JP3922189B2 - 溶鋼の取鍋精錬方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、清浄性に優れた鋼材を安価に製造するための溶鋼の取鍋精錬方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、鋼材の高品質化のニーズが高まるにつれて、溶鋼の高清浄度化,高純度化が要求されている。特に造船用厚板材等に使用される高張力鋼に対する極低硫化要求が顕著である。極低硫鋼の溶製は転炉等の脱炭炉で脱炭処理を施して出鋼した溶鋼に対して行なわれる溶鋼脱硫が主である。溶鋼脱硫では溶鋼を電気により再加熱して行なわれるLF処理が主である。
【0003】
溶鋼の脱硫処理は、特開平6-299229号公報に開示されているように、脱ガス処理中に上吹きランスから脱硫剤を溶鋼浴面に吹き付ける方法や、特開昭62-196317 号公報に開示されているように、減圧雰囲気で脱硫剤を溶鋼中に吹き込む方法がある。これらの方法は、脱硫剤の添加による脱硫反応とAl添加による脱酸反応とを組み合わせて行なわれる処理であり、高温かつ低酸素分圧の雰囲気で下記の (1)式または (2)式の2種類の反応が進行する。
【0004】
CaO+S→CaS+O ・・・ (1)
3CaO+3S+2Al→3CaS+Al2 3 ・・・ (2)
すなわち (1)式は、溶鋼中のSと脱硫剤中のCaOとの反応であり、生成したOを除去するために脱酸剤を添加して、 (3)式に示すように脱酸反応を併せて進行させる必要がある。その結果、Al2 3 等の脱酸生成物が生成して溶鋼中に懸濁する。
【0005】
特に極低硫鋼溶製のためには溶鋼脱酸を強化する必要がある。通常、溶鋼脱酸はAl,Si等で行なわれ、 その結果、 Al23 ,SiO2 等の脱酸生成物(いわゆる1次脱酸生成物)が生成して、その一部が溶鋼中に非金属介在物として懸濁する。たとえば脱炭処理を施した溶鋼にAlを添加して脱酸処理を行なう場合、溶鋼中のOと溶鋼に添加されたAlとの反応は下記の (3)式で表わされる。
【0006】
2Al+3O→Al2 3 ・・・ (3)
従来の溶鋼の脱酸方法としては、特開昭59-150009 号公報に開示されているように、転炉出鋼時にAlやAlドロスを添加し、さらに取鍋で底吹きと同時にスラグ/メタル界面近傍に浸漬した専用ランスから不活性ガスもしくは不活性ガスとともに脱酸剤を吹き込む方法がある。ここでAl等の脱酸剤が過剰に添加された場合は、 (3)式の反応が終了した後、溶鋼中の余剰のAlが、スラグ中のFeO,MnO等に代表される、いわゆる低級酸化物によって酸化されて、脱酸生成物(いわゆる2次脱酸生成物)が溶鋼中に非金属介在物として懸濁する。
【0007】
そこで特開平5-271747号公報に開示されているように、脱ガス処理の初期に上吹きランスからMgOを真空槽内の溶鋼浴面に吹き付け、浸漬管環流によって取鍋内のスラグにMgOを供給してスラグを固化し、2次脱酸生成物の生成を防止する方法がある。あるいは特開昭60-152611 号公報に開示されているように、CaCO3 等のガス発生物質を還元剤(たとえばAl,Al灰)とともに添加して、スラグの局所的な還元反応を促進する方法がある。
【0008】
【特許文献1】
特開平6-299229号公報
【特許文献2】
特開昭62-196317 号公報
【特許文献3】
特開昭59-150009 号公報
【特許文献4】
特開平5-271747号公報
【特許文献5】
特開昭60-152611 号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
溶鋼の脱硫処理においては、特開平6-299229号公報に開示されているように脱硫剤を溶鋼浴面に吹き付ける方法や、特開昭62-196317 号公報に開示されているように溶鋼中に脱硫剤を吹き込む方法が知られているが、いずれの場合も真空脱ガス処理中に脱硫剤を添加するので、耐火物の溶損が顕著である。しかも脱硫剤の吹込み装置が必要となり、設備費が増加するのは避けられない。また、吹付けるための搬送ガスが必要であるため、槽内の真空度が低下する。また槽内でフラックスを使用するため、耐火物寿命が低下するという問題がある。
【0010】
上記の (1)〜(3) 式に示すように、脱酸剤(たとえばAl等)を使用した場合の脱酸反応と脱硫反応は、いずれの反応においても非金属介在物(たとえばAl2 3 等)が生成して溶鋼の清浄性を阻害する原因になる。
すなわち溶鋼の脱酸処理においては、たとえば特開昭59-150009 号公報に開示されているように、Al,Alドロス等の金属脱酸剤を用いる場合は、添加された脱酸剤が主に溶鋼に溶解したり、あるいは溶鋼中のOと反応するので、スラグの脱酸が不十分となる。その結果、非金属介在物(すなわち1次脱酸生成物や2次脱酸生成物)が多量に発生する。
【0011】
また、特開平5-271747号公報に開示されているように、スラグを固化する場合は、スラグの流入量や成分の変動が大きいので、スラグを安定して固化するのは困難である。
特開昭60-152611 号公報に開示されているように、CaCO3 を用いてスラグを局所的に還元する場合は、CaCO3 から発生するCOガスがAl等の脱酸剤と反応するので、脱酸剤の酸化ロスが増加する。しかも顕熱と分解熱とによって溶鋼の温度降下が増大する。
【0012】
そこで転炉で脱炭処理を施した後、取鍋に出鋼された溶鋼の脱硫処理を行なうにあたって、Al等の脱酸剤(すなわち還元剤)の添加量を削減して効率良く脱硫反応を促進する技術が望まれていた。
本発明は、上記のような問題を解消し、取鍋に出鋼された溶鋼の脱硫処理を行なうにあたって、脱酸剤の添加量を削減することによって、清浄性に優れた極低硫鋼を安価に製造する方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、脱炭処理の後、取鍋に出鋼された溶鋼に対して脱酸剤を添加した後、水素および/または炭化水素を供給(ただし、溶鉄に炭化水素をキャリアガスとして粉体を供給する方法を除く)して攪拌し、脱硫処理を施し、次いで溶鋼中の水素を除去する溶鋼の取鍋精錬方法である。
前記した発明においては、好適態様として、取鍋内に溶鋼とともに排出されたスラグに対し、脱酸剤を添加してスラグ中の低級酸化物を還元するスラグ改質を行なうことが好ましい。
【0014】
また、水素および/または炭化水素を供給するにあたって、溶鋼中で熱分解して水素および/または炭化水素を発生する固体物質を供給することが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
転炉等の脱炭炉を用いて脱炭処理を施した溶鋼は、脱炭処理が終了した後、取鍋に出鋼される。次いで、取鍋に出鋼された溶鋼中の不純物(たとえばO,S等)を除去して清浄性を高めるために、取鍋内で種々の精錬処理(いわゆる取鍋精錬)を行なう。
【0016】
取鍋精錬として脱硫処理を行なう場合について説明する。
脱硫処理を行なうにあたって、取鍋内の溶鋼に脱硫剤を添加する。本発明では脱硫剤の種類は、特定の成分に限定せず、従来から知られている脱硫剤が使用できる。ここでは脱硫剤としてCaOを使用する例について説明する。
CaOを使用して脱硫処理を行なう場合、脱硫反応は下記の (1)式で表わされる。
【0017】
CaO+S→CaS+O ・・・ (1)
この (1)式の脱硫反応で発生したOを除去するためには、脱酸反応を進行させる必要がある。この脱酸反応は、 (1)式の脱硫反応で発生したOを除去するとともに、溶鋼中の不純物である酸素を除去する脱酸処理の機能も果たす。このとき脱酸剤を使用すると非金属介在物が生成する。たとえば脱酸剤としてAlを添加すると、 (3)式の脱酸反応が進行して非金属介在物(すなわちAl2 3 ) が生成する。
【0018】
あるいは、あらかじめAl脱酸を施した溶鋼にCaOを添加して脱硫処理を行なう場合、脱硫反応は下記の (2)式で表わされる。
3CaO+3S+2Al→3CaS+Al2 3 ・・・ (2)
上記の (1)式, (2)式に示すように、脱硫処理を行なう際に脱硫剤(たとえばCaO等) と脱酸剤(たとえばAl等) とを併用すると非金属介在物(たとえばAl2 3 等) が生成する。つまり脱硫処理においてCaO等の脱硫剤を溶鋼に添加すると、非金属介在物が生成するのは避けられない。したがって溶鋼の清浄性を高めるためには、脱硫剤の添加量を削減する必要がある。
【0019】
そこで溶鋼に水素および/または炭化水素を供給し、溶鋼を攪拌する。水素や炭化水素を添加し、さらに酸素活量を低下させて還元性雰囲気で脱硫処理を行なうと、下記の (4)式の脱硫反応が進行する。
[S]+O+M→(S)+MO ・・・ (4)
[S]:溶鋼中のS
(S):スラグ中のS
M :脱酸元素(H2 ,C)
この脱硫反応から生成する脱酸生成物(すなわちH2 O,CO)は、いずれも気体であり溶鋼中に残留しない。したがって脱硫剤による脱硫処理と水素や炭化水素による脱硫処理とを併用することによって、脱硫剤や脱酸剤の添加量を削減し、非金属介在物の生成を抑制して、溶鋼の清浄度を高めることができる。また、あらかじめ脱酸処理を施した溶鋼の脱硫処理を行なう場合にも、脱硫剤による脱硫処理と水素や炭化水素による (4)式の脱硫処理とを併用することによって、非金属介在物の生成を抑制して、溶鋼の清浄性を高めることができる。
【0020】
次に脱硫反応促進のための脱酸について説明する。
脱酸剤の種類は、特定の成分に限定せず、従来から知られている脱酸剤が使用できる。ここでは脱酸剤としてAlを使用する例について説明する。
Alを使用して脱酸処理(いわゆるAl脱酸)を行なう場合、溶鋼中のAl含有量0.05質量%,酸素活量2ppm 程度に脱酸し、その脱酸反応は、下記の (3)式で表わされる。
【0021】
2Al+3O→Al2 3 ・・・ (3)
Al等の脱酸剤を使用して脱酸処理を行なうと、 (3)式から明らかなように、Al2 3 等の非金属介在物が生成するのは避けられない。したがって溶鋼の清浄性を高めるためには、脱酸剤の添加量を削減する必要がある。
そこで本発明においては溶鋼に水素および/または炭化水素を供給し、溶鋼を攪拌する。水素や炭化水素は、後述するように脱酸反応に寄与するので、水素や炭化水素を供給することによって酸素分圧が低下し、脱硫が有利になる。その結果、脱酸剤の添加量を削減でき、溶鋼の清浄性を高めることができる。
【0022】
溶鋼に水素を添加して脱酸処理(いわゆる水素脱酸)を行なう場合、脱酸反応は下記の (5)式で表わされ、H2 とH2 Oの分圧比PH2/PH2O によって反応速度が律速される。なお (5)式の反応は溶鋼中で進行するので、H2 Oは気化されて気体として存在する。
2 +O→H2 O ・・・ (5)
この水素脱酸において、Al脱酸と同程度の脱酸能力を実現するためには、分圧比PH2/PH2O = 100〜1000を満足する必要がある。このように雰囲気のH2 の分圧PH2を高めると、水素脱酸が促進されるものの、溶鋼に水素が溶解して鋼材の品質を劣化させる原因になる。したがって、本発明においては転炉等において脱炭処理された溶鋼を取鍋に出鋼する際に、あるいは取鍋に出鋼した後に溶鋼中に脱酸剤を添加することによって、あらかじめ溶鋼を脱酸しておくことによって、雰囲気のH2 の分圧PH2を過度に高めることなく溶鋼を水素で脱酸することができる。そして溶鋼に水素を供給して攪拌した後、 真空処理等によって余剰の水素を除去する。
【0023】
一方、 炭化水素は、 100〜300 ℃程度で分解して、炭素と水素を発生する。その分解反応は下記の (6)式で表わされる。
n m →nC+(m/2)H2 ・・・ (6)
溶鋼に添加された炭化水素が分解して発生したH2 は、溶鋼中のOと反応して水素脱酸が進行する。しかし (6)式の分解反応によってH2 が発生すると、H2 の分圧PH2が上昇するので、溶鋼に水素が溶解して鋼材の品質を劣化させる原因になる。したがって溶鋼に炭化水素を供給して攪拌した後にも、 真空処理によって余剰の水素を除去する。
【0024】
さらに炭化水素の分解によって発生したCも、溶鋼中のOと反応して下記の (7)式の脱酸反応が進行する。
C+O→CO ・・・ (7)
このようにして溶鋼に水素や炭化水素を添加すると、 (5)式と (7)式の脱酸反応が進行する。これらの脱酸反応から生成する脱酸生成物(すなわちH2 O,CO)は、いずれも気体であり溶鋼中に残留しない。したがって脱酸剤による脱酸処理と水素や炭化水素による脱酸処理とを併用することによって、脱酸剤の添加量を削減し、非金属介在物(たとえばAl脱酸の場合はAl2 3 )の生成を抑制して、溶鋼の清浄性を高めることができる。
【0025】
このようにして脱酸剤と水素および/または炭化水素とを併用して取鍋精錬を行なうと、非金属介在物を抑制して、溶鋼の清浄度を高めつつ、極低硫化が可能である。ここで取鍋精錬とは、下記の (a)または(b) の脱硫処理を指す。
(a) 脱炭処理を施した溶鋼を脱酸剤と水素および/または炭化水素を用いて脱酸し、さらに脱硫処理(CaO等の脱硫剤と溶鋼を攪拌する処理)を施す。
(b) 脱炭処理を施した溶鋼を脱酸剤と水素および/または炭化水素を用いて脱酸し、さらにスラグ改質,脱硫処理(CaO等の脱硫剤と溶鋼を攪拌する処理)を施す。
【0026】
上記の (a),(b) の取鍋精錬では、水素または炭化水素を単独で使用しても良いし、 あるいは水素および炭化水素を併用しても良い。
取鍋精錬を行なうにあたって、取鍋内の溶鋼に水素および/または炭化水素を添加する方法は、特定の方法に限定しない。水素や炭化水素を含むガスを溶鋼内に吹き込んでも良いし、あるいは熱分解によって水素や炭化水素を発生する固体物質を溶鋼に投入しても良い。
【0027】
水素や炭化水素を含むガスの種類は、特定の種類に限定せず、プロパンガス等の水素や炭化水素を含むガスが使用できる。ただし、製鉄所内で大量に発生するコークス炉ガスには水素や炭化水素が含まれているので、コークス炉ガスを使用すると取鍋精錬のコストを削減する効果が得られる。またガスの吹込み方法は、特定の方法に限定せず、専用ランスや底吹きポーラスプラグ等の従来から知られている技術が使用できる。
【0028】
熱分解によって水素や炭化水素を発生する固体物質の種類は、特定の物質に限定しない。ただし、プラスチック等の有機物質の廃棄物を使用すると、環境汚染を防止するとともに、取鍋精錬のコストを削減する効果が得られる。
また、上記 (b)の取鍋精錬において行なうスラグ改質とは、スラグに脱酸剤を添加してスラグ中の低級酸化物を還元する処理である。ここにスラグ中の低級酸化物とは、溶鋼中のAlやSiあるいはTi等の易酸化性成分を酸化し、自身は還元される性質を有するような酸化物をいい、FeOやMnOが相当する。
【0029】
スラグ改質に使用する脱酸剤(スラグ改質剤あるいはスラグ還元剤と呼ばれることもある)は、金属AlあるいはAl灰(Alの溶解や精錬過程でAlが酸化して生成した Al23 に金属Alが巻き込まれた混合物であり、Al滓とも呼ばれる)が適当である。特に金属Alよりも価格の安価なAl灰の使用が好ましい。
【0030】
【実施例】
(実施例1)
図1に示す装置を用いて脱硫処理を行なった。すなわち転炉(図示せず)で脱炭処理を施した溶鋼1を取鍋3に出鋼した。次いで、溶鋼1内にランス5を浸漬してガス6を吹き込んだ。
【0031】
溶鋼1に脱酸剤として金属Alを、 脱硫剤としてCaO−50質量% Al23 を添加した後、 ガス6として水素ガス,プロパンガスおよびArガスの混合ガスをランス5から溶鋼1内に吹き込んだ。これを発明例1とする。
また、ガス6として水素ガス,プロパンガスおよびArガスの混合ガスをランス5から溶鋼1内に吹き込み、さらにプラスチック廃棄物を溶鋼1に投入した。これを発明例2とする。なおプラスチック廃棄物については、あらかじめ乾留実験を行ない、炭化水素ガスが発生することを確認した。
【0032】
さらに、ガス6として水素ガス,プロパンガスおよびArガスの混合ガスをランス5から溶鋼1内に吹き込み、さらにプラスチック廃棄物に金属Alを混合成形したものを溶鋼1に投入した。これを発明例3とする。
一方、 比較例1として、同一量の脱硫剤,脱酸剤を添加し、溶鋼を攪拌するためにArガスのみをランス5から溶鋼1内に吹き込んだ。
【0033】
これらの発明例1〜3および比較例1の脱硫処理の条件は、表1〜4に示す通りである。発明例1〜3および比較例1について、脱硫処理後の溶鋼温度(℃),溶鋼中のS濃度[%S](質量%)およびスラグ中のFeO濃度(%FeO)(質量%)を測定した。その結果を表5に示す。
【0034】
【表1】
Figure 0003922189
【0035】
【表2】
Figure 0003922189
【0036】
【表3】
Figure 0003922189
【0037】
【表4】
Figure 0003922189
【0038】
【表5】
Figure 0003922189
【0039】
表5から明らかなように、発明例1〜3は、比較例1に比べて処理後のS濃度[%S]が低下すると同時に、処理後のスラグ中のFeO濃度(%FeO)が低下した。特に発明例2,3では、発明例1に比べて溶鋼中のS濃度の低下およびスラグ中のFeO濃度の低下が顕著に現われた。水素,炭化水素,プラスチック廃棄物の溶鋼に供給することによって、脱酸処理後の溶鋼中の水素濃度[H]が15〜20ppm まで上昇したが、次工程のRH脱ガス設備において真空脱ガス処理を施すことによって水素の除去を行なった結果、全て2ppm 以下まで低下した。
【0040】
また炭化水素を供給する場合は、水素のみを供給する場合に比べて処理後の[%S]が低下した。一方、 プラスチック廃棄物の供給による溶鋼中の炭素濃度の増加は認められなかった。
(実施例2)
実施例1と同じく図1に示す装置を用いて、実施例1にスラグ改質を併用する方法を実施した。すなわち転炉(図示せず)から排出されたスラグ2に対してAl灰(金属Al含有量30質量%)を溶鋼1ton あたり 0.5kg添加し、あらかじめスラグ改質を行なった。
【0041】
出鋼された溶鋼1に脱酸剤を添加し、その後にガス6として水素ガス,プロパンガスおよびArガスの混合ガスをランス5から溶鋼1内に吹き込んだ。これを発明例4とする。
さらにプラスチック廃棄物を溶鋼1に投入した。これを発明例5とする。なおプラスチック廃棄物については、あらかじめ乾留実験を行ない、炭化水素ガスが発生することを確認した。
【0042】
さらに、プラスチック廃棄物に金属Alを混合成形したものを溶鋼1に投入した。これを発明例6とする。
一方、 比較例2は、スラグ改質は同一条件で行ない、溶鋼を攪拌するためにArガスのみをランス5から溶鋼1内に吹込んだ。
これらの発明例4〜6および比較例2の脱硫処理の条件は、実施例1と同様に表1〜4に示す通りである。発明例4〜6および比較例2について、脱硫処理後の溶鋼温度(℃),溶鋼中のS濃度[%S](質量%)およびスラグ中のFeO濃度(%FeO)(質量%)を測定した。その結果を表6に示す。
【0043】
【表6】
Figure 0003922189
【0044】
表6から明らかなように、発明例4〜6は、比較例2に比べて処理後のS濃度[%S]が低下し、処理後のスラグ中のFeO濃度(%FeO)が低下した。特に発明例5,6では、発明例4に比べて溶鋼中のS濃度の低下およびスラグ中のFeO濃度の低下が顕著に現われた。水素,炭化水素,プラスチック廃棄物の溶鋼に供給することによって、脱酸処理後の溶鋼中の水素濃度[H]が15〜20ppm まで上昇したが、次工程のRH脱ガス設備において真空脱ガス処理を施すことによって水素の除去を行なった結果、全て2ppm 以下まで低下した。
【0045】
また炭化水素を供給する場合は、水素のみを供給する場合に比べて処理後の[%S]が低下した。一方、 プラスチック廃棄物の供給による溶鋼中の炭素濃度の増加は認められなかった。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、簡易な処理で極低硫鋼を安価に溶製できる。しかもプラスチック廃棄物の再利用が可能であり、環境汚染を防止する観点からも好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する装置の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 溶鋼
2 スラグ
3 取鍋
4 シール蓋
5 ランス
6 ガス

Claims (3)

  1. 脱炭処理の後、取鍋に出鋼された溶鋼に対して脱酸剤を添加した後、水素および/または炭化水素を供給(ただし、溶鉄に炭化水素をキャリアガスとして粉体を供給する方法を除く)して攪拌し、脱硫処理を施し、次いで溶鋼中の水素を除去することを特徴とする溶鋼の取鍋精錬方法。
  2. 前記取鍋内に溶鋼とともに排出されたスラグに対し、脱酸剤を添加して前記スラグ中の低級酸化物を還元するスラグ改質を行なうことを特徴とする請求項1に記載の溶鋼の取鍋精錬方法。
  3. 前記水素および/または炭化水素を供給するにあたって、前記溶鋼中で熱分解して水素および/または炭化水素を発生する固体物質を供給することを特徴とする請求項1または2に記載の溶鋼の取鍋精錬方法。
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