JP5589864B2 - 溶銑の脱錫方法 - Google Patents

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Description

本発明は、溶銑から錫を除去する方法に関し、詳しくは、鉄源として鉄スクラップを使用して鋼製品を製造する際に、鉄スクラップによって鋼製品に持ち込まれる錫を除去するべく、鉄スクラップを加炭溶解して溶製した溶銑、或いは、鉄スクラップを溶解させた溶銑から錫を除去する方法に関する。
現在、資源リサイクル問題は二酸化炭素排出量の削減が望まれる中で益々重要な課題となっている。鉄スクラップは、従来から鉄源として再利用されているが、特に老廃屑は銅、錫などの不純物元素を多く含んでいる。鉄スクラップに起因する銅、錫などの不純物元素が溶鋼に持ち込まれると、表面割れなどにより鋼製品の歩留が低下する。錫の場合には、銅と共存することで鋼製品の表面割れを助長するといわれている。そのため、鉄スクラップの溶解、精錬によって製造された溶鋼は、そのままでは自動車外装用薄鋼板のような高級用途の鉄鋼製品の製造用原料としては利用することができない。
鉄スクラップから銅や錫を物理的に除去する方法には、特許文献1に開示されるように、鉄スクラップから非鉄金属を分別回収する方法や、特許文献2に開示されるように、錫メッキの表面層を鋼板から機械的に剥離する方法がある。また、物理化学的な除去方法としては、特許文献3に開示されるように、金属カルシウムまたはカルシウム合金を添加し、カルシウムと反応させて錫、燐などを除去する方法や、銅及び錫と鉄との蒸気圧の差を利用して銅及び錫を蒸発分離する方法などがある。
これらのなかでも、蒸発分離は、設備及び処理の簡便さにおいて有利なことから、最も有望視されている。但し、銅及び/または錫を含む溶融鉄を真空雰囲気に曝した場合、銅や錫は金属の状態のまま蒸発するが、溶融鉄中の銅や錫は蒸気圧が小さく、分離速度は遅い。そこで、蒸発分離を促進させるべく、特許文献4には、弱酸化剤を溶融鉄に吹き付けて脱炭反応によりCO気泡を発生させて蒸発界面積を大きくする技術が開示され、また、特許文献5には、溶融鉄中の酸素濃度を高めて比較的蒸気圧の高い酸化錫(SnO)として蒸発させる技術が開示されている。
更に、これらの方法以外に、特許文献6には、真空または減圧溶解し、もしくは真空または減圧で脱ガスした溶鋼内にアンモニアガス単独またはアンモニアガスと窒素ガスとの混合物を吹き込んで、溶鋼中の銅を除去する方法が開示されている。特許文献6によれば、銅以外の不純物元素、例えば、炭素、錫、燐、硫黄なども除去できるとしている。
特開平10−16841号公報 特開平9−141239号公報 特開昭56−127723号公報 特開昭61−149414号公報 特開平7−216435号公報 特開平7−150224号公報
しかしながら、上記従来技術には以下の問題点がある。
即ち、特許文献1や特許文献2のように物理的に除去する方法では作業負荷が高く、安価な低級鉄スクラップがこれらの工程を経ることで高額になり、鉄スクラップの利用が妨げられるという問題がある。また、鉄スクラップのなかには、銅や錫を合金成分として含有するものがあり、この形態で混合した銅や錫は物理的には除去することができない。また更に、錫除去処理の効率が悪く、鉄鋼の大量生産には適していない。
物理化学的な除去方法では、合金成分として含有する銅や錫の除去が可能であるが、「2Ca+Sn→Ca2Sn」のカルシウムとの反応を利用した特許文献3に提案される方法では、カルシウムは活性であり、酸化させずにカルシウムを保管するには湿度の管理などが必要であり、また、副産物として発生するスラグの処理など、取り扱いに難点があり、且つ、反応効率が低く、コスト高となる。また、溶融鉄中の炭素濃度が高いと、「Ca+2C→CaC2」の反応が優先的に進行し、反応効率が著しく低下することから、脱炭処理以降の炭素濃度が低い溶鋼段階での処理に限定されてしまう。これは溶融鉄中の炭素濃度が高いほど活量が増大して除去しやすくなるという特性を有する錫の除去には不利となる。
特許文献4及び特許文献5に提案される蒸発除去の場合、錫を酸化物や硫化物といった錫化合物とすることで、錫単体の場合と比較すれば効率良く溶銑中や溶鋼中から優先的に蒸発させることができるが、何れの場合も蒸発速度が不足しており、鉄鋼の大量生産には適用できない。
特許文献6に開示されるアンモニアガスの吹き込みによる溶鋼中からの錫の除去方法では、十分な錫の蒸発速度が得られず、実用プロセス規模での錫の除去を想定すると、蒸発速度が不足し、鉄鋼の大量生産には適用できない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、鉄源として鉄スクラップを使用して鋼製品を製造するにあたり、鉄スクラップを加炭溶解して溶製した溶銑、或いは、鉄スクラップを溶解させた溶銑から錫を効率良く除去することができ、安価鉄スクラップを高級用途の鉄鋼製品用の鉄源として鉄鋼の大量生産工程にも適用することのできる、溶銑の脱錫方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
(1) 大気圧よりも減圧下の雰囲気中で、硫黄を0.04質量%以上含有する溶銑にアンモニアガスを供給して溶銑に含有される錫を除去することを特徴とする、溶銑の脱錫方法。
(2) 前記雰囲気の圧力が2000Pa以下であることを特徴とする、上記(1)に記載の溶銑の脱錫方法。
(3) 前記溶銑の硫黄含有量が0.3質量%以下であることを特徴とする、上記(1)または上記(2)に記載の溶銑の脱錫方法。
(4) 前記溶銑の炭素含有量が2質量%以上であることを特徴とする、上記(1)ないし上記(3)の何れか1項に記載の溶銑の脱錫方法。
(5) 更に、前記溶銑の表面に酸素ガスを吹き付けることを特徴とする、上記(1)ないし上記(4)の何れか1項に記載の溶銑の脱錫方法。
(6) 前記酸素ガスの溶銑表面への衝突面の面積が溶銑表面積の10%以上であることを特徴とする、上記(5)に記載の溶銑の脱錫方法。
本発明によれば、炭素含有量が多く、錫が除去されやすい溶銑段階において減圧下の溶銑にアンモニアガスを供給するので、供給されたアンモニアガスは熱分解して活性な原子状の水素、窒素となって溶銑中に溶解し、溶解した水素、窒素がガス化して溶銑中から離脱する際、溶銑と気相との界面において微細な気泡を発生させ、錫或いは錫化合物の蒸発反応界面積を増大させる。これにより、溶銑に含有される錫の蒸発除去が促進される。また、溶銑は硫黄を0.04質量%以上含有しているので、溶銑中の錫は硫黄と反応してガス化しやすい硫化錫(SnS)となり、アンモニアガス供給による錫及び錫化合物の蒸発反応界面積の増大効果も相まって、溶銑からの錫の除去がより一層促進される。かくして、溶銑中の錫を短時間で低減することが実現される。
減圧下の雰囲気において過飽和水素、過飽和窒素が溶銑から離脱して微細な気泡が生成する様子を模式的に示す図である。 本発明を実施可能なVOD式真空精錬装置の概略図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明では、老廃屑や廃自動車のシュレッダー屑などの安価な鉄スクラップを、高級用途の鉄鋼製品用の鉄源として利用するにあたり、鉄スクラップをアーク炉などで溶解して溶鋼を直接溶製する従来の方法を採用せず、先ず、鉄スクラップを加炭溶解し、更に加硫(硫黄添加)し、硫黄を0.04質量%以上含有する溶銑を溶製する。ここで、本発明における溶銑とは、炭素含有量が1.5質量%以上の溶融鉄である。次いで、この硫黄を0.04質量%以上含有する溶銑に、大気圧よりも減圧下の雰囲気でアンモニアガスを供給して溶銑に含有される錫を除去する(「脱錫処理」と呼ぶ)。錫が除去された溶銑は、その後は通常工程に沿って溶鋼へと溶製される。具体的には、脱錫処理後、溶銑脱硫処理、必要に応じて溶銑脱燐処理(但し、鉄スクラップは燐含有量が少なく、溶銑脱燐処理は必須ではない)を経て、転炉で脱炭精錬され、更に必要に応じてRH真空脱ガス装置などの二次精錬が施され、所定の成分の溶鋼へと溶製される。これらの工程の途中で、高炉で製造された溶銑(「高炉溶銑」と呼ぶ)と混合し、鉄スクラップから製造された溶銑の化学成分を高炉溶銑で希釈してもよい。
鉄スクラップを加炭溶解して溶銑を製造する設備としては、キュポラのような低シャフト炉、アーク炉、誘導溶解炉などを用いることができる。低シャフト炉では操業形態上から溶銑が製造されるが、アーク炉や誘導溶解炉ではコークスなどの炭材を加え、鉄スクラップの溶解によって製造される溶融鉄を加炭して溶銑とする。アーク炉や誘導溶解炉では、溶解能率を高めるために、高炉溶銑を種湯として装入し、この高炉溶銑に鉄スクラップを溶解してもよい。尚、誘導溶解炉のうち真空誘導溶解炉(VIM)では、鉄スクラップの加炭溶解後に、次工程の脱錫処理を続けて行うことができる。
このとき、溶製した溶銑の硫黄含有量が0.04質量%以上になるように、硫化鉄(FeS)を添加する、或いは、加炭剤として硫黄含有量の高い炭材を使用し、溶銑を加硫する。溶製される溶銑の硫黄濃度を0.04質量%以上に調整する理由は、以下のとおりである。即ち、次工程にて減圧下でのアンモニアガスの供給により脱錫処理を行うが、その際に、溶銑の硫黄濃度を0.04質量%以上に調整しておくと、溶銑中の錫と溶銑中の硫黄とが反応して硫化錫(SnS)が生成し、この硫化錫は気液界面ではガス状態となることから錫の蒸発除去が促進される。溶銑中の硫黄濃度が0.04質量%未満の場合には、硫化錫の生成量が少なくなり、錫の蒸発速度が低下し、工業的実用性が乏しくなる。
一方、溶銑中の硫黄濃度が0.3質量%を超えると、この溶銑を減圧下に曝すと、溶銑からの硫黄ガスの単独蒸発が盛んになり、硫黄濃度上昇による硫化錫の蒸発量増加の効果に対してスプラッシュによる鉄ロスが極端に大きくなってしまう。また、硫黄そのものは鉄鋼材料において有害元素であるので、その後の脱硫処理工程における負荷を考慮すると、必要以上に硫黄分を添加して硫黄を高濃度にすることは好ましくない。この観点から、溶銑の硫黄濃度は0.3質量%以下であることが好ましい。
溶融鉄中の炭素濃度が高くなるほど、溶融鉄中の錫の活量は大きくなる。このため、溶融鉄に同一濃度の錫が含まれている場合であっても、溶融鉄中の炭素濃度が高い方が錫の蒸発除去を効率良く行うことができる。従って、本発明では、鉄スクラップを加炭溶解して溶銑とするが、溶融鉄中の錫の活量を増大させる観点から、溶製する溶銑の炭素含有量を2質量%以上確保することが好ましい。
本発明では、次いで、この溶銑に、大気圧よりも低い減圧下でアンモニアガス単独またはアンモニアガスを含有するガスを供給して脱錫処理を実施する。溶銑にアンモニアガスを供給すると、アンモニアガスが熱分解して活性な原子状の水素及び窒素が発生する。この活性化した原子状水素及び原子状窒素は活性度が大きいために、単純な水素ガス吹き込みや窒素ガス吹き込みによる溶銑中への水素の飽和溶解度及び窒素の飽和溶解量を上回って溶解し、過飽和状態となる。この過飽和水素及び過飽和窒素は、減圧下の雰囲気において水素分子及び窒素分子として溶銑中から離脱する際に、溶銑と気相との界面において微細な気泡を発生させ、金属錫や錫化合物(硫化錫)の蒸発反応界面積を飛躍的に増大させ、溶銑からの錫の蒸発除去が進行する。
溶銑は0.04質量%以上の硫黄を含有しているので、過飽和水素及び過飽和窒素が微細なガスとして溶銑から離脱する際に、この微細気泡と溶銑との気液界面及び溶銑と雰囲気との気液界面において、下記の(1)式に示す反応で硫化錫が生成し、錫の溶銑からの蒸発除去が進行する。
Sn+S→SnS…(1)
図1に、減圧下の雰囲気において過飽和水素、過飽和窒素が溶銑から離脱して微細な気泡が生成する様子を模式的に示す。尚、図1において、符号1は溶銑保持用の坩堝、2は溶銑、3は気泡、4は飛散溶銑粒、5は気液界面である。このような微細な気泡が発生すると、気液界面が増大して溶銑から錫の蒸発除去が進行する蒸発反応界面積が飛躍的に増大する。
この脱錫処理では、錫の蒸発除去速度を高くするために、雰囲気の圧力を2000Pa以下とすることが好ましい。雰囲気圧が2000Paを超える場合でも錫は除去されるが、工業的な規模で実用化するためには、雰囲気の圧力を2000Pa以下とすることが好ましい。
アンモニアガスまたはアンモニアガスを含有するガスを溶銑に供給する方法としては、上吹きランスから溶銑表面に吹き付ける方法、及び、インジェクションランスや溶銑浴面下に開口する羽口を介して溶銑中に吹き込む方法があり、どちらの方法を用いても構わない。但し、供給したアンモニアガスの分解効率は溶銑表面に吹き付けるよりも、直接溶銑中に吹き込んだ方が高く、これは、蒸発界面積の増大の差及び錫の蒸発除去速度の差となることから、脱錫効率はアンモニアガスを溶銑中に吹き込んだ方が高くなる。
また、アンモニアガスまたはアンモニアガスを含有するガスの溶銑への供給に併せて、酸素ガスを溶銑浴面に吹き付けて溶銑の脱炭反応を起こすことが好ましい。酸素ガスを供給することにより、酸素ガスの溶銑表面への衝突面(「火点」という)では1700℃を超える高温になり、錫及び錫化合物の蒸発速度が増大する。また、脱炭反応によって発生する一酸化炭素(COガス)が微細な気泡を形成し、錫及び錫化合物の蒸発反応界面積を増大させ、より効率良く錫を蒸発除去することが可能となる。この場合に、火点の面積をできるだけ大きくすることが好ましい。特に火点の面積を溶銑表面積の10%以上とすることで、超高温であるという火点の効果を発現させることができる。
この脱錫処理を実施するための設備としては、真空誘導溶解炉、VOD式真空精錬装置、RH真空脱ガス装置、真空タップ脱ガス装置、レードル脱ガス装置、RH−OB式真空精錬装置、真空鋳造装置及びVAD真空脱ガス装置などが使用できる。これらのなかでも、気液界面を大きくすることができることから、VOD式真空精錬装置及びVAD真空脱ガス装置を使用するのが好ましい。アンモニアガスの供給方法としては、VOD式真空精錬装置では、上吹きランスから溶銑表面に吹き付ける方法や攪拌用ガスとして吹き込む方法が採用でき、RH真空脱ガス装置では、上吹きランスから溶銑表面に吹き付ける方法や還流ガスとして吹き込む方法を用いることができる。
尚、低シャフト炉などを用いて老廃鉄スクラップを溶解して得られる溶鉄は、一般的に高炉溶銑よりも硫黄濃度、錫濃度が高い。よって、この老廃鉄スクラップから溶製された溶銑を後工程で高炉溶銑と混合する場合には、本発明による脱錫処理を行う前に高炉溶銑と混合すると、硫黄濃度及び錫濃度の低下を招き、効率的な脱錫処理を行えなくなるので、脱錫処理を実施した後に高炉溶銑と混合することが好ましい。また、一般的に低シャフト炉などの鉄スクラップの溶解炉の溶解能力は高炉の溶製能力よりも小さく、一回の脱錫処理で精錬する溶銑量は、一般的な高炉溶銑の処理プロセスと比較して少なくなる。従って、高炉溶銑の処理プロセスと比較して単位溶銑体積あたりの蒸発反応界面積を大きくすることができるため、効率良く脱錫できるという利点もある。
以上説明したように、本発明によれば、炭素含有量が多く、錫が除去されやすい溶銑段階において減圧した雰囲気下で溶銑にアンモニアガスを供給するので、供給されたアンモニアガスは熱分解して活性な原子状の水素、窒素となって溶銑中に溶解し、溶解した水素、窒素がガス化して溶銑中から離脱する際、溶銑と気相との界面において微細な気泡を発生させ、錫或いは錫化合物の蒸発反応界面積を増大させる。これにより、溶銑に含有される錫の蒸発除去が促進される。また、溶銑は硫黄を0.04質量%以上含有しているので、溶銑中の錫は硫黄と反応してガス状の硫化錫となり、アンモニアガス供給による錫、錫化合物の蒸発反応界面積の増大効果も相まって、溶銑からの錫の除去がより一層促進され、溶銑中の錫を短時間で低減することが実現される。また、脱錫処理時に、溶銑の脱硫反応が起こり(硫化錫として溶銑中の硫黄が除去される)、後工程の脱硫負荷を低減することができる。
1チャージの鉄溶解量が10kg容量の真空誘導溶解炉(炉内圧力約2000Pa)を用い、加炭剤としてコークスを使用し、鉄スクラップを溶解して表1の試験No.1〜8に示す化学成分の溶銑を溶製し、この溶銑に上吹きランスからアンモニアガスを吹き付け、溶銑を脱錫処理する試験を行った。試験No.1では、雰囲気圧力を大気圧として試験し、また、試験No.4ではアンモニアガスの替わりに窒素ガスを吹き付けて試験し、試験No.6〜8では、アンモニアガスと同時に酸素ガスを吹き付けて試験した。また、試験No.5は、溶融鉄中の炭素濃度が、本発明で定義する溶銑(=炭素濃度が1.5質量%以上)の範囲に達していない試験である。試験No.5を含めて溶銑の温度は全ての試験で約1450℃に保持した。
Figure 0005589864
表1に、脱錫処理時の処理条件及び試験結果を示す。尚、表1の備考欄には、本発明の範囲内の試験には「本発明例」と表示し、それ以外の試験は「比較例」と表示した。また、表1の脱錫速度定数は、下記の(2)式で定義される。
K=-(V/A)/t×ln([Sn]/[Sn]0)…(2)
但し、(2)式において、kは脱錫速度定数(cm/sec)、Vは溶融鉄の体積(cm3)、Aは溶融鉄の自由表面積(cm2)、tは処理時間(sec)、[Sn]は処理時間tにおける溶融鉄中錫濃度(質量%)、[Sn]0は溶融鉄中初期錫濃度である。但し、自由表面積は、気泡と溶融鉄との界面積を含まないものとする。
表1に示すように、試験No.1(比較例)では、大気圧下のArガス雰囲気中でアンモニアガスを吹き付けたが、溶融鉄中の錫濃度はほとんど低下しなかった。試験No.2(比較例)は溶銑の硫黄濃度を調整せず、溶解したままの状態の溶銑の硫黄濃度が0.030質量%で脱錫処理を行った。これに対して、試験No.3(本発明例)は、溶銑に硫化鉄を添加して溶銑の硫黄濃度を0.150質量%まで高めて試験した。試験No.2と試験No.3との比較から明らかなように、溶銑中の硫黄濃度が高いほど脱錫速度定数が高くなることが確認できた。試験No.2が示すように処理前の溶銑中硫黄濃度が0.030質量%では脱錫速度定数は従来の脱錫方法と比較して優位ではない。
試験No.4(比較例)は、アンモニアガスの替わりに窒素ガスを使用したが、アンモニアガスを吹き付けた場合よりも脱錫速度定数は小さく、脱錫効果はほとんど得られなかった。試験No.5(比較例)は、脱錫処理前の溶融鉄中の炭素濃度が1.15質量%と低く、脱錫速度定数は低かった。
試験No.6〜8(本発明例)は、アンモニアガスを吹き付ける上吹きランスとは別の上吹きランスから酸素ガスを吹き付けた試験であり、試験No.6では酸素ガス上吹きランスの先端位置を湯面から30mmの高さに固定し、試験No.7、8では湯面から100mmの高さに固定した。それぞれのランスは、湯面上のガス吹き付け部が重ならないように配置した。溶銑湯面での酸素ガスが吹き付けられる面積(火点面積)は、試験No.6では静止したときの全表面積の約1%であり、試験No.7、8では約10%であった。
試験No.6〜8では、脱錫速度定数は、溶銑中の硫黄濃度が同等の場合にはアンモニアガスのみを吹き付けるよりも大きく、且つ、溶銑中の初期硫黄濃度の増大に応じて脱錫速度定数が増大した。試験No.8で得られた脱錫速度定数は、例えば特許文献5で開示されている脱錫速度定数0.00532cm/secの4倍の高効率であった。
このように、本発明を適用することにより、溶銑中の錫を迅速に除去できることが確認できた。
低シャフト炉を用いて老廃鉄スクラップを加炭・溶解して溶製した、温度が約1450℃である約150トンの溶銑保持容器内の溶銑に対して、約400kgの硫化鉄を添加して溶銑の硫黄濃度を0.04質量%以上に調整し、その後、図2に示すVOD式真空精錬装置に搬送して本発明に係る脱錫処理試験を2チャージ実施した(試験No.9、10)。尚、図2において、符号6は溶銑、7はVOD容器、8はVOD上部カバー、9はアンモニアガス上吹きランス、10は酸素ガス上吹きランス、11は溶銑保持容器据付台座、12は底吹き攪拌ガス導入孔、13は溶銑保持容器、14は溶銑保持容器のトラニオンである。
試験No.9では、VOD式真空精錬装置において、炉内圧力が150Paに到達した以降、アンモニアガス上吹きランス9からアンモニアガスを450Nm3/hで吹き付けた。アンモニアガス上吹きランス9は先端に直径15mmのノズルを4つ配置したものであり、アンモニアガス上吹きランス9の先端位置を溶銑保持容器13に収容された溶銑6の湯面位置から1.5m上方の位置とした。また、脱錫処理中、底吹き攪拌ガス導入孔12を介してArガスを90Nm3/hで供給して溶銑6を攪拌した。脱錫処理中の炉内圧力は約150Paに保持した。
試験No.10では、試験No.9と同様にアンモニアガス上吹きランス9からアンモニアガスを450Nm3/hで吹き付けると同時に、酸素ガス上吹きランス10から酸素ガスを450Nm3/hで溶銑6に吹き付けた。酸素ガス上吹きランス10の形状はアンモニアガス上吹きランス9と同一であり、酸素ガス上吹きランス10の先端位置を溶銑保持容器内の溶銑湯面位置から3.0m上方の位置とした。それぞれのランスは、溶銑湯面上のガス吹き付け部が重ならないように配置した。溶銑湯面で酸素ガスが吹き付けられる面積(火点面積)は静止した溶銑の全表面積の約11%であった。
表2に、試験No.9、10での脱錫処理時の処理条件及び試験結果を示す。尚、表2の脱錫速度定数は、上記の(2)式で定義されるものである。
Figure 0005589864
表2に示すように、試験No.9及び試験No.10ともに、高い脱錫速度定数が得られ、老廃鉄スクラップを高級用途の鉄鋼製品用の鉄源として利用できることが確認できた。
1 坩堝
2 溶銑
3 気泡
4 飛散溶銑粒
5 気液界面
6 溶銑
7 VOD容器
8 VOD上部カバー
9 アンモニアガス上吹きランス
10 酸素ガス上吹きランス
11 溶銑保持容器据付台座
12 底吹き攪拌ガス導入孔
13 溶銑保持容器
14 トラニオン

Claims (6)

  1. 大気圧よりも減圧下の雰囲気中で、硫黄を0.04質量%以上含有する溶銑に、溶銑表面に吹き付けるまたは溶銑中に吹き込んで、アンモニアガスを供給するとともに、前記溶銑の表面に酸素ガスを吹き付けて、溶銑に含有される錫を除去することを特徴とする、溶銑の脱錫方法。
  2. 前記雰囲気の圧力が2000Pa以下であることを特徴とする、請求項1に記載の溶銑の脱錫方法。
  3. 前記溶銑の硫黄含有量が0.3質量%以下であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の溶銑の脱錫方法。
  4. 前記溶銑の炭素含有量が2質量%以上であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の溶銑の脱錫方法。
  5. 前記酸素ガスの溶銑表面への吹き付け位置が、前記アンモニアガスの溶銑への供給位置と重ならないようにすること特徴とする、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の溶銑の脱錫方法。
  6. 前記酸素ガスの溶銑表面への衝突面の面積が溶銑表面積の10%以上であることを特徴とする、請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の溶銑の脱錫方法。
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