JP6031944B2 - 抗イムノコンプレックス抗体、それを産生するハイブリドーマ、及びそれらの製造方法 - Google Patents
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Description
(1)プレート等に固定化した抗ハプテンモノクローナル抗体にハプテンを含む試料を添加し、当該ハプテンを抗ハプテン抗体に捕捉させる。
(2)酵素などで標識した抗イムノコンプレックス抗体を添加する。抗イムノコンプレックス抗体は、ハプテンと抗ハプテン抗体からなる免疫複合体に選択的に結合する。そのため、試料中に含まれるハプテン量の増加に伴って、シグナルの増加が観測される。
(1)動物種A由来の抗ハプテン抗体とハプテンとの複合体を、動物種Aとは異なる動物種Bに免疫し、得られた抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることによりハイブリドーマを作製し、抗イムノコンプレックス抗体産生ハイブリドーマをスクリーニングすることを特徴とする、抗イムノコンプレックス抗体産生ハイブリドーマの製造方法。
(2)上述の(1)に記載の方法において、スクリーニング時に、動物種A由来の血清又は抗体を共存させる方法。
(3)上述の(1)又は(2)に記載の方法において、動物種Aがウサギであり、動物種Bがマウスである方法。
(4)上述の(1)〜(3)のいずれかに記載の方法において、ハプテンがステロイドホルモンである方法。
(5)上述の(1)〜(4)のいずれかに記載の方法において、抗ハプテン抗体の解離定数が1×10−10(M)以下である方法。
(6)上述の(1)〜(5)いずれかに記載の方法により製造されることを特徴とするハイブリドーマ。
(7)上述の(6)に記載のハイブリドーマを培養し、その培養上清から抗イムノコンプレックス抗体を回収することを特徴とする、抗イムノコンプレックス抗体の製造方法。
(8)上述の(7)に記載の方法により製造されることを特徴とする抗イムノコンプレックス抗体。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるハプテンは、通常は競合法により測定されるような分子量の小さい物質であれば特に限定はなく、一例として、トリヨードサイロニン、チロキシン、3,5−ジヨード−L−チロニン等の甲状腺ホルモンや、エストロン、エストラジオール(以下、E2とする)、エストリオール、プロゲステロン(progesterone)、コルチゾール(cortisol)等のステロイドホルモンがあげられる。特に本発明ではステロイドホルモンが好ましく、その中でもE2が更に好ましい。
抗イムノコンプレックス抗体は、ハプテンに対する抗体ではなく、ハプテンに対する抗体への抗体でもなく、ハプテンとそれに対する抗体との複合体に対する抗体である。
本発明において免疫に使用される動物種A由来の抗ハプテン抗体は、ハプテンと強い会合を示すものが好ましい。ハプテン−抗ハプテン抗体間の解離定数は1×10−10(M)以下が好ましく、1×10−11(M)以下がさらに好ましく、1×10−12(M)以下がとりわけ好ましい。動物種Aは特に限定されず、当業者によって使用される免疫動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ヤギなどを用いればよいが、特にウサギが好ましい。
本発明においては、抗ハプテン抗体とハプテンとの複合体を、動物種Bに対して免疫する。免疫に用いられる抗ハプテン抗体の構造は、ハプテンと複合体を形成可能なパラトープ部分を含むものであれば特に限定はなく、インタクトの抗体を免疫してもよいし、Fab化した抗体又はF(ab)’2化した抗体を用いてもよい。なお免疫する際、フロイントアジュバンドなどのアジュバンドを併用してもよい。動物種Bは、動物種Aと異なる動物種であれば特に限定されず、当業者によって使用される免疫動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ヤギなどを用いればよい。特に動物種Bはマウスが好ましく、この場合に動物種Aがウサギであることがとりわけ好ましい。
抗イムノコンプレックス抗体を産生するハイブリドーマは、前記(4)で免疫した動物種Bから脾臓細胞等の抗体産生細胞を採取し、それを骨髄腫細胞(ミエローマ細胞)と融合させることで得ることができる。細胞融合方法に特に限定はなく、通常一般的に行われている方法で融合すればよい。例えばポリエチレングリコール(以下、PEGとする)法、電気融合法、センダイウイルスを用いる方法があげられる。
本発明では、動物種Aとは異なる動物種Bに免疫を行うため、前記(5)で得られるハイブリドーマには、目的とする抗イムノコンプレックス抗体を産生するハイブリドーマ以外に、抗ハプテン抗体の定常領域を認識する抗体(目的外の抗体)を生産するハイブリドーマも数多く存在する。このような抗ハプテン抗体の定常領域を認識する抗体は、抗イムノコンプレックス抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングを行う際に、バックグラウンドを上昇させる要因となる。そこでスクリーニングを行う際に、動物種A由来の血清または抗体を系中に共存させると、抗ハプテン抗体の定常領域を認識する抗体は、共存させた動物種A由来の血清又は抗体と反応し、バックグラウンドを低減させることができるので好ましい。これにより、抗イムノコンプレックス抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングが容易に行えるようになる。動物種A由来の血清または抗体の共存量としては、抗体を用いる場合は5μg/mL以上50μg/mL以下が好ましく、血清を用いる場合は反応液量に対し5%以上10%以下が好ましい。
得られた抗イムノコンプレックス抗体産生ハイブリドーマを培養し、その培養上清から抗イムノコンプレックス抗体を回収することにより、抗イムノコンプレックス抗体を得ることができる。抗体の回収方法に特に限定はなく、当業者が用いる方法を適宜採用することができる。また得られた抗イムノコンプレックス抗体の評価は、当業者が通常用いる、ELISA(Enzyme Linked Immunosorbent Assay)法やRIA(Radioimmunoassay)法などで行えばよい。
免疫動物としては、マウス5週齢メス5匹(マウスNo.1からNo.5)を使用した。抗原溶液とアジュバンドとを等量混合したエマルジョンを作製し、それをマウスに対して1週間間隔で4回免疫した。なお抗原溶液は抗E2ウサギモノクローナル抗体をF(ab’)2化したものと、E2とを、モル比で1:540にPBS溶液中で混合し、室温で一時間反応させたものを用いた。マウス1匹あたりの免疫量は抗体量として50μgを免疫した。またアジュバントは、初回の免疫ではフロイント完全アジュバントを、二回目以降の免疫ではフロイント不完全アジュバントをそれぞれ用いた。
以下に示すELISAで抗体価の上昇を確認した。
(1)インタクトの抗E2ウサギモノクローナル抗体(1μg/mL)をELISAプレートに固定化後、1%スキムミルクでブロッキングした。
(2)E2の希釈系列(50ng/mLから2倍ずつ希釈)を作製し、固定化した抗E2ウサギモノクローナル抗体に反応させた。
(3)B/F(Bound/Free)分離後、実施例1で免疫したマウスから採血した抗血清を、5%のウサギ血清を含んだ0.1%スキムミルク溶液で1000倍に希釈後、プレートに添加して、プレート上に固定した抗体とE2との複合体へ反応させた。
(4)B/F分離後、アルカリホスファターゼ(以下、ALPとする)標識抗体であるαMouse IgG−ALP(Millipore社製)をプレートに添加して、プレート上のマウス抗体と反応させた。
(5)未反応のALP標識抗体をB/F分離後、ALPの基質である4−メチルウンベリフェリン酸(4−MUP)をプレートに分注し、蛍光強度を測定することで検出した。
実施例2で選択したマウスから、以下に示す方法で抗体産生細胞を作製した。
(1)抗体価の上昇したマウスNo.1の脾臓を摘出し、定法に従い脾臓細胞を調製した。調製した脾臓細胞をPEG法に従いマウスミエローマ細胞(SP2/0)と融合させ、ハイブリドーマを作製した。
(2)融合後のハイブリドーマ浮遊液を10%FCS(Fetal calf serum)と1×HAT(siguma製)を含むE−RDF培地(極東製薬製)に懸濁後、マイクロタイタープレートにまいて10日間培養し、培養上清を取得した。
実施例3で得られた抗体産生ハイブリドーマを、以下に示す2つのELISAによりスクリーニングした。
(1)抗E2モノクローナル抗体に対する反応性(E2−)
(1−1)抗E2ウサギモノクローナル抗体(1μg/mL)をELISAプレートに固定化後、1%スキムミルクでブロッキングした。
(1−2)5%ウサギ血清を含むPBS溶液中で実施例3(2)の培養上清をプレート上で反応させた。
(1−3)反応後、ALP標識抗体であるαMouse IgG−ALP(Millipore社製)をプレート上で反応させ、B/F分離を行った後、基質である4−MUPを分注し、蛍光強度を測定することで検出した。
(2−1)抗E2ウサギモノクローナル抗体(1μg/mL)をELISAプレートに固定化後、1%スキムミルクでブロッキングした。
(2−2)E2(50ng/mL)のPBS溶液をプレートに固定化した抗体と反応させた。
(2−3)B/F分離後、5%ウサギ血清を含むPBS溶液中で実施例3(2)の培養上清をプレート上で反応させた。
(2−4)反応後、ALP標識抗体であるαMouse IgG−ALP(Millipore社製)をプレート上で反応させ、B/F分離を行った後、基質である4−MUPを分注し、蛍光強度を測定することで検出した。
実施例4で単離したモノクローナル抗体720−20の特性を以下の方法で評価した。
(1)抗E2抗体とE2との複合体への反応性−1
実施例2に示したELISAと同様の反応系を用いて、単離したモノクローナル抗体の評価を行った。なおE2希釈系列は50ng/mLから開始した。結果を図3に示す。横軸にはE2濃度を示し、縦軸には蛍光強度(Intensity)を示す。モノクローナル抗体720−20は、E2濃度の上昇に伴い、蛍光強度が大幅に増大することが示された。
以下に示すELISAにより、モノクローナル抗体720−20の評価を行った。
(2−1)αMouse−IgGFc(1μg/mL)(MP Biomedicals社製)をELISAプレートに固定化後、1%スキムミルクでブロッキングした。
(2−2)5%のウサギ血清を含むPBS溶液中で、モノクローナル抗体720−20(1μg/mL)をプレート上で反応させた。
(2−3)あらかじめE2(50ng/mLから希釈系列を作製したもの)と混合したALP標識抗E2ウサギモノクローナル抗体をプレートに添加し、反応させ、B/F分離を行った後、基質である4−MUPを分注し、蛍光強度を測定することで検出した。結果を図4に示す。横軸にはE2濃度を示し、縦軸には蛍光強度(Intensity)を示す。モノクローナル抗体720−20は、この測定系においても、E2濃度の上昇に伴い蛍光強度が増大することが示された。
Claims (5)
- 動物種A由来の抗ハプテン抗体とハプテンとの複合体を、動物種Aとは異なる動物種B(但し、ヒトを除く)に免疫し、得られた抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることによりハイブリドーマを作製し、抗イムノコンプレックス抗体産生ハイブリドーマをスクリーニングし、かつスクリーニング時に、動物種A由来の血清、又は動物種A由来の抗体であって当該抗ハプテン抗体以外のものを共存させることを特徴とする、抗イムノコンプレックス抗体産生ハイブリドーマの製造方法。
- 請求項1に記載の方法において、動物種Aがウサギであり、動物種Bがマウスである方法。
- 請求項1又は2に記載の方法において、ハプテンがステロイドホルモンである方法。
- 請求項1から3のいずれかに記載の方法において、抗ハプテン抗体の解離定数が1×10−10(M)以下である方法。
- 請求項1から4のいずれかに記載の方法により抗イムノコンプレックス抗体産生ハイブリドーマを製造し、次いで当該ハイブリドーマを培養し、その培養上清から抗イムノコンプレックス抗体を回収することを特徴とする、抗イムノコンプレックス抗体の製造方法。
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