JP6011252B2 - 溶銑の脱錫方法 - Google Patents

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本発明は、溶銑から錫を除去する方法に関し、詳しくは、鉄源として鉄スクラップを使用して鋼製品を製造する際に、鉄スクラップによって鋼製品に持ち込まれる錫を除去するべく、鉄スクラップを加炭溶解して溶製した溶銑、或いは、鉄スクラップを溶解させた溶銑から錫を除去する方法に関する。
現在、資源リサイクル問題は、二酸化炭素排出量の削減が望まれる中で益々重要な課題となっている。鉄スクラップは、従来から鉄源として再利用されているが、特に老廃屑は銅、錫などの不純物元素を多く含んでいる。鉄スクラップに起因する銅、錫などの不純物元素が溶鋼に持ち込まれると、表面割れなどにより鋼製品の歩留が低下する。錫の場合には、銅と共存することで鋼製品の表面割れを助長するといわれている。そのため、鉄スクラップの溶解、精錬によって製造された溶鋼は、そのままでは自動車外装用薄鋼板のような高級用途の鉄鋼製品の製造用原料としては利用することができない。
鉄スクラップから銅や錫を物理的に除去する方法として、特許文献1に開示されるように、鉄スクラップから非鉄金属を分別回収する方法や、特許文献2に開示されるように、錫メッキの表面層を鋼板から機械的に剥離する方法がある。また、物理化学的な除去方法としては、特許文献3に開示されるように、金属カルシウムまたはカルシウム合金を添加し、カルシウムと反応させて錫、燐などを除去する方法や、銅及び錫と鉄との蒸気圧の差を利用して銅及び錫を蒸発分離する方法などがある。
これらのなかでも、蒸発分離は、設備及び処理の簡便さにおいて有利なことから、最も有望視されている。但し、銅及び/または錫を含む溶融鉄を真空雰囲気に曝した場合、銅や錫は金属の状態のまま蒸発するが、溶融鉄中の銅や錫は蒸気圧が小さく、分離速度は遅い。そこで、蒸発分離を促進させるべく、特許文献4には、弱酸化剤を溶融鉄に吹き付けて脱炭反応によりCO気泡を発生させて蒸発界面積を大きくする技術が開示され、また、特許文献5には、溶融鉄中の酸素濃度を高めて比較的蒸気圧の高い酸化錫(SnO)として蒸発させる技術が開示されている。
更に、これらの方法以外に、特許文献6には、真空または減圧状態で溶解し、或いは、真空または減圧状態で脱ガスした溶鋼内に、アンモニアガス単独またはアンモニアガスと窒素ガスとの混合物を吹き込んで、溶鋼中の銅を除去する方法が開示されている。特許文献6によれば、銅以外の不純物元素、例えば、炭素、錫、燐、硫黄なども除去できるとしている。
特開平10−16841号公報 特開平9−141239号公報 特開昭56−127723号公報 特開平7−126728号公報 特開平7−216435号公報 特開平7−150224号公報
しかしながら、上記従来技術には以下の問題点がある。
即ち、特許文献1や特許文献2のように物理的に除去する方法では、作業負荷が高く、安価な低級鉄スクラップがこれらの工程を経ることで高額になり、鉄スクラップの利用が妨げられるという問題がある。また、鉄スクラップのなかには、銅や錫を合金成分として含有するものがあり、この形態で混合した銅や錫は、物理的には除去することができない。また更に、錫除去処理の効率が悪く、鉄鋼の大量生産には適していない。
物理化学的な除去方法では、合金成分として含有する銅や錫の除去が可能であるが、「2Ca+Sn→Ca2Sn」のカルシウムとの反応を利用した特許文献3に提案される方法では、カルシウムは活性であり、酸化させずにカルシウムを保管するには湿度の管理などが必要であり、また、副産物として発生するスラグの処理など、取り扱いに難点があり、且つ、反応効率が低く、コスト高となる。また、溶融鉄中の炭素濃度が高いと、「Ca+2C→CaC2」の反応が優先的に進行し、反応効率が著しく低下することから、脱炭処理以降の炭素濃度が低い溶鋼段階での処理に限定されてしまう。これは、溶融鉄中の炭素濃度が高いほど活量が増大して除去しやすくなるという特性を有する錫の除去には不利となる。
特許文献4及び特許文献5に提案される蒸発除去の場合、錫を酸化物や硫化物といった錫化合物とすることで、錫単体の場合と比較すれば効率良く溶銑中や溶鋼中から優先的に蒸発させることができるが、何れの場合も蒸発速度が不足しており、鉄鋼の大量生産には適用できない。また、酸化物粉体を投入する場合、酸化物粉体の分解熱が余分に必要となり、熱ロスを生じることになる。
特許文献6に開示されるアンモニアガスの吹き込みによる溶鋼中からの錫の除去方法では、十分な錫の蒸発速度が得られず、実用プロセス規模での錫の除去を想定すると、蒸発速度が不足し、鉄鋼の大量生産には適用できない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、鉄源として鉄スクラップを使用して鋼製品を製造するにあたり、鉄スクラップを加炭溶解して溶製した溶銑、或いは、鉄スクラップを溶解させた溶銑から錫を効率良く除去することができ、安価鉄スクラップを高級用途の鉄鋼製品用の鉄源として鉄鋼の大量生産工程にも適用することのできる、溶銑の脱錫方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]大気圧よりも減圧下の雰囲気中で、硫黄を0.080質量%以上含有する溶銑に酸素ガスまたは酸素ガスを含有するガスを供給して溶銑に含有される錫を除去することを特徴とする、溶銑の脱錫方法。
[2]前記溶銑の珪素含有量が0.45質量%以上であることを特徴とする、上記[1]に記載の溶銑の脱錫方法。
[3]前記雰囲気の圧力が2000Pa以下であることを特徴とする、上記[1]または上記[2]に記載の溶銑の脱錫方法。
[4]前記溶銑の硫黄含有量が0.3質量%以下であることを特徴とする、上記[1]ないし上記[3]のいずれか1項に記載の溶銑の脱錫方法。
本発明によれば、炭素含有量が多く、錫が除去されやすい溶銑段階において、減圧下の溶銑に酸素ガスまたは酸素ガスを含有するガスを供給するので、供給されるガスの溶銑への供給面において、供給するガス中の酸素ガスと溶銑中の炭素とが反応して脱炭反応が起こり、これにより、溶銑と気相との界面において微細なCO気泡が発生し、金属錫及び硫化錫の蒸発反応界面積が増大して溶銑に含有される錫の蒸発除去が促進される。また、溶銑は硫黄を0.080質量%以上含有しているので、溶銑中の錫は硫黄と反応してガス化しやすい硫化錫(SnS)となり、溶銑からの錫の除去が促進される。
減圧下での脱錫処理において、脱炭反応により微細なCO気泡が発生し、このCO気泡の気液界面に硫化錫が生成して錫が除去される様子を模式的に示す図である。 試験No.2〜6における溶銑中珪素濃度と脱錫速度定数との関係を示す図である。 本発明を実施可能なVOD式真空精錬装置の概略図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明では、老廃屑や廃自動車のシュレッダー屑などの安価な鉄スクラップを、高級用途の鉄鋼製品用の鉄源として利用するにあたり、鉄スクラップをアーク炉などで溶解して溶鋼を直接溶製する従来の方法を採用せず、先ず、鉄スクラップを加炭溶解し、更に加硫(硫黄添加)し、硫黄を0.080質量%以上含有する溶銑を溶製する。ここで、本発明における溶銑とは、炭素含有量が1.5質量%以上の溶融鉄である。
次いで、この硫黄を0.080質量%以上含有する溶銑に、大気圧よりも減圧下の雰囲気で酸素ガスまたは酸素ガスを含有するガスを供給して溶銑に含有される錫を除去する(「脱錫処理」と呼ぶ)。錫が除去された溶銑は、その後は通常工程に沿って溶鋼へと溶製される。具体的には、脱錫処理後、溶銑脱硫処理、必要に応じて溶銑脱燐処理(但し、鉄スクラップは燐含有量が少なく、溶銑脱燐処理は必須ではない)を経て、転炉で脱炭精錬され、転炉からの出鋼後に更に必要に応じてRH真空脱ガス装置などの二次精錬が施され、所定の成分の溶鋼へと溶製される。これらの工程の途中で、高炉で製造された溶銑(「高炉溶銑」と呼ぶ)と混合し、鉄スクラップから製造された溶銑の化学成分を高炉溶銑で希釈してもよい。
鉄スクラップを加炭溶解して溶銑を製造する設備としては、アーク炉、誘導溶解炉、或いはキュポラのようなシャフト炉などを用いることができる。シャフト炉では操業形態上から溶銑が製造されるが、アーク炉や誘導溶解炉では、コークスなどの炭材を加え、鉄スクラップの溶解によって製造される溶融鉄を加炭して溶銑とする。アーク炉や誘導溶解炉では、溶解能率を高めるために、高炉溶銑を種湯として装入し、この高炉溶銑に鉄スクラップを溶解してもよい。尚、誘導溶解炉のうち真空誘導溶解炉(VIM)では、鉄スクラップの加炭溶解後に、次工程の脱錫処理を続けて行うことができる。
このとき、溶製した溶銑の硫黄含有量が0.080質量%以上になるように、硫化鉄(FeS)を添加する、或いは、加炭剤として硫黄含有量の高い炭材を使用し、溶銑を加硫する。溶製される溶銑の硫黄濃度を0.080質量%以上に調整する理由は、以下のとおりである。
即ち、次工程として、減圧下での酸素ガスまたは酸素ガスを含有するガスの供給による脱錫処理を行うが、その際に、溶銑の硫黄濃度を0.080質量%以上に調整しておくと、下記の(1)式に示すように、溶銑中の錫と溶銑中の硫黄とが反応して硫化錫(SnS)が生成し、この硫化錫は気液界面ではガス状態となることから、錫の蒸発除去が促進される。溶銑中の硫黄濃度が0.080質量%未満の場合には、硫化錫の生成量が少なくなり、錫の蒸発速度が低下し、工業的実用性が乏しくなる。
Sn+S→SnS・・・(1)
一方、溶銑中の硫黄濃度が0.3質量%を超えると、この溶銑を減圧下に曝すと、溶銑からの硫黄ガスの単独蒸発が盛んになり、硫黄濃度上昇による硫化錫の蒸発量増加の効果に対してスプラッシュによる鉄ロスが極端に大きくなってしまう。また、硫黄そのものは鉄鋼材料において有害元素であるので、その後の脱硫処理工程における負荷を考慮すると、必要以上に硫黄分を添加して硫黄を高濃度にすることは好ましくない。この観点から、溶銑の硫黄濃度は0.3質量%以下であることが好ましい。
溶融鉄中の炭素濃度が高くなるほど、溶融鉄中の錫の活量は大きくなり、除去しやすくなる。このため、溶融鉄に同一濃度の錫が含まれている場合であっても、溶融鉄中の炭素濃度が高い方が錫の蒸発除去を効率良く行うことができる。従って、本発明では、鉄スクラップを加炭溶解して溶銑とするが、溶融鉄中の錫の活量を増大させて錫の蒸発除去を効率良く行う観点から、溶製する溶銑の炭素含有量を2.0質量%以上、望ましくは3.0質量%確保することが好ましい。
本発明では、次いで、この溶銑に、大気圧よりも低い減圧下で、酸素ガス単独または酸素を含有するガス(以下、「酸素含有ガス」とも記す)を供給して脱錫処理を実施する。溶銑に酸素ガスまたは酸素含有ガスを供給すると、酸素ガスまたは酸素含有ガスの溶銑への供給面において、供給するガス中の酸素ガスと溶銑中炭素とが反応して下記の(2)式に示す脱炭反応が起こる。これにより、前記供給面における溶銑と気相との界面において微細なCO気泡が発生し、金属錫や硫化錫の蒸発反応界面積が増大して溶銑からの錫の蒸発除去が促進される。
2C+O2→2CO・・・(2)
酸素ガスまたは酸素含有ガスを溶銑に供給する方法としては、上吹きランスから溶銑表面に吹き付ける方法、及び、インジェクションランスや溶銑浴面下に開口する羽口を介して溶銑中に吹き込む方法があり、どちらの方法を用いても構わない。但し、酸素ガスまたは酸素含有ガスの溶銑への供給面(以下、「火点」と記す)での脱錫速度を大きくするためには、前記火点が減圧雰囲気と接する状態で行われる上吹き供給の方が、溶銑中への吹き込み供給よりも望ましい。ここで、酸素ガスとは、純酸素ガスまたは工業用純酸素ガスであり、酸素含有ガスとは、空気、酸素富化空気、工業用純酸素ガスと希ガスとの混合ガスなどである。
また、酸素ガスまたは酸素を含有するガスの溶銑への供給に際して、予め溶銑の珪素濃度を0.45質量%以上にすることが好ましい。珪素濃度が高い場合、火点において脱炭反応だけでなく、脱珪反応が起こり、SiO2が生成する。火点で生成したSiO2は、溶銑との比重差によって溶銑と減圧雰囲気との界面に広がる。火点から周囲へ広がったSiO2は、減圧雰囲気下のCO分圧の低い環境では溶銑中の炭素と下記の(3)式に示す反応を起こす。
SiO2+2C→Si+2CO・・・(3)
この(3)式に示す反応によって火点以外でも、微細なCO気泡が溶銑と気相との界面で生成し、錫及び硫化錫の蒸発界面積を飛躍的に増大させ、脱錫速度を向上させる。また、処理プロセス全体で評価すると、溶銑中珪素は、酸素ガスによる酸化と溶銑中炭素による還元とを繰り返しており、溶銑表面において酸素運搬の役割を果たすだけであって、SiO2の還元による熱ロスは発生しない。また、溶銑中の珪素は酸化と還元とを繰り返しており、脱錫処理前の溶銑中珪素を0.45質量%以上に確保すれば、脱錫処理中に珪素分を追加投入する必要はない。
図1に、酸素ガスを上吹き供給して行う脱錫処理において、上記の火点における酸素ガスによる脱炭反応、及び、火点以外の溶銑表面におけるSiO2による脱炭反応によって微細なCO気泡が発生し、このCO気泡の気液界面に硫化錫が生成して錫が溶銑から除去される様子を模式的に示す。尚、図1において、符号1は溶銑保持用の坩堝、2は火点、3は火点で生成するCO気泡、4はCO気泡の気液界面で生成する硫化錫の気泡、5はSiO2、6はSiO2の還元によって生成するCO気泡、7は溶銑である。
この脱錫処理では、錫の蒸発除去速度を高くするために、雰囲気の圧力を2000Pa以下とすることが好ましい。雰囲気圧が2000Paを超える場合でも錫は除去されるが、工業的な規模で実用化するためには、雰囲気の圧力を2000Pa以下とすることが好ましい。
この脱錫処理を実施するための設備としては、真空誘導溶解炉、VOD式真空精錬装置、RH真空脱ガス装置、真空タップ脱ガス装置、レードル脱ガス装置、RH−OB式真空精錬装置、真空鋳造装置及びVAD真空脱ガス装置などが使用できる。これらのなかでも、気液界面を大きくすることができることから、VOD式真空精錬装置及びVAD真空脱ガス装置を使用するのが好ましい。酸素ガスの供給方法としては、VOD式真空精錬装置及びVAD真空脱ガス装置では、上吹きランスから溶銑表面に吹き付ける方法や攪拌用ガスとして吹き込む方法が採用できる。また、RH真空脱ガス装置では、上吹きランスから溶銑表面に吹き付ける方法や還流ガスとして浸漬管から吹き込む方法を用いることができる。
尚、シャフト炉などを用いて老廃鉄スクラップを溶解して得られる溶鉄は、一般的に高炉溶銑よりも硫黄濃度、錫濃度が高い。よって、この老廃鉄スクラップから溶製された溶銑を後工程で高炉溶銑と混合する場合には、本発明による脱錫処理を行う前に高炉溶銑と混合すると、硫黄濃度及び錫濃度の低下を招き、効率的な脱錫処理を行えなくなるので、脱錫処理を実施した後に高炉溶銑と混合することが好ましい。また、一般的にシャフト炉などの鉄スクラップの溶解炉の溶解能力は高炉の溶製能力よりも小さく、一回の脱錫処理で精錬する溶銑量は、一般的な高炉溶銑の処理プロセスと比較して少なくなる。従って、高炉溶銑の処理プロセスと比較して単位溶銑体積あたりの蒸発反応界面積を大きくすることができるため、効率良く脱錫できるという利点もある。
脱錫処理における溶銑温度の条件としては、金属錫及び硫化錫の蒸発を促進する観点からは定性的には高い方が好ましいが、温度依存性は大きくないので、溶銑の昇温のための負荷が過大でない範囲で実施すればよい。具体的には、1350℃以上の温度で実施することが好ましく、通常の溶銑製造プロセスによる溶銑温度は1400〜1550℃の範囲であるので、この範囲であれば積極的に昇温を行わなくても、脱錫処理には好適な条件である。1300℃未満の溶銑温度では、上記のSiO2の還元反応速度が低下し、また、脱錫速度が低下する傾向があることから好ましくない。
以上説明したように、本発明によれば、炭素含有量が多く、錫が除去されやすい溶銑段階において、減圧した雰囲気下で溶銑に酸素ガスまたは酸素含有ガスを供給するので、火点において、供給されるガス中の酸素ガスと溶銑中の炭素とが反応して脱炭反応が起こり、これにより、溶銑と気相との界面において微細なCO気泡が発生し、金属錫及び硫化錫の蒸発反応界面積が増大して溶銑に含有される錫の蒸発除去が促進される。また、溶銑は硫黄を0.080質量%以上含有しているので、溶銑中の錫は硫黄と反応してガス化しやすい硫化錫となり、溶銑からの錫の除去が促進される。
また、溶銑が0.45質量%以上の珪素を含有している場合には、溶銑に供給された酸素ガスは脱珪反応を起こしてSiO2が生成し、このSiO2と溶銑中の炭素とが反応して脱炭反応が起こり、これにより、溶銑と気相との界面において微細なCO気泡が発生し、金属錫及び硫化錫の蒸発反応界面積が更に増大し、溶銑からの錫の除去がより一層促進される。
1チャージの鉄溶解量が10kg容量の真空誘導溶解炉(炉内圧力約2000Pa)を用い、加炭剤としてコークス、加硫剤として硫化鉄、加珪剤としてフェロシリコンを使用し、鉄スクラップを溶解して表1の試験No.1〜9に示す化学成分の溶銑を溶製し、この溶銑に上吹きランスから酸素ガスを吹き付け、溶銑を脱錫処理する試験を行った。試験において、溶銑の温度は全ての試験で約1450℃に保持した。また、酸素ガスを供給する上吹きランスは内径3mmの単孔のものを使用し、ランス高さは静止湯面から100mmとした。
Figure 0006011252
試験No.1では、硫化鉄の添加により溶銑中硫黄濃度を高く調整して試験を行い、試験No.2〜6では、溶銑中硫黄濃度を0.080質量%の近傍に調整し、且つ、フェロシリコンの添加により溶銑中珪素濃度を変更して試験を行った。そのうち、試験No.5、6では、溶銑中硫黄濃度が本発明の範囲よりもやや低位であった。試験No.7では、溶銑中硫黄濃度を本発明の範囲よりも低い0.030質量%として試験を行い、試験No.8では、酸素ガスの替わりにArガスを吹き付けて試験を行い、試験No.9では、減圧せずに、大気圧のArガス雰囲気中で酸素ガスを溶銑に吹き付けて試験を行った。試験No.5〜9は本発明の条件を満たしていない。
表1に、脱錫処理時の処理条件及び試験結果を示す。尚、表1の備考欄には、本発明の範囲内の試験には「本発明例」と表示し、それ以外の試験は「比較例」と表示した。また、表1の脱錫速度定数は、下記の(4)式で定義される。
k=−ln([Sn]/[Sn]0)×V/(A×t) ・・・(4)
但し、(4)式において、kは脱錫速度定数(cm/sec)、Vは溶銑の体積(cm3)、Aは溶銑の自由表面積(cm2)、tは処理時間(sec)、[Sn]は処理時間tにおける溶銑中錫濃度(質量%)、[Sn]0は溶銑中初期錫濃度である。
表1に示すように、試験No.7(比較例)は溶銑の硫黄濃度を0.030質量%として脱錫処理を行ったが、処理前の溶銑中硫黄濃度が0.030質量%程度では、脱錫速度定数は従来の脱錫方法と比較して優位ではなかった。これに対して、溶銑に硫化鉄を添加して溶銑の硫黄濃度を0.205質量%まで高めた試験No.1(本発明例)では、溶銑中の硫黄濃度が高いことから、脱錫速度定数が高くなることが確認できた。
試験No.2〜6は、溶銑中硫黄濃度を0.080質量%の近傍に調整して溶銑の珪素濃度を変化させた試験であり、試験No.5、6は溶銑の硫黄濃度が本発明の範囲よりも若干低く、しかも、溶銑の珪素濃度が低いことも相まって、脱錫速度定数は低位であった。これに対して、溶銑の硫黄濃度は本発明の下限値近傍であるものの、溶銑の珪素濃度が0.45質量%以上である試験No.2〜4では、例えば特許文献5で開示されている脱錫速度定数0.00532cm/secよりも高い脱錫速度定数が得られており、本発明を適用することにより、溶銑中の錫を迅速に除去できることが確認できた。図2に、試験No.2〜6における脱錫処理前の溶銑中珪素濃度と脱錫速度定数との関係を示す。
試験No.8(比較例)は、酸素ガスの替わりにArガスを使用したが、酸素ガスを吹き付けた場合よりも脱錫速度定数は小さく、脱錫効果は低位であった。また、試験No.9(比較例)では、大気圧下のArガス雰囲気中で酸素ガスを吹き付けたが、雰囲気圧力が高いことから、溶銑中の錫濃度はほとんど低下しなかった。
老廃鉄スクラップをシャフト炉で加炭・溶解して溶製した、温度が約1450℃である約150トンの溶銑保持容器内の溶銑に対して、約400kgの硫化鉄を添加して溶銑の硫黄濃度を0.080質量%以上に調整し、その後、図3に示すVOD式真空精錬装置に搬送して本発明に係る脱錫処理試験を2チャージ実施した(試験No.10、11)。尚、図3において、符号8は酸素ガス上吹きランス、9はVOD上部カバー、10はVOD容器、11は溶銑保持容器据付台座、12は底吹き攪拌ガス導入孔、13は溶銑保持容器、14は溶銑保持容器のトラニオン、15は溶銑である。
このVOD式真空精錬装置において、試験No.10では、炉内圧力が500Paに到達した以降、酸素ガス上吹きランス8から酸素ガスを190Nm3/hで吹き付けた。酸素ガス上吹きランス8は先端に直径15mmのノズルを4つ配置したものであり、酸素ガス上吹きランス8の先端位置を溶銑保持容器内の溶銑湯面位置から3.0m上方の位置とした。また、脱錫処理中、底吹き攪拌ガス導入孔12を介してArガスを90Nm3/hで供給して溶銑15を攪拌した。脱錫処理中の炉内圧力は約500Paに保持した。
試験No.11では、温度が約1450℃である約150トンの溶銑保持容器内の溶銑に対して、約400kgの硫化鉄を添加して溶銑の硫黄濃度を0.080質量%以上に調整するとともに、約750kgのフェロシリコンを添加して溶銑の珪素濃度を0.45質量%以上に調整し、その後、VOD式真空精錬装置において試験No.10と同様の脱錫処理を行った。
表2に、試験No.10、11での脱錫処理時の処理条件及び試験結果を示す。尚、表2の脱錫速度定数は、上記の(4)式で定義されるものである。
Figure 0006011252
表2に示すように、試験No.10及び試験No.11ともに、高い脱錫速度定数が得られ、老廃鉄スクラップを高級用途の鉄鋼製品用の鉄源として利用できることが確認できた。
1 坩堝
2 火点
3 火点で生成するCO気泡
4 硫化錫の気泡
5 SiO2
6 SiO2の還元によって生成するCO気泡
7 溶銑
8 酸素ガス上吹きランス
9 VOD上部カバー
10 VOD容器
11 溶銑保持容器据付台座
12 底吹き攪拌ガス導入孔
13 溶銑保持容器
14 トラニオン
15 溶銑

Claims (3)

  1. 大気圧よりも減圧下の雰囲気中で、硫黄を0.080質量%以上含有すると共に珪素含有量が0.45質量%以上である溶銑に酸素ガスまたは酸素ガスを含有するガスを供給して溶銑に含有される錫を除去することを特徴とする、溶銑の脱錫方法。
  2. 前記雰囲気の圧力が2000Pa以下であることを特徴とする、請求項に記載の溶銑の脱錫方法。
  3. 前記溶銑の硫黄含有量が0.3質量%以下であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の溶銑の脱錫方法。
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