以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像形成システム1の概略構成図である。
画像形成システム1は、画像形成装置10とコンピュータ20とを有している。画像形成装置10は、画像処理装置100と画像出力装置200とを備え、コンピュータ20からの印刷データを受け付けた場合に、この印刷データを基に画像処理および画像形成処理を実施する。
画像処理装置100は、データ受付部110、記憶部120,150、PDL(Page Description Language:以下、PDLという)解釈部130、描画部140、画像データ解析部160および画像処理部170を有している。
データ受付部110は、コンピュータ20から受け付けた(取得した)印刷データを記憶部120に保存する。この印刷データは、例えばページ記述言語(PDL)で記述されている。
なお、コンピュータ20からの印刷データは、例えば、RGB色空間、L*a*b*色空間、CMY色空間、およびCMYK色空間の何れかの色空間で表現される画像データである。
RGB色空間は、赤、緑、青の各色で構成される色空間を意味する。
L*a*b*色空間は、画像出力装置などデバイスに依存しない色空間(均等色空間)であって、例えばCIE(国際照明印委員会)L*a*b*表色系の色空間を意味する。
CMY色空間は、シアン、マゼンタおよびイエローの各色で構成される色空間を意味する。
CMYK色空間は、シアン、マゼンタ、イエローおよび黒の各色で構成される色空間を意味する。
上記したPDL解釈部130は、記憶部120に記憶されたPDLデータを解釈し、この解釈した結果を描画部140へ出力する。
描画部140は、受け付けたPDLデータの解釈結果を基に描画にかかわる処理単位(例えばページ)ごとに描画処理を実施し、この描画処理の結果を記憶部150に保存する。また、描画部140は、処理単位の描画処理を終了した旨を画像データ解析部160および画像処理部170へ通知する。なお、描画部140による描画処理の結果の描画データは、ビットマップ形式(ラスタ形式)の画像データである。
画像処理装置100の画像処理部170は、色変換部171、階調補正部172および網点生成部173を有しており、受け付けた画像データ(描画データ)に対する色変換処理、階調補正処理および網点生成処理を実施する。
また、画像処理部170は、画像処理が終了した画像データを、画像出力装置200に向けて出力する。
画像出力装置200は、画像出力装置制御部(制御装置の一例)210および画像形成部220を有している。
画像出力装置制御部210は、画像処理部170からの画像データを画像形成部220へ出力するとともに、画像形成処理を開始すべき旨の命令(画像形成処理開始命令)を画像形成部220へ出力する。
また、画像出力装置制御部210は、画像形成処理を実施する画像形成手段の機能を果たす画像形成部220の少なくとも周囲の環境に関する情報(環境情報と定義する)、画像形成部220による画像形成処理の結果が印刷される用紙(記録媒体の一例)の紙質に関する情報(用紙情報と定義する)、および画像出力装置200の経時特性に関する情報(詳しくは画像形成部220の経時特性に関する情報:経時特性情報と定義する)のうち少なくとも1つの情報を、画像処理装置100の画像データ解析部160に向けて出力する。
画像形成部220は、画像形成手段の機能を有しており、上記画像形成処理開始命令に従って、受け付けた画像データに基づいて画像形成処理を実行し、この画像形成処理の結果としての印刷出力結果(画像が印刷された用紙)を出力する。
次に、図2は、図1の画像形成システム1の機能レベルの概略構成を示している。
画像形成システム1は、画像形成装置10と、コンピュータ(画像データ出力装置の一例)20とが通信回線30を介して接続されることで構成されている。
コンピュータ20は、処理装置(クライアント装置)として機能するものであり、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)20C、ハードディスクなどの記憶装置20M1、RAM(Random Access Memory:随時書き込み読み出しメモリ)などのメモリ20M2および通信インタフェース(以下、通信I/Fという)20IFを備えている。
記憶装置20M1は、文書の生成や印刷要求を発行するアプリケーションソフトウェア、プリンタドライバ、印刷データ(PDLデータ)など各種のデータを記憶する。
メモリ20M2は、記憶装置20M1から読み出されたプログラムやデータを記憶する。
通信I/F20IFは、通信回線30を介して、画像形成装置10との間でデータの送受信を行うインタフェースである。
CPU20Cは、コンピュータ20全体を制御するものであり、例えば、記憶装置20M1からメモリ20M2へプリンタドライバを読み込んで実行する。これにより、印刷データ(PDLデータ)が画像形成装置10に向けて送信される。
一方、画像形成装置10の画像処理装置100は、CPU100C、ハードディスクなどの記憶装置100M1、RAM100M2,ROM100M3および通信I/F100IFを備えている。
記憶装置100M1は、ソフトウェアである画像処理プログラム(画像処理プログラムの一例)PDなど、印刷処理を実施するのに必要な各種のプログラムやデータを記憶している。
画像処理プログラムPDは、図1に示したPDL解釈部130、描画部140、画像データ解析部160および画像処理部170(色変換部171、階調補正部172および網点生成部173)のそれぞれの機能を実現させるためのプログラム(ソフトウェア)を含んでいる。
ROM100M3は、色パラメータ、階調パラメータ、および網点パラメータの各デフォルト値、色範囲情報など、画像処理に必要なデータを記憶している。
RAM100M2は、記憶装置100M1から読み出された画像処理プログラムPDや通信I/F100IFを介して受信された印刷データなどを記憶する。
また、RAM100M2には、少なくとも以下の(a)〜(d)の各記憶領域が割り当てられる。
(a)図1の記憶部120として機能する記憶領域(印刷データを記憶する領域)である。
(b)図1の記憶部150として機能する記憶領域(描画データを記憶する領域)である。
(c)図1の色変換部171の色パラメータ記憶部、階調補正部172の階調パラメータ記憶部および網点生成部173の網点パラメータ記憶部として機能する記憶領域(デフォルト値としての各パラメータを記憶する領域)である。すなわち、ROM100M3から読み込まれたデフォルト値としてのパラメータを記憶する記憶領域である。
(d)図1の画像処理部170が画像処理を実施する際に必要となる記憶領域(色変換処理、階調補正処理、スクリーン処理の各処理過程や処理結果などを記憶する記憶領域など)である。
CPU100Cは、画像形成装置10全体を制御するものであり、例えば、記憶装置100M1からRAM100M2へ画像処理プログラムPDを読み込んで実行することにより、高画質の画像データを生成して、画像出力装置200に向けて出力する。
通信I/F100IFは、通信回線30を介して、コンピュータ20との間でデータの送受信を行うインタフェースであり、例えば、コンピュータ20から送信された印刷データを受信する。
通信回線30としては、ローカルエリアネットワーク(Local Area Network:以下、LANと略す)や電話回線などの有線通信回線、無線LANなどの無線通信回線、さらには、これらの通信回線を組み合わせたもの、などが挙げられる。
ここでは、画像処理装置100の各機能を実現し、上記画像処理の処理手順を示すプログラムを含む画像処理プログラムを、記録媒体としてのハードディスク等の記憶装置に記録する場合について説明したが、当該画像処理プログラムを次のようにして提供しても良い。
すなわち、上記画像処理プログラムをROMに格納しておき、CPUが、このプログラムをこのROMから主記憶装置へローディングして実行するようにしても良い。
また、上記画像処理プログラムを、DVD−ROM、CD−ROM、MO(光磁気ディスク)、フレキシブルディスク、などのコンピュータで読み取り自在な記録媒体に格納して配布するようにしても良い。この場合、その記録媒体に記録されたプログラムを画像処理装置100がインストールした後、このプログラムをCPUが実行するようにする。このプログラムのインストール先としては、RAM等のメモリやハードディスクなどの記憶装置がある。そして、画像処理装置100は、必要に応じてこの記憶装置に記憶したプログラムを主記憶装置にローディングして実行する。
さらには、通信回線(例えばインターネット)を介して画像処理装置100をサーバ装置あるいはホストコンピュータ等のコンピュータと接続するようにし、当該画像処理装置100が、サーバ装置あるいはコンピュータから上記画像処理プログラムをダウンロードした後、このプログラムを実行するようにしても良い。この場合、このプログラムのダウンロード先としては、RAM等のメモリやハードディスクなどの記憶装置(記録媒体)がある。そして、当該画像処理装置100が、必要に応じてこの記憶装置に記憶された上記プログラムを主記憶装置にローディングして実行するようにする。
次に、図3は、画像出力装置200の画像形成部220の主に機構系の概略構成を示している。
画像形成部220は、タンデム方式の中間転写方式により画像形成するようになっており、電子写真方式(電子写真プロセス)により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kと、各画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kにより形成された各色成分のトナー像を、図中矢印B方向に循環駆動(回転)される中間転写ベルト50に順次転写(一次転写)させる一次転写部41Y,41M,41C,41Kと、を備えている。
また、画像形成部220は、中間転写ベルト50上に転写されたトナー像(重畳トナー画像)を用紙(記録媒体の一例)Pに一括転写(二次転写)させる二次転写部60と、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着装置70と、中間転写ベルト50上に転写された階調補正用の未定着の複数のパッチパターンを光学的に検出するトナー量センサ(Auto Developability Control:以下、ADCと略す)80と、用紙Pに定着された上記階調補正用の複数のパッチパターンを光学的に検出するインラインセンサ(In Line Sensor:以下、ILSと略す)90と、を備えている。
画像形成ユニット40Yは、図中矢印A方向に回転する感光体ドラム(感光体の一例)42Yを有する。この感光体ドラム42Yの周囲には、回転方向に沿って、感光体ドラム42Yを帯電する帯電装置43Y、感光体ドラム42Y上に静電潜像を書込むレーザ露光装置44Y(図中、露光ビームを符号Bmで示す)、該当する色成分のトナーが収容されて感光体ドラム42Y上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像装置45Y、感光体ドラム42Y上に形成された色成分のトナー像を中間転写ベルト50に転写する一次転写ロール46Y、感光体ドラム42Y上の残留トナーが除去されるドラムクリーナ47Y、などの電子写真用デバイスが順次配設されている。また、画像形成ユニット40Yには、現像装置45Yに現像剤を供給するためのトナーカートリッジ(図示せず)が備えられている。
画像形成ユニット40M,40C,40Kのそれぞれも上記感光体ドラム42Yと同様の感光体ドラム42M,42C,42Kを有しており、これらの感光体ドラム42M,42C,42Kの周囲には、上記感光体ドラム42Yに対応する電子写真用デバイス(帯電装置、レーザ露光装置、現像装置、一次転写ロール、ドラムクリーナ)と同様の電子写真用デバイスが順次配設されている。また、画像形成ユニット40M,40C,40Kには、それぞれの現像装置45M,45C,45Kに現像剤を供給するためのトナーカートリッジ(図示せず)が備えられている。
上記した各画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kは、中間転写ベルト50の回転方向(図中矢印B方向)の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に配置されている。そして、感光体ドラム42Y,42M,42C,42Kの各々は、中間転写ベルト50に対して接離自在に構成されている。
一次転写ロール46Yは、中間転写ベルト50を挟んで感光体ドラム42Yと対峙する位置に配置されている。一次転写ロール46Yには、一次転写電圧(一次転写電位)を与える一次転写電圧源48Yが接続されている。一次転写ロール46Yおよび一次転写電圧源48Yは、一次転写部41Yを構成する構成要素である。
上記同様に、感光体ドラム42M,42C,42Kのそれぞれに対応する一次転写ロール46M,46C,46Kも、中間転写ベルト50を挟んで該当する感光体ドラム42M,42C,42Kと対峙する位置に配置されている。一次転写ロール46M,46C,46Kには、それぞれ一次転写電圧(一次転写電位)を与える一次転写電圧源48M,48C,48Kが接続されている。各感光体ドラム42M,42C,42Kに対応する一次転写ロールおよび一次転写電圧源は、それぞれ一次転写部41M,41C,41Kを構成する構成要素である。
一次転写ロール46Y,46M,46C,46Kには、一次転写電圧源48Y,48M,48C,48Kからの一次転写電圧(一次転写電位)が印加され、一次転写電流が供給される。そして、一次転写ロール46Y,46M,46C,46Kは、一次転写電流が供給されることによって一次転写バイアスを発生し、感光体ドラム42Y,42M,42C,42Kの各感光体ドラム42Y,42M,42C,42K上のトナー像を中間転写ベルト50に転写させる。
上記した中間転写ベルト50は、各画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kにより形成された各色成分のトナー像が順次転写(一次転写)され保持される部材である。この中間転写ベルト50は、複数の支持ロールおよびバックアップロール60aに掛け渡された状態で無端状に形成されており、反時計回りの方向(矢印Bに示す方向)に回転しながら各画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kのトナー像の一次転写を受けるようになっている。
上記した二次転写部60は、中間転写ベルト50上に多重に転写されたトナー像を用紙P等に一括転写(二次転写)してフルカラー画像を形成するための機構部であり、中間転写ベルト50を挟んで互いに対向した状態で配置されたバックアップロール60aと二次転写ロール60bとを備えている。一括転写においては、バックアップロール60aにトナーの帯電極性と同極性の電圧を印加するか、または、二次転写ロール60bにトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加する。これにより、バックアップロール60aと二次転写ロール60bとの間に転写電界が形成され、中間転写ベルト50上に保持された未定着のトナー像が用紙P等の上に転写される。
定着装置70は、トナー像が転写された用紙P等に対して熱および圧力を与えてトナー像を用紙P等に定着させる機能を備えており、例えば、加熱ロール70aと、加熱ロール70aに用紙Pを押し付ける加圧ロール70bとを備えている。
なお、電子写真プロセスの帯電プロセス、露光プロセスおよび現像プロセスは画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kで実現され(実際には帯電プロセスは帯電装置43Y,43M,43C,43Kで、露光プロセスはレーザ露光装置44Y,44M,44C,44Kで、現像プロセスは現像装置45Y,45M,45C,45Kで、それぞれ実現される。)、転写プロセスは一次転写部41Y,41M,41C,41Kおよび二次転写部60で実現され、定着プロセスは定着装置70で実現される。
上記したADCセンサ80は、中間転写ベルト50に転写された基準となる階調補正用の複数のパッチパターンを光学的に読み取るセンサである。この段階の基準となる階調補正用の複数のパッチパターンは未定着である。基準となる階調補正用の複数のパッチパターンについては後述する。
ADCセンサ80は、最後段の一次転写の位置(一次転写ロール46K)から中間転写ベルト50の回転方向に沿って二次転写の位置(二次転写ロール60b)に到るまでの間において中間転写ベルト50に転写された基準となる階調補正用の複数のパッチパターンを光学的に安定して読み取れる位置に配置されている。
このADCセンサ80で検出された光信号は電気信号に変換されて図1に示した画像処理部170に伝送され階調補正部172での階調補正用のデータとして使用されるようになっている。
ここで、図4および図5は、正反射方式(図4参照)と拡散反射方式(図5参照)とを併用したADCセンサ80の一例の概略構成を示している。なお、図4および図5の矢印は光の方向を示している。
ADCセンサ80は、正反射用の発光素子80LAと、拡散反射用の発光素子80LBと、正反射および拡散反射の共用の受光素子80LCと、反射基準板80RSと、シャッタ80Sとを備えている。
発光素子80LA,LBは、例えば近赤外LED(Light Emitting Diode)により構成され、受光素子80LCは、例えばフォトダイオードにより構成されている。
このADCセンサ80は、図4に示すように、ほとんど拡散反射しない黒色のトナーに対しては正反射方式を使用し、図5に示すように、カラートナーに対しては高濃度まで読み取れる拡散反射方式を使用するようになっている。
なお、ここでは、中間転写ベルト50上に転写された基準となる階調補正用の複数のパッチパターンをADCセンサ80により検出する場合について説明したが、これに代えて感光体ドラム42Y,42M,42C,42Kに現像された上記基準となる階調補正用の複数のパッチパターンをADCセンサ80により検出するようにしても良い。
一方、図3に示すILS90は、中間転写ベルト50から用紙P等に転写され定着装置70により定着された上記基準となる階調補正用の複数のパッチパターンを光学的に読み取るセンサである。
ILS90は、定着装置70の後段(用紙Pの搬送下流)において、用紙Pに定着された上記基準となる階調補正用の複数のパッチパターンを光学的に安定して読み取れるように用紙Pの排出部の近傍に配置されている。用紙Pの排出部の近傍は、用紙Pのカールが除去され用紙Pの姿勢が安定するので、用紙Pに定着された画像の濃度や位置を高い精度で読み取れる。
このILS90で検出された光信号は電気信号に変換されて図1に示した画像処理部170に伝送され階調補正部172での階調補正用のデータとして使用されるようになっている。
ここで、図6は、ILS90の一例の概略構成を示している。ILS90は、搬送中の用紙Pに定着された画像を読み込み、その画像情報を抽出するためのセンサであり、照射部90Aと、CCD(Charge Coupled Device)センサ90Bと、結像部90Cと、センサ校正部90Dとを備えている。
照射部90Aは、画像が記録された用紙Pに向けて光を照射する手段であり、一対のランプ90A1,90A2を備えている。一対のランプ90A1,90A2は、例えばリニア型のキセノンランプにより構成されており、用紙Pの画像形成面に対向する位置に配置されている。また、この一対のランプ90A1,90A2は、その照射範囲の長さが、搬送される最大の用紙Pの幅よりも大きくなるように設定されているとともに、用紙Pの走行時に安定した読み取り精度を得るために充分な照明深度が確保されている。
CCDセンサ90Bは、照射部90Aから照射されて用紙Pで反射された光を受光するとともに、受光した光の強度に基づいて画像または用紙P自体を検出する手段である。CCDセンサ90Bに結像された光は、画像の濃度に応じた電気信号に変換されて図1に示した画像処理部170に伝送され階調補正部172での階調補正用のデータとして使用される。
結像部90Cは、照射部90Aから照射されて用紙Pで反射された光をCCDセンサ90Bに結像する手段である。結像部90Cは、例えば機械的な操作の無い縮小投影光学系により構成されており、複数の反射鏡90C1,90C2,90C3とレンズ90C4とを備えている。
センサ校正部90Dは、ILS90の使用時やキャリブレーション時の各種基準等を設定する手段であり、例えば周方向に8面以上の面が形成された多角形筒状の基準ロール90D1を備えている。これにより、各種検査ターゲットを画像読み取り位置に搭載し、ILS90の読み取り精度の自動校正を行うことで計測装置としての性能を確保している。
次に、上記画像形成装置10における画像の濃度の制御について説明する。
図7は、画像の濃度を制御するVdeve(第1の電圧の一例)とVcf(第2の電圧の一例)との電位の関係を示している。
VHは、帯電装置43Y,43M,43C,43Kにより帯電された感光体ドラム42Y,42M,42C,42Kの表面電位であり、暗電位または帯電電位と呼ばれている。
VLは、帯電装置43Y,43M,43C,43Kにより帯電された感光体ドラム42Y,42M,42C,42Kの表面にレーザ露光装置44Y,44M,44C,44Kにより露光ビームBmを照射して静電潜像を形成することで降下した感光体ドラム42Y,42M,42C,42Kの表面電位であり、明電位または露光電位と呼ばれている。
Vbは、現像バイアスと呼ばれ、現像装置45Y,45M,45C,45Kの現像電極(マグロール)の電位(すなわち、感光体ドラム42Y,42M,42C,42Kと現像電極との間に印加される電圧を決める電位)である。
Vdeveは、感光体ドラム42Y,42M,42C,42Kの表面へ供給されるトナーの量を決める電圧(すなわち、記録媒体に定着される画像の濃度を決める電圧)であり、Vb−VLで表される。
Vcfは、クリーニングフィールド電圧と呼ばれ、VH−Vbで表される。
ここで、上記画像形成装置10において、画像の濃度を制御するためにVdeveを制御する場合は、階調性を安定させるためにコントラスト比と呼ばれるVdeve/Vcf比を安定に保ちながらVdeveの変更に合わせてVcfも変更する制御が望ましい。
しかし、Vcfの値がある閾値よりも小さくなると白紙部にトナーが載る、いわゆる、かぶりと呼ばれる画像欠陥が発生する一方、Vcfの値が上記閾値よりも大きくなると白紙部にキャリアが載る、いわゆるバックグラウンド(以下、BCOという)と呼ばれる画像欠陥が発生してしまうため、Vcfは、ある制限内で制御する必要がある。
もちろん、Vdeveも大きくなると画像部にキャリアが載る画質欠陥(像中BCO)が発生するが、一般的に使用されるVdeve/Vcf比(例えば3.0〜2.0程度)の領域では、Vcfの方が先に画像欠陥を生じさせるので、Vcfを変えられなくなってしまう。
これにより、画像の濃度の変化を制御するため、通常は、Vdeveの変更に合わせてVcfとの比率が予め定められた範囲内になるようにVcfを変えるが、画像の濃度を安定させるように制御するためのVdeveの量が大きくなると、Vcfは画像欠陥の発生の制限によりVcfを変えられない状態となり、Vdeveの変更による濃度制御によりVdeve/Vcfの比率が崩れてしまう。その結果、安定したVdeve/Vcfの比率で制御していた場合に比べて、階調性(特にハイライト部での再現性)が大きく変化してしまう。なお、ハイライト部は、画像の濃度の薄い領域であり、明るい部分や白く見える部分のことである。
そこで、第1の実施の形態においては、以下のようにする。
図8は、第1の実施の形態の画像形成装置10の画像の濃度制御のフローチャートの図を示している。なお、ここでは、図1のコンピュータ20(サーバ装置等)からの画像形成のためのジョブ情報(画像の種類等のような像密度情報を含む)が画像形成前に画像形成装置10に提供されていない場合を想定している。
まず、通常は、Vdeve/Vcf比が予め定められた範囲となるように電位を制御する。このため、図8のステップ500では、Vdeve/Vcf比が予め定められた範囲であると判断される。この場合、第1の階調制御で階調制御を行う(ステップ501)。
ここで、図9は、この第1の階調制御における基準となる階調補正用のパッチパターンPPの一例の平面図を示している。なお、図9には、説明を分かり易くするために、各パッチパターンPPの右側に画像(網点)の面積率(Coverage in:以下、Cinという)をパーセンテージで示しているが、これが実際に転写または定着されるわけではない。
ここでは、基準となる階調補正用のパッチパターンPPとして、4個の長方形状のパッチパターンPP25,PP50,PP75,PP100が一方向に沿って予め決められた間隔で配置されている場合が例示されている。
各パッチパターンPP25,PP50,PP75,PP100は、互いの濃度が異なっており、一方向に沿って次第に濃く(または薄く)なるように配置されている。特に限定されるものではないが、Cinが、例えば、25%,50%,75%,100%のパッチパターンPP25,PP50,PP75,PP100が示されている。
このような基準となる階調補正用のパッチパターンPPは、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの色毎に感光体ドラム42Y,42M,42C,42Kに現像され、それが中間転写ベルト50に転写され、さらにそれが用紙P等に定着されるようになっている。
なお、Vdeve/Vcf比が予め定められた範囲内の場合に、階調補正用のパッチパターンPPを設けていない等、階調制御を行っていない(すなわち、第1の階調制御を行っていない)場合もある。
次いで、画像の濃度の制御では、Vcfが制限となった場合でもVdeve/Vcf比率を崩しながら(すなわち、Vdeve/Vcf比が変更された状態で)、Vdeveを変更(制御)することで画像の濃度を補正する場合もある。
このVdeve/Vcf比の変更には、例えば上記のようにVdeveの変更(Vcfの制限によりVdeveのみが変更)によりVdeve/Vcf比が変更される場合、Vdeve/Vcf比が予め定められた閾値以上に変更(階調性の変化が視覚的に判断できるレベルにVdeve/Vcf比が大きくなる場合やVcfの制限によりVcfに比べてVdeveの変化量の割合が大きくなりVdeve/Vcf比が変化する場合を含む)される場合がある。
この場合は、図8のステップ500では、Vdeve/Vcf比が予め定められた範囲外であると判断されるので、Vdeveの変更による濃度補正に起因して階調性が劣化するのを抑制または防止するため、第1の階調制御よりも強化した第2の階調制御で階調制御を行う(ステップ502)。これにより、画像の階調性が向上する。
ステップ500での判断基準としては、例えば、Vdeve/Vcf比の閾値やVcfに対するVdeveの変化量の閾値を予め定めて記憶しておき、それらとの比較で判断する。
また、階調制御の強化としては、例えば、第1に、第1の階調制御の場合よりも、基準となる階調補正用のパッチパターン(特に、濃度の薄いハイライト部)の数を増やす、第2に、第1の階調制御の場合よりも、階調補正用のパッチパターンの作成インターバルを短縮する(すなわち、階調補正用のパッチパターンの単位時間当たりの作成回数を増やす)、第3に、これら第1と第2とを組み合わせることにより、結果的に、第1の階調制御よりも階調制御を強化する。
ここで、図10は、第2の階調制御における基準となる階調補正用のパッチパターンPPの一例の平面図を示している。なお、図10でも、説明を分かり易くするために、各パッチパターンPPの右側にCin(%)を示しているが、これが実際に転写または定着されるわけではない。
ここでは、Cin5%、10%、20%、25%、30%、50%、75%、100%のパッチパターンPP5,PP10,PP20,PP25,PP30,PP50,PP75,PP100を作成した例が示されており、階調補正用のパッチパターンPP(特に濃度の薄いハイライト部)の数を図9の場合よりも増やしている。
このように第1の実施の形態によれば、画像形成装置10の制御状態が、良好な階調性を得る上で不安定な制御状態となる場合でも、階調性の低下を予測して階調制御を強化する制御に切り換えることにより、画像の濃度/階調性(特に濃度の薄いハイライト部の色味)の安定性が向上する。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態においては、図1に示した画像形成装置10の画像処理装置100が、コンピュータ20側にストックされた画像形成のためのジョブ情報の像密度情報により、将来、形成する画像の種類等を判別する画像判別装置を備えている。
そして、画像形成装置10においては、Vdeve/Vcf比を崩して画像の濃度の制御を行っている場合に、画像処理装置100から取得した画像の種類等の情報に応じて階調制御を強化する。
ここでは、画像処理装置100が、画像の種類等を判別する画像判別装置を備える場合を説明したが、これに限定されず、コンピュータ20自体が画像の種類等を判別する画像判別装置を備える構成としても良い。
図11は、第2の実施の形態の画像形成装置10の画像の濃度制御のフローチャートの図を示している。なお、ここでは、コンピュータ20(サーバ装置等)から画像形成のためのジョブ情報(画像の種類等のような像密度情報等を含む)が画像形成の前に画像形成装置10に提供されている。
まず、図11のステップ500でVdeve/Vcf比が予め定められた範囲外と判断された場合、画像処理装置100から取得した画像の種類等の情報に基づいて階調安定性が必要な画像か否かが判断される(ステップ600)。
その結果、画像の種類が、例えば文字や線画等のような階調安定性をあまり必要としない画像の場合には、第1の階調制御と同じかそれよりも強化した第3の階調制御で階調制御を行う(ステップ601)。これにより、階調制御の強化のし過ぎが抑制または防止されるので、余分なパッチパターンPPの作成が抑制または防止される。このため、トナーの消費が抑制される。また、画像形成の生産性の低下が抑制される。
一方、図11のステップ600で、画像の種類が、例えばグラデーション画像、写真画像あるいはハイライト画像等のような階調安定性が必要とされる画像の場合には、第1の階調制御および第3の階調制御よりも強化した第4の階調制御を行う(ステップ602)。これにより、グラデーション画像、写真画像あるいはハイライト画像等のような階調安定性が必要とされる画像の濃度/階調性の安定性が向上する。
なお、階調性の強化については、上記したのと同じなので説明を省略する(図8、図9および図10等を用いた説明を参照)。
このように第2の実施の形態によれば、画像形成装置10の制御状態が、良好な階調性を得る上で不安定な制御状態となることが予測される場合に、画像処理装置100から取得した画像の種類等の情報に応じて階調制御を強化することにより、画像の種類に適した階調制御の強化が行える。
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態においては、前記第2の実施の形態と同様に、図1に示した画像形成装置10の画像処理装置100が、コンピュータ20側にストックされた画像形成のためのジョブ情報の像密度情報により、将来、形成する画像の種類等を判別する画像判別装置を備えている。
そして、画像形成装置10においては、階調安定性が必要な画像を形成する前に、Vdeve/Vcf比率が予め定められた範囲内になる条件でVdeveによる補正が行えるように、画像の種類に応じてトナー濃度を変更する。
ここでも、画像処理装置100が、画像の種類等を判別する画像判別装置を備える場合を説明したが、これに限定されず、コンピュータ20自体が画像の種類等を判別する画像判別装置を備える構成としても良い。
また、上記したトナー濃度は、現像装置45Y,45M,45C,45Kにより感光体ドラム42Y,42M,42C,42Kの表面に形成されるトナー像のトナー付着部分におけるトナーの濃さであり、感光体ドラム42Y,42M,42C,42Kの露光部分に付着するトナーの単位面積当たりの量である。
次に、図12は、トナー濃度とVdeveとの関係を示すグラフである。
上記したように画像の濃度およびVdeveの制御では、Vdeveが、ある値VdH以上だと上記BCOが生じ、ある値VdL以下だと、上記かぶりが生じる。また、トナー濃度が、ある値TCL以下だと上記BCOが生じ、ある値TCH以上だと上記かぶりが生じる。このため、トナー濃度とVdeveと特性線CL(CLH,CLM,CLL)がトナー濃度とVdeveとのラチチュード(latitude:露光寛容度、図12の破線で囲まれた領域)LRの範囲内となるように制御を行っている。
ここで、通常の画像の形成であればラチチュートの範囲の中心に位置する特性線CLMとなる。なお、Vdmは、VdLとVdHの中間のVdeve値を示している。
しかし、低密度画像の形成においては、現像装置45Y,45M,45C,45K内でトナーが循環しているのでトナーの帯電量が上がり、現像装置45Y,45M,45C,45Kの現像電極の帯電電位が上がりトナーが感光体ドラム42Y,42M,42C,42Kに供給され難くなるので、上記ラチチュートLRの範囲の中心よりも高い特性線CLLとなる。
また、高密度画像の形成においては、現像装置45Y,45M,45C,45K内に新しいトナーが供給されるので、トナーの帯電量が下がり、現像装置45Y,45M,45C,45Kの現像電極の帯電電位が下がりトナーが感光体ドラム42Y,42M,42C,42Kに供給され易くなるので、ラチチュートLRの範囲の中心よりも低い特性線CLHとなる。
いずれにしても、トナー濃度を下げるとVdeveを上げられ、トナー濃度を上げるとVdeveを下げられるので、そのトナー濃度の変更により、Vdeveを制御し、階調安定性が必要とされる画像の形成においてVdeve/Vcf比率が予め定められた範囲内になるように制御する。
次に、図13は、第3の実施の形態の画像形成装置10の画像の濃度制御のフローチャートの図を示している。なお、ここでも、コンピュータ20(サーバ装置等)から画像形成のためのジョブ情報(画像の種類等のような像密度情報等を含む)が画像形成前に画像形成装置10に提供されている。
まず、画像形成を開始する前に、図13のステップ700で画像処理装置100から取得した画像の種類の情報に基づいて階調安定性が必要な画像か否かが判断される。
その結果、画像の種類が、例えば文字や線画等のような階調安定性をあまり必要としない場合には、トナー濃度を変更しないでそのまま画像形成に移行する(ステップ701)。
一方、図13のステップ700で、画像の種類が、例えばグラデーション画像、写真画像あるいはハイライト画像等のような階調安定性が必要とされる場合には、Vdeve/Vcf比が予め定められた範囲内になるようにトナー濃度を変更する。これにより、VcfまたはVdeveを予め定めた目標の状態になるように制御する(ステップ702)。そのように制御した状態で画像形成に移行する。
ここで、VcfまたはVdeveの値の目標例について図12を参照しながら説明する。
目標例1(通常の画像の場合:特性線CLM)
Vcfの変更制限幅の略中心値あるいはそれに相当するVdeve値とする。例えば、Vcfの変更制限幅が90V〜130Vの範囲だとすると、Vcfの略中心値は110V付近となる。結果として、Vdeve/Vcf比率を予め定められた範囲内とすることを考えると、例えばVdeve/Vcfが3.0ならば、Vcfの中心が110Vということは、Vdeve値は330V付近となる。すなわち、図12において、VdL=270V、VdH=390Vで、Vdm=330Vとなる。
目標例2(通常の画像よりも高密度または低密度の画像の場合:特性線CLH,CLL)
高密度の画像を形成する場合には、上記したように画像形成中に現像性が高くなるため、濃度を安定させるためにはVdeveを小さくする方向に制御することが予想される。このため、目標のVcfあるいはVdeveを上記した目標例1の場合よりも大きく設定する。
また、低密度の画像を形成する場合には、上記したように画像形成中に現像性が低くなるため、濃度を安定させるためにはVdeveを大きくする方向に制御することが予想される。このため、目標のVcfあるいはVdeveを上記した目標例1の場合よりも小さく設定する。
このようにトナー濃度を変更しておくことにより、画像形成中の現像性の変化に対応してVdeve/Vcf比を安定させられる。
次いで、上記のように画像形成の開始前にトナー濃度を制御してもVcf値が制限にかかってしまう場合には、前記第2の実施の形態と組み合わせても良い。
すなわち、Vdeve/Vcfが予め定められた範囲外と判断された場合(図13のステップ500)、画像処理装置100から取得した画像の種類の情報に基づいて階調安定性が必要な画像か否かを判断する(ステップ600)。
その結果、画像の種類が、例えば文字や線画等のような階調安定性をあまり必要としない場合には、第1の階調制御と同じかそれよりも強化した第3の階調制御で階調制御を行う(ステップ601)。これにより、余分なパッチパターンPPの作成が抑制または防止されるので、トナーの消費および画像形成の生産性の低下が抑制される。
また、図13のステップ600で画像の種類が、例えばグラデーション画像、写真画像あるいはハイライト画像等のような階調安定性が必要とされる場合には、第1の階調制御および第3の階調制御よりも強化した第4の階調制御を行う(ステップ602)。これにより、階調安定性が必要とされる画像の濃度/階調性の安定性が向上する。
なお、階調性の強化については、上記したのと同じなので説明を省略する(図8、図9および図10等を用いた説明を参照)。
このように第3の実施の形態によれば、コンピュータ20から取得した将来形成する画像の情報に基づいて画像形成の開始前に画像形成装置の状態(VcfあるいはVdeveの制御により階調性が不安定になる状態)を改善しておくことにより、画像形成中に階調性が不安定となる制御状態にならないように画像形成装置10を予め制御する。
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではないと考えるべきである。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
例えば前記実施の形態においては、中間転写ベルトに転写されたトナー像を用紙に転写する中間転写方式の画像形成装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、感光体ドラムのトナー像を用紙等の記録媒体に直接転写する直接転写方式の画像形成装置に適用しても良い。この場合、上記のように感光体ドラムに階調補正用の複数のパッチパターンを現像し、そのパッチパターンをADCセンサにより検出する。
また、前記実施の形態においては、記録媒体として用紙に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、フィルム、はがき等、画像が形成される様々なものに適用しても良い。