JP6029824B2 - シート材切断方法 - Google Patents

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Description

本発明は、非水電解液二次電池用セパレータ等に使用される紙製あるいは合成樹脂製のシート材をレーザ光で切断する技術に関する。
非水電解液二次電池用セパレータに使用されるシート材を所定のサイズに切断する方法として、従来、ギロチン刃等と呼ばれる刃物を使用した機械的な切断方法が採用されている。しかしながら、この切断方法においては、切断作業中、シート材に刃物が接触するので、切断作業を繰り返すうちに、シート材の含有物の一部が刃物に付着して蓄積されていき、切れ味が悪化したり、切断部分が粗化したりする。このため、切断作業を所定時間行う度に(若しくは所定回数行う度に)、切断作業を止めて、刃物を清掃して付着物を除去しなければならず、作業効率の低下を招いている。
一方、刃物を使用しない切断方法として、レーザ光を用いた様々な切断技術が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
特開2011−96620号公報 特開2011−5522号公報 特開2010−53310号公報 特開2007−299551号公報 特開平6−267526号公報
前述したように、刃物を使用した切断技術の場合、定期的な清掃を必要とするため、作業効率が低下するという問題がある。これに対し、特許文献1〜5等に記載されたレーザ光を用いた切断方法は刃物を使用しないので、刃物を定期的に清掃する必要がない。
しかしながら、非水電解液二次電池用セパレータに使用されるシート材をレーザ光で切断した場合、照射されるレーザ光の熱エネルギによってシート材の切断部分が変質したり、変形したり、シート材の含有成分の一部が脱落したりすることが多く、必要とされる切断性能が得られていないのが実状である。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、被切断物であるシート材の切断部分が変質・変形したり、シート材の含有成分が脱落したりすることがなく、切断速度も速いシート材切断方法を提供することにある。
本発明のシート材切断方法は、非水電解液二次電池用セパレータに使用されるシート材の切断方法であって、スリットが開設された基板上に前記シート材を載置し、前記シート材を弛緩防止手段で前記基板上に密着状態に保持し、前記シート材に対し、前記スリットに沿って走査するレーザ光を照射することを特徴とする。
このような構成とすれば、被切断物であるシート材を基板上に安定保持した状態でレーザ光を照射することができ、シート材に照射されたレーザ光はスリットを通過するので、レーザ光の反射による弊害(例えば、基板からの熱影響によりシート材の含有物が基板へ付着する現象等)が発生せず、シート材の材質や厚さ等に応じてレーザ光の出力、走査速度等を適切に設定することにより、切断部分の変質・変形や、含有成分の脱落を生じることなく、シート材を速やかに切断することができる。
また、本発明のシート材切断方法は、非水電解液二次電池用セパレータに使用されるシート材の切断方法であって、レーザ光吸収性を有する材料で形成された基板上に前記シート材を載置し、前記シート材を弛緩防止手段で前記基板上に密着状態に保持し、前記シート材に向かって前記基板の面方向に走査するレーザ光を照射することを特徴とする。
このような構成とすれば、前述と同様、被切断物であるシート材を基板上に安定保持した状態でレーザ光を照射することができ、シート材に照射されたレーザ光は基板に吸収され、レーザ光の反射による弊害も発生しないので、シート材の材質や厚さ等に応じてレーザ光の出力、走査速度等を適切に設定することにより、切断部分の変質・変形や、含有成分の脱落を生じることなく、シート材を速やかに切断することができる。なお、レーザ光吸収性を有する材料としては、カーボン、POM(ポリアセタール)等が好適である。
ここで、前記レーザ光の照射領域において、前記シート材を前記基板に押圧する方向に不活性ガスを吹き付けることが望ましい。
このような構成とすれば、レーザ光の照射領域に吹き付けられる不活性ガスによってシート材と基板との密着性が高まると共に、シート材の切断部分近傍の空気を排除することができるため、酸化に起因する切断部分の変質や変形を有効に防止することができる。
また、前記弛緩防止手段として、前記基板に吸着可能な磁石を用いることができる。このような構成とすれば、基板上のシート材の上面に磁石を置くという簡単な作業により、シート材を安定に保持することができ、シート材からの離脱も容易である。
一方、複数の前記シート材を前記基板上に重ね合わせて載置することもできる。このような構成とすれば、複数のシート材を同時に切断することができるため、切断作業の効率を高めることができる。
前記レーザ光については、出力1W〜100Wの炭酸ガスレーザ光若しくは出力1W〜42WのYAGレーザ光を用いることができる。このような構成とすれば、厚さ5μm〜80μm程度の合成樹脂製のシート材を、変質・変形させることなく、速やかに切断することができる。
前記レーザ光の走査方式は、ガルバノ式若しくはスポット式とすることができる。被切断物がシート材である場合、ガルバノ式は、レーザ光をミラー反射することによって当該レーザ光を走査させて切断を行うので、被切断物を移動させるX−Yテーブルが不要であり、切断装置の簡素化、低価格化を図ることができる。一方、スポット式は、ビームベンダをX−Y方向に移動させることによってレーザ光を走査させて切断を行うので、切断加工範囲を広く確保することができる。
本発明により、被切断物であるシート材の切断部分が変質・変形したり、シート材の含有成分が脱落したりすることがなく、切断速度も速いシート材切断方法を提供することができる。
本発明の実施形態であるシート材切断方法に用いるレーザ切断装置を示す一部省略正面図である。 図1の一部拡大断面図である。 図1に示すレーザ切断装置の他の使用状態を示す一部省略断面図である。
まず、本実施形態のシート材切断方法における第1の被切断物である、非水電解液二次電池用セパレータに使用されるシート材について説明する。非水電解液二次電池用セパレータ(以下、「セパレータ」と称す場合がある。)に使用されるシート材は、水溶性ポリマーと微粒子とを含む多孔膜(以下、「A膜」と称す場合がある。)と、ポリオレフィン多孔膜(以下、「B膜」と称す場合がある。)と、を積層してなるものであり、水溶性ポリマーと微粒子と媒体とを含むスラリー液をポリオレフィンの多孔膜(B膜)に塗布し、乾燥等により媒体を除去して製造することができる。
A膜は、シャットダウンが生じる高温における耐熱性を有しており、セパレータに形状安定性の機能を付与する。また、B膜は、電池の事故発生時の異常発熱の際に、溶融して無孔化することにより、セパレータにシャットダウンの機能を付与する。A膜とB膜は、順に積層されていれば3層以上でもかまわない。例えば、B層の両面にA膜が形成された形態等が挙げられる。
なお、シャットダウンとは、事故等による異常発熱の際に、正極−負極間のイオンの通過を遮断して、さらなる発熱を防止することをいい、セパレータにシャットダウン機能を持たせる方法が一般的である。シャットダウン機能をセパレータに持たせる方法としては、異常発熱時に溶融する材質からなる多孔膜をセパレータとして用いる方法が挙げられる。即ち、該セパレータを用いた電池は、異常発熱時に多孔膜が溶融・無孔化し、イオンの通過を遮断し、さらなる発熱を抑制することができる。
前述したA膜は、微粒子を含有する水溶性ポリマーの多孔質膜であり、水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸等が挙げられ、セルロースエーテル、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウムが好ましく、セルロースエーテルがさらに好ましい。セルロースエーテルとしては具体的には、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、シアンエチルセルロース、オキシエチルセルロース等が挙げられ、長時間にわたる使用における劣化が少ないのでCMCが特に好ましい。
前記微粒子としては、充填剤と一般的に呼ばれる無機又は有機の微粒子を用いることができる。具体的にはスチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル等の単独あるいは2種類以上の共重合体;ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド等のフッ素系樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリメタクリレート等の有機物からなる微粒子が挙げられる。また、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、マイカ、ゼオライト、ガラス等の無機物からなる微粒子が挙げられる。微粒子としては、これらの中でもアルミナが望ましい。なお、これらの微粒子の材料は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
前記水溶性ポリマーと共にA膜を構成する前記微粒子は、平均粒径が0.1μm未満、かつ、比表面積が50m2/g以上の微粒子(a)と、平均粒径が0.2μm以上の微粒子(b)とからなり、微粒子(a)と微粒子(b)との重量比が、1:0.05〜50であることが望ましい。なお、微粒子(a)及び微粒子(b)の種類は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
2種類の微粒子のうち、粒径の大きい微粒子(b)は、A膜の主骨格として、A膜の高温時の形状安定性に寄与する。粒径の小さい微粒子(a)は、微粒子(b)の隙間を埋めてA膜の機械的強度をより高める作用を有する。また、後述するように、本発明のセパレータを製造する際に水溶性ポリマーのB膜細孔内への過剰な入り込みを抑制する作用も併せて有する。
なお、A膜は、微粒子(a)と微粒子(b)の2種類の微粒子を両方含む必要がある。微粒子(a)と微粒子(b)の片方のみを使用した場合には、十分な通気性(イオン透過性)を保ちつつ、実用レベルでの高温時の形状安定性と、シャットダウン性とを同時に併せ持つことができない。
微粒子(a)は、平均粒径が0.1μm未満であることが必要であり、好ましくは0.05μm未満であり、かつ、微粒子(a)の比表面積は、50m2/g以上であることが必要であり、好ましくは70m2/g以上である。微粒子(a)の形状としては、球形、瓢箪形等が挙げられる。ここで、微粒子(a)の比表面積は、BET測定法によって測定した値である。また、微粒子(a)の平均粒径d(μm)は、BET比表面積B(m2/g)及び微粒子の真密度D(g/m3)に基づいて計算式「平均粒径d(μm)=6/(B×D)」で求めた値である。
微粒子(a)が、平均粒径0.1μm未満、比表面積50m2/g以上を同時に満たさないと、A膜の成形が不安定となると共に、セパレータ製造時において水溶性ポリマーのB膜細孔内への過剰な入り込みを抑制できず、セパレータのシャットダウン性(B膜の無孔化)が不十分となる。
一方、微粒子(b)は、平均粒径が0.2μm以上であることが必要であり、好ましく0.25μm以上である。微粒子(b)の平均粒径が0.2μm未満であると、A膜の加熱時の収縮が十分に抑制できなくなり、高温での形状安定性が不十分となる。微粒子(b)の比表面積は、特に限定はないが、好ましくは20m2/g以下、特に好ましくは10m2/g以下である。微粒子(b)の形状としては、球形、瓢箪形等が挙げられる。
なお、微粒子(b)の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)にて、25個ずつ粒子を任意に抽出して、それぞれにつき粒径(直径)を測定して、25個の粒径の平均値として算出した値である。また、微粒子(b)の形状は、球形以外の場合は、粒子における最大長を示す方向の長さをその粒径とする。また、微粒子(b)の比表面積は、BET測定法によって測定した値である。
また、A膜において、微粒子(a)と微粒子(b)との重量比(微粒子(a)を1としたときの微粒子(b)の割合)は、1:0.05〜50であることが必要であり、好ましくは1:0.1〜15であり、特に好ましくは1:0.2〜10である。
重量比が、0.05未満であると、A膜の熱収縮を十分に抑制できず、高温での形状安定性が不十分となり、50を超えると水溶性ポリマーのB膜細孔内への過剰な入り込みにより、セパレータのシャットダウン性が損なわれてしまう。
なお、前述した作用効果を損なわない範囲内で、微粒子(a)と微粒子(b)以外の微粒子(以下、「その他の微粒子」と称す場合がある。)を含んでいてもよい。A膜におけるその他の微粒子の含有量は、微粒子(a)と微粒子(b)との合計に対して、100重量%以下であることが好ましく、50重量%以下(0重量%を含む)であることがより好ましい。
A膜の厚みは、通常0.1μm以上20μm以下であり、好ましくは2μm以上15μm以下の範囲である。厚すぎると、非水電解液二次電池を製造した場合に、該電池の負荷特性が低下するおそれがあり、薄すぎると、事故等により該電池の発熱が生じたときにポリオレフィンの多孔膜の熱収縮に抗しきれずセパレータが収縮するおそれがある。なお、A膜がB膜の両面に形成される場合には、A膜の厚みは両面の合計厚みとする。
A膜は多孔質の膜であるが、その孔径は、孔を球形に近似したときの球の直径として3μm以下が好ましく、1μm以下がさらに好ましい。孔径の平均の大きさ又は孔径が3μmを超える場合には、正極や負極の主成分である炭素粉やその小片が脱落したときに、短絡しやすい等の問題が生じるおそれがある。また、A膜の空隙率は30〜90体積%が好ましく、より好ましくは40〜85体積%である。
次に、前述したセパレータを構成するB膜について説明する。B膜は、ポリオレフィンの多孔膜であり、非水二次電池において、電解液に溶解しない。その重量平均分子量が5×105〜15×106の高分子量成分が含まれていることが好ましい。ポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等を重合した高分子量の単独重合体又は共重合体が挙げられる。これらのうちエチレンを主体とする高分子量ポリエチレンが好ましい。
B膜の空隙率は、20〜80体積%が好ましく、さらに好ましくは30〜70体積%である。該空隙率が20体積%未満では電解液の保持量が少なくなる場合があり、80体積%を超えるとシャットダウンが生じる高温における無孔化が不十分となる、すなわち事故により電池が発熱したときに電流が遮断できなくなるおそれがある。
また、B膜の厚みは、通常4〜50μmであり、好ましくは5〜30μmである。厚みが4μm未満であると、シャットダウンが不十分であるおそれがあり、50μmを超えると、水溶性ポリマー多孔質層も加えた非水電解質二次電池用セパレータの厚みが厚くなり、電池の電気容量が小さくなるおそれがある。B膜の孔径は3μm以下が好ましく、1μm以下がさらに好ましい。
B膜は、その内部に連結した細孔を有す構造であり、一方の面から他方の面に気体や液体が透過可能である。その透気度は、通常、ガーレ値で50〜400秒/100ccの範囲であり、好ましくは、50〜300秒/100ccの範囲である。
前述したA膜とB膜からなるセパレータにおいて、A膜とB膜は積層されてセパレータを構成する。A膜とB膜以外の膜体、例えば、接着膜、保護膜等の多孔膜が目的を損なわない範囲でセパレータに含まれていてもよい。
セパレータ全体(A膜+B膜)の厚みは、通常、5〜80μmであり、好ましくは5〜50μmであり、特に好ましくは6〜35μmである。セパレータ全体の厚みが5μm未満では破膜しやすくなり、水溶性ポリマー多孔質層も加えた非水電解質二次電池用セパレータの厚みが厚くなるため電池の電気容量が小さくなるおそれがある。また、セパレータ全体の空隙率は、通常、30〜85体積%であり、好ましくは35〜80体積%である。
また、前記セパレータを用いて非水二次電池を製造した場合、高い負荷特性が得られるが、セパレータの透気度は50〜2000秒/100ccが好ましく、50〜1000秒/100ccがより好ましい。透気度が2000秒/100cc以上となると、セパレータのイオン透過性、及び電池の負荷特性が低くなるおそれがある。
シャットダウンが生じる高温における、セパレータの寸法維持率としてはB膜のMD方向又はTD方向のうちの小さい方の値が、90%以上、好ましくは95%以上である。ここで、MD方向とは、シート成形時の長尺方向、TD方向とはシート成形時の幅方向のことをいう。寸法維持率が90%未満であると、シャットダウンが生じる高温においてセパレータの熱収縮により、正極−負極間で短絡を起こし、結果的にシャットダウン機能が不十分となるおそれがある。なお、シャットダウンが生じる高温とは80〜180℃の温度であり、通常は130〜150℃程度である。
前述した非水電解液二次電池用セパレータを用いて非水電解液二次電池を製造すると、高い負荷特性を有し、しかも事故により電池が激しく発熱した場合でもセパレータはシャットダウン機能を発揮し、セパレータの収縮による正極と負極の接触が避けられ、安全性の高い非水電解液二次電池となる。
次に、本実施形態のシート材切断方法における第2の被切断物である、コロナ処理を行ったシート材について詳しく説明する。コロナ処理を行ったシート材とは、前記セパレータの製造工程において、スラリー液をB膜上に塗布する前に、B膜に対して、親水化処理のひとつであるコロナ処理を行い、その後、水溶性ポリマー、微粒子(a)、(b)及び媒体を含むA膜形成用のスラリー液をB膜上に塗布した後、媒体を除去することにより製造したものである。
ここで、コロナ処理とは、高周波電源により供給される高周波・高電圧出力によってコロナ放電を発生させ、このコロナ放電下にB膜(ポリオレフィン多孔膜)を通過させ、コロナ放電をB膜に照射することによってB膜の表面を改質(親水化)する処理をいう。
B膜をコロナ処理することにより、スラリー液の塗布性が向上し、より均質な多孔膜(A膜)を得ることができる。コロナ処理は、特に媒体中の溶媒の濃度が低いときにより効果的である。コロナ処理を行うことにより、B膜を比較的短時間で親水化できることに加え、コロナ放電によるポリオレフィン樹脂の改質が、B膜の表面近傍のみに限られ、B膜の細孔内は疎水性を保ったまま、B膜の表面近傍のみを親水化できるという利点がある。
このため、スラリー液を塗布した場合において、水溶性ポリマーを含むスラリー液のB膜の細孔(空隙)内への過剰な入り込みを抑制でき、水溶性ポリマー析出によってB膜のシャットダウン性が損なれることを回避できる。なお、B膜の親水化処理としては、前述したコロナ処理のほかに、酸やアルカリ等を用いた薬剤処理あるいはプラズマ処理等を採用することもできる。
以下、図1〜図3に基づいて、本発明の実施形態であるシート材切断方法について説明する。図1,図2に示すように、スポット式の炭酸ガスレーザ切断装置LAは、前述した第1の被切断物であるシート材20を載置するための基板10と、炭酸ガスレーザ発振ユニット(図示せず)から発射されるレーザ光LBを垂直方向に折り曲げるミラー(図示せず)が内蔵されたビームベンダ11と、ビームベンダ11を水平方向に移動させるX−Yテーブル14と、レーザ光LBをシート材20上に集光するレンズ12と、レーザ光LBの照射領域に向かって、アシストガスである窒素ガスN2を吹き付けるための給気経路13と、を備えている。
基板10にはスリット15が開設され、X−Yテーブル14を作動させることによりビームベンダ11をスリット15の長手方向に移動させると、レーザ光LBがスリット15に沿って走査する。また、シート材20を基板10上に密着状態に保持するための弛緩防止手段として、基板10に吸着するシート状磁石16がスリット15を挟んで対向する状態でシート材20上に配置されている。
なお、図3に示すように、ビームベンダ11の先端開口部11aに、レーザ光LBの集光方向に沿って縮径する形状を有するノズル17を装着することもできる。このような構成とすれば、給気経路13から供給される窒素ガスN2はノズル17内で絞られ、流速が増大した状態で先端開口部17aから集中的にレーザ光LBの照射領域に向かって吹き出される。
ここで、シート材20を、3種類のレーザ切断装置、即ち、図1に示す炭酸ガスレーザ切断装置LA、ガルバノ式の炭酸ガスレーザ切断装置GB(図示せず)及びガルバノ式のYAGファイバーレーザ切断装置GC(図示せず)を用いて切断し、そのカット断面の良否を評価する実験を行ったので、その結果を表1に基づいて説明する。
シート材20は、前述した第1の被切断物である、微粒子を含む水溶性ポリマー多孔質膜とポリオレフィン多孔膜とが積層されてなる非水電解液二次電池用セパレータ(厚さ5〜80μm)であり、シート材20のカット断面の評価基準として、「断面の焦げ付きの有無」、「断面のカール発生の有無」、「カット時の粉落ちの有無」及び「カット速度」の4項目を設定した。ここで、「断面の焦げ付き」とは、シート材20のカット断面付近が熱により炭化(黒化)、酸化すること、「断面のカール発生」とはシート材20のカット断面付近が湾曲したり、変形したりすること、「カット時の粉落ち」とは、シート材20に含まれる微粒子(アルミナ等)がカット断面部分から脱落する現象をいう。
Figure 0006029824
◎,○:良好 △:NG PW:パルス発振
コロナ処理を行っていないシート材20(微粒子を含む水溶性ポリマー多孔質膜とポリオレフィン多孔膜とが積層されてなる非水電解液二次電池用セパレータ)を3種類のレーザ切断装置LA,GB,GCを用いて切断した結果、表1に示すように、スポット式の炭酸ガスレーザ切断装置LAを用いて、出力3W、切断速度80m/min、アシストガスを窒素ガスとし、基板なしの条件でレーザ切断したとき、カット時の粉落ちもなく、カット断面の状態が最も良好であることが分かる。
また、表1に示す結果を見ると、切断装置LA,GB,GCはいずれもシート材20のレーザ切断を行うことができるが、炭酸ガスレーザ切断装置LA及びガルバノ式の炭酸ガスレーザ切断装置GBは切断速度が速いので、最も有効であり、ガルバノ式のYAGファイバーレーザ切断装置GCは切断速度が遅いので、不向きであることが分かる。さらに、断面のカール発生及びカット時の粉落ちが発生しないようにするには、レーザ光のスポット径を100μm以下とすることが望ましいことが分かる。一方、表1には記載していないが、レーザ光のスポット径を100μm以上(例えば、200μm程度)として切断することは可能であるが、切断部分の面積が大きくなり、断面のカール発生及びカット時の粉落ちが発生し易くなる傾向が現れた。なお、レーザ光のスポット径の理論値は下記の計算式に基づいて求めることができる。
d=4λfM2/(πD)
ただし、dはワーク位置でのスポット径、Dはレンズで絞る前のスポット径(入射ビーム径)、λはレーザ光の波長、fは焦点距離(ワークまでの距離)、M2はエムスクエア(ビームの集光性を表す値)である。
次に、前述した第2の被切断物である、コロナ処理を行ったシート材(厚さ5〜80μm:図示せず)、即ち、微粒子を含む水溶性ポリマー多孔質膜とポリオレフィン多孔膜とが積層されてなる非水電解液二次電池用セパレータであって、ポリオレフィン多孔膜がコロナ処理されたシート材を3種類のレーザ切断装置LA,GC,GDを用いて切断実験した場合の結果について説明する。レーザ切断装置LA,GCは表1に示すレーザ切断装置LA,GCと同じ装置であるが、レーザ切断装置GDは、ガルバノ式のグリーン(YVO4)レーザ切断装置である。
Figure 0006029824
◎,○:良好 △:NG PW:パルス発振
コロナ処理を行ったシート材(微粒子を含む水溶性ポリマー多孔質膜とポリオレフィン多孔膜とが積層されてなる非水電解液二次電池用セパレータ)を3種類のレーザ切断装置LA,GC,GDを用いて切断したところ、表2に示すように、ガルバノ式のYAGファイバーレーザ切断装置GCを用いて、出力4.8W、切断速度9m/min、アシストガスなし、基板なしの条件でレーザ切断したとき、カット時の粉落ちもなく、カット断面の状態が最も良好であることが分かる。
また、表2に示す結果を見ると、コロナ処理を行うことにより、シート材のレーザ光吸収性が向上し、コロナ処理を行っていないシート材を切断する場合よりも小さい出力のレーザ光で切断することができることが分かる。また、ガルバノ式のYAGファイバーレーザ切断装置GCを用いた切断においては、コロナ処理を行ったシート材を切断する場合は、コロナ処理を行っていないシート材を切断する場合と比較して、3倍の増速が可能であることが分かる。さらに、断面のカール発生及びカット時の粉落ちが発生しないようにするには、レーザ光のスポット径を100μm以下とすることが望ましいことが分かる。一方、表2には記載していないが、レーザ光のスポット径を100μm以上(例えば、200μm程度)として切断することは可能であるが、切断部分の面積が大きくなり、断面のカール発生及びカット時の粉落ちが発生し易くなる傾向が現れた。
なお、前述した実施形態は本発明の一例を示すものであり、本発明に係るレーザ切断方法が前述した実施形態に限定されるものではない。
本発明のシート材切断方法は、非水電解液二次電池用セパレータ等各種シート材の切断方法として、電気・電子機器産業や自動車産業等の分野において広く利用することができる。
10 基板
11 ビームベンダ
11a,17a 開口部
12 レンズ
13 給気経路
14 X−Yテーブル
15 スリット
16 シート状磁石
17 ノズル
20 シート材
LA レーザ切断装置
LB レーザ光
2 窒素ガス

Claims (6)

  1. 非水電解液二次電池用セパレータに使用されるシート材の切断方法であって、
    スリットが開設された基板上に前記シート材を載置し、前記シート材を弛緩防止手段で前記基板上に密着状態に保持し、前記シート材に対し、前記スリットに沿って走査するレーザ光を照射し、前記レーザ光の照射領域において、前記シート材を前記基板に押圧する方向に不活性ガスを吹き付けることを特徴とするシート材切断方法。
  2. 非水電解液二次電池用セパレータに使用されるシート材の切断方法であって、
    レーザ光吸収性を有する材料で形成された基板上に前記シート材を載置し、前記シート材を弛緩防止手段で前記基板上に密着状態に保持し、前記シート材に対し、前記基板の面方向に走査するレーザ光を照射し、前記レーザ光の照射領域において、前記シート材を前記基板に押圧する方向に不活性ガスを吹き付けることを特徴とするシート材切断方法。
  3. 前記弛緩防止手段として、前記基板に吸着可能な磁石を用いた請求項1または2記載のシート材切断方法。
  4. 複数の前記シート材を前記基板上に重ね合わせて載置する請求項1〜のいずれかに記載のシート材切断方法。
  5. 前記レーザ光が、出力1W〜100Wの炭酸ガスレーザ光若しくは出力1W〜42WのYAGレーザ光である請求項1〜のいずれかに記載のシート材切断方法。
  6. 前記レーザ光の走査方式が、ガルバノ式若しくはスポット式である請求項1〜のいずれかに記載のシート材切断方法。
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