JP6020282B2 - 歯車嵌脱装置及びエンジン始動装置 - Google Patents

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Description

本発明は、歯車の嵌脱動作を行う歯車嵌脱装置、及びこの歯車嵌脱装置を備えるエンジン始動装置に関する。
歯車の嵌脱動作を行う歯車嵌脱装置を備えるエンジン始動装置の関連技術が下記特許文献1に開示されている。特許文献1では、駆動源からの動力により回転駆動される回転軸に駆動歯車が軸線方向に移動可能な状態で係合し、駆動歯車は、軸線方向の所定噛合位置にあるときに被動歯車と噛み合い、所定噛合位置より軸線方向の他方側の非噛合位置にあるときにカムプレートと接触する。エンジンの始動を行うために、駆動歯車を非噛合位置から所定噛合位置に軸線方向一方側へ移動させて被動歯車と噛み合わせる際には、駆動源からの動力により回転軸を回転駆動するとともに、カムプレートから駆動歯車に軸線方向一方側(被動歯車側)への押付力を作用させることで、駆動歯車の軸線方向一方側への移動を開始させる。駆動歯車が所定噛合位置まで移動して被動歯車と噛み合った状態でストッパに当接すると、駆動歯車が回転軸とともにに回転することで被動歯車を回転駆動し、エンジンのクランキングが行われる。エンジンの始動後に、被動歯車が回転している状態で駆動源によるトルクの発生を停止させると、駆動歯車が所定噛合位置から非噛合位置に軸線方向他方側へ移動し、駆動歯車と被動歯車との噛み合いが解除される。特許文献1によれば、駆動源の回転駆動により駆動歯車の嵌脱動作と回転動作の両方が可能となる。
国際公開第2012/53552号 特表2010−506113号公報
特許文献1において、駆動歯車と被動歯車との噛み合いを解除するために、駆動源によるトルクの発生を停止させた後、駆動歯車が所定噛合位置から非噛合位置へ向けて軸線方向他方側に移動する際には、駆動源(回転軸)の回転速度が減少し、駆動歯車と被動歯車との噛み合いが解除されると駆動歯車の回転速度が減少し、その後、回転軸及び駆動歯車が回転停止に到る。ただし、回転軸の回転及び駆動歯車の回転が継続している状態で、駆動歯車がカムプレートに接触すると、カムプレートから駆動歯車に軸線方向一方側への押付力が作用する。この押付力によって、駆動歯車の移動方向が軸線方向の他方側から一方側へ変化すると、駆動歯車の歯が被動歯車の歯と接触して再度噛み合おうとする。駆動歯車の歯が被動歯車の歯と接触して再度噛み合おうとすると、駆動歯車の回転速度が再度上昇し、駆動歯車の回転速度が回転軸よりも高くなると、駆動歯車の移動方向が軸線方向の一方側から他方側へ変化する。このように、駆動歯車が軸線方向に往復移動することになり、この駆動歯車の往復移動が振動・騒音の原因となる。
本発明は、駆動歯車と被動歯車との噛み合いを解除するために、駆動歯車が非噛合位置へ向けて移動する際に、駆動歯車が軸線方向に往復移動するのを抑止することを目的とする。
本発明に係る歯車嵌脱装置及びエンジン始動装置は、上述した目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明に係る歯車嵌脱装置は、駆動源からの動力が伝達されることで所定方向に回転する回転軸と、回転軸にその軸線方向に移動可能な状態で係合する駆動歯車と、駆動歯車が軸線方向の所定噛合位置にある場合に駆動歯車と噛み合う被動歯車と、駆動歯車が前記所定噛合位置より軸線方向の一方側へ移動するのを抑制するための移動抑制装置と、駆動歯車が前記所定噛合位置より軸線方向の他方側の非噛合位置にあり、回転軸が前記所定方向に回転するときに、駆動歯車に軸線方向の一方側への移動力を作用させる移動力発生機構と、を備え、駆動歯車の回転速度が設定回転速度よりも高い場合は、移動力発生機構による移動力が駆動歯車に作用するのを抑止する移動力抑止機構が駆動歯車に設けられていることを要旨とする。
本発明の一態様では、移動力発生機構は、駆動歯車が前記非噛合位置にあるときに、固定部材と駆動歯車との位相差の発生に応じて、固定部材から駆動歯車に軸線方向の一方側への押付力を作用させる機構であり、移動力抑止機構は、駆動歯車の回転速度が設定回転速度よりも高い場合は、固定部材から被押付部に押付力が作用するのを抑止する機構であることが好適である。
本発明の一態様では、移動力抑止機構は、駆動歯車の回転速度が設定回転速度よりも高い場合は、被押付部を遠心力により固定部材と接触しないように移動させる機構であることが好適である。
本発明の一態様では、駆動歯車は、回転軸が該駆動歯車に対して前記所定方向に相対的に回転するのに応じて、軸線方向の一方側へ移動することが好適である。
本発明の一態様では、駆動歯車は、回転軸が該駆動歯車に対して前記所定方向に相対的に回転するのに応じて、軸線方向の一方側へ移動し、移動力発生機構は、駆動歯車が前記非噛合位置にあるときに、固定部材に設けられた当接部が駆動歯車と当接することで、固定部材に対する駆動歯車の軸線方向の移動を許容しつつ、固定部材に対する駆動歯車の前記所定方向の回転を拘束または制限する機構であり、移動力抑止機構は、駆動歯車の回転速度が設定回転速度よりも高い場合は、駆動歯車の当接部が固定部材の当接部に当接するのを抑止する機構であることが好適である。
本発明の一態様では、移動力抑止機構は、駆動歯車の回転速度が設定回転速度よりも高い場合は、駆動歯車の当接部を遠心力により固定部材の当接部と接触しないように移動させる機構であることが好適である。
また、本発明に係るエンジン始動装置は、動力を発生する駆動源と、本発明に係る歯車嵌脱装置と、を備え、被動歯車と連結されたエンジンの始動を行うことを要旨とする。
本発明によれば、駆動歯車の回転速度が設定回転速度よりも高い場合は、駆動歯車に軸線方向の一方側への移動力が作用するのを抑止することで、駆動歯車と被動歯車との噛み合いを解除するために、駆動歯車が非噛合位置へ向けて移動する際に、回転軸の回転及び駆動歯車の回転が継続している状態で、駆動歯車に軸線方向の一方側への移動力が作用するのを抑止することができ、駆動歯車が軸線方向に往復移動するのを抑止することができる。
本発明の実施形態1に係る歯車嵌脱装置を備えるエンジン始動装置の概略構成を示す図である。 本発明の実施形態1に係るエンジン始動装置の動作を説明する図である。 本発明の実施形態1に係るエンジン始動装置の動作を説明する図である。 本発明の実施形態1に係るエンジン始動装置の動作を説明する図である。 本発明の実施形態1に係る歯車嵌脱装置の概略構成を示す図である。 本発明の実施形態1に係る歯車嵌脱装置の概略構成を示す図である。 本発明の実施形態1に係る歯車嵌脱装置の概略構成を示す図である。 本発明の実施形態1に係るエンジン始動装置の動作を説明する図である。 本発明の実施形態1に係るエンジン始動装置の動作を説明する図である。 本発明の実施形態1に係るエンジン始動装置の動作を説明する図である。 本発明の実施形態1に係るエンジン始動装置の動作を説明する図である。 駆動歯車が非噛合位置へ向けて移動する際に、駆動歯車が軸線方向に往復移動する場合の動作を説明する図である。 本発明の実施形態1に係るエンジン始動装置の動作を説明する図である。 本発明の実施形態1に係る歯車嵌脱装置の他の概略構成を示す図である。 本発明の実施形態1に係るエンジン始動装置の他の動作を説明する図である。 本発明の実施形態2に係る歯車嵌脱装置を備えるエンジン始動装置の概略構成を示す図である。 本発明の実施形態2に係る歯車嵌脱装置の概略構成を示す図である。 本発明の実施形態2に係るエンジン始動装置の動作を説明する図である。 本発明の実施形態2に係るエンジン始動装置の動作を説明する図である。 本発明の実施形態2に係る歯車嵌脱装置の他の概略構成を示す図である。 本発明の実施形態2に係るエンジン始動装置の他の動作を説明する図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
「実施形態1」
図1は、本発明の実施形態1に係る歯車嵌脱装置を備えるエンジン始動装置の概略構成を示す図である。駆動源10は、例えば電動機(モータ)により構成することができ、その出力軸に動力を発生させることが可能である。回転軸12は、駆動源10の出力軸に機械的に連結されており、ベアリング13を介してハウジング15に回転自在に支持されている。回転軸12の軸線方向(図1の左右方向)に関する移動は固定されている。回転軸12は、駆動源10からの動力が伝達されることで、所定の一方向(以下所定方向とする)に回転する。回転軸12の外周面には、ねじ(おねじ)22が形成されている。
駆動歯車14は、平歯車であり、外周部に歯14aが形成された外歯車により構成することができる。駆動歯車14の中心部には、回転軸12を通すための貫通穴が形成されており、貫通穴の内周面には、ねじ(めねじ)24が形成されている。回転軸12は駆動歯車14の貫通穴を貫通して通されており、回転軸12に形成されたおねじ22と駆動歯車14に形成されためねじ24とのねじ係合により、駆動歯車14が回転軸12に支持されている。ねじ22,24は、軸線方向の一方側(図1の左側)から他方側(図1の右側)へ向かうにつれて回転軸12の回転方向(所定方向)と同方向に螺旋して形成されている。図1は、ねじ22,24が右ねじである例を示している。
ガイド歯車18は、平歯車であり、外周部に歯18aが形成された外歯車により構成することができる。駆動歯車14とガイド歯車18とで、ピッチ円半径及び歯数は互いに等しい。ガイド歯車18は、駆動歯車14より軸線方向の一方側に配置された状態で、ラチェット機構20を介して駆動歯車14に支持されている。一方向回転許容機構として設けられたラチェット機構20は、ガイド歯車18が駆動歯車14に対して所定方向(図1の例では駆動源10側(図の右側)から回転軸12を見た場合に反時計方向)に相対的に回転しようとする場合は、解放(フリー)状態となることで、その相対回転を許容する。一方、ラチェット機構20は、ガイド歯車18が駆動歯車14に対して所定方向と逆方向(図1の例では駆動源10側(図の右側)から回転軸12を見た場合に時計方向)に相対的に回転しようとする場合は、係合(ロック)状態となることで、その相対回転を拘束する。その際には、駆動歯車14の歯14aとガイド歯車18の歯18aの位相が互いに一致する状態で、駆動歯車14に対するガイド歯車18の所定方向と逆方向の相対回転が拘束される。駆動歯車14に対するガイド歯車18の軸線方向の相対変位は拘束されている。なお、ラチェット機構20自体の構成は公知であるため詳細な説明を省略する。
駆動歯車14の回転が停止した状態で回転軸12が所定方向(図1の例では駆動源10側(図の右側)から回転軸12を見た場合に反時計方向)に回転する場合や、駆動歯車14の所定方向の回転速度N2が回転軸12の所定方向の回転速度N1より低い場合等、回転軸12が駆動歯車14に対して所定方向に相対的に回転する場合は、回転軸12と駆動歯車14とのねじ係合により、駆動歯車14に対する回転軸12の相対回転運動が、回転軸12の軸線方向に沿った駆動歯車14の直線運動に変換されることで、駆動歯車14がガイド歯車18とともに回転軸12の軸線方向の一方側(図1の左側、駆動源10から離れる側)へ移動する。一方、回転軸12の回転が停止した状態で駆動歯車14が所定方向に回転する場合や、駆動歯車14の所定方向の回転速度N2が回転軸12の所定方向の回転速度N1より高い場合等、回転軸12が駆動歯車14に対して所定方向と逆方向(図1の例では駆動源10側(図の右側)から回転軸12を見た場合に時計方向)に相対的に回転する場合は、駆動歯車14がガイド歯車18とともに回転軸12の軸線方向の他方側(図1の右側、駆動源10に近づく側)へ移動する。このように、駆動歯車14は、回転軸12にその軸線方向に移動可能な状態で係合する。
被動歯車16は、平歯車であり、外周部に歯16aが形成された外歯車により構成することができる。被動歯車16は、エンジン30の出力軸に機械的に連結されている。図2に示すように、駆動歯車14が軸線方向の所定噛合位置にあるときは、駆動歯車14の歯14aと被動歯車16の歯16aが噛み合い、ガイド歯車18の歯18aと被動歯車16の歯16aは噛み合わない。一方、図1に示すように、駆動歯車14が所定噛合位置より軸線方向の他方側の非噛合位置にあるときは、駆動歯車14の歯14aと被動歯車16の歯16aは噛み合わず、ガイド歯車18の歯18aと被動歯車16の歯16aも噛み合わない。また、駆動歯車14が所定噛合位置と非噛合位置との間の軸線方向位置にあるときは、例えば図3に示すように、ガイド歯車18の歯18aと被動歯車16の歯16aが噛み合い、駆動歯車14の歯14aと被動歯車16の歯16aは噛み合わない。あるいは、例えば図4に示すように、駆動歯車14の歯14aとガイド歯車18の歯18aの両方が被動歯車16の歯16aと噛み合う。
図5に示すように、ガイド歯車18の歯18aの回転方向後側(所定方向後側)の歯面には、軸線方向に対してその一方側から他方側にかけて回転方向後側(所定方向後側)へ傾斜したガイド側テーパ面18bが形成されている。そして、被動歯車16の歯16aの回転方向前側(エンジン回転方向前側)の歯面には、軸線方向に対してその一方側から他方側にかけて回転方向後側(エンジン回転方向後側)へ傾斜した被動側テーパ面16bが形成されている。ガイド歯車18のガイド側テーパ面18bと被動歯車16の被動側テーパ面16bは互いに平行である。
回転軸12における所定噛合位置より軸線方向の一方側には、移動抑制装置としてのストッパ26が取り付けられている。駆動歯車14が所定噛合位置(被動歯車16と噛み合う位置)まで移動したときに、駆動歯車14(あるいはガイド歯車18)の軸線方向の一端部がストッパ26に当接することで、駆動歯車14が所定噛合位置より軸線方向の一方側へ移動するのが抑制される。軸線方向におけるストッパ26と駆動歯車14(ガイド歯車18)との間には、付勢装置としての付勢ばね28が設けられている。付勢ばね28は、駆動歯車14及びガイド歯車18に軸線方向の他方側への付勢力を作用させる。
押付部材としてのカムプレート32は、駆動歯車14(非噛合位置)より軸線方向の他方側に配置され、ハウジング15に機械的に連結されていることで回転が固定されている。カムプレート32における駆動歯車14との対向面(軸線方向一方側の端面)にはカム面32bが形成されている。駆動歯車14の軸線方向他方側の端部には、被押付部材44がカムプレート32(カム面32b)と対向して設けられており、被押付部材44におけるカムプレート32(カム面32b)との対向面(軸線方向他方側の端面)にはカム面44bが形成されている。
本実施形態では、図6,7に示すように、複数の被押付部材44が駆動歯車14の周方向(以下単に周方向とする)に互いに間隔をおいて(等間隔で)配置され、各被押付部材44が支持軸45により駆動歯車14に支持されている。各支持軸45は、軸線方向及び駆動歯車14の径方向(以下単に径方向とする)と垂直な方向に沿って(あるいはほぼ沿って)延びており、各被押付部材44は、駆動歯車14に対して支持軸45まわりに回動可能に支持されている。さらに、各被押付部材44は、支持ばね46によっても駆動歯車14に支持されている。各支持ばね46は、被押付部材44を径方向外側から支持し、圧縮されることで弾性力を被押付部材44に作用させる圧縮ばねである。各支持ばね46から被押付部材44に作用する弾性力は、径方向内側への成分を有する。
駆動歯車14の回転速度N2が設定回転速度N0以下である場合は、被押付部材44に作用する径方向外側への遠心力が、支持ばね46から被押付部材44に作用する弾性力の径方向内側への成分以下であるため、図7に示すように、被押付部材44は遠心力によって径方向外側へ移動せず、被押付部材44のカム面44bがカムプレート32のカム面32bと軸線方向に対向する状態が維持される。これによって、カムプレート32のカム面32bが被押付部材44のカム面44bと接触するのが許容される。
一方、駆動歯車14の回転速度N2が設定回転速度N0よりも高い場合は、被押付部材44に作用する径方向外側への遠心力が、支持ばね46から被押付部材44に作用する弾性力の径方向内側への成分よりも大きくなるため、図8に示すように、被押付部材44が遠心力によって支持軸45まわりに回動しながら径方向外側へ移動して支持ばね46を圧縮する。これによって、被押付部材44のカム面44bがカムプレート32のカム面32bと軸線方向に対向しなくなり、カムプレート32のカム面32bが被押付部材44のカム面44bと接触するのが抑止される。ここでの設定回転速度N0については、支持ばね46の弾性係数により調整可能である。また、駆動歯車14に対する被押付部材44の軸線方向及び周方向の支持剛性は、被押付部材44の支持ばね46による径方向の支持剛性と比較して、十分高いことが好ましい。
駆動歯車14の回転が停止している等、駆動歯車14の回転速度N2が設定回転速度N0以下である条件が成立しており、駆動歯車14が軸線方向の非噛合位置(図1に示す状態)にあるときは、被押付部材44のカム面44bがカムプレート32のカム面32bと接触する。駆動歯車14が軸線方向の非噛合位置にあるときに、駆動歯車14がカムプレート32に対して相対的に回転してカムプレート32と駆動歯車14(被押付部材44)との間に位相差が発生すると、カムプレート32のカム面32bが被押付部材44のカム面44bを軸線方向の一方側へ押圧する。これによって、カムプレート32から駆動歯車14に軸線方向の一方側への押付力が作用し、カムプレート32に対する駆動歯車14の相対回転が抑制される。このように、駆動歯車14の回転速度N2が設定回転速度N0以下である場合は、カムプレート32から駆動歯車14(被押付部材44)に押付力が作用するのが許容される。なお、カムプレート32と被押付部材44との位相差の発生に応じてカムプレート32から駆動歯車14に押付力を作用させるためのカム面32b,44bの構成自体は、トルクカム機構を適用して実現可能であるため詳細な説明を省略する。
次に、本実施形態に係るエンジン始動装置の動作、特に、駆動源10(モータ)の動力を用いてエンジン30を始動する場合の動作について説明する。
まずエンジン30(被動歯車16)の回転が停止している状態からエンジン30を始動する場合の動作について説明する。エンジン30の始動を行う前は、駆動源10(回転軸12)の回転は停止しており、駆動歯車14及びガイド歯車18の回転も停止している。さらに、図1に示すように、駆動歯車14が軸線方向の非噛合位置にあり、駆動歯車14及びガイド歯車18の両方が被動歯車16と噛み合っておらず、駆動歯車14(被押付部材44)のカム面44bがカムプレート32のカム面32bと接触している。その状態からエンジン30の始動を行う場合は、まず駆動源10に動力を発生させて回転軸12を所定方向(図1の例では駆動源10側(図の右側)から回転軸12を見た場合に反時計方向)に回転させる(図9の時刻t0)。駆動歯車14は回転軸12とともに所定方向に回転しようとするが、カムプレート32と被押付部材44との位相差の発生に応じて、回転の固定されたカムプレート32から駆動歯車14に軸線方向の一方側への押付力が作用し、カムプレート32に対する駆動歯車14の所定方向の相対回転が拘束される。これによって、回転軸12が駆動歯車14に対して所定方向に相対的に回転し、駆動歯車14がガイド歯車18とともに軸線方向の一方側(被動歯車16側)へ移動する。
駆動源10の動力を用いてエンジン30の始動を行うためには、駆動歯車14を非噛合位置から軸線方向の一方側(被動歯車16側)へ移動させて被動歯車16と噛み合わせる必要がある。ただし、駆動歯車14は、無負荷状態では、回転軸12と一体で回転し、軸線方向には移動しない。回転軸12の回転時に、駆動歯車14の軸線方向への移動を開始させるためには、回転軸12と駆動歯車14との間に回転差を発生させる必要があり、そのためには、駆動歯車14の回転を拘束または低減するための抵抗力を駆動歯車14に作用させて駆動歯車14に負荷をかける必要がある。本実施形態では、駆動歯車14が非噛合位置にあり、回転軸12が所定方向に回転するときに、回転の固定されたカムプレート32から駆動歯車14に軸線方向の一方側への押付力を抵抗力として作用させて駆動歯車14に負荷をかけることで、駆動歯車14の所定方向の回転を拘束または低減することができる。これによって、駆動歯車14を軸線方向の一方側へ移動させるための力(移動力)をカムプレート32から駆動歯車14へ作用させることができ、駆動歯車14の軸線方向一方側(被動歯車16側)への移動を開始させることができる。その際には、駆動歯車14の回転速度N2が前述の設定回転速度N0以下であり、被押付部材44のカム面44bがカムプレート32のカム面32bと軸線方向に対向する状態が維持されることで、カムプレート32から駆動歯車14(被押付部材44)に押付力が作用するのが許容され、駆動歯車14を軸線方向の一方側へ移動させるための移動力がカムプレート32から駆動歯車14に作用するのが許容される。
駆動歯車14が非噛合位置から軸線方向の一方側へ移動すると、図3に示すように、まずガイド歯車18が被動歯車16と噛み合う。カムプレート32は、駆動歯車14が非噛合位置にあるときからガイド歯車18が被動歯車16と噛み合うまで、カム面32bが駆動歯車14(被押付部材44)のカム面44bを軸線方向の一方側へ押圧し続けることで、駆動歯車14に軸線方向の一方側への押付力を抵抗力(軸線方向の一方側へ移動させるための力)として作用させ続ける。その際には、駆動歯車14の回転速度N2が前述の設定回転速度N0以下である条件が成立し、被押付部材44のカム面44bがカムプレート32のカム面32bと軸線方向に対向する状態が維持されるように、支持ばね46の弾性係数(前述の設定回転速度N0)を調整する。また、カムプレート32が被押付部材44を押圧する範囲(駆動歯車14の移動距離)は、カム面32b,44bのプロフィールの設計により調整可能である。ガイド歯車18が被動歯車16と噛み合う際には、図10に示すように、ラチェット機構20の解放により、ガイド歯車18の歯18aが被動歯車16の歯16a間に嵌合可能になる位置までガイド歯車18の歯18aの位相が変化する。
ガイド歯車18と被動歯車16の噛み合い後は、駆動歯車14の歯14aとガイド歯車18の歯18aの位相が互いに一致する状態でラチェット機構20が係合状態となり、エンジン30の回転要素を含む被動歯車16側の回転要素が駆動歯車14の負荷となる。そのため、ガイド歯車18と被動歯車16の噛み合い後は、カムプレート32から駆動歯車14に押付力が作用しなくても、回転軸12が駆動歯車14に対して所定方向に相対的に回転し続け、回転軸12の回転運動が駆動歯車14の直線運動に変換され続けることで、駆動歯車14がガイド歯車18とともに軸線方向の一方側へ移動し続ける。その際には、駆動歯車14が軸線方向の一方側へ移動可能なように、付勢ばね28の付勢力が設定される。駆動歯車14及びガイド歯車18が軸線方向の一方側へさらに移動すると、図4に示すように、ガイド歯車18と駆動歯車14の両方が被動歯車16と噛み合う。
駆動歯車14がガイド歯車18とともに軸線方向の一方側へさらに移動し続けると、駆動歯車14及びガイド歯車18のうち、ガイド歯車18が被動歯車16と噛み合わなくなり、駆動歯車14だけが被動歯車16と噛み合う。そして、図2に示すように、駆動歯車14が所定噛合位置まで移動すると、駆動歯車14(あるいはガイド歯車18)の軸線方向の一端部がストッパ26に当接することで、駆動歯車14の軸線方向一方側への移動が拘束されて停止する(図9の時刻t1)。その状態で、駆動源10からの動力により回転軸12を所定方向に回転させ続けると、回転軸12の回転運動が駆動歯車14の直線運動に変換されなくなり、駆動歯車14が回転軸12とともに所定方向に回転する。したがって、駆動源10の動力が駆動歯車14と被動歯車16との噛み合いによりエンジン30の出力軸(被動歯車16)に伝達されることで、被動歯車16が駆動されてエンジン30のクランキングが行われる。その結果、駆動源10の動力を用いてエンジン30を始動することができる。エンジン30のクランキングの際には、駆動歯車14の回転速度N2が前述の設定回転速度N0よりも高い条件が成立するように、前述の設定回転速度N0を駆動源10(回転軸12)の回転速度N1よりも十分低い値に設定する。なお、ストッパ26は回転軸12とともに回転するため、駆動歯車14がストッパ26に当接した状態で回転しても、駆動歯車14とストッパ26との間に摩擦による損失は発生しない。
エンジン30の始動後は、エンジン30(被動歯車16)が回転している状態で、駆動源10によるトルクの発生を停止させる(図9の時刻t2)。回転軸12の所定方向の回転速度N1は減少して駆動歯車14より低くなるため、回転軸12が駆動歯車14に対して所定方向と逆方向(図1の例では駆動源10側(図の右側)から回転軸12を見た場合に時計方向)に相対的に回転することになる。そのため、図11に示すように、駆動歯車14は、回転軸12に対して所定方向に回転しながら、ガイド歯車18とともに非噛合位置(図1の状態)へ向けて軸線方向の他方側に移動する。その際には、駆動歯車14の回転速度N2が前述の設定回転速度N0よりも高い条件が成立し、被押付部材44のカム面44bがカムプレート32のカム面32bと軸線方向に対向しない。さらに、付勢ばね28による軸線方向の他方側への付勢力によっても、駆動歯車14を軸線方向の他方側へ移動させるための復元力を作用させることができる。
駆動源10によるトルクの発生を停止させた後、駆動歯車14が非噛合位置へ向けて軸線方向の他方側に移動する際には、駆動源10(回転軸12)の回転速度N1が減少し、駆動歯車14と被動歯車16との噛み合いが解除されると駆動歯車14の回転速度N2が減少し、その後、回転軸12及び駆動歯車14が回転停止に到る。ただし、回転軸12の回転及び駆動歯車14の回転が継続している状態で、被押付部材44のカム面44bがカムプレート32のカム面32bに接触すると、カムプレート32から駆動歯車14(被押付部材44)に軸線方向の一方側への押付力が作用する(図12の時刻t3)。この押付力によって、駆動歯車14の所定方向の回転速度N2が回転軸12よりも低くなって、駆動歯車14の移動方向が軸線方向の他方側から一方側へ変化すると、駆動歯車14の歯14aが被動歯車16の歯16aと接触して再度噛み合おうとする(図12の時刻t4)。駆動歯車14の歯14aが被動歯車16の歯16aと接触して再度噛み合おうとすると、駆動歯車14の所定方向の回転速度N2が再度上昇し、駆動歯車14の所定方向の回転速度N2が回転軸12よりも再度高くなると、駆動歯車14の移動方向が軸線方向の一方側から他方側へ変化する。このように、駆動歯車14が軸線方向に往復移動することになり、この駆動歯車14の往復移動が振動・騒音の原因となる。さらに、回転軸12及び駆動歯車14が回転停止に到ったときに、駆動歯車14が非噛合位置(図1の状態)まで戻らなくなる場合も生じる。
これに対して本実施形態では、エンジン30の始動後、駆動歯車14が所定方向に回転しながら非噛合位置へ向けて軸線方向の他方側に移動する際には、図8に示すように、被押付部材44が遠心力によって支持軸45を支点として回動しながら径方向外側へ移動することで、被押付部材44のカム面44bがカムプレート32のカム面32bと軸線方向に対向しなくなる。その際には、駆動歯車14の回転速度N2が前述の設定回転速度N0よりも高い条件が成立し、被押付部材44のカム面44bがカムプレート32のカム面32bと軸線方向に対向しなくなるように、支持ばね46の弾性係数(前述の設定回転速度N0)を調整する。例えば、前述の設定回転速度N0が、駆動源10の動力によりエンジン30のクランキングを行っている(被動歯車16を駆動している)ときの駆動源10(回転軸12)の回転速度N1よりも十分低くなるように、支持ばね46の弾性係数(前述の設定回転速度N0)を設定する。これによって、カムプレート32のカム面32bが被押付部材44のカム面44bと接触するのが抑止され、回転軸12の回転及び駆動歯車14の回転が継続している状態であっても、カムプレート32から駆動歯車14(被押付部材44)に軸線方向の一方側への押付力が作用するのが抑止され、駆動歯車14を軸線方向の一方側へ移動させるための移動力がカムプレート32から駆動歯車14に作用するのが抑止される(図9の時刻t3以降)。したがって、図9の時刻t3以降に示すように、駆動歯車14の移動方向が軸線方向の他方側から一方側へ変化するのが抑止され、駆動歯車14が軸線方向に往復移動するのが抑止される。その結果、駆動歯車14の往復移動による振動・騒音を低減することができる。さらに、回転軸12及び駆動歯車14が回転停止に到ったときに、駆動歯車14を非噛合位置(図1の状態)まで確実に戻すことが可能となる。
図1に示すように、駆動歯車14が非噛合位置まで移動した状態では、駆動源10(回転軸12)の回転は停止し、駆動歯車14及びガイド歯車18の回転も停止し、駆動歯車14及びガイド歯車18の両方が被動歯車16と噛み合っておらず、さらに、図7に示すように、被押付部材44が支持ばね46の弾性力によって支持軸45まわりに回動しながら径方向内側へ戻ることで、被押付部材44のカム面44bがカムプレート32のカム面32bと接触する。そのため、エンジン30の始動後は、エンジン30(被動歯車16)が回転していても、駆動歯車14とカムプレート32との間や、駆動歯車14とガイド歯車18との間等に、摺動による引き摺り損失等の機械的損失及び騒音は発生しない。したがって、被動歯車16が回転している状態で駆動源10を停止させる場合(エンジン30の始動後)における機械的損失及び騒音を低減することができる。
また、車両駆動用のエンジン30および、アイドリングストップ機構を備える車両は微速走行時においてエンジン30からの駆動を停止する場合がある。そのため、エンジン30が動力を発生していなくても、エンジン出力軸すなわち被動歯車16が回転している状態からエンジン30を始動する場合も生じる。エンジン30(被動歯車16)が回転している状態からエンジン30を始動する場合の動作も、基本的には、エンジン30(被動歯車16)の回転が停止している状態からエンジン30を始動する場合と同様である。ただし、ガイド歯車18と被動歯車16が噛み合う場合に、ガイド歯車18の歯18aと被動歯車16の歯16aがぶつかるときは、図13に示すように、ラチェット機構20の解放により、ガイド歯車18の回転方向後側(所定方向後側)のガイド側テーパ面18bが被動歯車16の回転方向前側(エンジン回転方向前側)の被動側テーパ面16b上を滑りながら、ガイド歯車18の歯18aが被動歯車16の歯16a間に嵌合する。そして、ガイド歯車18と被動歯車16の噛み合い後に、駆動歯車14の所定方向の回転速度N2がガイド歯車18の所定方向の回転速度まで増加すると、駆動歯車14の歯14aとガイド歯車18の歯18aの位相が互いに一致する状態でラチェット機構20が係合状態となる。したがって、被動歯車16が回転していても、ガイド歯車18を被動歯車16と容易に噛み合わせることができ、駆動歯車14を被動歯車16と容易に噛み合わせることができる。
以上説明した本実施形態では、駆動歯車14と回転軸12との回転差により駆動歯車14を軸線方向に移動させることができるため、駆動源10の回転駆動により駆動歯車14の嵌脱動作と回転動作の両方が可能となる。さらに、本実施形態では、駆動歯車14の回転速度N2が設定回転速度N0よりも高い場合は、図8に示すように、被押付部材44が遠心力によってカムプレート32(カム面32b)と接触しないように移動することで、カムプレート32から駆動歯車14(被押付部材44)に軸線方向の一方側への押付力が作用するのが抑止され、駆動歯車14を軸線方向の一方側へ移動させるための移動力がカムプレート32から駆動歯車14に作用するのが抑止される。これによって、エンジン30の始動後、駆動歯車14が所定方向に回転しながら非噛合位置へ向けて軸線方向の他方側に移動する際に、回転軸12の回転及び駆動歯車14の回転が継続している状態で、カムプレート32から駆動歯車14に軸線方向の一方側への押付力(移動力)が作用するのを抑止することができる。その結果、駆動歯車14が軸線方向に往復移動するのを抑止することができ、この駆動歯車14の往復移動による振動・騒音を低減することができる。さらに、回転軸12及び駆動歯車14が回転停止に到ったときに、駆動歯車14を非噛合位置まで確実に戻すことができる。
本実施形態では、例えば図14に示すように、各支持ばね46は、被押付部材44を径方向内側から支持し、引っ張られることで弾性力を被押付部材44に作用させる引張ばねであってもよい。その構成例では、駆動歯車14の回転速度N2が設定回転速度N0よりも高い場合は、図15に示すように、被押付部材44が遠心力によって支持軸45まわりに回動しながら径方向外側へ移動して支持ばね46を引っ張る。
また、本実施形態では、ガイド歯車18及びラチェット機構20を省略することも可能である。その場合は、カムプレート32は、駆動歯車14が非噛合位置にあるときから被動歯車16と噛み合うまで、カム面32bが駆動歯車14(被押付部材44)のカム面44bを軸線方向の一方側へ押圧し続けることで、駆動歯車14に軸線方向の一方側への押付力を抵抗力(軸線方向の一方側へ移動させるための力)として作用させ続ける。
「実施形態2」
図16は、本発明の実施形態2に係る歯車嵌脱装置を備えるエンジン始動装置の概略構成を示す図である。以下の実施形態2の説明では、実施形態1と同様の構成または対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略する構成については実施形態1と同様である。
本実施形態では、回転の固定されたハウジング15の内周部には、径方向内側へ突出した複数の当接部(凸部)35が周方向に互いに間隔をおいて(等間隔で)配置されており、各当接部35は軸線方向に沿って(あるいはほぼ沿って)延びている。そして、駆動歯車14の外周部(歯14aより軸線方向他方側の位置)には、径方向外側へ突出した複数の当接部(凸部)34が周方向に互いに間隔をおいて(当接部35同士の間隔と等間隔で)配置されており、各当接部34は軸線方向に沿って(あるいはほぼ沿って)延びている。さらに、駆動歯車14(当接部34)を軸線方向の他方側から見た図17に示すように、各当接部34は連結部材37を介してウェイト38と連結されており、当接部34と連結部材37とウェイト38が連結部材37の位置で支持軸55により駆動歯車14に支持されている。各支持軸55は、軸線方向に沿って(あるいはほぼ沿って)延びており、各当接部34及びウェイト38は、駆動歯車14に対して支持軸55まわりに回動可能に支持されている。さらに、各当接部34は、支持ばね56によっても駆動歯車14に支持されている。各支持ばね56は、当接部34を径方向内側から支持し、圧縮されることで弾性力を被押付部材44に作用させる圧縮ばねである。各支持ばね56から当接部34に作用する弾性力は、径方向外側への成分を有する。図17では、複数の当接部34のうちの1つを図示し、他の当接部34の図示を省略しているが、他の当接部34についても同様の構成である。
駆動歯車14の回転速度N2が設定回転速度N0以下である場合は、ウェイト38の遠心力によって当接部34から支持ばね56に作用する力(当接部34が支持ばね56を圧縮しようとする力)が、支持ばね56から当接部34に作用する弾性力以下であるため、図17に示すように、当接部34はウェイト38の遠心力によって径方向内側へ移動しない。その場合は、駆動歯車14の当接部34の径方向位置がハウジング15の当接部35の径方向位置と一致し、駆動歯車14が非噛合位置にあるときに、駆動歯車14の当接部34がハウジング15の当接部35と接触するのが許容される。
一方、駆動歯車14の回転速度N2が設定回転速度N0よりも高い場合は、ウェイト38の遠心力によって当接部34から支持ばね56に作用する力が、支持ばね56から当接部34に作用する弾性力よりも大きくなるため、図18に示すように、当接部34がウェイト38の遠心力によって支持軸55まわりに回動しながら径方向内側へ移動して支持ばね56を圧縮する。これによって、駆動歯車14の当接部34がハウジング15の当接部35よりも径方向内側に位置し、駆動歯車14が非噛合位置にあるときに、駆動歯車14の当接部34がハウジング15の当接部35と接触するのが抑止される。ここでの設定回転速度N0については、ウェイト38の重量や支持ばね56の弾性係数により調整可能である。また、駆動歯車14に対する当接部34の軸線方向及び周方向の支持剛性は、当接部34の支持ばね56による径方向の支持剛性と比較して、十分高いことが好ましい。
駆動歯車14が非噛合位置にあるときに、駆動歯車14の当接部34が回転軸12の回転方向(所定方向)の後方からハウジング15の当接部35に当接することで、ハウジング15に対する駆動歯車14の所定方向の回転が拘束される。ただし、駆動歯車14の当接部34はハウジング15の当接部35に対して軸線方向に移動可能であるため、ハウジング15に対する駆動歯車14の軸線方向の移動は許容される。なお、当接部34,35は、軸線方向に対して周方向に傾斜して延びていてもよく、その場合でも、ハウジング15に対する駆動歯車14の軸線方向の移動を許容しつつ、駆動歯車14の所定方向の回転速度N2が回転軸12の所定方向の回転速度N1より低くなるように、ハウジング15に対する駆動歯車14の回転を制限することが可能である。
本実施形態でも、エンジン30の始動を行う前は、駆動源10(回転軸12)の回転は停止し、駆動歯車14及びガイド歯車18の回転も停止し、駆動歯車14が非噛合位置にある。その状態からエンジン30の始動を行う場合は、駆動源10に動力を発生させて回転軸12を所定方向(図16の例では駆動源10側(図の右側)から回転軸12を見た場合に反時計方向)に回転させる。駆動歯車14は当接部34,35同士の当接によってハウジング15に対する回転が拘束または制限されているため、回転軸12が駆動歯車14に対して所定方向に相対的に回転し、駆動歯車14がガイド歯車18とともに軸線方向の一方側(被動歯車16側)へ移動する。このように、駆動歯車14が非噛合位置にあり、回転軸12が所定方向に回転するときに、回転の固定されたハウジング15から駆動歯車14に当接部34,35同士の当接による回転拘束力を抵抗力として作用させて駆動歯車14に負荷をかけることで、駆動歯車14の所定方向の回転を拘束または制限することができる。これによって、駆動歯車14を軸線方向の一方側へ移動させるための移動力をハウジング15から駆動歯車14へ作用させることができ、駆動歯車14の軸線方向一方側(被動歯車16側)への移動を開始させることができる。さらに、駆動歯車14が非噛合位置にあるときからガイド歯車18が被動歯車16と噛み合うまで、ハウジング15に対する駆動歯車14の軸線方向の移動を許容しつつ、当接部34,35同士の当接による回転拘束力を抵抗力(軸線方向の一方側へ移動させるための力)として駆動歯車14に作用させ続ける。その際には、駆動歯車14の回転速度N2が前述の設定回転速度N0以下である条件が成立し、駆動歯車14の当接部34がハウジング15の当接部35に当接する状態が維持されるように、ウェイト38の重量及び支持ばね56の弾性係数(前述の設定回転速度N0)を調整する。ガイド歯車18が被動歯車16と噛み合った後は、当接部34,35同士の当接が解除される(駆動歯車14に回転拘束力が作用しなくなる)ことで駆動歯車14の回転が許容され、エンジン30の回転要素を含む被動歯車16側の回転要素が駆動歯車14の負荷となる。その後のエンジン30を始動するまでの動作は実施形態1と同様である。
エンジン30の始動後に、エンジン30(被動歯車16)が回転している状態で、駆動源10によるトルクの発生を停止させると、図19に示すように、駆動歯車14が所定方向に回転しながらガイド歯車18とともに非噛合位置へ向けて軸線方向の他方側に移動する。その際には、駆動源10(回転軸12)の回転速度N1が減少し、駆動歯車14と被動歯車16との噛み合いが解除されると駆動歯車14の回転速度N2が減少し、その後、回転軸12及び駆動歯車14が回転停止に到る。ただし、回転軸12の回転及び駆動歯車14の回転が継続している状態で、駆動歯車14の当接部34がハウジング15の当接部35に当接すると、ハウジング15から駆動歯車14に回転拘束力が作用する。この回転拘束力によって、駆動歯車14の所定方向の回転が拘束または制限されて、駆動歯車14の移動方向が軸線方向の他方側から一方側へ変化すると、駆動歯車14の歯14aが被動歯車16の歯16aと接触して再度噛み合おうとする。これによって、前述のように、駆動歯車14が軸線方向に往復移動することになり、この駆動歯車14の往復移動が振動・騒音の原因となる。さらに、回転軸12及び駆動歯車14が回転停止に到ったときに、駆動歯車14が非噛合位置まで戻らなくなる場合も生じる。
これに対して本実施形態では、エンジン30の始動後、駆動歯車14が所定方向に回転しながら非噛合位置へ向けて軸線方向の他方側に移動する際には、図18に示すように、駆動歯車14の当接部34がウェイト38の遠心力によって支持軸55を支点として回動しながら径方向内側へ移動することで、駆動歯車14の当接部34がハウジング15の当接部35に当接するのが抑止される。その際には、駆動歯車14の回転速度N2が前述の設定回転速度N0よりも高い条件が成立し、駆動歯車14の当接部34がハウジング15の当接部35よりも径方向内側に位置するように、ウェイト38の重量及び支持ばね56の弾性係数(前述の設定回転速度N0)を調整する。例えば、前述の設定回転速度N0が、駆動源10の動力によりエンジン30のクランキングを行っている(被動歯車16を駆動している)ときの駆動源10(回転軸12)の回転速度N1よりも十分低くなるように、ウェイト38の重量及び支持ばね56の弾性係数(前述の設定回転速度N0)を設定する。これによって、回転軸12の回転及び駆動歯車14の回転が継続している状態であっても、ハウジング15から駆動歯車14に回転拘束力が作用するのが抑止され、駆動歯車14を軸線方向の一方側へ移動させるための移動力がハウジング15から駆動歯車14に作用するのが抑止される。したがって、駆動歯車14の移動方向が軸線方向の他方側から一方側へ変化するのが抑止され、駆動歯車14が軸線方向に往復移動するのが抑止される。
図16に示すように、駆動歯車14が非噛合位置まで移動した状態では、駆動源10(回転軸12)の回転は停止し、駆動歯車14及びガイド歯車18の回転も停止し、駆動歯車14及びガイド歯車18の両方が被動歯車16と噛み合っておらず、さらに、駆動歯車14の当接部34が、支持ばね56の弾性力によって支持軸55まわりに回動しながら径方向外側へ戻ることで、ハウジング15の当接部35と接触する。そのため、エンジン30の始動後は、エンジン30(被動歯車16)が回転していても、駆動歯車14とハウジング15との間や、駆動歯車14とガイド歯車18との間等に、摺動による引き摺り損失等の機械的損失及び騒音は発生しない。
以上説明した本実施形態では、駆動歯車14の回転速度N2が設定回転速度N0よりも高い場合は、図18に示すように、駆動歯車14の当接部34が遠心力によってハウジング15の当接部35と接触しないように移動することで、ハウジング15から駆動歯車14に回転拘束力が作用するのが抑止される。これによって、エンジン30の始動後、駆動歯車14が所定方向に回転しながら非噛合位置へ向けて軸線方向の他方側に移動する際に、回転軸12の回転及び駆動歯車14の回転が継続している状態で、ハウジング15から駆動歯車14に回転拘束力(軸線方向の一方側への移動力)が作用するのを抑止することができる。その結果、駆動歯車14が軸線方向に往復移動するのを抑止することができ、この駆動歯車14の往復移動による振動・騒音を低減することができる。さらに、回転軸12及び駆動歯車14が回転停止に到ったときに、駆動歯車14を非噛合位置まで確実に戻すことができる。
本実施形態では、例えば図20に示すように、各支持ばね56は、ウェイト38を径方向内側から支持し、引っ張られることで弾性力をウェイト38に作用させる引張ばねであってもよい。その構成例では、駆動歯車14の回転速度N2が設定回転速度N0よりも高い場合は、図21に示すように、当接部34がウェイト38の遠心力によって支持軸55まわりに回動しながら径方向内側へ移動して支持ばね56を引っ張る。
また、本実施形態でも、ガイド歯車18及びラチェット機構20を省略することが可能である。その場合は、駆動歯車14が非噛合位置にあるときから被動歯車16と噛み合うまで、ハウジング15に対する駆動歯車14の軸線方向の移動を許容しつつ、当接部34,35同士の当接による回転拘束力を抵抗力(軸線方向の一方側へ移動させるための力)として駆動歯車14に作用させ続ける。
以上説明した各実施形態において、駆動歯車14に対する回転軸12の相対回転に応じて、駆動歯車14を回転軸12に対して軸線方向に移動させるための構成は、回転軸12と駆動歯車14とのねじ係合に限られるものではなく、例えば、回転軸12と駆動歯車14とのヘリカルスプライン係合により駆動歯車14を回転軸12に支持してもよいし、ボールねじ機構を介して駆動歯車14を回転軸12に支持してもよい。
また、以上説明した各実施形態では、付勢ばね28を省略することも可能である。ただし、付勢ばね28を設けた方が、被動歯車16が回転している状態で駆動源10を停止させる場合(エンジン30の始動後)に、駆動歯車14を非噛合位置までより確実に戻すことが可能となる。
本実施形態に係る歯車嵌脱装置の適用対象は、エンジン始動装置に限られるものではなく、例えばマニュアルトランスミッションのシンクロ機構等、回転中の歯車嵌脱操作を必要とする機構にも適用可能である。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
10 駆動源、12 回転軸、13 ベアリング、14 駆動歯車、14a,16a,18a 歯、15 ハウジング、16 被動歯車、16b 被動側テーパ面、18 ガイド歯車、18b ガイド側テーパ面、20 ラチェット機構、22,24 ねじ、26 ストッパ、28 付勢ばね、30 エンジン、32 カムプレート、32b,44b カム面、34,35 当接部、37 連結部材、38 ウェイト、44 被押付部材、45,55 支持軸、46,56 支持ばね。

Claims (7)

  1. 駆動源からの動力が伝達されることで所定方向に回転する回転軸と、
    回転軸にその軸線方向に移動可能な状態で係合する駆動歯車と、
    駆動歯車が軸線方向の所定噛合位置にある場合に駆動歯車と噛み合う被動歯車と、
    駆動歯車が前記所定噛合位置より軸線方向の一方側へ移動するのを抑制するための移動抑制装置と、
    駆動歯車が前記所定噛合位置より軸線方向の他方側の非噛合位置にあり、回転軸が前記所定方向に回転するときに、駆動歯車に軸線方向の一方側への移動力を作用させる移動力発生機構と、
    を備え、
    駆動歯車の回転速度が設定回転速度よりも高い場合は、移動力発生機構による移動力が駆動歯車に作用するのを抑止する移動力抑止機構が駆動歯車に設けられている、歯車嵌脱装置。
  2. 請求項1に記載の歯車嵌脱装置であって、
    移動力発生機構は、駆動歯車が前記非噛合位置にあるときに、固定部材と駆動歯車との位相差の発生に応じて、固定部材から駆動歯車に軸線方向の一方側への押付力を作用させる機構であり、
    移動力抑止機構は、駆動歯車の回転速度が設定回転速度よりも高い場合は、固定部材から被押付部に押付力が作用するのを抑止する機構である、歯車嵌脱装置。
  3. 請求項2に記載の歯車嵌脱装置であって、
    移動力抑止機構は、駆動歯車の回転速度が設定回転速度よりも高い場合は、被押付部を遠心力により固定部材と接触しないように移動させる機構である、歯車嵌脱装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1に記載の歯車嵌脱装置であって、
    駆動歯車は、回転軸が該駆動歯車に対して前記所定方向に相対的に回転するのに応じて、軸線方向の一方側へ移動する、歯車嵌脱装置。
  5. 請求項1に記載の歯車嵌脱装置であって、
    駆動歯車は、回転軸が該駆動歯車に対して前記所定方向に相対的に回転するのに応じて、軸線方向の一方側へ移動し、
    移動力発生機構は、駆動歯車が前記非噛合位置にあるときに、固定部材に設けられた当接部が駆動歯車と当接することで、固定部材に対する駆動歯車の軸線方向の移動を許容しつつ、固定部材に対する駆動歯車の前記所定方向の回転を拘束または制限する機構であり、
    移動力抑止機構は、駆動歯車の回転速度が設定回転速度よりも高い場合は、駆動歯車の当接部が固定部材の当接部に当接するのを抑止する機構である、歯車嵌脱装置。
  6. 請求項5に記載の歯車嵌脱装置であって、
    移動力抑止機構は、駆動歯車の回転速度が設定回転速度よりも高い場合は、駆動歯車の当接部を遠心力により固定部材の当接部と接触しないように移動させる機構である、歯車嵌脱装置。
  7. 動力を発生する駆動源と、
    請求項1〜6のいずれか1に記載の歯車嵌脱装置と、
    を備え、
    被動歯車と連結されたエンジンの始動を行う、エンジン始動装置。
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