JP6020892B2 - 正極合剤および非水電解液二次電池 - Google Patents

正極合剤および非水電解液二次電池 Download PDF

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Description

本発明は正極合剤および非水電解液二次電池に関する。
非水電解液二次電池の一つにリチウムイオン二次電池がある。リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出する正極および負極の間を、非水電解液中のリチウムイオンが移動することで充放電可能な二次電池である。
特許文献1には、電池内の水分を効果的に除去することで、電池容量の減少を低減することができるリチウムイオン二次電池に関する技術が開示されている。例えば、電解質として六フッ化リン酸リチウムを使用した場合、電池内部に存在する水分と六フッ化リン酸イオンとが反応し、フッ素イオンとプロトン(つまり、HF)が生成される。正極活物質である金属酸化物(例えばコバルト、マンガン、ニッケル等の酸化物)は、生成されたフッ素イオンが吸着することで金属−酸素間結合力が低下する。また、生成されたプロトンの影響により、金属酸化物の金属がイオン化される。このため、正極の容量が低下する。また、正極から溶出した金属イオン(リチウムイオン以外)は、その一部が負極上に析出し、負極上のリチウム挿入サイトを潰すため負極の容量も低下する。
このため特許文献1に開示されている技術では、リチウムイオン二次電池の内部に、水分吸着剤であるゼオライト、活性アルミナ、活性炭、シリカゲル等を添加して電池内の水分を効果的に除去することで、リチウムイオン二次電池の容量が減少することを低減している。
特開2001−126766号公報
背景技術で説明したように、特許文献1に開示されている技術では、リチウムイオン二次電池の内部に水分吸着剤を添加して電池内の水分を除去することで、リチウムイオン二次電池の容量が減少することを抑制している。
しかしながら、リチウムイオン二次電池の内部に設けられた水分吸着剤は水分を吸着した後は不要な部材となる。つまり、水分吸着剤は水分を吸着した後は、それ自体が電池特性の向上に寄与しないため、不要な部材が電池内部に存在し続けることとなる。このように、不要な部材が電池内部に存在し続けることは、電池特性向上の観点からも好ましくない。
上記課題に鑑み本発明の目的は、水分の影響を抑制しかつ水分吸着後に電池特性を向上させることができる添加剤を含む正極合剤および非水電解液二次電池を提供することである。
本発明の一態様にかかる正極合剤は、正極活物質と、吸着した水分によってリチウムイオン導電性が向上する第1の添加剤とを備える。
上記正極合剤において、前記第1の添加剤は、Li(ここで、MはAl、Ga、Beの少なくとも1つを含み、1≦x≦6、y=1、2≦z≦4である)を含んでいてもよい。
上記正極合剤において、前記第1の添加剤は、LiAlO、LiGaO、またはLiBeO、もしくはこれらのうちの少なくとも2つを含む固溶体であってもよい。
更に第2の添加剤として、リチウムイオン伝導体であるLi1+xAlTi2−x(PO(ただし、0≦x≦1)を含んでいてもよい。
上記正極合剤において、前記第2の添加剤の結晶構造がナシコン型構造であってもよい。
上記正極合剤において、前記第1および第2の添加剤を含む混合相の組成は、Li1+xAlTi2−x(PO(x=0.5〜0.8)であり、前記混合相は前記第1の添加剤としてLiAlOを含み、前記第2の添加剤としてナシコン型構造のリチウムイオン伝導体を含んでいてもよい。
上記正極合剤において、前記正極活物質はニッケルマンガン酸リチウムを含んでいてもよい。
上記正極合剤において、前記第1の添加剤であるLiAlOは水分と反応してLiOHを生成してもよい。
前記正極合剤は更に導電剤を含んでいてもよい。
本発明の一態様にかかる非水電解液二次電池は、上記正極合剤を有する正極と、負極活物質を含む負極合剤を有する負極と、リチウム塩および非水溶媒を含む非水電解液と、を有する非水電解液二次電池である。
本発明により、水分の影響を抑制しかつ水分吸着後に電池特性を向上させることができる添加剤を含む正極合剤および非水電解液二次電池を提供することができる。
実施の形態にかかる正極合剤の一例を示す図である。 実施の形態にかかる正極合剤の他の例を示す図である。 正極合剤に含まれる添加剤(LiAlO)の作製手順を示すフローチャートである。 メカニカルミリング処理後の添加剤および熱処理後の添加剤のX線回折パターンを示す図である。 正極の作製手順を示すフローチャートである。 作製したサンプル(実施例1、比較例1)のサイクル数に対する放電容量と充放電効率とを示す図である。 作製したサンプル(実施例1、比較例1)の正極活物質、添加剤、充放電効率、放電容量、容量維持率を示す表である。 正極合剤に含まれる添加剤(LATP)の作製手順を示すフローチャートである。 メカニカルミリング処理後の添加剤のX線回折パターンを示す図である(LATPの組成がx=0〜0.3の場合)。 メカニカルミリング処理後の添加剤のX線回折パターンを示す図である(LATPの組成がx=0.4〜0.5の場合)。 メカニカルミリング処理後の添加剤のX線回折パターンを示す図である(LATPの組成がx=0.6〜0.8の場合)。 メカニカルミリング処理後の添加剤のDTA曲線である(LATPの組成がx=0〜0.4の場合)。 メカニカルミリング処理後の添加剤のDTA曲線である(LATPの組成がx=0.45〜0.8の場合)。 メカニカルミリング処理後の添加剤の組成xと結晶化温度との関係を示す図である。 熱処理後の添加剤のX線回折パターンを示す図である(LATPの組成がx=0〜0.2の場合)。 熱処理後の添加剤のX線回折パターンを示す図である(LATPの組成がx=0.3〜0.4の場合)。 熱処理後の添加剤のX線回折パターンを示す図である(LATPの組成がx=0.5〜0.8の場合)。 正極の作製手順を示すフローチャートである。 作製したサンプル(実施例2、比較例2、3)の充放電曲線(1サイクル目)である。 作製したサンプル(実施例2、比較例2、3)の充放電曲線(30サイクル目)である。 作製したサンプル(実施例2、比較例2、3)のサイクル数と放電容量との関係を示す図である。 作製したサンプル(実施例2、比較例2、3)の正極活物質、添加剤、充放電効率、放電容量、容量維持率を示す表である。 作製したサンプル(実施例2、比較例2、3)のインピーダンス測定結果(2サイクル目の充電後)を示す図である。 作製したサンプル(実施例2、比較例2、3)のインピーダンス測定結果(20サイクル目の充電後)を示す図である。 作製したサンプル(実施例2、比較例2、3)のインピーダンスの変化を示す表である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。以下では、本実施の形態にかかる正極合剤と、この正極合剤を用いた非水電解液二次電池(以下、リチウムイオン二次電池を例として説明する)について説明する。
<正極(正極合剤)>
図1は、実施の形態にかかる正極合剤の一例を示す図である。図1に示すように、本実施の形態にかかる正極合剤は、正極活物質1と、正極活物質1の表面の少なくとも一部を被覆する添加剤2(第1の添加剤)とを備える。更に、本実施の形態にかかる正極合剤は、導電剤3を備えていてもよい。
正極活物質1は、リチウムを吸蔵・放出可能な材料であり、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、これらの混合物であるニッケルマンガン酸リチウムやニッケルコバルトマンガン酸リチウム等を用いることができる。ニッケルマンガン酸リチウムはスピネル構造を有し、組成としては例えばLiNi0.5Mn1.5が挙げられる。また、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムの組成としては、例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3が挙げられる。
添加剤2は、水分と反応してリチウムイオン導電性が向上する材料を含む。添加剤2には、例えばLi(ここで、MはAl、Ga、Beの少なくとも1つを含み、1≦x≦6、y=1、2≦z≦4である)を含む材料を用いることができる。また、例えば、添加剤2には、LiAlO、LiGaO、またはLiBeO、もしくはこれらのうちの少なくとも2つを含む固溶体を用いることができる。例えば、LiAlOは水分と反応することでLiOHを生成し、生成されたLiOHがリチウムイオン導電性の向上に寄与すると考えられる。
添加剤2(以下では、LiAlOを例として説明する)を作製する際は、例えば、原料であるLiOおよびγ−Alを、LiAlOの組成式で示される割合に秤量して密閉型粉砕容器に入れる。そして、これらの混合粉末を、メカニカルミリング法を用いて機械的に混合・摩砕する。
メカニカルミリング法は、固体物質に粉砕、衝撃、摩擦等の機械的なエネルギーを加えることにより、物質表面を活性化させて物質を反応させたり構造変化させたりする方法である。メカニカルミリング法としては、例えばボールミル装置を用いる方法が挙げられる。
上記混合粉末を入れた密閉型粉砕容器を遊星型ボールミル装置に取り付けて、例えば、台盤回転数100rpmで15分間混合した後、台盤回転数450rpmで20時間、メカニカルミリング処理を行なう。例えば、密閉型粉砕容器の材質はステンレスであり、ボールの材質はジルコニア、プラスチックポリアミド、窒化ケイ素、タングステンカーバイド、アルミナ、クロム鋼等が挙げられる。その後、メカニカルミリング処理後の粉末に対して、所定の条件で熱処理を行なう。熱処理は、例えば、850℃で2時間行なう。このような処理により、結晶化したLiAlOを作製することができる。LiAlOの結晶構造については、X線回折法を用いて確認することができる。
なお、上記メカニカルミリング処理および熱処理の条件は一例であり、結晶化したLiAlOを作製することができるのであれば、これらの処理の条件は適宜変更してもよい。
そして、正極活物質1と添加剤2(LiAlO)とを所定の割合で混合し、更に、導電剤3と溶媒と結着剤(バインダー)とを加えて混練することで正極合剤を作製することができる。このようにして作製した正極合剤を正極集電体に塗布して乾燥することによりリチウムイオン二次電池の正極を作製することができる。
ここで、導電剤3としては、例えばアセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、黒鉛(グラファイト)を用いることができる。また、溶媒としては、例えばNMP(N−メチル−2−ピロリドン)溶液を用いることができる。また、バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を用いることができる。また、正極集電体として、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金を用いることができる。
なお、本実施の形態にかかる正極合剤は、図2に示すように、添加剤2に加えて、リチウムイオン伝導体である添加剤4(第2の添加剤)を含んでいてもよい。添加剤4は、例えばLi1+xAlTi2−x(PO(ただし、0≦x≦1。以下、この化合物をLATPとも記載する。)の組成式で表されるリン酸塩化合物である。例えば、添加剤4の結晶構造は、ナシコン型構造である。また、LATPのTiはGeで置き換えてもよい。また、LiAlOを含んでいてもよい。
添加剤2(LiAlO)および添加剤4(LATP)を作製する際は、例えば、原料であるLiO、γ−Al、TiO、およびPを、Li1+xAlTi2−x(POの組成式(0≦x≦1)で示される割合に秤量して密閉型粉砕容器に入れる。そして、これらの混合粉末を、例えば、台盤回転数100rpmで15分間混合した後、台盤回転数450rpmで20時間、メカニカルミリング処理を行なう。例えば、密閉型粉砕容器の材質はステンレスであり、ボールの材質はジルコニア、プラスチックポリアミド、窒化ケイ素、タングステンカーバイド、アルミナ、クロム鋼等が挙げられる。
その後、メカニカルミリング処理後の粉末に対して、所定の条件で熱処理を行なう。熱処理は、例えば、850℃で2時間行なう。このような処理により、LiAlOを含むLATPを作製することができる。LiAlOおよびLATPの結晶構造はX線回折法を用いて確認することができる。例えば、原料の組成をx=0.5〜0.8とすることで、LiAlOを含むLATPを作製することができる。
なお、添加剤2(LiAlO)および添加剤4(LATP)はそれぞれ別々に形成して添加してもよく、また原料の組成をx=0.5〜0.8として、結晶化したLiAlOと結晶化したLATPの混合相を形成し、これらを添加剤2、4としてもよい。
また、上記メカニカルミリング処理および熱処理の条件は一例であり、結晶化したLiAlOを作製することができるのであれば、これらの処理の条件は適宜変更してもよい。また、添加剤2(LiAlO)および添加剤4(LATP)を含む正極合剤および正極の作製方法は、上記で説明した添加剤2(LiAlO)を含む正極合剤および正極の作製方法と同様である。
<負極>
リチウムイオン二次電池の負極は負極活物質を有する。負極活物質は、リチウムを吸蔵・放出可能な材料であり、例えば、黒鉛(グラファイト)等からなる粉末状の炭素材料や、天然黒鉛を非晶質炭素で被覆した非晶質炭素被覆天然黒鉛等を用いることができる。そして、正極と同様に、負極活物質と、溶媒と、バインダーとを混練し、混練後の負極合剤を負極集電体に塗布して乾燥することによって負極を作製することができる。ここで、負極集電体として、例えば銅やニッケルあるいはそれらの合金を用いることができる。
<非水電解液>
非水電解液は、非水溶媒に支持塩が含有された組成物である。ここで、非水溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等からなる群から選択された一種または二種以上の材料を用いることができる。また、支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiCSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiI等から選択される一種または二種以上のリチウム化合物(リチウム塩)を用いることができる。
<セパレータ>
本実施の形態にかかるリチウムイオン二次電池は、セパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、多孔性ポリエチレン膜、多孔性ポリオレフィン膜、および多孔性ポリ塩化ビニル膜等の多孔性ポリマー膜、又は、リチウムイオンもしくはイオン導電性ポリマー電解質膜を、単独、又は組み合わせて使用することができる。
<リチウムイオン二次電池>
以下、捲回電極体を備えるリチウムイオン二次電池を例として説明する。捲回電極体は、長尺状の正極シート(正極)と長尺状の負極シート(負極)とを長尺状のセパレータを介して積層し、この積層体を捲回し、得られた捲回体を側面方向から押しつぶすことで形成する。ここで、正極シートは、箔状の正極集電体の両面に正極活物質を含む正極合剤層が保持された構造を有している。負極シートも正極シートと同様に、箔状の負極集電体の両面に負極活物質を含む負極合剤層が保持された構造を有している。
リチウムイオン二次電池の容器は、上端が開放された扁平な直方体状の容器本体と、その開口部を塞ぐ蓋体とを備える。容器を構成する材料としては、アルミニウム、スチール等の金属材料が好ましい。または、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリイミド樹脂等の樹脂材料を成形した容器であってもよい。容器の上面(つまり、蓋体)には、捲回電極体の正極と電気的に接続される正極端子および捲回電極体の負極と電気的に接続される負極端子が設けられている。
そして、捲回電極体の両端部の正極シートおよび負極シートが露出した部分(正極合剤層および負極合剤層がない部分)に、正極リード端子および負極リード端子をそれぞれ設け、上述の正極端子および負極端子とそれぞれ電気的に接続する。このようにして作製した捲回電極体を容器本体に収容し、蓋体を用いて容器本体の開口部を封止する。その後、蓋体に設けられた注液孔から非水電解液を注液し、注液孔を封止キャップで閉塞することにより、リチウムイオン二次電池を作製することができる。
<コンディショニング処理>
上記の方法で作製したリチウムイオン二次電池にコンディショニング処理を実施する。コンディショニング処理は、リチウムイオン二次電池の充電および放電を所定の回数繰り返すことで実施することができる。コンディショニング処理を実施する際の充電レート、放電レート、充放電の設定電圧は任意に設定することができる。
背景技術で説明したように、特許文献1に開示されている技術では、リチウムイオン二次電池の内部に、ゼオライト、活性アルミナ、活性炭、シリカゲル等の水分吸着剤を添加して電池内の水分を除去することで、リチウムイオン二次電池の容量が減少することを抑制していた。
しかしながら、リチウムイオン二次電池の内部に設けられた水分吸着剤は水分を吸着した後は不要な部材となる。つまり、水分吸着剤は水分を吸着した後は、それ自体が電池特性の向上に寄与しないため、不要な部材が電池内部に存在し続けることとなる。このように、不要な部材が電池内部に存在し続けることは、電池特性向上の観点からも好ましくない。例えば、不要な部材が電池内部に存在し続けると、正極を構成する正極合剤量に対する理論容量(Ah/g)が低下する。
そこで、本実施の形態にかかる発明では、吸着した水分と反応することでリチウムイオン導電性が向上する添加剤2を正極合剤に添加している。このように、水分を化学・物理吸着する性質を備える添加剤2を添加することで、リチウムイオン二次電池に対する水分の影響を抑制することができる。また、この添加剤2は水分吸着後にリチウムイオン導電性が向上するため、添加剤自体がリチウムイオン二次電池の電池特性(例えば、充放電特性やサイクル特性)の向上に寄与する。
更に、本実施の形態にかかる発明では、水分と反応することでリチウムイオン導電性が向上する添加剤2に加えて、リチウムイオン伝導体であるLATP(添加剤4)を添加してもよい。リチウムイオン伝導体であるLATPを正極合剤に添加することで、リチウムイオン二次電池の電池特性を更に向上させることができる。
以上で説明した本実施の形態にかかる発明により、水分の影響を抑制しかつ水分吸着後に電池特性を向上させることができる添加剤を含む正極合剤および非水電解液二次電池を提供することができる。
次に、本発明の実施例について説明する。まず、実施例1および比較例1にかかるサンプルの試験結果について説明する。
<実施例1>
(添加剤の作製)
まず添加剤の作製方法について説明する。図3は、添加剤の作製手順を説明するためのフローチャートである。添加剤であるLiAlOを作製するために、まず、添加剤の原料であるLiOおよびγ−Alを準備した(ステップS1)。その後、高純度アルゴンが充填されたグローブボックス内で、原料であるLiOおよびγ−Alを、LiAlOの組成式で示される割合に秤量して密閉型粉砕容器に入れて混合した(ステップS2)。そして、遊星型ボールミル装置に密閉型粉砕容器を取り付けて、台盤回転数100rpmで15分間混合した後、台盤回転数450rpmで20時間、メカニカルミリング処理を行なった(ステップS3)。混合粉末の量は約2.0gであった。
その後、メカニカルミリング処理後の粉末に対して、850℃で2時間熱処理を行なった(ステップS4)。このような処理により、結晶化したLiAlOを作製することができた。
メカニカルミリング処理後の粉末および熱処理後の粉末の結晶相を調べるために、X線回折測定を行なった。X線回折測定には、X線回折装置(Rigaku製、Mini Flex)を用いた。X線回折測定用のサンプルは、X線回折装置のサンプルフォルダに、メカニカルミリング処理後の粉末および熱処理後の粉末をそれぞれ、空気中で均等に詰め込むことで作製した。X線源はCuKa線であり、X線管球の電圧は30kV、電流は15mAであった。そして、回折角5°≦2θ≦80°、スキャンスピード2°/min、サンプリング幅0.01°の条件で測定を行なった。
図4は、メカニカルミリング処理後の粉末および熱処理後の粉末のX線回折パターンを示す図である。また、図4には、LiOのJCPDSカードに示されるX線回折パターン(card 00−012−0254)、γ−AlのJCPDSカードに示されるX線回折パターン(card 00−029−0063)、およびLiAlOのJCPDSカードに示されるX線回折パターン(card 00−031−0703、card 01−070−0432)を示している。
図4に示すように、メカニカルミリング処理後の粉末のX線回折パターンでは、LiOおよびγ−Alの結晶相のみが確認された。つまり、メカニカルミリング処理後の粉末は、結晶化したLiAlOを含んでいなかった。一方、熱処理後の粉末のX線回折パターンでは、LiAlOの結晶相が確認された。よって、メカニカルミリング処理後に熱処理を行なうことで、結晶化したLiAlOを作製することができた。なお、本明細書では結晶化したLiAlOをc−LiAlOと、結晶化していないLiAlOをa−LiAlOとも記載する。
(正極の作製)
次に、正極の作製方法について説明する。図5は、正極の作製手順を説明するためのフローチャートである。まず、正極活物質であるLiNi0.5Mn1.5と上記の方法で作製した添加剤LiAlOをそれぞれ99:1(重量比)の割合で混合して正極混合粉末を調製した(ステップS11)。次に、調製した正極混合粉末に導電剤であるアセチレンブラック(AB)を混合した。更にこの混合粉末に、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)を溶解したNMP(N−メチル−2−ピロリドン)溶液を混合した(ステップS12)。そして、この溶液を2時間撹拌して混合することで、スラリーを作製した(ステップS13)。このときの正極混合粉末(正極活物質+添加剤)と導電剤(AB)とバインダー(PVdF)との混合比は、85:5:10(重量比)とした。このようにして得られたスラリーが正極合剤である。
その後、得られた正極合剤をドクターブレード法により正極集電体であるAl箔(15μm厚)に塗布した(ステップS14)。そして、正極合剤が塗布されたAl箔を空気中において80℃で2時間乾燥してNMP溶液を除去した(ステップS15)。更に、120℃で10時間、真空乾燥を行なった(ステップS16)。真空乾燥後、正極合剤を成形してプレスすることで正極合剤を正極集電体に圧着した(ステップS17)。その後、更に120℃で10時間、真空乾燥を行なった(ステップS18)。作製した正極の面積は1.77cm(直径1.5cmの円形)とした。
(リチウムイオン二次電池の作製)
上記のようにして作製した正極を用いてCR2032型の2極式コインセルを作製した。このとき、負極として金属リチウムを用いた。また、電解液として、EC(エチレンカーボン)とEMC(エチルメチルカーボネート)とを体積比率3:7で混合した混合溶媒に、支持塩である六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を濃度1mol/dmとなるように溶解したものを用いた。
<比較例1>
比較例1として、添加剤を添加していないサンプルを作製した。比較例1の正極を作製する際は、正極活物質であるLiNi0.5Mn1.5に導電剤であるアセチレンブラック(AB)を混合した。更にこの混合粉末に、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)を溶解したNMP(N−メチル−2−ピロリドン)溶液を混合した。このときの正極活物質とABとバインダーとの混合比は、85:5:10(重量比)とした。これ以降の作製手順は実施例1の正極の作製手順(図5のステップS13以降参照)と同様であるので、重複した説明は省略する。そして、上記と同様に、作製した正極を用いてCR2032型の2極式コインセルを作製した。このとき、負極として金属リチウムを用いた。また、電解液として、EC(エチレンカーボン)とEMC(エチルメチルカーボネート)とを体積比率3:7で混合した混合溶媒に、支持塩である六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を濃度1mol/dmとなるように溶解したものを用いた。
<充放電試験(実施例1、比較例1)>
上記のようにして作製した実施例1および比較例1にかかるサンプルに対して充放電試験を行なった。試験電極を正極、金属リチウムを負極とした場合、正極からリチウムイオンを脱離させる過程を「充電」とし、正極にリチウムイオンを挿入させる過程を「放電」として測定を行なった。測定装置には、充放電試験装置(北斗電工社製:HJ−1001 SM8A)を使用した。測定条件は、1サイクル目の充放電時の電流密度を0.2mA/cmとし、2サイクル目以降の充放電時の電流密度を0.5mA/cmとし、電圧範囲を3.0〜5.0(V vs.Li/Li)、測定温度を25℃とした。
図6は、作製したサンプル(実施例1、比較例1)のサイクル数に対する放電容量(mAh/g)と充放電効率(%)とを示す図である。図6に示すように、結晶化したLiAlOを添加したサンプル(実施例1)では、添加剤を添加していないサンプル(比較例1)と比較して、サイクル数が増加した際の容量劣化を抑制することができた。また、図6に示すように、結晶化したLiAlOを添加したサンプル(実施例1)では、添加剤を添加していないサンプル(比較例1)と比較して、充放電効率が向上した。
図7は、作製したサンプル(実施例1、比較例1)の正極活物質、添加剤、充放電効率、放電容量、容量維持率を示す表である。充放電効率、放電容量、および容量維持率については、図6に示す試験結果から求めた。充放電効率(100サイクル平均)は、nサイクル目の充放電効率=(nサイクル目の放電量/nサイクル目の充電量)×100とし、この式を用いて1サイクル目から100サイクル目までの充放電効率をそれぞれ求め、求めた各サイクルの充放電効率の平均値を算出することで求めた。
図7の表に示すように、実施例1にかかるサンプルの充放電効率(100サイクル平均)は98.3%であったのに対して、比較例1にかかるサンプルの充放電効率(100サイクル平均)は96.3%であった。よって、結晶化したLiAlOを添加したサンプル(実施例1)では、添加剤を添加していないサンプル(比較例1)と比較して、充放電効率が向上した。
また、図7の表に示すように、実施例1、比較例1にかかるサンプルの放電容量(100サイクル)はそれぞれ、103mAh/g、91mAh/gであった。容量維持率(100サイクル)は、実施例1にかかるサンプルでは77%であったのに対して、比較例1にかかるサンプルでは65%であった。よって、結晶化したLiAlOを添加したサンプル(実施例1)では、添加剤を添加していないサンプル(比較例1)と比較して、容量維持率の低下を抑制することができた。
ここで、実施例1、比較例1にかかるサンプルの容量維持率(100サイクル)は、100サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量(図6参照)で割ることで求めた。つまり、実施例1にかかるサンプルでは、1サイクル目の放電容量が133mAh/gであり、100サイクル目の放電容量が103mAh/gであるので、容量維持率(100サイクル)は77%(=103/133×100)となった。同様に、比較例1にかかるサンプルでは、1サイクル目の放電容量が140mAh/gであり、100サイクル目の放電容量が91mAh/gであるので、容量維持率(100サイクル)は65%(=91/140×100)となった。
次に、実施例2、比較例2、3にかかるサンプルの試験結果について説明する。
<実施例2>
(添加剤の作製)
まず添加剤の作製方法について説明する。図8は、添加剤の作製手順を説明するためのフローチャートである。添加剤であるLATP(LiAlOを含むLATP)を作製するために、まず、添加剤の原料であるLiO、γ−Al、TiO、およびPを準備した(ステップS21)。その後、高純度アルゴンが充填されたグローブボックス内で、原料であるLiO、γ−Al、TiO、およびPを、Li1+xAlTi2−x(POの組成式(0≦x≦1)で示される割合に秤量して密閉型粉砕容器に入れて混合した(ステップS22)。なお、本実施例では、x=0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.45、0.5、0.6、0.7、0.8のサンプルを作製した。そして、遊星型ボールミル装置に密閉型粉砕容器を取り付けて、台盤回転数100rpmで15分間混合した後、台盤回転数450rpmで20時間、メカニカルミリング処理を行なった(ステップS23)。混合粉末の量は約2.0gであった。
メカニカルミリング処理後の粉末の結晶相を調べるために、X線回折測定を行なった。X線回折測定には、X線回折装置(Rigaku製、Mini Flex)を用いた。X線回折測定用のサンプルは、X線回折装置のサンプルフォルダに、メカニカルミリング処理後の粉末を空気中で均等に詰め込むことで作製した。X線源はCuKa線であり、X線管球の電圧は30kV、電流は15mAであった。そして、回折角5°≦2θ≦80°、スキャンスピード2°/min、サンプリング幅0.01°の条件で測定を行なった。
図9A〜図9Cは、メカニカルミリング処理後の粉末のX線回折パターンを示す図である。図9AはLATPの組成がx=0〜0.3の場合のX線回折パターンを、図9BはLATPの組成がx=0.4〜0.5の場合のX線回折パターンを、図9CはLATPの組成がx=0.6〜0.8の場合のX線回折パターンをそれぞれ示している。また、図9A〜図9Cには、TiO(アナターゼ型)のJCPDSカードに示されるX線回折パターン(card 21−1272)と、TiO(ルチル型)のJCPDSカードに示されるX線回折パターン(card 21−1276)を示している。
図9A〜図9Cに示すように、メカニカルミリング処理後の粉末のX線回折パターンでは、LiO、P、γ−Alに帰属されるピークが消失し、TiOに帰属されるピークのみが観測された。検出されたTiOのピークには、出発原料に用いたアナターゼ型のTiOのピークだけではなく、ルチル型のTiOのピークも含まれていた。しかし、TiOに帰属されるこれらのピークの強度は弱かった。よって、メカニカルミリング処理によりLiO、P、TiOおよびγ−Alが化学反応(メカノケミカル反応)を引き起こし、非晶質体が形成されたことが示唆された。
また、メカニカルミリング処理後の粉末の熱的性質を調べるために、熱重量・示差熱分析(TG−DTA)を行なった。TG−DTA測定は、サンプルとリファレンスの温度を一定の昇温速度で変化させた際の、サンプルの温度に対する重量変化と、サンプルとリファレンスの温度差とに基づいて吸熱・発熱を分析する手法である。測定装置には、差動型示差熱天秤(Rigaku製、Thermo Plus 2シリーズTG8120)を使用した。また、リファレンスにはアルミナ(Al)を用い、空気の流量を350mL/minとし、昇温速度を10℃/minとした。測定温度範囲は、室温から1000℃とし、白金パン(開放系)を用いて測定を行なった。
図10A、図10Bに、メカニカルミリング処理後の粉末のDTA曲線を示す。図10AはLATPの組成がx=0〜0.4の場合のDTA曲線を、図10BはLATPの組成がx=0.45〜0.8の場合のDTA曲線を示している。図10A、図10Bに示すDTA曲線から、約550℃〜650℃にかけて結晶形成に起因する発熱ピークが観測された。一方、降温時には明確な発熱ピークおよび吸熱ピークが観測されなかった。また、LATPの組成式中のxの値が増加するにしたがい、発熱開始温度が徐々に低温側にシフトした。
図11は、メカニカルミリング処理後の粉末の組成xと結晶化温度(発熱開始温度)との関係を示す図である。ここで、発熱開始温度は、LATPの組成がx=0のサンプルのDTA曲線に示しているように、発熱ピークが立ち上がる直前の曲線の接線と、発熱ピークが立ち上がった後の曲線の接線との交点の温度とした。図11に示すように、LATPの組成式中のxの値が増加するにしたがって、発熱開始温度が徐々に低温側にシフトしていることがわかる。
TG−DTA測定結果から、メカニカルミリング処理後の粉末を熱処理することで、結晶を形成することができることが示唆された。そこで、LATPの組成がx=0〜0.8の各々の粉末について、図11に示す結晶化温度よりも高い温度で熱処理を行なった。つまり、メカニカルミリング処理後の各々の粉末に対して、850℃で2時間熱処理を行なった(図8のステップS24)。
図12A〜図12Cは、熱処理後の粉末のX線回折パターンを示す図である。図12AはLATPの組成がx=0〜0.2の場合のX線回折パターンを、図12BはLATPの組成がx=0.3〜0.4の場合のX線回折パターンを、図12CはLATPの組成がx=0.5〜0.8の場合のX線回折パターンをそれぞれ示している。また、図12A、図12Bには、TiO(アナターゼ型)のJCPDSカードに示されるX線回折パターン(card 21−1272)、TiO(ルチル型)のJCPDSカードに示されるX線回折パターン(card 21−1276)、およびLiTi(PO(ナシコン型構造)のJCPDSカードに示されるX線回折パターン(card 00−035−0754)を示している。また、図12Cには、LiTi(PO(ナシコン型構造)のJCPDSカードに示されるX線回折パターン(card 00−035−0754)と、LiAlOのJCPDSカードに示されるX線回折パターン(card 00−027−1209)を示している。
図12A〜図12Cに示すように、メカニカルミリング処理後の粉末を850℃で2時間熱処理することで、ナシコン型構造を有するリチウムイオン導電性セラミックスであるLiTi(POのピークが現れた。よって、LiTi(POのTi4+の一部がAl3+で置換されたLi1+xAlTi2−x(PO系の固体電解質が作製されたと考えられる。
LATPの組成がx=0〜0.4の場合は、LiTi(POのピークのみが現れたため、これらの組成範囲ではLi1+xAlTi2−x(PO系の固溶体の単相が形成されたと考えられる。
一方、LATPの組成がx=0.5〜0.8の場合は、LiTi(PO以外のピークが現れた。つまり、図12Cに示すように、LATPの組成がx=0.5およびx=0.6の場合は、LiTi(POに加えて、LiAlOのピークが現れた。また、LATPの組成がx=0.7およびx=0.8の場合は、LiTi(POおよびLiAlOのピークに加えて別の相のピークが現れた。よって、LATPの組成がx=0.5〜0.8の場合は、LiAlOの結晶相とナシコン型構造を有するLATPの結晶相の混合相が形成された。
(正極の作製)
次に、正極の作製方法について説明する。図13は、正極の作製手順を説明するためのフローチャートである。まず、正極活物質であるLiCoOと上記の方法で作製した添加剤(LATPの組成がx=0.6)をそれぞれ95:5(重量比)の割合で混合して正極混合粉末を調製した(ステップS31)。ここで、LATPの組成がx=0.6の添加剤は、結晶化したLATP(リチウムイオン伝導体として働く材料)と、結晶化したLiAlO(水分と反応してリチウムイオン導電性が向上する材料)を含む添加剤である。
次に、調製した正極混合粉末に導電剤であるアセチレンブラック(AB)を混合した。更にこの混合粉末に、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)を溶解したNMP(N−メチル−2−ピロリドン)溶液を混合した(ステップS32)。そして、この溶液を2時間撹拌して混合することで、スラリーを作製した(ステップS33)。このときの正極混合粉末(正極活物質+添加剤)と導電剤(AB)とバインダー(PVdF)との混合比は、85:5:10(重量比)とした。このようにして得られたスラリーが正極合剤である。
その後、得られた正極合剤をドクターブレード法により正極集電体であるAl箔(15μm厚)に塗布した(ステップS34)。そして、正極合剤が塗布されたAl箔を空気中において80℃で2時間乾燥してNMP溶液を除去した(ステップS35)。更に、120℃で10時間、真空乾燥を行なった(ステップS36)。真空乾燥後、正極合剤を成形してプレスすることで正極合剤を正極集電体に圧着した(ステップS37)。その後、更に120℃で10時間、真空乾燥を行なった(ステップS38)。作製した正極の面積は1.77cm(直径1.5cmの円形)とした。
(リチウムイオン二次電池の作製)
上記のようにして作製した正極を用いてCR2032型の2極式コインセルを作製した。このとき、負極として金属リチウムを用いた。また、電解液として、EC(エチレンカーボン)とEMC(エチルメチルカーボネート)とを体積比率3:7で混合した混合溶媒に、支持塩である六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を濃度1mol/dmとなるように溶解したものを用いた。
<比較例2>
比較例2として、LATPの組成がx=0.3の添加剤を用いたサンプルを作製した。ここで、LATPの組成がx=0.3の添加剤は、結晶化したLATP(リチウムイオン伝導体として働く材料)のみを含み、結晶化したLiAlO(水分と反応してリチウムイオン導電性が向上する材料)を含まない添加剤である(図12BのX線回折パターン参照)。
比較例2の正極を作製する際は、正極活物質であるLiCoOと、LATPの組成がx=0.3の添加剤とをそれぞれ95:5(重量比)の割合で混合して正極混合粉末を調製した。これ以降の作製手順は実施例2の正極の作製手順(図13のステップS32以降参照)と同様であるので、重複した説明は省略する。そして、上記と同様に、作製した正極を用いてCR2032型の2極式コインセルを作製した。このとき、負極として金属リチウムを用いた。また、電解液として、EC(エチレンカーボン)とEMC(エチルメチルカーボネート)とを体積比率3:7で混合した混合溶媒に、支持塩である六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を濃度1mol/dmとなるように溶解したものを用いた。
<比較例3>
比較例3として、添加剤を添加していないサンプルを作製した。比較例3の正極を作製する際は、正極活物質であるLiCoOに導電剤であるアセチレンブラック(AB)を混合した。更にこの混合粉末に、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)を溶解したNMP(N−メチル−2−ピロリドン)溶液を混合した。このときの正極活物質とABとバインダーとの混合比は、85:5:10(重量比)とした。これ以降の作製手順は実施例2の正極の作製手順(図13のステップS33以降参照)と同様であるので、重複した説明は省略する。そして、上記と同様に、作製した正極を用いてCR2032型の2極式コインセルを作製した。このとき、負極として金属リチウムを用いた。また、電解液として、EC(エチレンカーボン)とEMC(エチルメチルカーボネート)とを体積比率3:7で混合した混合溶媒に、支持塩である六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を濃度1mol/dmとなるように溶解したものを用いた。
<充放電試験(実施例2、比較例2、3)>
上記のようにして作製した実施例2、比較例2、3にかかるサンプルに対して充放電試験を行なった。試験電極を正極、金属リチウムを負極とした場合、正極からリチウムイオンを脱離させる過程を「充電」とし、正極にリチウムイオンを挿入させる過程を「放電」として測定を行なった。測定装置には、充放電試験装置(北斗電工社製:HJ−1001 SM8A)を使用した。測定条件は、1サイクル目の充放電時の電流密度を0.2mA/cmとし、2サイクル目以降の充放電時の電流密度を0.5mA/cmとし、電圧範囲を3.0〜4.5(V vs.Li/Li)、測定温度を25℃とした。
図14Aは、作製したサンプル(実施例2、比較例2、3)の充放電曲線(1サイクル目)を示す図である。図14Aに示すように、結晶化したLiAlOを含むサンプル(実施例2)では、結晶化したLiAlOを含まないサンプル(比較例2)および添加剤を添加していないサンプル(比較例3)と比較して容量が増加した。
また、図14Bは、作製したサンプル(実施例2、比較例2、3)の充放電曲線(30サイクル目)を示す図である。図14Bに示すように、結晶化したLiAlOを含むサンプル(実施例2)では、結晶化したLiAlOを含まないサンプル(比較例2)および添加剤を添加していないサンプル(比較例3)と比較して、サイクル数の増加に伴う容量劣化や分極の増大を抑制することができた。
また、図15は、作製したサンプル(実施例2、比較例2、3)のサイクル数と放電容量(mAh/g)との関係を示す図である。図15に示すように、結晶化したLiAlOを含むサンプル(実施例2)では、結晶化したLiAlOを含まないサンプル(比較例2)および添加剤を添加していないサンプル(比較例3)と比較して、サイクル数が増加した際の容量劣化を抑制することができた。
図16は、作製したサンプル(実施例2、比較例2、3)の正極活物質、添加剤、充放電効率、放電容量、容量維持率を示す表である。充放電効率、放電容量、および容量維持率については、図14A、図14B、図15に示す試験結果から求めた。図16の表に示すように、実施例2にかかるサンプルの充放電効率(1サイクル目)は94.2%であったのに対して、比較例2にかかるサンプルの充放電効率(1サイクル目)は92.7%、比較例3にかかるサンプルの充放電効率(1サイクル目)は92.2%であった。よって、結晶化したLiAlOを含むサンプル(実施例2)では、結晶化したLiAlOを含まないサンプル(比較例2)および添加剤を添加していないサンプル(比較例3)と比較して、充放電効率が向上した。
また、図16の表に示すように、実施例2、比較例2、3にかかるサンプルの放電容量(50サイクル)はそれぞれ、165mAh/g、139mAh/g、82mAh/gであった。容量維持率(50サイクル)は、実施例2にかかるサンプルでは90%であったのに対して、比較例2にかかるサンプルでは77%、比較例3にかかるサンプルでは47%であった。よって、結晶化したLiAlOを含むサンプル(実施例2)では、結晶化したLiAlOを含まないサンプル(比較例2)および添加剤を添加していないサンプル(比較例3)と比較して、容量維持率の低下を抑制することができた。
<インピーダンス測定(実施例2、比較例2、3)>
充放電サイクルを繰り返した際の試験電極(正極)の抵抗(交流インピーダンス)を測定するために、EIS(Electrochemical impedance Spectroscopy)測定を行なった。測定装置には、電気化学測定装置(オランダIVIUM社製:ポテンショスタット/ガルバノスタット)を使用した。測定条件は、AC振幅を20mV、周波数範囲を10mHz〜100kHzとした。測定温度は25℃であった。
図17Aは、作製したサンプル(実施例2、比較例2、3)のインピーダンス測定結果(2サイクル目の充電後)を示す図である。図17Bは、作製したサンプル(実施例2、比較例2、3)のインピーダンス測定結果(20サイクル目の充電後)を示す図である。図18は、作製したサンプル(実施例2、比較例2、3)のインピーダンスの変化を示す表である。
図17A、図18に示すように、実施例2、比較例2、3にかかるサンプルの2回目の充電後のインピーダンスはそれぞれ、9.8Ω、9.8Ω、10.8Ωであった。また、図17B、図18に示すように、実施例2、比較例2、3にかかるサンプルの20回目の充電後のインピーダンスはそれぞれ、41.1Ω、54.4Ω、108.7Ωであった。インピーダンスの変化量は、実施例2では31.3Ω、比較例2では44.6Ω、比較例3では97.9Ωであった。よって、結晶化したLiAlOを含むサンプル(実施例2)では、結晶化したLiAlOを含まないサンプル(比較例2)および添加剤を添加していないサンプル(比較例3)と比較して、インピーダンスの増加を抑制することができた。
以上で説明したように、吸着した水分と反応してリチウムイオン導電性が向上する添加剤を正極合剤に添加することで、リチウムイオン二次電池の電気特性を向上させることができた。
以上、本発明を上記実施の形態および実施例に即して説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
1 正極活物質
2 第1の添加剤
3 導電剤
4 第2の添加剤

Claims (8)

  1. 正極活物質と、
    吸着した水分によってリチウムイオン導電性が向上する第1の添加剤と、
    リチウムイオン伝導体である第2の添加剤と、を備え
    前記第1の添加剤は、Li (ここで、MはAl、Ga、Beの少なくとも1つを含み、1≦x≦6、y=1、2≦z≦4である)を含み、
    前記第2の添加剤は、Li 1+x Al Ti 2−x (PO (ただし、0≦x≦1)を含む、
    正極合剤。
  2. 前記第1の添加剤は、LiAlO、LiGaO、またはLiBeO、もしくはこれらのうちの少なくとも2つを含む固溶体である、請求項に記載の正極合剤。
  3. 前記第2の添加剤の結晶構造がナシコン型構造である、請求項1または2に記載の正極合剤。
  4. 前記第1および第2の添加剤を含む混合相の組成は、Li1+xAlTi2−x(PO(x=0.5〜0.8)であり、前記混合相は前記第1の添加剤としてLiAlOを含み、前記第2の添加剤としてナシコン型構造のリチウムイオン伝導体を含む、請求項1に記載の正極合剤。
  5. 前記正極活物質はニッケルマンガン酸リチウムを含む、請求項1乃至のいずれか一項に記載の正極合剤。
  6. 前記第1の添加剤であるLiAlOは水分と反応してLiOHを生成する、請求項乃至のいずれか一項に記載の正極合剤。
  7. 前記正極合剤は更に導電剤を含む、請求項1乃至のいずれか一項に記載の正極合剤。
  8. 請求項1乃至のいずれか一項に記載の正極合剤を有する正極と、
    負極活物質を含む負極合剤を有する負極と、
    リチウム塩および非水溶媒を含む非水電解液と、
    を有する非水電解液二次電池。
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