以下、本発明の一実施形態を図1〜図27に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係るRFIDシステム10の概略構成が示されている。
このRFIDシステム10は、パッシブ型タグを用いたRFIDシステムであり、UHF帯(860MHz〜960MHz)に対応している。
RFIDシステム10は、複合機M(図2参照)を組み立てる組み立てラインで用いられている。
複合機Mは、複写機、プリンタ、及びファクシミリの機能を有し、一例として図3に示されるように、本体装置1001、読取装置1002、及び自動原稿給紙装置1003などを備えている。
本体装置1001は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタである。本体装置1001は、光走査装置、4つの感光体ドラム、4つのクリーニングユニット、4つの帯電装置、4つの現像ローラ、中間転写ベルト、転写ローラ、定着ローラ、給紙トレイ、排紙トレイ、通信制御装置2080、及び上記各部を統括的に制御する主制御装置2090などを備えている。
読取装置1002は、本体装置1001の上側に配置され、原稿を読み取る。すなわち、読取装置1002は、いわゆるスキャナ装置である。ここで読み取られた原稿の画像情報は、本体装置1001の主制御装置2090に送られる。
自動原稿給紙装置1003は、読取装置1002の上側に配置され、セットされた原稿を読取装置1002に向けて送り出す。この自動原稿給紙装置1003は、一般にADF(Auto Document Feeder)と呼ばれている。
通信制御装置2080は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信、及び公衆回線を介したデータ通信を制御する。
主制御装置2090は、CPU、該CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及び該プログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAM、アナログデータをデジタルデータに変換するA/D変換回路などを有している。そして、主制御装置2090は、読取装置1002からの画像情報あるいは通信制御装置2080を介した画像情報を光走査装置に送る。
図1に戻り、上記組み立てラインは、搬送系T、及び1次〜5次の組み立てがそれぞれ行われる5つのステーション(ST1〜ST5)を有している。以下では、便宜上、ステーションST1で組み立てられたものを「組み立て品M1」、ステーションST2で組み立てられたものを「組み立て品M2」、ステーションST3で組み立てられたものを「組み立て品M3」、ステーションST4で組み立てられたものを「組み立て品M4」、ステーションST5で組み立てられたものを「組み立て品M5」という。
RFIDシステム10は、管理装置100、9つのRW装置(200a〜200i)、複数のRFIDタグ、及びデータ伝送路などを有している。管理装置100と9つのRW装置(200a〜200i)は、データ伝送路を介して接続されている。
複数のRFIDタグは、同じ構成のRFIDタグであるが、それぞれユニークなID番号が格納されている。ここでは、複数のRFIDタグを区別する必要がないため、以下では、各RFIDタグを「RFIDタグ500」と総称する。なお、RFIDタグ500の詳細については、後述する。
RFIDタグ500は、ステーションST1において、組み立て品M1の金属板Pに取り付けられる。この金属板Pは、複合機Mの主制御装置2090が収容される筐体の一部を構成する。
なお、本明細書では、XYZ3次元直交座標系において、金属板Pの板面に直交する方向をZ軸方向として説明する。そして、金属板Pの−Z側の面は上記筐体の内側面の一部であり、金属板Pの−Z側に主制御装置2090が配置されるものとする。
該金属板Pには、一例として図4に示されるように、Y軸方向を長手方向、X軸方向を短手方向とするスリットSLT、及びRFIDタグ500を取り付けるための2つのネジ穴が予め形成されている。
スリットSLTの長さ(長手方向の寸法)Lyは、RFIDシステム10で使用される電波の波長λの1/2倍の長さのときに、該電波を受けた際にスリットSLTのX軸方向の両端間に生じる電圧が最大となる。例えば、波長λが950MHzの場合は、Ly=160mmである。
スリットSLTの幅(短手方向の寸法)Lxは、アンテナとしての所望の利得(良いアンテナ性能)を得ることができる周波数の幅に関係している。すなわち、幅Lxを狭くしていくと、所望の利得が得られる周波数の幅が狭くなる。反対に、幅Lxを広くしていくと、所望の利得が得られる周波数の幅が広くなる。但し、幅Lxを広くしていくと、インピーダンスも大きくなり、アンテナの効率が低下する。
一般的に、スリットSLTは、金型を用いた打ち抜き加工によって形成され、必要に応じて2次加工により整形される。この場合、幅Lxがあまりに狭いと、所望の幅を所定の精度で得るのが困難になる。そこで、レーザ加工によってスリットSLTを形成することが考えられるが、高コスト化を招くという不都合がある。また、幅Lxがあまりに狭いと、スリットSLTに金属片などの異物が引っかかり、アンテナ性能を劣化させるおそれがある。そこで、波長λが950MHzの場合は、幅Lxを2〜3mmとするのが好適である。本実施形態では、波長λが950MHzの場合は、Ly=160mm、Lx=2mmのスリットが形成される。
前記2つのネジ穴は、一方がスリットSLTの−X側に形成され、他方がスリットSLTの+X側に形成されている。また、該2つのネジ穴は、Y軸方向に関しては、同じ位置に形成されている。なお、Y軸方向に関するネジ穴の位置は、RFIDタグ500を取り付けたときにインピーダンスマッチングがとれる位置であり、スリットSLTの中心からずれている。
図1に戻り、RW装置200aは、ステーションST1の出口近傍に配置されている。RW装置200bは、ステーションST2の入口近傍に配置され、RW装置200cは、ステーションST2の出口近傍に配置されている。
RW装置200dは、ステーションST3の入口近傍に配置され、RW装置200eは、ステーションST3の出口近傍に配置されている。
RW装置200fは、ステーションST4の入口近傍に配置され、RW装置200gは、ステーションST4の出口近傍に配置されている。
RW装置200hは、ステーションST5の入口近傍に配置され、RW装置200iは、ステーションST5の出口近傍に配置されている。
各RW装置は、RFIDタグ500のリーダライタ装置である。RW装置とRFIDタグ500とが交信できる空間領域は「有効通信エリア」とも呼ばれている。
各RW装置は、それぞれユニークな装置番号を有している。なお、以下では、各RW装置の装置番号を「自装置番号」という。
各RW装置は、RFIDタグ500からID番号を読み取ると、その読み取り日時及び自装置番号とともに、「検知情報」としてデータ伝送路を介して管理装置100に通知する。なお、以下では、読み取り日時を「検知日時」という。
また、各RW装置は、検知日時及び自装置番号を「履歴情報」として該RFIDタグ500に書き込む。
管理装置100は、CPU、該CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及び該プログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAM、ハードディスク装置、入力装置、及び表示装置などを有している。なお、管理装置100として、パーソナルコンピュータを用いることができる。
ハードディスク装置は、情報が記録されるハードディスク、CPUからの指示に応じて該ハードディスクに対して読み書きを行う駆動装置を有している。
入力装置は、例えばキーボード、マウス、タブレット、ライトペン及びタッチパネルなどのうち少なくとも1つの入力媒体を備え、該入力媒体を介して作業者から入力された各種情報をCPUに通知する。なお、入力媒体からの情報はワイヤレス方式で入力されても良い。
表示装置は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)及びプラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)などを用いた表示部を備え、CPUから指示された各種情報を表示する。表示装置と入力装置とが一体化されたものとして、例えばタッチパネル付きLCDなどがある。
管理装置100は、各RW装置から通知があると、割り込みが発生するように設定されている。また、管理装置100は、上位装置(例えば、ホストコンピュータ)と接続されており、要求に応じて、各種情報を上位装置に伝送する。
ここで、RFIDシステム10の動作について説明する。なお、各RW装置は、待機モードのとき、所定のタイミング毎にコマンド信号を送出しており、該コマンド信号に対してRFIDタグ500から応答があると、該RFIDタグ500との通信モードに移行する。そして、各RW装置は、通信モードのときにRFIDタグ500からの応答がなくなると、待機モードに移行する。
先ず、ステーションST1で1次組み立てが行われる。ステーションST1での組み立てが完了すると、組み立て品M1は搬送系TによってステーションST2に向かって送出される。
図5に示されるように、組み立て品M1のRFIDタグ500がRW装置200aの有効通信エリア内に入ると、該RFIDタグ500は、RW装置200aからのコマンド信号に対して、ID番号を含む信号を送信する。
RW装置200aは、RFIDタグ500からの信号を受信すると、該信号に含まれるID番号を抽出し、検知情報(図6参照)を管理装置100に通知するとともに、履歴情報をRFIDタグ500に書き込む。
管理装置100は、受け取った情報をハードディスクに記録するとともに、表示装置の表示部に状況を表示する(図7参照)。これにより、作業者は、ID番号が「21584486」の複合機Mについて、1次組み立てを終了したことがわかる。
なお、ステーションST1では、引き続き次の複合機Mの一次組み立てが行われるが、煩雑さを避けるため、ステーションST1では、次の複合機Mの一次組み立ては行われないものとして説明を続ける。
組み立て品M1のRFIDタグ500がRW装置200bの有効通信エリア内に入ると、該RFIDタグ500は、RW装置200bからのコマンド信号に対して、ID番号を含む信号を送信する。
RW装置200bは、RFIDタグ500からの信号を受信すると、該信号に含まれるID番号を抽出し、検知情報を管理装置100に通知するとともに、履歴情報をRFIDタグ500に書き込む。このときの検知日時における時間(以下では、「検知時間」という)は、ステーションST2での組み立て開始時間を意味している。
管理装置100は、受け取った検知情報をハードディスクに記録するとともに、表示装置の表示部に状況を表示させる(図8参照)。これにより、作業者は、ID番号が「21584486」の複合機Mについて、ステーションST2にあることがわかる。
ステーションST2で2次組み立てが行われる。ステーションST2での組み立てが完了すると、組み立て品M2は搬送系TによってステーションST3に向けて送出される。
組み立て品M2のRFIDタグ500がRW装置200cの有効通信エリア内に入ると、該RFIDタグ500は、RW装置200cからのコマンド信号に対して、ID番号を含む信号を送信する。
RW装置200cは、RFIDタグ500からの信号を受信すると、該信号に含まれるID番号を抽出し、検知情報を管理装置100に通知するとともに、履歴情報をRFIDタグ500に書き込む。このときの検知時間は、ステーションST2での組み立て終了時間を意味している。そこで、RW装置200cの検知時間とRW装置200bの検知時間とから、ステーションST2での組み立てに要した時間(組み立て時間)を求めることができる。
管理装置100は、受け取った検知情報をハードディスクに記録するとともに、表示装置の表示部に状況を表示させる(図9参照)。これにより、作業者は、ID番号が「21584486」の複合機Mについて、2次組み立てを終了したことがわかる。
組み立て品M2のRFIDタグ500がRW装置200dの有効通信エリア内に入ると、該RFIDタグ500は、RW装置200dからのコマンド信号に対して、ID番号を含む信号を送信する。
RW装置200dは、RFIDタグ500からの信号を受信すると、該信号に含まれるID番号を抽出し、検知情報を管理装置100に通知するとともに、履歴情報をRFIDタグ500に書き込む。このときの検知時間は、ステーションST3での組み立て開始時間を意味している。
管理装置100は、受け取った検知情報をハードディスクに記録するとともに、表示装置の表示部に状況を表示させる。これにより、作業者は、ID番号が「21584486」の複合機Mについて、ステーションST3にあることがわかる。
ステーションST3で3次組み立てが行われる。ステーションST3での組み立てが完了すると、組み立て品M3は搬送系TによってステーションST4に向けて送出される。
組み立て品M3のRFIDタグ500がRW装置200eの有効通信エリア内に入ると、該RFIDタグ500は、RW装置200eからのコマンド信号に対して、ID番号を含む信号を送信する。
RW装置200eは、RFIDタグ500からの信号を受信すると、該信号に含まれるID番号を抽出し、検知情報を管理装置100に通知するとともに、履歴情報をRFIDタグ500に書き込む。このときの検知時間は、ステーションST3での組み立て終了時間を意味している。そこで、RW装置200eの検知時間とRW装置200dの検知時間とから、ステーションST3での組み立て時間を求めることができる。
管理装置100は、受け取った検知情報をハードディスクに記録するとともに、表示装置の表示部に状況を表示させる。これにより、作業者は、ID番号が「21584486」の複合機Mについて、3次組み立てを終了したことがわかる。
組み立て品M3のRFIDタグ500がRW装置200fの有効通信エリア内に入ると、該RFIDタグ500は、RW装置200fからのコマンド信号に対して、ID番号を含む信号を送信する。
RW装置200fは、RFIDタグ500からの信号を受信すると、該信号に含まれるID番号を抽出し、検知情報を管理装置100に通知するとともに、履歴情報をRFIDタグ500に書き込む。このときの検知時間は、ステーションST4での組み立て開始時間を意味している。
管理装置100は、受け取った検知情報をハードディスクに記録するとともに、表示装置の表示部に状況を表示させる。これにより、作業者は、ID番号が「21584486」の複合機Mについて、ステーションST4にあることがわかる。
ステーションST4で4次組み立てが行われる。ステーションST4での組み立てが完了すると、組み立て品M4は搬送系TによってステーションST5に向けて送出される。
組み立て品M4のRFIDタグ500がRW装置200gの有効通信エリア内に入ると、該RFIDタグ500は、RW装置200gからのコマンド信号に対して、ID番号を含む信号を送信する。
RW装置200gは、RFIDタグ500からの信号を受信すると、該信号に含まれるID番号を抽出し、検知情報を管理装置100に通知するとともに、履歴情報をRFIDタグ500に書き込む。このときの検知時間は、ステーションST4での組み立て終了時間を意味している。そこで、RW装置200gの検知時間とRW装置200fの検知時間とから、ステーションST4での組み立て時間を求めることができる。
管理装置100は、受け取った検知情報をハードディスクに記録するとともに、表示装置の表示部に状況を表示させる。これにより、作業者は、ID番号が「21584486」の複合機Mについて、4次組み立てを終了したことがわかる。
組み立て品M4のRFIDタグ500がRW装置200hの有効通信エリア内に入ると、該RFIDタグ500は、RW装置200hからのコマンド信号に対して、ID番号を含む信号を送信する。
RW装置200hは、RFIDタグ500からの信号を受信すると、該信号に含まれるID番号を抽出し、検知情報を管理装置100に通知するとともに、履歴情報をRFIDタグ500に書き込む。このときの検知時間は、ステーションST5での組み立て開始時間を意味している。
管理装置100は、受け取った検知情報をハードディスクに記録するとともに、表示装置の表示部に状況を表示させる。これにより、作業者は、ID番号が「21584486」の複合機Mについて、ステーションST5にあることがわかる。
ステーションST5で5次組み立てが行われる。ステーションST5での組み立てが完了すると、組み立て品M5は搬送系Tによって次のラインに向けて送出される。
組み立て品M5のRFIDタグ500がRW装置200iの有効通信エリア内に入ると、該RFIDタグ500は、RW装置200iからのコマンド信号に対して、ID番号を含む信号を送信する。
RW装置200iは、RFIDタグ500からの信号を受信すると、該信号に含まれるID番号を抽出し、検知情報を管理装置100に通知するとともに、履歴情報をRFIDタグ500に書き込む。このときの検知時間は、ステーションST5での組み立て終了時間を意味している。そこで、RW装置200iの検知時間とRW装置200hの検知時間とから、ステーションST5での組み立て時間を求めることができる。
管理装置100は、受け取った検知情報をハードディスクに記録するとともに、表示装置の表示部に状況を表示させる。これにより、作業者は、ID番号が「21584486」の複合機Mについて、5次組み立てを終了したことがわかる。
このように、RFIDシステム10では、作業者は複合機Mの仕掛かり状況をリアルタイムで知ることができる。また、RFIDシステム10では、作業者は各ステーションでの組み立て時間をリアルタイムで知ることができる。
この場合、各ステーションでの組み立て時間がほぼ等しくなるような人員配置とすることにより、仕掛かり品の滞留を防止でき、複合機Mを効率良く組み立てることが可能となる。
次に、前記RFIDタグ500の詳細について説明する。
RFIDタグ500は、一例として図10及び図11に示されるように、チップモジュール510、保持部材550、及びシールド部材560を有している。
チップモジュール510は、一例として図12に示されるように、ICチップ511及び2つの端子部材520を有している。
ICチップ511は、いわゆる、デュアル・インターフェース・タイプのICチップであり、ここでは、6個の端子を有している。
ICチップ511の2個の端子は、それぞれ端子部材520に接続され、残りの4個の端子は、配線部材516を介して4個の外部端子515に個別に接続されている。この4個の外部端子515は、ICチップ511に対して有線(シリアル伝送)でデータの読み書きを行うためのIO端子である。
各端子部材520は、一例として図13に示されるように、金属箔(ここでは、アルミ箔)521と、該金属箔521の両面をラミネートする樹脂フィルム522とを有している。樹脂フィルム522は、金属板Pと金属箔521との間の絶縁体としての役目と、金属箔521を汚染や破損などから保護する役目を有している。
ICチップ511、配線部材516、4個の外部端子515、及び2つの端子部材520は、フレキシブルな絶縁シート517(図12参照)上に固定されている。
保持部材550は、一例として図14(A)〜図15(B)に示されるように、ほぼ長方形のセラミック製あるいは樹脂製の板状部材である。
保持部材550には、X軸方向の両端近傍にネジが挿入される貫通孔553がそれぞれ形成されている。貫通孔553の−Z側の端部は、一例として図16に示されるように、ネジの頭部が埋め込まれるように座グリ(ザグリ)加工されている。なお、図16は、図14(A)のA−A断面図である。
保持部材550は、+Z側の面の中央部に、チップモジュール510が取り付けられる平坦部551を有している。この平坦部551は、一例として図17に示されるように、周囲よりも約0.2mm突出している。
図14(A)に戻り、平坦部551の+Y側と−Y側には、それぞれ突起552が設けられている。突起552は、RFIDタグ500を金属板Pに取り付ける際の位置決め機能を有している。更に、突起552は、RFIDタグ500を金属板Pに取り付ける際の金属板Pのねじれ防止機能も有している。特に、タッピングネジを用いてRFIDタグ500を金属板Pに取り付ける場合に、その効果が大きい。また、突起552は、ICチップ511に物体が衝突し、ICチップ511が破損するのを保護する役目も有している。
また、平坦部551の+Y側には、チップモジュール510の4個の外部端子515を絶縁シート517とともに保持部材550の−Z側に引き出す(図10参照)ための窓554が形成されている。
保持部材550の−Z側の面の中央部555には、品名等が印刷されたシールが貼り付けられる。
ここで、保持部材550の寸法の具体例について図18(A)〜図18(C)を用いて説明する。なお、通信に用いられる電波の波長は950MHzとする。
保持部材550のX軸方向の長さL1は55mm、Y軸方向の長さL2は20mmである。X軸方向に関する2つの貫通孔553の中心間距離L3は40mmである。平坦部551のX軸方向の長さL4は35mm、Y軸方向の長さL5は14mmである。
保持部材550のZ軸方向の長さL6は5mmである。各突起552のX軸方向の長さL7は1.8mm、Z軸方向の長さL8は2mmであり、Y軸方向の長さL9は2mmである。各突起552のX軸方向の長さL7は、スリットSLTの幅Lxよりもわずかに小さくなるように設定されている。これにより、RFIDタグ500を金属板Pに取り付ける際に、X軸方向の位置決めが容易になる。なお、各突起552のY軸方向の長さL9は、厳密に規定される値ではないが、あまり小さくすると突起552が欠けるおそれがある。また、各貫通孔553の直径は3.5mmである。
ところで、通信可能な距離は、端子部材520における金属箔521の大きさ、及び金属板Pとの間に介在する保護膜や接着剤層などの絶縁体の厚さに関係している。すなわち、絶縁体の厚さに応じて金属箔521の大きさを調整することにより、静電結合におけるインピーダンスZを低下させ、通信可能な距離を伸ばすことができる。
インピーダンスZは、次の(1)式で示される。
Z=1/(ω・C) ……(1)
上記(1)式におけるωは角周波数であり、Cはキャパシタンスである。ωは次の(2)式で示され、Cは次の(3)式で示される。ここで、fは通信に用いられる電波の周波数、Sは金属箔521の面積、ε0は真空の誘電率、εrは絶縁体の誘電率、dは絶縁体の厚さである。
ω=2πf ……(2)
C=S・ε0・εr/d ……(3)
そこで、上記(1)式は、次の(4)式のように書き換えることができる。
Z=d/(2πf・S・ε0・εr) ……(4)
端子部材520からICチップ511に供給される電力Wは、次の(5)式で示すことができる。
W=Wa−2・V・A=Wa−2・V2/Z ……(5)
上記(5)式におけるWaは、通信の際に、スリットSLTのX軸方向の両端間に生じる起電力であり、Vは、通信の際に、スリットSLTのX軸方向の両端間に生じる電圧であり、Aは2つの端子部材520からICチップ511に供給される電流である。すなわち、ICチップ511に供給される電力は、いわゆるアンテナでの起電力から接続部分(絶縁体部分)で消費される電力を引いたものである。
ここで、所望の通信距離を得るのに必要な電力Wの最小値をWminとすると、金属箔521の面積Sは、次の(6)式の関係が満足されるように設定されれば良い。なお、Wminは、使用されるICチップの種類及び所望の通信距離が決まると、一義的に決定される値である。
Wmin≦Wa−2・V2/Z=Wa−4πf・S・ε0・εr・V2/d ……(6)
例えば、f=950MHz、絶縁体がPET(ポリエチレンテレフタレート)、d=20μm、所望の通信距離が3mの場合には、S=100mm2であれば、上記(6)式の関係を満足させることができる。
そこで、本実施形態では、樹脂フィルム522として厚さが20μmのPETフィルムを用い、一例として図19に示されるように、各金属箔521を一辺L10が10mmの略正方形としている。なお、金属板Pの表面に絶縁性の保護材が塗布あるいは積層されている場合は、該保護材の材質及び厚さに応じて、樹脂フィルム522の厚さが決定される。例えば、保護材がPETフィルムの場合、該保護材の厚さと樹脂フィルム522の厚さの合計が20μmとなる。
チップモジュール510は、一例として図20(A)及び図20(B)に示されるように、スポンジ570を介して保持部材550に取り付けられている。
図21には、保持部材550にチップモジュール510が取り付けられた状態が示されている。
図10に戻り、シールド部材560は、保持部材550の−Z側の面に取り付けられている。ここでは、シールド部材560として、アルミニウム板が用いられている。
このシールド部材560は、一例として図22(A)に示されるように、Y軸方向を長手方向、X軸方向を短手方向とする長方形状を有し、各端部が+Z側に折り曲げられている。但し、一例として図22(B)に示されるように、該折り曲げ部のうち保持部材550に対向する部分は切り取られている。また、シールド部材560には、チップモジュール510の4個の外部端子515を絶縁シート517とともに引き出すための開口562が形成されている。
図23(A)には、図22(A)のA−A断面形状が示され、図23(B)には、図22(A)のB−B断面形状が示されている。ここでは、シールド部材560のY軸方向に関する長さL21は、上記Lyの2cmを加算した値である。また、シールド部材560のX軸方向に関する長さL22は35mmである。
図24(A)及び図24(B)には、シールド部材560が保持部材550に取り付けられた状態が示されている。
次に、ステーションST1で、作業者が、RFIDタグ500を金属板Pに取り付けるときの取り付け方法について説明する。
(1)保持部材550の長手方向が金属板PのスリットSLTの長手方向に直交するように、RFIDタグ500を持つ。
(2)金属板Pの−Z側の面に取り付けられるように、金属板Pの−Z側にRFIDタグ500を金属板Pに近づける。
(3)保持部材550の2つの突起552をスリットSLTに挿入する。
(4)保持部材550の2つの突起552がスリットSLTに挿入されると、保持部材550の各貫通孔が金属板Pの各ネジ穴の−Z側に位置するように、RFIDタグ500をY軸方向に沿って移動させる。
(5)ネジを保持部材550の各貫通孔に挿入する。
(6)工具(ネジまわし)を用いて、各ネジをそれぞれ金属板Pのネジ穴に押し込む。
RFIDタグ500が金属板Pに取り付けられた状態が図25及び図26に示されている。金属板PのスリットSLTは、シールド部材560によって覆われている。
この場合、RFIDタグ500の交信距離を低下させることなく、主制御装置2090が発する電波(ノイズ)が筐体の外に漏れるのを防止することができる。また、筐体の外から筐体内に電波(ノイズ)が侵入するのを防止することができる。
直線偏波もしくは、円偏波の電波が、RW装置からスリットSLTに向けて放射されると、スリットSLTの周りに電界が発生する(図27参照)。そして、その電界はスリットSLTを挟んで、逆電圧(交流)を起こす。そこで、金属板PにおけるスリットSLTの+X側の部分と−X側の部分とに、それぞれ端子部材520が接していると、電流が流れ、RFIDタグ500のICチップ511が起動される。
RW装置とRFIDタグ500の通信距離は、3mを確保することができた。
複合機Mは、金属板PにRFIDタグ500が取り付けられた状態で客先に出荷される。
複合機Mを客先に設置する際、作業者は、RFIDタグ500の外部端子515が接続できる端子ターミナルを有するメンテナンス用機器を用いて、該複合機Mの装置名、IPアドレスなどを設定する。この設定作業は、複合機Mを起動させる行うことができる。この設定作業が終了すると、作業者は、主制御装置2090の回路基板に外部端子515を接続する。
複合機Mが稼働されると、主制御装置2090は、プリント枚数を示すカウンタの値をICチップ511のメモリに格納する。ICチップ511のメモリに格納されているデータは、RW装置や上記メンテナンス用機器を用いて読み出すことができる。
以上説明したように、本実施形態に係るRFIDタグ500によると、チップモジュール510、保持部材550、及びシールド部材560を有している。
チップモジュール510は、ICチップ511及び2つの端子部材520を有している。各端子部材520は、両面が樹脂フィルム522でラミネートされている金属箔521を有している。そして、各端子部材520の金属箔521は、ICチップ511の電極に接続されている。
シールド部材560は、筐体の内側からスリットSLTを覆っている。この場合は、主制御装置2090が発する電波(ノイズ)が筐体の外に漏れるのを防止することができる。また、筐体の外から筐体内に電波(ノイズ)が侵入するのを防止することができる。
そこで、RFIDタグ500は、交信距離を低下させることなく、金属に対応可能であるとともに、金属板を有するあらゆる機器に利用することができる。
また、チップモジュール510は、上記(6)式の関係が満足されるように、樹脂フィルム522の厚さd、及び金属箔521の面積Sが設定されている。
この場合は、使用条件に応じて、金属箔521の面積の最小値を知ることができるため、チップモジュール510を必要以上に大きくすることがなく、チップモジュール510の小型化及び低コスト化を図ることができる。
RFIDタグ500は、金属板Pをアンテナとして利用している。そこで、RFIDタグ500は、アンテナを備える必要がなく、小型化及び低コスト化が可能である。
また、RFIDタグ500は、金属板Pにネジ止めされているので、再利用が容易である。
また、RFIDタグ500は、金属板Pにネジ止めされているので、金属板Pの表面に油が付着している場合であっても、金属板Pに確実に取り付けることができる。
そして、本実施形態に係るRFIDシステム10によると、RFIDタグ500を含んで構成されているため、精度良く、安定して、ID番号を読み取ることができ、システムの信頼性を向上させることができる。
なお、上記実施形態では、シールド部材560として、アルミニウム板が用いられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、スリットSLTを介して電波(ノイズ)が筐体の外に漏れるのを防止するとともに、筐体の外から筐体内に電波(ノイズ)が侵入するのを防止することができれば良い。
また、上記実施形態では、スリットSLTが直線状の場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、スリットSLTの一部が屈曲していても良い(図28参照)。
また、上記実施形態では、ICチップ511がデュアル・インターフェース・タイプのICチップの場合について説明したが、これに限定されるものではなく、通常のRFID用のICチップでも良い。この場合は、保持部材550における窓554、及びシールド部材560における開口562は不要である。
また、上記実施形態における保持部材550の形状は一例であり、これに限定されるものではない(図29及び図30参照)。
また、上記実施形態では、RFIDタグ500に情報を書き込む場合について説明したが、これに限定されるものではない。RFIDタグ500に情報を書き込まない場合は、前記ICチップ511において、情報が書き込まれるメモリ領域が不要である。また、上記RW装置に代えて、ID番号の読み出しのみを行う読み出し専用の装置(リーダ)を用いることができる。
また、上記実施形態では、組み立てラインが5つのステーションからなる場合について説明したが、ステーションの数はこれに限定されるものではない。
また、上記実施形態における検知情報及び履歴情報の内容は一例であり、これに限定されるものではない。同様に、装置番号及びID番号の桁数も上記実施形態に限定されるものではない。
また、上記実施形態における表示部に表示される内容は一例であり、これに限定されるものではない。
また、上記実施形態では、RFIDシステム10が組み立てラインに用いられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。現在RFIDシステムが利用されている用途に適用させることができる。その場合は、高コスト化を招くことなく、システムの信頼性を向上させることができる。
また、上記実施形態では、周波数がUHF帯の場合について説明したが、これに限定されるものではない。