JP6020017B2 - 耐再熱割れ性と強度、靭性に優れたCr−Mo鋼板およびその製造方法 - Google Patents

耐再熱割れ性と強度、靭性に優れたCr−Mo鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、発電、石油化学あるいは石油精製プラントなどにおける、中・高温の蒸気環境や水素環境などで使用される、強度・靭性に優れ、かつ、溶接時の低温割れ性とその後の溶接後熱処理(以下、PWHT(Post Weld Heat Treatment)とも称する)中に生じる再熱割れに対する耐再熱割れ性に優れた中・高温用のCr−Mo鋼板およびその製造方法に関し、特に板厚が10mm以上の厚鋼板で、圧力容器用として好適なものに関する。なお、本発明において、Cr−Mo鋼とは、CrおよびMoを含有する鋼を指すものとする。
発電、石油化学あるいは石油精製プラントなどで用いられる1 1/4Cr−1/2Mo鋼や1Cr−1/2Mo鋼などの中・高温用のCr−Mo鋼板は、中・高温での強度や耐水蒸気酸化特性、耐エロージョン・コロージョン性などに優れるが、溶接部で発生する低温割れとその後のPWHT中に生じる再熱割れに対して比較的感受性が高いため、溶接時の厳格な予熱管理(通常、200℃〜250℃程度)および再熱割れ防止対策が不可欠で、施工時の負荷が大きい。そのため、施工時の負荷軽減のため、予熱温度の低減や耐再熱割れ性の向上が求められている。
特許文献1には、厚肉材において、Ti、Bを添加し、N含有量を制限し、焼入れ性向上とCuやNi等の添加により強度・靭性を確保することにより、Cの低減を可能にし、溶接時の耐低温割れ性を改善する方法が提案されている。
また、1 1/4Cr−1/2Mo鋼および1Cr−1/2Mo鋼は、例えば非特許文献1に示されているように、再熱割れ感受性が高いことが知られている。特許文献2、3、4には、特許文献1と同様、Ti、Bの添加およびCu、Niの添加、さらにはV添加によりCを低減した成分において、極低Al化により耐再熱割れ性を改善する技術が開示されている。
特許文献5には、特許文献1と同様、Ti、Bの添加およびCu、Niの添加によりCを低減した成分において、Ca添加による固溶Sの固定、Cu、Ni添加量の制限により耐再熱割れ性を改善する技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1の技術は、厚肉材の製造に関するものであり、耐再熱割れ性に対する改善は図られていない。特許文献2〜5は、特許文献1に対し、耐再熱割れ性の改善を図る技術であるが、特許文献2〜5に示された極低Al化による改善技術は、一般に、耐再熱割れ性を低下させる元素であるSの低減との両立が困難であることや、脱酸元素のAlを低減することにより酸素レベルが高くなることによる鋼の清浄性の低下や靭性の低下が問題となるなど、製鋼段階での負荷が高く、結果としてコストアップに繋がる。
さらに、特許文献2〜5に開示された鋼は、いずれもB添加の成分組成であるが、Bの耐再熱割れ性への影響については述べられておらず、その評価方法もJIS Z 3158のy型溶接割れ試験片を用いた再熱割れ試験である。
当該再熱割れ試験は拘束ビードのパス数によって試験ビードへの負荷応力を調整するもので、付与できるパス数には上限があるため、耐再熱割れ性をより改善することを目的とした場合、より厳しい試験方法を適用することが必要となる。
そこで、本発明は、従来のy型溶接割れ試験片を用いた評価では、耐再熱割れ性に優劣がつかない場合にも、優劣を付けることが可能な、さらに厳密な方法で評価した場合でも優れた耐再熱割れ性が得られる耐再熱割れ性と強度、靭性に優れたCr−Mo鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
発明者等は、Cr−Mo鋼の強度・靭性および溶接時の耐低温割れ性を確保しつつ、耐再熱割れ性を改善することを目的とし、鋭意、検討を重ね、得られた知見より以下の成分設計指針を得た。
(1)C量を低くすることで、溶接時の耐低温割れ性を改善する。
(2)Bは耐再熱割れ性を低下させるため、無添加とする。混入Bも0.0003%以下に制限する。
(3)Tiは酸化物などの介在物を形成し、特に粒界上に存在した場合は、それが割れの起点となり、耐再熱割れ性を低下させるため、無添加とする。混入Tiも0.005%以下に制限する。
(4)母材の強度・靭性を確保するために、CuとNiを適量添加する。Niは耐再熱割れ性を低下させることなく強度上昇に寄与するため、0.5%超えで、かつ、Cu+Ni≧0.55%とする。
(5)焼入れまたは焼ならし時の冷却速度を1℃/s以上とすることにより、強度・靭性を確保する。
(6)酸素レベルを低く抑えることにより、HAZでの介在物の生成を制御する。
(7)Sを低く抑えると共に、Ca添加により固溶SをCaSとして固定することにより耐再熱割れ性を改善する。
なお、これらの成分設計指針を得るための検討においては、耐再熱割れ性を評価する試験方法として、シリンダー型試験片(非特許文献2による)を用いる方法で行った。溶接部の任意の位置での評価が可能である。上記鋼板で溶接継手を作製し、溶接部から試験片を採取し、PWHTに相当する熱処理を施し、断面のマクロ観察により割れの有無を調査した。割れがないものを合格とした。従来のy型溶接割れ試験片を用いた評価では、耐再熱割れ性に優劣がつかない場合にも、このシリンダー型試験片を用いる方法であれば、耐再熱割れ性の評価が可能である。
本発明は、これらの成分設計指針を元に完成されたものであり、その構成は次の通りである。
1. 鋼組成が、質量%で、
C:0.03〜0.12%、
Si:0.01〜0.8%、
Mn:0.45〜1.0%、
P:0.015%以下、
S:0.003%以下、
Cu:0.05〜0.6%、
Ni:0.2〜1.5%、
Cr:0.8〜1.5%、
Mo:0.3〜0.8%、
Sol.Al:0.005〜0.040%、
Ca:0.0005〜0.005%、
N:0.005%以下、
O:0.005%以下であり、
Cu+Ni≧0.55%、1≦Ca/S≦10の関係を満足し、
B:0.0003%以下、Ti:0.005%以下に制限し、
XB値が、
XB=10000B−7700×(N−0.292Ti)<0で、
残部はFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする、耐再熱割れ性と強度、靭性に優れたCr−Mo鋼板。
各式において、元素記号は含有量(質量%)を示し、含有しない場合は0とする。
2.鋼組成が、更に、式(1)を満たすことを特徴とする、1に記載の耐再熱割れ性と強度、靭性に優れたCr−Mo鋼板。
0.6<{[Ca]−(0.18+130×[Ca])×[O]}/1.25/[S] ・・・(1)
ここで、[M]は元素Mの含有量(質量%)。
3.鋼組成に、更に、質量%で、Nb:0.05%以下を含有することを特徴とする、1または2に記載の耐再熱割れ性と強度、靭性に優れたCr−Mo鋼板。
4.鋼組成に、更に、質量%で、Mg:0.0003〜0.05%、および/または、原子番号が57〜71の希土類元素(REM)の1種類以上を合計0.001〜0.3%、を含有することを特徴とする、1乃至3の何れか一つに記載の耐再熱割れ性と強度、靭性に優れたCr−Mo鋼板。
5.鋼組成が、質量%で、
C:0.03〜0.12%、
Si:0.01〜0.8%、
Mn:0.45〜1.0%、
P:0.015%以下、
S:0.003%以下、
Cu:0.05〜0.6%、
Ni:0.2〜1.5%、
Cr:0.8〜1.5%、
Mo:0.3〜0.8%、
Sol.Al:0.005〜0.040%、
Ca:0.0005〜0.005%、
N:0.005%以下、
O:0.005%以下であり、
Cu+Ni≧0.55%、1≦Ca/S≦10の関係を満足し、
B:0.0003%以下、Ti:0.005%以下に制限し、
XB値が、
XB=10000B−7700×(N−0.292Ti)<0で、
残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼片を熱間圧延により鋼板としたのち、880℃以上の温度に再加熱し、ついで1℃/s以上の平均冷却速度で300℃以下の温度まで冷却したのち、600℃以上の温度で焼戻し処理を施すことを特徴とする、耐再熱割れ性と強度、靭性に優れたCr−Mo鋼板の製造方法。
各式において、元素記号は含有量(質量%)を示し、含有しない場合は0とする。
6.鋼組成が、更に、式(1)を満たすことを特徴とする、5に記載の耐再熱割れ性と強度、靭性に優れたCr−Mo鋼板の製造方法。
0.6<{[Ca]−(0.18+130×[Ca])×[O]}/1.25/[S] ・・・(1)
ここで、[M]は元素Mの含有量(質量%)。
7.鋼組成が、更に、質量%で、Nb:0.05%以下を含有することを特徴とする、5または6に記載の耐再熱割れ性と強度、靭性に優れたCr−Mo鋼板の製造方法。
8.鋼組成が、更に、質量%で、Mg:0.0003〜0.05%、および/または、原子番号が57〜71の希土類元素(REM)の1種類以上を合計0.001〜0.3%、を含有することを特徴とする、5乃至7の何れか一つに記載の耐再熱割れ性と強度、靭性に優れたCr−Mo鋼板の製造方法。
本発明によれば、発電、石油化学あるいは石油精製プラントなどに用いて好適な耐再熱割れ性と強度、靭性に優れたCr−Mo鋼板およびその製造方法が得られ、産業上極めて有用である。
(a)〜(c)は再熱割れ試験用シリンダー型試験片の作成方法を説明する図で、(d)は再熱割れ試験用シリンダー型試験片のノッチ部の形状を説明する図。
成分組成の限定理由について説明する。説明において%は質量%とする。
C:Cは強度確保の点から0.03%以上必要であるが、増加に伴い溶接低温割れ性は低下するため、0.12%以下とし、0.10%以下であることが好ましい。
Si:Siは強度確保および耐酸化性の向上に有効であるが、同時に、靭性の低下および焼戻し脆化感受性の増大を引き起こすため、0.01〜0.8%とする。好ましくは、0.3〜0.8%であり、さらに好ましくは0.3〜0.7%である。
Mn:Mnは強度・靭性を上昇させるのに有効であるが、同時に焼戻し脆化感受性を高めるため、0.45〜1.0%とする。
P、S:Pは焼戻し脆化を助長し、靭性を損なうとともに、再熱割れ感受性を高めるため、0.015%以下に制限する。Sは再熱割れ感受性を高めるため、0.003%以下に制限する。
Cu:Cuは焼入性を増大させ、また、固溶元素として強度を高めるので、0.05%以上添加するが、過剰に添加すると再熱割れ感受性を高め、また、クリープ強度や熱間加工性を低下させるため0.6%以下とする。
Ni:Niは焼入性を向上させると共に、靭性を改善するのに有効であるので0.2%以上を添加するが、過剰に添加すると再熱割れ感受性を高めるので1.5%以下とし、好ましくは、0.5%超え1.2%以下である。
Cu+Ni:さらに、本発明においては、低C化された成分で強度・靭性を確保するためCuとNiの合計量を0.55%以上とする。
Cr:Crは中・高温用鋼にとって重要な性能である高温強度、耐水素アタック性、耐酸化性に対して有効であり、0.8%以上含有させることが必要であるが、コストの観点から1.5%以下とする。
Mo:Moは安定的に炭化物を生成させ、Crと同様に高温強度、クリープ強度、耐水素アタック性に対して有効であるが、過度の添加は溶接性を害し、経済性を損なうため、0.3〜0.8%とする。
Sol.Al:Sol.Al(Soluble Alの略)を低く抑えることにより、耐再熱割れ性を改善することができるが、0.005%未満にするためには製鋼での負荷が大きく、また、酸素レベルの上昇を引き起こす。そして、後述するCaによる耐再熱割れ性を改善する効果を小さくしてしまうため、Sol.Al量を0.005〜0.040%とする。
Ca:Caは硫化物生成元素であり、鋼中の固溶Sを固定し耐再熱割れ性を改善する。しかし、0.005%を超えて過度に添加しても耐再熱割れ性の改善効果は飽和し、靭性や溶接性を低下させるようになるため、0.0005〜0.005%とする。
Ca/S:Caによる耐再熱割れ性の改善効果が発揮されるのは、CaとSの比Ca/Sが、1〜10のときであるので、本発明においては、CaとSの比Ca/Sを1〜10の範囲に限定する。
N、O:Nが過剰の場合、溶接性を低下させるため、0.005%以下に制限する。
O(酸素)は、酸化物系介在物の生成による延性や靭性、溶接性の低下を防止し、Ca添加の効果を最大限に引き出すため、0.005%以下に限定する。好ましくは、0.003%以下である
以上が基本成分組成で、S量の上限値の制限およびCa/S値の適正範囲の制限との組み合わせにより、優れた耐再熱割れ性を有するが、ACR値を下記(2)式を満足するように規定することで耐再熱割れ性はより向上する。
0.6<{[Ca]−(0.18+130×[Ca])×[O]}/1.25/[S]・・・(1)、式において[Ca]、[S]、[O]は、各元素の含有量(質量%)を示す。
ACR値(={[Ca]−(0.18+130×[Ca])×[O]}/1.25/[S])は、硫化物形態制御に有効なCaとSの原子濃度の比を示し、硫化物の形態を推定することができる。
ACR値が0より大きい場合、高温でも溶解しないCaSが生成し、耐再熱割れ性を低下させる固溶S量が低減する。ACR値が増加するに伴い、Caによって固定されるS量が増加し、溶接部での固溶S量が減少し、耐再熱割れ性が向上する。
この効果はACR値が0.6以上で顕著に現れるようになり、1以上でSが完全にCaによって固定され、MnSが析出しなくなる。従って、本発明ではACR値は0.6以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは1以上とする。なお、ACR値が0以下の場合、CaSが晶出せず、Sは、MnS単独の形態で析出する。MnSは溶接熱影響部で再溶融し、再熱割れ感受性を高める固溶S量が増加する。
本発明鋼において残部はFeおよび不可避的不純物とするが、不可避的不純物としての鋼中のB,Tiの含有量の上限を規定する。
B:Bは耐再熱割れ性を低下させる元素であるため無添加とする。不純物として混入する場合でも、Bを0.0003%以下とすることが好ましく、0.0002%以下とすることがさらに好ましい。
Ti:B無添加鋼では焼入性向上の目的で固溶Bを確保する必要がなく、Nの固定のためにしばしば添加されるTiは本発明では無添加とする。さらに、Tiは酸化物などの介在物を形成し、特に粒界上に存在した場合は、それが割れの起点となり、耐再熱割れ性を低下させるため、この観点からもTiは無添加とし、不純物として混入する場合でも、Tiを0.005%以下に制限する。
XB(=10000B−7700×(N−0.292Ti)):XB値が0未満の場合、不純物として混入した微量のBが存在してもそれは固溶Bとして存在し得ないことを表す。すなわち、XBが0未満であれば、固溶Bが存在しないので、B起因の耐再熱割れ性低下を回避することができる。式において各元素は含有量(質量%)とする。
その他、Sn、As、Sbなどの不純物元素は焼戻し脆化を引き起こし、粒界強度を低下させ、耐再熱割れ性を低下させるため、混入する場合もその含有量を、それぞれ、0.005%以下と低くすることが好ましい。
本発明では、特性を向上させる場合、更にNb、Mg、および/または、原子番号が57〜71の希土類元素(REM)の1種類以上、を添加することが可能である。
Nb:Nbは固溶元素としてあるいは析出物として強度を高める。この効果は、0.005%以上のNbを含有することにより発揮されるが、過剰な添加は強度上昇に寄与せず、溶接性や耐再熱割れ性を低下させるため、含有させる場合は、0.05%以下とすることが好ましい。
Mg、原子番号が57〜71の希土類元素(REM):MgおよびREMはともに硫化物生成元素であり、耐再熱割れ性を改善する効果を有するが、過剰に添加した場合は、靭性や耐水素浸食性、溶接性を低下させる。そのため、含有させる場合には、0.0003〜0.05%のMg、および/または、原子番号が57〜71の希土類元素(REM)の1種類以上を合計0.001%〜0.3%、を含有させることが好ましい。
次に、製造条件について説明する。圧力容器用Cr−Mo鋼で圧力容器など鋼構造物を製造する場合、熱間圧延後及び/あるいは熱間加工し、焼きならしまたは焼入れ後、焼戻しを行った後、溶接されて鋼構造物に製造された後、鋼構造物としてPWHTが施される。
上記した組成を有する鋼を、転炉、電気炉等の溶製手段で常法により溶製し、連続鋳造法または造塊〜分塊法等で常法によりスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。なお、溶製方法、鋳造法については上記した方法に限定されるものではない。また、連続鋳造法によるスラブの鋼片加熱炉への装入は熱片、温片、冷片のいずれも用いることができる。
熱間圧延条件については特に制限はなく、常法に従って行えばよい。
本発明鋼は、熱間圧延により製造された鋼板、あるいは、さらに熱間加工を施した鋼板に対して、通常の焼入れ−焼戻し処理、または、焼ならし−焼戻し処理によって製造させるが、焼入れまたは焼ならしの加熱温度は880℃以上とし、平均で1℃/s以上の冷却速度で300℃以下の温度まで冷却する。
加熱温度が880℃未満の場合、オーステナイト化が不十分であるため、焼入れ−焼戻し処理後、あるいは、焼ならし−焼戻し処理後の強度と靭性が低下する。
焼入れまたは焼ならし後の冷却速度が1℃/s未満の場合、十分な焼入性が得られず、強度と靭性が低下する。また、冷却を300℃より高い温度で停止すると、変態が不十分となり、強度と靭性が低下する。焼ならしの場合には、100℃以下の温度まで空冷すればよい。
焼戻しは、組織を安定化させ靭性と高温強度の確保する目的で行うが、600℃未満の温度での焼戻しではその効果が不十分であるため、焼戻し温度は600℃以上とする。
なお、上記した鋼板の温度は板厚方向平均温度とする。鋼板の板厚方向平均温度は、板厚、表面温度および冷却条件等から、シミュレーション計算等により求められる。例えば、差分法を用い、板厚方向の温度分布を計算することにより算出できる。また、冷却速度は前記板厚方向平均温度をもとに計算される値とする。
表1に示す化学成分の供試鋼を、種々の条件で、焼入れ−焼戻し、または焼ならし−焼戻しの後、PWHTを施した。PWHTの焼戻しパラメータ(T.P.)は、20.1×10とした。ここで、T.P.=T(20+logt)で、T:PWHT温度(K)、t:PWHT時間(h)とする。
なお、鋼BのREMとしては、市販のミッシュメタル(La、Ce、Ndを主として含む混合物)を使用した。
母材特性は、直径6mmの丸棒引張試験およびJIS Vノッチシャルピー衝撃試験により、強度と靭性を評価した。試験片の採取位置は板厚の1/4t位置、試験片の採取方向は圧延方向と垂直方向とした。常温での降伏応力(YS)が350MPa以上、引張強さ(TS)が500MPa以上、350℃での高温TSが420MPa以上、シャルピー衝撃試験での破面遷移温度(vTs)が−20℃以下を合格とした。
低温割れ性の評価は、JIS Z3158に規定するy形溶接割れ試験を予熱150℃で実施し、低温割れが発生しないものを合格とした。なお、板厚40mm以上を試験対象とし、試験片は減厚により35mmとした。板厚40mm未満の場合は、同じ成分で板厚40mm以上の厚肉材を減厚により35mmとして評価した(表2No.7)。
耐再熱割れ性の評価は、シリンダー型試験片(非特許文献2による)を用いる方法で行った。まず、上述の鋼板で溶接継手を作製し、溶接部からシリンダー型試験片を図1(a)〜(d)に示す要領で採取・作製した。
(a)試験対象の鋼(鋼板など)から、外径:10mm、内径:5mm、長さ:20mmの円筒状の部材1を採取する。
(b)(a)で採取された円筒状の部材の外周部において、長手方向全長にわたり、(d)に示す形状(幅:0.4mm、深さ:0.5mm、先端部の曲率半径:0.2mm)のノッチ2を形成する。採取された円筒状の部材1の外周部において、ノッチ2と対向する位置に、長手方向全長にわたり、幅:1.5mmの間隙3を形成する。
(c)外圧によって間隙を密着させて溶接して固定する。
このようにして作製したシリンダー型試験片を、昇温速度100℃/hで690℃まで加熱後4時間保持し、その後空冷し、断面のマクロ観察により割れの有無を調査し、割れがないものを合格とした。
表2に供試鋼板の製造条件と試験結果を示す。鋼A〜F、Rは本発明範囲内の成分であり、鋼G〜Q,Sは成分またはACR値のいずれかが本発明範囲外である。実施例No.1、2、5〜11、23は、本発明範囲を満たす成分および製造条件であり、目標特性を全て満足する開発鋼である。
一方、実施例No.3は、焼入温度が本発明範囲より低いため、焼入性が不十分となり、常温強度および靭性が目標を満足しない。実施例No.4は、焼ならし時の冷却速度が遅いため、焼入性が不十分となり、常温強度および高温強度が目標を満足しない。実施例No.12は、C成分が本発明範囲より高いため、低温割れ特性が目標を満足しない。
実施例No.13、19、21、22は、それぞれ、C、Cu+Ni、Cr、Moが本発明範囲よりも低く強度が目標を満足しない。実施例No.14〜18は、Ti、B、Caのいずれかが本発明範囲外のため、再熱割れ試験において再熱割れが発生する。実施例No.20は、Cuが本発明範囲外のため、再熱割れ試験において再熱割れが発生する。実施例No.24は、ACR値が本発明範囲外のため、再熱割れ試験において再熱割れが発生する。
Figure 0006020017
Figure 0006020017
特公昭62−50547号公報 特開平2−61035号公報 特開平4−183842号公報 特開平5−1351号公報 特開平8−144010号公報
玉置ら:溶接学会誌,第58巻,第1号(1989)p.58 内木、岡林:溶接学会誌,vol.39,No.10 (1970),p.61

Claims (8)

  1. 鋼組成が、質量%で、
    C:0.03〜0.12%、
    Si:0.01〜0.8%、
    Mn:0.45〜1.0%、
    P:0.015%以下、
    S:0.003%以下、
    Cu:0.05〜0.6%、
    Ni:0.2〜1.5%、
    Cr:0.8〜1.5%、
    Mo:0.3〜0.8%、
    Sol.Al:0.005〜0.040%、
    Ca:0.0005〜0.005%、
    N:0.005%以下、
    O:0.005%以下であり、
    Cu+Ni≧0.55%、1≦Ca/S≦10の関係を満足し、
    B:0.0003%以下、Ti:0.005%以下に制限し、
    XB値が、
    XB=10000B−7700×(N−0.292Ti)<0で、
    残部はFeおよび不可避的不純物からなり、
    降伏応力(YS)が350MPa以上、引張強さ(TS)が500MPa以上、350℃での高温TSが420MPa以上であることを特徴とする、耐再熱割れ性と強度、靭性に優れたCr−Mo鋼板。
    各式において、元素記号は含有量(質量%)を示し、含有しない場合は0とする。
  2. 鋼組成が、更に、式(1)を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の耐再熱割れ性と強度、靭性に優れたCr−Mo鋼板。
    0.6<{[Ca]−(0.18+130×[Ca])×[O]}/1.25/[S] ・・・(1)
    ここで、[M]は元素Mの含有量(質量%)。
  3. 鋼組成に、更に、質量%で、Nb:0.05%以下を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の耐再熱割れ性と強度、靭性に優れたCr−Mo鋼板。
  4. 鋼組成に、更に、質量%で、Mg:0.0003〜0.05%、および/または、原子番号が57〜71の希土類元素(REM)の1種類以上を合計0.001〜0.3%、を含有することを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一つに記載の耐再熱割れ性と強度、靭性に優れたCr−Mo鋼板。
  5. 鋼組成が、質量%で、
    C:0.03〜0.12%、
    Si:0.01〜0.8%、
    Mn:0.45〜1.0%、
    P:0.015%以下、
    S:0.003%以下、
    Cu:0.05〜0.6%、
    Ni:0.2〜1.5%、
    Cr:0.8〜1.5%、
    Mo:0.3〜0.8%、
    Sol.Al:0.005〜0.040%、
    Ca:0.0005〜0.005%、N:0.005%以下、
    O:0.005%以下であり、
    Cu+Ni≧0.55%、1≦Ca/S≦10の関係を満足し、
    B:0.0003%以下、Ti:0.005%以下に制限し、
    XB値が、
    XB=10000B−7700×(N−0.292Ti)<0で、
    残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼片を熱間圧延により鋼板としたのち、880℃以上の温度に再加熱し、ついで1℃/s以上の平均冷却速度で300℃以下の温度まで冷却したのち、600℃以上の温度で焼戻し処理を施すことを特徴とする、耐再熱割れ性と強度、靭性に優れたCr−Mo鋼板の製造方法。
    各式において、元素記号は含有量(質量%)を示し、含有しない場合は0とする。
  6. 鋼組成が、更に、式(1)を満たすことを特徴とする、請求項5に記載の耐再熱割れ性と強度、靭性に優れたCr−Mo鋼板の製造方法。
    0.6<{[Ca]−(0.18+130×[Ca])×[O]}/1.25/[S] ・・・(1)
    ここで、[M]は元素Mの含有量(質量%)。
  7. 鋼組成が、更に、質量%で、Nb:0.05%以下を含有することを特徴とする、請求項5または6に記載の耐再熱割れ性と強度、靭性に優れたCr−Mo鋼板の製造方法。
  8. 鋼組成が、更に、質量%で、Mg:0.0003〜0.05%、および/または、原子番号が57〜71の希土類元素(REM)の1種類以上を合計0.001〜0.3%、を含有することを特徴とする、請求項5乃至7の何れか一つに記載の耐再熱割れ性と強度、靭性に優れたCr−Mo鋼板の製造方法。
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