以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用した第1の実施形態における満タン制御弁装置1の上面図であり、図2は、図1のII−II線断面図であり、満タン制御弁装置1の概略構成を示している。また、図3は、図2のIII−III線断面図であり、図4は、図2のIV−IV線断面図である。また、図5は、満タン制御弁装置1の下面図であり、図6は、満タン制御弁装置1が装着された燃料タンク2を模式的に示す断面図である。
図6に示すように、満タン制御弁装置1は、例えば、車両に搭載された燃料タンク2の天井面に開口した開口部3に取り付けられて、燃料タンク2内の液体燃料の液面レベル(液位)に応じて、燃料タンク2の内部空間と燃料タンク2の外部にあるキャニスタ9とを連通可能に接続する通気通路を開閉する弁装置である。
図2に示すように、満タン制御弁装置1は、ケーシング10、ケーシング10内に収容されたフロート弁50(メインフロート弁、第1のフロート弁に相当)およびサブフロート弁80(第2のフロート弁に相当)を備えている。ケーシング10は、いずれも例えば樹脂製であるアッパケース20、ロアケース30、キャップ11およびエンドキャップ15が、溶着、接着、係止等により相互に接続されて構成されている。
アッパケース20は、円筒部21、内方張出部22、パイプ部24、遮蔽壁25および遮蔽板26等が一体形成されている。円筒部21は、段付きの円筒状をなしており、円筒部21の下方部分(円筒部21のうち段部よりも下方にある部分)は、図6に示した燃料タンク2の開口部3の径よりも外径が若干小さくなっている。図1では図示を省略しているが、円筒部21の下方部分には、後述する通気孔27よりも上方に、図6に示すように全周に亘ってフランジ部21aが設けられている。このフランジ部21aの外径は、燃料タンク2の開口部3の径よりも大きくなっている。なお、後で説明に用いる図7から図12においてもフランジ部21aの図示を省略している。
内方張出部22は、円筒部21の段部付近の内周面から内方に向かって張り出した略円環平板状をなしている。内方張出部22の内周縁部の下面は、フロート弁50が着座する弁座23となっている。
パイプ部24は、円筒部21の上方部分(円筒部21のうち段部よりも上方にある部分)から側方に延出しており、内部にケーシング10内とキャニスタ9(図6参照)とを繋ぐ通路が形成されている。
遮蔽壁25は、円筒部21の上方部分の内側において、内方張出部22の中央開口に覆い被さるように配設されている。遮蔽壁25は、ケーシング10内を上昇してきた液体燃料が、万が一内方張出部22の中央開口を通過してしまったとしても、パイプ部24内へ浸入することを防止するために設けられている。
遮蔽板26は、円筒部21の下方部分の内側において、内方張出部22の張り出し方向の基端部から下方に環状に垂下している。円筒状の遮蔽板26は、ケーシング10内を上昇してきた液体燃料が、フロート弁50閉弁時のシール部に直接到達することを防止するために設けられている。
円筒部21の上方部分、円筒部21の下方部分、内方張出部22および遮蔽板26は、全て軸線を同一とするように配置されている。アッパケース20の円筒部21の上端は、キャップ11により閉塞されている。
一方、ロアケース30は、円筒部31、内方張出部32、ガイドリブ34、接続部35および容器体36等が一体成形されている。円筒部31は、図2示すフランジ形成部分よりも上方の外径が、アッパケース20の円筒部21の下方部分の内径とほぼ同一となっており、ロアケース30の円筒部31の上部がアッパケース20の円筒部21の下端縁部の内側に嵌合している。
内方張出部32は、円筒部31の上端縁部の内周面から内方に向かって張り出した略円環平板状をなしている。内方張出部32の内周縁部の下面は、サブフロート弁80が着座する弁座33となっている。また、円筒部31の内周面には、複数のガイドリブ34が周方向に間隔をあけて立設され、それぞれ上下方向に延設されている。複数のガイドリブ34は、それぞれの内方側の先端部で、サブフロート弁80が変位する際にサブフロート弁80を案内する。
容器体36は、円筒形状の側壁部37と側壁部37の下端を閉塞するように形成された底面部(底部)38とからなる有底筒状体である。容器体36は、内方張出部32よりも上方となるアッパケース20の円筒部21下方部分の内側に配置され、内方張出部32と容器体36の底面部38とは、複数の板状の接続部35(図4も参照)で接続されている。
容器体36の外径は円筒部21の内径よりも小さく、容器体36は円筒部21の内側に配設されて容器体36と円筒部21との間には隙間部が形成されている。容器体36の側壁部37と円筒部21とは、軸線を同一とするように配置されている。したがって、容器体36の側壁部37と円筒部21との間の隙間部の隙間寸法は、周方向において均一になっている。容器体36の内側が、フロート弁50の収容空間となっている。
フロート弁50は、フロート60、シールプレート65、弁体70およびスプリング75等からなる。フロート60は、例えば樹脂製で比較的軽量な略円柱状の部材であり、下面側から上方に向かって凹んだ環状凹部61および中央凹部61aが形成されている。環状凹部61および中央凹部61aは、液体中において気体溜りとして機能するように設けられている。環状凹部61内には、コイル状のスプリング75が縮設されており、スプリング75の上端は環状凹部61の上方の底面(すなわち天井面)に接し、下端は容器体36の底面部38に接しており、フロート60を常時上方に向かって付勢している(押している)。フロート60の上面部の中央には、上方に向かって突出した凸部62が形成されている。
フロート60の上方には、例えば樹脂製のシールプレート65が配設されている。シールプレート65は、中央部に小開口67が形成された円盤状の平板部66と、小開口67の周縁部において平板部66から上方に突出した略円筒形状の筒部68とが一体形成されている。そして、筒部68の外周には、平板部66の上面に沿って延びる、例えばゴム製のシート状の弁体70が配設されている。
この弁体70は、フロート弁50が上方に最大変位した場合に、アッパケース20の弁座23に環状に当接して、フロート弁50の収容空間と、円筒部21上方部分やパイプ部24内の通気通路とを隔絶するようになっている。弁体70は、ケーシング10の内方張出部22形成部位において、燃料タンク2内とキャニスタ9とを連通する通気通路を大きく開閉する大径シール部材であり、フロート60の凸部62は、弁体70の内側で通気通路を(小開口67を)弁体70よりも小さく開閉する小径シール部材である。
図3にも示すように、フロート60の外周面には、複数のガイドリブ63が周方向に間隔をあけて立設され、それぞれ上下方向に延設されている。複数のガイドリブ63は、それぞれの外方側の先端部で、フロート弁50が変位する際に容器体36の側壁部37に摺接してフロート弁50を案内する。
容器体36の底面部38の上面には、スプリング75の当接位置よりも外方に、径方向に延びる複数のリブ(放射状に延びる複数のリブ)が立設しており、フロート弁50が下方に最大変位した場合には、フロート60の下面が、これらのリブの上方先端部に当接するようになっている。これにより、フロート60の容器体36の底面部38への粘着を防止するようになっている。
アッパケース20の円筒部21には、容器体36の側壁部37の上端と同等以上の位置に(本例では、側壁部37の上端とほぼ同じ高さ位置に)、円筒部21を径方向に貫通する小径の通気孔27が形成されている。
ロアケース30の容器体36の側壁部37の最下部(底面部38と接続する部分)には、側壁部37を径方向に貫通する小径の液抜き穴39が形成されている。液抜き穴39の通路断面積は、容器体36の上部開口面積のうちフロート60よりも外方の面積よりも極めて小さく設定されている。
容器体36の上部開口のうちフロート60よりも外方の部分が、本実施形態における導入口36aであり、液抜き穴39が、本実施形態における排出通路に相当する。
図5にも示すように、エンドキャップ15は、円盤状の底板部16と、底板部16の外周部から上方に延びてロアケース30の円筒部31外周面に係止する複数の係止部17とが一体成形されている。底板部16には、外周縁部のうち係止部17が接続していない部分に、円弧状の切欠き部18が形成されている。エンドキャップ15がロアケース30に組み付けられた状態では、切欠き部18がケーシング10の下端で開口を形成する。
ロアケース30の円筒部31の内側、かつ、エンドキャップ15の底板部16の上方が、サブフロート弁80の収容空間となっている。
サブフロート弁80は、例えば樹脂製であり、ロアケース30のガイドリブ34に摺接する円筒形状の側壁部81と、側壁部81の上端を閉塞する天井部82とが一体成形されている。サブフロート弁80には、側壁部81の内側に、下端面から上方に向かって凹んだ凹部が形成され、空気を溜めることが可能な空気溜まり凹部83となっている。サブフロート弁80の天井部82の中央には、上下方向に貫通する空気抜き孔84が形成されている。
サブフロート弁80は、空気溜まり凹部83の大部分が空気で満たされている場合には、液体燃料中に浮かび、空気溜まり凹部83の空気が空気抜き孔84から抜けて空気溜まり凹部83内の大部分が液体燃料で満たされた場合には、液体燃料中に沈むようになっている。
サブフロート弁80は、上方に最大変位した場合に、天井部82がロアケース30の弁座33に環状に当接して、サブフロート弁80の収容空間と、アッパケース20の円筒部21の下方部分内の通気通路とを隔絶するようになっている。
エンドキャップ15の底板部16の上面の外周縁部には、径方向に延びる複数のリブ(放射状に延びる複数のリブ)が立設しており、サブフロート弁80が下方に最大変位した場合には、サブフロート弁80の側壁部81の下端面が、これらのリブの上方先端部に当接するようになっている。これにより、サブフロート弁80のエンドキャップ15の底板部16への粘着を防止するようになっている。
上述した構成によれば、ケーシング10の内部には、燃料タンク2の内部と外部とを連通する通気通路40が形成され、この通気通路40を介して燃料タンク2内の気体を燃料タンク2の外部へ排気することが可能となっている。具体的には、ケーシング10内には、エンドキャップ15の切欠き部18を上流端として、ロアケース30の円筒部31内、アッパケース20の円筒部21内、パイプ部24内の順に通気し、燃料タンク2内の気体を排気可能な通気通路40が形成されている。
ケーシング10内では、容器体36を配設した部位で、容器体36内に収容されたフロート弁50で通気通路40を開閉するようになっており、容器体36を配設した部位よりも排気方向(通気通路40において燃料タンク2内から燃料タンク2外へ排気を行う方向)の上流部で、円筒部31内に収容されたサブフロート弁80で通気通路40を開閉するようになっている。
次に、上記構成に基づき本実施形態の満タン制御弁装置1の作動について図7〜図12も用いて説明する。
まず、燃料タンク2を搭載した車両が旋回走行等を行い、燃料タンク2内の満タン制御弁装置1を装着した位置で燃料液面が大きく変動した場合について説明する。車両が旋回走行等を行い横方向の加速度が加わると、燃料タンク2内で液体燃料が偏在し、燃料液面が傾斜して液面レベルが上昇する場合がある。
このような場合に、図7に示すように、液体燃料が満タン制御弁装置1のケーシング10の下端を全て覆うと(燃料液面レベルが第1所定レベル以上に到達すると)、エンドキャップ15の切欠き部18からロアケース30内へ液体燃料が押し上げられる。
このとき、サブフロート弁80の空気溜まり凹部83内には空気が満たされているので、サブフロート弁80はロアケース30内を押し上げられた液体燃料に浮かび、弁座33に着座して通気通路40を閉塞する。これにより、内方張出部32よりも上方へは液体燃料は浸入せず、容器体36内へ液体燃料が導入されないため、フロート弁50は変位しない。このときのケーシング10内の液面レベルが第3所定レベルに相当する。
車両旋回走行等に伴う液面変化は極めて急激であるため、図7に示す状態が維持される時間は極めて短く、サブフロート弁80の空気抜き孔84から空気が抜ける間もなく燃料タンク2内の液面レベルは下降する。すると、図8に示すように、ロアケース30内から液体燃料が抜けて、液体燃料に浮いていたサブフロート弁80も、空気溜まり凹部83内に空気を満たした状態で最下方位置に戻り、通気通路40を速やかに開放する。
次に、車両の走行を停止して、燃料タンク2内に給油を行う場合について説明する。図8に示すように、車両走行中に燃料タンク2内で大きな液面レベル変化があったとしても、サブフロート弁80の作動によりフロート弁50が閉弁することはないので、旋回走行直後等であっても給油を開始することが可能である。
図6に示すように、満タン制御弁装置1が取り付けられた燃料タンク2内の液体燃料の液面レベルが満タンレベルよりも低い場合には、図8に示すように、フロート弁50およびサブフロート弁80は開弁状態にある。したがって、給油管4(インレットパイプ)の給油口5から給油ガン6で液体燃料を給油していくと、燃料タンク2内の上部空間の燃料蒸気は、ケーシング10の下端から通気通路40の経路で燃料タンク2外に通気し、燃料タンク2内の圧力は上昇しないので、継続して給油することが可能である。
給油を継続し、図9に示すように、燃料タンク2内の液体燃料の液面がケーシング10の下端に到達し、切欠き部18で形成された下端開口を閉塞すると、燃料タンク2内の圧力が上昇していく。これに伴い、液体燃料がロアケース30内を上昇していく。このときの、燃料タンク2内の液面レベル(所謂満タン液面レベル)が第1所定レベルに相当する。
ロアケース30内の液面上昇に伴い、空気溜まり凹部83内を空気で満たされているサブフロート弁80が浮かび上がって、液面レベルが第3所定レベルになると、サブフロート弁80が閉弁状態を形成する。サブフロート弁80が閉弁状態となると、燃料タンク2内の更なる圧力上昇により給油管4内の液面が上昇し、液面が給油ガン6の先端に到達すると、例えばオートストップ機構により給油が中止される。
この1回目のオートストップ時には、内方張出部32よりも上方へは液体燃料は浸入せず、容器体36内へ液体燃料が導入されないため、フロート弁50は変位しない。フロート弁50は開弁しているので、燃料タンク2内の気体は通気孔27を介して燃料タンク2の外部へ排出され、燃料タンク2内の内圧の上昇が抑止される。したがって、比較的多量の給油が行われ燃料蒸気の発生が多い1回目のオートストップ時(初回給油時)に燃料タンク2の給油口5から燃料が溢れ出すことを防止することができる。
1回目のオートストップ時には、ロアケース30内を上昇した液面レベルが燃料タンク2内の圧力が降下するまで若干時間維持される。これに伴い、サブフロート弁80の空気溜まり凹部83内の空気が空気抜き孔84から上方に排出されて空気溜まり凹部83内に液体燃料が浸入する。これにより、サブフロート弁80はフロート機能を失って、液体燃料内に沈む。図10は、1回目のオートストップ後に給油管4内の液体燃料が燃料タンク2内へ導入されて、燃料タンク2内の液面レベルが若干上昇し、サブフロート弁80がフロート機能を失って開弁している状態を示している。
図10に示す状態では、燃料タンク2内の圧力上昇が解消されて、給油管4内の液面レベルが低下し追加給油が可能となる。給油口5から給油ガン6で液体燃料を追加給油すると、液体燃料がロアケース30内を上昇していく。
このとき、サブフロート弁80は機能しないので、液体燃料はアッパケース20内も上昇し、容器体36の側壁部37を乗り越えて導入口36aから容器体36内へ流入し、容器体36内の液面が上昇する。
容器体36内の液面上昇に伴い、フロート弁50が浮かび上がって(上方に変位して)、図11に示すように、フロート弁50の弁体70が弁座23に着座し、閉弁状態を形成する。このときの、ケーシング10内の液面レベルが第2所定レベルに相当する。容器体36内へ液体燃料を導入するためには、液体燃料が側壁部37を乗り越える必要があるので、容器体36の側壁部37の上端のレベルが第2所定レベルに相当する。
ただし、本実施形態の満タン制御弁装置1では、容器体36内に図2で横方向に延びる一点鎖線で示した液面レベルにまで液体燃料が導入されれば、フロート弁50は閉弁するように構成されている。したがって、この一点鎖線で図示した液面レベルが、実質的な第2所定レベルと言うことができる。これにより、アッパケース20に設けた通気孔27の形成高さは、容器体36の側壁部37の上端の高さ以上であることが好ましいが、図2に一点鎖線で示した液面レベル以上であればかまわない。
フロート弁50が閉弁状態となると、ケーシング10内の液面上昇は停止し、燃料タンク2内の圧力上昇により給油管4内の液面が上昇し、液面が給油ガン6の先端に到達すると、例えばオートストップ機構により給油が再度中止される。
給油が中止されると、小径の通気孔27を介して燃料タンク2内の気体がケーシング10内に通気し、ケーシング10の円筒部21の下方部分の内部の気圧と燃料タンク2内の気圧とが徐々に平衡となり、容器体36内を除くケーシング10内の液体燃料は、下端開口から比較的短時間で抜けていく。
容器体36の側壁部37には、比較的小径の液抜き穴39が形成されているので、容器体36内の液体燃料は液抜き穴39を介して徐々に容器体36内から排出されていく。これに伴い、図12に示すように、フロート弁50が下降して、弁体70が弁座23から離座して通気通路40を開く開弁状態となり、燃料タンク2内の液体燃料が満タン状態であっても、燃料タンク2内外の通気が可能となる。
フロート弁50が開弁状態となると、給油管4内の液面レベルは下降するが、本実施形態の満タン制御弁装置1は、容器体36の内容積と液抜き穴39の口径の設定により閉弁状態を例えば1〜3分間継続するようになっており、開弁状態となって給油管4内の液面レベルが下降したときには、給油作業は終了しており、更なる追加給油が行われることを防止できる。
なお、フロート弁50が閉弁しているときには、フロート60の凸部62(小径の第2弁体)は、小開口67を閉じている。そして、フロート弁50が下降していくときには、まず、凸部62が小開口67を開いてシール部上下流間の圧力差を低減し、弁体70(大径の第1弁体)が弁座23から離座して開弁することを容易にしている。
上述の構成および作動によれば、車両が旋回走行等を行い、燃料タンク2内の液面レベルが大きく変化したとしても、容器体36の内部に液体燃料が浸入しフロート弁50が閉弁することを防止することができる。したがって、車両が旋回走行等を行った直後であっても、燃料タンク2内へ給油することが可能である。また、サブフロート弁80の空気溜まり凹部83内から空気が排出され難いので、サブフロート弁80のフロート機能を維持することができる。
車両が走行状態から停止して給油を行う場合には、1回目のオートストップ時にサブフロート弁80が閉弁して容器体36の内部に液体燃料が浸入することを防止することができる。したがって、1回目のオートストップ時(初回給油時)には、フロート弁50が閉弁しないので、燃料タンク2内の気体を通気孔27を介して燃料タンク2の外部へ排出し、燃料タンク2の給油口5から燃料が溢れ出すことを防止することができる。また、サブフロート弁80の空気溜まり凹部83内へ液体燃料を導入して、サブフロート弁80のフロート機能を消失させることができる。
2回目のオートストップ時(追加給油時)には、サブフロート弁80がフロート機能を失っているので、容器体36内へ液体燃料を導入してフロート弁50を閉弁し、暫時閉弁状態を維持することができる。したがって、更なる追加給油を防止することができる。
このようにして、燃料タンク2を搭載した車両が給油直前に旋回走行等を行ったときに燃料タンク2内の液面が大きく変化したとしても、給油が可能であり、かつ、初回給油時に給油口5から燃料が溢れ出すことを防止することができる。
また、本実施形態の満タン制御弁装置1では、フロート弁50の下方にサブフロート弁80を配設する構成としている。したがって、満タン制御弁装置1の横方向(径方向)の寸法を小さくすることが可能である。これによれば、燃料タンク2の天井部に形成する開口部3の径を小さくすることができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図13に基づいて説明する。
本第2の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、サブフロート弁80に区画壁部86を設けた点が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
図13に示すように、本実施形態では、サブフロート弁80の空気溜まり凹部83は、天井部82(上壁部に相当)から下方に向かって突出した(上壁部から垂下した)区画壁部86により、複数に区画されている。これにより、区画された空気溜まり凹部83の下端開口のそれぞれの面積が、区画されていないものより小さくなっている。
第1の実施形態でも説明したように、車両が旋回走行等を行い横方向の加速度が加わると、燃料タンク2内で液体燃料が偏在し、燃料液面が傾斜して液面レベルが上昇する。
傾斜した液面が上昇してくると、サブフロート弁80の下端が液体燃料に覆われて浮かび始める際には、液面の傾斜に伴い、例えば図13に二点鎖線で示す位置まで液体燃料が浸入してしまう。本実施形態の満タン制御弁装置1では、空気溜まり凹部83を複数に区画することで、サブフロート弁80が浮かび始める際の液体燃料浸入量を低減し、浮力低下を抑制することができる。すなわち、サブフロート弁80のフロート機能が低下することを防止することができる。
ちなみに、区画壁部86を設けていないサブフロート弁80の場合には、図13に破線で示す位置にまで液体燃料が浸入し、本実施形態の構成よりも浮力が低下する。
なお、図13では、中心線より左方では、フロート弁50およびサブフロート弁80が下方に最大変位した状態を示し、中心線より右方では、フロート弁50およびサブフロート弁80が上方に最大変位した状態を示している。後で説明する図16〜図21でも同様である。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について図14および図15に基づいて説明する。
本第3の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、サブフロート弁80に底板部87を設け、下端開口の面積を小さくした点が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
図14に示すように、本実施形態では、サブフロート弁80は、側壁部81と天井部82を一体成形した部材と、底板部87とを、接着等により接合して構成している。側壁部81および天井部82を一体成形した部材と底板部87との接合部は、全周に亘って気密性および液密性を有することが好ましい。底板部87の中央部には開口部88が形成されている。これにより、本実施形態のサブフロート弁80の空気溜まり凹部83は、下端開口の面積が上部の横断面積よりも小さくなっている。
第1、第2の実施形態でも説明したように、車両が旋回走行等を行い横方向の加速度が加わると、燃料タンク2内で液体燃料が偏在し、燃料液面が傾斜して液面レベルが上昇する。
傾斜した液面が上昇してくると、サブフロート弁80の下端が液体燃料に覆われて浮かび始める際には、液面の傾斜に伴い、例えば図14に二点鎖線で示す位置まで液体燃料が浸入してしまう。本実施形態の満タン制御弁装置では、空気溜まり凹部83の下端開口面積を小さくすることで、サブフロート弁80が浮かび始める際の液体燃料浸入量を低減し、浮力低下を抑制することができる。すなわち、サブフロート弁80のフロート機能が低下することを防止することができる。
ちなみに、開口部88を有する底板部87を設けていないサブフロート弁80の場合には、図14に破線で示す位置にまで液体燃料が浸入し、本実施形態の構成よりも浮力が低下する。
本実施形態のサブフロート弁80の変形例を図15に示す。図15に示すサブフロート弁80は、側壁部81と天井部82を一体成形した部材と、底板部87Aとを、例えばスナップフィットにより係合させて構成している。側壁部81および天井部82を一体成形した部材と底板部87Aとの係合部は、全周に亘って気密性および液密性を有することが好ましい。側壁部81および天井部82を一体成形した部材と底板部87Aとは、係合によらず、接着や溶着等により接合するものであってもよい。また、側壁部81、天井部82および底板部87Aは、ブロー成形等により一体成形するものであってもよい。
底板部87Aの中央部には、下方に向かって突出する筒状部871が形成されている。そして、筒状部871の下端が開口部88となっている。これにより、本例のサブフロート弁80の空気溜まり凹部83は、下端開口の面積が上部の横断面積よりも小さくなっている。また、底板部87Aの上面は、筒状部871の上端から外方に向かうにしたがって漸次上方に位置する傾斜面となっている。
車両が旋回走行等を行い横方向の加速度が加わり傾斜した燃料液面が上昇してくると、サブフロート弁80の下端が液体燃料に覆われて浮かび始める際には、液面の傾斜に伴い、例えば図15に二点鎖線で示す位置まで液体燃料が浸入する。
本例の満タン制御弁装置では、空気溜まり凹部83の下端開口面積を小さくするとともに、開口部88を筒状部871の下端に形成している。したがって、サブフロート弁80が浮かび始める際の液体燃料の浸入を筒状部871内の一部のみとして、液体燃料浸入量を一層低減し、浮力低下を確実に抑制することができる。すなわち、サブフロート弁80のフロート機能が低下することを確実に防止することができる。
ちなみに、開口部88を有する底板部87Aを設けていないサブフロート弁80の場合には、図15に破線で示す位置にまで液体燃料が浸入し、本実施形態の構成よりも浮力が低下する。
また、図15に示すサブフロート弁80は、底板部87Aの上面を、筒状部871の上端から外方に向かうにしたがって徐々に上方に位置する傾斜面としている。したがって、液面の傾斜が比較的大きく、例えば図15に一点鎖線で示す位置まで液体燃料が浸入したとしても、液体燃料浸入量の増大を抑制することが可能である。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について図16に基づいて説明する。
本第4の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、フロート弁50のフロートの構成が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
図16に示すように、本実施形態では、フロート弁50のフロート160は、中間部よりも下方の下方部160aの外径に対して、中間部よりも上方の上方部160bの外径のほうが小さくなっている。
このような構成により、容器体36の側壁部37の内周面とフロート160の外周面との間の間隔は、フロート160の下方部160aと側壁部37との間よりも、フロート160の上方部160bと側壁部37との間の方が大きくなっている。すなわち、容器体36の側壁部37の内周面とフロート160の外周面との間の液体燃料を収容可能な空間の横断面積は、上部よりも下部のほうが小さくなっている。
したがって、容器体36内に貯留された液体燃料が液抜き穴39から排出されていく際に、容器体36内の液面を、上部では緩やかに低下させ、下部では上部よりも速やかに低下させることができる。これにより、フロート弁50の閉弁状態維持時間を確実に確保するとともに、その後の開弁を速やかに行なうことが可能である。
図16では、フロート160の中間部よりも下方の下方部160aの外径に対して、中間部よりも上方の上方部160bの外径のほうを小さくすることで、容器体36の側壁部37の内周面とフロート160の外周面との間の液体燃料を収容可能な空間の横断面積を、上部よりも下部のほうが小さくなるようにしていた。しかしながら、これに限定されるものではない。容器体36の側壁部37の内周面の径を上部と下部とで変更して、液体燃料を収容可能な空間の横断面積を、上部よりも下部のほうが小さくなるようにしてもよい。また、容器体36の側壁部37の内周面の径、および、フロート160の外周面の径の両者を、上部と下部とで変更して、液体燃料を収容可能な空間の横断面積を、上部よりも下部のほうが小さくなるようにしてもよい。
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について図17〜図19に基づいて説明する。
本第5の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、給油後に車両が走行を開始した際に、容器体内の液体燃料を速やかに排出する構成を追加した点が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
図17に示すように、本実施形態の容器体136には、底面部38の中央に、上方から下方に向かって凹んだ曲面状の凹部136aが形成されている。凹部136aの中央には、底面部38を上下方向に貫通する排出口136bが形成されている。そして、凹部136a内には、排出口136bよりも径が大きい球状弁体136c(排出口開閉弁に相当)が配設されている。
凹部136aの周囲(スプリング75よりも内方)には立設壁136dが設けられており、球状弁体136cが凹部136a内から離脱しないようになっている。立設壁136dは凹部136aを取り囲む全周には形成されておらず、凹部136a内への液体燃料の流入を阻害しないようになっている。換言すれば、立設壁136dは凹部136aを全周に亘って取り囲むように立設するとともに、周方向の一部に上下方向に延びるスリットが形成されて、凹部136a内への液体燃料の流入を阻害しないようになっている。
図18に球状弁体配設部位の拡大図を示す。図18に示すように、底面部38の凹部136a内において、排出口136bの周縁部は、球状弁体136cが排出口136bを閉じる際に接触するシール面1361となっている。
シール面1361と立設壁136dの内側面1362(内周側の表面)とは、接続曲面1363により接続されている。接続曲面1363の曲率半径Ra(図18に図示する縦断面における接続曲面1363の曲率半径、容器体136の軸線を通る断面における接続曲面1363の曲率半径)は、球状弁体136cの半径Rよりも大きくなっている。接続曲面1363は、シール面1361と内側面1362とを滑らかに(傾きの変化が不連続とならないように)接続している。
このような構成により、給油中等、車両が停止しているときには、球状弁体136cは凹部136a内の中央に位置して排出口136bを閉塞する。このとき、球状弁体136cは、シール面1361に全周に亘って接触している。一方、車両が停止状態から走行を開始したときには、球状弁体136cは慣性によって容器体136に対して相対的に横方向へ移動し、球状弁体136cは排出口136bを開放する。このとき、球状弁体136cは、シール面1361から離れる。
したがって、給油後に車両が走行を開始した際には、球状弁体136cが排出口136bを開いて、液抜き穴39および排出口136bから容器体136内の液体燃料を速やかに排出することができ、フロート弁50の開弁状態を速やかに形成することができる。
排出口136bの通路断面積は、何ら限定されるものではないが、液抜き穴39の通路断面積よりも大きい方が好ましい。排出口136bの通路断面積を大きく形成することで、容器体136内の液体燃料を極めて速やかに排出することが可能となる。また、異物等が詰まることも防止することが可能である。
また、給油後に車両が走行を開始した際には、球状弁体136cが容器体に対して相対的に横方向に移動するが、球状弁体136cが立設壁136dに衝突することを抑止することができる。シール面1361と立設壁136dの内側面1362とは、球状弁体136cの半径Rよりも大きい曲率半径Raを有する接続曲面1363により滑らかに接続されているので、立設壁136dに向かって横方向に移動した球状弁体136cは、接続曲面1363に沿って徐々に方向を変えながら移動する。
例えば、球状弁体136cは、図18に二点鎖線で示すように移動する。このとき、球状弁体136cの中心は、図18に示す一点鎖線矢印のように滑らかに移動方向を変更する。これにより、球状弁体136cが立設壁136dに衝突することを抑止することができる。このようにして、球状弁体136cが移動した際の衝突音の発生を抑止することができる。球状弁体136cは、シール面1361から離れて容器体36内を移動する際には、常に容器体36に一点で点接触していため、衝突音を発生することはない。
図19に比較例を示すように、球状弁体136cの半径Rよりも小さい曲率半径Rbを有する接続曲面9363によりシール面1361と立設壁136dの内側面1362とを接続した容器体936の場合には、横方向に移動した球状弁体136cは、図19に二点鎖線で示すように移動して(中心が一点鎖線矢印で示すように移動して)点接触で立設壁136dに衝突し、衝突音を発生してしまう。すなわち、球状弁体136cが容器体936内を移動して立設壁136dに接触するときには、複数の点(本比較例では二点)で容器体936に接触することになり、このときに衝突音が発生する。
また、本実施形態の構成によれば、シール面1361から離れて立設壁136dの内側面1362に接触する位置に移動した球状弁体136cが、シール面1361に接触する位置に戻る際にも、球状弁体136cは接続曲面1363に沿って徐々に方向を変えながら移動する。したがって、球状弁体136cが、凹部136aの上面に衝突して衝突音を発生することを抑止できる。
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
上記各実施形態では、フロート弁50の下方にサブフロート弁80を配設する構成であったが、これに限定されるものではない。サブフロート弁80は、ケーシング10内に形成された通気通路40の排気方向(燃料タンク2内から燃料タンク2外への排気方向)において、フロート弁50を収容する容器体36、136よりも上流部にあればよい。すなわち、サブフロート弁80は、フロート弁50よりも、排気方向上流側で通気通路40を開閉するものであればよい。
したがって、例えば、図20に示すように、フロート弁50の側方にサブフロート弁80を配設するものであってもよい。これによると、満タン制御弁装置1の高さ方向の寸法を小さくすることが可能である。例えば、燃料タンクの満タン液面レベルである第1所定レベルが燃料タンクの天井部に近接している場合には、フロート弁50とサブフロート弁80とを横方向に並設して高さ寸法を小さくした満タン制御弁装置を用いることが有効である。
また、上記各実施形態では、フロート弁50は、上下方向に変位する際には、フロート60、160のガイドリブ63と容器体36の側壁部37との摺接により案内されていたが、これに限定されるものではない。例えば、図21に示すように、シールプレート65の筒部68を上方に延設して、この筒部68の外周面と摺接するスリット付き円筒部をアッパケース20に設け、フロート60、160のガイドリブ63と容器体36の側壁部37との摺接、および、シールプレート65の筒部68とアッパケース20の円筒部との摺接により、フロート弁50を案内するものであってもよい。これによれば、上下2箇所で案内することができるので、フロート弁50の軸線が傾かないように安定してフロート弁50を変位させることができる。
また、上記各実施形態では、サブフロート弁80は、下端面から上方に向かって凹んだ空気溜まり凹部83と、空気溜まり凹部83内とサブフロート弁80よりも排気方向下流側の通気通路40とを連通する空気抜き孔84とを有する構成であったが、これに限定されるものではない。例えば、図22に示すように、上端面から下方に向かって凹んだ空気溜まり凹部183と、底部182(下壁部)に空気溜まり凹部183内とサブフロート弁よりも排気方向上流側(下方側)とを連通して空気溜まり凹部183内に液体燃料を流入可能な液体流入孔184とを有する構成としても、サブフロート弁として機能させることができる。また、例えば、図23に示すように、下端面から上方に向かって凹んだ空気溜まり凹部83と上端面から下方に向かって凹んだ空気溜まり凹部183とを組み合わせる構成であっても、サブフロート弁として機能させることが可能である。
また、上記各実施形態では、液抜き穴39を容器体36、136の側壁部37に設けていたが、これに限定されるものではない。例えば、容器体36の底面部38に液抜き穴39を設けてもかまわない。
また、上記第5の実施形態では、容器体136の底面部38に凹部136aを設けて排出口136bを形成し、凹部136a内に球状弁体136cを配設するという比較的簡単な構成で、排出口開閉弁としていたが、車両が停止状態にあるときには排出口を確実に閉じ、車両が停止状態から走行を開始したときには、排出口を確実に開くものであれば、排出口開閉弁はこれに限定されるものではない。
また、上記各実施形態では、ケーシング10は、アッパケース20、ロアケース30、キャップ11およびエンドキャップ15の4つの部材で構成していたが、これに限定されるものではなく、3つ以下もしくは5つ以上の部材で構成するものであってもかまわない。
また、上記各実施形態では、満タン制御弁装置1は、燃料タンク2の内部空間と燃料タンク2の外部にあるキャニスタ9とを連通可能に接続する通気通路を開閉する弁装置であったが、燃料タンクの内部と外部とを連通する通気通路を開閉するものであれば、キャニスタを備えない場合にも適用可能である。
ひとつの発明では、車両に搭載された燃料タンクに取り付けられ、燃料タンクの内部と外部とを連通して燃料タンクの内部の気体を燃料タンクの外部へ排気可能な通気通路が形成されたケーシングと、ケーシング内に形成された収容空間に上下動自在に設けられ、ケーシング内の液体燃料に浮いて、ケーシング内の燃料液面の上下動に伴い通気通路を開閉する第1のフロート弁と、を備え、燃料タンク内の燃料液面が上昇して第1所定レベルに到達して、ケーシング内の燃料液面が押し上げられ第1所定レベルより高い第2所定レベルとなったときに、第1のフロート弁が通気通路を閉塞するようになっており、ケーシングは、第2所定レベルよりも上方に、燃料タンクの内部空間と第1フロート弁の収容空間とを連通する通気孔を有する満タン制御弁装置であって、ケーシングは、底面部を有するとともに内部に第1のフロート弁が配設される容器体を備え、容器体は、底面部よりも上方に設けられ、第2所定レベルに到達するまで液体燃料を容器体の内部に導入する導入口と、導入口よりも下方において容器体を貫通するように設けられ、導入口から内部に導入された液体燃料を外部へ排出する排出通路と、を有し、排出通路の通路断面積が、導入口の開口面積よりも小さくなっており、ケーシング内の容器体を配設した部位よりも通気通路の排気方向の上流部に形成された収容空間に上下動自在に設けられ、ケーシング内の燃料液面の上下動に伴い通気通路を開閉する第2のフロート弁を備え、第2のフロート弁は、下端面から上方に向かって凹んだ空気溜まり凹部と、空気溜まり凹部内と第2のフロート弁よりも排気方向下流側の通気通路とを連通する空気抜き孔と、を有しており、燃料タンク内の燃料液面が上昇して第1所定レベルに到達して、ケーシング内の排気方向の上流部に形成された収容空間において燃料液面が押し上げられて、第1所定レベルより高い第3所定レベルとなったときに、空気溜まり凹部に空気が溜まっている場合には、第2のフロート弁がケーシング内の液体燃料に浮いて通気通路を閉塞し、空気溜まり凹部の空気が空気抜き孔から排出されて空気溜まり凹部に液体燃料が浸入している場合には、第2のフロート弁がケーシング内の液体燃料に浮かず通気通路を開放することを特徴としている。
これによると、例えば燃料タンクを搭載した車両が旋回走行等を行い、燃料タンク内の満タン制御弁装置装着位置で燃料液面が大きく第1所定レベル以上にまで上昇したとしても、ケーシング内の液面が第3所定レベルまで上昇すると、第2のフロート弁が液体燃料に浮いて通気通路を閉塞する。車両旋回走行時等の液面変化は比較的急激であるので、空気溜まり凹部内の空気は空気抜き孔から排出され難く、液面が第3所定レベルまで上昇したときには第2のフロート弁が通気通路を容器体よりも排気方向上流部で速やかに閉塞し、液面が第3所定レベルから下降したときには通気通路を速やかに開放する。したがって、車両が旋回走行等を行い、燃料タンク内の液面レベルが大きく変化したとしても、容器体の内部に液体燃料が浸入し第1のフロート弁が閉弁することを防止することができる。これにより、車両が旋回走行等を行った直後であっても、燃料タンク内に給油することが可能である。また、第2のフロート弁の空気溜まり凹部内から空気が排出され難いので、第2のフロート弁体が液体燃料に浮かばなくなることはない。
車両が走行状態から停止して給油を行う場合には、給油直前に車両が旋回走行等を行っていたとしても、第2のフロート弁の空気溜まり凹部内には空気が溜まっている。この状態で1回目のオートストップ機構作動時まで燃料タンク内へ給油していき、燃料タンク内の燃料液面が第1所定レベルに到達すると、ケーシング内の液面が第3所定レベルまで上昇したときには第2のフロート弁が通気通路を容器体よりも排気方向上流部で速やかに閉塞する。したがって、1回目のオートストップ時に容器体の内部に液体燃料が浸入することを防止することができる。これによると、1回目のオートストップ時には、第1のフロート弁が通気通路を閉塞しないので、燃料タンク内の気体を通気孔を介して燃料タンクの外部へ排出し、燃料タンク内の内圧の上昇が抑止される。したがって、1回目のオートストップ時(初回給油時)に燃料タンクの給油口から燃料が溢れ出すことを防止することができる。
1回目のオートストップ時には、ケーシング内を第3所定レベルまで上昇した液面が若干時間維持されるので、第2のフロート弁の空気溜まり凹部内の空気が空気抜き孔から排出されて空気溜まり凹部内に液体燃料が浸入する。これに伴い、第2のフロート弁はフロート機能を失い液体燃料内に沈む。
このように、1回目のオートストップ時に第2のフロート弁のフロート機能が失われると、2回目のオートストップ時(追加給油時)には、液体燃料がケーシング内を押し上げられて容器体の内部にまで導入される。燃料液面が第1所定レベルより高い第2所定レベルとなると、容器体の内部に配設された第1のフロート弁を上昇させて閉弁状態を形成する。
ケーシングは、第2所定レベルよりも上方となる部位に、燃料タンクの内部空間とフロート弁の収容空間とを連通する通気孔を有しており、ケーシング内の気圧と燃料タンク内の気圧とが徐々に平衡となるが、容器体の液体燃料の導入口は底面部よりも上方にあるので、液体燃料は容器体内の導入口よりも下方に貯留され、導入口よりも下方に設けられた排出通路から排出されていく。排出通路の通路断面積は導入口の開口面積よりも小さいので、排出通路を介する容器体内からの液体燃料の排出速度は抑制される。したがって、容器体内に一旦導入された液体燃料の貯留時間を比較的長くすることができる。このようにして、第1のフロート弁の閉弁状態維持時間を延長することができ、更なる追加給油を防止することができる。
上述した満タン制御弁装置によれば、燃料タンクを搭載した車両が給油直前に旋回走行等を行ったときに燃料タンク内の液面が大きく変化したとしても、給油が可能であり、かつ、初回給油時に給油口から燃料が溢れ出すことを防止することが可能である。
また、他の発明では、空気溜まり凹部は、下端開口の面積が上部の横断面積よりも小さいことを特徴としている。
例えば燃料タンクを搭載した車両が旋回走行等を行い、燃料タンク内の満タン制御弁装置装着位置で燃料液面が大きく第1所定レベル以上にまで上昇するときには、燃料液面が大きく傾斜する場合が多い。本請求項に記載の発明によれば、例えば燃料タンクを搭載した車両が旋回走行等を行い、燃料液面が大きく傾斜して第1所定レベル以上にまで上昇したとしても、下端開口より上部の横断面積に対して下端開口の開口面積が同等以上の空気溜まり凹部に比較して、空気溜まり凹部内に浸入する液体燃料を抑制することができる。これにより、車両が旋回走行等を行ったときに、第2のフロート弁のフロート機能が低下することを防止することができる。
また、他の発明では、第2のフロート弁は、空気溜まり凹部よりも上方に位置する上壁部と、この上壁部から垂下され、空気溜まり凹部を複数に区画する区画壁部と、を有することを特徴としている。
これによれば、第2のフロート弁の空気溜まり凹部は、上方の上壁部から垂下された区画壁部により複数に区画されている。したがって、燃料液面が大きく傾斜して第1所定レベル以上にまで上昇したとしても、区画されていない空気溜まり凹部に比較して、空気溜まり凹部内に浸入する液体燃料を抑制することができる。これにより、車両が旋回走行等を行ったときに、第2のフロート弁のフロート機能が低下することを防止することができる。
また、他の発明では、容器体に形成され、容器体の内部に収容された液体燃料を外部へ排出するための、排出通路とは異なる排出口と、車両が停止状態にあるときには排出口を閉じ、車両が停止状態から走行を開始した際には排出口を開く排出口開閉弁と、を有することを特徴としている。これによると、給油後に車両が走行を開始した際には、排出開閉弁が排出口を開いて容器体内の液体燃料を速やかに排出することができ、第1のフロート弁の開弁状態を速やかに形成することができる。
また、他の発明では、排出口は、容器体の底部を貫通するように形成され、排出口開閉弁は、容器体の内部に配設された球状弁体を有し、車両が停止状態にあるときには、球状弁体が底部の排出口の周縁部に形成されたシール面に接触して、排出口を閉じ、車両が停止状態から走行を開始した際には、球状弁体が慣性によって容器体に対して相対的に横方向に移動してシール面から離れて、排出口を開くようになっており、容器体は、シール面よりも外周側において底部から上方に向かって立設する立設壁を具備しており、シール面と立設壁の内周側の面とは、球状弁体の半径よりも大きい曲率半径を有する接続曲面により滑らかに接続されていることを特徴としている。
これによると、給油後に車両が走行を開始した際には、球状弁体が慣性によって容器体に対して相対的に横方向に移動してシール面から離れて排出口を開く。シール面と立設壁の内周側の面とは球状弁体の半径よりも大きい曲率半径を有する接続曲面により滑らかに接続されているので、立設壁に向かって横方向に移動した球状弁体は、接続曲面に沿って徐々に方向を変えながら移動する。したがって、球状弁体が立設壁に衝突することを防止することができる。これにより、球状弁体が移動した際の衝突音の発生を抑制することができる。
また、他の発明では、容器体の内面と第1のフロート弁の外面との間の液体燃料を収容可能な空間の横断面積は、上部よりも下部のほうが小さくなっていることを特徴としている。これによると、容器体内に貯留された液体燃料が排出通路から排出されていく際に、容器体内の液面を、上部では緩やかに低下させ、下部では上部よりも速やかに低下させることができる。したがって、第1のフロート弁の閉弁状態維持時間を確実に確保するとともに、その後の開弁を速やかに行なうことができる。
また、他の発明では、第2のフロート弁は、第1のフロート弁よりも下方に配設されていることを特徴としている。これによると、満タン制御弁装置の横方向の寸法を小さくすることが可能である。例えば、燃料タンクの天井部に開口を設けて満タン制御弁装置を燃料タンクに装着する場合には、燃料タンクに形成する開口を小さくすることが可能である。
また、他の発明では、第2のフロート弁は、第1のフロート弁の側方に配設されていることを特徴としている。これによると、満タン制御弁装置の高さ方向の寸法を小さくすることが可能である。例えば、燃料タンクの満タン液面レベルである第1所定レベルが燃料タンクの天井部に近接している場合には、本請求項に記載の満タン制御弁装置を用いれば極めて有効である。