本発明の技術的構成及びその作用効果は、以下の通りである。ただし、作用機構については推定を含んでおり、その正否は本発明を制限するものではない。
本発明の第1の発明は、少なくともフルオロアルミン酸化合物を含み、内部に空隙を有する粒子である。(以降、「本発明の粒子」と記載することもある。)
本発明の粒子に含まれるフルオロアルミン酸化合物は、(式1)A3AlF6(式1中、Aはカチオンである。)の基本組成をとる化合物が好ましい。特に、Aは少なくともアルカリ金属及び/又はアンモニウムイオンを含むことが好ましい。
(式1)のAがアルカリ金属を含む場合、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選ばれる一種又は二種以上が挙げられ、なかでもリチウム、ナトリウム、カリウムが好ましく、ナトリウムが特に好ましい。また、アルカリ金属とアンモニウムイオンを同時に含む場合、アルカリ金属とアンモニウムイオンのモル比は適宜設定できる。具体的には、式1中のA=A’3−x(NH4)x(A’はアルカリ金属)としたとき、xは0.1以上であってよく、0.15以上であってもよく、また、0.8以下であってもよく、0.7以下であってもよく、特に制限は無い。
本発明の粒子の形状は、球状、多面体状等の等方性形状、棒状、紡錘形状、柱状、針状、鱗片形状、板状等の異方性形状、不定形状等特に制限は無い。
本発明の粒子は、その内部に空隙を有する。「内部に空隙を有する粒子」とは、粒子の内部に気体や液体等が存在しうる空隙を有する構造及び/又は気体や液体等を含みうる空隙を有する多孔質構造体を形成する粒子を意味する。気体が屈折率1.0の空気である場合、粒子本来の屈折率に比べて粒子中の気体占有率に比例して屈折率が低下する。また、本発明にあっては、微粒子の形態、構造、凝集状態、膜内部での粒子の分散状態により、内部、及び/又は表面の少なくとも一部にナノポーラス構造の形成が可能な粒子も含まれる。そのような構造の具体的な例としては、多孔質粒子、内部に一又は複数の空隙を有する粒子、筒状の粒子が挙げられる。内部に一つの空隙を有する粒子としては、外殻により内部に空洞が形成されたいわゆる中空状粒子が挙げられる。内部に複数の空隙を有する粒子としては、いわゆるスポンジ状粒子や、空隙や細孔を有する外殻により形成される中空状粒子が挙げられる。筒状の粒子としては、円筒状粒子、多角形の断面を有する筒状粒子やそれらの集合体が挙げられる。集合体としては、六角断面筒状体がその壁面で接して集合したハニカム体が例示できる。筒状の場合、筒の両端が外部に連通していてもよく、節などにより途中で閉塞していてもよい。
本発明の粒子は、中空状粒子であることが好ましい。中空状粒子とすることで、空隙率(粒子の体積における空隙の割合であり、粒子に占める空隙の体積分率である)を最も大きく取ることができる、すなわち空隙率を最も大きくし屈折率を低減することができるので好ましい。粒子が中空状である場合においても粒子形状に特に制限は無いが、等方的な形状、例えば、球状〜略球状や立方体形状であると好ましい。
本発明の粒子は、平均粒子径が10nm〜200nmであることが好ましい。10nm未満の場合、充分な空隙を粒子内部に形成できず、屈折率の低減が図りづらいので好ましくない。200nmより大きい場合は、可視域の光が粒子によって散乱されるため、反射防止膜に用いた際、所望の性能が得られづらくなるので好ましくない。平均粒子径は30〜100nmであるとより好ましい。全粒子の粒子径が前記範囲内であると更に好ましい。
本発明の粒子の粒子径の測定は、透過電子顕微鏡を用いて行う。透過電子顕微鏡にて得られた像から、粒子100個を選択し、各粒子について粒子径を測定する。得られた測定値の平均値を計算により算出して平均粒子径とする。なお、本願において、異方性粒子や不定形粒子の粒子径は粒子の最長部分の長さとする。
本発明の粒子は、その粒子の空隙率(粒子の体積における空隙の割合)が20〜95%であることが好ましい。20%未満の場合、粒子の屈折率を充分に低減することができず、低屈折率化の効果が薄いため好ましくない。また、95%より大きい場合、粒子の骨格を形成する成分の厚みが薄くなり、十分な強度が得られず粒子が崩壊する懸念があるため好ましくない。
本発明の粒子の空隙率は、中空形状であれば、透過電子顕微鏡にて得られた像の粒子100個を選択し、外径、内径を測定し、計算により求めることができる。例えば、球状中空粒子であれば、外径をR、内径をrとしたとき、空隙率(%)=(r3/R3)×100となる。中空形状以外では自動比表面積/細孔分布測定装置を用いて細孔容積を測定し、下記式2から求める。
(式2)空隙率=細孔容積/{(1/Na3AlF6の真密度)+細孔容積}
式2中、Na3AlF6の真密度=2.97とする。
本発明のフルオロアルミン酸化合物は、粉末X線回折測定において、少なくとも2θ=46.8±1.0°,32.7±1.0°,23.0±1.0°,38.6±1.0°の位置にピークを有することが好ましい。このようなピークを示す、すなわち結晶構造を有する化合物を用いることにより、粒子の屈折率を低減させることができる。この粉末X線回折パターンは、Na3AlF6(PDF No.74−4463)と一致するとより好ましい。ここで、「一致する」とは、前記PDFに記載のピーク位置と測定されたピーク位置が±1.0°の範囲内にあることを言う。
粉末X線回折測定は、線源:CuKα、管電圧/管電流:40kV/40mA、測定間隔:0.01°、スキャン速度:5°/分、の条件で行う。
本発明の粒子は、フルオロアルミン酸化合物以外にも、他の元素、物質を含んでいてもよい。そのような元素としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛、硫黄などが挙げられる。これらの元素の存在状態は明らかではないが、式1のフルオロアルミン酸化合物の結晶格子のA,Al,Fサイトを一部置換していたり、格子間位置や結晶粒界に存在していてもよく、粒子内に別相として存在しても、別の化合物粒子として存在していてもよい。亜鉛はZnO換算で1.5重量%程度含まれていてもよく、1.5重量%以下でもよい。硫黄はSO4換算で1.0重量%程度含まれていてもよく、1.0重量%以下でもよい。
本発明の粒子の化学組成は、例えば蛍光X線分析によって求めることができる。また、アンモニウムイオンの存在は、フーリエ変換赤外分光分析の吸収ピークにより確認することができる。フッ素、窒素の各成分の定量は、それぞれイオンクロマトグラフ、CHN分析により行うことができる。
本発明の粒子の表面には、更に有機化合物及び/又は無機化合物が存在していてもよい。これらの化合物により、粒子に種々の機能を付与することができる。例えば、粒子の分散性を向上させたり、粒子に導電性を付与することができる。
有機化合物としては、シリコーン化合物、その他有機ケイ素化合物、脂肪酸化合物等が挙げられる。
有機ケイ素化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、p‐スチリルトリメトキシシラン、3‐メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3‐メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3‐メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3‐アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N‐2‐(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N‐2‐(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐2‐(アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、3‐トリエトキシシリル‐N‐(1,3‐ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N‐フェニル‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、3‐ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3‐メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3‐イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
脂肪酸化合物としては、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ミリストレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸、樹脂酸(アビエチン酸)、それらの塩、それらの金属塩等を挙げることができ、このような脂肪酸化合物の少なくとも1種を用いることができる。塩の形態としてはNa、K、Ba、Zn、Ca、Mg、Fe、Zr、Co、Al、Zr、Ti等の金属塩や、アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、トリイソプロパノールアミン等の各種アルカノールアミン塩等を挙げることができる。また、デキストリン脂肪酸エステルとしては、デキストリンと脂肪酸とで構成されるエステルあるいはその誘導体から選択することができる。好ましくは、デキストリン1分子に対し、その水酸基の1つに炭素数8〜24の脂肪酸の1分子がエステル化した部分構造を少なくとも有するエステル体あるいはその誘導体、例えばデキストリン1分子に対し炭素数8〜24の脂肪酸が1個又は複数個、その水酸基の1個又は複数個にエステル結合した構造を有するエステル体や当該エステル体において水酸基が更に別種の脂肪酸でエステル化された誘導体等を挙げることができる。
シリコーン化合物はポリシロキサンとも言われ、ジクロロジメチルシラン等のシラン類を加水分解し、生成したシラノールが脱水縮合したオリゴマー又はポリマーである。シリコーン化合物(ポリシロキサン)としては例えば、ジメチルポリシロキサン、ジメトキシポリシロキサン、変性オルガノポリシロキサン等のオルガノポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等のオルガノハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体等のシロキサンコポリマー、シリコーンポリマー、トリオルガノシロキシケイ酸などのシラノールが脱水縮合したオリゴマー又はポリマーを含む化合物である。このようなシリコーン化合物から選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
無機化合物としては、種々の無機元素を用いることができ、ケイ素、ジルコニウム、スズ、チタン及びアンチモンから選ばれる少なくとも1種の無機化合物が挙げられ、なかでも、前記元素の酸化物、含水酸化物が好ましい。
粒子に導電性を付与する場合には、導電性ポリマー、導電性金属酸化物、金属粒子、炭素粉などの導電性物質を用いることができる。
導電性ポリマーとしては、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、またはその各誘導体等が挙げられる。導電性金属酸化物としては、例えば、酸化スズ、アンチモンドープスズ酸化物(ATO)、フッ素ドープスズ酸化物(FTO)、リンドープスズ酸化物(PTO)、タングステンドープ酸化スズ、スズドープインジウム酸化物(ITO)、アルミニウムドープ亜鉛酸化物(AZO)、ニオブドープチタン酸化物、酸化アンチモン等が挙げられる。金属としては、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、パラジウム、白金等が挙げられる。炭素材料としては、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
前記有機化合物及び/又は無機化合物(それぞれ少なくとも一方が導電性物質であってもよい)は、本発明の粒子上に局所的に付着していてもよく、全体を層状に被覆していてもよく、特に制限は無い。その付着順序についても特に制限は無いが、本発明の粒子上に無機化合物が被着し、その上に有機化合物が付着していることが好ましい。
粒子表面の有機化合物及び/又は無機化合物の存在量は、目的とする機能を付与できる程度であればよく、具体的にはフルオロアルミン酸化合物に対して0.05〜100重量%が好ましく、0.1〜50重量%がより好ましく、0.1〜30重量%が更に好ましい。
次に、本発明の第2の発明は、
テンプレート粒子とアルミニウム原料を共存させ、テンプレート粒子表面にアルミニウムの化合物を存在させる工程(工程1)、
更にフッ素原料と共存させ、前記アルミニウムの化合物をフルオロアルミン酸化合物に変換する工程(工程2)、
テンプレート粒子を除去する工程(工程3)
を有する、少なくともフルオロアルミン酸化合物を含み、内部に空隙を有する粒子の製造方法、である。
テンプレート粒子は、工程1においてアルミニウム化合物の鋳型として働くものであり、工程3において除去されることにより、本発明の粒子内部の空隙部となる。
テンプレート粒子の形状には、特に制限は無く、例えば、球状、多面体状等の等方性形状、棒状、板状、針状、紡錘状、扁平状、鱗片状、チューブ状等の異方性形状、不定形状等から選ばれる1種又は2種以上の混合物を用いることができる。テンプレート粒子の態様を適宜選択することにより、本発明の内部に空隙を有する粒子の形状や構造を制御することができる。例えば、テンプレート粒子の形状を適宜選択することにより、各種形状の中空状粒子や筒状粒子等を製造することができる。また、テンプレート粒子の形状と凝集又は集合状態を適宜選択することで、多孔質粒子やいわゆるスポンジ状粒子、空隙や細孔を有する外殻により形成される中空状粒子等を製造することができる。テンプレート粒子を適宜成形して用いると、筒状粒子やその集合体、ハニカム体等を製造することもできる。
テンプレート粒子の粒子径は、所望する粒子の空隙率及び粒径に応じて適宜選択できる。例えば、本発明の粒子を反射防止膜のフィラーとして用いる場合には、テンプレート粒子の粒子径は0.5nm以上、200nm未満であると好ましい。なお、空隙率の高い中空状粒子を製造する場合、テンプレート粒子は単分散していると好ましい。
テンプレート粒子としては、酸又はアルカリ可溶性材料、熱分解性材料、酵素分解性材料、光分解性材料などが使用できる。酸又はアルカリ可溶性材料としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化マグネシウムなどの金属酸化物および金属水酸化物、炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩、有機高分子が挙げられる。そのような有機高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、アルギン酸、セルロース系樹脂、カルボキシル基などの酸基を有した高分子などが挙げられる。熱分解性材料としては、炭素微粒子や有機材料、O/WまたはW/Oエマルション中で形成される界面活性剤のミセル集合体が挙げられる。そのような有機材料としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ビニル系樹脂など、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂またはUV硬化樹脂、セルロース系樹脂、でんぷん、タンパク質、コラーゲン、などが挙げられる。酵素分解性材料としては、タンパク質が挙げられる。光分解性材料としては、光分解開始基としてケトン基、エーテル基、ニトロ置換ベンジル基、ボレート誘導体などを導入した有機材料が挙げられる。
テンプレート粒子表面のアルミニウムの化合物(以降、「被覆Al」と記載することもある)としては、特に制限は無く、任意の化合物を用いることができる。具体的には、金属アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム、フッ化アルミン酸ナトリウムが挙げられる。また、被覆Alには、アルミニウム以外の金属元素を含んでいてもよい。
被覆Alはテンプレート粒子表面に存在すればよく、その態様は問わないが、テンプレート粒子表面に層状に被膜を形成していると好ましい。そのような状態としては例えば、核がテンプレート粒子で外殻がアルミニウム化合物であるコア/シェル型粒子が挙げられ、コア/シェル型粒子としては、アルミニウム化合物被覆テンプレート粒子の単分散状態、テンプレート粒子の凝集体にアルミニウム化合物が被覆された状態、単一テンプレート粒子にアルミニウム化合物が被覆された粒子の凝集体などが挙げられる。アルミニウム化合物は、高密度でも低密度でもよく、その表面は多孔質でも平滑であってもよい。アルミニウム化合物とテンプレート粒子の体積比は、所望の空隙率に応じて適宜設定できる。
テンプレート粒子表面にアルミニウムの化合物を存在させる方法、すなわちテンプレート粒子表面にアルミニウム化合物が存在する粒子(以降、「Al被覆テンプレート粒子」と記載することもある)を製造する方法は、テンプレート粒子とアルミニウム原料を共存させる。これにより、テンプレート粒子(またはテンプレート粒子の原料)とアルミニウム原料由来のアルミニウムを反応させることによって、又は、テンプレート粒子の存在下にアルミニウム原料由来のアルミニウムを反応させて、当該テンプレート粒子の表面にアルミニウム化合物の外殻を析出・形成する。本工程は気相、液相又は固相のいずれの系で行ってもよい。
液相における製造方法としては、例えば、少なくともテンプレート粒子の分散液とアルミニウム原料とを混合し、テンプレート粒子表面にアルミニウムの化合物を存在させる。具体的には、アルミニウム原料に由来するアルミニウム元素を含む混合液のpHを調整することで、アルミニウム化合物を当該テンプレート粒子の周り(外表面)に析出させることができる。又は、当該混合液の温度を変化させることで、溶解度の差を利用して、アルミニウム化合物を当該テンプレート粒子の周りに析出させることもできる。又は、テンプレート粒子を含むアルミニウム化合物溶液に水を添加し、アルミニウム化合物を加水分解させることで、不溶性のアルミニウム化合物をテンプレート粒子の周りに析出させることもできる。以下では特にpH調整による方法について詳しく述べる。
テンプレート粒子の分散媒への分散やアルミニウム原料の溶解、pH調整の順序は工程1を実施できる限りにおいて特に限定されない。具体的には、
テンプレート粒子の分散液と、アルミニウム原料又はその溶液とを混合し、酸又はアルカリによって当該混合液のpHを調整する製造方法、
テンプレート粒子の分散液に、アルミニウム原料又はその溶液と、酸又はアルカリを添加して当該混合液のpHを調整する製造方法、
pHを調整したテンプレート粒子の分散液と、アルミニウム原料溶液を混合する製造方法、
アルミニウム原料溶液にテンプレート粒子を分散させ、当該混合液のpHを調整する製造方法等が挙げられる。テンプレート粒子とアルミニウム原料の混合は、一時に行っても、徐々に行ってもよく、徐々に行う場合には、連続して混合しても、断続的に混合しても、いずれでもよい。
工程1を液相で行う場合におけるテンプレート粒子の分散液の分散媒、アルミニウム原料を含む溶液の溶媒(以降、両者を包含して「媒液」と記載することもある)としては、特に限定するものではなく、例えば、水やアルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類等が挙げられる。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、シクロペンタノール、シロクペンタンジオール、シクロヘキサノール等が挙げられる。
ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、イソプロピルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等が挙げられる。
エーテル類としては、例えば、グライム、ジグライム、イソプロピルエーテル、イソブチルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、アニソール、テトラハイドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
エステル類としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル等が挙げられる。
グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
含窒素化合物類としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、2−ピロリジノン、N−メチル−2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン等が好ましいものとして挙げられる。
ただし、pH調整による被覆Al形成工程においては、水の存在が必須であるため、全媒液中において、5〜100質量%の水を存在せしめることが好ましい。水の含有量が5質量%未満であると反応が充分進行しないため好ましくない。
テンプレート粒子の分散液の調製の際には、テンプレート粒子の凝集程度に応じて分散処理を行ってもよい。分散処理には、例えば、湿式粉砕機を用いることができる。湿式粉砕機としては、例えば、縦型サンドミル、横型サンドミル、ボールミル等が挙げられる。また、必要に応じて、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム等のリン酸化合物、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸化合物、有機分散剤等の分散剤を用いてもよい。テンプレート粒子の分散性を高めることで、最終的に粒径や形状の揃った中空状粒子が得られやすくなる。なお、本願でいう「分散液」には、分散液のみならず、懸濁液も包含する概念である。
テンプレート粒子の分散液の濃度には特に制限は無く、任意の濃度にすることができ、例えば、1g/リットル以上、あるいは100g/リットル以下とすることができ、10g/リットル〜40g/リットル程度が適当である。濃度が高すぎると分散液の粘度が高くなり、取り扱いが容易でなくなり、一方、濃度が低すぎると著しく生産性が悪化するため好ましくない。
アルミニウム原料としては、アルミニウム塩及びアルミン酸塩より選ばれる1種または2種以上の混合物が挙げられ、それらの加水分解物であってもよい。又はアルミニウムアルコキシドを用いてもよい。具体的には、アルミニウム塩としては、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム;アルミン酸塩としては、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム等のアルミン酸アルカリ塩、アルミン酸アンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩、エタノールアミン等のアミン類のアルミン酸塩が挙げられる。アルミニウムアルコキシドとしては、例えば、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、アルミニウムtert−ブトキシドが挙げられる。
アルミニウム原料を媒液に溶解して溶液として用いる場合、その濃度に制限は無く、任意の濃度にすることができ、Al2O3に換算して、例えば、0.5g/リットル以上、あるいは50g/リットル以下とすることができ、5g/リットル〜20g/リットル程度が適当である。濃度が高すぎると分散液の粘度が高くなり、取り扱いが容易でなくなり、一方、濃度が低すぎると著しく生産性が悪化するため好ましくない。
テンプレート粒子の存在下、アルミニウム原料由来のアルミニウム元素を反応させて、テンプレート粒子表面にアルミニウム化合物を析出させるため、当該分散液のpHを調整する。具体的には、pHを6〜11とするのが好ましい。本処理により、テンプレート粒子の表面に外殻としてアルミニウム化合物が析出する。
pHの調整には任意の酸又はアルカリ、又はこれらの溶液を用いることができる。酸としては、特に限定するものではなく、無機酸であっても、有機酸であってもよい。無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、亜硝酸等があげられ、有機酸としては、例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、グルコン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸等が挙げられる。アルカリとしては、特に限定するものではなく、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物又は炭酸塩、アンモニウム化合物等の塩基性化合物等が挙げられる。
アルミニウム化合物の析出速度には特に制限はないが、析出速度があまり速すぎると、生成されるアルミニウム化合物自体の凝集が生じ、テンプレート粒子外表面への均質・緻密なアルミニウム化合物の外殻の形成が困難となったり、最終的に内部に空隙を有する粒子としたときに壊れやすくなったりする恐れがある。アルミニウム化合物の析出速度の調整は、例えば、pH調整に用いる酸又はアルカリの添加速度や、酸又はアルカリの濃度によって調整することができる。具体的には、アルミニウム化合物量をAl2O3量に換算したときのAl2O3 1モルに対して、酸又はアルカリの添加速度を、酸又は塩基のグラム当量基準で3.6モル/時間以下とするのが好ましく、1.2モル/時間以下とするのがより好ましい。特に、反応液のpHが6〜11の間にあるとき、少なくとも一定の時間中は、前記添加速度を3.6モル/時間以下とするのが好ましい。pH調整を行った後、熟成を行ってもよい。
テンプレート粒子に対するアルミニウム化合物の量は任意に設定することができる。この比率を調整することにより、本発明の粒子の空隙率を制御することができ、また、中空状粒子を製造する場合には、外殻の厚みを制御することもできる。
また、Al被覆テンプレート粒子を製造する際の固形分(テンプレート粒子及びアルミニウム原料の和)濃度は、30質量%以下、0.1質量%以上の範囲であることが好ましく、20質量%以下、1質量%以上の範囲であることがより好ましい。30質量%を超えると分散液の安定性が低下するため、好ましくなく、0.1質量%未満では、得られる粒子の生産性が非常に低くなり、好ましくない。
当該反応液の温度には特に制限はなく、任意に設定できる。具体的には0〜95℃としてよく、室温〜70℃としてもよい。昇温する場合、昇温時期に特に制限はなく、任意の工程で昇温してよい。分散媒を昇温してからテンプレート粒子を分散させたり、テンプレート粒子と表面アルミニウム原料の混合液を昇温したり、Al被覆反応中に昇温したり、Al被覆反応終了後に昇温したりすることができる。
本工程終了後、Al被覆テンプレート粒子を必要に応じて濾過、洗浄、乾燥してもよく、それらの処理を行わずにそのまま工程2を行ってもよい。
なお、テンプレート粒子として、酸やアルカリ溶解性無機微粒子を使用する場合には、工程1の間、pHを適宜調整する。例えばテンプレート粒子として酸化亜鉛を用いる場合には、pHを6未満にすると、溶解してしまうので、6以上の範囲に収めることが好ましい。
次に、工程2において、工程1で得られたAl被覆テンプレート粒子の被覆Alをフッ素原料と共存させ、当該被覆Alをフッ素原料と反応(フッ化)させて、フルオロアルミン酸化合物に変換する。本工程は気相、液相又は固相のいずれの系で行ってもよい。本工程を経て、フルオロアルミン酸化合物がテンプレート粒子表面に存在する粒子(以降、「AlF被覆テンプレート粒子」と記載することもある)が得られる。以下、液相で行う方法について詳細に述べる。
Al被覆テンプレート粒子とフッ素原料を媒液中で共存させる方法は工程2を実施できる限りにおいて特に限定されない。具体的には、
Al被覆テンプレート粒子の分散液と、フッ素原料又はその溶液とを混合する製造方法、
フッ素原料の溶液にAl被覆テンプレート粒子を分散させる製造方法、
等が挙げられる。
フッ素原料としては特に制限は無く、任意の物質を用いることができる。例えば、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム、フッ化水素酸(フッ酸)等が挙げられる。
Al被覆テンプレート粒子分散液の分散媒やフッ素原料溶液の溶媒には、前述の工程1の項で述べた媒液を用いることができる。また、工程1を液相で行った場合、工程1で得られたAl被覆テンプレート粒子分散液をそのまま用いることもできる。
Al被覆テンプレート粒子分散液の濃度には特に制限は無く、任意に設定することができるが、30質量%以下、0.1質量%以上の範囲であることが好ましく、20質量%以下、1質量%以上の範囲であることがより好ましい。30質量%を超えると分散液の安定性が低下するため、好ましくなく、0.1質量%未満では、得られる粒子の生産性が非常に低くなり、好ましくない。
フッ素原料の量は、所定のフルオロアルミン酸化合物を作製できる量以上であれば特に制限は無く、任意に設定することができる。例えばヘキサフルオロアルミン酸化合物を作製するには、フッ素元素のアルミニウム元素に対するモル比で6倍以上であれば好ましく、6倍未満であると、被覆Alのフッ化が不十分となり、ヘキサフルオロアルミン酸化合物を作製できないため好ましくない。モル比が高すぎても、被覆Alのフッ化には余剰であり、廃棄物となるため、好ましくない。従って、モル比としては10倍以下とすればよい。
Al被覆テンプレート粒子とフッ素原料を媒液中で共存させる温度には特に制限は無く、任意に設定することができる。
Al被覆テンプレート粒子とフッ素原料を媒液中で共存させる時間には特に制限は無く、任意に設定することができるが、表面アルミニウム化合物のフッ化を確実にするため、1分以上共存(熟成)させることが好ましく、30分以上がより好ましい。また、熟成時間が長すぎても生産性が低下するため、24時間以内とすることが好ましい。また熟成中は、当該反応液を撹拌するのが好ましい。
なお、工程1又は工程2において、アルカリ金属含有物質及び/又はアンモニウムイオン含有物質を共存させることにより、フルオロアルミン酸化合物にアルカリ金属及び/又はアンモニウムイオンを含ませることができる。アルカリ金属含有物質には特に制限は無く、公知の物質を用いることができ、アンモニウムイオン含有物質にも特に制限は無く、公知の物質を用いることができる。特に、工程1のアルミニウム原料としてアルミン酸ナトリウムを用い、工程2のフッ素原料としてフッ化アンモニウムを用いると好ましい。
なお、前記工程1と工程2を一つの工程で行ってもよい。具体的には、テンプレート粒子の分散液にアルミニウム原料とフッ素原料を混合し、反応させて、フルオロアルミン酸化合物を析出させることにより、AlF被覆テンプレート粒子を製造することができる。
本工程終了後、AlF被覆テンプレート粒子を必要に応じて濾過、洗浄、乾燥してもよく、それらの処理を行わずにそのまま工程3を行ってもよい。
次に、工程3において、工程2で得られたAlF被覆テンプレート粒子内のテンプレート粒子を除去する。本工程によって、本発明の内部に空隙を有するフルオロアルミン酸化合物を含む粒子が得られる。
AlF被覆テンプレート粒子からテンプレート粒子を除去するには、すでに述べたとおり、テンプレート粒子の種類に応じて種々の手段を採用することができ、例えば、酸又はアルカリによる溶解、熱による分解、酵素による分解、光による分解から選ばれる1種又は2種以上の方法が挙げられる。
テンプレート粒子が熱分解性材料の場合、加熱することによってテンプレート粒子を除去することができる。加熱温度はテンプレート粒子の材質により異なるが、一般的には当該テンプレート粒子の分解温度以上〜1000℃以下の範囲とすることが好ましい。分解温度未満ではテンプレート粒子が残存するおそれがあり、1000℃を超えるとフルオロアルミン酸化合物が溶融するおそれがあるため好ましくない。
テンプレート粒子が酸溶解性材料の場合、酸もしくは酸性カチオン交換樹脂を加えることによってテンプレート粒子を除去することができる。酸としては、前述のpH調整の項で挙げた材料を用いることができる。
また、液状の酸又は酸溶液の代わりに、酸性カチオン交換樹脂を用いることもできる。酸性カチオン交換樹脂としては、カルボン酸基を有するポリアクリル樹脂系またはポリメタクリル樹脂系、スルホン酸基を有するポリスチレン系樹脂が挙げられる。
テンプレート粒子として酸化亜鉛を用いた場合、AlF被覆酸化亜鉛粒子からの酸化亜鉛の除去は、pHを2〜4の間に調整して行うことが好ましい。pHが2未満であると、表面のフッ化アルミン酸ナトリウムも溶解してしまうため好ましくなく、pHが4より大きいと、酸化亜鉛粒子の除去に時間を要するため好ましくない。酸の添加を弱酸水溶液によって行うと、pHの急低下、特に局所的な変動を抑制することができる。弱酸水溶液としては、濃度10〜50%のクエン酸水溶液が挙げられる。
テンプレート粒子がアルカリ溶解性材料の場合、アルカリを加えることによってテンプレート粒子を除去することができる。アルカリとしては、前述のpH調整の項で挙げた材料を用いることができる。
テンプレート粒子が酵素分解性材料の場合、酵素を加えることによってテンプレート粒子を除去することもできる。テンプレート粒子がタンパク質の場合、酵素としては、例えば、ペプシンやキモトリプシン等が挙げられる。
テンプレート粒子が光分解性材料の場合、気相もしくは液相中で光を照射することによってテンプレート粒子を除去することもできる。光の波長はよりエネルギーの高い380nm以下の紫外線が好ましい。
なお、工程2で用いるフッ素原料と工程3で用いるテンプレート粒子の除去剤とを一種の化合物で行い、工程2と工程3を一つの工程で行うこともできる。例えば、フッ化水素酸をフッ素原料として用いるとフルオロアルミン酸化合物に変換され、フッ化水素酸自体は酸であるため、酸化亜鉛等の酸溶解性材料をテンプレート粒子とした場合に、テンプレート粒子を除去することができる。
本工程終了後、得られた粒子を必要に応じて濾過、洗浄、乾燥してもよい。濾過は粒子の大きさや分散性に応じて、公知の方法から適宜選択できる。洗浄も公知の方法から適宜選択することができる。乾燥も公知の方法から適宜選択することができる。また、濾過又は洗浄、乾燥を行わず、そのまま後述の分散液を製造してもよい。
以上の方法においてテンプレート粒子が除去されたかどうかは、透過型電子顕微鏡により観察し、又は、得られた微粒子の元素分析を行うことで確認することができる。
本発明の粒子の製造において、表面に有機化合物及び/又は無機化合物を被着する工程が別途存在していてもよい。
有機化合物を被着する工程としては、具体的には、(1)得られた粒子を、流体エネルギー粉砕機、衝撃粉砕機等の乾式粉砕機で粉砕する際に、乾式粉砕機に有機化合物を添加する方法、(2)乾式粉砕後に、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌機等を用い、得られた粒子と有機化合物を攪拌、混合する方法、(3)工程1でAl被覆テンプレート粒子を製造した後、当該粒子に有機化合物を添加し、撹拌する方法(4)工程2でAlF被覆テンプレート粒子を製造した後、当該粒子に有機化合物を添加し、撹拌する方法、(5)工程3でテンプレート粒子を除去した後、当該粒子に有機化合物を添加し、撹拌する方法等が挙げられる。
無機化合物を被着する工程としては、具体的には、工程1でAl被覆テンプレート粒子を製造した後、工程2でAlF被覆テンプレート粒子を製造した後、又は工程3でAlF被覆テンプレート粒子からテンプレート粒子を除去した後(以降、総称して「ベース粒子」と記載することもある)に行うことができる。それらが水または水を主成分とする媒液中に分散した水性スラリーの状態で行うことが好ましい。この際に、ベース粒子の凝集程度に応じて、縦型サンドミル、横型サンドミル、ボールミル等の湿式粉砕機を用いて予備粉砕を行ってもよい。スラリーのpHを調整して分散状態を調整してもよい。また、必要に応じて、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム等のリン酸化合物、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸化合物等の分散剤を用いてもよい。
引き続き、ベース粒子の表面に、少なくとも無機化合物を被着させる。無機化合物としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、スズ及びアンチモンから選ばれる少なくとも1種の元素の含水酸化物が挙げられる。上記無機化合物を被着させるには、上記ベース粒子の水性スラリーに所望する無機化合物を構成する無機元素の水溶性塩と中和剤とを同時に並行添加したり、前記水溶性塩の添加後に中和剤を添加する方法など公知の方法を用いることができる。無機元素の水溶性塩としては、例えば、水溶性ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等が挙げられる。また、水溶性ジルコニウム塩であれば、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、酸塩化ジルコニウム等が挙げられる。水溶性チタン塩であれば、四塩化チタン、硫酸チタン等が挙げられる。水溶性スズ塩であれば、硫酸スズ、硝酸スズ、酢酸スズ、オキシ塩化スズ等が挙げられる。水溶性アンチモン塩であれば、塩化アンチモン、硫酸アンチモン等が挙げられる。中和剤としては、前述の酸又はアルカリを用いることができる。無機化合物を被着後、被着処理物をスラリー中から固液分離する。固液分離には、通常、工業的に用いられるロータリープレス、ファイルタープレス等の濾過装置を用いることができ、その際に、必要に応じて洗浄を行い、可溶性塩類を除去してもよい。
本発明の粒子の製造において、表面に導電性物質を被着する工程が別途存在していてもよい。
導電性物質として金属酸化物を付着する方法としては、特に限定されないが、上述の無機化合物を被着させる方法と同一の方法で導電性金属酸化物前駆体を被着させた後、焼成することにより導電性金属酸化物被着させることができる。このとき、酸化物マトリックスとなる金属とドーパントとなる元素のそれぞれの化合物を適宜選択し、配合を調整すればよい。被着の状態は、中和条件(温度、時間、pH)や焼成条件(温度、時間、焼成雰囲気)により調整することができる。
或いは、ベース粒子の存在下で、金属カルボン酸塩とアルコールとを含む混合物、または、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを含む混合物を加熱することにより、前記ベース粒子の表面に金属酸化物を付着させる方法(特開2004−99358号公報)が適用できる。
導電性物質として金属を付着する方法としては、特に限定されないが、例えば、ベース粒子の存在下で、金属塩を含む溶液に還元剤を作用させて、前記低屈折率微粒子の表面に金属を付着させる方法が適用できる。このとき金属錯化剤を併用することもできる。
導電性物質として炭素材料を付着する方法としては、特に限定されないが、例えば、ベース粒子に炭素元素含有物質を付着させた後、不活性雰囲気化での加熱により炭素含有物質を炭化させ、前記ベース粒子の表面に炭素材料を付着させる方法が適用できる。
一方、ベース粒子に導電性ポリマーを被着ないし被覆する方法としては、例えば、ポリピロールについての特開平2−273407号公報、ポリアニリンについての特開平3−64369号公報等を参考にすることができるが、これらに限定されるものではない。
具体的には例えば、水、アルコール、アセトニトリルの1種または2種以上からなる溶媒中に、ベース粒子を添加し、ピロール等の導電性ポリマー、酸化剤及びドーパントの存在下、−30〜40℃の温度範囲で攪拌することにより製造できる。
上記酸化剤としては、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン類、塩化第二鉄、三フッ化ホウ素、五フッ化ヒ素、五フッ化アンチモン、塩化アルミニウム等の金属ハロゲン化物、過酸化水素、過酢酸、過酸化ベンゾイル等の過酸化物、過硫酸およびその塩、遷移金属化合物、プロトン酸等が挙げられ、単独、もしくは混合して用いることができる。
また、上記ドーパントとしては、一般に使用されるアクセプター性のドーパントを用いることができる。具体的には、塩素、臭素、ヨウ素、塩化水素等のハロゲンアニオン、ヘキサフロロリン、ヘキサフロロヒ素等のハロゲン化物アニオン、アルキルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸アニオン、過塩素酸カリウム等の過塩素酸アニオン、硫酸等の硫酸アニオンが挙げられ、これらは単独または混合して用いられる。
上記以外の方法として、ベース粒子と導電性物質を混合することにより、ベース粒子表面に導電性物質を被着させることもできる。
なお、ベース粒子として、工程1でAl被覆テンプレート粒子を製造した後の粒子、又は、工程2でAlF被覆テンプレート粒子を製造した後の粒子を使用した場合、引き続き、以降の工程を実施すればよい。
次に、本発明の第3の発明は、第1の発明の粒子及び分散媒を少なくとも含む組成物である。粒子の濃度は適宜調整することができるが、具体的には、1〜50重量%が好ましく、5〜40重量%がより好ましく、10〜30重量%が更に好ましい。
分散媒としては、特に限定されず、適宜種々のもの用いることができる。具体的には、水、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール等の一価アルコール系溶剤類、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、イソヘキサン、イソオクタン、ガソリン、ミネラルスピリット等の石油系炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、エチルベンゼン、アミルベンゼン等の芳香属炭化水素系溶剤類、ジペンテン、テレビン油等の植物系炭化水素系溶剤類、ニトロパラフィン、ニトロベンゼン等のニトロ炭化水素系溶剤類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、パークロルエチレン、モノクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶剤類、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、プロピレンオキシド、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤類、ぎ酸メチル、ぎ酸エチル、ぎ酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸アミル等のエステル系溶剤類、サフラワー油、大豆油、月見草油、ブドウ種子油、ローズヒップ油、ククイナッツ油、アルモンド油、ゴマ油、コムギ胚芽油、トウモロコシ油、綿実油、アボガド油、オリーブ油、ツバキ油、パーシック油、ヒマシ油、ラッカセイ油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、カカオ脂、シア脂、木ロウ、ヤシ油、パーム油、パーム核油、牛脂、馬脂、ミンク油、乳脂、卵黄油、タートル油等の油脂類、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、スクワレン、ワセリン、パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素油類、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、ウンデシレン酸、ヒドロキシステアリン酸、ラノリン脂肪酸等の脂肪酸、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、ホホバアルコール、バチルアルコール、コレステロール、フィトステロール、ラノリンアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、イソステアリン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソイソプロピル、オクタン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリカプリル酸グリセリル、イソノナン酸イソオクチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソトリデシル、ネオペンタン酸ミリスチル、ジイソノナン酸プロピレングリコール、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン等のエステル油類、ミツロウ、カンデリラロウ、鯨ロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、ヌカロウ、イボタロウ、オレンジラッフィー油、モンタンロウ、サトウキビロウ、セラックロウ、ラノリン、ホホバオイル、等のロウ類、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロテトラシロキサン、アルキル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、オレフィン変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、リン酸変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等のシリコーン類、パーフルオロポリエーテル、ハイドロフルオロエーテル、パーフルオロメチルシクロペンタン、パーフルオロジメチルシクロヘキサン、パーフルオロジメチルシクロブタン、メトキシノナフルオロブタン、エトキシノナフルオロブタン、ドデカフルオロペンタン、テトラデカフルオロヘキサン、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、4−トリトリフルオロメチルパーフルオロモルホリン、4−ペンタフルオロエチルパーフルオロモルホリン等のフッ素系油剤、UV吸収剤としてパラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸モノグリセリンエステル、N,N−ジメチルパラアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジエトキシパラアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジプロポキシパラアミノ安息香酸エチルエステル等の安息香酸類、ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート等のアントラニル酸類、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート等のサリチル酸類、オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチル−p−メトキシシンナメート、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート等の桂皮酸類、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、4−フェニルベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−3−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、3−ベンジリデン−d,l−カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4−tert−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタン、シリコーン変性紫外線吸収剤、フッ素変性紫外線吸収剤等が挙げられる。これらのうち1種又は2種以上を本発明において親油性溶媒として使用できる。
また、本発明の分散体には、顔料分散剤、油剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、防腐剤、酸化防止剤、皮膜形成剤、保湿剤、増粘剤、染料、顔料、香料等を適宜配合することができる。例えばPOEラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、N−アシルサルコシン酸、N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等の高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、脂肪酸セッケン、スルホコハク酸塩、二級アルコール硫酸エステル塩、POEアルキルエーテルカルボン酸、POEアルキルアリルエーテルカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム、N−パルミトイルアスパラギン酸ジエタノールアミン、カゼインナトリウム等のアニオン系界面活性剤、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムジアルキルジメチルアンモニウム塩等のアルキルピリジニウム塩、アルキル四級アンモニウム塩、アルキルアミン塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモリホニウム塩、POEアルキルアミン、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等のカチオン系界面活性剤、2−ココイル−2−イミタゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤、アルキルベタイン、アミドベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のベタイン系両性界面活性剤、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン等のグリセリン脂肪酸エステル、ポリリシノール酸ヘキサグリセリル、モノステアリン酸ジグリセリル、デカオレイン酸デカグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスキオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル、モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル、POEソルビタンモノオレート等のPOEソルビタン脂肪酸エステル、POEグリセリントリイソステアレート等のPOEグリセリン脂肪酸エステル、POEモノオレート、POEジステアレート等のPOE脂肪酸エステル、POEラウリルエーテル、POEステアリルエーテル等のPOEアルキルエーテル、POE・POP水添ラノリン等のPOE・POPアルキルエーテル、硬化ひまし油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、アルカノールアミド、ショ糖脂肪酸エステル、デキストリン脂肪酸エステル、でんぷん脂肪酸エステル、ヒドロキシステアリン酸等のノニオン系界面活性剤、その他レシチン等のリン脂質類、トレハロースリピド等の糖脂質類、パーフルオロアルキルリン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等のフッ素系界面活性剤等、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ベントナイト、スメクタイト、カオリン等の天然又は合成の粘土鉱物、有機アミンカチオン変性ベントナイト等の有機変性粘土鉱物、アエロゾル等を挙げることができる。具体的な商品としては、DISPERBYK‐140、DISPERBYK‐145、DISPERBYK‐182、DISPERBYK‐191、DISPERBYK‐2025、DISPERBYK‐2150、DISPERBYK‐2163、DISPERBYK‐2164、BYK‐9076、BYK‐9077(以上、ビックケミー社製)が挙げられる。
次に、本発明の第4の発明は、第1の発明の粒子を少なくとも含む反射防止膜である。本発明の粒子は屈折率が低いため、これをフィラーとして用いて形成した塗膜は優れた反射防止性能を実現することができる。
続いて、本発明の反射防止膜について説明する。当該反射防止膜は基材上に形成される。当該基材は、ガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、TAC等のプラスチックシート、プラスチックフィルム、プラスチックレンズ、プラスチックパネル等の基材、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板等の基材が挙げられる。当該膜は、基材表面に形成されたものであり、前記用途によって異なるが被膜が単独であるいは基材上に保護膜、ハードコート膜、平坦化膜、高屈折率膜、絶縁膜、導電性樹脂膜、導電性金属微粒子膜、導電性金属酸化物微粒子膜、その他必要に応じて用いるプライマー膜等と組み合わせて形成されている。なお、組み合わせて用いる場合、本発明の被膜が必ずしも最外表面に形成されている必要はない。このような被膜は、後述する塗布液をディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法などの周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、更に必要に応じて、焼成して得ることができる。
上記塗布液は、本発明の第3の発明の組成物(ゾル)と被膜形成用マトリックスとの混合液であり、必要により有機溶媒、その他配合物が混合されることもある。被膜形成用マトリックスとは、基材の表面に被膜を形成し得る成分をいい、基材との密着性や硬度、塗工性等の条件に適合する樹脂等から選択して用いることができ、例えば、従来から用いられているポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ブチラール樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂、これら樹脂の混合物、さらにはこれら樹脂の共重合体や変性体などの塗料用樹脂、または、前記アルコキシシラン等の加水分解性有機珪素化合物等が挙げられる。
マトリックスとして塗料用樹脂を用いる場合には、例えば、前記ゾルの分散媒としての水をアルコール等の有機溶媒で置換した有機溶媒分散ゾル、好ましくは本発明の第1の発明の内部に空隙を有する粒子を用いることができ、必要に応じて前記粒子を公知のカップリング剤で処理した後、有機溶媒に分散させた有機溶媒分散ゾルと塗料用樹脂とを適当な有機溶剤で希釈して、塗布液とすることができる。
一方、マトリックスとして加水分解性有機珪素化合物を用いる場合には、例えば、アルコキシシランとアルコールの混合液に、水および触媒としての酸またはアルカリを加えることにより、アルコキシシランの部分加水分解物を得、これに前記ゾルを混合し、必要に応じて有機溶剤で希釈して、塗布液とすることができる。マトリックスとして加水分解性有機珪素化合物を用いる場合、加水分解物の分子量または粒子径が大きい場合は、得られる被膜の強度あるいは基材との密着性が低下することがあり、このためマトリックスとして分子量または粒子径が小さい加水分解物を用いる。
塗布液中の粒子とマトリックスの重量割合は、粒子/マトリックス=1/99〜9/1の範囲が好ましい。重量比が9/1を越えると被膜の強度が不足して実用性に欠ける一方、1/99未満では当該粒子の添加効果が現れない。上記基材の表面に形成される被膜の屈折率は、粒子とマトリックス成分等の混合比率および使用するマトリックスの屈折率によっても異なるが、1.10〜1. 42と低屈折率となる。これは、本発明の粒子では、分散媒が空洞内に入り込んでも被膜乾燥時に分散媒が脱離して空隙となり、樹脂等の被膜形成成分は外殻に止まり、樹脂が硬化した後は外殻の細孔が遮断されて粒子内部の空洞が保持されるからである。
さらに、上記した基材の屈折率が1. 60以下の場合には、基材表面に屈折率が1. 60以上の被膜(以下、中間被膜という。)を形成した上で、前記本発明の粒子を含む被膜を形成することが推奨される。中間被膜の屈折率が1. 60以上であれば前記本発明の粒子を含む被膜の屈折率との差が大きく反射防止性能に優れた膜が得られる。中間被膜の屈折率は、用いる金属酸化物微粒子の種類、金属酸化物と樹脂等の混合比率および使用する樹脂の屈折率によって調整することができる。中間被膜の被膜形成用塗布液は、金属酸化物粒子と被膜形成用マトリックスとの混合液であり、必要により有機溶媒が混合される。被膜形成用マトリックスとしては前記本発明の粒子を含む被膜と同様のものを用いることができ、同一の被膜形成用マトリックスを用いることにより、両被膜間の密着性に優れた膜が得られる。
実施例1
(工程1)テンプレート粒子として酸化亜鉛粒子(石原産業社製、FZO−50、平均粒径20nm)を120g/リットルの濃度で純水に懸濁させ、懸濁液とした。
次いで、当該懸濁液120gと、分散剤としてケイ酸ナトリウム水溶液を酸化亜鉛に対してSiO2換算で5重量%と、ジルコンビーズ(直径0.5mm)130gを225ミリリットルのガラス容器に入れ、1時間ペイントシェーカーで分散させ、スラリー化した。
当該スラリーから、酸化亜鉛として5g相当のスラリーを分取し、純水を加えて総体積が500ミリリットルとなるように調整し、酸化亜鉛分散液(酸化亜鉛換算濃度10g/リットル)を得た。
この酸化亜鉛分散液を撹拌しながら、アルミニウム原料であるアルミン酸ナトリウム水溶液(酸化アルミニウム換算濃度5g/リットル)を30分掛けて1L混合し、混合液を作製した。このときのpHは11.5であった。
当該混合液の温度を70℃に調整後、2.5%硫酸水溶液を3時間かけて滴下し、当該混合液のpHを7に調整した。この時の酸化アルミニウム1モルに対する硫酸滴下速度(グラム当量)は1.2であった。
(工程2)pH調整後、当該混合液にフッ化アンモニウム水溶液500ミリリットルを、F/Al=6(モル比)となるよう1時間かけて混合し、引き続き1時間熟成させた。
(工程3)熟成後、当該混合液を撹拌しながら、10%クエン酸水溶液を加え、pHを3に調整した。撹拌を止め、自然沈降後の上澄みを純水で置換することにより洗浄を行い、ヘキサフルオロアルミン酸化合物が懸濁した分散液(試料A)を得た。後述の物性評価において、乾燥粉末を使用するものに関しては、分散液中の固形分を遠心分離機で沈降させて回収し、120℃で乾燥させたものを用いた。
実施例2
工程3で添加するクエン酸として20%クエン酸水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして試料Bを得た。
実施例3
工程3で添加するクエン酸として50%クエン酸水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして試料Cを得た。
実施例4
工程1において、酸化亜鉛分散液として、酸化亜鉛換算濃度40g/リットルの酸化亜鉛分散液500ミリリットル用いたこと、及び、アルミン酸ナトリウム水溶液として、酸化アルミニウム換算濃度20g/リットルのアルミン酸ナトリウム水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして試料Dを得た。
実施例5
工程3で添加するクエン酸として50%クエン酸水溶液を用いた以外は、実施例4と同様にして試料Eを得た。
実施例6
工程2において、滴下する硫酸水溶液の濃度を10%とした以外は、実施例5と同様にして試料Fを得た。
比較例1
純水500gにSiO2として0.25g相当の珪酸ナトリウムを加えた水溶液に、アルミニウム原料であるアルミン酸ナトリウム水溶液(酸化アルミニウム換算濃度5g/リットル)を30分掛けて1L混合し、混合液を作製した。
当該混合液の温度を70℃に調整後、2.5%硫酸水溶液を3時間かけて滴下し、当該混合液のpHを7に調整した。この時の酸化アルミニウム1モルに対する硫酸滴下速度(グラム当量)は1.2(モル/時間)であった。
pH調整後、当該混合液にフッ化アンモニウム水溶液500ミリリットルを、F/Al=6(モル比)となるよう1時間かけて混合し、引き続き1時間熟成させた。
熟成後、当該混合液を撹拌しながら、10%クエン酸水溶液を加え、pHを3に調整した。撹拌を止め、自然沈降後の上澄みを純水で置換することにより洗浄を行い、ヘキサフルオロアルミン酸化合物が懸濁した分散液(試料G)を得た。
評価1
試料A〜Gについて、透過電子顕微鏡(日立製作所社製、H−7000)観察を行った結果、実施例1〜6の試料A〜Fでは、中空構造の粒子が確認された。試料Aの透過電子顕微鏡像を図1に示す。一方、試料Gは中実粒子であった。試料Gの透過電子顕微鏡像を図2に示す。試料Aの粒子の長径、外殻の厚み、空隙率の平均値はそれぞれ27nm、3.2nm、44.3%であった。空隙率から見積もられる屈折率は1.19であり、試料Gの屈折率1.34よりも低いことがわかる。
評価2
試料A〜Gについて、粉末X線回折測定(リガク社製、Ultima IV)を行った結果、試料A〜GのいずれもNa3AlF6(PDF No.74−4463)と一致する回折パターンを示すことが確認された。試料Aの粉末X線回折パターンを図3に示す。
評価3
試料Aについて、蛍光X線(リガク社製、RIX−2100)による成分分析を行った結果、試料Aの組成はAl2O3:48%、Na2O:50%、ZnO:0.7%、SO4:0.8%であり、テンプレート粒子である酸化亜鉛がほぼすべて除去され、アルミニウムとナトリウムから構成される物質であることが分かった
これらの評価結果から、試料A〜Fはフルオロアルミン酸化合物からなる中空粒子であり、低屈折率であることが確認された。