以下、本発明の一実施形態を図1〜図26に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係るRFIDシステム10の概略構成が示されている。
このRFIDシステム10は、パッシブ型タグを用いたRFIDシステムであり、UHF帯(860MHz〜960MHz)に対応している。
ここでは、RFIDシステム10は、工業製品Mを組み立てる組み立てラインで用いられている。該組み立てラインは、搬送系T、及び1次〜5次の組み立てがそれぞれ行われる5つのステーション(ST1〜ST5)を有している。
以下では、便宜上、ステーションST1で組み立てられたものを「組み立て品M1」、ステーションST2で組み立てられたものを「組み立て品M2」、ステーションST3で組み立てられたものを「組み立て品M3」、ステーションST4で組み立てられたものを「組み立て品M4」、ステーションST5で組み立てられたものを「組み立て品M5」という。
RFIDシステム10は、制御装置100、9つのRW装置(200a〜200i)、複数のRFIDタグ(「RFIDタグ500」という)、及びデータ伝送路などを有している。
複数のRFIDタグは、同じ構成のRFIDタグであるが、それぞれユニークなID番号が格納されている。ここでは、複数のRFIDタグを区別する必要がないため、以下では、各RFIDタグを「RFIDタグ500」と総称する。なお、RFIDタグ500の詳細については、後述する。
RFIDタグ500は、ステーションST1において、組み立て品M1の金属板Pに取り付けられる。該金属板Pには、一例として図2に示されるように、長さLy、幅LxのスリットSLT、及びRFIDタグ500を取り付けるための2つのネジ穴が予め形成されている。
スリットSLTの長さ(長手方向の寸法)Lyは、RFIDシステム10で使用される電波の波長λの1/2倍の長さのときに、該電波を受けた際にスリットSLTのX軸方向の両端間に生じる電圧が最大となる。例えば、波長λが950MHzの場合は、Ly=160mmである。
スリットSLTの幅(短手方向の寸法)Lxは、アンテナとしての所望の利得(良いアンテナ性能)を得ることができる周波数の幅に関係している。すなわち、幅Lxを狭くしていくと、前記周波数の幅が狭くなる。反対に、幅Lxを広くしていくと、前記周波数の幅が広くなる。但し、幅Lxを広くしていくと、インピーダンスも大きくなり、アンテナの効率が低下する。
一般的に、スリットSLTは、金型を用いた打ち抜き加工によって形成され、必要に応じて2次加工により整形される。この場合、幅Lxがあまりに狭いと、所望の幅を所定の精度で得るのが困難になる。そこで、レーザ加工によってスリットSLTを形成することが考えられるが、高コスト化を招く。また、幅Lxがあまりに狭いと、スリットSLTに金属片などの異物が引っかかり、アンテナ性能を劣化させるおそれがある。そこで、波長λが950MHzの場合は、幅Lxを2〜3mmとしている。なお、本実施形態では、波長λが950MHzの場合は、Ly=160mm、Lx=2mmのスリットが形成される。
本明細書では、XYZ3次元直交座標系において、スリットSLTの長さ方向(長手方向)をY軸方向、スリットSLTの幅方向(短手方向)をX軸方向として説明する。そこで、金属板Pの表面に直交する方向は、Z軸方向となる。
前記2つのネジ穴は、一方がスリットSLTの−X側に形成され、他方がスリットSLTの+X側に形成されている。また、該2つのネジ穴は、Y軸方向に関しては、同じ位置に形成されている。
ところで、金属板Pは、工業製品Mの筐体であっても良いし、工業製品Mの内部で使用される金属板であっても良い。
金属板PにRFIDタグ500が取り付けられた状態が図3に示されている。なお、Y軸方向に関する取り付け位置は、インピーダンスマッチングがとれる位置であり、スリットSLTの中心からずれている。
図1に戻り、RW装置200aは、ステーションST1の出口近傍に配置されている。RW装置200bは、ステーションST2の入口近傍に配置され、RW装置200cは、ステーションST2の出口近傍に配置されている。
RW装置200dは、ステーションST3の入口近傍に配置され、RW装置200eは、ステーションST3の出口近傍に配置されている。
RW装置200fは、ステーションST4の入口近傍に配置され、RW装置200gは、ステーションST4の出口近傍に配置されている。
RW装置200hは、ステーションST5の入口近傍に配置され、RW装置200iは、ステーションST5の出口近傍に配置されている。
各RW装置は、それぞれユニークな装置番号を有している。なお、以下では、各RW装置の装置番号を、「自装置番号」という。
各RW装置は、RFIDタグ500からID番号を読み取ると、その読み取り日時及び自装置番号とともに、「検知情報」としてデータ伝送路を介して制御装置100に通知する。なお、以下では、読み取り日時を「検知日時」という。
また、各RW装置は、検知日時及び自装置番号を「履歴情報」として該RFIDタグ500に書き込む。
すなわち、各RW装置は、RFIDタグ500のリーダライタ装置である。RW装置とRFIDタグ500とが交信できる空間領域は「有効通信エリア」とも呼ばれている。
制御装置100は、CPU、ROM、RAM、ハードディスク装置、入力装置、及び表示装置などを有している。
ハードディスク装置は、情報が記録されるハードディスク、CPUからの指示に応じて該ハードディスクに対して読み書きを行う駆動装置を有している。
入力装置は、例えばキーボード、マウス、タブレット、ライトペン及びタッチパネルなどのうち少なくとも1つの入力媒体を備え、該入力媒体を介して作業者から入力された各種情報をCPUに通知する。なお、入力媒体からの情報はワイヤレス方式で入力されても良い。
表示装置は、例えばCRT、液晶ディスプレイ(LCD)及びプラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)などを用いた表示部を備え、CPUから指示された各種情報を表示する。表示装置と入力装置とが一体化されたものとして、例えばタッチパネル付きLCDなどがある。
ROMは、CPUにて解読可能なコードで記述された複数のプログラム及びプログラムの実行に用いられる複数のデータ等が格納されているメモリである。RAMは、作業用のメモリである。
各RW装置から通知があると、割り込みが発生するように設定されている。
制御装置100として、パーソナルコンピュータを用いることができる。
制御装置100は、上位装置(例えば、ホストコンピュータ)と接続されており、要求に応じて、各種情報を上位装置に伝送する。
ここで、RFIDシステム10の動作について説明する。なお、各RW装置は、所定のタイミング毎にコマンド信号を送出しており、該コマンド信号に対してRFIDタグ500から応答があると、該RFIDタグ500との通信モードに移行する。
先ず、ステーションST1で1次組み立てが行われる。ステーションST1での組み立てが完了すると、組み立て品M1は搬送系TによってステーションST2に向かって送出される。
図4に示されるように、組み立て品M1のRFIDタグ500がRW装置200aの有効通信エリア内に入ると、該RFIDタグ500は、ID番号を含む信号を送信する。
RW装置200aは、RFIDタグ500からの信号を受信すると、該信号に含まれるID番号を抽出し、検知情報(図5参照)を制御装置100に通知するとともに、履歴情報をRFIDタグ500に書き込む。
制御装置100は、受け取った情報をハードディスクに記録するとともに、表示装置の表示部に状況を表示する(図6参照)。これにより、ID番号が「21584486」の工業製品Mは、1次組み立てを終了したことがわかる。
なお、ステーションST1では、引き続き次の工業製品Mの一次組み立てが行われるが、煩雑さを避けるため、ステーションST1では、次の工業製品Mの一次組み立ては行われないものとして説明を続ける。
組み立て品M1のRFIDタグ500がRW装置200bの有効通信エリア内に入ると、該RFIDタグ500は、ID番号を含む信号を送信する。
RW装置200bは、RFIDタグ500からの信号を受信すると、該信号に含まれるID番号を抽出し、検知情報を制御装置100に通知するとともに、履歴情報をRFIDタグ500に書き込む。このときの検知日時における時間(以下では、「検知時間」という)は、ステーションST2での組み立て開始時間を意味している。
制御装置100は、受け取った検知情報をハードディスクに記録するとともに、表示装置の表示部に状況を表示させる(図7参照)。これにより、ID番号が「21584486」の工業製品Mは、ステーションST2にあることがわかる。
ステーションST2で2次組み立てが行われる。ステーションST2での組み立てが完了すると、組み立て品M2は搬送系TによってステーションST3に向けて送出される。
組み立て品M2のRFIDタグ500がRW装置200cの有効通信エリア内に入ると、該RFIDタグ500は、ID番号を含む信号を送信する。
RW装置200cは、RFIDタグ500からの信号を受信すると、該信号に含まれるID番号を抽出し、検知情報を制御装置100に通知するとともに、履歴情報をRFIDタグ500に書き込む。このときの検知時間は、ステーションST2での組み立て終了時間を意味している。そこで、RW装置200cの検知時間とRW装置200bの検知時間とから、ステーションST2での組み立て時間を求めることができる。
制御装置100は、受け取った検知情報をハードディスクに記録するとともに、表示装置の表示部に状況を表示させる(図8参照)。これにより、ID番号が「21584486」の工業製品Mは、2次組み立てを終了したことがわかる。
組み立て品M2のRFIDタグ500がRW装置200dの有効通信エリア内に入ると、該RFIDタグ500は、ID番号を含む信号を送信する。
RW装置200dは、RFIDタグ500からの信号を受信すると、該信号に含まれるID番号を抽出し、検知情報を制御装置100に通知するとともに、履歴情報をRFIDタグ500に書き込む。このときの検知時間は、ステーションST3での組み立て開始時間を意味している。
制御装置100は、受け取った検知情報をハードディスクに記録するとともに、表示装置の表示部に状況を表示させる。これにより、ID番号が「21584486」の工業製品Mは、ステーションST3にあることがわかる。
ステーションST3で3次組み立てが行われる。ステーションST3での組み立てが完了すると、組み立て品M3は搬送系TによってステーションST4に向けて送出される。
組み立て品M3のRFIDタグ500がRW装置200eの有効通信エリア内に入ると、該RFIDタグ500は、ID番号を含む信号を送信する。
RW装置200eは、RFIDタグ500からの信号を受信すると、該信号に含まれるID番号を抽出し、検知情報を制御装置100に通知するとともに、履歴情報をRFIDタグ500に書き込む。このときの検知時間は、ステーションST3での組み立て終了時間を意味している。そこで、RW装置200eの検知時間とRW装置200dの検知時間とから、ステーションST3での組み立て時間を求めることができる。
制御装置100は、受け取った検知情報をハードディスクに記録するとともに、表示装置の表示部に状況を表示させる。これにより、ID番号が「21584486」の工業製品Mは、3次組み立てを終了したことがわかる。
組み立て品M3のRFIDタグ500がRW装置200fの有効通信エリア内に入ると、該RFIDタグ500は、ID番号を含む信号を送信する。
RW装置200fは、RFIDタグ500からの信号を受信すると、該信号に含まれるID番号を抽出し、検知情報を制御装置100に通知するとともに、履歴情報をRFIDタグ500に書き込む。このときの検知時間は、ステーションST4での組み立て開始時間を意味している。
制御装置100は、受け取った検知情報をハードディスクに記録するとともに、表示装置の表示部に状況を表示させる。これにより、ID番号が「21584486」の工業製品Mは、ステーションST4にあることがわかる。
ステーションST4で4次組み立てが行われる。ステーションST4での組み立てが完了すると、組み立て品M4は搬送系TによってステーションST5に向けて送出される。
組み立て品M4のRFIDタグ500がRW装置200gの有効通信エリア内に入ると、該RFIDタグ500は、ID番号を含む信号を送信する。
RW装置200gは、RFIDタグ500からの信号を受信すると、該信号に含まれるID番号を抽出し、検知情報を制御装置100に通知するとともに、履歴情報をRFIDタグ500に書き込む。このときの検知時間は、ステーションST4での組み立て終了時間を意味している。そこで、RW装置200gの検知時間とRW装置200fの検知時間とから、ステーションST4での組み立て時間を求めることができる。
制御装置100は、受け取った検知情報をハードディスクに記録するとともに、表示装置の表示部に状況を表示させる。これにより、ID番号が「21584486」の工業製品Mは、4次組み立てを終了したことがわかる。
組み立て品M4のRFIDタグ500がRW装置200hの有効通信エリア内に入ると、該RFIDタグ500は、ID番号を含む信号を送信する。
RW装置200hは、RFIDタグ500からの信号を受信すると、該信号に含まれるID番号を抽出し、検知情報を制御装置100に通知するとともに、履歴情報をRFIDタグ500に書き込む。このときの検知時間は、ステーションST5での組み立て開始時間を意味している。
制御装置100は、受け取った検知情報をハードディスクに記録するとともに、表示装置の表示部に状況を表示させる。これにより、ID番号が「21584486」の工業製品Mは、ステーションST5にあることがわかる。
ステーションST5で5次組み立てが行われる。ステーションST5での組み立てが完了すると、組み立て品M5は搬送系Tによって次のラインに向けて送出される。
組み立て品M5のRFIDタグ500がRW装置200iの有効通信エリア内に入ると、該RFIDタグ500は、ID番号を含む信号を送信する。
RW装置200iは、RFIDタグ500からの信号を受信すると、該信号に含まれるID番号を抽出し、検知情報を制御装置100に通知するとともに、履歴情報をRFIDタグ500に書き込む。このときの検知時間は、ステーションST5での組み立て終了時間を意味している。そこで、RW装置200iの検知時間とRW装置200hの検知時間とから、ステーションST5での組み立て時間を求めることができる。
制御装置100は、受け取った検知情報をハードディスクに記録するとともに、表示装置の表示部に状況を表示させる。これにより、ID番号が「21584486」の工業製品Mは、5次組み立てを終了したことがわかる。
このように、RFIDシステム10では、工業製品Mの仕掛かり状況をリアルタイムで知ることができる。また、RFIDシステム10では、各ステーションでの組み立て時間をリアルタイムで知ることができる。
この場合、各ステーションでの組み立て時間がほぼ等しくなるような人員配置とすることにより、仕掛かり品の滞留を防止でき、工業製品Mを効率良く組み立てることが可能となる。
次に、前記RFIDタグ500の詳細について説明する。
RFIDタグ500は、一例として図9(A)及び図9(B)に示されるように、チップモジュール510及び保持部材550を有している。
チップモジュール510は、一例として図10に示されるように、ICチップ511及び2つの端子部材520を有している。
各端子部材520は、金属箔(ここでは、アルミ箔)521と、該金属箔521の両面をラミネートする樹脂フィルム522とを有している。樹脂フィルム522は、金属板Pと金属箔521との間の絶縁体としての役目と、金属箔521を汚染や破損などから保護する役目を有している。
各端子部材520の金属箔521は、一例として図11及び図12に示されるように、ICチップ511の電極512に接続されている。
保持部材550は、一例として図13(A)〜図13(D)に示されるように、ほぼ長方形のセラミック製あるいは樹脂製の板状部材である。
保持部材550には、X軸方向の両端近傍にネジが挿入される貫通孔553がそれぞれ形成されている。貫通孔553の−Z側の端部は、一例として図14(B)に示されるように、ネジの頭部が埋め込まれるように座グリ(ザグリ)加工されている。なお、図14(B)は、図14(A)のA−A断面図である。
保持部材550は、+Z側の面の中央部に、チップモジュール510が貼り付けられる平坦部551を有している。この平坦部551は、一例として図15に示されるように、周囲よりも約0.2mm突出している。
平坦部551の+Y側と−Y側には、それぞれ突起552が設けられている。突起552は、RFIDタグ500を金属板Pに取り付ける際の位置決め機能を有している。更に、突起552は、RFIDタグ500を金属板Pに取り付ける際の金属板Pのねじれ防止機能も有している。特に、タッピングネジを用いてRFIDタグ500を金属板Pに取り付ける場合に、その効果が大きい。また、突起552は、ICチップ511に物体が衝突し、ICチップ511が破損するのを保護する役目も有している。
保持部材550の−Z側の面の中央部には、品名等が印刷されたシールが貼り付けられる。
ここで、保持部材550の寸法の具体例について図16(A)〜図16(C)を用いて説明する。なお、通信に用いられる電波の波長は950MHzとする。
保持部材550のX軸方向の長さL1は55mm、Y軸方向の長さL2は20mmである。X軸方向に関する2つの貫通孔553の中心間距離L3は40mmである。平坦部551のX軸方向の長さL4は35mm、Y軸方向の長さL5は14mmである。
保持部材550のZ軸方向の長さL6は5mmである。各突起552のX軸方向の長さL7は1.8mm、Z軸方向の長さL8は2mmであり、Y軸方向の長さL9は2mmである。各突起552のX軸方向の長さL7は、スリットSLTの幅Lxよりもわずかに小さくなるように設定されている。これにより、RFIDタグ500を金属板Pに取り付ける際に、X軸方向の位置決めが容易になる。なお、各突起552のY軸方向の長さL9は、厳密に規定される値ではないが、あまり小さくすると突起552が欠けるおそれがある。
また、各貫通孔553の直径は3.5mmである。
ところで、通信可能な距離は、端子部材520における金属箔521の大きさ、及び金属板Pとの間に介在する保護膜や接着剤層などの絶縁体の厚さに関係している。すなわち、絶縁体の厚さに応じて金属箔521の大きさを調整することにより、静電結合におけるインピーダンスZを低下させ、通信可能な距離を伸ばすことができる。
インピーダンスZは、次の(1)式で示される。
Z=1/(ω・C) ……(1)
上記(1)式におけるωは角周波数であり、Cはキャパシタンスである。ωは次の(2)式で示され、Cは次の(3)式で示される。ここで、fは通信に用いられる電波の周波数、Sは金属箔521の面積、ε0は真空の誘電率、εrは絶縁体の誘電率、dは絶縁体の厚さである。
ω=2πf ……(2)
C=S・ε0・εr/d ……(3)
そこで、上記(1)式は、次の(4)式のように書き換えることができる。
Z=d/(2πf・S・ε0・εr) ……(4)
端子部材520からICチップ511に供給される電力Wは、次の(5)式で示すことができる。
W=Wa−2・V・A=Wa−2・V2/Z ……(5)
上記(5)式におけるWaは、通信の際に、スリットSLTのX軸方向の両端間に生じる起電力であり、Vは、通信の際に、スリットSLTのX軸方向の両端間に生じる電圧であり、Aは2つの端子部材520からICチップ511に供給される電流である。すなわち、ICチップ511に供給される電力は、いわゆるアンテナでの起電力から接続部分(絶縁体部分)で消費される電力を引いたものである。
ここで、所望の通信距離を得るのに必要な電力Wの最小値をWminとすると、金属箔521の面積Sは、次の(6)式の関係が満足されるように設定されれば良い。なお、Wminは、使用されるICチップの種類及び所望の通信距離が決まると、一義的に決定される値である。
Wmin≦Wa−2・V2/Z=Wa−4πf・S・ε0・εr・V2/d ……(6)
例えば、f=950MHz、絶縁体がPET(ポリエチレンテレフタレート)、d=20μm、所望の通信距離が3mの場合には、S=100mm2であれば、上記(6)式の関係を満足させることができる。
そこで、本実施形態では、樹脂フィルム522として厚さが20μmのPETフィルムを用い、一例として図17に示されるように、各金属箔521を一辺L10が10mmの略正方形としている。なお、金属板Pの表面に絶縁性の保護材が塗布あるいは積層されている場合は、該保護材の材質及び厚さに応じて、樹脂フィルム522の厚さが決定される。例えば、保護材がPETフィルムの場合、該保護材の厚さと樹脂フィルム522の厚さの合計が20μmとなる。
図18(A)〜図19(B)には、保持部材550にチップモジュール510が貼り付けられた状態が示されている。なお、図19(B)は、図19(A)のA−A断面図である。
次に、ステーションST1で、作業者が、RFIDタグ500を金属板Pに取り付けるときの取り付け方法について説明する。
(1)RFIDタグ500の長手方向が金属板PのスリットSLTの長手方向に直交するように、RFIDタグ500を持つ。
(2)RFIDタグ500の2つの突起552がスリットSLTに挿入されるように、RFIDタグ500を金属板Pに近づける(図20参照)。
(3)RFIDタグ500の2つの突起552がスリットSLTに挿入されると、保持部材550の各貫通孔が金属板Pの各ネジ穴の−Z側に位置するように、RFIDタグ500をY軸方向に沿って移動させる(図21及び図22参照)。
(4)ネジをRFIDタグ500の各貫通孔に挿入する(図23参照)。
(5)工具(ネジまわし)を用いて、各ネジをそれぞれ金属板Pのネジ穴に押し込む(図24参照)。このとき、貫通孔553の周囲部分が金属板Pに接するように各ネジをそれぞれ金属板Pのネジ穴に強く押し込む(図25参照)。これにより、各端子部材520と金属板Pの密着性を向上させることができる。なお、図25は、分かりやすくするため、RFIDタグ500の変形を誇張して示している。
直線偏波もしくは、円偏波の電波が、RW装置からスリットSLTに向けて放射されると、スリットSLTの周りに電界が発生する(図26参照)。そして、その電界はスリットSLTを挟んで、逆電圧(交流)を起こす。そこで、スリットSLTを跨ぐようにRFIDタグ500が取り付けられると、電流が流れ、RFIDタグ500のICチップ511が起動される。
RW装置とRFIDタグ500の通信距離は、3mを確保することができた。
以上説明したように、本実施形態に係るRFIDタグ500によると、チップモジュール510及び保持部材550を有している。
チップモジュール510は、ICチップ511及び2つの端子部材520を有している。各端子部材520は、両面が樹脂フィルム522でラミネートされている金属箔521を有している。そして、各端子部材520の金属箔521は、ICチップ511の電極512に接続されている。
チップモジュール510は、上記(6)式の関係が満足されるように、樹脂フィルム522の厚さd、及び金属箔521の面積Sが設定されている。
この場合は、使用条件に応じて、金属箔521の面積の最小値を知ることができるため、チップモジュール510を必要以上に大きくすることがなく、チップモジュール510の小型化及び低コスト化を図ることができる。
RFIDタグ500は、工業製品Mの一部である金属板PのスリットSLTを跨ぐように取り付けられている。そして、RFIDタグ500は、金属板Pをアンテナとして利用している。そこで、RFIDタグ500は、アンテナを備える必要がなく、小型化及び低コスト化が可能である。また、RFIDタグ500の近くに金属があっても、所望の通信距離を確保することが可能である。
そこで、RFIDタグ500は、金属対応で、通信距離の減少を招くことなく、小型化及び低コスト化を図ることができる。
また、RFIDタグ500は、金属板Pにネジ止めされているので、再利用が容易である。
また、RFIDタグ500は、金属板Pにネジ止めされているので、金属板Pの表面に油が付着している場合であっても、金属板Pに確実に取り付けることができる。
そして、本実施形態に係るRFIDシステム10によると、RFIDタグ500を含んで構成されているため、精度良く、安定して、ID番号を読み取ることができ、システムの信頼性を向上させることができる。
なお、上記実施形態において、一例として図27に示されるように、前記貫通孔553に代えて、Y軸方向を長手方向とする長穴554を設けても良い。この場合は、金属板Pに取り付ける際に、Y軸方向に関して、RFIDタグ500の取り付け位置を、長さL20(例えば、L20=10mm)の範囲内で調整することができる。具体的には、例えば、ネットワークアナライザで抵抗値を計測しながらRFIDタグ500をY軸方向に移動させ、該抵抗値が、ICチップ511について指定されている抵抗値に等しくなる位置をインピーダンスマッチングのとれる位置として探索する。そして、インピーダンスマッチングのとれる位置がみつかると、その位置でネジ止めする。これにより、最も適切な位置にRFIDタグ500を取り付けることができる。
また、上記実施形態では、RFIDタグ500が金属板Pにネジ止めされる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、再利用する必要がない場合には、RFIDタグ500を金属板Pに接着しても良い。
また、上記実施形態では、金属箔521の形状が略正方形の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、要するに、面積Sが100mm2であれば良い。
また、上記実施形態では、RFIDタグ500が工業製品Mの一部をなす金属板Pに取り付けられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。
また、上記実施形態において、RFIDタグ500は、一例として図28に示されるように、スリットSLTを覆う誘電体シート560を更に有していても良い。電波の波長λは、真空中(≒空気中)では、電波が進む速度をcとすると、c/fで表される。一方、電波が誘電体の中を通る場合、電波が進む速度cは、該誘電体の誘電率をεrとすると、1/(ε0・εr)1/2倍に変化する。そして、電波の波長λは、(c/(ε0・εr)1/2)/fとなる。この場合は、スリットSLTの長手方向の長さを、上記実施形態よりも短くすることができる。
そこで、この場合に、上記誘電体シート560を用いるのに代えて、一例として図29に示されるように、保持部材550の形状を、スリットSLTを覆う形状にしても良い。
また、上記実施形態では、RFIDタグ500がチップモジュール510と保持部材550とから構成される場合について説明したが、チップモジュール510のみが、RFIDタグとして用いられても良い。
例えば、図30(A)及び図30(B)に示されるように、樹脂シートに形成された複数の凹部にそれぞれ錠剤が入れられ、該複数の凹部がアルミ箔によって封止されている薬剤パッケージに、チップモジュール510を取り付けることができる。なお、図30(B)は、図30(A)のA−A断面図である。
この薬剤パッケージに形成されたスリットSLT、及び該スリットSLTを跨いで取り付けられたチップモジュール510が、一例として図31に示されている。
ここでは、樹脂シートの表面にチップモジュール510が取り付けられるため、チップモジュール510における各金属箔521の形状は、一例として図32に示されるように、樹脂シートの凹部を避ける形状となっている。但し、各金属箔521の面積は100mm2である。
チップモジュール510は、一例として図33に示されるように、接着剤層を有しており、該接着剤層を介して樹脂シートに貼り付けられる(図34(A)及び図34(B)参照)。なお、ここでは、金属箔521の両面をラミネートする樹脂フィルム522は、できるだけ薄いものが用いられている。
そこで、薬剤パッケージのアルミ箔とチップモジュール510の各金属箔521との間には、樹脂シートと接着剤層と樹脂フィルム522が存在することとなる。この場合は、樹脂シートと接着剤層と樹脂フィルム522とからなる層が絶縁体となり、それぞれの材質及び厚さに応じて、各金属箔521の面積が決定される。
この場合、錠剤を薬剤パッケージから取り出すために、凹部を指でつぶし、対向するアルミ箔を破っても、チップモジュール510には何ら影響しない。
なお、薬剤パッケージから錠剤を取り出す際に、チップモジュール510が薬剤パッケージから外れても良い場合には、チップモジュール510をアルミ箔側に貼り付けても良い。この場合は、各金属箔521の形状は、上記実施形態と同様に略正方形であっても良い。このときは、薬剤パッケージのアルミ箔とチップモジュール510の各金属箔521との間には、接着剤層と樹脂フィルム522が存在することとなる。
なお、この場合に、一例として図35に示されるように、チップモジュール510は、スリットSLTを覆う誘電体シート560を更に有していても良い。この場合は、スリットSLTの長手方向の長さを、図31に比べて短くすることができる。
また、上記実施形態において、一例として図36及び図37に示されるように、前記スリットSLTに代えて、溝Grが金属板Pに形成されていても良い。この場合であっても、RFIDタグ500は、金属対応で、通信距離の減少を招くことなく、小型化及び低コスト化を図ることができる。
なお、この場合、一例として図38に示されるように、前記溝Grが、金属板Pをプレス加工することによって形成された溝であっても良い。
また、一例として図39に示されるように、各ネジに対応したネジ穴が形成されている薄い金属板P2を金属板Pの+Z側に取り付けて、前記スリットSLTを溝状にしても良い。
また、上記実施形態において、一例として図40(A)〜図40(C)に示されるように、前記突起552に代えて、ネジ突起552’が形成されていても良い。この場合は、前記保持部材550における貫通孔553は不要である(図40(A)及び図40(D)参照)。
そして、一例として図41に示されるように、スリットSLTを貫通したネジ突起552’の先端部分にナットNtを嵌めることにより、RFIDタグ500を金属板Pに固定することができる。この場合は、金属板Pにおける前記ネジ穴は不要である。
また、上記実施形態では、RFIDタグ500に情報を書き込む場合について説明したが、これに限定されるものではない。RFIDタグ500に情報を書き込まない場合は、前記ICチップ511において、情報が書き込まれるメモリ領域が不要である。また、上記RW装置に代えて、ID番号の読み出しのみを行う読み出し専用の装置(リーダ)を用いることができる。
また、上記実施形態では、組み立てラインが5つのステーションからなる場合について説明したが、ステーションの数はこれに限定されるものではない。
また、上記実施形態における検知情報及び履歴情報の内容は一例であり、これに限定されるものではない。同様に、装置番号及びID番号の桁数も上記実施形態に限定されるものではない。
また、上記実施形態における表示部に表示される内容は一例であり、これに限定されるものではない。
また、上記実施形態では、RFIDシステム10が組み立てラインに用いられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。現在RFIDシステムが利用されている用途に適用させることができる。その場合は、高コスト化を招くことなく、システムの信頼性を向上させることができる。なお、前記金属板Pに対応する金属板を別途準備することにより、金属部材を含まないものにも用いることが可能である。
また、上記実施形態では、周波数がUHF帯の場合について説明したが、これに限定されるものではない。