本実施の形態は、癌手術での切除組織における癌転移診断を行うための検体測定装置に本発明を適用したものである。
以下、本実施の形態に係る検体測定装置1について、図面を参照して説明する。
図1は、検体測定装置1の外観の構成を模式的に示す斜視図である。
検体測定装置1は、切除組織内に存在する癌由来の遺伝子(mRNA)を、LAMP(Loop-mediatedIsothermal Amplification,栄研化学)法に基づいて核酸を増幅させ、増
幅に伴い発生する溶液の濁りを測定することにより検出を行う装置である。なお、LAMP法の詳細は、米国特許第6410278号公報に開示されている。
検体測定装置1は、タッチパネルからなる表示入力部1aと、前面と上面に跨るカバー1bを備えている。カバー1bは、軸1cを中心軸として回転可能となるよう構成されており、ロック機構1dによってロック状態とアンロック状態とに切り替えられる。操作者は、カバー1bがアンロック状態となっているときに、図1に示す状態から、カバー1bを上方向に回転させて検体測定装置1の上方を開放し、検体測定装置1の内部にアクセスすることができる。また、ロック機構1dの近傍には、カバー1bが閉じられているか否かを検出するためのセンサ(図示せず)が設置されている。
図2は、検体測定装置1の内部の構成を模式的に示す平面図である。
検体測定装置1は、内部に、検体容器設置部10と、試薬容器設置部20と、分注部30と、チップ設置部40と、反応部50を備えている。
検体容器設置部10の上面には、上部が開口された8つの保持孔11と3つの保持孔12が形成されている。保持孔11は、左右方向に2つ、前後方向に4つ並んでおり、保持孔12は、後方に1つ、前方に2つ並んでいる。
保持孔11には、予め切除組織を前処理(ホモジナイズ、遠心分離、ろ過)して作製された可溶化抽出液(以下、「検体」という)が収容された検体容器Sと、希釈された検体が収容された検体容器Sがセットされる。なお、切除組織から可溶化抽出液(核酸増幅反応用試料)を作製するための前処理として、米国特許出願公開第2006/0121515号明細書に開示されている方法を用いることができる。このとき、1つの切除組織から作製される検体を収容する検体容器Sと、その検体を希釈して得られる希釈検体を収容する検体容器Sは、左右に隣り合う保持孔11にセットされる。3つの保持孔12には、増幅するべき核酸が正常に増幅することと、増幅するべきでない核酸が正常に増幅しないことを確認するためのコントロールが収容された3つの検体容器Sがセットされる。
なお、検量線を作成する場合、検体の測定の前(たとえば、装置の起動直後)に、所定の保持孔11に、検量線を作成するための基準となる所定の濃度の標的遺伝子を含むキャリブレータが収容された検体容器Sがセットされる。この場合も、後述する検体の測定と同様にして測定が行われ、検量線が作成される。
試薬容器設置部20の上面には、上部が開口された3つの保持孔21が形成されている。左後方の保持孔21には、サイトケラチン19(CK19)のプライマを含むプライマ試薬が収容された試薬容器Rがセットされ、右後方の保持孔21には、βアクチン(β−actin)のプライマを含むプライマ試薬が収容された試薬容器Rがセットされる。前方の
保持孔21には、核酸増幅反応を促し、CK19の核酸増幅反応とβアクチンの核酸増幅反応のどちらにも共通で用いられる酵素を含む酵素試薬が収容された試薬容器Rがセット
される。
図3(a)、(b)は、検体容器Sの構成を示す側面図であり、図3(c)は、試薬容器Rの構成を示す側面図である。
図3(a)、(b)を参照して、検体容器Sは、透光性を有する合成樹脂により構成された管状容器であり、上端が開口している。検体容器Sは、患者から採取され、予め前処理が行われた検体を収容しており、検体容器Sの上端の開口は、接続部S1aを介して試薬容器Rに繋がった蓋部S1によって密閉されている。操作者は、蓋部S1を所定の方向に回転させることにより、図3(b)の矢印方向に蓋部S1を検体容器Sの上端から取り外し、検体容器Sの上端を開口させた状態で、検体容器Sを保持孔11、12にセットする。
図3(c)を参照して、試薬容器Rも、検体容器Sと同様、透光性を有する合成樹脂により構成された管状容器であり、上端が開口している。試薬容器Rは、測定に用いる試薬を収容しており、試薬容器Rの上端の開口は、接続部R1aを介して試薬容器Rに繋がった蓋部R1によって密閉されている。操作者は、蓋部R1を所定の方向に回転させることにより、図3(b)と同様、試薬容器Rの上端を開口させた状態で、試薬容器Rを保持孔21にセットする。なお、検体容器Sの蓋部S1の色と蓋部R1の色は、操作者が検体容器Sと試薬容器Rを容易に区別できるよう異なっている。
図4(a)は、検体容器設置部10の断面をY軸正方向に見た場合の図である。検体容器設置部10の保持孔11は、検体容器設置部10を上下に貫通するよう形成されている。各保持孔11の下方には反射型の光学式のセンサ13が設置されており、センサ13の検出信号により、対応する保持孔11に検体容器Sがセットされているか否かが検知される。
検体容器設置部10の保持孔12と試薬容器設置部20の保持孔21も、保持孔11と同様、それぞれ、検体容器設置部10と試薬容器設置部20を上下に貫通するよう形成されている。また、各保持孔12、21の下方にもセンサ13が設置されており、センサ13の検出信号により、対応する保持孔12に検体容器Sがセットされているか否かと、対応する保持孔21に試薬容器Rがセットされているか否かが検知される。
図2に戻り、分注部30は、アーム部31と、左右方向に延びた軸32と、前後方向に延びた軸33と、アーム部31を移動させるための機構を含んでいる。アーム部31は、軸32に支持されて左右方向に移動可能であり、且つ、アーム部31と軸32を含む機構は、軸33に支持されて前後方向に移動可能である。また、アーム部31は、アーム部31に対してそれぞれ独立して上下方向(Z軸方向)に移動可能な2つのシリンジ部31aを備えている。シリンジ部31aは、下端(Z軸負方向側の端)に、ピペットチップCが取り付けられるノズル部31bを含んでいる。また、シリンジ部31aは、吸引および吐出を行うためのポンプ部(図示せず)を含んでいる。
チップ設置部40には、36本のピペットチップCを収容するラック41が2つセットされる。分注部30のアーム部31が、検体測定装置1の内部で前後左右に動かされ、シリンジ部31aが上下に動かされることにより、ノズル部31bの下端にピペットチップCが取り付けられる。なお、吸引と吐出の動作が終了する度に、ノズル部31bに取り付けられているピペットチップCは、廃棄部(図示せず)において廃棄される。
反応部50は、前後方向に並ぶ8つのブロック51からなる。図2では、便宜上、8つのブロック51のうち、一部のブロック51のみが図示されている。8つのブロック51
は、それぞれ、混合容器設置部511と、YZ平面に平行な面を有する基板512、513を備えている。また、8つのブロック51は、それぞれ、回転機構514(図4(b)、(c)参照)を備えている。なお、図2では、便宜上、回転機構514の図示が省略されている。
混合容器設置部511の上面には、上部が開口された2つの保持孔511aが形成されている。2つの保持孔511aには、試薬と検体とを混合するための混合容器Mがセットされる。
図3(d)は、混合容器Mの構成を示す斜視図である。
混合容器Mは、平面部M11、M21を備えており、平面部M11と平面部M21は、2つの連結部M31によって連結されている。平面部M11には、上下方向に延びた2つの収容部M12が形成されており、収容部M12の上部は、開口M13により上方向に開口している。また、平面部M11には、上下方向に貫通する2つの孔M14が形成されている。
平面部M21には、突形状を有する2つの蓋部M22と、把持部M23と、2つの爪M24が形成されている。連結部M31が屈曲するようにして、図3(d)の円弧状の矢印方向に平面部M21が折り返され、2つの爪M24がそれぞれ孔M14に係合すると、左側の蓋部M22により左側の収容部M12が密閉され、右側の蓋部M22により右側の収容部M12が密閉される。また、平面部M21の中央には、上下方向に貫通する開口M25と、開口M25の平面部M11側の壁面が把持部M23側に屈曲した橋部M26が形成されている。
操作者は、図3(d)に示すように開口M13が開放された状態で、混合容器Mを混合容器設置部511にセットする。このとき、図3(d)の右側の収容部M12と左側の収容部M12が、それぞれ、図2の混合容器設置部511の左側の保持孔511aと右側の保持孔511aに収容されるよう、混合容器Mが混合容器設置部511にセットされる。
図4(b)、(c)は、ブロック51の回転機構514を模式的に示す平面図である。
図4(b)を参照して、回転機構514は、蓋側支持部材514aと、回転支持部514bと、センサ514cを備えている。蓋側支持部材514aは、XY平面に平行な状態からY軸回りに所定の角度だけ傾けられた面を有しており、中央近傍に切欠部514dと、後方に1つの凸部514eと、前方に2つの凸部514eが形成されている。蓋側支持部材514aは、回転支持部514bによって軸支されており、回転支持部514bの軸回りに回転可能となっている。センサ514cは、前後方向に移動可能な機械式のスイッチであり、切欠部514dの位置に位置付けられている。
図4(c)を参照して、混合容器設置部511に混合容器Mがセットする場合、まず、混合容器Mの2つの収容部M12を保持孔511aに収容させる。次に、平面部M21を、3つの凸部514eによって蓋側支持部材514aに対して固定する。具体的には、後方の凸部514eを開口M25の中央に付近に位置付け、手前側の2つの凸部514eを平面部M21の手前側の壁面に位置付ける。この状態で、平面部M21を蓋側支持部材514aに押し付けると、橋部M26の後方側の壁面と、平面部M21の手前側の2箇所の壁面が、3つの凸部514eによって挟持される。このとき、混合容器Mの把持部M23がセンサ514cに当接し、センサ514cが後方に移動する。これにより、混合容器設置部511に混合容器Mがセットされているか否かが検知される。
次に、図4(c)に示すように混合容器Mがセットされた状態から、回転支持部514bの軸が回転することにより蓋側支持部材514aの面が傾けられ、混合容器Mの平面部M21が、蓋側支持部材514aの面に押されて折り返される。こうして、混合容器Mの平面部M11に平面部M21が重ね合わされる。このとき、蓋側支持部材514aの回転制御に応じて、爪M24が孔M14に係合しない程度に平面部M11、M21が重ねられる場合(以下、「重ね閉じ」という)と、爪M24が孔M14に係合するように平面部M11、M21が重ねられ2つの収容部M12が密閉される場合(以下、「係合閉じ」という)がある。このように混合容器Mを閉じる制御については、追って図16を参照して説明する。
図2に戻り、基板512の後方側の面には、2つの発光部512aが設置されており、基板513の前方側の面には、2つの受光部513aが設置されている。発光部512aは、約1mmの直径を有する光を発光する。基板512の左側の発光部512aから発光された光は、基板513の左側の受光部513aにて受光され、基板512の右側の発光部512aから発光された光は、基板513の右側の受光部513aにて受光される。
図4(d)は、ブロック51の断面をY軸正方向に見た場合の図である。
混合容器設置部511の下方には、混合容器設置部511を前後方向(X軸方向)に貫通する孔511bが形成されている。孔511bは、混合容器設置部511の保持孔511aとつながっている。発光部512aから発光された光は、孔511bを通過する際に収容部M12を透過し、受光部513aにて受光される。
図2に戻り、次に、検体の測定動作について説明する。
測定対象となる切除組織が検体測定装置1に到着すると、操作者は、後述するように表示入力部1aを介して測定オーダを登録し、ホモジナイズ、ろ過等の前処理を経て検体を作製する。
続いて、操作者はカバー1bを開けて、検体容器設置部10の所定の保持孔11に、作製した検体を収容する検体容器Sと、この検体を希釈した希釈検体を収容する検体容器Sをセットする。また、CK19のプライマ試薬を収容する試薬容器Rと、βアクチンのプライマ試薬を収容する試薬容器Rと、酵素試薬を収容する試薬容器Rを保持孔21にセットし、反応部50の所定の混合容器設置部511に混合容器Mをセットする。しかる後、操作者は、カバー1bを閉じて測定を開始させる。CK19は、癌組織に特異的に発現しているタンパク質で、CK19のmRNAを増幅させることで、切除組織内に存在する癌由来の遺伝子を検出することができる。βアクチンは、様々な組織に発現しているタンパク質で、βアクチンのmRNAを増幅させることで、遺伝子増幅が正常に行われているかを確認することができる。
測定が開始されると、プライマ試薬(CK19とβアクチン)が試薬容器Rから吸引され、混合容器Mの収容部M12に吐出される。具体的には、CK19のプライマ試薬とβアクチンのプライマ試薬が、1つの混合容器Mの左右の収容部M12にそれぞれ吐出され、さらに、CK19のプライマ試薬が、別の混合容器Mの左右何れかの収容部M12に吐出される。
続いて、検体と希釈検体が検体容器Sから吸引され、CK19のプライマ試薬が吐出された2箇所の収容部M12に吐出される。さらに、吸引された検体は、βアクチンのプライマ試薬が吐出された収容部M12にも吐出される。続いて、酵素試薬が試薬容器Rから吸引され、検体と希釈検体が吐出された3箇所の収容部M12に吐出される。
なお、吸引が行われる場合、アーム部31が前後左右に動かされて吸引位置が決められた後、シリンジ部31aが下方向に移動されることにより、ノズル部31bに取り付けられたピペットチップCの下端が、検体容器Sまたは試薬容器R内に挿入される。この状態で、ポンプ部が駆動されることにより吸引が行われる。吐出が行われる場合、アーム部31が前後左右に動かされて吐出位置が決められた後、シリンジ部31aが下方向に移動されることにより、ノズル部31bに取り付けられたピペットチップCの下端が、混合容器Mの収容部M12内に挿入される。この状態で、ポンプ部が駆動されることにより吐出がおこなわれる。
次に、吐出が行われた混合容器Mは、反応部50の回転機構514により、図3(d)の矢印方向に平面部M21が折り返され、2つの収容部M12が蓋部M22により密閉される。この状態で、混合容器設置部511の下方に配されたペルチェモジュール(図示せず)によって混合容器M内が20〜65℃程度に加温され、LAMP反応により標的遺伝子(mRNA)の核酸が増幅する。そして、上述したように、発光部512aから発光された光が、混合容器Mの収容部M12を透過し、受光部513aにて受光される。このとき、受光部513aの検出信号に基づいて、核酸増幅反応時の収容部M12内の濁度がリアルタイムで生成される。生成された濁度と、予めキャリブレータの測定結果から作成された検量線に基づいて、増幅立ち上がり時間から標的遺伝子の濃度が得られる。こうして、検体の測定が終了する。
ここで、上述したように、検体は、予め切除組織を前処理(ホモジナイズ、遠心分離、ろ過)することにより作製される。このため、検体の作製が完了した後で、プライマ試薬(CK19とβアクチン)が混合容器Mに分注されるようにすると、検体の測定結果を得るまでの時間が長くなるという問題が生じる。
そこで、本実施の形態の検体測定装置1は、検体の作製が完了してから測定結果が得られるまでの時間を短くするために、検体の作製が完了する前に、プライマ試薬(CK19とβアクチン)を混合容器Mに分注出来るよう構成されている。本実施の形態では、プライマ試薬の分注を、検体容器Sを設置するよりも前に行うことができる。
以下、検体の設置後にプライマ試薬の分注を行うことを、「通常分注」と称し、検体の設置前にプライマ試薬の分注を行うことを、「事前分注」と称する。本実施の形態では、操作者は、検体の測定を登録する際に、通常分注と事前分注の何れかを選択することができる。通常分注と事前分注の設定手順については、追って図6以降を参照して説明する。
図5は、検体測定装置1の構成を示す図である。
検体測定装置1は、測定ユニット2と情報処理ユニット3からなる。
測定ユニット2は、図2に示す分注部30と、検出部201と、センサ部202と、機構部203を有する。検出部201は、発光部512aと受光部513aを含んでいる。センサ部202は、検体容器設置部10と試薬容器設置部20にセットされた検体容器Sと試薬容器Rを検出するためのセンサ13と、混合容器設置部511にセットされた混合容器Mを検出するためのセンサ514cと、カバー1bが閉じられているか否かを検出するためのセンサを含んでいる。機構部203は、ロック機構1dと、回転機構514と、検体測定装置1内のその他の機構を含んでいる。
情報処理ユニット3は、CPU301と、ROM302と、RAM303と、ハードディスク304と、I/Oインターフェース305と、図1に示す表示入力部1aを有する
。
CPU301は、ROM302に記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM303にロードされたコンピュータプログラムを実行する。RAM303は、ROM302およびハードディスク304に記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、RAM303は、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU301の作業領域としても利用される。
ハードディスク304には、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムなど、CPU301に実行させるための種々のコンピュータプログラムおよびコンピュータプログラムの実行に用いるデータが記憶されている。
また、ハードディスク304には、一つの検体に対する測定項目ごとの情報であり、検体の測定の要否に関する情報(以下、「測定オーダ」という)と、設置されている試薬容器Rに関する情報(以下、「試薬情報」)と、測定オーダごとに事前分注の要否を示す情報(以下、「事前分注要否情報」という)と、測定オーダごとに事前分注済みであるか否かを示す情報(以下、「事前分注済み情報」という)と、測定オーダごとに測定済みであるか否かを示す情報(以下、「測定済み情報」という)と、測定オーダごとに、使用される試薬容器設置部20の保持孔21、使用される検体容器設置部10の保持孔11、使用される混合容器設置部511の保持孔511aを示す情報(以下、「保持孔情報」という)と、が記憶されている。測定オーダと試薬情報については、追って図6以降を参照して説明する。事前分注要否情報と、事前分注済み情報と、測定済み情報と、保持孔情報については、追って、図8(a)〜(d)を参照して説明する。
表示入力部1aは、タッチパネル式のディスプレイであり、操作者からの入力を受け付けると共に、画像を表示して操作者に情報を提示する。I/Oインターフェース305は、CPU301と、表示入力部1aと、測定ユニット2の各部に接続されている。CPU301は、I/Oインターフェース305に接続されたこれらの機構から信号を受信すると共に、これらの機構を制御する。
図6は、表示入力部1aに表示される測定登録画面D1を示す図である。
測定登録画面D1は、オーダ登録ボタンD11と、試薬登録ボタンD12と、入力部D13と、選択部D14と、オーダ情報表示領域D15と、状態表示領域D16と、開始ボタンD17を備えている。
オーダ情報表示領域D15中の所定の行が選択された状態で、オーダ登録ボタンD11が押下されると、測定オーダを登録するためのオーダ入力画面D2が表示される。
図7(a)は、表示入力部1aに表示されるオーダ入力画面D2を示す図である。
オーダ入力画面D2は、検体を識別するためのIDを入力するための入力部D21と、この検体に関するコメントを入力するための入力部D22と、事前分注を行うか否かを指定するためのチェックボックスD23と、確定ボタンD24を備えている。確定ボタンD24が押下されると、オーダ入力画面D2に入力された内容が、測定オーダとしてハードディスク304に記憶される。そして、オーダ入力画面D2が閉じられて、図6のオーダ情報表示領域D15で選択されていた行に、測定オーダの内容が表示される。
図6に戻り、試薬登録ボタンD12が押下されると、試薬容器設置部20にセットする試薬容器Rの登録画面(図示せず)が表示される。操作者は、かかる登録画面を介して、
セットする試薬容器Rを登録する。これにより、情報処理ユニット3のハードディスク304に、試薬情報が記憶される。試薬情報には、対応する試薬容器Rの残量を示す情報等が含まれる。
入力部D13には、測定ごとに1ずつ加算される番号が自動的に表示される。選択部D14は、検体の測定を行う“Sample”と、検量線の測定を行う“検量線”とを選択可能となっている。
オーダ情報表示領域D15は、ハードディスク304に記憶されている測定オーダが表示される。オーダ情報表示領域D15は、位置項目と、サンプルID項目と、事前分注項目と、項目1〜3の項目と、コメント項目を含んでいる。位置項目は、測定オーダの番号を示す。サンプルID項目は検体を識別するためのIDを示し、事前分注項目は事前分注を行うか否かを示し、項目1〜3の項目は測定項目を示し、コメント項目は測定オーダに対するコメントを示す。
なお、オーダ入力画面D2の入力部D21、D22と、チェックボックスD23で設定された内容は、オーダ情報表示領域D15のサンプルID項目と、コメント項目と、事前分注項目に表示される。また、本実施の形態では、項目1〜3の全ての測定項目について測定が行われるよう予め設定されている。
状態表示領域D16は、混合領域D101〜D108と、試薬領域D111と、コントロール領域D112と、検体領域D121〜D124を含んでいる。
混合領域D101〜D108は、反応部50に含まれる8つのブロック51の混合容器設置部511に対応して、混合容器Mの設置状態と測定の進捗を表示する画像領域である。混合領域D101〜D108は、順に、最も後方の混合容器設置部511から最も前方の混合容器設置部511に対応している。また、混合領域D101〜D108において、左半分および右半分の領域は、それぞれ、対応する混合容器設置部511の左右の保持孔511aに対応している。
試薬領域D111は、試薬容器設置部20の3つの保持孔21に対応して、試薬容器Rの設置状態を示す画像領域であり、コントロール領域D112は、検体容器設置部10の3つの保持孔12に対応して、検体容器Sの設置状態を示す画像領域である。
検体領域D121〜D124は、検体容器設置部10の8つの保持孔11に対応して、検体容器Sの設置状態と測定の進捗を表示する画像領域である。検体領域D121〜D124は、順に、最も後方で左右に並ぶ2つの保持孔11と、最も後方から1つ手前で左右に並ぶ2つの保持孔11と、最も前方から1つ後方で左右に並ぶ2つの保持孔11と、最も前方の左右に並ぶ2つの保持孔11に対応している。また、検体領域D121〜D124において、左半分および右半分の領域は、それぞれ、対応するペアとなる保持孔11の左側と右側の保持孔11に対応している。
開始ボタンD17が押下されると、オーダ情報表示領域D15に示すように登録された測定オーダに基づいて測定が開始される。また、開始ボタンD17は、後述のように、事前分注の開始指示の入力ボタンにも共用される。これにより、事前分注の開始指示を受け付けるために配置される入力要素の数を減らすことができ、画面の構成を簡素にすることができる。
なお、図6の測定登録画面D1は、検体測定装置1が起動された直後の状態を示している。このとき、3つの保持孔21と、3つの保持孔12には、試薬容器Rと検体容器Sが
セットされていないため、試薬領域D111とコントロール領域D112の内部の円形領域に、“NG”が表示される。
図8(a)〜(d)は、それぞれ、事前分注要否情報と、事前分注済み情報と、測定済み情報と、保持孔情報を概念的に示す図である。これら情報にそれぞれ含まれる位置項目は、測定オーダ情報の位置項目と対応している。
図8(a)〜(c)を参照して、事前分注要否情報に含まれる事前分注要否項目と、事前分注済み情報に含まれる事前分注済み項目と、測定済み情報に含まれる測定済み項目には、“0”または“1”の何れかの値が格納される。検体測定装置1が起動すると、事前分注要否項目と、事前分注済み項目と、測定済み項目に、“0”がセットされる。図7(a)に示すオーダ入力画面D2を介して事前分注ありの測定オーダが登録されると、事前分注要否項目に“1”がセットされる。事前分注が終了すると、事前分注要否項目に“0”がセットされ、事前分注済み項目に“1”がセットされる。測定が終了すると、測定済み項目に“1”がセットされる。
図8(d)を参照して、保持孔情報に含まれる試薬保持孔項目と、検体保持孔項目と、混合保持孔項目には、測定オーダごとに、使用される試薬容器設置部20の保持孔21と、使用される検体容器設置部10の保持孔11と、使用される混合容器設置部511の保持孔511aとを識別するための情報が格納される。図7(a)に示すオーダ入力画面D2を介して測定オーダが登録されると、登録された測定オーダで使用する保持孔が決定され、保持孔情報としてハードディスク304に記憶される。測定オーダごとに使用する保持孔の位置は、保持孔情報を参照することにより、適宜判断される。
ここで、図9(a)〜図12(b)を参照して、典型的な測定の流れと、状態表示領域D16の表示内容について説明する。
検体測定装置1が起動された直後の状態(図6に示す状態)から、操作者がオーダ登録ボタンD11を介して、事前分注を行う測定オーダを、番号1〜3の順に3つ登録する。操作者は、この登録を行う際に、オーダ入力画面D2のチェックボックスD23にチェックを入れて確定ボタンD24を押下する。これにより、図7(b)に示すように、事前分注項目に“○”が付いた事前分注の測定オーダが登録される。
番号1の測定オーダが登録されると、この測定オーダに基づいて試薬と検体が吐出される位置は、混合領域D101に対応する2つの保持孔511aと、混合領域D102の右半分に対応する1つの保持孔511aに決定される。このとき、これらの保持孔511aには未だ混合容器Mがセットされていないため、混合領域D101、D102内の矩形領域に“NG”が表示される。また、混合領域D101内の矩形領域を除く領域と、混合領域D102内の矩形領域を除く右半分の領域が斜線で表示される。この斜線は、事前分注が登録されたが、未だ事前分注が行われていない混合容器Mの位置を示している。さらに、検体領域D121の円形領域を除く領域が斜線で表示される。この斜線は、事前分注が登録されたが、未だ、対象となる混合容器Mに事前分注が行われていない検体容器Sの位置を示している。
番号2の測定オーダが登録されると、同様に、混合領域D102、D103内の矩形領域に“NG”が表示される。なお、この場合、既に混合領域D102内の矩形領域に“NG”が表示されているため、この表示は継続され、混合領域D103内の矩形領域に“NG”が表示される。また、混合領域D102内の矩形領域を除く左半分の領域と、混合領域D103内の矩形領域を除く領域が斜線で表示される。さらに、検体領域D122の円形領域を除く領域が斜線で表示される。
番号3の測定オーダが登録されると、同様に、混合領域D104、D105内の矩形領域に“NG”が表示され、混合領域D104内の矩形領域を除く領域と、混合領域D105内の矩形領域を除く右半分の領域が斜線で表示される。さらに、検体領域D123の円形領域を除く領域が斜線で表示される。こうして、オーダ情報表示領域D15の表示内容は、図7(b)に示す状態となり、状態表示領域D16の表示内容は、図9(a)に示す状態となる。
また、番号1〜3の測定オーダが事前分注ありとして登録されると、図8(a)に示す事前分注要否情報において、位置項目1〜3(番号1〜3の測定オーダ)に対応する事前分注要否項目の値が“1”に更新される。
次に、操作者は、カバー1bを開けて、“NG”が表示されている混合領域D101〜D105に対応する混合容器設置部511に混合容器Mをセットする。これにより、図9(b)に示すように、混合容器Mをセットした場所に対応する混合領域内の矩形領域に“G”が表示される。なお、混合容器Mがセットされたか否かは、対応するブロック51のセンサ514cによって検知される。
さらに、操作者は、“NG”が表示されている試薬領域D111に対応する保持孔21に、CK19のプライマ試薬と、βアクチンのプライマ試薬と、酵素試薬をそれぞれ収容する試薬容器Rをセットし、“NG”が表示されているコントロール領域D112に対応する保持孔12に、コントロールを収容する3つの検体容器Sをセットする。操作者は、試薬容器Rをセットする場合、試薬登録ボタンD12を押下し、表示される登録画面を介して試薬容器Rを登録した上で保持孔12に試薬容器Rをセットする。これにより、図9(b)に示すように、試薬領域D111とコントロール領域D112内の円形領域に“G”が表示される。なお、試薬容器Rと検体容器Sがセットされたか否かは、対応する保持孔21、12の下方に設置されたセンサ13によって検知される。
続いて、操作者によりカバー1bが閉じられて、開始ボタンD17が押下されると、プライマ試薬(CK19とβアクチン)の事前分注が行われる。事前分注が終了すると、図10(a)に示すように、混合領域D101〜D105内の矩形領域を除く領域と、混合領域D105内の矩形領域を除く右半分の領域と、検体領域D121〜D123内の円形領域を除く領域の表示が、斜線から縦線に変わり、事前分注が終わったことが示される。また、検体領域D121〜D123内の円形領域に“NG”が表示され、検体領域D121〜D123に対応する位置に検体容器Sがセットされていないことが表示される。
なお、混合容器Mの左右何れかの収容部M12に対して事前分注が行われると、回転機構514により平面部M11、M21が重ね合わされて、混合容器Mの2つの爪M24が対応する2つの孔M14に係合しない程度に、すなわち重ね閉じにより、収容部M12が蓋部M22によって閉じられる。
また、コントロールが吐出される位置が、混合領域D107、D108に決定され、混合領域D107、D108内の矩形領域に“NG”で示されて、混合領域D107、D108に対応する位置に混合容器Mがセットされていないことが示される。また、混合領域D107、D108内の矩形領域を除く領域が横線で表示され、混合領域D107、D108に対応する位置でコントロールの測定が行われることが示される。
事前分注が終了すると、図8(a)に示す事前分注要否情報において、番号1〜3に対応する測定オーダの事前分注要否項目の値が“0”に更新され、図8(b)に示す事前分注済み情報において、番号1〜3に対応する測定オーダの事前分注済み項目の値が“1”
に更新される。また、事前分注要否情報と事前分注済み情報に基づいて、図7(c)に示すように、番号1〜3の事前分注項目が、“○”からチェック記号に更新される。
次に、操作者は、番号1〜3の測定オーダに対応する検体の作製が完了するまでの間に、適宜、番号4の測定オーダを登録する。操作者は、この登録を行う際に、オーダ入力画面D2のチェックボックスD23のチェックを外して確定ボタンD24を押下する。これにより、図7(c)に示すように、事前分注項目に“○”が付かない通常分注の測定オーダが登録される。また、図10(b)に示すように、混合領域D106内の矩形領域に“NG”が表示され、検体領域D124内の円形領域に“NG”が表示される。さらに、混合領域D105内の矩形領域を除く左半分の領域と、混合領域D106内の矩形領域を除く領域と、検体領域D124内の円形領域を除く領域がハッチングで表示される。
次に、4つの測定オーダに対応する検体と希釈検体が準備され、検体と希釈検体を収容する2つの検体容器Sがそれぞれ決められた位置にセットされると、図11(a)に示すように、検体領域D121〜D124内の円形領域に“G”が表示される。なお、検体容器Sがセットされたか否かは、対応する保持孔11の下方に設置されたセンサ13によって検知される。また、このとき、混合領域D106、D107、D108に対応する混合容器設置部511に混合容器Mがセットされると、混合領域D106、D107、D108内の矩形領域に“G”が表示される。
次に、カバー1bが閉じられ、開始ボタンD17が押下されると、図11(b)に示すように、混合領域D101〜D108内の矩形領域の枠と、検体領域D121〜D124内の円形領域の枠が二重線となり、反応部50において実際に測定が行われる。すなわち、混合領域の縦線で示された領域に対応する収容部M12に、番号1〜3の対応する測定オーダの検体と希釈検体が吐出された後、酵素試薬が吐出され、測定が行われる。また、混合領域のハッチングで示された領域に対応する収容部M12には、まずプライマ試薬(CK19とβアクチン)が吐出された後で、番号4の測定オーダの検体と希釈液が吐出され、その後酵素試薬が吐出され、測定が行われる。
なお、全ての測定オーダに関する吐出が完了すると、回転機構514により平面部M11、M21が重ね合わされて、混合容器Mの2つの爪M24が対応する2つの孔M14に係合され、混合容器Mの収容部M12が密閉された状態で、すなわち係合閉じが行われた状態で測定が行われる。また、混合領域D101〜D106に対応する全ての混合容器Mの収容部M12が密閉されると、3つの検体容器Sからコントロールが吸引され、混合領域D107、D108に対応する混合容器Mに吐出され、コントロールに対する測定も並行して行われる。
次に、測定が終了すると、図12(a)に示すように、測定が行われた混合領域D101〜D108内の矩形領域と、検体領域D121〜D124内の円形領域の色が変化する。このように表示が変化すると、操作者は、カバー1bを開けて、測定が終了した混合容器Mと検体容器Sを全て取り出す。これにより、図12(b)に示すように表示が変化する。このとき、オーダ情報表示領域D15の表示内容は図6に示す状態となる。また、図7(c)に示す測定済み情報において、位置項目1〜4(番号1〜4の測定オーダ)に対応する測定済み項目の値が“1”に更新される。
図13(a)は、図9(a)〜図12(b)を参照して説明した典型的な測定を、操作者が行う場合の処理を示すフローチャートである。
操作者は、まず、検体測定装置1の電源をONにし、検体の作製の準備をする(S11)。このとき、状態表示領域D16は、図6に示すように表示される。しかる後、検体を
作製するための切除組織が到着すると、操作者はこの切除組織を受け取り(S12)、オーダ入力画面D2を介して、図7(b)に示すように、事前分注ありの測定オーダを入力する(S13)。これにより、状態表示領域D16は、図9(a)のように表示される。
続いて、操作者は、カバー1bを開けて、図9(a)で“NG”と表示されている領域に対応する保持孔に、適宜、容器をセットする。すなわち、3つの試薬容器Rと、コントロールを収容する3つの検体容器Sをセットし、混合容器Mを混合領域D101〜D105に対応する混合容器設置部511にセットする(S14)。これにより、状態表示領域D16は、図9(b)に示すように表示される。
そして、操作者は、カバー1bを閉じて、開始ボタンD17を押下する(S15)。これにより、混合領域D101〜D105に対応する混合容器Mに対して、事前分注、すなわちプライマ試薬(CK19とβアクチン)の吐出が行われる。事前分注が完了すると、状態表示領域D16は、図10(a)に示すように表示される。操作者は、開始ボタンD17を押下した後、または、切除組織が到着してから並行して、検体の作製を行う(S16)。
しかる後、検体の作製が完了すると、操作者は、オーダ入力画面D2を介して、追加検体がある場合など必要に応じて、事前分注なしの測定オーダを登録する(S17)。これにより、オーダ情報表示領域D15は、図7(c)に示すように表示され、状態表示領域D16は、図10(b)に示すように表示される。
続いて、操作者は、カバー1bを開けて、全ての測定オーダに対応する検体と希釈検体を収容する検体容器Sを、検体容器設置部10の決められた保持孔11にセットし、混合領域D106〜D108に対応する混合容器設置部511に混合容器Mをセットする(S18)。これにより、状態表示領域D16は、図11(a)に示すように表示される。
そして、操作者は、カバー1bを閉じて、開始ボタンD17を押下する(S19)。これにより、混合領域D101〜D108に対応する混合容器Mに、適宜、試薬と検体が吐出され、反応部50において実際に測定が行われる。このとき、状態表示領域D16は、図11(b)に示すように表示される。
しかる後、反応部50における実際の測定が完了すると、状態表示領域D16は、図12(a)に示すように表示される。操作者は、得られた測定結果を、測定の依頼者に報告する(S20)。
図13(b)は、情報処理ユニット3による処理を示すフローチャートである。
検体測定装置1のCPU301は、開始ボタンD17が押下されたかを判定する(S101)。開始ボタンD17が押下されると(S101:YES)、CPU301は、測定済みでない測定オーダが登録されているかを判定する(S102)。測定済みでない測定オーダが登録されているかの判定は、測定オーダと、図8(c)に示す測定済み情報に基づいて行われる。
測定済みでない測定オーダが登録されていると(S102:YES)、CPU301は、“設置条件チェック処理”を実行する(S103)。
図14は、情報処理ユニット3による設置条件チェック処理を示すフローチャートである。
情報処理ユニット3のCPU301は、ロック機構1dの近傍に設置されたセンサの検出信号に基づいて、カバー1bが閉じられていないと判定すると(S201:YES)、カバー1bが閉じられていない旨をRAM303またはハードディスク304に記憶する(S202)。
続いて、CPU301は、図8(a)に示す事前分注要否を参照して、事前分注の必要があるかを判定する(S203)。かかる判定は、事前分注要否情報において、何れかの測定オーダの事前分注要否項目に“1”がセットされているとYESとなる。
事前分注の必要があると(S203:YES)、CPU301は、事前分注要否項目に“1”がセットされている測定オーダに対して以下のチェックを行い、チェックの結果に応じて警告する旨をRAM303またはハードディスク304に記憶する。
具体的には、まず、CPU301は、対象となる測定オーダについて吐出が行われる位置に混合容器Mがセットされていないと判定すると(S204:YES)、混合容器Mがない旨を記憶する(S205)。かかる判定は、図8(d)に示す保持孔情報と、センサ514cの検出信号に基づいて行われる。また、CPU301は、対象となる測定オーダの事前分注で使用する試薬(プライマ試薬)がセットされていないと判定すると(S206:YES)、プライマ試薬を収容する試薬容器Rがない旨を記憶する(S207)。かかる判定は、保持孔21の下方に設置されたセンサ13の検出信号に基づいて行われる。
S204〜S207の処理は、事前分注が必要な全ての測定オーダについて順に行われ、事前分注が必要な全ての測定オーダのチェックが完了すると(S208:YES)、設置条件チェック処理が終了する。
このように、事前分注が必要な測定オーダについてのみS204〜S207のチェック処理が行われると、全ての測定オーダに対してS204〜S208のチェック処理が行われる場合に比べて、チェック処理が簡素になる。すなわち、事前分注が行われる際には、事前分注が必要でない測定オーダに対応する位置に混合容器Mはセットされる必要がなく、酵素試薬を収容する試薬容器Rがセットされる必要はない。このため、S204〜S207のチェック処理が、事前分注が必要な測定オーダのみについて行われると、事前分注に関係のない警告表示(図13のS105参照)が行われないため、事前分注へと円滑に処理が進められる。なお、S204〜S207のチェック処理は、全ての測定オーダに対して行われるようにしても良い。こうすると、事前分注が行われる際に、事前分注が必要ない測定オーダに関してのチェックも併せて行われ、随時、これらの測定オーダについても警告表示がなされることになる。
他方、事前分注の必要がないと(S203:NO)、CPU301は、全ての測定オーダに対して以下のチェックを行い、チェックの結果に応じて警告する旨をRAM303またはハードディスク304に記憶する。
具体的には、まず、CPU301は、対象となる測定オーダについて検体容器Sがセットされていないと判定すると(S209:YES)、検体容器Sがない旨を記憶する(S210)。かかる判定は、図8(d)に示す保持孔情報と、保持孔11の下方に設置されたセンサ13の検出信号に基づいて行われる。また、CPU301は、対象となる測定オーダについて吐出が行われる位置に混合容器Mがセットされていないと判定すると(S211:YES)、混合容器Mがない旨を記憶する(S212)。また、CPU301は、プライマ試薬と酵素試薬のうち、対象となる測定オーダで使用する試薬がセットされていないと判定すると(S213:YES)、何れかの試薬を収容する試薬容器Rがない旨を記憶する(S214)。
S209〜S214の処理は、全ての測定オーダについて順に行われ、全ての測定オーダのチェックが完了すると(S215:YES)、設置条件チェック処理が終了する。
なお、S206とS213において、対応する試薬容器Rがセットされていると判定された場合でも、さらに、CPU301は、その試薬容器Rの残量があるかを判定し、残量がなければ、対応する試薬の残量がない旨を記憶するようにしても良い。
図13(b)に戻り、情報処理ユニット3のCPU301は、S103の設置条件チェック処理に応じて、警告の表示が必要であるかを判定する(S104)。すなわち、CPU301は、図14のS202、S205、S207、S210、S212、S214において、警告する旨を記憶したかを判定し、警告する旨を記憶している場合(S104:YES)、記憶したエラーの種類に応じて、警告ダイアログD3を、表示入力部1aに表示する(S105)。具体的には、CPU301は、図14のS202において警告する旨を記憶した場合、図15(a)に示す警告ダイアログD3を表示し、図14のS205、S212において警告する旨を記憶した場合、図15(b)に示す警告ダイアログD3を表示し、図14のS210において警告する旨を記憶した場合、図15(c)に示す警告ダイアログD3を表示し、図14のS207、S214において警告する旨を記憶した場合、それぞれ、図15(d)、(e)に示す警告ダイアログD3を表示する。
なお、S206とS213において、CPU301が試薬の残量を判定するよう設置条件チェック処理が構成されるときに、試薬の残量がないと判定された場合、CPU301は、図15(f)に示す警告ダイアログD3を表示する。
表示されている全ての警告ダイアログD3のOKボタンが押下されると(S106:YES)、CPU301は、警告ダイアログD3を表示入力部1aから消して(S107)、処理をS101に戻す。
他方、警告の表示が必要ないとき(S104:NO)、CPU301は、“分注処理”を実行する(S108)。CPU301は、S108の分注処理が終了すると、処理をS101に戻す。こうして、シャットダウン指示が行われるまで(S109:YES)、S101〜S108の処理が繰り返し行われる。
図16は、情報処理ユニット3による分注処理を示すフローチャートである。
情報処理ユニット3のCPU301は、図8(a)に示す事前分注要否情報を参照して、事前分注の必要があるかを判定する(S301)。かかる判定は、事前分注要否情報において、何れかの測定オーダの事前分注要否項目に“1”がセットされているとYESとなる。
事前分注の必要があると(S301:YES)、CPU301は、事前分注要否項目に“1”がセットされている測定オーダに対して、S302〜S304の処理を行う。
具体的には、まず、CPU301は、対象となる測定オーダに対応する混合容器Mの収容部M12に、プライマ試薬(CK19とβアクチン)を分注する(S302)。そして、CPU301は、図8(a)に示す事前分注要否情報において、この測定オーダに対応する事前分注要否項目に“0”をセットし、図8(b)に示す事前分注済み情報において、この測定オーダに対応する事前分注済み項目に“1”をセットする(S303)。続いて、CPU301は、この測定オーダに対して異常監視処理を開始する(S304)。異常監視処理については、追って図17(a)を参照して説明する。
こうして、CPU301は、全ての測定オーダについて、事前分注が必要なくなるまで、すなわち、事前分注要否項目が“0”となるまでS302〜S304の処理を繰り返す(S305)。全ての測定オーダについて事前分注が必要なくなると(S305:YES)、CPU301は、回転機構514を駆動して、事前分注を行った混合容器Mに対して重ね閉じを行う(S306)。こうして、分注処理が終了する。
他方、事前分注の必要がないと(S301:NO)、CPU301は、各測定オーダに対して、S307〜S316の処理を行う。
具体的には、まず、CPU301は、図8(b)に示す事前分注済み情報を参照して、対象となる測定オーダについて、事前分注済みであるかを判定する(S307)。かかる判定は、事前分注済み情報において、対象となる測定オーダの事前分注済み項目に“1”がセットされているとYESとなる。
事前分注済みであると(S307:YES)、CPU301は、この測定オーダについて、S304で開始された異常監視処理を終了する(S308)。そして、CPU301は、この測定オーダに関する異常監視処理の中で異常が発生したかを判定する(S309)。異常が発生していないと(S309:YES)、CPU301は、この測定オーダに対応する混合容器Mの収容部M12を開ける(S310)。すなわち、CPU301は、蓋側支持部材514aを平面部M11、M21を重ね合わせる方向と逆の方向に駆動させる。このとき、図4(c)に示すように、橋部M26の後方側の壁面と、平面部M21の手前側の2箇所の壁面が、凸部514eにより支持されているため、平面部M21が蓋側支持部材514aと一体的に回転させられ、収容部M12の上方が開放される。これにより、収容部M12の上方を介して検体の分注が可能になる。異常が発生していると(S309:YES)、処理がS317に進められる。
他方、事前分注済みでないと(S307:NO)、CPU301は、この測定オーダに対応する混合容器Mの収容部M12に、プライマ試薬(CK19とβアクチン)を分注する(S311)。
次に、CPU301は、この測定オーダに対応する検体を吸引して、この測定オーダに対応する混合容器Mの収容部M12に吐出する(S312)。しかる後、CPU301は、この測定オーダに対応する混合容器Mの収容部M12に、酵素試薬を分注し(S313)、この混合容器Mに対して係合閉じを行う(S314)。そして、CPU301は、混合容器M内が加温されると、この混合容器Mに発光部512aから光を照射させ、受光部513aの検出信号に基づいて標的遺伝子の濃度を得る(S315)。続いて、CPU301は、この測定オーダについて、測定済み情報の測定済み項目に“1”をセットする(S316)。
こうして、全ての測定オーダの測定済み項目の値が“1”になると(S317:YES)、分注処理が終了する。
図17(a)は、情報処理ユニット3による異常監視処理を示すフローチャートである。なお、上述したとおり、異常監視処理は個々の測定オーダごとに実行される。
情報処理ユニット3のCPU301は、異常監視処理を開始すると、タイマーを起動して(S401)、タイマーを起動してからの経過時間を監視する。続いて、CPU301は、タイマーが起動してから30分が経過したかを判定する(S402)。プライマ試薬が事前分注されてから30分が経過すると、プライマ試薬の精度が低下し適正な測定結果
が得られない惧れがある。そこで、30分が経過していると(S402:YES)、CPU301は、図17(b)に示すように、混合容器Mに事前分注されたプライマ試薬の有効期限が切れて、操作者が混合容器Mを廃棄する必要があることを示す警告ダイアログD3を、表示入力部1aに表示する(S404)。そして、CPU301は、異常発生した旨をRAM303またはハードディスク304に記憶する(S405)
なお、図17(b)の警告ダイアログD3には、警告の対象となった測定オーダ番号(たとえば“1”)と、サンプルID(たとえば、“Sample01”)が併せて表示される。また、S402で設定された時間は、30分に限らず、プライマ試薬の精度の劣化が生じない時間(たとえば、20分)に設定されても良い。
他方、タイマーが起動してから30分が経過していないとき(S402:NO)、CPU301は、事前分注された混合容器Mの収容部M12に対して、発光部512aから光を照射し、受光部513aの検出信号に基づいて、収容部M12内の試薬の吸光度が所定値を超えたかを判定する(S403)。吸光度が所定値を超えているときも(S403:YES)、事前分注されたプライマ試薬の精度が低下し適正な測定結果が得られない惧れがあるため、上記S404とS405の処理が行われる。
経過時間が30分を超えておらず(S402:NO)、吸光度も所定値を超えていない場合(S403:NO)、CPU301は、この異常監視処理の終了指示が行われたかを判定する(S406)。異常監視の終了指示は、図16のS308において行われる。異常監視の終了指示があると(S406:YES)、処理が終了し、異常監視の終了指示がないと(S406:NO)、処理がS402に戻される。
以上、本実施の形態によれば、検体を用いずに進めることのできるプライマ試薬(CK19とβアクチン)の分注を事前に行っておき、検体の作製が完了し検体容器Sがセットされた後で、検体の分注と酵素試薬の分注を行う。これにより、検体容器Sがセットされた後でプライマ試薬の分注を行う場合に比べて、測定結果を早く得ることができるため、検体の作製が完了してから適正な測定結果が得られるまでの時間を短縮することができる。なお、プライマ試薬の分注と酵素試薬の分注の両方を検体の作製が完了する前に行うと、プライマ試薬と酵素試薬が検体の作製中に反応し始め、測定結果に影響を及ぼす。そのため、本実施の形態では、適正な測定結果が得られるように、プライマ試薬(CK19とβアクチン)の分注までを事前に行う。
また、本実施の形態によれば、プライマ試薬の事前分注が行われた場合、事前分注されたプライマ試薬の有効期限は30分に設定されると共に、プライマ試薬の吸光度が所定値以内であることが要求される。事前分注されてから30分が経過し、または、プライマ試薬の吸光度が所定値を超えると、処理が中断され、図17(b)に示す警告ダイアログD3が表示される。これにより、事前分注されたプライマ試薬の精度が低下しているにも関わらず検体の分注が行われ、不適正な測定結果が出力されてしまうことを防ぐことができる。
また、本実施の形態によれば、図6と図9(a)〜図12(b)に示すように、測定の進捗と容器のセット状態等に応じて状態表示領域D16の表示内容が変化する。これにより、“NG”と表示されている領域に対応する保持孔に、対応する容器をセットする必要があることが分かる。また、斜線部分と縦線部分を参照することにより、事前分注ありの測定オーダに関する領域であることが分かり、ハッチング部分を参照することにより、事前分注なしの測定オーダに関する領域であることが分かる。また、混合領域D101〜D108内の矩形領域の枠の状態および矩形領域の塗りつぶし状態と、検体領域D121〜D124内の円形領域の枠の状態および円形領域の塗りつぶし状態を参照することにより、対応する測定オーダについて測定前、測定中、測定終了の何れの状態であるかが分かる
。
また、本実施の形態によれば、測定オーダが事前分注ありで登録され、事前分注がまだ行われていない状態のとき、図7(b)に示すように事前分注項目に“○”が表示され、図9(a)、(b)に示すように対応する領域が斜線で表示される。また、事前分注が行われた後では、図7(c)に示すように事前分注項目にチェック記号が表示され、図10(a)〜図12(a)に示すように対応する領域が縦線で表示される。これにより、各測定オーダについて、事前分注の有無と進捗が分かる。
さらに、事前分注の有無と進捗が分かるため、各ブロック51の混合容器設置部511にセットされた混合容器Mに、プライマ試薬が分注されているかが分かる。これにより、セットされた混合容器Mのうち事前分注が行われた混合容器Mがどこにあるかが分かる。よって、たとえば、カバー1bを開閉して作業を行う際に、事前分注された混合容器Mを誤って取り出してしまうことを防止することができる。
また、本実施の形態によれば、事前分注が終了すると混合容器Mに対して重ね閉じが行われ、検体の分注が行われるまでの間、収容部M12の上方が塞がれる。これにより、事前分注されたプライマ試薬を収容する収容部M12に埃等が混入することを防ぐことができる。
以上、本発明の実施の形態ついて説明したが、本発明は、上記実施の形態に制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記以外に種々の変更が可能である。
たとえば、上記実施の形態では、検体測定装置1を、切除組織内に存在する癌由来の遺伝子(mRNA)を、LAMP(Loop-mediated Isothermal Amplification,栄研化学)法に基づいて核酸を増幅させ、増幅に伴い発生する溶液の濁りを測定することにより検出を行う装置とした。しかし本発明は、これに限らず、検体測定装置1は、どのような検体測定装置であっても良い。たとえば、検体測定装置1は、血液の凝固機能に関連する特定の物質の量や活性の度合いを光学的に測定して分析する血液凝固分析装置、血清を測定する免疫分析装置、血液中の血球を計数する血球計数装置、尿を測定する尿分析装置、または骨髄液を分析する分析装置であっても良い。
また、本実施の形態では、分注部30の2つのノズル部31bは、検体と試薬の分注を何れも行うが、これに限らず、たとえば、左側のノズル部31bは検体の分注のみを行い、右側のノズル部31bは試薬の分注のみを行うようにしても良い。
また、本実施の形態では、開始ボタンD17が押下されるときに、図16に示すように、事前分注のみを行う処理(S302〜S306)と、実際の測定処理(S307〜S317)とが択一的に実行された。しかしながら、これに限らず、測定登録画面D1に開始ボタンを2つ配して、何れかの開始ボタンが押下された場合に、事前分注のみを行う処理と実際の測定処理の何れかが実行されるようにしても良い。または、開始ボタンD17が押下されたときに、事前分注のみを行う処理と実際の測定処理の何れかを選択できる画面が表示され、この画面を介して何れかの処理が実行されるようにしても良い。
また、上記実施の形態では、登録された測定オーダに基づいた測定の開始指示の入力と事前分注の開始指示の入力とで共用される入力要素として、開始ボタンD17が用いられた。しかしながら、これに限らず、共用される入力要素は、チェックボックスであってもよい。
また、上記実施の形態では、事前分注が行われた混合容器M中の試料を測定する際、開
始ボタンD17が押下されると、測定が行われた。しかしながら、これに限らず、前処理済みの検体が検体容器設置部10に設置され、カバー1bが閉じられたことが検知されると、操作者から測定指示を受け付けたとして、自動で測定が行われてもよい。
また、上記実施の形態では、オーダ入力画面D2のチェックボックスD23にチェックを入れて確定ボタンD24を押下し、測定登録画面D1の開始ボタンD17が押下されると、事前分注が行われた。しかしながら、これに限らず、検体測定装置1にネットワークを介して情報通信可能に接続されたホストコンピュータで、事前分注を行うか否かも含むオーダ情報の登録を行うシステムの場合、ホストコンピュータで登録されたオーダ情報に基づいて、事前分注が行われてもよい。
また、上記実施の形態では、状態表示領域D16の混合領域D101〜D108と、検体領域D121〜D124には、測定の進捗と容器のセット状態等が表示された。しかしながら、さらに、これら各領域に対応する2つの保持孔が、どの測定オーダに対応しているかが示されるように、各領域内にまたは各領域の近傍に、測定オーダ番号やサンプルIDが併せて表示されるようにしても良い。
また、図15(b)、(c)に示す警告ダイアログD3に、表示された警告がどの測定オーダに関するものか分かるように、測定オーダ番号やサンプルIDが併せて表示されるようにしても良い。また、図15(d)、(e)に示す警告ダイアログD3に、より詳細にどの試薬容器Rがセットされていないが併せて表示されるようにしても良い。また、試薬容器Rの残量がない場合に、図15(f)に示す警告ダイアログD3に、より詳細にどの試薬容器Rの残量がないかが併せて表示されるようにしても良い。
また、上記実施の形態では、図13(b)において、警告の表示が必要であるとき(S104:YES)、図15(a)〜(e)に示すような警告ダイアログD3が表示された。また、図17(a)において、警告の表示が必要であるとき(S402:YES、S403:YES)、図17(b)に示すような警告ダイアログD3が表示された。しかしながら、これらの表示に替えて、あるいは、この表示とともに、警告を示す警告音や警告内容を読み上げた音声が、検体測定装置1に配されたスピーカから出力されるようにしても良い。
また、上記実施の形態では、図6と図9(a)〜図12(b)に示すように、測定の進捗と容器のセット状態等が、状態表示領域D16内の文字と模様によって表示されたが、これに限らず、色によって表示されるようにしても良い。
また、本実施の形態では、図6と図9(a)〜図12(b)に示すように、測定の進捗と容器のセット状態等が、表示入力部1aに表示される状態表示領域D16の表示内容により表された。しかしながら、これに限らず、検体容器設置部10と、試薬容器設置部20と、反応部50の8つのブロック51に形成された保持孔の近傍にLEDが設置され、LEDの表示状態(色や組み合わせ)により、状態表示領域D16の各領域の表示の変化と同様に、測定の進捗と容器のセット状態等が示されるようにしても良い。
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。