<本実施形態の画像形成装置の概要>
まず、図1〜図3を参照しながら、本実施形態の画像形成装置の概要について説明する。
本実施形態の画像形成装置は、図2に示すように、像担持体(感光体202に相当)と、像担持体202の表面を所定の帯電バイアスで帯電させる帯電手段(帯電部201に相当)と、帯電手段201によって帯電した像担持体202の表面を所定の露光量で露光し、静電潜像を形成する露光手段(書込部203に相当)と、像担持体202の表面に形成された静電潜像に対して所定の現像バイアスを印加し、静電潜像に対してトナーを付着させ、像担持体202の表面にトナー像を形成する現像手段(現像部205に相当)と、を有し、図1に示すように、像担持体202の表面に形成されたトナー像を記録媒体(転写紙112に相当)に転移させ、記録媒体112上に画像を形成する画像形成装置である。
本実施形態の画像形成装置は、図3に示すように、像担体202上にトナーパターンを形成するパターン形成手段(制御部41に相当)と、トナーパターンのトナー付着量を基に、静電潜像が形成された静電潜像部の電位と現像バイアスとの差である現像ポテンシャルに対する、静電潜像が形成されていない非静電潜像部の電位と現像バイアスとの差である地肌ポテンシャルの比率が所定の第1の目標比率となるように、帯電バイアスと露光量と現像バイアスとを調整する単色プロセス制御手段(制御部41に相当)と、トナーパターンの単色の彩度が、多重色に用いる1色目と2色目との彩度の所定の許容範囲内にない場合に、現像ポテンシャルに対する地肌ポテンシャルの比率を所定の第2の目標比率の範囲内で増減させ、トナーパターンの単色の彩度が許容範囲内になるように調整する多重色プロセス制御手段(制御部41に相当)と、を有して構成する。
本実施形態の画像形成装置は、トナーパターンの単色の彩度が、多重色に用いる1色目と2色目との彩度の所定の許容範囲内にない場合に、現像ポテンシャルに対する地肌ポテンシャルの比率を所定の目標比率の範囲内で増減させ、トナーパターンの単色の彩度が1色目と2色目との彩度の許容範囲内になるように調整する。これにより、多重色の色差を低減することができる。以下、添付図面を参照しながら、本実施形態の画像形成装置について詳細に説明する。
<画像形成装置の構成例>
まず、本実施形態の画像形成装置の構成例について説明する。図1は、本実施形態の画像形成装置の概略構成例を示した図である。
本実施形態の画像形成装置は、図1に示すように、複数の張架ローラに張架された中間転写ベルト101に沿って画像形成部102Y(イエロー),102M(マゼンタ),102C(シアン),102K(黒)が設けられている。また、各画像形成部102Y,102M,102C,102Kにより形成されたトナー像は、一次転写部106Y,106M,106C,106Kにより中間転写ベルト101上に転写される。また、トナーの付着量を検出するための画像検出部110が中間転写ベルト101に対向して設けられている。画像検出部110は、中間転写ベルト101上に転写されたトナー像のトナー付着量を検出する。中間転写ベルト101上のトナー像は二次転写部111により記録媒体としての転写紙112に転写される。
<画像形成部102Y,102M,102C,102Kの構成例>
次に、図2を参照しながら、画像形成部102Y,102M,102C,102Kの構成例について説明する。図2は、画像形成部102Y,102M,102C,102Kの概略構成例を示した図である。なお、各画像形成部102Y,102M,102C,102Kの構成は同様であるため、互いに区別することなく説明する。
感光体202の周りには、感光体202の表面を帯電させる帯電手段としての帯電部201、書き込み光Lにより感光体202の表面に静電潜像を書き込む露光手段としての書込部203、静電潜像をトナーによって現像する現像手段としての現像部205、感光体202上の転写残トナーなどをクリーニングするクリーニング手段としての感光体クリーナ206、感光体202の表面を除電する除電手段としてのイレーズ(除電部)207、電位検知手段としての電位センサ210が設けられている。
本実施形態の感光体202は、感光体表面層にフィラーを含有させた高硬度の感光体である。本実施形態の感光体202は、感光体表面層にフィラーを含有しない一般的な感光体と同様に、図14(a)、(b)に例示したような感光特性、即ち、露光パワーLDPの変化に対する露光部電位VLの変化割合が露光パワーLDPの増大につれて徐々に小さくなる感光特性をもっている。また、本実施形態の感光体202は、図15に例示したように、残留露光部電位Vrが経時的に徐々に高まる特性をもっている。このため、本実施形態の感光体202は、画像形成時に使用する露光パワーLDPの範囲内における露光パワーLDPと露光部電位VLとの対応関係が経時的に大きく変化する。
本実施形態の帯電部201は、スコロトロンチャージャからなる非接触式帯電器であり、スコロトロンチャージャのグリッド電圧(帯電バイアス)Vgを目標帯電電位(本実施形態ではマイナス電位)に設定し、感光体202の表面の電位をその目標帯電電位にする。なお、帯電部201は、これに限らず、他の非接触式帯電器や、接触式帯電器を用いることもできる。
本実施形態の書込部203は、光源としてレーザーダイオード(LD)を用い、断続的な書き込み光、即ち、繰り返しパルス状の書き込み光Lを照射することで、感光体202の表面上に1ドットごとの静電潜像(1ドット静電潜像)を形成する。本実施形態では、1ドット静電潜像を形成する際の露光時間(単位露光時間)を変更することで、1ドット静電潜像に付着するトナー付着量を制御し、階調制御を行うことができる。本実施形態では、最大単位露光時間を15分割(それぞれの単位露光時間を以下「露光デューティ」という)し、16階調の階調制御を行うことが可能になっている。従って、本実施形態では、露光デューティを、0(露光しない)〜15(最大単位露光時間)の16段階で調整することができる。
本実施形態の現像部205は、感光体202の表面に対向配置される現像剤担持体としての現像ローラを備えており、所定極性(本実施形態ではマイナス極性)に帯電したトナーと磁性キャリアとからなる二成分現像剤を現像ローラ上に担持させて、感光体202の表面にトナーを供給する。現像ローラには、絶対値が露光部電位VLよりも十分に大きくかつ帯電電位Vdよりも十分に小さい現像バイアスVbを印加している。これにより、感光体202の表面と現像ローラとが対向する現像領域において、感光体202の表面上の静電潜像(露光部)に向けてトナーを移動させ、かつ、感光体202の表面上の非静電潜像(非露光部)にはトナーが移動しないような電界を形成でき、静電潜像をトナー像にすることができる。
図2に示す構成において、画像形成を行う場合は、まず、感光体202の表面が一様に目標帯電電位(マイナス電位)となるように、帯電部201により感光体202の表面を帯電する。次に、帯電された感光体202の表面部分に対し、画像データに応じた書き込み光Lを書込部203の光源(LD)から感光体202へ露光する。これにより、感光体202の表面の露光部分の電位(絶対値)が下がり、感光体202の表面に静電潜像が形成される。
感光体202上に形成された静電潜像(本実施形態では露光部)は、現像部205の現像剤担持体である現像ローラ上に担持されたトナーによってトナー像に現像される。具体的には、現像ローラに対し、絶対値が露光部電位VLよりも大きくかつ帯電電位Vdよりも小さい現像バイアスVbを印加して、所定極性(本実施形態ではマイナス極性)に帯電したトナーを静電的に静電潜像に付着させることにより現像する。
感光体202上に形成されたトナー像は、一次転写部106により中間転写ベルト101上に転写される。中間転写ベルト101に転写されずに感光体202上に残った転写残トナーは感光体クリーナ206で回収される。また、中間転写ベルト101上にトナー像を転写した後の感光体202の表面は、イレーズ207により一様に除電光が照射されることにより、非静電潜像部分が除電されて、一様に除電された状態になる。
上記処理により各画像形成部102Y,102M,102C,102Kで形成された各色のトナー像は、図1に示す中間転写ベルト101上に互いに重なり合うように一次転写される。その後、中間転写ベルト101上に転写された各色トナー像を二次転写部111により中間転写ベルト101から転写紙112へ転写し、図示しない定着部によってトナー像が転写紙112に定着され一連の印刷プロセスを終了する。
<単色のプロセス制御例>
次に、出力画像の安定化を図るために、規定の1ドット静電潜像に対するトナー付着量を安定させるための単色のプロセス制御例について説明する。ここでは、説明を簡略化するため、帯電バイアスVg、現像バイアスVb及び露光パワーを調整する制御を中心に説明する。なお、以下に説明する単色のプロセス制御中には、書込部203が画像形成時に用いる基準露光量を調整する露光量調整制御が含まれているが、露光量調整制御を単色のプロセス制御とは別に行ってもよい。
図3は、本実施形態における単色のプロセス制御に関わる制御系を示すブロック図である。本実施形態の単色のプロセス制御では、まず、所定の条件によって通常の画像形成動作によりトナーパターン(トナー像)である濃度パッチ113(図5参照)を中間転写ベルト101に形成し、この濃度パッチ113のトナー付着量を光学式反射濃度センサである光学センサ301,302で構成される画像検出部110で検出する。制御部41は、画像検出部110の検出結果に基づき、帯電部201のグリッド電圧(帯電バイアス)Vg、現像部205の現像バイアスVb及び書込部203の露光パワーを調整する。
図4(a)は、黒用の画像検出部110を構成する光学センサ301の概略構成例を示す図であり、図4(b)は、他色(カラー)用の画像検出部110を構成する光学センサ302の概略構成例を示す図である。
光学センサ301は、発光素子303と、濃度パッチ113や中間転写ベルト101の表面からの正反射光を受光する正反射光受光素子304と、を有して構成する。一方、光学センサ302は、発光素子303と、濃度パッチ113や中間転写ベルト101の表面からの正反射光を受光する正反射光受光素子304と、濃度パッチ113や中間転写ベルト101の表面からの拡散反射光を受光する拡散反射光受光素子305と、を有して構成する。
光学センサ301及び光学センサ302は、図5に示すように、中間転写ベルト101上に形成した濃度パッチ113と対向し得る位置にそれぞれ配置される。制御部41は、書き込み光Lの書き込み開始後、濃度パッチ113が光学センサ301及び光学センサ302との対向位置に到達するタイミングに合わせて、正反射光受光素子304や拡散反射光受光素子305からの出力電圧を検出し、その検出結果(センサ検知結果)に対して付着量変換処理を行うことにより、各濃度パッチ113のトナー付着量を導出する。例えば、出力電圧とトナー付着量との対応関係を記述した変換テーブルを予めROM44に記憶しておき、この変換テーブルを用いてトナー付着量を導出する。または、出力電圧をトナー付着量に変換する変換式を演算させてトナー付着量を導出する。
図6は、本実施形態における単色のプロセス制御の主要な処理の流れを示すフローチャートである。本実施形態においては、転写紙112上に形成される低濃度から高濃度までの画像に対して適切に付着量変換処理を実行できるように単色のプロセス制御を行うときのトナー階調パターンの目標トナー付着量範囲が、0[mg/cm2]付近から0.5[mg/cm2]までの範囲内である場合について説明する。
単色のプロセス制御においては、画像検出部110の校正や異常検査などの前処理工程を終えた後、まず、現在設定されている帯電バイアスVg0、現像バイアスVb0、露光パワーLDP等の画像形成条件(前回の単色のプロセス制御で設定された画像形成条件)で、10階調の濃度パッチ113を感光体202の表面上に形成する(S1)。そして、このときの帯電電位(非露光部電位)Vd0を電位センサ210で検知する(S2)。また、これらの10階調の濃度パッチ113に付着したトナー付着量を、画像検出部110で検知する(S3)。そして、上記S2で検知した帯電電位Vd0と、上記S3で検知した検知した10階調分のトナー付着量と、を基に、現時点における現像γ(ガンマ)を算出する(S4)。
図7は、高温高湿環境(32[℃]、54[%])と低温低湿環境(10[℃]、15[%])との環境下においてトナー階調パターンを形成したときの現像ポテンシャルに対するトナー付着量を実測した結果を示すグラフである。なお、このグラフは、横軸に現像ポ テンシャルをとり、縦軸にトナー付着量をとっている。現像γとは、このグラフの傾きを示すパラメータであり、現像ポテンシャルとトナー付着量との対応関係を示すパラメータである。ここで、現像ポテンシャルとは、感光体202上の露光部電位VLと現像バイアスVbとの電位差を示すものであり、現像ポテンシャルが大きければ1ドット静電潜像に付着するトナー量が多くなり、画像濃度が高まることになる。また、後述する地肌ポテンシャルとは、感光体202上の非露光部電位Vdと現像バイアスVbとの電位差を示すものであり、地肌ポテンシャルが小さすぎると非露光部にトナーが付着してしまう地汚れが発生し、地肌ポテンシャルが大きすぎると現像剤中の磁性キャリアが感光体202の表面に付着してしまうキャリア付着が発生する。
高温高湿環境の場合、本実施形態における目標トナー付着量範囲の最大トナー付着量(目標最大トナー付着量)である0.5[mg/cm2]の濃度パッチ113を形成するためには、図7に示されるように現像ポテンシャルとして360[V]が必要となる。これに対し、低温低湿環境では0.5[mg/cm2]の濃度パッチ113を形成するためには、500[V]の現像ポテンシャルが必要となる。このように0.5[mg/cm2]という同じトナー付着量で濃度パッチ113を形成するのに必要な現像ポテンシャルは温度湿度環境によって異なる。温度湿度環境によって現像ポテンシャルが異なる理由は、温度湿度環境によりトナーの帯電量が変化することが挙げられる。一般的に高温高湿度環境ではトナーの帯電量が小さくなるため、同じ現像ポテンシャルでもトナー付着量が増加し、反対に、低温低湿度環境ではトナーの帯電量が大きくなるためトナー付着量が減少する。
このように、温度湿度環境の変動によって、目標の画像濃度(目標のトナー付着量)を得るための現像ポテンシャルが変わってくる。また、温度湿度環境以外の要因でも目標のトナー付着量を得るための現像ポテンシャルが変わってくる。従って、適当なタイミングで現時点における現像γを確認し、その現像γから目標のトナー付着量を得るための現像ポテンシャルを求めて、各種画像形成条件(帯電バイアスVg、現像バイアスVb、基準露光量(基準露光パワー、基準露光デューティ))を決定する必要がある。
そこで、本実施形態では、上記S4で算出した現像γから、目標最大トナー付着量である0.5[mg/cm2]のトナー付着量を得るための現像ポテンシャルVbLを算出する(S5)。そして、目標最大トナー付着量を得るべく、画像形成するときの現像ポテンシャルが、上記S5で算出した現像ポテンシャルVbLとなるように、各種画像形成条件を調整する。以下、この調整方法について、具体的に説明する。
本実施形態においては、現在設定されている帯電バイアスVg0及び現像バイアスVb0を印加した状態で、基本露光パワーLDP0の1.5倍(150%)の露光パワーLDP’で、かつ、露光デューティを最大値(15)にして、感光体202の表面を露光し、静電潜像を形成する。そして、感光体202の表面に形成された静電潜像(露光部)の電位を、残留露光部電位Vr’として、電位センサ210により検知する(S6)。この残留露光部電位Vr’は、最終的な残留露光部電位Vrを検知する際に用いる現像バイアスVb’と目標帯電電位Vd’とを求めるためのものである。
次に、上記S6で検知した残留露光部電位Vr’から、下記の数式(1)により、このときの暫定的な基準露光部電位VL0’を算出する(S7)。なお、基準露光部電位とは、基準露光量(基準露光パワーLDP、基準露光デューティ)で露光したときの露光部電位である。
VL0’=Vr’−50・・・数式(1)
なお、上記式において、残留露光部電位Vr’に−50[V]を加算した値を基準露光部電位VL0’と設定しているのは、一般に、基準露光部電位は、残留露光部電位Vr’に−50[V]を加算した値付近に存在することが経験的に認められるためである。なお、この暫定の基準露光部電位VL0’と実際の基準露光部電位VL0との誤差は、後述する補正処理により補正される。
次に、上記求めた暫定の基準露光部電位VL0’から、まず、最終的な残留露光部電位Vrを検知する際に用いるVr検知用の現像バイアスVb’を、下記の数式(2)により算出する。
Vb’=VbL+VL0’・・・数式(2)
次に、上記数式(2)により算出したVr検知用の現像バイアスVb’から、Vr検知用の目標帯電電位Vd’を、下記の数式(3)により算出する。
Vd’=Vb’+Vbg・・・数式(3)
ここで、上記数式(3)中の地肌ポテンシャルVbgは、従来は一定値(例えば200[V])が使用されていたが、後述する理由により、本実施形態では現像ポテンシャルVbLに応じて変更される可変値とする。具体的には、地肌ポテンシャルVbgは下記の数式(4)から算出される(S8)。
Vbg=VbL×α・・・数式(4)
上記数式(4)中のαは、現像ポテンシャルVbLに対する地肌ポテンシャルVbgの好適な比率を示すパラメータであり、以下、地肌ポテンシャル決定係数という。この地肌ポテンシャル決定係数αは、以下の観点から、実験的に求まる値である。
下記の表1は、地肌ポテンシャル決定係数αを求めるための実験条件及び実験結果を示す表である。
本実験では、前提として、トナー補給を行わないようにし、各種画像形成条件は実験中に変更しないようにする。そして、まず、帯電電位Vdが約900[V]となるようにそれぞれ調整する。また、上記表1に示した実験条件のように地肌ポテンシャルを異ならせた状態で、現像バイアスVb及び露光パワーLDPを上記表1に示した実験条件に合わせて設定する。その後、印刷しながら、ベタ画像の画像濃度IDが1.6となるまで強制的にトナー補給を行い、画像濃度IDが1.6となった条件で、1ドット細線の線幅測定用の画像を1枚印刷する。また、1ドット細線の線幅測定用の画像についての感光体202の表面上におけるトナー像を採取し、トナー付着量を測定する。また、ハーフトーン画像を印刷し、そのハーフトーン濃度を測定する。この実験は、帯電電位Vdが約700[V]、約500[V]の場合についても同様に行う。
図8(a)、(b)は、帯電電位Vdが900[V]、700[V]、500[V]である場合に、地肌ポテンシャルを変更して1ドット幅の縦線(感光体表面移動方向に対応する方向に延びる線)を画像形成したときの地肌ポテンシャルと線幅との対応関係を示す上記実験結果のグラフである。なお、図8(a)は、横軸に地肌ポテンシャルをとったものであり、図8(b)は、横軸に現像ポテンシャルに対する地肌ポテンシャルの比率をとったものである。
図9(a)、(b)は、帯電電位Vdが900[V]、700[V]、500[V]である場合に、地肌ポテンシャルを変更して1ドット幅の横線(感光体表面移動方向に対して直交する方向に対応する方向に延びる線)を画像形成したときの、地肌ポテンシャルと線幅との対応関係を示す上記実験結果のグラフである。なお、図9(a)は、横軸に地肌ポテンシャルをとったものであり、図9(b)は、横軸に現像ポテンシャルに対する地肌ポテンシャルの比率をとったものである。
これらのグラフは、トナー付着量(画像濃度)がすべて目標最大付着量である0.5[mg/cm2]となるように現像γや現像ポテンシャルを調整した状態で、地肌ポテンシャルを変更したものである。
図8(a)、図9(a)からわかるように、トナー付着量が一定となるように現像ポテンシャルを調整しても、地肌ポテンシャルの違いにより、帯電電位Vdの違いにかかわらず、細線の線幅が異なってくるという画質変化が起きる。これは、地肌ポテンシャルの違いに応じて、露光部における非露光部との境界部分に付着するトナーに対する、非露光部と現像ローラとの間の電界(以下、「地肌部電界」という)の影響が異なってくるからだと推測される。より詳しくは、トナーを現像ローラ側へ移動させる地肌部電界が強くなると、露光部における非露光部との境界部分からトナーを取り除く又はその境界部分にトナーを付着させない作用が高まり、その結果、露光部の面積に対するトナー付着面積が小さくなる。この結果が、細線の線幅が狭くなるという画質劣化として顕在化したものと推測される。逆に、トナーを現像ローラ側へ移動させる地肌部電界が弱くなると、露光部の面積に対するトナー付着面積が大きくなり、細線の線幅が広くなるという画質劣化として顕在化する。
ここで、図8(a)、図9(a)は、トナー付着量が一定となるように現像ポテンシャルを調整したものであるが、このような調整を行う場合に地肌ポテンシャルが従来のように固定値(例えば200[V])であると、帯電電位Vdの違いにより細線の線幅が異なってしまうことがわかる。本実施形態の単色のプロセス制御でも、トナー付着量が一定となるように現像ポテンシャルの調整を行うので、地肌ポテンシャルが固定値であると、細線の線幅が変化する画質変化が生じてしまう。特に、本実施形態では、上述したように残留露光部電位Vrが経時的に徐々に高まる特性をもった感光体202を使用している。そのため、経時的に同じトナー付着量を確保するためには、適切な現像ポテンシャルを確保するために現像バイアスを経時的に徐々に高める必要が生じる。そして、現像バイアスの上昇に伴い、固定値である地肌ポテンシャルを維持すべく、帯電電位Vdが経時的に徐々に高まるように調整する。そのため、地肌ポテンシャルが固定値(例えば200[V])であると、経時的に細線の線幅が太くなるという画質劣化が生じる。
一方で、図8(b)、図9(b)を見ると、トナー付着量が一定となるように現像ポテンシャルを調整する場合でも、現像ポテンシャルに対する地肌ポテンシャルの比率が一定であれば、帯電電位Vdが異なっていても細線の線幅が変化しないことが理解できる。これは、この比率が一定であれば、露光部における非露光部との境界部分に付着するトナーに対する、露光部と現像ローラとの間の現像電界による影響と、非露光部と現像ローラとの間の地肌部電界による影響とが安定し、その結果、現像ポテンシャルや地肌ポテンシャルが変化しても、露光部の面積に対するトナー付着面積はほとんど変化しないためと推測される。
このため、トナー付着量が一定となるように現像ポテンシャルを確保しつつ、現像ポテンシャルに対する地肌ポテンシャルの比率(地肌ポテンシャル決定係数)が一定になるように地肌ポテンシャルを調整することで、一定の画像濃度を維持しつつ細線の線幅が変化するという画質変化を抑制することができる。
また、図10(a)は、帯電電位Vdが900[V]、700[V]、500[V]である場合の地肌ポテンシャルとハーフトーン濃度との対応関係を示す上記実験結果のグラフである。図10(b)は、帯電電位Vdが900[V]、700[V]、500[V]である場合の、現像ポテンシャルに対する地肌ポテンシャルの比率とハーフトーン濃度との対応関係を示す上記実験結果のグラフである。
図10(a)は、ベタ画像のトナー付着量が一定となるように現像ポテンシャルを調整した場合において、地肌ポテンシャルが従来のように固定値(例えば200[V])であると、帯電電位Vdの違いによりハーフトーン濃度が異なってしまうことを示している。本実施形態の単色のプロセス制御でも、ベタ画像のトナー付着量が一定となるように現像ポテンシャルの調整を行うので、地肌ポテンシャルが固定値であると、ハーフトーン濃度が変化する画質変化が生じてしまう。特に、本実施形態では、残留露光部電位Vrが経時的に徐々に高まる特性をもった感光体202を使用しているため、上述したように帯電電位Vdが経時的に徐々に高まるように調整される。そのため、地肌ポテンシャルが固定値(例えば200[V])であると、経時的にハーフトーン濃度が低下するという画質劣化が生じる。
一方で、図10(b)を見ると、ベタ画像のトナー付着量が一定となるように現像ポテンシャルを調整する場合、現像ポテンシャルに対する地肌ポテンシャルの比率が一定であれば、帯電電位Vdが異なっていてもハーフトーン濃度が変化しないことが理解できる。これは、上述した細線の線幅の場合と同様の理由によるものと考えられる。
以上より、トナー付着量が一定となるように現像ポテンシャルを確保しつつ、現像ポテンシャルに対する地肌ポテンシャルの比率(地肌ポテンシャル決定係数)が一定になるように地肌ポテンシャルを調整することで、一定の画像濃度を維持しつつハーフトーン濃度が変化するという画質変化も抑制できる。
そして、上述した実験結果からすれば、現像ポテンシャルに対する地肌ポテンシャルの比率、即ち、地肌ポテンシャル決定係数αは、0.40〜0.80の範囲内、好ましくは0.40〜0.45の範囲内であれば、上述した画質変化を良好に抑制できる。なお、本実施形態では、地肌ポテンシャル決定係数αを0.4に設定するものとする。
このようにして、地肌ポテンシャルVbgは、上記数式(4)により、上記S5で算出した現像ポテンシャルVbLに地肌ポテンシャル決定係数αを乗じて算出される。しかし、上述したように、地肌ポテンシャルVbgが小さすぎると地汚れが発生し、地肌ポテンシャルVbgが大きすぎるとキャリア付着が発生する。従って、地汚れやキャリア付着が発生しない範囲から外れた地肌ポテンシャルVbgを設定すると、上述した細線の線幅変化やハーフトーン濃度変化よりも深刻な不具合が生じてしまう。
このため、本実施形態では、地汚れやキャリア付着が発生しない規定範囲から外れた地肌ポテンシャルVbgが設定されないように、次のような処理を行っている。即ち、上記数式(4)により算出した地肌ポテンシャルVbgが規定範囲の上限値(VbgMAX)よりも高い値である場合には、その上限値VbgMAXを地肌ポテンシャルVbgとして算出し、以後の処理に使用する。また、上記数式(4)により算出した地肌ポテンシャルVbgが規定範囲の下限値(VbgMIN)よりも低い値である場合には、その下限値VbgMINを地肌ポテンシャルVbgとして算出し、以後の処理に使用する。
次に、上記S7で算出した暫定の基準露光部電位VL0’から、最終的な残留露光部電位Vrを検知する際に用いるVr検知用の現像バイアスVb’を上記数式(2)により算出する(S9)。また、上記数式(2)により算出したVr検知用の現像バイアスVb’と、上記S8で算出した地肌ポテンシャルVbgと、を用いて、上記数式(3)により、Vr検知用の目標帯電電位Vd’を算出する(S9)。
次に、帯電電位がVr検知用の目標帯電電位Vd’となるように、Vr検知用の帯電バイアスVg’を設定する(S10)。
具体的には、まず、帯電バイアスを予め決められた固定値(本実施形態では−550[V])に設定し、また、現像バイアスも予め決められた固定値(本実施形態では−350[V])に設定した条件下で、感光体202の表面を帯電させ、このときの帯電電位を電位センサ210で検知する。この検知結果が上記S9で算出した目標帯電電位Vd’を中心とした目標範囲内(本実施形態ではVd’±5[V])であれば、この測定に用いた上記固定値(−550[V])をVr検知用の帯電バイアスVg’に設定する。
一方、この検知結果が目標範囲内から外れている場合には、帯電バイアスの固定値(−550[V])及びその検知結果(帯電電位)と、単色のプロセス制御の前処理時に用いた帯電バイアス(本実施形態では−700[V])及びそのときに電位センサ210で検知した帯電電位と、を用いて、現時点における帯電バイアスと帯電電位との関係を最小二乗法により1次近似して概略関係式(1次近似式)を求める。そして、この1次近似式から、Vr検知用の目標帯電電位Vd’に対応するVr検知用の帯電バイアスを特定する。その後、ここで特定したVr検知用の帯電バイアスを用いて再び感光体202の表面を帯電させ、このときの帯電電位を電位センサ210で検知する。この検知結果が目標範囲内であれば、上記で特定したVr検知用の帯電バイアスをVr検知用の帯電バイアスVg’に決定する。この検知結果が目標範囲内から外れている場合には、さらに、このときの測定結果も加えて、さらに帯電バイアスと帯電電位との関係を示す1次近似式を求め、検知結果が目標範囲内に入るまで同様の処理を繰り返す。
ここで、使用する帯電部201の仕様等により、設定できる帯電バイアスの範囲に制限がある場合が多い。本実施形態では、帯電バイアスの設定可能範囲は、−450[V]以上−900[V]以下の範囲に制限される。よって、本実施形態では、上記のように決定したVr検知用の帯電バイアスVg’が帯電バイアスの設定可能範囲の上限値(VgMAX=−900[V])を越える場合には、その上限値VgMAXを帯電バイアスVg’として設定する。一方、上記のように決定したVr検知用の帯電バイアスVg’が帯電バイアスの設定可能範囲の下限値(VgMIN=−450[V])を下回る場合には、その下限値VgMINを帯電バイアスVg’として設定する。
また、上記のように設定したVr検知用の帯電バイアスVg’に応じ、地肌ポテンシャルが上記S8で算出した地肌ポテンシャルVbgとなるように、Vr検知用の現像バイアスVb’を修正して設定する(S10)。
図11は、帯電バイアスVg’が帯電バイアス上限値VgMAXに設定された場合に、Vr検知用の現像バイアスVb’を修正するための処理の流れを示すフローチャートである。図12は、帯電バイアスVg’が帯電バイアス下限値VgMINに設定された場合に、Vr検知用の現像バイアスVb’を修正するための処理の流れを示すフローチャートである。図13は、帯電バイアスVg’が帯電バイアス上限値VgMAXと帯電バイアス下限値VgMINとの間に設定された場合に、Vr検知用の現像バイアスVb’を修正するための処理の流れを示すフローチャートである。
帯電バイアスVg’が帯電バイアス上限値VgMAXに設定された場合は、図11に示すように、地肌ポテンシャルVbgが上限値VbgMAXに設定されていれば(S21/Yes)、地肌ポテンシャルVbgを下記の数式(5)により求まる値に修正する(S22)。
Vbg=Vbg1=VbgMAX−(Vd’[算出値]−VgMAX)×β1・・・数式(5)
上記数式(5)中のVd’[算出値]とは、上記S9で算出したVr検知用の目標帯電電位Vd’であり、上記S10で検出した帯電電位Vd’[検出値]と区別したものである。また、上記数式(5)中のβ1は、帯電バイアスの設定可能範囲内で現像ポテンシャルに対する地肌ポテンシャルの比率を一定にするための係数であり、通常は地肌ポテンシャル決定係数αと同様の値に設定される。
一方、地肌ポテンシャルVbgが下限値VbgMINに設定されていれば(S23/Yes)、地肌ポテンシャルVbgの修正は行わず(S24)、そのまま下限値VbgMINとする。
他方、地肌ポテンシャルVbgが上限値VbgMAXと下限値VbgMINとのに設定されていれば(S23/No)、地肌ポテンシャルVbgを下記の数式(6)により求まる値に修正する(S25)。
Vbg=Vbg2=Vbg−(Vd’[算出値]−VgMAX)×β1・・・数式(6)
次に、地肌ポテンシャルVbgが下限値VbgMIN以下である場合は(S26/Yes)、地肌ポテンシャルVbgを下限値VbgMINに再修正した後(S27)、Vr検知用の現像バイアスVb’を下記の数式(7)により求まる値に設定する(S28)。
Vb’=VgMAX−VbgMIN・・・数式(7)
他方、地肌ポテンシャルVbgが上限値VbgMAXと下限値VbgMINとの間である場合は(S26/No)、Vr検知用の現像バイアスVb’を下記の数式(8)により求まる値に設定する(S29)。
Vb’=VgMAX−Vbg・・・数式(8)
また、帯電バイアスVg’が帯電バイアス下限値VgMINに設定された場合は、図12に示すように、地肌ポテンシャルVbgが上限値VbgMAXに設定されていれば(S31/Yes)、地肌ポテンシャルVbgの修正は行わず(S32)、そのまま上限値VbgMAXとする。
一方、地肌ポテンシャルVbgが下限値VbgMINに設定されていれば(S33/Yes)、地肌ポテンシャルVbgを下記の数式(9)により求まる値に修正する(S34)。
Vbg=Vbg3=VbgMIN−(Vd’[算出値]−VgMIN)×β2・・・数式(9)
上記数式(5)中のβ2は、上記β1と同様、帯電バイアスの設定可能範囲内で現像ポテンシャルに対する地肌ポテンシャルの比率を一定にするための係数であり、通常は地肌ポテンシャル決定係数αと同様の値に設定される。
他方、地肌ポテンシャルVbgが上限値VbgMAXと下限値VbgMINとのに設定されていれば(S33/No)、地肌ポテンシャルVbgを下記の数式(10)により求まる値に修正する(S35)。
Vbg=Vbg4=Vbg−(Vd’[算出値]−VgMIN)×β2・・・数式(10)
次に、地肌ポテンシャルVbgが上限値VbgMAX以上である場合は(S36/Yes)、地肌ポテンシャルVbgを上限値VbgMAXに再修正した後(S37)、Vr検知用の現像バイアスVb’を下記の数式(11)により求まる値に設定する(S38)。
Vb’=VgMIN−VbgMAX・・・数式(11)
他方、地肌ポテンシャルVbgが上限値VbgMAXと下限値VbgMINとの間である場合は(S36/No)、Vr検知用の現像バイアスVb’を下記の数式(12)により求まる値に設定する(S39)。
Vb’=VgMIN−Vbg・・・数式(12)
また、帯電バイアスVg’が帯電バイアスの上限値VgMAXと下限値VgMINとの間に設定された場合は、図13に示すように、地肌ポテンシャルVbgが上限値VbgMAXに設定されていれば(S41/Yes)、地肌ポテンシャルVbgを下記の数式(13)により求まる値に修正する(S42)。
Vbg=Vbg5=VbgMAX−(Vd’[算出値]−Vd’[検出値])・・・数式(13)
一方、地肌ポテンシャルVbgが下限値VbgMINに設定されていれば(S43/Yes)、地肌ポテンシャルVbgを下記の数式(14)により求まる値に修正する(S44)。
Vbg=Vbg6=VbgMIN−(Vd’[算出値]−Vd’[検出値])・・・数式(14)
他方、地肌ポテンシャルVbgが上限値VbgMAXと下限値VbgMINとのに設定されていれば(S43/No)、地肌ポテンシャルVbgを下記の数式(15)により求まる値に修正する(S45)。
Vbg=Vbg7=Vbg−(Vd’[算出値]−Vd’[検出値])・・・数式(15)
次に、Vr検知用の現像バイアスVb’を下記の数式(16)により求まる値に設定する(S46)。
Vb’=Vd’[検出値]−Vbg・・・数式(16)
次に、以上のように設定したVr検知用の暫定の帯電バイアスVg’及び現像バイアスVb’を用い、上記S6の場合と同様の方法、具体的には、基本露光パワーLDP0の1.5倍(150%)の露光パワーLDP’で、かつ、露光デューティを最大値(15)にして、感光体202の表面を露光する。そして、これにより形成された静電潜像(露光部)の電位を、最終的な残留露光部電位(検知残留電位)Vrとして、電位センサ210により検知する(S11)。
その後、本実施形態では、目標帯電電位Vd’と残留露光部電位Vrとから、露光量の変化に対する感光体202の表面の露光部電位の変化割合が大きい低露光量領域(図14(a)、(b)に示したグラフで言えばおおよそグラフ中央からその左側にわたる領域)に属する調整用露光部電位Vplを、下記の数式(17)により算出する(S12)。
Vpl=(Vd’−Vr)÷3+Vr・・・数式(17)
次に、ここで新たに検出した残留露光部電位Vrを用いて上記S7〜S10までの処理と同様の処理を行うことにより、暫定の帯電バイアスVg"及び現像バイアスVb"を再設定する(S13)。
次に、調整用露光部電位Vplを得るためのVpl用露光パワー(プレ基準露光量)を特定する(S14)。但し、本実施形態の調整用露光部電位Vplは、おおよそ、基準露光部電位の1/3に相当する付近をとる。そのため、この付近で最適なVpl用露光パワーを探すために、このときの露光デューティは、基準露光量(露光デューティ=15/15)の1/3である5/15の露光デューティを用いる。
調整用露光部電位Vplを得るためのVpl用露光パワーを特定するにあたり、露光デューティを5/15に固定したまま、露光パワーを基本露光パワーLDP0の60%、80%、100%、120%、150%と順次切り替えて、静電潜像(露光部)を作成する。なお、このときの帯電バイアス及び現像バイアスは、上記S13で設定した暫定の帯電バイアスVg"及び現像バイアスVb"である。そして、各露光部の電位を電位センサ210で検知するとともに、このときの帯電電位Vdも電位センサ210で検知する。そして、各露光部に対応する露光パワーと、そのときの帯電電位Vd及び残留露光部電位Vrとから上記数式(17)により求まる各調整用露光部電位Vplとの対応関係を示す5つのデータ組を算出する。そして、各データ組により、露光パワーと調整用露光部電位Vplとの関係を最小二乗法により1次近似して概略関係式(1次近似式)を求め、この1次近似式から、上記S12で算出した調整用露光部電位Vplを得るためのVpl用露光パワーを特定する。
その後、ここで特定したVpl用露光パワー(露光デューティ=5/15)を用いて感光体202の表面を露光し、このときの露光部電位を電位センサ210で検知する。この検知結果が目標範囲内(上記S12で算出した調整用露光部電位Vplの±3[V]以内)であれば、上記で特定した特定したVpl用露光パワーをそのまま用いる。一方、この検知結果が目標範囲内から外れている場合には、さらに、上記で特定した特定したVpl用露光パワーを所定の調整値で調整し、この調整したVpl用露光パワーを用いて感光体202の表面を再び露光し、このときの露光部電位を電位センサ210で検知する処理を、その検知結果が目標範囲内に入るまで繰り返し行う。
このようにして、調整用露光部電位Vplを得るためのVpl用露光パワーを特定したら、次に、このVpl用露光パワーを、基準露光量の露光デューティである15/15露光デューティの露光パワーに換算する(S15)。
本実施形態では、Vpl用露光パワーを特定するために用いた露光デューティが基準露光量の露光デューティ(15/15)の1/3であったので、上記S14で特定したVpl用露光パワーを3倍して15/15露光デューティの露光パワーに換算する。
次に、上記の処理で換算して得た換算露光パワーから基準露光パワーを決定する(S16)。ここで、本実施形態の条件では、換算露光パワーと基準露光パワーとの関係は、約2/3になることが予め実験等により把握されている。従って、本実施形態では、換算露光パワーに2/3を乗じて得られる値を基準露光パワーとして決定する。なお、この換算値(本実施形態では2/3)は、実験等により適宜設定される。
以上のようにして基準露光パワーを求めたら、最後に、上記S7におおいて暫定的に決めた基準露光部電位VL0’と実際の基準露光部電位VL0との誤差を補正するための補正処理を行う。
具体的には、まず、基準露光量(上記S16で決定した基準露光パワー、15/15露光デューティ)で静電潜像(露光部)を作成し、その露光部の電位(基準露光部電位VL0)を電位センサ210で検知する(S17)。なお、このときの帯電バイアス及び現像バイアスは、上記S13で設定した暫定の帯電バイアスVg"及び現像バイアスVb"である。このようにして検知した基準露光部電位VL0と、上記S7におおいて暫定的に決めた基準露光部電位VL0’との差分ΔVLを算出する(S18)。そして、この差分ΔVLを補正値とし、上記S13で設定した暫定の帯電バイアスVg"及び現像バイアスVb"を補正して、最終的な帯電バイアスVg及び現像バイアスVbを決定する(S19)。従って、最終的な帯電バイアスVgは下記の数式(18)となり、最終的な現像バイアスVbは下記の数式(19)となる。但し、補正後の帯電バイアスVg及び現像バイアスVbが予め設定されているそれぞれ上下限値を越える場合には、補正前の帯電バイアスVg及び現像バイアスVbを最終的な値として用いる。
Vg=Vg"−ΔVL・・・数式(18)
Vb=Vb"−ΔVL・・・数式(19)
本実施形態の単色のプロセス制御では、帯電バイアスVgが上限値VgMAXを越えて設定されることがないように、現像ポテンシャルと地肌ポテンシャルとの両方を調整している。具体的には、現像ポテンシャルに対する地肌ポテンシャルの比率が地肌ポテンシャル決定係数αに維持されるように調整している。このような調整により、帯電バイアスVgが上限値VgMAXを越えて設定されることを防止しつつ、細線の線幅変化やハーフトーン濃度の変化などの画質変化を抑制することができる。但し、この場合は、現像ポテンシャルが若干低めに設定されることになるため、画像濃度がわずかに低下し、多少の画質変化が起きるおそれがある。このため、画像濃度の維持を優先する場合には、帯電バイアスVgが上限値VgMAXを越えた分については地肌ポテンシャルだけ調整してもよい。この場合、現像ポテンシャルに対する地肌ポテンシャルの比率が若干変化するため、細線の線幅変化やハーフトーン濃度の変化などの画質変化がわずかに発生するおそれがあるが、画像濃度の変化は防止できる。
<地肌ポテンシャル係数制御を用いた多重色のプロセス制御例>
次に、地肌ポテンシャル係数制御を用いた多重色のプロセス制御例について説明する。上記の処理では、通常の単色のトナー付着量を安定させるための単色のプロセス制御について説明した。しかし、上記処理では、多重色のトナー付着量を安定させるための多重色のプロセス制御を行っていないため、多重色の色バランスが変化してしまい、多重色の色差が大きくなり、色相方向にズレが生じてしまう。このため、本実施形態では、単色のプロセス制御の後に多重色のプロセス制御を行うことにしている。なお、多重色のプロセス制御は、印刷プロセス中の紙間のプロセス制御時に行っても良い。
図16は、本実施形態における多重色のトナー付着量を安定させるための多重色のプロセス制御の主要な処理の流れを示す図である。本実施形態においては、転写紙112上に形成される低濃度から高濃度までの画像に対して適切に付着量変換処理を実行できるように多重色のプロセス制御を行うときのトナー階調パターンの目標トナー付着量範囲が、0[mg/cm2]付近から0.5[mg/cm2]までの範囲内である場合について説明する。
多重色のプロセス制御においては、単色のプロセス制御を終えた後、まず、現在設定されている帯電バイアスVg0、現像バイアスVb0、露光パワーLDP等の画像形成条件(前回の単色のプロセス制御で設定された画像形成条件)で、10階調のY,M,Cの濃度パッチ113を感光体202の表面上に形成する(S51)。そして、これらの10階調の濃度パッチ113のうち、入力画像濃度70%の濃度パッチ113に付着したトナー付着量を、画像検出部110で検知する(S52)。なお、入力画像濃度70%の濃度パッチ113を選んだ理由としては、単色、多重色共に入力画像濃度70%時のトナー付着量ばらつきが最も大きいためである。
図17は、Yの濃度パッチ113のトナー付着量と、画像の反射率に比例するYの画像濃度と、の関係を実験結果より示したグラフである。そして、この図17を用い、S52の工程で得られた10階調の濃度パッチ113に付着したトナー付着量を画像濃度に変換し、トナー付着量に応じた画像濃度を算出する(S53)。なお、図17を用いる代わりに、Yの濃度パッチ113を画像濃度センサ等で測定し、画像濃度を検知しても良い。
図18は、Yの画像濃度と、Yの彩度と、の関係を実験結果より示したグラフである。そして、この図18を用い、S53の工程で得られたYの画像濃度をYの彩度に変換し、画像濃度に応じた彩度を算出する(S54)。なお、図18を用いる代わりに、Yの濃度パッチ113を測色センサ等で測定し、彩度を検知しても良い。同様に、M,Cも彩度を算出する。
彩度を算出する方法としては、以下の3つの方法がある。
1.濃度パッチ113のトナー付着量を画像検出部110で測定し、そのトナー付着量に応じた画像濃度に変換し、また、画像濃度に応じた彩度に変換する。トナー付着量に応じた画像濃度への変換、画像濃度に応じた彩度への変換は、変換アルゴリズムや、変換テーブルを用いることで実現できる。
2.濃度パッチ113の画像濃度を測定する画像濃度センサを搭載し、濃度パッチ113の画像濃度を画像濃度センサで測定し、画像濃度に応じた彩度に変換する。画像濃度に応じた彩度への変換は、変換アルゴリズムや、変換テーブルを用いることで実現できる。
3.濃度パッチ113の彩度を測定する測色センサを搭載し、濃度パッチ113の彩度を測色センサで測定する。
なお、上記の3つの方法の中では、3の方法が最もよい。これは、例えば、2つの濃度パッチ113のトナー付着量が同じであったとしても、図19に示すように、濃度パッチ113を形成するトナーのドットの形状がドット高さ、ドット径において異なる場合があるためである。このため、濃度パッチ113の画像濃度や彩度は、測定した場合と変換テーブルを用いた場合とでは異なった結果が出てしまう可能性があるためである。
単色を2色ずつ用いる多重色はR,G,Bがあり、それぞれYとM,YとC,MとCを用いる。
図20は、多重色Gに用いる単色のY彩度とC彩度との許容範囲を示すグラフである。この許容範囲は、別の画像評価にて得られた、多重色Gの濃度パッチ113の色味のばらつきがある範囲よりも小さくなるときの、単色Yの濃度パッチ113の彩度と単色Cの濃度パッチ113の彩度とを組み合わせた範囲である。なお、全体平均線とは、濃度パッチ113を20、40、70、100%毎で全体平均を求め、この4点を通る近似直線のことである。つまり、許容範囲内(エリア1)にある場合は、多重色Gの色バランスの変化は抑えられ、色差はある範囲より小さくなり、色相方向のズレは小さくなる。この図20を用いて、S54で算出されたY彩度とC彩度とをプロットさせる(S55)。なお、多重色R,BのときもそれぞれY彩度とM彩度,M彩度とC彩度の許容範囲を示すグラフがあり、同様な処理を行うことになる。
次に、Y彩度とC彩度とが許容範囲内(エリア1)にあるか否かを確認し、何れも許容範囲内にある場合は(S56/Yes)、フィードバックを行わず、そのまま多重色のプロセス制御を終了する。
一方、Y彩度とC彩度との何れかあるいは両方とも許容範囲外(エリア2,3)の場合は(S56/No)、地肌ポテンシャル係数制御を行う(S57)。なお、図20において、エリア2はエリア1を除いた全体平均線より上部、エリア3はエリア1を除いた全体平均線より下部とする。また、S57の地肌ポテンシャル係数制御とは、単色のプロセス制御にて述べたように、地肌ポテンシャル係数を増減させることにより、細線の線幅やハーフトーン濃度を変化させられる特性を活かし、単色トナーの付着量を調整することで、単色濃度パッチ113の彩度を許容範囲内に抑える制御のことである。
以下、多重色Gを例に挙げて説明する。Y彩度とC彩度とがエリア2にある場合は、Y彩度の割合が大きく、この2色の単色トナーを用いた多重色Gは、Yの色味寄りのGになる。そこで、Y彩度を下げるために、Yのトナー付着量を減らしてGの色バランスを整える場合は、Yの地肌ポテンシャル係数を大きくし、逆にC彩度を上げるために、Cのトナー付着量を増やしてGの色バランスを整える場合は、Cの地肌ポテンシャル係数を小さくすればよい。
一方、Y彩度とC彩度とがエリア3にある場合は、C彩度の割合が大きく、この2色の単色トナーを用いた多重色Gは、Cの色味寄りのGになる。そこで、Y彩度を上げるために、Yのトナー付着量を増やしてGの色バランスを整える場合は、Yの地肌ポテンシャル係数を小さくし、逆にC彩度を下げるために、Cのトナー付着量を減らしてGの色バランスを整える場合は、Cの地肌ポテンシャル係数を大きくすればよい。
図21は、Yの地肌ポテンシャル係数に対し、Yのトナー付着量が変化した結果、算出されるYの彩度を示す。
図22は、Cの地肌ポテンシャル係数に対し、Cのトナー付着量が変化した結果、算出されるCの彩度を示す。
図21、図22の関係を用いれば、所望の単色のトナー彩度になるには、地肌ポテンシャル係数をどれだけ変化させれば良いかが分かる。但し、単色のプロセス制御でも述べた様に、地肌ポテンシャルVbgが小さすぎると地汚れが発生し、地肌ポテンシャルVbgが大きすぎるとキャリア付着が発生する。従って、地肌ポテンシャル係数の値は、地汚れやキャリア付着が発生しない範囲で0.35〜0.45に抑えるべきである。
以上の地肌ポテンシャル係数制御を行った後、再びS51に戻り、S56にてY彩度とC彩度とが許容範囲内(エリア1)にあるか否かを確認する工程を繰り返す。また、この工程を20回繰り返した場合は、地肌ポテンシャル係数制御を終了し、多重色のプロセス制御を終了する(End)。なお、多重色R,Bに関しても同様の多重色プロセス制御を行うことになる。但し、S56の許容範囲は、多重色Gの場合は、図20に示すように、単色Yの彩度が64以上71以下、且つ、単色Cの彩度が42以上47以下であり、多重色Rの場合は、図23に示すように、単色Yの彩度が64以上71以下、且つ、単色Mの彩度が47以上51以下であり、多重色Bの場合は、図24に示すように、単色Mの彩度が47以上51以下、且つ、単色Cの彩度が42以上47以下となるようにする。
<本実施形態の画像形成装置の作用・効果>
このように、本実施形態の画像形成装置は、トナーパターンである濃度パッチ113の彩度を特定し、その濃度パッチ113の彩度が、多重色に用いる1色目と2色目との彩度の所定の許容範囲内にない場合に、現像ポテンシャルに対する地肌ポテンシャルの比率を所定の目標比率の範囲内(0.35〜0.45)で増減させ、濃度パッチ113の彩度が1色目と2色目との彩度の許容範囲内になるように調整する。これにより、多重色の色差を低減することができる。
なお、上述する実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
例えば、上述した実施形態の一連の処理動作は、1つの制御部41だけで行う必要はなく、複数の制御部で行うように構成することも可能である。
また、上述した本実施形態の画像形成装置を構成する各部の制御動作は、ハードウェア、または、ソフトウェア、あるいは、両者の複合構成を用いて実行することも可能である。
なお、ソフトウェアを用いて処理を実行する場合には、処理シーケンスを記録したプログラムを、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ内のメモリにインストールして実行させることが可能である。あるいは、各種処理が実行可能な汎用コンピュータにプログラムをインストールして実行させることが可能である。
例えば、プログラムは、記録媒体としてのハードディスクやROM(Read Only Memory)に予め記録しておくことが可能である。あるいは、プログラムは、リムーバブル記録媒体に、一時的、あるいは、永続的に格納(記録)しておくことが可能である。このようなリムーバブル記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することが可能である。なお、リムーバブル記録媒体としては、フロッピー(登録商標)ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magneto optical)ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、磁気ディスク、半導体メモリなどが挙げられる。
なお、プログラムは、上述したようなリムーバブル記録媒体からコンピュータにインストールすることになる。また、ダウンロードサイトから、コンピュータに無線転送することになる。また、ネットワークを介して、コンピュータに有線で転送することになる。
また、本実施形態における画像形成装置は、上記実施形態で説明した処理動作に従って時系列的に実行されるのみならず、処理を実行する部の処理能力、あるいは、必要に応じて並列的にあるいは個別に実行するように構築することも可能である。