JP6025602B2 - 路盤材用スラグの製造方法 - Google Patents
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Description
例えば特許文献1〜特許文献4には、スラグの塩基度を低くすることにより、Pbの溶出量を抑制する技術が開示されている。つまり、CaOなどを含むスラグが水和するとスラグの表面にCa(OH)2などが形成され、形成されたCa(OH)2の作用でスラグの表面が強アルカリ性の環境になり、強アルカリ性の領域で可溶となるPbの溶出が促進される。それゆえ、特許文献1〜4では、スラグの組成を調整したり加熱するなどしてスラグの塩基度を低くし、溶出液pHを制御することでPbの溶出を抑制している。
加えて、特許文献1〜特許文献7の技術は、いずれも難水和膨張性に改質するためにスラグの組成を調整する工程やスラグを加熱する工程などを別途設けなくてはならず、路盤材用スラグの製造コストが高騰しやすいという問題もある。
即ち、本発明の路盤材用スラグの製造方法は、脱炭処理に先立って行われる予備処理工程で、Pbを含むダストを鉄源として利用するに際して、Pbを充分に揮発させ、吹錬後に排滓された当該工程で発生するスラグを路盤材用スラグとして再利用するものである。
が高濃度で含まれたスラグからのPb溶出量を土壌環境基準内に確実に抑えることができる。
図1(a)及び図1(b)は、路盤材用スラグを製造する際に行われる精錬方法の一連の流れを例示するものである。精錬方法には、製造所のレイアウトや製造しようとする鋼種などに合わせてさまざまなやり方があるが、大別すると予備処理炉1を用いて行われる予備処理工程(図1(a))と、予備処理工程後に転炉2を用いて行われる脱炭工程(図1(b))とに分けられる。
また、脱炭処理は、予備処理工程が終了した溶銑4から炭素を取り除くものであり、転炉2に装入された溶銑4に対して吹錬を行うことで実施される。そして、本発明の路盤材用スラグは、精錬工程の中でも、予備処理工程で発生するスラグ、言い換えれば予備処理炉より払い出された製鋼スラグをエージング、粉砕することで製造される。
図2に示すように、予備処理炉1は耐火材などが内張りされた容器であり、内部に溶銑3を貯留できるようになっている。この予備処理炉1には、トピードカーのように車載可能な横長の容器もあるが、図例のように縦長の有底円筒状の容器を用いる場合もある。図例の予備処理炉1(脱りん炉)は、縦長の有底円筒状の容器であって、その上部に上方に向かって開口する炉口5を有しており、この炉口5には炉内に装入された溶銑3へ酸素を吹き込む上吹ランス6が挿入可能となっている。また、炉口5からは、スラグの生成を促進する造滓剤が投入可能となっている。さらに、予備処理炉1の炉壁には、炉体の傾動により精錬後の溶銑を出銑できるように出銑口7が形成されている。そして、炉口5の上方には、図示は省略するが、炉内から発生するダストやガスを排気する集塵機が備えられている。
図1(b)に示すように、脱炭処理に用いられる転炉2は、予備処理炉1同様に上方に向かって開口する炉口8から上吹ランス9を挿入可能となっており、酸素ガスを吹錬しつつ脱炭処理できるようになっている。
理後に予備処理炉1から排滓されるスラグを路盤材用スラグとして再利用する場合には、スラグ中に含有されたPbが溶出して環告46号に規定される土壌環境基準値を超えるという問題が起こりえる。
というのも、Pbは、高温酸化雰囲気に晒されると酸化鉛(PbO)となる可能性がある。この酸化鉛は沸点が1470℃であるため、精錬温度が沸点を上回る脱炭処理などでは酸化鉛は殆どが揮発してしまい、スラグ中に残留することはない。しかし、精錬温度が低い脱りん処理などの予備処理では、精錬温度がPbOの沸点を下回ることがあり、Pbの存在状態によってはPbの揮発が十分に行われない虞がある。
特に、近年は多量の鉄分を含むダストを鉄源としてリサイクルしたいというニーズがあるが、このようなダストには揮発した鉛が高濃度で含有されていることが多く、ダストを予備処理の鉄源に再利用する場合、ダスト中のPbを揮発し、ダストに再濃縮することができなければ、スラグ中のPb濃度が高くなる虞があり、Pb溶出量を環境基準値以下とするには、従来技術に記載されているような塩基度調整などのPb不溶化処理が必要となることがある。
すなわち、予備処理工程において、予備処理炉1に投入されるPb投入量をY、予備処理中に揮発するPbの割合をPb揮発率α、とした場合にスラグ中に残留するPb残留量Xは次の式(2)のように示される。
例えば、高炉などから出銑された溶銑3、溶銑中に鉄源として加えられるダスト10やスクラップなどのPb源に含まれるPbの濃度は予め分かっているか、分かっていなくても分析などで求めることができる。それゆえ、各Pb源のそれぞれの投入量をYi、Pb濃度を[%Pb]iとすると、Pb投入量Yは以下の式(3)に従って算出することができる。
図3(a)の3min(図中の丸印)、5min(図中の三角印)、15min(図中の四角印)の各結果に着目すると、酸素濃度CO2が0vol%→10vol%→20vol%と変化するのに対して、例えば5minの場合はPb揮発率が100mass%(Pbのすべてが完全に揮発することはなく、スラグに多少は残るため、厳密には99.9mass%)→67.6mass%→42.4mass%と、また15minの場合はPb揮発率が100mass%(厳密には99.9mass%)→85.0mass%→67.2mass%と減少し、上述したPb揮発率αは予備処理炉1内の酸素濃度CO2が増加した場合に一定の変化率で減少するような関係を備えていることがわかる。
上述した炉内の酸素濃度CO2としては、炉外で計測された酸素濃度の計測値C'O2を用いて算出された計算値が用いられる。
具体的には、予備処理炉1の炉上には上述したように集塵機が設けられており、炉内から排出される排ガスを吸い込んで、炉外に排出している。この集塵機は、予備処理炉1の炉口5の上方に距離をあけて配備されており、炉内の排ガスを吸い込むと共に炉口5と集塵機との間から炉外の大気をも吸い込んでいる。つまり、集塵機に酸素濃度を計測可能なセンサを設けて酸素濃度を計測しても、計測値には余分に吸い込まれた大気の分が含まれている。
このようにして炉内の酸素濃度CO2が求められたら、次に係数aがわかれば式(4)からPb揮発率αを求めることができる。
例えば、図3(a)〜図4(b)から求められる熱履歴毎の傾きaを、吹錬時間tの1次関数と考えて、溶銑温度T[℃]毎に分けてプロットすると、図5に示すようになる。
図5に示すように、吹錬時間tが短い3minを除けば、1次関数の傾きaはほぼ一定の値(定数)となっており、Pb揮発率αを吹錬時間tの関数と考えても良いことがわかる。
また、上述した吹錬時間tは、Pb源であるダスト、スクラップ、溶銑などの投入から吹錬終了までの時間を意味する。例えば、吹錬前に副原料などと共にPb源を投入した場合は、吹錬が開始されていなくても副原料の投入から吹錬終了までの時間を吹錬時間tとするとよい。
のスラグには酸化鉄や酸化マグネシウムなども含まれるため、実際に計測されるスラグ量は式(10)で定義されるものより多い。なお、スラグ量を実際の数値より小さく見積もっても、Pbの溶出をより厳格に抑制することになるので、スラグ量を式(10)のように定義しても実質的に問題とはならない。
上述した式(1)の関係が成立するように予備処理を行えば、Pbは揮発し、予備処理後に得られるスラグから排出されるPb溶出量を環境基準値以下に抑えることが可能となる。また、本発明の路盤材用スラグの製造方法であれば、スラグを加熱したり成分調整したりする手間が不溶となるため、製造コストを高騰させることもない。
実施例1〜実施例14、及び比較例1〜比較例13は、炉内の酸素濃度CO2を0.01vol%〜0.8vol%、溶銑温度Tを1200℃〜1430℃、吹錬時間tを1min〜20minの範囲で変化させて予備処理を行った際に、予備処理後に排滓されたスラグに対して上述した式(12)に従って求められたPb溶出量SPbと、実際にスラグから溶出したPb溶出量の計測値とを比較したものである。
2 転炉
3 予備処理炉の溶銑
4 転炉の溶銑
5 予備処理炉の炉口
6 予備処理炉の上吹ランス
7 予備処理炉の出銑口
8 転炉の炉口
9 転炉の上吹ランス
10 ダスト
Claims (1)
- 脱炭処理に先立って行われる予備処理工程において排滓されるスラグを路盤材用スラグとして再利用するに際しては、
前記予備処理工程において、Fe分及びPb分を含むダストを投入し、
以下の式(1)の関係を満足する精錬条件に従って吹錬を行い、吹錬後に排滓されたスラグを路盤材用スラグとして再利用することを特徴とする路盤材用スラグの製造方法。
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