5〜99wt%であることが好ましい(但し、樹脂組成物に用いるポリプロピレン全体を100wt%とする。)。より好ましい範囲を例示すると、より好ましくはポリプロピレン(X)の含量が10〜90wt%、更に好ましくは15〜80wt%である。同様に、本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物におけるポリプロピレンとして、上記のインパクトコポリマー(Y)を用いる場合、インパクトコポリマー(Y)の含量は、1〜95wt%であることが好ましい(但し、樹脂組成物に用いるポリプロピレン全体を100wt%とする。)。より好ましい範囲を例示すると、より好ましくはインパクトコポリマー(Y)の含量が10〜90wt%、更に好ましくは20〜85wt%であるポリプロピレン(X)の含量、及び/又は、インパクトコポリマー(Y)の含量が上記の範囲内にあると、延展性や押出特性などが良好となるので好ましい。ポリプロピレン(X)、及び/又は、インパクトコポリマー(Y)の含量は、樹脂組成物を調製する際のブレンド量比を、調整すれば望みの含量に調整できる。
IX−3.プロピレン(共)重合体(H)
特に、本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物におけるポリプロピレンとして、上記のポリプロピレン(X)を用いる場合、製品の物性と経済性の両立の観点から、ポリプロピレン(X)を他のポリプロピレンで薄めて使用することが求められる場合がある。この様な場合には、プロピレン単独重合体、又は、エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとプロピレンとの共重合体(H)であり、プロピレン(共)重合体(H)が共重合体の場合には、プロピレン(共)重合体(H)中のエチレン及びα−オレフィンの含量が0を超え、3wt%以下であるプロピレン(共)重合体(H)を用いて希釈することが好適である。
プロピレン(共)重合体(H)を用いる場合、その含量は1〜99wt%であることが好ましい(但し、樹脂組成物に用いるポリプロピレン全体を100wt%とする。)。より好ましくは、10〜80wt%、更に好ましくは、20〜60wt%である。
X.押出発泡成形、ポリプロピレン系発泡シート、熱成形体
本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物は、気泡の保持性に優れ、かつ、溶融張力が適度であるため延展性が良いために、各種の発泡成形に適したものであり、どの様な発泡成形を用いるかは特に制限するものではない。例えば、押出発泡成形、射出発泡成形、発泡ブロー成形、射出発泡ブロー成形、等に、好適に用いることができるが、中でも押出発泡成形に好適に用いることができる。
具体的には、代表的な押出発泡成形として、シート、フィルム、ブロー、などによる発泡成形がある。発泡シート成形の場合、公知の押出機とダイスの組み合わせを用いることができる。押出機は、単軸であっても二軸であっても良い。ダイは、Tダイでも良いし、円形(サーキュラー)であっても良い。発泡フィルム成形の場合も同様である。発泡フィルム成形の場合には、更に延伸を行ってもよい。延伸方法は、公知の方法を制限なく用いることができる。例えば、チューブラー法、テンター式延伸法、ロール延伸法、パンタグラフ式バッチ延伸法、などを例示することができる。発泡ブロー成形の場合も公知の方法を用いればよい。具体例として、ダイレクトブロー成形機やアキューム式ブロー成形機を挙げることができる。
以下、順に詳説する。
X−1.発泡剤
本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物を用いて、発泡成形を行う際には、発泡剤を使用する必要がある。この際、発泡剤の種類には、特に制限がなく、プラスチックやゴム等に使用されている公知の発泡剤を使用することができる。発泡剤の種類にも、特に制限はなく、物理発泡剤、分解性発泡剤(化学発泡剤)、熱膨張剤を含有させたマイクロカプセル等、いずれの種類を用いても良い。
物理発泡剤の具体例としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、クロロジフルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロメタン、ジクロロメタン、クロロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、ジクロロフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ジフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、トリフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、クロロペンタフルオロエタン、パーフルオロシクロブタンなどのハロゲン化炭化水素、水、炭酸ガス、窒素などの無機ガス、などを例示することができる。これらの化合物は単独で用いても良いし、複数の化合物を併用しても良い。
中でも、プロパン、ブタン、ペンタンのような脂肪族炭化水素および炭酸ガスが、安価かつポリプロピレンへの溶解性が高いという点から好ましい。特に、炭酸ガスを用いる場合には、7.4MPa以上、31℃以上の超臨界条件とすると、重合体への拡散、溶解性に優れた状態となるので一層好ましい。
物理発泡剤を用いる場合には、必要に応じて、気泡調整剤を使用することができる。気泡調整剤としては、炭酸アンモニウム、重曹、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機系分解性発泡剤、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル及びジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物、N,N′−ジニトロソペンタンメチレンテトラミン及びN,N′−ジメチル−N,N′−ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p′−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン、バリウムアゾジカルボキシレート等の分解性発泡剤、タルク、シリカ等の無機粉末、多価カルボン酸等の酸性塩、多価カルボン酸と炭酸ナトリウム又は重曹との反応混合物等を例示することができる。これらの気泡調整剤は、単独で用いても良いし、複数を併用しても良い。
気泡調整剤を使用する際には、気泡調節剤の配合量は、ポリプロピレン100重量部に対して、純分で0.01〜5重量部の範囲とすることが好ましい。
分解性発泡剤(化学発泡剤)の具体例としては、重炭酸ソーダとクエン酸などの有機酸の混合物、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウムなどのアゾ系発泡剤、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミドなどのニトロソ系発泡剤、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジドなどのスルホヒドラジド系発泡剤、トリヒドラジノトリアジンなどが挙げられる。
発泡剤の配合量は、ポリプロピレン100重量部に対し、好ましくは0.05〜6.0重量部の範囲であり、より好ましくは0.05〜3.0重量部、さらに好ましくは0.5〜2.5重量部、特に好ましくは1.0〜2.0重量部である。
発泡剤の配合量が6.0重量部よりも多い場合には、過発泡となって発泡セルの均一微細化が困難となることがあり好ましくない。一方、発泡剤の配合量が0.05重量部より少ない場合には、発生するガス量が少なく発泡倍率が低くなってしまうことがあり、好ましくない。
X−2.ポリプロピレン系発泡シート
ポリプロピレン系シートは、熱成型により各種形状に2次加工され、各種容器を中心に広く産業上用いられており、ポリプロピレン系発泡シートは、軽量であることを利点に各種用途での利用が広がっている。しかし、ポリプロピレン系発泡シートは、シート中に多くの気泡(セル)を含んでいるため、セルが粗かったり、不揃いであったりすると、これらがシート表面に現れ、表面外観が悪化することで商品価値が低下してしまう。さらに、熱成型を行う際には、金型を転写するために十分な加熱が必要であるが、発泡シートにおいては、加熱時にセルも膨張する。その結果、発泡セルが粗いと、表面が悪化しやすく、また、不揃いであるとシートが加熱中に破れてしまうといった問題がある。
これらを抑制するには、独立気泡率が高く、緻密でサイズの揃った発泡セルを形成することが必要であるが、本発明における発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物を用いることで、これらが実現し、発泡シートとしては、外観に優れ、また、熱成型適性が高いシートを得ることができる。
ポリプロピレン系多層発泡シートの厚みは、特に限定しないが、0.3mm〜10mm程度が好ましい。更に好ましくは0.5mm〜5mmである。
また、ポリプロピレン系多層発泡シートにおける非発泡層の厚さは、得られるポリプロピレン系多層発泡シートの全厚みの1〜50%、より好ましくは5〜20%になるように形成することが望ましい。非発泡層の厚みが50%を超えると、発泡層の気泡の成長を妨げてしまうので好ましくない。
X−3.発泡セル
発泡セルの状態については、セルの大きさが小さく緻密で、大きさが揃っていて、独立性の高い状態が好ましい。具体的には、平均気泡径が150μm以下であることが好ましい。平均気泡径が150μmを大きく超えると、ポリプロピレン系発泡シートや該シートを熱成型する際に、熱成形体に対し、穴明き等の外観不良が発生するため好ましくない。
なお、平均気泡径は、実施例に記載の方法により光学顕微鏡を用いて求めた値とする。
また、セルの独立性に関しては、連続気泡率で判断することができる。連続気泡率は、30%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下、更に好ましくは15%以下である。連続気泡率が30%を超えると、熱成型する際に、発泡シート内の発泡セルの膨張が生じないため、熱成形体の厚みが減ってしまうため、好ましくない。また、熱成形体の断熱性能の低下にも、繋がるので好ましくない。
なお、連続気泡率は、実施例に記載の方法によりエアピクノメター(東京サイエンス(株)製)を用いて求めた値とする。
X−4.ポリプロピレン系多層発泡シート
ポリプロピレン系発泡シートを製造する際には、多層発泡シートとすることもできる。
具体的には、本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物を用いる発泡層と、熱可塑性樹脂組成物からなる非発泡層とを、共押出成形すれば良い。この際、複数の押出機を用いたフィードブロックやマルチダイなどによる公知の共押出方法を用いることができる。
本発明の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物を発泡層に用いるポリプロピレン系多層発泡シートに用いられる非発泡層は、発泡層のいずれの面に設けられていてもよく、また、発泡層を非発泡層の間に存在させた構成(サンドイッチ構造)とすることもできる。
非発泡層が設けられたポリプロピレン系多層発泡シートは、強度において優れたものとなり、少なくとも該発泡層の外側に非発泡層が設けられることにより、表面平滑性や外観においても、優れたものとなる。更に、非発泡層に機能性の熱可塑性樹脂を使用することにより、抗菌性、ソフト感、耐受傷性等の付加的機能をポリプロピレン系多層発泡シートに兼備させることが容易にできる点からも、好ましい。
非発泡層に用いられる熱可塑性樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂としては、本発明の効果を阻害しない範囲で、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィンコポリマー、ポリ−4−メチル−ペンテン−1等のポリオレフィン、エチレン−プロピレンエラストマー等のオレフィン系エラストマー、またはこれらと共重合可能な他の単量体、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の共重合体および混合物等を選択することができる。
中でも、リサイクル性、接着性、耐熱性、耐油性、剛性などの点から、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィンコポリマーが好適である。プロピレン−α−オレフィンコポリマーとしては、プロピレン(共)重合体とエチレン−プロピレンランダム共重合体を複数あるいは単槽の重合槽を使用して、多段階重合して得られた、インパクトコポリマーを含む。
これらのうち、インパクトコポリマーは、剛性と耐衝撃性のバランスに優れるため、より好ましく、インパクトコポリマー(Y)が満たすべき要件を満たすインパクトコポリマー(Y’)(ただし、(Y’)は(Y)と同一であっても良いし、異なっていても良い)を含むポリプロピレン樹脂組成物を表面層に用いた場合には、得られたシートは、表面外観が良く、かつ、熱成型時のセルの保持性が高いといった特徴を有するため、最も好適である。この際、表面層に用いるポリプロピレン樹脂組成物中のインパクトコポリマー(Y’)の含量は、0.1〜100重量%であることが好ましい。
また、特に熱成形体として用いる場合に、成形体の剛性は、非常に重要であるが、特にこれを向上させるためには、表面層に非発泡層を設け、非発泡層に無機充填剤を配合することが好ましい。非発泡層に用いられる熱可塑性樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂100重量部に対し、無機充填剤50重量部以下を配合することが望ましい。50重量部を超えると、ダイス出口でのメヤニを発生しシートの外観を損ないやすい。
無機充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、ハイドロタルサイト、ゼオライト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどが例示できる。
X−5.熱成形体
本発明の熱成形体は、上記のポリプロピレン系発泡シートを熱成形したものである。熱成形法は、特に制限されるものではなく、例えば、プラグ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、プラグアシスト成形、プラグアシスト・リバースドロー成形、エアスリップ成形、スナップバック成形、リバースドロー成形、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形などの方法を、例示することができる。
X−6.用途
本発明のポリプロピレン系発泡シートおよび熱成形体は、均一微細な発泡セルを有し、外観、熱成型性、耐衝撃性、軽量性、剛性、耐熱性、断熱性、耐油性等に優れていることより、トレー、皿、カップなどの食品容器や自動車ドアトリム、自動車トランクマットなどの車両内装材、包装、文具、建材などに好適に利用できる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
1.諸物性の測定方法
(i)MFR
JIS K7210:1999のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した。単位はg/10分である。
(ii)溶融張力(MT)
東洋精機製作所製キャピログラフを用いて、以下の条件で測定した。
・キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm
・シリンダー径:9.55mm
・シリンダー押出速度:20mm/分
・引き取り速度:4.0m/分
・温度:230℃
MTが極めて高い場合には、引き取り速度4.0m/分では、樹脂が破断してしまう場合があり、このような場合には、引取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度における張力をMTとする。単位はグラムである。
(iii)25℃パラキシレン可溶成分量(CXS)
以下の方法を用いてCXSの値を得た。
2gの試料を300mlのp−キシレン(0.5mg/mlのBHTを含む)に130℃で溶解させ溶液とした後、25℃で12時間放置する。その後、析出したポリマーを濾別し、濾液からp−キシレンを蒸発させ、さらに100℃で12時間減圧乾燥し25℃キシレン可溶成分を回収する。この回収成分の重量の仕込み試料重量に対する割合[重量%]をCXSと定義する。
(iv)分岐指数g
示差屈折計(RI)、粘度検出器(Viscometer)、光散乱検出器(MALLS)を検出器として備えたGPCを用いて、絶対分子量Mabsが100万となる時の分岐指数gを求めた。具体的な測定方法、解析方法、算出方法は上述の通りである。
(v)歪硬化度(λmax)
Rheometorics社製Aresを用いて伸張粘度の測定を行い、その結果から歪硬化度(λmax)を求めた。具体的な測定方法、算出方法は、上述の通りである。
(vi)アイソタクチックトライアッド分率(mm分率)、長鎖分岐の有無
日本電子社製、GSX−400、FT−NMRを用い、上述の通り、特開平2009−275207号公報の段落[0025]〜[0065]に記載の方法で測定した。mm分率の単位は%である。
(vii)プロピレン−エチレン共重合体(YC)中のエチレン含量
上記(iii)に記載の方法により得られたインパクトコポリマー(Y)のCXS成分を用いて、13C−NMRによりエチレン含量を求めた。13C−NMRの測定条件は、以下の通りである。
機種:日本電子(株)製 GSX−400
溶媒:o−ジクロベンゼン+重ベンゼン(4:1(体積比))
濃度:100mg/mL
温度:130℃
パルス角:90°
パルス間隔:15秒
積算回数:5,000回以上
得られたスペクトルの解析方法は、上述の通りである。
(vii)プロピレン−エチレン共重合体(YC)の固有粘度
上記(iii)に記載の方法により得られたインパクトコポリマー(Y)のCXS成分を用いて、固有粘度の測定を行った。固有粘度の測定はウベローデ型毛管粘度計を用い、温度135℃、デカリン溶媒、の条件で行った。
(viii)インパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量
上記(iii)に記載の方法により得られたインパクトコポリマー(Y)のCXSの値(wt%)をインパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量(wt%)とした。
2.使用材料
(1)ポリプロピレン(X)
下記の製造例X1〜2で得られたポリプロピレン(X1)〜(X2)をポリプロピレン(X)として使用した。
[製造例X1:ポリプロピレン(X1)の製造]
<触媒成分[A−1]の合成>
以下の手順によって、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムの合成を行った。
(i)4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの合成
500mlのガラス製反応容器に、4−i−プロピルフェニルボロン酸15g(91mmol)、ジメトキシエタン(DME)200mlを加え、炭酸セシウム90g(0.28mol)と水100mlの溶液を加え、4−ブロモインデン13g(67mmol)、テトラキストリフェニルホスフィノパラジウム5g(4mmol)を順に加え、80℃で6時間加熱した。
放冷後、反応液を蒸留水500ml中に注ぎ、分液ロートに移しジイソプロピルエーテルで抽出した。エーテル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの無色液体15.4g(収率99%)を得た。
(ii)2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの合成
500mlのガラス製反応容器に4−(4−i−プロピルフェニル)インデン15.4g(67mmol)、蒸留水7.2ml、DMSO 200mlを加え、ここにN−ブロモスクシンイミド17g(93mmol)を徐々に加えた。そのまま室温で2時間撹拌し、反応液を氷水500ml中に注ぎ入れ、トルエン100mlで3回抽出した。トルエン層を飽和食塩水で洗浄し、p−トルエンスルホン酸2g(11mmol)を加え、水分を除去しながら3時間加熱還流した。反応液を放冷後、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの黄色液体19.8g(収率96%)を得た。
(iii)2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの合成
500mlのガラス製反応容器に、2−メチルフラン6.7g(82m1mol)、DME100mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに1.59mol/Lのn−ブチルリチウム−n−ヘキサン溶液51ml(81mmol)を滴下し、そのまま3時間撹拌した。−70℃に冷却し、そこにトリイソプロピルボレート20ml(87mmol)とDME50mlの溶液を滴下した。滴下後、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
反応液に蒸留水50mlを加え加水分解した後、炭酸カリウム223gと水100mlの溶液、2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデン19.8gg(63mmol)を順に加え、80℃で加熱し、低沸分を除去しながら3時間反応させた。
放冷後、反応液を蒸留水300ml中に注ぎ、分液ロートに移しジイソプロピルエーテルで3回抽出した、エーテル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの無色液体19.6g(収率99%)を得た。
(iv)ジメチルビス(2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シランの合成
500mlのガラス製反応容器に、2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデン9.1g(29mmol)、THF200mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに、1.66mol/Lのn−ブチルリチウム−n−ヘキサン溶液17ml(28mmol)を滴下し、そのまま3時間撹拌した。−70℃に冷却し、1−メチルイミダゾール0.1ml(2mmol)、ジメチルジクロロシラン1.8g(14mmol)を順に加え、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
反応液に蒸留水を加え、分液ロートに移し食塩水で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウムを加え反応液を乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、ジメチルビス(2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シランの淡黄色固体8.6g(収率88%)を得た。
(v)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムの合成
500mlのガラス製反応容器に、ジメチルビス(2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シラン8.6g(13mmol)、ジエチルエーテル300mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに1.66mol/Lのn−ブチルリチウム−n−ヘキサン溶液15ml(25mmol)を滴下し、3時間撹拌した。反応液の溶媒を減圧で留去し、トルエン400ml、ジエチルエーテル40mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。そこに、四塩化ハフニウム4.0g(13mmol)を加えた。その後、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
溶媒を減圧留去し、ジクロロメタン−ヘキサンで再結晶を行い、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムのラセミ体を黄色結晶として7.6g(収率65%)得た。
得られたラセミ体についてのH−NMRによる同定値を以下に記す。
H−NMR(C6D6)同定結果
ラセミ体:δ0.95(s,6H),δ1.10(d,12H),δ2.08(s,6H),δ2.67(m,2H),δ5.80(d,2H),δ6.37(d,2H),δ6.74(dd,2H),δ7.07(d,2H),δ7.13(d,4H),δ7.28(s,2H),δ7.30(d,2H),δ7.83(d,4H)。
<触媒成分[A−2]の合成>
特開平11―240909号公報の実施例1に記載の方法に基づいて、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウムを合成した。
<触媒成分Bの合成>
(i)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
セパラブルフラスコ中で蒸留水2,264gに96%硫酸(668g)を加えその後、層状珪酸塩としてモンモリロナイト(水沢化学社製ベンクレイSL:平均粒径19μm)400gを加えた。このスラリーを90℃で210分加熱した。この反応スラリーを蒸留水4,000gに加えた後にろ過したところ、ケーキ状固体810gを得た。
次に、セパラブルフラスコ中に、硫酸リチウム432g、蒸留水1,924gを加え硫酸リチウム水溶液としたところへ、上記ケーキ状固体を全量投入した。このスラリーを室温で120分反応させた。このスラリーに蒸留水4Lを加えた後にろ過し、更に蒸留水でpH5〜6まで洗浄し、ろ過を行ったところ、ケーキ状固体760gを得た。
得られた固体を窒素気流下100℃で一昼夜予備乾燥後、53μm以上の粗大粒子を除去し、更に200℃、2時間、減圧乾燥することにより、化学処理スメクタイト220gを得た。
この化学処理スメクタイトの組成は、Al:6.45重量%、Si:38.30重量%、Mg:0.98重量%、Fe:1.88重量%、Li:0.16重量%であり、Al/Si=0.175[mol/mol]であった。
<予備重合触媒M1の調製>
(i)触媒調製及び予備重合
3つ口フラスコ(容積1L)中に、上記の触媒成分Bの合成で得られた化学処理スメクタイト20.0gを入れ、ヘプタン(132mL)を加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム(25mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を68.0mL)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで残液率が1/100になるまで洗浄し、全容量を100mLとなるようにヘプタンを加えた。
また、別のフラスコ(容積200mL)中で、上記の触媒成分[A−1]の合成で得られたrac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウム(180μmol)をトルエン(42mL)に溶解し(溶液1)、更に、別のフラスコ(容積200mL)中で、上記の触媒成分[A−2]の合成で得られたrac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム(120μmol)をトルエン(18mL)に溶解した(溶液2)。
上記の化学処理スメクタイトが入った1Lフラスコにトリイソブチルアルミニウム(0.84mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を1.2mL)を加えた後、上記溶液1を加えて20分間室温で撹拌した。その後更にトリイソブチルアルミニウム(0.36mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を0.50mL)を加えた後、上記溶液2を加えて、1時間室温で攪拌した。
その後、ヘプタンを338mL追加し、このスラリーを、1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にしたのち、プロピレンを10g/時の速度でフィードし、4時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、1時間残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、残った部分に、トリイソブチルアルミニウム(6mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を17.0mL)を加えて5分攪拌した。
この固体を1時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒60.0gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.00g/g−触媒であった。
以下、このものを「予備重合触媒M1」という。
<重合>
内容積200リットルの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで充分に置換した後、精製した液化プロピレン40kgを導入した。これに水素6.2L(標準状態の体積として)、トリイソブチルアルミニウム−n−ヘプタン溶液470ml(0.12mol)を加えた後、内温を30℃に調整した。次いで、予備重合触媒M1を2.0g(予備重合ポリマーを除いた重量で)アルゴンで圧入し、内温が70℃になるまで昇温した。内温が70℃に到達した時点から2時間経過後に、エタノールを100ml圧入し、未反応のプロピレンをパージし、オートクレーブ内を窒素置換することにより重合を停止した。その後、得られたポリマーを90℃窒素気流下で1時間乾燥した。こうして得られたポリプロピレン(X1)の収量は12.8kgであり、触媒活性は6.4kg−PP/g−触媒であった。
[製造例X2:ポリプロピレン(X2)の製造]
製造例X1の重合で、水素の使用量を10L(標準状態の体積として)とした以外は、製造例X1と同様にして、重合を行った。
ポリプロピレンの収量は19.0kgであり、触媒活性は9.5kg−PP/g−触媒であった。
(2)インパクトコポリマー(Y)
下記の製造例Y1で得られたインパクトコポリマー(Y1)をインパクトコポリマー(Y)として使用した。
[製造例Y1:インパクトコポリマー(Y1)の製造]
<触媒の分析方法>
触媒成分、固体触媒、予備重合触媒の分析に際しては、以下の方法を使用した。
・Ti含量(wt%)
試料を精確に秤量し、加水分解した上で比色法を用いて測定した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含量を計算した。
・ケイ素化合物含量(wt%)
試料を精確に秤量し、メタノールで分解した。ガスクロマトグラフィーを用いて標準サンプルと比較することにより、得られたメタノール溶液中のケイ素化合物濃度を求めた。メタノール中のケイ素化合物濃度と試料の重量から、試料に含まれるケイ素化合物の含量を計算した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含量を計算した。
<予備重合触媒Z1の調製>
(1)固体成分Z1の調製
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したトルエン2Lを導入した。ここに、室温で、Mg(OEt)を200g投入し、TiClを1Lゆっくりと添加した。徐々に温度を90℃に上げて、フタル酸ジ−n−ブチルを50ml導入した。その後、温度を110℃に上げて3hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiClを1L添加し、温度を110℃に上げて2hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiClを1L添加し、温度を110℃に上げて2hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。更に、精製したn−ヘプタンを用いて、トルエンをn−ヘプタンで置換し、固体成分Z1のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分Z1のTi含量は2.7wt%であった。
(2)固体触媒Z1の調製
次に、撹拌装置を備えた容量20Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、上記固体成分Z1のスラリーを固体成分として100g導入した。精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分の濃度が25g/Lとなる様に調整した。SiClを50ml加え、90℃で1hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。
その後、精製したn−ヘプタンを導入して液レベルを4Lに調整した。ここに、ジメチルジビニルシランを30ml、t−BuMeSi(OMe)を30ml、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして80g添加し、40℃で2hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、固体触媒Z1を得た。得られた固体触媒Z1のスラリーの一部をサンプリングして乾燥し、分析を行った。固体触媒Z1にはTiが1.2wt%、t−BuMeSi(OMe)が8.9wt%含まれていた。
(3)予備重合
上記で得られた固体触媒Z1を用いて、以下の手順により予備重合を行った。上記のスラリーに精製したn−ヘプタンを導入して、固体触媒の濃度が20g/Lとなる様に調整した。スラリーを10℃に冷却した後、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして10g添加し、280gのプロピレンを4hrかけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に30min反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行って予備重合触媒Z1を得た。この予備重合触媒Z1は、固体触媒1gあたり2.5gのポリプロピレンを含んでいた。分析したところ、この予備重合触媒Z1のポリプロピレンを除いた部分には、Tiが1.0wt%、t−BuMeSi(OMe)が8.3wt%含まれていた。
<重合>
重合は、2槽連続の気相重合反応装置を用いて実施した。逐次重合の第1工程を実施する第1重合槽と、第2工程を実施する第2重合槽は、共に内容積230リットルの流動床式反応器である。使用する原料ガスは充分に精製したものを使用した。
(第1工程:プロピレン重合体の製造)
第1重合槽のガス組成については、プロピレンの分圧が1.8MPaA、重合槽の全圧が3.0MPaG、となる様に、プロピレンと窒素を連続的に供給した。また、分子量制御剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.020となるように連続的に供給した。重合温度は60℃となるように制御した。この第1重合槽に、EtAlを4.0g/hで供給し、更に、上記の予備重合触媒Z1を第1重合槽におけるプロピレン重合体の生産速度が17.5kg/hとなるように連続的に供給し、プロピレン単独重合体の製造を行った。第1重合槽で生産したパウダー(プロピレン重合体)は、重合槽内のパウダー保有量が40kgとなるように連続的に抜き出し、第2重合槽に連続的に移送した。第1重合槽から第2重合槽へ移送するパウダーの一部をサンプリングして分析した所、MFRは20.0g/10分であった。なお、MFRの測定の際には、サンプルであるプロピレン重合体に、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン(商品名:IRGANOX1010、BASFジャパン株式会社製)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名:IRGAFOS 168、BASFジャパン株式会社製)、ステアリン酸カルシウム、をそれぞれ適量(500wtppm程度)添加混合した上で測定を行った。
(第2工程:プロピレン−エチレン共重合体の製造)
第2重合槽のガス組成については、プロピレンの分圧が1.15MPaA、エチレンの分圧が0.35MPaA、重合槽の全圧が2.5MPaG、となる様に、プロピレン、エチレン、窒素を連続的に供給した。また、分子量制御剤としての水素を、水素/(プロピレン+エチレン)のモル比で260ppmとなるように連続的に供給した。重合温度は70℃となるように制御した。更に、重合抑制剤として、エタノールを2.0g/hとなる様に連続的に供給し、プロピレン−エチレン共重合体の製造を行った。第2重合槽で生産が終了したパウダー(プロピレン重合体とプロピレン−エチレン共重合体とからなるインパクトコポリマー)は、重合槽内のパウダー保有量が60kgとなるように連続的にベッセルに抜き出した。このベッセルに、水分を含んだ窒素ガスを供給して反応を停止させ、インパクトコポリマー(Y1)を得た。
(3)プロピレン(共)重合体(H)
以下の製造例H1で得られたプロピレン単独重合体(H1)をプロピレン(共)重合体(H)として使用した。
[製造例H1:プロピレン単独重合体(H1)の製造]
製造例Y1と同様に重合を実施したが、2槽連続重合を行わずに、第1工程のプロピレン重合体の製造までしか行わなかった。こうして、プロピレン単独重合体(H1)を得た。
[実施例1]
<ポリプロピレン(X1)の造粒>
製造例X1で得られたポリプロピレン(X1)100重量部に対し、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート(商品名:Cyanox1790、日本サイテックインダストリーズ株式会社製)0.05重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名:IRGAFOS 168、BASFジャパン株式会社製)0.10重量部、ポリ{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}(商品名:Chimassorb944、BASFジャパン株式会社製)0.2重量部、ステアリン酸アミド0.84重量部、を配合し充分に撹拌した後、2軸押出機(テクノベル社製KZW25TW−45MG−NH)を用いて溶融混練し、押出されたストランドを切断しペレット化した。
得られたポリプロピレン(X1)のペレットを分析した結果、MFRが0.9g/10分、MTが20.0g、分岐指数gが0.88、λmaxが10.0、CXSが0.2wt%、mm分率が98.3%であった。13C−NMR測定の結果、このポリプロピレン(X1)に長鎖分岐が存在することを確認した。また、分岐指数gが0.88であり1よりも小さな値であることも、このポリプロピレン(X1)に長鎖分岐が存在することを示している。
<インパクトコポリマー(Y1)の造粒>
製造例Y1で得られたインパクトコポリマー(Y1)100重量部に対し、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート(商品名:Cyanox1790、日本サイテックインダストリーズ株式会社製)0.05重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名:IRGAFOS 168、BASFジャパン株式会社製)0.10重量部、ステアリン酸カルシウム0.05重量部、を配合し充分に撹拌した後、2軸押出機(テクノベル社製KZW25TW−45MG−NH)を用いて溶融混練し、押出されたストランドを切断しペレット化した。
得られたインパクトコポリマー(Y1)のペレットを分析した結果、MFRが1.2g/10分、インパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量が28.0wt%、プロピレン−エチレン共重合体(YC)中のエチレン含量が26.0wt%、プロピレン−エチレン共重合体(YC)の固有粘度が9.4dl/gであった。
<プロピレン単独重合体(H1)の造粒>
製造例H1で得られたプロピレン単独重合体(H1)100重量部に対し、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート(商品名:Cyanox1790、日本サイテックインダストリーズ株式会社製)0.03重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名:IRGAFOS 168、BASFジャパン株式会社製)0.03重量部、ステアリン酸カルシウム0.05重量部、を配合し充分に撹拌した後、2軸押出機(テクノベル社製KZW25TW−45MG−NH)を用いて溶融混練し、押出されたストランドを切断しペレット化した。
得られたプロピレン単独重合体(H1)のペレットを分析した結果、MFRが20.0g/10分であった。
<ポリプロピレン樹脂組成物の調製>
上記で得られたポリプロピレン(X1)のペレットを28wt%、インパクトコポリマー(Y1)のペレットを32wt%、プロピレン単独重合体(H1)のペレットを40wt%の比率で充分にドライブレンドして、ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
得られたポリプロピレン樹脂組成物に含まれる添加剤の量は、ポリプロピレン(X1)、インパクトコポリマー(Y1)、プロピレン単独重合体(H1)に添加した量と、ペレットの混合比率から計算した。結果を表3に示す(添加剤の量はポリプロピレン樹脂組成物100重量部に対する重量部で記載している)。
<押出発泡シート成形>
上記で得られたポリプロピレン樹脂組成物100重量部に対して、化学発泡剤(商品名:ハイドロセロールCF40E−J、日本ベーリンガーインゲルハイム社製)を4.0重量部添加して、充分にドライブレンドを行った。得られたブレンドを単軸押出機に投入し、フィードブロックを介して幅750mm、Lip幅0.4mmのTダイからシート状に付形した。押し出されたシートはダイ出口直後に設置された直径50mmのロールでまず片面が冷却され、その後に設置された直径100mmのロール4本で両面を冷却し、ニップロールにより一定速度で引き取られシート状に加工された。
このときの各押出機の運転条件とシート成形条件は、以下の通りである。
・押出機
口径65mm、L/D=45
スクリュ回転数:75rpm
設定温度:C1−180、C2〜4−220、C5−190、C6〜9−175℃
吐出量:約65kg/h
・シート成形
フィードブロック温度:175℃
ダイ温度:175℃
冷却ロール温度:15℃
巻き取り速度:4.5m/min
<発泡シートの特性評価>
上記で得られた発泡シートの諸特性を以下の方法により測定した。結果を表3に示す。
・平均気泡径
発泡シートから25mm角のサンプルを切り出した。実体顕微鏡(ニコン製:SMZ−1000−2型)を用いて発泡層断面を拡大投影し、断面中の気泡数と気泡径より、押出方向断面及びその垂直方向の断面の気泡径をそれぞれ算出、その平均値を発泡層の平均気泡径とした。
・密度
発泡シートから試験片を切出し、試験片重量(g)を、該試験片の外形寸法から求められる体積(cm3)で割って求めた。JIS K7222に準じて測定し、密度を求めた。
・連続気泡率
発泡シートから試験片を切出し、エアピクノメター(東京サイエンス(株)製)を用いて、ASTM D2856に記載の方法に準じて測定した。
・延展性/シート外観評価
発泡シートの外観評価については、発泡シートを以下の基準で評価した。
◎:均一に延展され厚み斑が非常に少ない。気泡形状が微細かつ均一で部分的な凹部(ヒケ)もなくシート外観が美麗。
○:均一に延展され厚み斑が少ない。気泡形状が均一で、部分的な凹部(ヒケ)もない。
△:延展不良が認められ、厚み斑がある。気泡形状は、均一だが延展不良箇所に部分的な凹部(ヒケ)が発生している。
×:均一な延展が難しく厚み斑が多い。気泡の合一が見られ、部分的な凹部(ヒケ)がある。
[比較例1〜5]
ポリプロピレン(X1)、インパクトコポリマー(Y)、及び、プロピレン単独重合体(H1)の造粒の際に、表3に記載の添加剤配合を用いた以外は、実施例1と同様に、ポリプロピレン樹脂組成物の製造を行った。
得られた樹脂組成物を用いて実施例1と同様に、押出発泡成形を実施し、得られた発泡シートを評価した。結果を表3に示す。なお、実施例1では使用していない添加剤について、以下に詳細を記載しておく。
・テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン(商品名:IRGANOX1010、BASFジャパン株式会社製)
・メラミンモノマー(主成分)(商品名:アデカスタブZS−27、株式会社ADEKA製)
・テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(商品名:アデカスタブLA−57、株式会社ADEKA製)
・1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物(商品名:アデカスタブLA−63P、株式会社ADEKA製)
[実施例2]
ポリプロピレン(X1)とプロピレン単独重合体(H1)の造粒の際に、表3に記載の添加剤配合を用いた以外は、実施例1と同様にポリプロピレン樹脂組成物の製造を行った。
得られた樹脂組成物を用いて実施例1と同様に、押出発泡成形を実施し、得られた発泡シートを評価した。結果を表3に示す。
[比較例6]
ポリプロピレン(X1)の造粒の際に、表3に記載の添加剤配合を用いた以外は、実施例2と同様に、ポリプロピレン樹脂組成物物の製造を行った。
得られた樹脂組成物を用いて実施例1と同様に、押出発泡成形を実施し、得られた発泡シートを評価した。結果を表3に示す。
[実施例3]
<ポリプロピレン(X2)の造粒>
製造例X2で得られたポリプロピレン(X2)100重量部に対し、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート(商品名:Cyanox1790、日本サイテックインダストリーズ株式会社製)0.05重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名:IRGAFOS 168、BASFジャパン株式会社製)0.10重量部、ポリ{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}(商品名:Chimassorb944、BASFジャパン株式会社製)0.03重量部、ステアリン酸アミド0.09重量部、を配合し充分に撹拌した後、2軸押出機(テクノベル社製KZW25TW−45MG−NH)を用いて溶融混練し、押出されたストランドを切断しペレット化した。
得られたポリプロピレン(X2)のペレットを分析した結果、MFRが8.5g/10分、MTが3.5g、分岐指数gが0.85、λmaxが9.4、CXSが0.2wt%、mm分率が98.5%であった。13C−NMR測定の結果、このポリプロピレン(X2)に長鎖分岐が存在することを確認した。また、分岐指数gが0.85であり、1よりも小さな値であることも、このポリプロピレン(X2)に長鎖分岐が存在することを示している。
<インパクトコポリマー(Y1)の造粒>
実施例1と同様に実施した。
<プロピレン単独重合体(H1)の造粒>
実施例2と同様に実施した。
<ポリプロピレン樹脂組成物の調製>
ポリプロピレン(X1)のペレットの代わりにポリプロピレン(X2)のペレットを使用した以外は、実施例2と同様にして、ポリプロピレン樹脂組成物を調製した。
<押出発泡シート成形>
上記で得られたポリプロピレン樹脂組成物100重量部に対して、気泡調整剤として化学発泡剤(商品名:ハイドロセロールCF40E−J、日本ベーリンガーインゲルハイム社製)を0.5重量部添加して、充分にドライブレンドを行った。得られたブレンドを単軸押出機に投入し、押出機シリンダーにあけられた物理発泡剤投入穴より高圧ポンプを用いて液化COを注入しながら押出し、フィードブロックを介して幅750mm、Lip幅0.4mmのTダイからシート状に付形した。押出されたシートはダイ出口直後に設置された直径50mmのロールでまず片面が冷却され、その後に設置された直径100mmのロール4本で両面を冷却し、ニップロールにより一定速度で引き取られシート状に加工された。
このときの各押出機の運転条件とシート成形条件は以下の通りである。
・押出機
口径65mm、L/D=45、CO注入口根本よりL/D=20の位置
スクリュ回転数:75rpm
設定温度:C1−180、C2〜4−240、C5−190、C6〜9−175℃
吐出量:約65kg/h
・シート成形
フィードブロック温度:175℃
ダイ温度:175℃
冷却ロール温度:15℃
巻き取り速度:4.5m/min
<発泡シートの特性評価>
実施例1と同様に実施した。結果を表3に示す。
Figure 0006232832
(注1)表3における略号は、以下の通り。
CY1790:Cyanox1790、日本サイテックインダストリーズ株式会社製
IR1010:IRGANOX1010、BASFジャパン株式会社製
CMS944:Chimassorb944、BASFジャパン株式会社製
LA−57:アデカスタブLA−57、株式会社ADEKA製
LA−63P:アデカスタブLA−63P、株式会社ADEKA製
ZS−27:アデカスタブZS−27、株式会社ADEKA製
STA:ステアリン酸アミド
CaST:ステアリン酸カルシウム
(注2)表3における構造式の欄の記号は以下の意味である。
○:本発明の添加剤化合物の構造式を満たしている。
×:本発明の添加剤化合物の構造式を満たしていない。
[実施例と比較例の対比]
実施例1〜2と比較例1〜6では、得られた発泡シートの密度がほぼ同じであり、同程度の発泡条件となっている。この中で、本発明に規定の特定の構造を有するヒンダードアミンと脂肪酸アミドの両方を含む実施例1では、良好な発泡特性を示し、外観の優れた発泡シートが得られているのに対し、本発明に規定の特定の構造を有するヒンダードアミンと脂肪酸アミドの両方を含まない比較例1では、連続気泡率が著しく悪く、延展性/外観も悪く、好ましくない。
同様に、本発明に規定の特定の構造を有するヒンダードアミンは含むが脂肪酸アミドを含まない比較例2では、連続気泡率と延展性/外観は良いが、平均気泡径が160μmとなっており、目標の150μmより大きく、セルが粗いため好ましくない。また、本発明に規定の特定の構造を有するヒンダードアミンを含み、脂肪酸アミドの代わりにその他の窒素原子を含む化合物を用いた比較例3、4では、それぞれ、連続気泡率と延展性/外観が悪かったり、平均気泡径が大きかったりして、好ましくない。比較例5は、ヒンダードアミンと脂肪酸アミドの両方を含むが、用いているヒンダードアミンが本発明に規定の特定の構造を有しておらず、連続気泡率と延展性/外観が著しく悪く、好ましくない。
また、実施例2では、本発明に規定の特定の構造を有するヒンダードアミンと脂肪酸アミドの両方を含んでおり、更に、フェノール系酸化防止剤として、本発明に規定の特定の構造を有するフェノールと、その他のフェノールを併用しているが、前者の使用量が後者よりも多く、発泡の結果も良好である。実施例2と比較例6の対比では、後者は脂肪酸アミドを使用しておらず、連続気泡率と延展性/外観が悪く好ましくない。
さらに、実施例3は、物理発泡の実施例であり、本発明が化学発泡に限定されるものではなく、物理発泡でも有効であることを実証するものである。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、発泡成形時のセルの形成が非常に均一であり、高い独立気泡率で、緻密でサイズの揃ったセルを有する発泡成形体を製造することができる。また、流動性、並びに、延展性が非常に高く、高い押出レートで外観の綺麗な発泡シートを製造することが可能となる。また、この様な高い発泡特性を有しながら、熱成型性も良好である。この様にして得られた発泡成形体は、外観、熱成型性、耐衝撃性、軽量性、剛性、耐熱性、断熱性、耐油性等に優れていることより、トレー、皿、カップなどの食品容器や自動車ドアトリム、自動車トランクマットなどの車両内装材、包装、文具、建材などに好適に利用することができる。

Claims (6)

  1. ポリプロピレン100重量部に対し、以下の式(2)で表される構造を有するヒンダードアミン0.001〜0.3重量部、及び、脂肪酸アミド化合物0.001〜0.5重量部、を含み、さらに、炭酸水素ナトリウム(重曹)及びクエン酸の混合物をポリプロピレン100重量部に対し、0.01〜6.0重量部配合してなることを特徴とする発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
    Figure 0006232832
    (式中、Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、Oのヘテロ原子を含んでいても良い。また、2個のRは、同一であっても異なっていても良く、互いに結合して環を形成していても良い。Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、Oのヘテロ原子を含んでいても良い。Rは、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、Oのヘテロ原子を含んでいても良い。nは、カッコ内の構造の繰り返しを示す。)
  2. ポリプロピレン100重量部に対し、さらに、式(4)で表される構造を有するフェノール0.001〜0.3重量部を含むことを特徴とする請求項1に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
    Figure 0006232832
    (式中、R、R、Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、N、S、Oのヘテロ原子を含んでいても良い。R、R、Rは、お互いに異なっていても良く、そのうちの任意の2つ若しくは全部が同一であっても良い。また、R、R、Rのうちの少なくとも1つは、フェノール構造を有する置換基である。)
  3. 前記ポリプロピレンは、以下の特性(X−i)〜(X−iv)を満たすポリプロピレン(X)を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
    特性(X−i):長鎖分岐を有する。
    特性(X−ii):230℃で測定した溶融張力(MT)が2〜30gである。
    特性(X−iii):MFRが0.1〜30g/10分である。
    特性(X−iv):25℃キシレン可溶成分量(CXS)がポリプロピレン(X)全量に対し5wt%未満である。
  4. 前記ポリプロピレンは、以下の特性(YH−i)〜(YH−ii)を満たすプロピレン(共)重合体(YH)と以下の特性(YC−i)〜(YC−ii)を満たすプロピレン−エチレン共重合体(YC)からなり、以下の特性(Y−i)を満たすインパクトコポリマー(Y)を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物。
    特性(YH−i):プロピレン単独重合体、又は、エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとプロピレンとの共重合体であって、プロピレン(共)重合体(YH)が共重合体の場合には、(YH)中のエチレン及びα−オレフィンの含量が0を超え、3wt%以下である。
    特性(YH−ii):MFRが1〜100g/10分である。
    特性(YC−i):プロピレン−エチレン共重合体(YC)中のエチレン含量がプロピレン−エチレン共重合体(YC)全量に対し10〜90wt%である。
    特性(YC−ii):135℃デカリン中で測定した固有粘度が5〜20dl/gである。
    特性(Y−i):インパクトコポリマー(Y)中のプロピレン−エチレン共重合体(YC)の含量がインパクトコポリマー(Y)全量に対し1wt%以上、50wt%未満である。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の発泡成形用ポリプロピレン樹脂組成物を用いて製造してなることを特徴とするポリプロピレン系発泡シート。
  6. 請求項に記載のポリプロピレン系発泡シートを熱成型することにより製造してなることを特徴とする成形体。
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