JP6022802B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、空気入りタイヤに関する。
タイヤは、多数の部材により構成される。この部材のひとつに、トレッドがある。トレッドは、架橋されたゴム組成物からなる。ゴム組成物は、補強材を含む。この補強材として、シリカが用いられることがある。シリカを含むトレッドは、ウエット性能の向上及び転がり抵抗の低減に寄与しうる。
他の補強材として、カーボンブラックがある。カーボンブラックは、石油製品である。石油が限りある資源であることから、補強材としてシリカの適用が検討されている。
シリカは、絶縁材料である。シリカを含む部材を有するタイヤでは、車両が静電気を帯びやすい。帯電した車両にドライバーが手で触れると、火花が発生することがある。走行中においては、電波障害が引き起こされることがある。電気的な障害の回避の観点から、様々な検討がなされている。この検討例が、特開平11−170814号公報、特開2000−118212公報、特開2007−276570公報、特開2009−006975公報及び特開2009−023504公報に開示されている。
特開平11−170814号公報 特開2000−118212公報 特開2007−276570公報 特開2009−006975公報 特開2009−023504公報
タイヤのトレッドに、半径方向に延在し、その外端がトレッド面の一部をなす貫通部を設けることがある。この貫通部は、カーボンブラックを含む。カーボンブラックは、電気を通す性質を有する。シリカを含むトレッドにおいて、この貫通部は車両の帯電を防止する。
カーカスの補強の観点から、大きな幅を有するベルトを採用することがある。この場合、このベルトにシリカを適用すると、前述の貫通部による帯電防止効果が十分に得られないことがある。
ベルトのリフティング防止の観点から、大きな幅を有するバンドを採用することがある。この場合、このバンドにシリカを適用すると、前述の貫通部による帯電防止効果が十分に得られないことがある。このように、シリカの適用拡大は車両に電気的な障害を招来する。
本発明の目的は、電気的な障害を回避しうる空気入りタイヤの提供にある。
本発明に係る空気入りタイヤは、その体積抵抗率が1×10Ω・cm未満である導電部材を含んでいる。このタイヤでは、この導電部材の質量の、このタイヤの質量に対する比率は10質量%未満である。このタイヤは、その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれがこのトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがこのサイドウォールよりも半径方向略内側に位置する一対のクリンチと、それそれがこのクリンチの軸方向内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及びサイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、上記トレッドの半径方向内側においてカーカスと積層されるベルトと、このベルトとトレッドとの間に位置してこのベルトを覆うバンドと、それぞれがこのベルトの端の半径方向内側に位置する一対のクッションと、それぞれが上記カーカスに沿ってこのクッションから上記クリンチに向かって延びる一対の補強層とを備えている。上記トレッドは、上記バンドの半径方向外側に位置してこのバンドを覆うアンダー層と、このアンダー層から半径方向外向きに延びており、その外端が上記トレッド面の一部をなす貫通部とを備えている。上記バンドの端は、軸方向において上記ベルトの端よりも外側に位置している。このバンドは、センター部と、それぞれがこのセンター部の軸方向外側に位置する一対のエッジ部とを備えている。このエッジ部の一部は、上記クッションと接触している。この貫通部、アンダー層、エッジ部、クッション、補強層及びクリンチは、上記導電部材である。
本発明に係る他の空気入りタイヤは、その体積抵抗率が1×10Ω・cm未満である導電部材を含んでいる。このタイヤでは、この導電部材の質量の、このタイヤの質量に対する比率は10質量%未満である。このタイヤは、その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれがこのトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがこのサイドウォールよりも半径方向略内側に位置する一対のクリンチと、それそれがこのクリンチの軸方向内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及びサイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、上記トレッドの半径方向内側においてカーカスと積層されるベルトと、このベルトとトレッドとの間に位置してこのベルトを覆うバンドと、それぞれがこのベルトの端の半径方向内側に位置する一対のクッションと、それぞれが上記カーカスに沿ってこのクッションから上記クリンチに向かって延びる一対の補強層とを備えている。上記トレッドは、上記バンドの半径方向外側に位置してこのバンドを覆うアンダー層と、このアンダー層から半径方向外向きに延びており、その外端が上記トレッド面の一部をなす貫通部とを備えている。上記アンダー層の一部は、上記クッションと接触している。この貫通部、アンダー層、クッション、補強層及びクリンチは、上記導電部材である。
本発明に係る空気入りタイヤでは、電気的な障害が回避される。
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。 図2は、押出機で成形されたクラウン部が示された断面図である。 図3は、押出機で成形されたサイド部が示された断面図である。 図4は、本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
このタイヤ2は、クラウン部4、サイド部6、ビード8、カーカス10、ベルト12、バンド14、チェーファー16及びインナーライナー18を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、乗用車に装着される。
クラウン部4は、トレッド20及びウィング22を備えている。トレッド20は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド20は、路面と接触するトレッド面24を形成する。トレッド面24には、溝26が刻まれている。この溝26により、トレッドパターンが形成されている。トレッド20は、キャップ層28、ベース層30、アンダー層32及び貫通部34を有している。
キャップ層28は、架橋ゴムからなる。キャップ層28は、赤道面から軸方向外向きに延在している。このタイヤ2では、このキャップ層28は前述のトレッド面24の一部を構成している。
ベース層30は、架橋ゴムからなる。ベース層30は、赤道面から軸方向外向きに延在している。ベース層30は、キャップ層28の半径方向内側に位置している。このタイヤ2では、このベース層30に前述のキャップ層28が積層されている。
アンダー層32は、架橋ゴムからなる。アンダー層32は、赤道面から軸方向外向きに延在している。アンダー層32は、ベース層30の半径方向内側に位置している。このタイヤ2では、このアンダー層32に前述のベース層30が積層されている。図1から明らかなように、このタイヤ2では、アンダー層32はバンド14全体を覆っている。アンダー層32の端36は、軸方向においてバンド14の端38よりも外側に位置している。
貫通部34は、架橋ゴムからなる。貫通部34は、周方向に延在している。この貫通部34は、リング状を呈している。図1から明らかなように、貫通部34はキャップ層28及びベース層30を貫いている。貫通部34は、アンダー層32から半径方向外向きに延在している。このタイヤ2では、貫通部34及びキャップ層28により、トレッド面24が構成されている。
ウィング22は、トレッド20の軸方向外側に位置している。ウィング22は、サイド部6の半径方向外側に位置している。ウィング22は、トレッド20とサイド部6とを連結する。ウィング22は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。
サイド部6は、クラウン部4の端から半径方向略内向きに延びている。このタイヤ2では、サイド部6は、サイドウォール40、クリンチ42、クッション44及び補強層46を備えている。
サイドウォール40は、トレッド20の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール40の半径方向外側端は、トレッド20の端及びウィング22と接合されている。このサイドウォール40の半径方向内側端は、クリンチ42と接合されている。サイドウォール40は、軸方向において、カーカス10の外側に位置している。このサイドウォール40は、カーカス10の損傷を防止する。このサイドウォール40は、耐カット性及び耐光性に優れた架橋ゴムからなる。
図1から明らかなように、このタイヤ2のトレッド20はサイドウォール40の半径方向外側に位置している。このタイヤ2は、TOS(Tread on Sidewall)構造を有している。
クリンチ42は、サイドウォール40の半径方向略内側に位置している。クリンチ42は、軸方向において、ビード8及びカーカス10よりも外側に位置している。クリンチ42は、リム(図示されず)のフランジと当接する。クリンチ42は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。
クッション44は、半径方向においてベルト12の端48の内側に位置している。クッション44は、カーカス10とベルト12との間に位置している。クッション44は、軟質な架橋ゴムからなる。クッション44は、ベルト12の端48の応力を吸収する。このクッション44は、ベルト12のリフティングの抑制に寄与しうる。
補強層46は、架橋ゴムからなる。補強層46は、軸方向において、サイドウォール40とカーカス10との間に位置している。補強層46は、クッション44からクリンチ42に向かってカーカス10に沿って延在している。図1から明らかなように、補強層46の外端部分はクッション44とカーカス10との間に挟まれている。補強層46の内端は、クリンチ42と接合されている。
ビード8は、クリンチ42の軸方向内側に位置している。ビード8は、コア50と、このコア50から半径方向外向きに延びるエイペックス52とを備えている。コア50はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。エイペックス52は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス52は、高硬度な架橋ゴムからなる。
カーカス10は、カーカスプライ54からなる。カーカスプライ54は、両側のビード8の間に架け渡されており、トレッド20及びサイドウォール40に沿っている。カーカスプライ54は、コア50の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ54には、主部56aと折り返し部56bとが形成されている。
カーカスプライ54は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。図示されていないが、これらコードはトッピングゴムで覆われている。各コードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、45°から90°、さらには75°から90°である。換言すれば、このカーカス10はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。カーカス10が、2枚以上のカーカスプライ54から形成されてもよい。
ベルト12は、カーカス10の半径方向外側に位置している。ベルト12は、トレッド20の半径方向内側においてカーカス10と積層されている。ベルト12は、カーカス10を補強する。ベルト12は、内側層58a及び外側層58bからなる。図1から明らかなように、軸方向において、内側層58aの幅は外側層58bの幅よりも若干大きい。このタイヤ2では、内側層58aの端がベルト12の端48である。
内側層58a及び外側層58bのそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。図示されていないが、これらコードはトッピングゴムで覆われている。各コードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、通常は10°以上35°以下である。内側層58aのコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層58bのコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。ベルト12の軸方向幅は、タイヤ2の最大幅の0.7倍以上が好ましい。ベルト12が、3以上の層58を備えてもよい。
バンド14は、ベルト12の半径方向外側に位置している。軸方向において、バンド14の幅はベルト12の幅よりも大きい。言い換えれば、バンド14の端38は軸方向においてベルト12の端48よりも外側に位置している。このタイヤ2では、幅広のバンド14が採用されている。
このタイヤ2では、バンド14は、センター部60と、それぞれがこのセンター部60の軸方向外側に位置する一対のエッジ部62とから構成されている。図1から明らかなように、エッジ部62の内端64bはセンター部60の端66と継ぎ合わされている。エッジ部62は、外側層58bの端48b及び内側層58aの端48aを覆っている。このエッジ部62の外端64aは、軸方向においてベルト12の端48よりも外側に位置している。
バンド14の一部をなすセンター部60は、コードとトッピングゴムとからなる。図示されていないが、コードはトッピングゴムで覆われている。このセンター部60において、コードは螺旋状に巻かれている。このセンター部60は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト12が拘束されるので、ベルト12のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
バンド14の他の一部をなすエッジ部62は、コードとトッピングゴムとからなる。図示されていないが、このコードはトッピングゴムで覆われている。このエッジ部62において、コードは螺旋状に巻かれている。このエッジ部62は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト12が拘束されるので、ベルト12のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。このタイヤ2では、エッジ部62のコードはセンター部60のコードと同等である。エッジ部62に、センター部60のコードとは異なるコードが用いられてもよい。
チェーファー16は、ビード8の近傍に位置している。タイヤ2がリムに組み込まれると、チェーファー16はリムと当接する。チェーファー16は、ビード8の近傍を保護しうる。この実施形態では、チェーファー16は、布とこの布に含浸したゴムとからなる。チェーファー16の材質をクリンチ42の材質と同じとすることで、このチェーファー16がクリンチ42と一体とされてもよい。
インナーライナー18は、カーカス10の内側に位置している。インナーライナー18は、カーカス10の内周面を覆う。インナーライナー18は、タイヤ2の内周面を形成している。インナーライナー18は、架橋ゴムからなる。インナーライナー18には、空気遮蔽性に優れたゴムが用いられている。インナーライナー18は、タイヤ2の内圧を保持する。
このように、このタイヤ2は多数の部材で構成される。このタイヤ2では、これら部材としての、トレッド20の、キャップ層28、ベース層30、アンダー層32及び貫通部34、ウィング22、サイドウォール40、クリンチ42、クッション44、補強層46、ビード8、カーカスプライ54、ベルト12、バンド14、チェーファー16並びにインナーライナー18は、架橋されたゴム組成物からなる、又は、架橋されたゴム組成物を含んでいる。ゴム組成物は、多数の成分を含んでいる。各部材に採用される成分の種類及びその量は、部材の要求性能に応じて適宜決められる。
ゴム組成物は、基材ゴムを含む。ゴム組成物の基材ゴムとしては、天然ゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリクロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びイソブチレン−イソプレン共重合体が例示される。2種以上のゴムが併用されてもよい。なお、インナーライナー18においては、その典型的な基材ゴムはブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。
ゴム組成物は、補強材を含む。補強材は、ゴム組成物からなる部材の強度及び軟質に影響する。部材の強度の観点から、ゴム組成物に含まれる補強材の量は、基材ゴム100質量部に対して5質量部以上が好ましい。部材の軟質の観点から、ゴム組成物に含まれる補強材の量は、基材ゴム100質量部に対して200質量部以下が好ましい。
補強材としては、カーボンブラック及びシリカが例示される。この補強材として、カーボンブラックのみを採用してもよい。この補強材として、シリカのみを採用してもよい。この補強材として、カーボンブラック及びシリカを併用してもよい。
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック及びアセチレンブラックが例示される。ファーネスブラックとしては、FEF、GPF、HAF、ISAF、SAF等が用いられうる。
カーボンブラックは、電気を通す性質を有する。このカーボンブラックを多く含む部材では、このカーボンブラックにより導電パスが形成される。したがって、補強材としてカーボンブラックを含む部材は、導電性を有することがある。このため、部材に導電性を付与する場合、補強材としてカーボンブラックが採用される。導電性を有する部材を得るためには、ゴム組成物におけるカーボンブラックの量は、基材ゴム100質量部に対して、20質量部以上とされるのが好ましい。
本明細書では、1×10Ω・cm未満の体積抵抗率を有する部材は導電性を有すると判断され、この部材は導電部材と称される。1×10Ω・cm以上の体積抵抗率を有する部材は導電性を有さないと判断され、この部材は絶縁部材と称される。
本明細書では、各部材の体積抵抗率は、JIS−K 6271に規定の二重リング電極法に準拠して、その温度が25℃とされた条件下で測定される。測定には、各部材のためのゴム組成物を温度が170℃である金型内で30分保持することにより得られるシート(厚さ=2mm)が用いられる。なお、コードとトッピングゴムとからなる部材については、トッピングゴムのためのゴム組成物からこのシートが得られる。
シリカは、これを含む部材の転がり抵抗の低減及びウエット性能の向上に寄与しうる。このシリカとしては、汎用ゴム一般に用いられるものを使用することができる。このシリカとしては、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン及びコロイダルシリカが例示される。転がり抵抗の低減及びウエット性能の向上の観点から、このシリカとしては、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。
このタイヤ2で使用されるシリカとしては、その窒素吸着比表面積(BET法)が100mm/g以上300mm/g以下とされたものが好ましい。その窒素吸着比表面積が100mm/g以上に設定されたシリカは、これを含むゴム組成物からなる部材を効果的に補強しうる。その窒素吸着比表面積が300mm/g以下に設定されたシリカは、部材の加工性を適切に維持しうる。なお、この窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じて、BET法により、測定される。
このタイヤ2では、転がり抵抗の低減及びウエット性能の向上に寄与しうる部材を得るためには、ゴム組成物におけるシリカの量は、基材ゴム100質量部に対して、5質量部以上とされるのが好ましく、100質量部以下とされるのが好ましい。なお、色づけのために、この部材に、基材ゴムに対して0.5質量部以上5質量部以下の量のカーボンブラックが併用されてもよい。この場合、転がり抵抗及びウェット性能の観点から、補強材の主成分はシリカとされる。シリカを含む部材においては、補強材全量に対するシリカの量の比率は、50質量%よりも大きくされるのが好ましく、70質量%以上とされるのがより好ましく、90質量%以上とされるのがさらに好ましい。
好ましくは、ゴム組成物は軟化剤を含む。軟化剤は、このゴム組成物からなる部材の強度及び軟質に影響する。この部材の軟質の観点から、軟化剤の量は、基材ゴム100質量部に対して10質量部以上が好ましい。この部材のの強度の観点から、軟化剤の量は40質量部以下が好ましい。好ましい軟化剤として、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイルが例示される。
好ましくは、ゴム組成物は硫黄を含む。硫黄により、ゴム分子同士が架橋される。硫黄と共に、又は硫黄に代えて、他の架橋剤が用いられてもよい。電子線によって架橋がなされてもよい。
好ましくは、ゴム組成物は硫黄と共に加硫促進剤を含む。スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤等が、用いられうる。
ゴム組成物には、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、ワックス、架橋助剤等が、必要に応じ添加される。
このタイヤ2は、次のようにして製造される。図示されていないが、フォーマーのドラムに、シート状のインナーライナー18が巻回され筒状とされる。このインナーライナー18の軸方向外側に、チェーファー16が巻回される。インナーライナー18とチェーファー16とが組み合わされたものの上に、カーカスプライ54が巻回される。リング状のビード8が、筒状のカーカスプライ54に嵌め合わされる。カーカスプライ54の外側の部分が、このビード8のコア50の周りで折り返される。
この製造方法では、サイドウォール40のためのゴム組成物、クリンチ42のためのゴム組成物、クッション44のためのゴム組成物及び補強層46のためのゴム組成物が同時に押し出され、図2にその断面が示された第一予備成形体68が形成される。この第一予備成形体68が、タイヤ2のサイド部6に相当する位置に巻回される。
この製造方法では、キャップ層28のためのゴム組成物、ベース層30のためのゴム組成物、アンダー層32のためのゴム組成物、貫通部34のためのゴム組成物及びウィング22のためのゴム組成物が同時に押し出され、図3にその断面が示された第二予備成形体70が形成される。フォーマーにおいて、ベルト12及びバンド14が形成された後、この第二予備成形体70がタイヤ2のクラウン部4に相当する位置に巻回される。これにより、ローカバーが得られる。
この製造方法では、ローカバーはモールドに投入される。ローカバーの外面は、モールドのキャビティ面と当接する。ローカバーの内面は、ブラダー又は中子に当接する。ローカバーは、モールド内で加圧及び加熱される。加圧及び加熱により、ローカバーのゴム組成物が流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤ2が得られる。
このタイヤ2では、トレッド20のキャップ層28及びベース層30、ウィング22、サイドウォール40、カーカスプライ54のトッピングゴム、ベルト12のトッピングゴム及びバンド14の一部をなすセンター部60のトッピングゴムは、シリカを主成分とする補強材を含んでいる。これら部材は、転がり抵抗の低減に寄与しうる。トレッド20のキャップ層28については、ウェット性能の向上にも寄与しうる。
シリカは、電気を通しにくい性質を有している。シリカは、これを含む部材の導電性を低下させてしまう。前述したように、このタイヤ2では、トレッド20のキャップ層28及びベース層30、ウィング22、サイドウォール40、カーカスプライ54のトッピングゴム、ベルト12のトッピングゴム及びバンド14の一部をなすセンター部60のトッピングゴムは、シリカを主成分とする補強材を含む。このため、これら部材は電気を通しにくい。これら部材の体積抵抗率は、1×10Ω・cm以上である。これら部材は、絶縁部材である。
このタイヤ2では、トレッド20の一部をなすアンダー層32及び貫通部34、バンド14の一部をなすエッジ部62、クッション44、補強層46、クリンチ42並びにチェーファー16は、カーボンブラックを主成分とする補強材を含んでいる。このカーボンブラックの量の調整により、これら部材の体積抵抗率は1×10Ω・cm未満とされている。このタイヤ2では、これら部材は導電部材である。このタイヤ2は、その体積抵抗率が1×10Ωcm未満である導電部材を含んでいる。
図1に示されているように、貫通部34の外端72aはトレッド面24の一部を形成している。この貫通部34は、路面と接触する。この貫通部34の内端72bは、アンダー層32と当接している。このアンダー層32は、エッジ部62と当接している。エッジ部62の半径方向内側には、クッション44が位置している。このタイヤ2では、エッジ部62の一部はクッション44と当接している。クッション44は、補強層46と当接している。補強層46は、クリンチ42に当接している。さらにクリンチ42は、チェーファー16と当接している。このタイヤ2がリムに装着されたとき、クリンチ42及びチェーファー16がこのリムに当接する。このタイヤ2では、トレッド面24からリムに当接するクリンチ42及びチェーファー16に至るまでが、導電部材により電気的に接続されている。言い換えれば、このタイヤ2は導電パスを有している。このため、タイヤ2又はこのタイヤ2の装着された車両において発生した静電気は、この導電パスを通じて放出される。このタイヤ2では、シリカを含む部材の適用により転がり抵抗の低減及びウエット性能の向上を達成しつつ、静電気の放電による火花の発生、電波障害等の電気的な障害が回避されている。
このタイヤ2では、全構成部材に占める導電部材の割合は小さい。より詳細には、導電部材の質量の、このタイヤ2の質量に対する比率は10質量%未満である。このタイヤ2では、構成部材のほとんどがシリカを主成分とする補強材を含む。このタイヤ2はカーボンブラックの使用量を低減しうる。このタイヤ2は、資源としての石油の枯渇防止に寄与しうる。この観点から、この比率は9質量%以下がより好ましい。導電パスの形成の観点から、この比率は1質量%以上が好ましい。なお、この比率の算出に際しては、導電部材に相当する全ての部材の質量の合計が導電部材の質量とされる。
このタイヤ2では、貫通部34、クリンチ42及びチェーファー16のみが導電部材として外面に露出している。言い換えれば、この貫通部34、クリンチ42及びチェーファー16以外の導電部材はタイヤ2の外面に露出していない。このタイヤ2では、導電部材が外面に露出することによる、耐摩耗性への影響、カットグロス性能の低下及びオゾンクラックの発生が効果的に抑制されている。このタイヤ2は、耐久性に優れる。
このタイヤ2では、好ましくは、トレッド20の一部をなす貫通部34の外端72aの面積の、トレッド面24の面積に対する比率は1%以上5%以下とされる。この比率が1%以上に設定されることにより、貫通部34の外端72aが路面と充分に接触する。このタイヤ2では、静電気が容易に放出される。このタイヤ2では、電気的な障害が回避されうる。この比率が5%以下に設定されることにより、貫通部34の露出面積が適切に抑えられる。このタイヤ2では、貫通部34が露出することによる、耐久性の低下が効果的に防止されている。
このタイヤ2では、幅広のバンド14が採用されており、このバンド14の一部をなすエッジ部62が導電部材からなる。このタイヤ2では、幅広のバンド14の採用による電気的な障害を回避しつつ、ベルト12のリフティングが効果的に抑制されている。
図1において、両矢印W1はベルト12の軸方向幅を表している。両矢印W2は、バンド14の軸方向幅を表している。両矢印W3は、このバンド14のエッジ部62の軸方向幅を表している。
このタイヤ2では、幅W2の幅W1に対する比は1よりも大きい。これにより、バンド14がベルト12のリフティングを効果的に抑制しうる。このタイヤ2は、耐久性に優れる。この観点から、この比は1.01以上が好ましい。タイヤ2の質量への影響が抑えられるとの観点から、この比は1.10以下が好ましい。
このタイヤ2では、幅W3の幅W2の半分に対する比は0.1以上0.3以下が好ましい。この比が0.1以上に設定されることにより、エッジ部62が導電パスの一部として効果的に寄与しうる。この比が0.3以下に設定されることにより、このエッジ部62による転がり抵抗への影響が抑えられる。
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用タイヤの場合は、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。後述するタイヤ74も同様である。
図4は、本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤ74の一部が示された断面図である。図4において、上下方向がタイヤ74の半径方向であり、左右方向がタイヤ74の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ74の周方向である。図4において、一点鎖線CLはタイヤ74の赤道面を表わす。このタイヤ74の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
このタイヤ74は、トレッド76、サイド部78、ビード80、カーカス82、ベルト84、バンド86、クッション88、補強層90、チェーファー92及びインナーライナー94を備えている。このタイヤ74は、チューブレスタイプである。このタイヤ74は、乗用車に装着される。
トレッド76は、架橋ゴムからなる。トレッド76は、キャップ層96、ベース層98、アンダー層100及び貫通部102を有している。このトレッド76は、図1に示されたタイヤ2のトレッド20の構成と同等の構成を有している。
サイド部78は、トレッド76の端から半径方向略内向きに延びている。このタイヤ74では、サイド部78は、サイドウォール104及びクリンチ106を備えている。
サイドウォール104は、トレッド76の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール104の半径方向外側端は、トレッド76の端と接合されている。このサイドウォール104の半径方向内側端は、クリンチ106と接合されている。サイドウォール104は、軸方向において、カーカス82の外側に位置している。このサイドウォール104は、カーカス82の損傷を防止する。このサイドウォール104は、耐カット性及び耐光性に優れた架橋ゴムからなる。
図4から明らかなように、サイドウォール104の外端部分はトレッド76の軸方向外側に位置している。このタイヤ74は、SOT(Sidewall on Tread)構造を有している。
クリンチ106は、サイドウォール104の半径方向略内側に位置している。クリンチ106は、軸方向において、ビード80及びカーカス82よりも外側に位置している。クリンチ106は、リム(図示されず)のフランジと当接する。クリンチ106は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。
ビード80は、クリンチ106の軸方向内側に位置している。ビード80は、コア108と、このコア108から半径方向外向きに延びるエイペックス110とを備えている。コア108はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。エイペックス110は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス110は、高硬度な架橋ゴムからなる。
カーカス82は、カーカスプライ112からなる。カーカスプライ112は、両側のビード80の間に架け渡されており、トレッド76及びサイドウォール104に沿っている。カーカスプライ112は、コア108の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ112には、主部114aと折り返し部114bとが形成されている。この折り返し部114bの端116は、半径方向においてクリンチ106の外端118よりも内側に位置している。このタイヤ74では、クリンチ106の外端118の部分はこの折り返し部114bから半径方向外向きに突出している。
カーカスプライ112は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。このカーカスプライ112は、図1に示されたタイヤ2のカーカスプライ54の構成と同等の構成を有している。
ベルト84は、カーカス82の半径方向外側に位置している。このベルト84は、内側層120a及び外側層120bからなる。この内側層120a及び外側層120bのそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。このベルト84は、図1に示されたタイヤ2のベルト12と同等の構成を有している。
バンド86は、ベルト84の半径方向外側に位置している。軸方向において、バンド86の幅はベルト84の幅よりも大きい。言い換えれば、バンド86の端122は軸方向においてベルト84の端124よりも外側に位置している。このタイヤ74では、幅広のバンド86が採用されている。
このタイヤ74では、バンド86は、コードとトッピングゴムとからなる。図示されていないが、コードはトッピングゴムで覆われている。このバンド86において、コードは螺旋状に巻かれている。このバンド86は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト84が拘束されるので、ベルト84のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
クッション88は、半径方向においてベルト84の端124の内側に位置している。クッション88は、カーカス82とベルト84との間に位置している。クッション88は、軟質な架橋ゴムからなる。クッション88は、ベルト84の端124の応力を吸収する。このクッション88は、ベルト84のリフティングの抑制に寄与しうる。
補強層90は、架橋ゴムからなる。補強層90は、軸方向において、サイドウォール104とカーカス82との間に位置している。補強層90は、クッション88からクリンチ106に向かってカーカス82に沿って延在している。図4から明らかなように、補強層90の外端126aの部分はクッション88とカーカス82とに挟まれている。補強層90の内端126bは、半径方向においてカーカスプライ112の折り返し部114bの端116よりも内側に位置している。前述したように、クリンチ106の外端118の部分はこの折り返し部114bから半径方向外向きに突出している。これにより、クリンチ106と補強層90との当接が達成されている。このタイヤ74では、この補強層90の内端126bの部分は、クリンチ106とカーカスプライ112の主部114aとの間に挟まれている。
チェーファー92は、ビード80の近傍に位置している。このチェーファー92は、図1に示されたタイヤ2のチェーファー16と同等の構成を有している。
インナーライナー94は、カーカス82の内側に位置している。このインナーライナー94は、図1に示されたタイヤ2のインナーライナー18と同等の構成を有している。
このように、このタイヤ74は多数の部材で構成される。このタイヤ74では、これら部材としての、トレッド76の、キャップ層96、ベース層98、アンダー層100及び貫通部102、サイドウォール104、クリンチ106、ビード80、カーカスプライ112、ベルト84、バンド86、クッション88、補強層90、チェーファー92並びにインナーライナー94は、架橋されたゴム組成物からなる、又は、架橋されたゴム組成物を含んでいる。ゴム組成物は、多数の成分を含んでいる。各部材に採用される成分の種類及びその量は、図1に示されたタイヤ2と同様、部材の要求性能に応じて適宜決められる。
このタイヤ74は、次のようにして製造される。図示されていないが、フォーマーのドラムに、シート状のインナーライナー94が巻回され筒状とされる。このインナーライナー94の軸方向外側に、チェーファー92が巻回される。インナーライナー94とチェーファー92とが組み合わされたものの上に、カーカスプライ112が巻回される。補強層90のためのゴム組成部から形成されたシートが、タイヤ74におけるこの補強層90の位置に巻回される。リング状のビード80が、筒状のカーカスプライ112に嵌め合わされる。カーカスプライ112の外側の部分が、このビード80のコア108の周りで折り返される。これにより、補強層90の内端126bがカーカスプライ112の折り返し部114bの端116の部分で覆われる。補強層90の外端126aの部分に、クッション88が形成される。
この製造方法では、キャップ層96のためのゴム組成物、ベース層98のためのゴム組成物、アンダー層100のためのゴム組成物及び貫通部102のためのゴム組成物が同時に押し出され、第三予備成形体(図示されず)が形成される。フォーマーにおいて、ベルト84及びバンド86が形成された後、この第三予備成形体がタイヤ74のトレッド76に相当する位置に巻回される。
この製造方法では、サイドウォール104のためのゴム組成物及びクリンチ106のためのゴム組成物が同時に押し出され、第四予備成形体(図示されず)が形成される。この第四予備成形体が、タイヤ74のサイド部78に相当する位置に巻回される。これにより、ローカバーが得られる。
この製造方法では、ローカバーはモールドに投入される。ローカバーの外面は、モールドのキャビティ面と当接する。ローカバーの内面は、ブラダー又は中子に当接する。ローカバーは、モールド内で加圧及び加熱される。加圧及び加熱により、ローカバーのゴム組成物が流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤ74が得られる。
このタイヤ74では、トレッド76のキャップ層96及びベース層98、サイドウォール104、カーカスプライ112のトッピングゴム、ベルト84のトッピングゴム並びにバンド86のトッピングゴムは、シリカを主成分とする補強材を含んでいる。これら部材は、転がり抵抗の低減に寄与しうる。トレッド76のキャップ層96については、ウェット性能の向上にも寄与しうる。
シリカは、電気を通しにくい性質を有している。シリカは、これを含む部材の導電性を低下させてしまう。前述したように、このタイヤ74では、トレッド76のキャップ層96及びベース層98、サイドウォール104、カーカスプライ112のトッピングゴム、ベルト84のトッピングゴム並びにバンド86のトッピングゴムは、シリカを主成分とする補強材を含む。このため、これら部材は電気を通しにくい。これら部材の体積抵抗率は、1×10Ω・cm以上である。これら部材は、絶縁部材である。
このタイヤ74では、トレッド76の一部をなすアンダー層100及び貫通部102、クッション88、補強層90、クリンチ106並びにチェーファー92は、カーボンブラックを主成分とする補強材を含んでいる。このカーボンブラックの量の調整により、これら部材の体積抵抗率は1×10Ω・cm未満とされている。このタイヤ74では、これら部材は導電部材である。このタイヤ74は、その体積抵抗率が1×10Ωcm未満である導電部材を含んでいる。
図4に示されているように、貫通部102の外端128aはトレッド面130の一部を形成している。この貫通部102は、路面と接触する。この貫通部102の内端128bは、アンダー層100と当接している。アンダー層100の端132は、軸方向においてバンド86の端122よりも外側に位置している。アンダー層100の半径方向内側には、クッション88が位置している。このアンダー層100の一部は、クッション88と当接している。クッション88は、補強層90と当接している。補強層90は、クリンチ106に当接している。さらにクリンチ106は、チェーファー92と当接している。このタイヤ74がリムに装着されたとき、クリンチ106及びチェーファー92がこのリムに当接する。このタイヤ74では、トレッド面130からリムに当接するクリンチ106及びチェーファー92に至るまでが、導電部材により電気的に接続されている。言い換えれば、このタイヤ74は導電パスを有している。このため、タイヤ74又はこのタイヤ74の装着された車両において発生した静電気は、この導電パスを通じて放出される。このタイヤ74では、シリカを含む部材の適用により転がり抵抗の低減及びウエット性能の向上を達成しつつ、静電気の放電による火花の発生、電波障害等の電気的な障害が回避されている。
このタイヤ74では、全構成部材に占める導電部材の割合は小さい。より詳細には、導電部材の質量の、このタイヤ74の質量に対する比率は10質量%未満である。このタイヤ74では、構成部材のほとんどがその主成分をシリカとする補強材を含む。このタイヤ74はカーボンブラックの使用量を低減しうる。このタイヤ74は、資源としての石油の枯渇防止に寄与しうる。この観点から、この比率は9質量%以下がより好ましい。導電パスの形成の観点から、この比率は1質量%以上が好ましい。
このタイヤ74では、貫通部102、クリンチ106及びチェーファー92のみが導電部材として外面に露出している。言い換えれば、この貫通部102、クリンチ106及びチェーファー92以外の導電部材はタイヤ74の外面に露出していない。このタイヤ74では、導電部材が外面に露出することによる、耐摩耗性への影響、カットグロス性能の低下及びオゾンクラックの発生が効果的に抑制されている。このタイヤ74は、耐久性に優れる。
このタイヤ74では、好ましくは、トレッド76の一部をなす貫通部102の外端128aの面積の、トレッド面130の面積に対する比率は1%以上5%以下とされる。この比率が1%以上に設定されることにより、貫通部102の外端128aが路面と充分に接触する。このタイヤ74では、静電気が容易に放出される。このタイヤ74では、電気的な障害が回避されうる。この比率が5%以下に設定されることにより、貫通部102の露出面積が適切に抑えられる。このタイヤ74では、貫通部102が露出することによる、耐久性の低下が効果的に防止されている。
このタイヤ74では、幅広のバンド86が採用されており、このバンド86を覆うアンダー層100の一部がクッション88と当接している。このタイヤ74では、幅広のバンド86の採用による電気的な障害を回避しつつ、ベルト84のリフティングが効果的に抑制されている。
図4において、両矢印W1はベルト84の軸方向幅を表している。両矢印W2は、バンド86の軸方向幅を表している。
このタイヤ74では、幅W2の幅W1に対する比は1よりも大きい。これにより、バンド86がベルト84のリフティングを効果的に抑制しうる。このタイヤ74は、耐久性に優れる。この観点から、この比は1.01以上が好ましい。タイヤ74の質量への影響が抑えられるとの観点から、この比は1.10以下が好ましい。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた実施例1の空気入りタイヤ(サイズ=195/65R15)を得た。バンドの幅W2のベルトの幅W1に対する比率(W2/W1)は、1.04とされた。この実施例1では、バンドの端は軸方向においてベルトの端よりも外側に位置している。この実施例1のバンドは、幅広である。このことが、表中、「W」で表されている。導電部材の質量のこのタイヤの質量に対する比率は、5wt%とされた。導電部材の体積抵抗率は、1×10Ω・cmであった。絶縁部材は、1×10Ω・cmよりも大きな体積抵抗率を有していた。なお、この実施例1では、バンドのエッジ部がクッションと当接し、トレッドのアンダー層はクッションには当接していない。この実施例1では、貫通部、アンダー層、エッジ部、クッション、補強層、クリンチ及びチェーファーが導電部材で構成されている。
[比較例2]
バンド全体をセンター部と同等の部材で構成した他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。導電部材の質量のこのタイヤの質量に対する比率は、4wt%であった。この比較例2では、バンドがクッションと当接し、トレッドのアンダー層はこのクッションには当接していない。この比較例1では、バンドにより導電パスが遮断されている。
[比較例3]
バンド全体をエッジ部と同等の部材で構成した他は実施例1と同様にして、比較例3のタイヤを得た。導電部材の質量のこのタイヤの質量に対する比率は、10wt%であった。この比較例3では、バンドがクッションと当接し、トレッドのアンダー層はこのクッションには当接していない。この比較例3では、貫通部、アンダー層、バンド、クッション、補強層、クリンチ及びチェーファーが導電部材で構成されている。
[比較例1]
比較例1は、従来のタイヤである。この比較例1では、バンドの幅W2はベルトの幅W1と同等の幅を有している。比率(W2/W1)は、1.00である。このことが、表中、「S」で表されている。導電部材の質量のこのタイヤの質量に対する比率は、75wt%であった。この比較例1では、トレッドのキャップ層及びベース層以外は導電部材により構成されている。
[実施例2]
図4に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた実施例2の空気入りタイヤ(サイズ=195/65R15)を得た。バンドの幅W2のベルトの幅W1に対する比率(W2/W1)は、1.04とされた。この実施例2では、バンドの端は軸方向においてベルトの端よりも外側に位置している。この実施例1のバンドは、幅広である。このことが、表中、「W」で表されている。導電部材の質量のこのタイヤの質量に対する比率は、7wt%とされた。この実施例2では、貫通部、アンダー層、クッション、補強層、クリンチ及びチェーファーが導電部材で構成されている。
[耐久性]
タイヤを正規リムに組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を230kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、4.14kNの縦荷重をタイヤに負荷した。このタイヤを、80km/hの速度で、半径が1.7mであるドラムの上を走行させた。タイヤが破壊するまでの走行距離を、測定した。この結果が、比較例1を100とした指数値で、下記の表1に示されている。数値が大きいほど、好ましい。
[転がり抵抗]
転がり抵抗試験機を用い、下記の測定条件で転がり抵抗を測定した。
使用リム:15×6−J(アルミニウム合金製)
内圧:220kPa
荷重:4.6kN
速度:80km/h
この結果が、比較例1を100とした指数値で、下記の表1に示されている。数値が小さいほど好ましい。
[通電性]
タイヤを正規リムに組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を200kPaとした。正規リムを抵抗測定器の取付軸に固定することで、このタイヤを抵抗測定器に装着した。この抵抗測定器においてタイヤは、絶縁板(電気抵抗値=1012Ω以上)上に設置された金属板に載せられた。この状態で2時間放置した後、タイヤに0.5分間5.3kNの縦荷重を負荷した。荷重を一旦解放し、同様の荷重を0.5分間タイヤに負荷した。再度荷重を解放し、さらに2分間同様の荷重をタイヤに負荷した。試験電圧(1000V)を印可し5分経過した後に、取付軸と金属板との間の電気抵抗値を測定した。測定は、タイヤの周方向に90°間隔で4箇所行われ、得られた測定値のうち、最大値が下記の表1に示されている。なお、測定は、その温度が25℃、その湿度が50%の環境下で実施された。測定には、予め表面の離型剤及び汚れが十分に除去され、十分に乾燥した状態にあるタイヤが用いられた。
Figure 0006022802
表1に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
以上説明された空気入りタイヤは、種々の車両に適用されうる。
2、74・・・タイヤ
8、80・・・ビード
10、82・・・カーカス
12、84・・・ベルト
14、86・・・バンド
20、76・・・トレッド
24、130・・・トレッド面
32、100・・・アンダー層
34、102・・・貫通部
40、104・・・サイドウォール
42、106・・・クリンチ
44、88・・・クッション
46、90・・・補強層
60・・・センター部
62・・・エッジ部
72a、72b・・・端

Claims (2)

  1. その体積抵抗率が1×10Ω・cm未満である導電部材を含んでおり、
    この導電部材の質量の、このタイヤの質量に対する比率が、10質量%未満であり、
    その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれがこのトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがこのサイドウォールよりも半径方向略内側に位置する一対のクリンチと、それそれがこのクリンチの軸方向内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及びサイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、上記トレッドの半径方向内側においてカーカスと積層されるベルトと、このベルトとトレッドとの間に位置してこのベルトを覆うバンドと、それぞれがこのベルトの端の半径方向内側に位置する一対のクッションと、それぞれが上記カーカスに沿ってこのクッションから上記クリンチに向かって延びる一対の補強層とを備えており、
    上記トレッドが、上記バンドの半径方向外側に位置してこのバンドを覆うアンダー層と、このアンダー層から半径方向外向きに延びており、その外端が上記トレッド面の一部をなす貫通部とを備えており、
    上記バンドの端が、軸方向において上記ベルトの端よりも外側に位置しており、
    このバンドが、センター部と、それぞれがこのセンター部の軸方向外側に位置する一対のエッジ部とを備えており、
    このエッジ部の一部が、上記クッションと接触しており、
    この貫通部、アンダー層、エッジ部、クッション、補強層及びクリンチが、上記導電部材であり、
    上記カーカスがコードを含んでおり、このコードが有機繊維からなり、この有機繊維がポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維からなる群から選択された少なくとも一つであり、
    上記センター部がコードを含んでおり、このコードが有機繊維からなり、この有機繊維がポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維からなる群から選択された少なくとも一つであり、
    上記エッジ部がコードを含んでおり、このコードが有機繊維からなり、この有機繊維がポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維からなる群から選択された少なくとも一つであり、
    上記センター部の端が、上記ベルトの端よりも軸方向内側に位置している、空気入りタイヤ。
  2. その体積抵抗率が1×10Ω・cm未満である導電部材を含んでおり、
    この導電部材の質量の、このタイヤの質量に対する比率が、10質量%未満であり、
    その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれがこのトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがこのサイドウォールよりも半径方向略内側に位置する一対のクリンチと、それそれがこのクリンチの軸方向内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及びサイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、上記トレッドの半径方向内側においてカーカスと積層されるベルトと、このベルトとトレッドとの間に位置してこのベルトを覆うバンドと、それぞれがこのベルトの端の半径方向内側に位置する一対のクッションと、それぞれが上記カーカスに沿ってこのクッションから上記クリンチに向かって延びる一対の補強層とを備えており、
    上記トレッドが、上記バンドの半径方向外側に位置してこのバンドを覆うアンダー層と、このアンダー層から半径方向外向きに延びており、その外端が上記トレッド面の一部をなす貫通部とを備えており、
    上記アンダー層の一部が、上記クッションと接触しており、
    この貫通部、アンダー層、クッション、補強層及びクリンチが、上記導電部材であり、
    上記カーカスがコードを含んでおり、このコードが有機繊維からなり、この有機繊維がポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維からなる群から選択された少なくとも一つであり、
    上記バンドがコードを含んでおり、このコードが有機繊維からなり、この有機繊維がポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維からなる群から選択された少なくとも一つであり、
    上記バンドの端が、上記ベルトの端よりも軸方向外側に位置しており、
    上記サイドウォールの外側部分が上記トレッドの軸方向外側に位置している、空気入りタイヤ。
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