以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、板金の成形加工により、筐体の前後方向に延びる板状のレール構造の途中に、一つまたは複数の横方向に突出する突出部を形成する。これにより、板金を単純に折り曲げる場合に比較して、横方向の厚みを大きくすることができる。
本発明の更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるであろう。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本発明の特許請求の範囲または適用例を如何なる意味に於いても限定するものではない。
以下、図面に従い、本実施形態の一例を説明する。図1(a)に示すように、ラック1内には、一つの基本筐体2と複数の増設筐体3とが着脱可能に収容されている。基本筐体2は、制御機能および記憶機能などのストレージシステムの主要機能を一つの筐体内に備えており、各増設筐体3へのデータ入出力を制御する。これに対し、増設筐体3は、記憶機能のみを備えており、基本筐体2により制御される。
ここで、本実施例において、第1方向とは、例えば図1(b)中のY軸方向であり、前後方向とも呼ぶ。第2方向とは、例えば図1中のX軸方向であり、左右方向または横方向または幅方向とも呼ぶ。第3方向とは、例えば図1(a)中のZ軸方向であり、上下方向または縦方向とも呼ぶ。
図1(b)に示すように、基本筐体2の前側には、複数のキャニスタ4が左右方向に並んで配置されている。キャニスタ4の上部の幅寸法と底部の幅寸法とは異なっており、上下を逆にした状態では挿入できないように構成されている。
基本筐体2の後側には、複数の制御基板6と、複数の電源装置7等が設けられている。電源装置7は上下に積み重なっているため、図1(b)では1つだけ示される。制御基板6および電源装置7は冗長化されており、一方の装置が故障した場合に他方の装置がバックアップするようになっている。
制御基板6は、例えば、ホスト側通信機能、ドライブ側通信機能、キャッシュメモリ機能、および制御機能等を備える。ホスト側通信機能は、例えば、インターネット、LAN(Local Area Network)、FC−SAN(Fibre Channel - Storage Area Network)等を利用する通信経路を介して、ホストコンピュータと通信するための機能である。ホストコンピュータから発行されるコマンド等はホスト側通信機能で受信されて、制御機能に引き渡される。
ドライブ側通信機能は、基本筐体2内の各ハードディスクドライブ41(図8(b)参照)と増設筐体3内の各ハードディスクドライブと通信するための機能である。ここでは記憶媒体としてハードディスクを例に挙げるが、それに限らない。例えば、半導体メモリ、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)、MRAM(MagnetoresistiveRandom Access Memory)、相変化メモリ(Ovonic Unified Memory)、RRAM(登録商標)等の種々の記憶媒体を用いてもよい。また、基本筐体2内にキャニスタ4を横に1段だけ並べる構成を例示するが、これに限らず、横一列のキャニスタを2段以上重ねて配置する構成でもよい。
キャッシュメモリ機能は、ホストコンピュータとの間で送受信するデータおよび記憶媒体との間で送受信するデータを一時的に記憶する機能である。
制御機能は、ホストコンピュータから受領したライトコマンドおよびリードコマンド等の各種コマンドに従って処理を実行し、その処理結果をホストコンピュータに返す。ライトコマンドの場合、制御機能は、ホストコンピュータから受信したライトデータをライトコマンドで指定された記憶領域に対応する記憶媒体(ハードディスクドライブ41)に書き込む。リードコマンドの場合、制御機能は、リードコマンドで指定された記憶領域に対応する記憶媒体からリードコマンドで指定されたデータを読み出し、読み出したデータをホストコンピュータに送信する。さらに、制御機能は、一定時間以上アクセスされなかった記憶媒体への通電を停止させる等の電源管理も行うことができる。
図2の斜視図は、キャニスタ4を取り除き、かつケースカバー22を開けた状態の斜視図である。「筐体」の一例としてのケース20は、底部21Bと、底部21Bの左右両端側から垂直に一体形成された側面部21Sとから形成されており、上部は着脱可能なケースカバー22で覆われている。
ケース20の前側には開口部23が形成されており、キャニスタ4は開口部23からケース20内に挿入されて取り付けられる。キャニスタ4がケース20内の所定位置まで押し込まれると、キャニスタ4に搭載されたハードディスクドライブ41のコネクタ(不図示)が接続基板5のコネクタ51に電気的に接続される。
換言すれば、キャニスタ4は、ハードディスクドライブ41のコネクタが接続基板5のコネクタに嵌合するまで、ユーザによりケース20内に挿入される。ユーザは、キャニスタ4の前面側に形成されたつまみを把持して手前に引っ張ることで、キャニスタ4をケース20内から引き出すこともできる。キャニスタ4を下側から支持する構造については後述する。
ケース20の前側領域には、左右方向に離間して複数の(2個の)支持板9が設けられている。ケース20の後側領域にも、左右方向に離間して複数の(2個の)支持板8が設けられている。それら前後の支持板8、9は、ケースカバー22を下側から支える。
図3の斜視図および部分拡大図に示すように、ケース20の底部21Bの上面には支持基板10が取り付けられている。支持基板10には、板金を成形加工することで、「支持構造」の一例としてのレール構造体11が左右方向に離間して複数設けられている。なお、支持基板10とケース20の底部21Bとを共通化してもよい。つまり、ケース20の底部21Bにレール構造体11を直接形成する構成でもよい。
図4は、互いに隣接する2組のレール構造体11を拡大して示す平面図である。図4では、複数の(例えば2個の)レール構造体11が前後方向(Y軸方向)に所定のピッチL1で離間して一直線に配置されている。
前後に並ぶ複数のレール構造体11で一つの組が形成される。開口部23側に位置する前側レール構造体11Fと、接続基板5側に位置する後側レール構造体11Rとから一組のレール構造が形成される。そして、各組のレール構造体11は、左右方向に第1所定寸法W1ずつ離間して支持基板10に一体形成されている。
レール構造体11の構成を説明する。レール構造体11は、第1接触部111、第2接触部112および接続部113を含んで構成される。第1接触部111は、前後方向に延びる平板状に形成されている。第2接触部112は、第1接触部111から左右方向の一側(図4の例では左側)に所定寸法W2だけ突出するようにして、第1接触部111の端部から連続して一体形成されている。第2接触部112は、所定のピッチL2で離間して複数(例えば2個)設けられている。
接続部113は、第2接触部112の両端部に位置して、第2接触部112と第1接触部111とを接続するように斜めに一体形成されている。上面から見た場合、第2接触部112およびその両端の接続部113は、台形状を形成する。
換言すれば、平坦な第1接触部111の所定の箇所を部分的に変形させて左右方向の一側に突出させることで、第2接触部112が形成される。第2接触部112は、ブリッジ、段差、突出部等と呼ぶこともできる。
貫通孔114は、支持基板10を所定の金型でプレスして成形加工したときに生じるものである。貫通孔114を埋めていた部分が図4の紙面に垂直に切り起こされることで、レール構造体11が支持基板10に一体形成される。
図4に示す例では、一つのレール構造体11は、前後方向の前側から順番に、複数の(例えば2個の)第2接触部112(1)、112(2)を備える。前側レール構造体11の有する複数の第2接触部112(1)、112(2)のうち、最も前側の第2接触部112(1)は、キャニスタ4を基本筐体2に取り付ける際に、最初にキャニスタ4に接触する。
後側レール構造体11の有する複数の第2接触部112(1)、112(2)のうち、最も後側の第2接触部112(2)は、キャニスタ4を基本筐体2に取り付ける際に、最も最後にキャニスタ4と接触する。
キャニスタ4の取付け時に最も早く接触する第2接触部112(1)を、開口部側第2接触部112(1)と呼ぶことがある。キャニスタ4の取付け時に最も最後に接触する第2接触部112(2)を、接続基板側第2接触部112(2)と呼ぶことがある。
図6(b)で後述するように、キャニスタ4の取付け時に、キャニスタ4の前端部は、開口部側第2接触部112(1)の手前(図4中の下側)に形成されている接続部113に接触する。この最も開口部側寄りに位置する接続部113は、キャニスタ4を開口部側第2接触部112(1)に向けて斜めに案内する。開口部23側の接続部113は、キャニスタ4が後述の通路115に正しく進入するように案内する案内機能を有する。
左右に隣接するレール構造体11の間には、キャニスタ4が移動するための通路115が設けられる。通路115の幅寸法W3は、キャニスタ4の幅寸法にほぼ等しい。即ち、通路115の幅寸法W3は、キャニスタ4の幅寸法に若干の余裕を加えた値に等しい。以下、通路115の幅寸法W3とキャニスタ4の幅寸法とは実質的に同一であるとして説明する。
通路115の幅寸法W3は、レール構造体11の形成ピッチである第1所定寸法W1から第2接触部112の突出量である第2所定寸法W2を引いた値に等しい(W3=W1−W2)。なお、隣接するキャニスタ4間には、所定の隙間W4が形成される。隙間W4は、切り起こし用の切断線110Aの位置(図5参照)から垂直に折り曲げた第2接触部112までの寸法である。
キャニスタ4は、左右方向に隣接するレール構造体11の間で支持される。詳しくは、キャニスタ4は、一方の(図4中の左側の)レール構造体11の第1接触部111の他側面(図4中の右側面)と、他方の(図4中の右側)レール構造体11の第2接触部112の一側面(図4中の左側面)とにより、左右両側から面接触で支持される。
キャニスタ4の有するハードディスクドライブ41のコネクタが接続基板5のコネクタ51に嵌合して電気的に接続される場合に、接続基板5側に位置するレール構造体11の少なくとも一部は、キャニスタ4を位置決めする位置決め機能を発揮する。
詳しくは、接続基板側第2接触部112(2)と、隣接するレール構造体11の有する第1接触部111のうち接続基板側第2接触部112(2)に対応する第1接触部111とは、キャニスタ4を両側から支持して位置を決定する。これにより、ハードディスクドライブ41のコネクタと接続基板5のコネクタ51とは正確に嵌合する。
図5を用いて、レール構造体11の製造方法の例を説明する。図5では、板金に一組を成すレール構造体11を形成する場合を例に挙げて説明する。本実施例では、以下に述べるように、板金からなる支持基板10を所定形状の金型でプレスすることで、複数のレール構造体11を支持基板10に一体形成する。
最初に図5(a)に示すように、板金からなる支持基板10を用意して、プレス加工機に設置する。
図5(b)は、「第1工程」の一例としての切り込み形成工程である。切り込み形成工程では、後の第2接触部112等を成形するために必要な切り込み110A、110Bを形成する。一つの切り込み110Aは、レール構造体11を支持基板10に対して垂直に折り曲げるための切断線である。切り込み110Aは前後方向に沿って支持基板10に形成され、両端部は左右方向の左側(図5では上側)にほぼ直角に折れ曲がっている。他の切り込み110Bは、支持基板10を裏面から表面に向けて押圧することで第2接触部112および接続部113を形成するための切断線である。
図5(c)は、「第2工程」としての押圧変形工程である。押圧変形工程では、所定形状の切り込み110A、110Bが形成された支持基板10を裏面から押圧して変形させることで、垂直に起こす前のレール構造体11を形成する。支持基板10を裏面(図5の紙背)から押圧することで、将来第2接触部112となる部分112Pと、将来接続部113となる部分113Pとが形成される。連結部となる部分113Pの間は、押圧変形されない平坦な領域となっており、この平坦部分は将来の第1接触部111となる。
図5(d)は、「第3工程」としての折り曲げ工程を示す。折り曲げ工程では、レール構造体11を支持基板10と垂直になるように折り曲げる。ここで、第1接触部111となる部分は、左右方向の一方のみが切断され、他方は支持基板10に繋がっている。折り曲げ工程では、将来レール構造体11となる部分のうち支持基板10と部分的に繋がっている方(図5中の上側)に、将来レール構造体11となる部分を垂直に折り曲げることで、レール構造体11を形成する。
図6は、左右一対のレール構造体11で形成される通路115にキャニスタ4を挿入し、接続基板5に取り付ける様子を模式的に示す。
図6(a)は、キャニスタ4を挿入する前の初期状態を示す。図6中の左右方向は、図1、図4等に示すY方向に対応する。図6中左側からキャニスタ4が挿入される。
図6(b)は、通路115にキャニスタ4が挿入された直後の状態を示す。キャニスタ4の挿入方向から見た前部右端CPは開口部に最も近い接続部113に接触し、通路115に向けて案内される。
図6(c)は、キャニスタ4が一対のレール構造体11間の通路115の中程まで進入した状態を示す。キャニスタ4は、一方のレール構造体11の第2接触部112と他方のレール構造体11の第1接触部111とに挟持されながら、通路115を進む。
図6(d)は、キャニスタ4が接続基板5に接触して取り付けられた状態を示す。この状態では、キャニスタ4の有するハードディスクドライブ41は、接続基板5のコネクタ51に電気的に接続される。ハードディスクドライブ41は、コネクタ51および接続基板5に形成されたプリント配線等を介して、制御基板6に電気的に接続される。
このように構成される本実施例では、隣接する他のレール構造体11の裏面側に向けて突出する突出部112を有する複数のレール構造体11を、板金のブリッジ加工により、板金状の支持基板10に一体形成する。これにより、本実施例では、平坦な板状に切り起こすだけの構成に比べて、一つのレール構造体11の厚み寸法W2を大きくできる。
平坦な板状に切り起こすだけの構成では、キャニスタ4間に所定の隙間を確保するために2カ所を切り起こす必要がある。隣り合う2カ所を切り起こすためには、取りしろ(余分に切り取る部分)が必要になるため、キャニスタ4を幅方向(X軸方向)に高密度実装することができない。これに対し、本実施例では、一つの切り起こしに段差112をブリッジ加工で形成するため、板金を余分に切除する必要がなく、多くのキャニスタ4を着脱可能に幅方向に収容することができる。
また、取りしろの問題を避けるために、一つの平坦な切り起こしでレール構造を形成することも考えられる。しかし、板金は薄いため、キャニスタ間に必要な寸法の隙間(本実施例の場合では)を確保することができない。そのため、この場合は、キャニスタの底部に設けたアダプタを使用してキャニスタを進退させることになる。従って、アダプタを底部に装着する分だけキャニスタの高さ寸法が大きくなってしまう。これに対し、本実施例では、アダプタ等の特別な部品を使用せずに、キャニスタ4を挿抜可能に支持することができる。
さらに、本実施例では、レール構造体11をダイキャストで製造するのではなく、板金のブリッジ加工で製造する。従って、増設筐体3に比べて生産量の少ない基本筐体2に好適に用いることができる。
上述の通り、基本筐体2はストレージシステムを制御する基本的な装置であるため、一つのストレージシステム内に一つだけ設けられていれば足り、増設筐体3のように複数設けられる必要はない。このため、基本筐体2は、増設筐体3よりも生産量が少ない。
さらに、基本筐体2は、一方の領域にキャニスタ4を搭載し、他方の領域に制御基板6等を搭載するため、増設筐体3の構造と異なる。従って、ダイキャストで製造された増設筐体用のレール構造体は、基本筐体2で使用することはできない。
このような理由で基本筐体2の生産量は増設筐体3よりも少ないため、大量生産に適したダイキャスト方式を採用すると、基本筐体2の製造コストが高くなる。これに対し、本実施例では、少量生産に適した板金加工技術を用いてレール構造体11を製造するため、生産量の少ない基本筐体2に採用した場合に、その製造コストの増加を抑制することができる。
本実施例では、一組のレール構造体11を前後方向(Y軸方向)に離間して配置するため、支持基板10には、前側のレール構造体11Fと後側のレール構造体11Rとの間に位置して、連結部101を形成できる。従って、支持基板10に複数のレール構造体11を板金のブリッジ加工で形成した場合でも、支持基板10の機械的強度を保持することができ、支持基板10が撓んだりするのを抑制できる。
本実施例では、一つのレール構造体11に複数の第2接触部112(1)、112(2)を形成する。従って、レール構造体11はキャニスタ4により広い面積で接触して支持することができる。
本実施例では、開口部寄りのレール構造体11Fの有する複数の接続部113のうち最も開口部寄りの接続部113を、第1接触部111から第2接触部112に斜めに向かう形状に形成する。このため、開口部寄りの接続部113を、キャニスタ4の取付け時に通路115への案内部として機能させることができる。
本実施例では、接続基板5寄りのレール構造体11Rに、接続基板5側寄りの第2接触部112(2)を形成する。従って、キャニスタ4の取付け時に、第2接触部112(2)と斜めに対向して位置する他の第1接触部111との間で、キャニスタ4の位置決めを行うことができる。従って、キャニスタ4に設けられるハードディスクドライブ41のコネクタを接続基板5のコネクタ51に正しく嵌合させることができる。
本実施例では、支持基板10の前後左右に複数形成されるレール構造体11を全て同一形状にしているため、プレス加工に使用する金型を共通化でき、製造コストをさらに低減することができる。