JP5581759B2 - 鋼屑中の銅の除去方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄源として鋼屑(鉄系スクラップ)を使用して高級鋼を製造する場合に品質上の問題となる鋼屑中の銅を除去する方法に関する。
製鋼過程で使用する鉄源は、鉄鉱石を高炉で還元して得られる溶銑が主体であるが、鉄鋼材料の加工工程で発生する鋼屑や、建築物及び機械製品などの老朽化に伴って発生する鋼屑も、かなりの量が使用されている。鉄鋼製品の製造にあたり、高炉での溶銑の製造では、鉄鉱石を還元し且つ溶融するための多大なエネルギーを要するのに対し、鋼屑は溶解熱のみを必要としており、製鋼過程で鋼屑を利用した場合には、鉄鉱石の還元熱分のエネルギー使用量を少なくすることができるという利点がある。従って、省エネルギー及びCO2削減による地球温暖化防止の観点からも、鋼屑利用の促進が望まれている。
従来、鋼屑は、転炉、アーク炉などの製鋼炉へ直接投入して使用されることが多かった。しかし、鉄源として多様な鋼屑を使用すると、製造される溶鋼の成分調整が難しいという問題があった。また、転炉は、鋼屑の溶解熱として溶銑に含有される炭素の燃焼熱を利用していることから、鋼屑の配合比率を高めることできないという欠点があった。
ところで、鋼屑を再生利用する際に、これら鋼屑に随伴する銅及び錫に代表されるトランプエレメントが、鋼屑溶解の過程で不可避的に溶融鉄中に混入する。トランプエレメントは鋼の性質を損なう成分であり、一定の濃度以下に保つ必要がある。このため、高級鋼を製造する鉄源として、銅や錫を含む恐れのある低級鋼屑を使用することは困難であった。しかしながら、近年の鋼屑発生量の増加及びCO2発生削減のための鋼屑増使用の要請を勘案すると、低級鋼屑の再生利用を進める必要がある。
現在の低級鋼屑を使用するための実用技術としては、鋼屑を物理的に分解し、有害な部分を人力や磁力選別などの方法で分離して、有害な部分を分離したものを、有害成分をほとんど含有しない原料に配合して、鋼材の材料特性上問題のない範囲内で使用する以外に、有効な方法はない。しかし、このような方法では、使用済み自動車などの鋼屑を大量に再生利用することは不可能であり、今後予想される鋼屑多量発生時代に対応する鋼屑中の銅の除去技術としては、十分な解決策には成り得ない。
一方、溶融鉄に混入した後の脱銅方法について、以下に述べる原理的発明が公知になっている。即ち、含銅高炭素溶融鉄とFeS−Na2S系フラックスとを接触させ、溶融鉄中の銅成分をCu2Sとしてフラックス中に分離除去する原理的技術知見が、非特許文献1及び非特許文献2に報告されている。この技術は、銅の除去技術として、前述の物理的除去方法に対して、より広い適用の可能性を提案するものである。但し、この方法では、Na2S系フラックスから硫黄(S)成分が溶融鉄中に混入するという問題がある。また、フラックスが溶融して溶融鉄上に形成されるスラグ中のCu濃度と溶融鉄中のCu濃度との比である分配比が高々30程度であり、スラグに充分な撹拌を与えて分配比を低下させないようにする必要がある。
この原理的技術知見に基づいた脱銅処理方法として、特許文献1には、銅を含有する鋼屑(以下、「銅含有鋼屑」と記す)を加炭溶融して含銅高炭素溶融鉄とした後、Na2Sを主成分とするフラックスと接触反応させて、溶融鉄中の銅成分をCu2SとしてNa2S系フラックス中に分離除去する方法が開示されている。
但し、特許文献1では、脱銅処理後の高炭素溶融鉄の脱硫については一切開示していない。また、反応容器(溶銑鍋)の底部からのArガス吹き込みによる溶銑とスラグとの撹拌で脱銅処理を行っているが、スラグの撹拌は不充分である。これを補うために、1200〜1500℃の反応温度を保持するための電気加熱装置を備えるとともに、大気との接触を断つための有蓋の反応容器を使用しているが、設備が大がかりであり、実用化技術としては確立されたものではない。
特開平4−198431号公報
今井正等、鉄と鋼、vol.74(1988)No.4.p.640 王潮等、鉄と鋼、vol.77(1991)No.4.p.504
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、鉄源として銅含有鋼屑を使用して高級鋼を製造するに際し、銅含有鋼屑中の銅を効率良く、且つ大がかりな設備を必要とせずに除去する方法を提供することである。
上記課題を解決するための第1の発明に係る鋼屑中の銅の除去方法は、アーク炉を使用して銅含有鋼屑を加炭溶解して製鋼用溶銑を製造し、その後、該溶銑に含まれる銅を硫黄含有フラックスを用いて除去し、次いで、溶銑に含まれる硫黄を除去することを特徴とする。
第2の発明に係る鋼屑中の銅の除去方法は、第1の発明において、前記アーク炉が、銅含有鋼屑を溶解するための溶解室と、その上部に直結し、銅含有鋼屑を予熱するためのシャフト型の予熱室とを有し、溶解室で発生する排ガスを予熱室に導入して予熱室内の銅含有鋼屑を予熱し、予熱した銅含有鋼屑を溶解室で溶解し、溶解室に所定量の溶銑が溜まった時点で溶解室及び予熱室に銅含有鋼屑が存在する状態で溶銑を出湯するアーク炉であることを特徴とする。
第3の発明に係る鋼屑中の銅の除去方法は、第1または第2の発明において、前記硫黄含有フラックスがNa2Sを主成分とすることを特徴とする。
第4の発明に係る鋼屑中の銅の除去方法は、第1ないし第3の発明の何れかにおいて、前記硫黄含有フラックスの出発原料として、Na2CO3を主成分とする材料及び鉄−硫黄合金を使用することを特徴とする。
第5の発明に係る鋼屑中の銅の除去方法は、第1ないし第4の発明の何れかにおいて、前記硫黄含有フラックスによって銅を除去する前の溶銑は、温度が1200℃以上1500℃以下、炭素濃度が2質量%以上、銅濃度が0.1質量%以上1.0質量%以下であることを特徴とする。
第6の発明に係る鋼屑中の銅の除去方法は、第5の発明において、前記硫黄含有フラックスによって銅を除去する前の溶銑は、温度が1250℃以上1350℃以下であることを特徴とする。
第7の発明に係る鋼屑中の銅の除去方法は、第1ないし第6の発明の何れかにおいて、前記硫黄含有フラックスによって銅を除去する前の溶銑は、硫黄濃度が0.01質量%以上であることを特徴とする。
第8の発明に係る鋼屑中の銅の除去方法は、第1ないし第7の発明の何れかにおいて、前記溶銑に含まれる銅の除去を、溶銑をアーク炉から保持容器に出湯した後の保持容器内の溶銑に対して機械攪拌式精錬装置を使用して行うことを特徴とする。
第9の発明に係る鋼屑中の銅の除去方法は、第1ないし第7の発明の何れかにおいて、前記溶銑に含まれる銅の除去を、溶銑をアーク炉から保持容器に出湯した後の保持容器内の溶銑に搬送用ガスとともに硫黄含有フラックスを吹き込んで行うことを特徴とする。
第10の発明に係る鋼屑中の銅の除去方法は、第1ないし第9の発明の何れかにおいて、前記溶銑に含まれる硫黄の除去処理を、溶銑をアーク炉から保持容器に出湯した後の保持容器内の溶銑に対して機械攪拌式精錬装置を使用して行うことを特徴とする。
第11の発明に係る鋼屑中の銅の除去方法は、第1ないし第10の発明の何れかにおいて、前記硫黄含有フラックスによって銅を除去した後の溶銑に高炉溶銑を混合し、その後、高炉溶銑を混合した溶銑に含まれる硫黄を除去することを特徴とする。
本発明によれば、溶解能力に優れるアーク炉を用いて銅含有鋼屑を加炭溶解した後に、銅含有鋼屑から持ち来たされた溶銑中の銅を硫黄含有フラックス中に分離除去するので、鋼屑を物理的に分解した後に磁力選別などで分離除去する方法では分離の困難であった銅を、大量の銅含有鋼屑から効率良く分離することができるとともに、銅の除去処理後に、硫黄含有フラックスにより持ち来たされる溶銑中の硫黄の除去処理を行うので、銅含有鋼屑から銅及び硫黄の少ない溶銑を効率良く得ることができ、その結果、銅含有鋼屑を高級鋼の鉄源として利用可能となり、低級鋼屑の利用が促進される。
脱銅処理前の溶銑温度と脱銅率との関係を示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
銅含有鋼屑を加炭溶解して溶銑を製造する工程としては、アーク炉を用いる方法、転炉を用いる方法、竪型炉を用いる方法などがあるが、本発明においては、電力の消費を必須とするものの、溶解能力に優れ、大量に発生する銅含有鋼屑の溶解に対応可能であることからアーク炉を使用する。加炭溶解の方法は、コークスなどの炭材を銅含有鋼屑に混合して溶解する、或いは、溶解中、生成する溶融鉄中に吹き込みランスを介して炭材を吹き込むなどすることで炭素濃度の高い溶融鉄、つまり、溶銑を得ることができる。
銅含有鋼屑をアーク炉で加炭溶解して炭素を含有した製鋼用溶銑を製造すると、鋼屑中の銅はほぼ全量が溶銑中に溶解する。本発明では、この銅を除去する手段として、硫黄含有フラックスを溶銑と接触させ、溶銑中の銅を硫化銅(Cu2S)として硫黄含有フラックス中に分離除去する。尚、本発明では、アーク炉は銅含有鋼屑の溶解装置として使用し、アーク炉で製造した溶銑を取鍋などの保持容器に出湯し、この保持容器に収容された溶銑に対して銅の除去処理(脱銅処理)、及び、その後の脱硫処理を実施する。
上記硫黄含有フラックスとしては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の硫化物を主成分とするものが好適である。硫黄含有フラックス中の硫黄含有量を高めるためにFeS(硫化鉄)を混合してもよい。特に好適なのは、Na2Sを主成分とするフラックスである。Na2Sを主成分とするフラックスの場合、Na源として工業的に広く利用されているNa2CO3(ソーダ灰)を使用し、硫黄源として鉄−硫黄合金(フェロサルファー)を使用すれば、コスト面で有利である。硫黄含有フラックスの組成としては、効率的な銅除去の観点から、フラックス中のNa2Sのモル分率が0.2以上であることが望ましい。
ところで、硫黄含有フラックスによる脱銅は、原理的に確認されているが、分配比(フラックス中のCu濃度と溶銑中のCu濃度との比)の低いプロセスであるため、脱銅を十分に進行させるには、添加した硫黄含有フラックスにより保持容器内に形成されるスラグ側の物質移動を促進させる必要がある。このためには、スラグ層も撹拌することが重要である。特に、本発明では溶銑段階で脱銅処理しており、溶銑の温度域(1200〜1400℃)は溶鋼の温度域(1550〜1700℃)に比較して低温であり、スラグの流動性も低く、スラグの撹拌が重要である。
溶銑及び溶銑上に存在するスラグを同時に攪拌する方法として、保持容器内の溶銑に浸漬させたインジェクションランスまたは保持容器の底部に設置した羽口から攪拌用ガスを吹き込んでスラグと溶銑とを攪拌する方法も採り得るが、本発明においては、良好な攪拌が得られることから、機械攪拌式精錬装置を用いて脱銅処理を行うことが好ましい。機械攪拌式精錬装置としては、インペラ(「攪拌羽根」ともいう)を使用した撹拌が代表的である。つまり、取鍋状の保持容器内に収容された溶銑にインペラを浸漬させ、このインペラを、軸心を回転軸として回転させ、溶銑及び溶銑上に添加された硫黄含有フラックスを強制的に攪拌する方法である。機械攪拌式精錬装置では、溶銑上に投入された硫黄含有フラックスが溶銑内に充分に巻き込まれ、溶銑と硫黄含有フラックスとの撹拌が充分に行われる。一方、特許文献1に示されたガス撹拌法では、スラグは溶銑中に巻き込まれ難く、撹拌は不充分である。
また、保持容器内の溶銑に浸漬させたインジェクションランスから、搬送用ガスとともに粉体状の硫黄含有フラックスを溶銑中に吹き込む方法、所謂フラックス吹き込み法も好ましい処理方法である。この場合、溶銑中に吹き込まれた粉体状の硫黄含有フラックスは溶銑と直接接触し、しかも、新たな未反応の硫黄含有フラックスが連続的に溶銑と接触するので、スラグ側の物質移動を促進させた場合と同等の効果が発現し、溶銑と硫黄含有フラックスとの反応が促進される。しかも、搬送用ガスは攪拌用ガスとしても機能するので、機械攪拌式精錬装置ほどの攪拌強度はないものの、溶銑と溶銑上スラグとの攪拌が行われる。
これらの脱銅処理の際、雰囲気への大気の混入を防ぐために、Arガスなどの不活性ガスやプロパンなどの還元性ガスを溶銑浴面上に供給してもよい。脱銅処理後、硫黄含有フラックスの添加により形成されたスラグを系外に除去する。
本発明において、脱銅処理前の溶銑、つまり、銅含有鋼屑を加炭溶解して製造する、炭素を含有する製鋼用溶銑の温度は、1200℃以上1500℃以下、望ましくは1250℃以上1350℃以下であることが好ましい。溶銑温度が1200℃未満では、低温に起因する硫黄含有フラックス及び溶銑自体の固化・凝固が懸念される。特に、その後の脱硫工程や転炉脱炭工程での温度保証を考慮すると、1250℃以上とすることが望ましい。一方、1500℃以上では、高温による硫黄含有フラックスの蒸発が無視できない。つまり、硫黄含有フラックスの蒸発を抑えて効率的に脱銅反応を行うには、溶銑温度は低いほど好ましく、従って、効率的な脱銅反応のためには、溶銑温度を1350℃以下とすることが望ましい。
また、脱銅処理前の溶銑中の炭素濃度は2質量%以上が好ましい。溶銑中の銅が硫化銅となる反応は、熱力学的に溶銑中の炭素濃度が高いほど進行しやすいことが知られており、脱銅処理前の溶銑中の炭素濃度が2質量%未満では、硫化銅の生成反応が充分に起こらないことに加え、溶銑の液相線温度が上昇し、溶銑の保持容器壁への付着などが問題となる。また更に、脱銅処理前の溶銑中の銅濃度は0.1質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。脱銅処理前の溶銑中の銅濃度が1.0質量%を超えると銅の除去に必要な硫黄含有フラックスの量が過大となり、実用上の負荷が大きい。一方、0.1質量%未満の場合には、脱銅処理を施さなくても、例えば、銅含有量の低い溶銑で希釈するなどして対処可能である。
更に、脱銅処理前の溶銑の硫黄濃度としては、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上が更に好ましい。脱銅処理前の溶銑の硫黄濃度が0.01質量%未満では、硫黄含有フラックスから溶銑中への硫黄の溶解量が過大となり、硫黄含有フラックスの利用効率が低くなり経済的でない。硫黄濃度の上限は特に規定する必要はないが、余りに高濃度であると脱硫処理に支障を来すので、0.5質量%以下とすることが望ましい。
脱銅処理前の上記以外の溶銑の成分としては、例えば珪素濃度は0.5質量%以下、マンガン濃度は0.5質量%以下が望ましい。これらの濃度を超えると、これら成分の脱銅処理中の酸化により生じる酸化珪素及び酸化マンガンがスラグに移行してスラグ量が増大し、スラグ処理が困難になるだけでなく、酸化珪素及び酸化マンガンが硫黄含有フラックスの脱銅反応を阻害する恐れがある。
また、銅含有鋼屑を加炭溶解して製造した製鋼用溶銑に、必要に応じて高炉から出銑された溶銑(以下、「高炉溶銑」と呼ぶ)を混合し、その後、混合した溶銑に含まれる銅を、硫黄含有フラックスを用いて除去するようにしてもよい。
本発明においては、前述したように、アーク炉を使用して銅含有鋼屑を加炭溶解する。使用するアーク炉の種類は、交流式アーク炉であってもまた直流式アーク炉であって構わず、特に限定する必要はないが、溶解エネルギー最小化の観点から、鉄スクラップの予熱効率を高めることが可能なアーク炉である、特許第3204202号に示されるアーク炉が好適である。
即ち、「冷鉄源を溶解するための溶解室と、該溶解室の上部に直結し、冷鉄源を予熱するシャフト型の予熱室と、溶解室内で冷鉄源を溶解するためのアーク電極と、冷鉄源が溶解室と予熱室に連続して存在する状態を保つように予熱室へ冷鉄源を連続的または断続的に供給する冷鉄源供給手段と、前記溶解室に設けられた出鋼口とを有し、溶解室内の冷鉄源をアークにより溶解し、溶解室に所定量の溶鋼が溜まった時点で溶解室及び予熱室に冷鉄源が存在する状態で溶鋼を出鋼することを特徴とするアーク溶解設備」を用い、溶解室で発生する排ガスを予熱室に導入して予熱室内の銅含有鋼屑を予熱し、予熱した銅含有鋼屑を溶解室で加炭溶解し、溶解室に所定量の溶銑が溜まった時点で、溶解室及び予熱室に銅含有鋼屑が存在する状態で溶銑を出湯することが好ましい。
脱銅処理に伴い、硫黄含有フラックス中の硫黄が不可避的に溶銑中に移行するので、溶銑中の硫黄濃度は上昇する。従って、本発明においては、脱銅処理を行った後、更に、溶銑中の硫黄を除去する処理を行う。この脱硫処理は、公知の機械攪拌式精錬装置による方法、ランスからの粉体吹き込みによる方法、転炉を使用する方法などの何れであってもよく、また、使用する脱硫剤としては、CaOを主成分とする脱硫剤、カルシウム・カーバイドを主成分とする脱硫剤、ソーダ灰を主成分とする脱硫剤、金属Mgなど種々の脱硫剤を使用することができる。これらの内で、安価なCaOを主成分とする脱硫剤を用いても高い脱硫率が得られることから、機械攪拌式精錬装置を使用して脱硫処理することが好ましい。つまり、脱硫剤としてCaOを主成分とする脱硫剤を用い、溶銑に浸漬させたインペラで溶銑を攪拌し、添加した脱硫剤と溶銑とを混合攪拌して脱硫する方法を用いることが好ましい。
機械攪拌式精錬装置を使用して脱硫処理する場合は、機械攪拌式精錬装置で脱銅処理を行った後、脱銅処理で生成したスラグを除去し、その後、同じ機械攪拌式精錬装置で脱硫処理を行うことができる。また、脱硫処理を実施する場合に、高炉溶銑を、脱銅処理を施した溶銑に追加混合し、その後、混合した溶銑の脱硫処理を行ってもよい。更には、脱硫処理後の溶銑に高炉溶銑を混合してもよい。
脱硫処理に先立ち、脱銅処理に供した硫黄含有フラックスを保持容器から除去することが必要である。硫黄含有フラックスを除去しないまま、脱硫処理すると、硫黄含有フラックス中の硫化銅(Cu2S)が分解して溶銑に戻り、溶銑中の銅濃度が上昇する恐れがあるからである。スラグ除去手段は、公知のスラグドラッガーを用いた方法、スラグ吸引機による方法、溶銑収容容器を傾けて容器内のスラグを排出する方法などの何れでもよく、各製鉄所の保有する設備状況に適したものを選択すればよい。
以上説明したように、本発明によれば、溶解能力に優れるアーク炉を用いて銅含有鋼屑を加炭溶解した後に、銅含有鋼屑から持ち来たされた溶銑中の銅を硫黄含有フラックス中に分離除去するので、鋼屑を物理的に分解した後に磁力選別などで分離除去する方法では分離の困難であった銅を、大量の銅含有鋼屑から効率良く分離することができるとともに、銅の除去処理後に、硫黄含有フラックスにより持ち来たされる溶銑中の硫黄の除去処理を行うので、銅含有鋼屑から銅及び硫黄の少ない溶銑を効率良く得ることができる。
3相交流式アーク炉を用いて、銅含有鋼屑を溶解して製鋼用溶銑を製造し、この溶銑を、出発原料としてソーダ灰(Na2CO3)及び鉄−硫黄合金(フェロサルファー)からなるフラックスを用いて脱銅処理し、脱銅処理後、脱銅処理後の溶銑に高炉溶銑を混合し、この混合した溶銑に対して、CaO系脱硫剤を用いて脱硫処理する試験を実施した。
アーク炉で製造した製鋼用溶銑の温度は1400℃、炭素濃度は4.0質量%、銅濃度は0.30質量%、硫黄濃度は0.11質量%であった。
脱銅処理は、鍋形状の保持容器に前記製鋼用溶銑約50トンを装入し、機械攪拌式精錬装置において、溶銑トンあたりソーダ灰35kg及び鉄−硫黄合金(合金中硫黄濃度48質量%)50kgを溶銑上に投入し、耐火物で被覆したインペラを溶銑に浸漬させ、インペラを回転して溶銑及びフラックスを攪拌して行った。脱銅処理後の溶銑の銅濃度は0.14質量%、硫黄濃度は0.44質量%であった。
脱銅処理により生成したスラグをスラグドラッガーで除去した後、脱銅処理後の溶銑約50トンと高炉で製造された高炉溶銑約250トンとを鍋形状の保持容器で混合した。混合後の溶銑の銅濃度は0.02質量%、硫黄濃度は0.08質量%であった。
混合後の溶銑に対して、機械攪拌式精錬装置において、CaO系脱硫剤を溶銑トンあたり20kg投入し、耐火物で被覆したインペラを溶銑に浸漬させ、インペラを回転して溶銑及び脱硫剤を攪拌して脱硫処理を実施した。脱硫処理後の溶銑の銅濃度は0.02質量%、硫黄濃度は0.01質量%であった。
溶解室と、その上部に直結し、銅含有鋼屑を予熱するシャフト型の予熱室とを有し、溶解室で発生する排ガスを予熱室に導入して予熱室内の銅含有鋼屑を予熱し、予熱した銅含有鋼屑を溶解室でアークにより加炭溶解し、溶解室に所定量の溶銑が溜まった時点で、溶解室及び予熱室に銅含有鋼屑が存在する状態で溶銑を出湯する直流式アーク炉を用いて、銅含有鋼屑を溶解して製鋼用溶銑を製造し、この溶銑を、出発原料としてソーダ灰(Na2CO3)及び鉄−硫黄合金(フェロサルファー)からなるフラックスを用いて脱銅処理し、脱銅処理後、脱銅処理後の溶銑に高炉溶銑を混合し、この混合した溶銑に対して、CaO系脱硫剤を用いて脱硫処理する試験を実施した。
アーク炉で製造した製鋼用溶銑の温度は1400℃、炭素濃度は4.0質量%、銅濃度は0.30質量%、硫黄濃度は0.11質量%であった。
脱銅処理は、鍋形状の保持容器に前記製鋼用溶銑約70トンを装入し、機械攪拌式精錬装置において、溶銑トンあたりソーダ灰35kg及び鉄−硫黄合金(合金中硫黄濃度48質量%)50kgを溶銑上に投入し、耐火物で被覆したインペラを溶銑に浸漬させ、インペラを回転して溶銑及びフラックスを攪拌して行った。脱銅処理後の溶銑の銅濃度は0.14質量%、硫黄濃度は0.44質量%であった。
脱銅処理により生成したスラグをスラグドラッガーで除去した後、脱銅処理後の溶銑約70トンと高炉で製造された高炉溶銑約230トンとを鍋形状の保持容器で混合した。混合後の溶銑の銅濃度は0.03質量%、硫黄濃度は0.10質量%であった。
混合後の溶銑に対して、機械攪拌式精錬装置において、CaO系脱硫剤を溶銑トンあたり20kg投入し、耐火物で被覆したインペラを溶銑に浸漬させ、インペラを回転して溶銑及び脱硫剤を攪拌して脱硫処理を実施した。脱硫処理後の溶銑の銅濃度は0.03質量%、硫黄濃度は0.01質量%であった。
実施例2で使用したアーク炉により製造した、温度、組成の異なる製鋼用溶銑を使用して、脱銅処理及び脱銅処理後の脱硫処理を実施する試験を行った(試験No.1〜10)。
脱銅処理は、鍋形状の保持容器に約5トンの製鋼用溶銑を装入し、鍋上に設けた精錬剤供給用ホッパーから脱銅精錬用のフラックスを添加して行った。脱銅精錬用フラックスとして、溶銑トンあたり40kgの鉄−硫黄合金(フェロサルファー、硫黄含有量:48質量%)と、溶銑トンあたり30kgのソーダ灰(Na2CO3)とを用いた。鍋内溶銑の攪拌方法としては、耐火物で被覆したインペラを溶銑に浸漬させ、インペラを回転して溶銑及びフラックスを攪拌して行う方法を用いた。
全ての試験で脱銅処理後に生成したスラグを除去し、スラグを除去した後、機械攪拌式精錬装置において脱硫処理を実施した。脱硫処理は、CaO系脱硫剤を溶銑トンあたり20kg投入し、耐火物で被覆したインペラを溶銑に浸漬させ、インペラを回転して溶銑及び脱硫剤を攪拌して行った。表1に、脱銅処理前後並びに脱硫処理後の溶銑温度及び溶銑成分を一覧で示す。尚、表1に示した以外の溶銑成分については、珪素濃度が0.05〜0.4質量%、マンガン濃度が0.05〜0.4質量%、燐濃度が0.02〜0.2質量%の範囲であった。
Figure 0005581759
試験No.1〜6においては、溶銑の温度が1200℃以上1500℃以下、炭素濃度が2質量%以上、銅濃度が0.1質量%以上1.0質量%以下、硫黄濃度が0.01質量%以上の条件、つまり、本発明の好ましい条件の範囲内であり、脱銅率(=(処理前溶銑中銅濃度−処理後溶銑中銅濃度)×100/処理前溶銑中銅濃度)が40%以上であり、脱銅が良好に行われたことが確認できた。一方、試験No.7〜10においては、本発明の好ましい条件を外れた条件下で脱銅処理を実施したことから脱銅率は40%未満であった。
溶銑温度の脱銅率に及ぼす影響を明確にするための調査試験を行った。実施例2で使用したアーク炉により製造した約5トンの製鋼用溶銑を鍋形状の保持容器に装入して脱銅試験を行った(試験No.11〜17)。鍋上に設けた精錬剤供給用ホッパーから脱銅精錬用のフラックスを添加した。脱銅精錬用フラックスとしては、鉄−硫黄合金(フェロサルファー、硫黄含有量:48質量%)とソーダ灰(Na2CO3)とを用いた。鍋内溶銑の攪拌方法としては、耐火物で被覆したインペラを溶銑に浸漬させ、インペラを回転して攪拌する方法を用いた。表2に、試験条件及び試験結果を一覧で示す。脱銅処理前の溶銑成分は、表2に記載以外の成分については、炭素が4.5〜4.7質量%、珪素が0.20質量%、マンガンが0.15質量%、燐が0.050質量%になるように調製して試験を行った。
Figure 0005581759
図1に、脱銅処理前の溶銑温度と脱銅率との関係を示す。溶銑温度が1250〜1500℃の範囲においては、溶銑温度が低いほど脱銅率が高くなる結果が得られた。但し、1200℃の試験水準においては、脱銅率が33.3%まで低下した。これは、低温化により脱銅精錬用フラックスの反応性が悪化したためと考えられる。本結果から、望ましくは溶銑温度を1250〜1350℃の範囲とすることで50%を超える、高い脱銅率が得られることが分かった。
インジェクションランスを介して脱銅精錬用フラックスを溶銑中に吹き込んで行う脱銅処理試験を、鍋形状の保持容器に収容された約5トンの製鋼用溶銑に対して実施した(試験No.18〜23)。試験は、実施例2で使用したアーク炉により製造された、取鍋型の保持容器内の溶銑に、耐火物で被覆したインジェクションランスを浸漬させ、窒素ガスを搬送用ガスとして脱銅精錬用フラックスの一部または全部を、インジェクションランスを通じて溶銑中に吹き込んで実施した。インジェクションランスからの吹込み添加以外には、鍋上の精錬剤供給用ホッパーから上置き添加した。
脱銅精錬用フラックスには、鉄−硫黄合金(フェロサルファー、硫黄含有量:48質量%)とソーダ灰(Na2CO3)を用いた。表3に、試験条件及び試験結果を一覧で示す。脱銅処理前の溶銑成分は、表3に記載以外の成分については、炭素を4.5〜4.7質量%、珪素を0.20質量%、マンガンを0.15質量%、燐を0.050質量%に調製し、溶銑温度は1400℃とした。
尚、インジェクションランスの浸漬深さについては、溶銑の浴深をH(m)、溶銑浴面からインジェクションランス先端までの距離をL(m)とした時、L/Hが0.3以上であれば吹き込んだフラックスが脱銅反応に寄与できることを別途実験で確認している。また、用いるインジェクションランスの仕様としては、溶銑内に浸漬してフラックスを吹き込む処理に耐えうるものであればどのようなものを用いても構わない。更に、搬送用ガス流量とフラックス吹込み速度との関係についても、インジェクションランス内でのフラックス詰りが発生しない程度であれば冶金特性にはなんら影響しない。搬送用ガスの種類も不活性ガスであれば問題なく、例えばArガスを用いても構わない。
Figure 0005581759
試験No.18〜23において、インジェクションランスによる添加の割合を変化させたが、脱銅率に大きな差はなく50%程度であり、機械攪拌式精錬装置を用いた場合と同等であることを確認した。また、試験No.22では、ソーダ灰のみをインジェクションランスから吹き込み添加し、試験No.23では、フェロサルファーのみを吹き込み添加する試験を行ったが、何れの試験も脱銅率は同等であった。
以上の結果から、機械攪拌式精錬装置でなく、インジェクションランスによりフラックスの一部または全部を添加する方法でも脱銅処理が可能であることを確認した。

Claims (9)

  1. 銅含有鋼屑を溶解するための溶解室と、該溶解室の上部に直結し、銅含有鋼屑を予熱するためのシャフト型の予熱室と、を有し、溶解室で発生する排ガスを予熱室に導入して予熱室内の銅含有鋼屑を予熱し、予熱した銅含有鋼屑を溶解室で溶解し、溶解室に所定量の溶銑が溜まった時点で溶解室及び予熱室に銅含有鋼屑が存在する状態で溶銑を出湯するアーク炉を使用して銅含有鋼屑を加炭溶解して製鋼用溶銑を製造し、製造した溶銑をアーク炉から保持容器に出湯し、その後、前記保持容器に収容された、温度が1200℃以上1500℃以下、炭素濃度が2質量%以上、銅濃度が0.1質量%以上1.0質量%以下である溶銑に含まれる銅を硫黄含有フラックスを用いて除去し、次いで、溶銑に含まれる硫黄を除去することを特徴とする、鋼屑中の銅の除去方法。
  2. 前記硫黄含有フラックスがNa2Sを主成分とすることを特徴とする、請求項1に記載の鋼屑中の銅の除去方法。
  3. 前記硫黄含有フラックスの出発原料として、Na2CO3を主成分とする材料及び鉄−硫黄合金を使用することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の鋼屑中の銅の除去方法。
  4. 前記硫黄含有フラックスによって銅を除去する前の溶銑は、温度が1250℃以上1350℃以下であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3の何れか1つに記載の鋼屑中の銅の除去方法。
  5. 前記硫黄含有フラックスによって銅を除去する前の溶銑は、硫黄濃度が0.01質量%以上であることを特徴とする、請求項1ないし請求項の何れか1つに記載の鋼屑中の銅の除去方法。
  6. 前記溶銑に含まれる銅の除去を、溶銑をアーク炉から保持容器に出湯した後の保持容器内の溶銑に対して機械攪拌式精錬装置を使用して行うことを特徴とする、請求項1ないし請求項の何れか1つに記載の鋼屑中の銅の除去方法。
  7. 前記溶銑に含まれる銅の除去を、溶銑をアーク炉から保持容器に出湯した後の保持容器内の溶銑に搬送用ガスとともに硫黄含有フラックスを吹き込んで行うことを特徴とする、請求項1ないし請求項の何れか1つに記載の鋼屑中の銅の除去方法。
  8. 前記溶銑に含まれる硫黄の除去処理を、溶銑をアーク炉から保持容器に出湯した後の保持容器内の溶銑に対して機械攪拌式精錬装置を使用して行うことを特徴とする、請求項1ないし請求項の何れか1つに記載の鋼屑中の銅の除去方法。
  9. 前記硫黄含有フラックスによって銅を除去した後の溶銑に高炉溶銑を混合し、その後、高炉溶銑を混合した溶銑に含まれる硫黄を除去することを特徴とする、請求項1ないし請求項の何れか1つに記載の鋼屑中の銅の除去方法。
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