JP6029212B2 - 車両用動力伝達装置 - Google Patents

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Description

本発明は、駆動源に接続された入力軸の回転を出力軸に伝達する少なくとも3個の伝達ユニットを前記入力軸および前記出力軸間に軸方向に並置し、前記伝達ユニットの各々は、前記入力軸と共に偏心回転する入力側支点と、前記出力軸に接続されたワンウェイクラッチと、前記ワンウェイクラッチのアウター部材に設けられた出力側支点と、前記入力側支点および前記出力側支点に両端を接続されて往復運動するコネクティングロッドとを備える車両用動力伝達装置に関する。
軸方向に並置された6個の伝達ユニットを備え、エンジンに接続された入力軸の回転を6個のコネクティングロッドの相互に位相が異なる往復運動に変換し、前記6個のコネクティングロッドの往復運動を6個のワンウェイクラッチによって出力軸の回転運動に変換する無段変速機が、下記特許文献1により公知である。
特開2013−36536号公報
ところで、上記特許文献1に記載された無段変速機は、入力軸の軸方向両端のジャーナル部が2個のベアリングでケーシングに回転自在に支持されているため、6個の伝達ユニットのうち、ベアリングから遠い軸方向中央の2個の伝達ユニットから入力軸に荷重が入力したとき、荷重の入力点とジャーナル部との距離が大きくなることで、入力軸に加わる曲げモーメント、撓み角および撓み量が増加し、ベアリングのフリクションが増加したり耐久性が低下したりする可能性があった。
これを防止するには、入力軸の両端部だけでなく中間部もベアリングで支持すれば良いが、このようにすると追加したベアリングの分だけ部品点数が増加するだけでなく、入力軸の軸方向寸法が増加する問題がある。
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、ベアリングの数を増加することなく入力軸あるいは出力軸のジャーナル部に加わる荷重を低減することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、駆動源に接続された入力軸の回転を出力軸に伝達する少なくとも3個の伝達ユニットを前記入力軸および前記出力軸間に軸方向に並置し、前記伝達ユニットの各々は、前記入力軸と共に偏心回転する入力側支点と、前記出力軸に接続されたワンウェイクラッチと、前記ワンウェイクラッチのアウター部材に設けられた出力側支点と、前記入力側支点および前記出力側支点に両端を接続されて往復運動するコネクティングロッドとを備える車両用動力伝達装置であって、前記入力軸および前記出力軸の少なくとも一方の軸は、2個のベアリングにより回転自在に支持される2個のジャーナル部を備え、一方の前記ジャーナル部は最も軸方向一端側に位置する前記伝達ユニットよりも軸方向他端側に配置され、他方の前記ジャーナル部は最も軸方向他端側に位置する前記伝達ユニットよりも軸方向一端側に配置されることを特徴とする車両用動力伝達装置が提案される。
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、6個の前記伝達ユニットを備え、前記一方のジャーナル部は軸方向一端側から2番目および3番目の前記伝達ユニット間に配置され、前記他方のジャーナル部は軸方向一端側から4番目および5番目の前記伝達ユニット間に配置されることを特徴とする車両用動力伝達装置が提案される。
また請求項3に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、軸方向一端側から1番目および2番目の前記伝達ユニット間の間隔と、軸方向一端側から3番目および4番目の前記伝達ユニット間の間隔と、軸方向一端側から5番目および6番目の前記伝達ユニット間の間隔とは等しく設定され、6個の前記伝達ユニットの前記入力側支点の偏心方向の位相は、軸方向一端側の前記伝達ユニットから軸方向他端側の前記伝達ユニットに向けて、周方向一方側に180°、60°、180°、60°、180°ずつずれていることを特徴とする車両用動力伝達装置が提案される。
尚、実施の形態の偏心ディスク18は本発明の入力側支点に対応し、実施の形態のピン19cは本発明の出力側支点に対応し、実施の形態のエンジンEは本発明の駆動源に対応する。
請求項1の構成によれば、駆動源に接続された入力軸が回転すると、各伝達ユニットの入力側支点が偏心回転し、入力側支点に一端を接続されたコネクティングロッドが往復運動すると、コネクティングロッドの他端が接続されたワンウェイクラッチを介して出力軸が回転する。
入力軸および出力軸の少なくとも一方の軸は、2個のベアリングにより回転自在に支持される2個のジャーナル部を備え、一方のジャーナル部は最も軸方向一端側に位置する伝達ユニットよりも軸方向他端側に配置され、他方のジャーナル部は最も軸方向他端側に位置する伝達ユニットよりも軸方向一端側に配置されるので、何れの伝達ユニットから入力軸あるいは出力軸に荷重が入力した場合であっても、該軸の軸方向両端の2個のジャーナル部を2個のベアリングで支持する場合に比べて、荷重の入力点と2個のジャーナル部との最大距離を短くすることができ、これにより該軸に加わる最大曲げモーメント、最大撓み角および最大撓み量を低減し、ベアリングの個数を最小に抑えて入力軸あるいは出力軸の軸方向寸法の増加を抑制しながら、ベアリングのフリクションの低減および耐久性の向上を図ることができる。
また請求項2の構成によれば、6個の伝達ユニットを備え、一方のジャーナル部は軸方向一端側から2番目および3番目の伝達ユニット間に配置され、他方のジャーナル部は軸方向一端側から4番目および5番目の伝達ユニット間に配置されるので、何れの伝達ユニットから入力軸あるいは出力軸に荷重が入力した場合であっても、荷重の入力点と2個のジャーナル部との最大距離を小さく抑え、入力軸あるいは出力軸に加わる最大曲げモーメント、最大撓み角および最大撓み量を効果的に低減することができる。
また請求項3の構成によれば、軸方向一端側から1番目および2番目の伝達ユニット間の間隔と、軸方向一端側から3番目および4番目の伝達ユニット間の間隔と、軸方向一端側から5番目および6番目の伝達ユニット間の間隔とは等しく設定され、6個の伝達ユニットの入力側支点の偏心方向の位相は、軸方向一端側の伝達ユニットから軸方向他端側の伝達ユニットに向けて、周方向一方側に180°、60°、180°、60°、180°ずつずれているので、各伝達ユニットから入力軸あるいは出力軸に遠心力が作用したときに、特別のカウンタウエイトを設けることなく遠心力を完全に相殺し、2個のジャーナル部に加わる荷重をゼロにして振動や騒音の発生を防止することができる。
車両用動力伝達装置のスケルトン図。 図1の2部詳細図。 図2の3−3線断面図(OD状態)。 図2の3−3線断面図(GN状態)。 OD状態での作用説明図。 GN状態での作用説明図。 入力軸および出力軸を支持するベアリングの配置の説明図。 入力軸の各部に作用する曲げモーメント、撓み角および撓み量を示すグラフ。 6個の伝達ユニットから入力軸に加わる遠心力の説明図。 入力軸の第1、第2ジャーナル部に加わる遠心荷重を示す表。 図9に対応する図。(比較例) 図10に対応する表。(比較例)
以下、図1〜図12に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1に示すように、エンジンEの駆動力を左右の車軸10,10を介して駆動輪W,Wに伝達する車両用動力伝達装置は、クランク式の無段変速機TおよびディファレンシャルギヤDを備える。無段変速機Tは同一構造を有する複数個(実施の形態では6個)の伝達ユニットU…を軸方向に重ね合わせたもので、それらの伝達ユニットU…は平行に配置された共通の入力軸11および共通の出力軸12を備えており、入力軸11の回転が減速または増速されて出力軸12に伝達される。
以下、図2〜図4に基づいて伝達ユニットUの構造を説明する。尚、無段変速機Tは6個の伝達ユニットU…を備えるが、図2には便宜的に4個の伝達ユニットU…だけが示されている。
エンジンEに接続されて回転する入力軸11は、電動モータのような変速アクチュエータ14の中空の回転軸14aの内部を相対回転自在に貫通する。変速アクチュエータ14のロータ14bは回転軸14aに固定されており、ステータ14cはケーシングに固定される。変速アクチュエータ14の回転軸14aは、入力軸11と同速度で回転可能であり、かつ入力軸11に対して異なる速度で相対回転可能である。
変速アクチュエータ14の回転軸14aを貫通した入力軸11には第1ピニオン15が固定されており、この第1ピニオン15を跨ぐように変速アクチュエータ14の回転軸14aにクランク状のキャリヤ16が接続される。第1ピニオン15と同径の2個の第2ピニオン17,17が、第1ピニオン15と協働して正三角形を構成する位置にそれぞれピニオンピン16a,16aを介して支持されており、これら第1ピニオン15および第2ピニオン17,17に、円板形の偏心ディスク18の内部に偏心して形成されたリングギヤ18aが噛合する。偏心ディスク18の外周面に、コネクティングロッド19のロッド部19aの一端に設けたリング部19bがベアリング20を介して相対回転自在に嵌合する。
6個の伝達ユニットU…はクランク状のキャリヤ16を共有しているが、キャリヤ16に第2ピニオン17,17を介して支持される偏心ディスク18の位相は各々の伝達ユニットUで60°ずつ異なっている。
出力軸12の外周に設けられたワンウェイクラッチ21は、コネクティングロッド19のロッド部19aにピン19cを介して枢支された揺動リンク22の内周部をアウター部材とし、出力軸12の外周部をインナー部材とするもので、アウター部材およびインナー部材間に形成された楔状の空間に、エンゲージスプリング24…で付勢された複数のローラ25…を備える。
図7に示すように、軸方向に並置された6個の伝達ユニットU…は、軸方向左端側から右端側に向けて順番に♯1ユニット、♯2ユニット、♯3ユニット、♯4ユニット、♯5ユニット、♯6ユニットと名付けられる。入力軸11は、♯2ユニットおよび♯3ユニット間の第1ジャーナル部J1においてベアリング28によりケーシングに支持され、かつ♯4ユニットおよび♯5ユニット間の第2ジャーナル部J2においてベアリング29によりケーシングに支持される。同様に、出力軸12は、♯2ユニットおよび♯3ユニット間の第1ジャーナル部J1′においてベアリング28′によりケーシングに支持され、かつ♯4ユニットおよび♯5ユニット間の第2ジャーナル部J2′においてベアリング29′によりケーシングに支持される。入力軸11の右端はスプライン26によりエンジンEに接続され、出力軸12の右端はスプライン27によりディファレンシャルギヤDに接続される。
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
先ず、無段変速機Tの一つの伝達ユニットUの作用を説明する。変速アクチュエータ14の回転軸14aを入力軸11に対して相対回転させると、入力軸11の軸線L1まわりにキャリヤ16が回転する。このとき、キャリヤ16の中心O、つまり第1ピニオン15および2個の第2ピニオン17,17が成す正三角形の中心は入力軸11の軸線L1まわりに回転する。
図3および図5は、キャリヤ16の中心Oが第1ピニオン15(つまり入力軸11)に対して出力軸12と反対側にある状態を示しており、このとき入力軸11に対する偏心ディスク18の偏心量が最大になって無段変速機Tの変速比はOD(オーバードライブ)状態になる。図4および図6は、キャリヤ16の中心Oが第1ピニオン15(つまり入力軸11)に対して出力軸12と同じ側にある状態を示しており、このとき入力軸11に対する偏心ディスク18の偏心量がゼロになって無段変速機Tの変速比はGN(ギヤドニュートラル)状態になる。
図5に示すOD状態で、エンジンEで入力軸11を回転させるとともに、入力軸11と同速度で変速アクチュエータ14の回転軸14aを回転させると、入力軸11、回転軸14a、キャリヤ16、第1ピニオン15、2個の第2ピニオン17,17および偏心ディスク18が一体になった状態で、入力軸11を中心に反時計方向(矢印A参照)に偏心回転する。図5(A)から図4(B)を経て図5(C)の状態へと回転する間に、偏心ディスク18の外周にリング部19bをベアリング20を介して相対回転自在に支持されたコネクティングロッド19は、そのロッド部19aの先端にピン19cで枢支された揺動リンク22を反時計方向(矢印B参照)に回転させる。図5(A)および図5(C)は、揺動リンク22の前記矢印B方向の回転の両端を示している。
このようにして揺動リンク22が矢印B方向に回転すると、ワンウェイクラッチ21の揺動リンク22および出力軸12間の楔状の空間にローラ25…が噛み込み、揺動リンク22の回転がワンウェイクラッチ21を介して出力軸12に伝達されるため、出力軸12は反時計方向(矢印C参照)に回転する。
入力軸11および第1ピニオン15が更に回転すると、第1ピニオン15および第2ピニオン17,17にリングギヤ18aを噛合させた偏心ディスク18が反時計方向(矢印A参照)に偏心回転する。図5(C)から図5(D)を経て図5(A)の状態へと回転する間に、偏心ディスク18の外周にリング部19bをベアリング20を介して相対回転自在に支持されたコネクティングロッド19は、そのロッド部19aの先端にピン19cで枢支された揺動リンク22を時計方向(矢印B′参照)に回転させる。図5(C)および図5(A)は、揺動リンク22の前記矢印B′方向の回転の両端を示している。
このようにして揺動リンク22が矢印B′方向に回転すると、揺動リンク22の内周面と出力軸12の外周面との間の楔状の空間からローラ25…がエンゲージスプリング24…を圧縮しながら押し出されることで、揺動リンク22が出力軸12に対してスリップして出力軸12は回転しない。
以上のように、揺動リンク22が往復回転したとき、揺動リンク22の回転方向が反時計方向(矢印B参照)のときだけ出力軸12が反時計方向(矢印C参照)に回転するため、出力軸12は間欠回転することになる。
図6は、GN状態で無段変速機Tを運転するときの作用を示すものである。このとき、入力軸11の位置は偏心ディスク18の中心に一致しているので、入力軸11に対する偏心ディスク18の偏心量はゼロになる。この状態でエンジンEで入力軸11を回転させるとともに、入力軸11と同速度で変速アクチュエータ14の回転軸14aを回転させると、入力軸11、回転軸14a、キャリヤ16、第1ピニオン15、2個の第2ピニオン17,17および偏心ディスク18が一体になった状態で、入力軸11を中心に反時計方向(矢印A参照)に回転する。しかしながら、偏心ディスク18の偏心量がゼロであるため、コネクティングロッド19の往復運動のストロークもゼロになり、出力軸12は回転しない。
従って、変速アクチュエータ14を駆動してキャリヤ16の位置を図3のOD状態と図4のGN状態との間に設定すれば、無限大変速比および所定変速比間の任意の変速比での運転が可能になる。
無段変速機Tは、並置された6個の伝達ユニットU…の偏心ディスク18…の位相が相互に60°ずつずれているため、6個の伝達ユニットU…が交互に駆動力を伝達することで、つまり6個のワンウェイクラッチ21…の何れかが必ず係合状態にあることで、出力軸12を連続回転させることができる。
次に、入力軸11の第1ジャーナル部J1および第2ジャーナル部J2に加わる曲げモーメント、撓み角および撓み量について考察する。
図8(A)に示すように、無段変速機Tの運転に伴って♯1ユニット〜♯6ユニットから入力軸11に荷重Fが入力すると、その荷重Fは入力軸11の第1ジャーナル部J1および第2ジャーナル部J2からベアリング28,29を介してケーシングに伝達される。このとき、荷重Fの入力点から第1ジャーナル部J1あるいは第2ジャーナル部J2までの距離が大きいほど入力軸11の各部に作用する曲げモーメントや撓みが大きくなるが、本実施の形態では、♯2ユニットおよび♯3ユニット間に第1ジャーナル部J1を配置し、♯4ユニットおよび♯5ユニット間に第2ジャーナル部J2を配置したことにより、荷重Fの入力点から第1ジャーナル部J1あるいは第2ジャーナル部J2までの距離の最大値を小さくすることができる。
即ち、隣接する二つの伝達ユニットU,U間の距離、あるいは伝達ユニットUから隣接する第1ジャーナル部J1あるいは第2ジャーナル部J2までの距離を1スパンとすると、♯2ユニット〜♯5ユニットに荷重Fが入力したときには、荷重Fの入力点と直近の第1ジャーナル部J1あるいは第2ジャーナル部J2までの距離は何れも1スパンである。しかしながら、♯1ユニットに荷重Fが入力した場合には、荷重Fの入力点から直近の第1ジャーナル部J1までの距離は2スパンとなる。同様に、♯6ユニットに荷重Fが入力した場合には、荷重Fの入力点から直近の第2ジャーナル部J2までの距離は2スパンとなる。
このように、本実施の形態では、♯1ユニットあるいは♯6ユニットに荷重Fが入力したときが最も厳しい状態となるが、そのときの入力軸11の各部に作用する曲げモーメント(実線参照)、撓み角(破線参照)および撓み量(鎖線参照)が図8(A)の下段に示される。
一方、図8(B)は入力軸11の両端をベアリング28,29で支持した比較例を示している。この比較例では、荷重Fの入力点から第1ジャーナル部J1あるいは第2ジャーナル部J2までの最大距離は4スパンから6スパンまで変化するが、この図では♯3ユニットおよび♯4ユニットに荷重Fが入力し、第1ジャーナル部J1あるいは第2ジャーナル部J2までの最大距離が最も小さい4スパンになる状態が示される。
図8(B)の下段に示す比較例のグラフと、図8(A)の下段に示す本実施の形態のグラフとを比較すると明らかなように、本実施の形態の入力軸11の各部の曲げモーメント、撓み角および撓み量は、何れも比較例のそれの半分以下に減少していることが分かる。以上のように、本実施の形態によれば、ベアリング28,29の個数を最小の2個に抑えて入力軸11の軸方向寸法の増加を抑制しながら、ベアリング28,29のフリクションの低減および耐久性の向上を図ることができる。
次に、入力軸11の♯1ユニット〜♯6ユニットに遠心力による荷重が入力する場合について考察する。
図9に示すように、本実施の形態では、入力軸11の第1ジャーナル部J1の左側に位置する♯1ユニットおよび♯2ユニットは、偏心ディスク18の偏心方向の位相が180゜ずれている。また入力軸11の第1ジャーナル部J1および第2ジャーナル部J2間に位置する♯3ユニットおよび♯4ユニットは、偏心ディスク18の偏心方向の位相が180゜ずれている。また入力軸11の第2ジャーナル部J2の右側に位置する♯5ユニットおよび♯6ユニットは、偏心ディスク18の偏心方向の位相が180゜ずれている。
また本実施の形態では、隣接する♯1ユニットおよび♯2ユニット間の距離と、隣接する♯3ユニットおよび♯4ユニット間の距離と、隣接する♯5ユニットおよび♯6ユニット間の距離とが、何れもaに一致するように設定されている。またbは♯2ユニットおよび第1ジャーナル部J1間の距離であり、cは第2ジャーナル部J2および♯3ユニット間の距離であり、dは♯4ユニットおよび第2ジャーナル部J2間の距離であり、eは第2ジャーナル部J2および♯5ユニット間の距離である。また第1ジャーナル部J1および第2ジャーナル部J2間の距離をL(=a+c+d)と定義する。入力軸11の回転に伴い、♯1ユニット〜♯6ユニットの各々には、位相が相互に60゜ずつずれた遠心力Fが径方向外向きに作用し、これらの遠心力Fにより第1ジャーナル部J1および第2ジャーナル部J2には遠心荷重が発生する。
図10の表の左欄には、♯1ユニット〜♯6ユニットの遠心力Fにより第1ジャーナル部J1および第2ジャーナル部J2に作用するy軸方向の遠心荷重が示される。例えば、♯1ユニットに作用する遠心力Fにより、第1ジャーナル部J1には−{(a+b+L)/L}・Fのy軸方向の遠心荷重が発生し、 第2ジャーナル部J2には{(a+b)/L}・Fのy軸方向の遠心荷重が発生する。これらを♯1ユニット〜♯6ユニットの全てについて足し合わせると、第1ジャーナル部J1のトータルのy軸方向の遠心荷重も、第2ジャーナル部J2のトータルのy軸方向の遠心荷重もゼロになり、第1ジャーナル部J1および第2ジャーナル部J2にはy軸方向の遠心荷重が発生しないことが分かる。
図10の表の右欄には、♯1ユニット〜♯6ユニットの遠心力Fにより第1ジャーナル部J1および第2ジャーナル部J2に作用するx軸方向の遠心荷重が示される。この場合も、♯1ユニット〜♯6ユニットの遠心力Fにより第1ジャーナル部J1および第2ジャーナル部J2に作用するx軸方向の遠心荷重を足し合わせるとゼロになり、第1ジャーナル部J1および第2ジャーナル部J2にはx軸方向の遠心荷重が発生しないことが分かる。
このとき、隣接する♯1ユニットおよび♯2ユニット間の距離と、隣接する♯3ユニットおよび♯4ユニット間の距離と、隣接する♯5ユニットおよび♯6ユニット間の距離とがaに一致していさえすれば、その他の距離b,c,d,eとは無関係に、第1ジャーナル部J1および第2ジャーナル部J2の遠心荷重をゼロにすることができる。
図11は、図9の実施の形態に対応する比較例を示すものであり、この比較例では、入力軸11の第1ジャーナル部J1の左側に位置する♯1ユニットおよび♯2ユニットの偏心ディスク18の偏心方向の位相が相互に120゜ずれている。また入力軸11の第1ジャーナル部J1および第2ジャーナル部J2間に位置する♯3ユニットおよび♯4ユニットの偏心ディスク18の偏心方向の位相が相互に60゜ずれている。また入力軸11の第2ジャーナル部J2の右側に位置する♯5ユニットおよび♯6ユニットは、偏心ディスク18の偏心方向の位相が相互に120゜ずれている。
図12は、図10の実施の形態に対応する比較例を示すものであり、この表から明らかなように、比較例では、第1ジャーナル部J1のy軸方向のトータルの遠心荷重はゼロにならずに(F/2L)・(−b−a−c+2d+2e)となり、第2ジャーナル部J2のy軸方向のトータルの遠心荷重はゼロにならずに(F/2L)・(a+2b−2d−2e)となり、第1ジャーナル部J1のx軸方向のトータルの遠心荷重はゼロにならずに(√3/2L)・F・(−a+b+c)となり、第2ジャーナル部J2のx軸方向のトータルの遠心荷重はゼロにならずに(√3/2L)・F・(a−2b)となる。
仮に、b=c=d=e=aとしても、第1ジャーナル部J1のy軸方向のトータルの遠心荷重はゼロにならずに(a/2L)・Fとなり、第2ジャーナル部J2のy軸方向のトータルの遠心荷重はゼロにならずに−(a/2L)・Fとなり、第1ジャーナル部J1のx軸方向のトータルの遠心荷重はゼロにならずに(√3a/2L)・Fとなり、第2ジャーナル部J2のx軸方向のトータルの遠心荷重はゼロにならずに−(√3a/2L)・Fとなる。
以上のように、本実施の形態によれば、♯1ユニットおよび♯2ユニットの偏心ディスク18の偏心方向の位相を180゜ずらし、♯3ユニットおよび♯4ユニットの偏心ディスク18の偏心方向の位相を180゜ずらし、♯5ユニットおよび♯6ユニットの偏心ディスク18の偏心方向の位相を180゜ずらすとともに、♯1ユニットおよび♯2ユニット間の距離と、♯3ユニットおよび♯4ユニット間の距離と、♯5ユニットおよび♯6ユニット間の距離とを等しく設定することで(図9参照)、第1ジャーナル部J1および第2ジャーナル部J2に作用する遠心荷重をゼロにし、カウンタウエイトを設けることなく振動や騒音の発生を防止することができる。
尚、出力軸12も、♯2ユニットおよび♯3ユニット間の第1ジャーナル部J1′をベアリング28′で支持し、♯4ユニットおよび♯5ユニット間の第2ジャーナル部J2′をベアリング29′で支持したので(図7参照)、上述した入力軸11の作用効果と同様の作用効果を達成することができる。
また第2ジャーナル部J2,J2′は、入力軸11あるいは出力軸12の右端ではなく、そこから♯5ユニットおよび♯6ユニットを挟んだ位置に配置されているため、入力軸11あるいは出力軸12の右端が撓んで径方向に変位する可能性があるが、入力軸11の右端とエンジンEとがスプライン26で結合され、出力軸12の右端とディファレンシャルギヤDとがスプライン27で結合されるため(図7参照)、スプライン26,27で径方向の変位を吸収して動力伝達を支障なく行うことができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、本発明の伝達ユニットの数は実施の形態の6個に限定されず、3個以上であれば良い。
また実施の形態では本発明を入力軸11および出力軸12の両方に適用しているが、入力軸11および出力軸12の何れか一方だけに適用しても良い。
また本発明の駆動源は実施の形態のエンジンEに限定されず、電動モータ等の他の駆動源であっても良い。
また本発明の伝達ユニットは必ずしも変速機能を有する必要はなく、駆動力の伝達機能を有するものであれば良い。
11 入力軸
12 出力軸
18 偏心ディスク(入力側支点)
19 コネクティングロッド
19c ピン(出力側支点)
21 ワンウェイクラッチ
22 揺動リンク(アウター部材)
28 ベアリング
28′ ベアリング
29 ベアリング
29′ ベアリング
E エンジン(駆動源)
J1 第1ジャーナル部(ジャーナル部)
J2 第2ジャーナル部(ジャーナル部)
J1′ 第1ジャーナル部(ジャーナル部)
J2′ 第2ジャーナル部(ジャーナル部)
U 伝達ユニット

Claims (3)

  1. 駆動源(E)に接続された入力軸(11)の回転を出力軸(12)に伝達する少なくとも3個の伝達ユニット(U)を前記入力軸(11)および前記出力軸(12)間に軸方向に並置し、
    前記伝達ユニット(U)の各々は、
    前記入力軸(11)と共に偏心回転する入力側支点(18)と、
    前記出力軸(12)に接続されたワンウェイクラッチ(21)と、
    前記ワンウェイクラッチ(21)のアウター部材(22)に設けられた出力側支点(19c)と、
    前記入力側支点(18)および前記出力側支点(19c)に両端を接続されて往復運動するコネクティングロッド(19)とを備える車両用動力伝達装置であって、
    前記入力軸(11)および前記出力軸(12)の少なくとも一方の軸は、2個のベアリング(28,29,28′,29′)により回転自在に支持される2個のジャーナル部(J1,J2,J1′,J2′)を備え、一方の前記ジャーナル部(J1,J1′)は最も軸方向一端側に位置する前記伝達ユニット(U)よりも軸方向他端側に配置され、他方の前記ジャーナル部(J2,J2′)は最も軸方向他端側に位置する前記伝達ユニット(U)よりも軸方向一端側に配置されることを特徴とする車両用動力伝達装置。
  2. 6個の前記伝達ユニット(U)を備え、前記一方のジャーナル部(J1,J1′)は軸方向一端側から2番目および3番目の前記伝達ユニット(U)間に配置され、前記他方のジャーナル部(J2,J2′)は軸方向一端側から4番目および5番目の前記伝達ユニット(U)間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の車両用動力伝達装置。
  3. 軸方向一端側から1番目および2番目の前記伝達ユニット(U)間の間隔と、軸方向一端側から3番目および4番目の前記伝達ユニット(U)間の間隔と、軸方向一端側から5番目および6番目の前記伝達ユニット(U)間の間隔とは等しく設定され、6個の前記伝達ユニット(U)の前記入力側支点(18)の偏心方向の位相は、軸方向一端側の前記伝達ユニット(U)から軸方向他端側の前記伝達ユニット(U)に向けて、周方向一方側に180°、60°、180°、60°、180°ずつずれていることを特徴とする、請求項2に記載の車両用動力伝達装置。
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