JP6028248B1 - 過冷却水を用いた製氷システム及び過冷却水を用いた製氷方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このように、製氷システムはコストメリットを得ることを目的としている。また、電力需要のピーク(昼間)とベース(夜間)を均一にすることで電力平準化にも貢献できるシステムである。
このため、製氷システムは、蓄熱槽から取水された冷水を例えば温度0.5[℃]まで加熱して冷水中の氷核を融解させるとともに、加熱された冷水を氷核除去フィルタに通して加熱で残った氷核を物理的に除去している(例えば、特許文献1参照)。
このため、冷水の加熱後の温度を0.4[℃]や0.3[℃]に低く抑えたり、併せて氷核除去フィルタの性能を向上させたりすることで、製氷システムの効率を向上させる試みがなされている。
また、加熱後の温度を低く抑えただけでは、過冷却水を安定して生成することができず、性能を向上させた氷核除去フィルタを用いたものではコストが高くなるという問題がある。
すなわち、過冷却水から生成された直後の氷核(生成初期の氷核)は、平べったい2次元状の形状で、雪の結晶と同様、外方に向けて樹枝状に枝が伸びるように尖った形状となっている。
本発明は、上述した氷核の生成状況に関する知見に基づいてなされたものであり、コストを抑制しつつ、効率を向上させることができる過冷却水を用いた製氷システム及び過冷却水を用いた製氷方法を提供することを目的とする。
図1は、本発明の一実施形態である過冷却水を用いた製氷システム100を示すブロック図である。
図示の過冷却水を用いた製氷システム100は、昼間に比べて料金が安い夜間(例えば、午後10時から翌朝午前8時までの10[時間])の電力を利用して、この10[時間]の稼働により氷蓄熱水槽10に氷を生成するものである。
製氷システム100は、氷蓄熱水槽10(蓄熱槽の一例)、過冷却器20(過冷却装置の一例)、製氷器30(製氷装置の一例)、氷核融解熱交換器40(氷核融解装置の一例)、氷核除去フィルタ50、ブライン冷凍機60及び冷却塔70を備えている。
製氷系統91には、取水装置91a、製氷ポンプ91b、温度センサ91c,91f,91g、流量計91e及び製氷ノズル91hが設けられている。
氷蓄熱水槽10には、この製氷システム100が稼働を開始する前は、温度約4[℃]程度の水が溜められていて、製氷システム100が稼働を開始した後は、氷蓄熱水槽10の上部に配置されている製氷ノズル91hを通じて氷が流入する。
製氷ノズル91hは、製氷器30により製氷されたシャーベット状の氷を供給する。氷は、氷蓄熱水槽10の上部に溜められ、稼働時間の経過とともに溜められた氷の量が増加するにしたがって、底部に向かって徐々に押し下げられる。
氷核除去フィルタ50は、内部にメッシュ状のフィルタを備えていて、通過する冷水に含まれた氷核をろ過により除去する。
過冷却器20は、ブライン系統92を流れるブラインとの熱交換により、氷核除去フィルタ50から送出された冷水から、例えば温度約−2[℃]の過冷却水を生成する。
製氷器30は、過冷却器20で生成された過冷却水から、温度約0[℃]のシャーベット状の氷を生成して製氷ノズル91hに送出する。
加熱系統94には、氷核融解ポンプ91dが設けられている。
氷核融解ポンプ91dは、製氷系統91を流れる冷水を分岐させて加熱系統94に引き込み、加熱系統94での冷水の流れを制御し、氷蓄熱水槽10から取水された温度約0[℃]の冷水の一部を、氷核融解熱交換器40に向けて送出する。
氷核融解熱交換器40は、冷水と冷却水系統93を流れる冷却水との熱交換により、冷水を例えば温度約0.5[℃]まで加熱して冷水に混じった氷核を融解し、加熱された冷水を製氷系統91に戻す。
氷核融解熱交換器40による加熱を停止する制御は、氷核融解ポンプ91dを停止する制御及び後述する冷却水系統93における氷核融解熱交換器40に接続された制御弁93bの制御(流量をゼロにする制御)も併せて行う。
つまり、この製氷システム100は、前述したように10[時間]稼働するものであるため、予め設定された時間(本実施形態では7[時間])は、製氷システム100が稼働を開始してから稼働を終了するまでの時間として定められた稼働時間(本実施形態では10[時間])の半分以上が経過した時間であり、氷核融解熱交換器40が稼働するのは、停止している時間を除いた3[時間]のみである。
ブライン系統92には、ブラインポンプ92a、制御弁92b及び切換え弁92cが設けられている。
ブラインポンプ92aは、ブライン系統92でのブラインの流れを制御し、ブライン冷凍機60で冷却された、例えば温度約−3.2[℃]のブラインを過冷却器20に向けて送出する。過冷却器20では、ブラインと冷水との熱交換により、ブラインは、例えば温度約−1.2[℃]まで温められて、ブライン冷凍機60に戻される。ブライン冷凍機60で冷やされたブラインを過冷却器20に流すか又は止めるかは切換え弁92cにより制御され、過冷却器20に流す流量は制御弁92bにより制御される。
冷却水系統93には、冷却水ポンプ93a及び制御弁93b,93cが設けられている。
冷却水ポンプ93a及び制御弁93b,93cは、冷却水系統93での冷却水の流れを制御し、冷却塔70で冷却された、例えば温度約30[℃]の冷却水をブライン冷凍機60及び氷核融解熱交換器40に向けて送出する。ブライン冷凍機60では、冷却水とブラインとの熱交換により、冷却水は温められて冷却塔70に戻される。氷核融解熱交換器40では、冷却水と冷水との熱交換により、冷却水は温められて冷却塔70に戻される。
図2は、本実施形態の製氷システム100が稼働し始めてから稼働が終了するまでの10[時間]における、
(a)製氷ポンプ91bの直後の冷水の温度(温度センサ91cで検出された温度:取水温度)
(b)過冷却器20の入口での冷水の温度(温度センサ91fで検出された温度:過冷却器入口温度)
(c)過冷却器20の出口での冷水の温度(温度センサ91gで検出された温度:過冷却器出口温度=過冷却水の温度)
(d)過冷却器20のブライン入口側でのブラインの温度(ブライン入口温度)
(e)過冷却器20のブライン出口側でのブラインの温度(ブライン出口温度)
(f)製氷器30で製氷されたシャーベット状の氷の流量(流量計91eで検出された流量:製氷流量)
(g)氷蓄熱水槽10内の氷充填率(IPF(Ice Packing Factor)
を、稼働からの経過時間(0〜10[時間])を横軸にしてそれぞれ示したグラフである。
TTANK:製氷システムの稼働開始時の氷蓄熱水槽の温度[℃]
TMAX :氷蓄熱水槽の利用限界温度[℃]
VTANK:氷蓄熱水槽の保有水量[m3]
TE(91c):温度センサ91cによる検出温度[℃]
TE(91g):温度センサ91gによる検出温度[℃]
FE(91e):流量計91eによる検出流量[m3/h]
なお、このグラフは、製氷システム100が稼働を開始した時点(経過時間0[時間]のとき)において氷蓄熱水槽10に残氷はないものとし、氷核除去フィルタ50におけるフィルタの本数は3[本]で、フィルタ1[本]当たりの冷水の通過流量は40[L(リットル)]であり、稼働を開始してから10[時間]経過した時点(稼働の終了時点)で、氷蓄熱水槽10が満蓄状態になるものとする。
そして、過冷却器入口温度(b)も取水温度(a)と略同じ温度0[℃]強に到達する。
先行技術の製氷システムでは、図3に示すように、稼働を開始してから1[時間]強経過した時点(取水温度(a)が0[℃]に到達する以前)に、氷核融解熱交換器による加熱が開始される。氷核融解熱交換器は、過冷却器入口温度(b)が0.5[℃]となるように、取水された冷水を加熱する。
この結果、加熱された冷水に混じった氷核は熱により融解し、また、熱で融解しきれなかった氷核も、氷核除去フィルタで除去されることで、過冷却器には氷核が流入せず、過冷却器は、過冷却水を安定して生成する。
そして、製氷システム100が稼働を開始してから7[時間]経過後に、氷核融解熱交換器40は、冷却水と冷水との熱交換を開始して、取水された冷水を加熱する。氷核融解熱交換器40による加熱は、過冷却器入口温度(b)が0.5[℃]となるように行われる。
このように、本実施形態の製氷システム100(製氷方法)は、氷核融解熱交換器40が冷水の加熱を行うのが、取水温度(a)が氷核融解熱交換器40による加熱で到達されるべき温度(0.5[℃])よりも低くなってからであるため、取水温度(a)が氷核融解熱交換器40による加熱で到達されるべき温度(0.5[℃])よりも低くなる前から加熱を行う先行技術の製氷システムに対して、氷核融解熱交換器40による加熱時間を短縮することができる。
しかも、本実施形態の過冷却水を用いた製氷システム100(製氷方法)は、氷核融解熱交換器40が冷水の加熱を行うのが、製氷システム100の予め定められた稼働時間(10[時間])の半分以上が経過した7[時間]経過後からであるため、氷核融解熱交換器40による加熱時間を、先行技術に対して大幅に短縮する(9[時間]→3[時間])ことができる。
本実施形態の過冷却水を用いた製氷システム100は、本発明者らの研究により初めて得られた知見に基づいてなされたものである。すなわち、過冷却水から生成された直後の氷核(生成初期の氷核)は、平べったい2次元状の形状で、雪の結晶のように外方に向けて樹枝状の枝が伸びるように尖った形状となっていることが判明した。そして、その氷核は、時間の経過とともに、他の樹枝状の氷核と、氷核の枝先(尖った部分)同士が接触して焼結することにより分子的に結合する。結合した氷核は、表面積を減らして安定した形になろうとするため、尖った部分が減って、全体として球状(3次元状)に変態することが判明した。
一方、氷蓄熱水槽10で生成された氷核は時間が経過すると、立体的な球状の塊となるため、冷水の流れによっても溶けにくくなる。しかも、球状の氷核は尖った部分が減っていくため、氷核除去フィルタ50を通過し易くなる。この結果、製氷系統91を流れる冷水に混じった氷核は過冷却器20に到達し易くなる。
このように、比較例の製氷システムは、稼働の開始から7[時間]経過した後は冷水に混じった氷核が立体的な球状に成長している。したがって、この立体的な球状の氷核が過冷却器20に到達することで、過冷却器20の内部で凍結が起こる。
すなわち、氷充填率は、稼働開始からの経過時間が同じであっても、氷蓄熱水槽10の形状や冷水の水位等に応じて異なった値となる。
ここで、図2に示した本実施形態の製氷システム100は、稼働を開始してからの経過時間が7[時間]を経過したときに、氷核融解熱交換器40による冷水の加熱を開始するが、このときの氷充填率(g)は25[%]強である。
なお、本実施形態の製氷システム100(製氷方法)は、氷蓄熱水槽10が満蓄状態になるまでの稼働時間が10[時間]であるものとしたが、本発明に係る過冷却水を用いた製氷システムはこの形態に限定されるものではない。
また、本実施形態の製氷システム(製氷方法)は、氷核融解熱交換器40が過熱を開始する、氷充填率の予め設定された値を25[%]としたが、この値は例示であり、20[%]から24[%]までの範囲の値であってもよい。
20 過冷却器(過冷却装置)
30 製氷器(製氷装置)
40 氷核融解熱交換器(氷核融解装置)
50 氷核除去フィルタ
60 ブライン冷凍機
70 冷却塔
91 製氷系統
91a 取水装置
91d 氷核融解ポンプ
91h 製氷ノズル
92 ブライン系統
93 冷却水系統
94 加熱系統
100 製氷システム
Claims (4)
- 取水される冷水及び流入する氷が溜められる蓄熱槽と、
前記冷水を加熱して前記冷水に混じった氷核を融解する氷核融解装置と、
加熱された前記冷水から過冷却水を生成する過冷却装置と、
前記過冷却水から前記氷を生成する製氷装置と、を備え、
前記氷核融解装置は、前記氷核融解装置による加熱で到達されるべき温度よりも低い温度の冷水に対して、前記過冷却装置及び前記製氷装置が稼働を開始してから予め設定された時間が経過する前は、前記冷水の加熱を停止するように制御され、
前記氷核融解装置は、前記過冷却装置及び前記製氷装置が稼働を開始してから予め設定された時間が経過する前に、前記蓄熱槽の氷充填率が予め設定された値を上回ったときは、前記氷核融解装置による加熱で到達されるべき温度よりも低い温度の冷水に対して、加熱を開始するように制御されている過冷却水を用いた製氷システム。 - 前記予め設定された時間は、前記過冷却装置及び前記製氷装置が稼働を開始してから稼働を終了するまでの時間として定められた稼働時間の半分以上が経過した時間である請求項1に記載の過冷却水を用いた製氷システム。
- 取水される冷水及び流入する氷が溜められる蓄熱槽から前記冷水を取水し、
前記冷水を加熱して前記冷水に混じった氷核を融解し、
加熱された前記冷水から過冷却水を生成するに際して、
前記冷水の加熱で到達されるべき温度よりも低い温度の冷水に対して、前記過冷却水の生成を開始してから予め設定された時間が経過する前は加熱を停止し、
前記過冷却水の生成を開始してから予め設定された時間が経過する前に、前記蓄熱槽の氷充填率が予め設定された値を上回ったときは、前記冷却水の加熱で到達されるべき温度よりも低い温度の冷水に対して、加熱を開始する過冷却水を用いた製氷方法。 - 前記予め設定された時間は、前記過冷却水に生成を開始してから終了するまでの時間として定められた稼働時間の半分以上が経過した時間である請求項3に記載の過冷却水を用いた製氷方法。
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