(本発明にかかる発泡成形体100の概要)
まず、図1、図9、図4〜図6を参照しながら、本発明にかかる発泡成形体100の概要について説明する。図1は、本発明にかかる発泡成形体100の一実施形態の構成例を示し、図9は、本発明にかかる発泡成形体100の厚さ方向Tを示す図であり、図1に示す発泡成形体100の流路進行方向に対する発泡成形体100の垂直断面の厚さ方向Tを示し、Aは、発泡成形体100の内面側を示し、Bは外面側を示す。流路進行方向とは、発泡成形体100の厚さ方向及び周方向と直交する方向であり、図1に示すA,B(B−1、B−2),Cの方向を意味する。図4〜図6は、本発明にかかる発泡成形体100の成形方法例を示す図であり、溶融状態の発泡樹脂を分割金型12a,12b間に配置して型締めする例を示す図である。発泡樹脂は、例えば、発泡パリソン13が挙げられる。
本発明にかかる発泡成形体100は、図1に示すように、例えば、エアコンからの空気を通風させるためのものであり、図9に示すように、発泡成形体100の厚さ方向Tにおいて二等分したときに、発泡成形体100の内面側Aの厚さ方向Tにおける平均気泡径α1が、発泡成形体100の外面側Bの厚さ方向Tにおける平均気泡径β1の1.2倍以上((α1/β1)=1.2)であり、発泡成形体100の内面の表面粗さSmが1000μm以上であることを特徴とする。Smは、凹凸の平均間隔であり、JIS B 0601に準拠して測定した値である。
本発明にかかる発泡成形体100は、図4〜図6に示すように、溶融状態の発泡樹脂13を分割金型12a,12b間に配置して、分割金型12a,12bで挟み込むと共に、流体Fの押圧力で発泡樹脂13を分割金型12a,12bに押し付けて成形することができ、流体Fによって発泡樹脂13に押圧力を作用させる印加時間を、発泡成形体100の内面に位置する発泡樹脂13が溶融状態を維持する範囲の時間に設定し、発泡成形体100を成形することにしている。
本発明にかかる発泡成形体100は、上述した図4〜図6に示す成形方法で成形する際に、流体Fによって発泡樹脂13に押圧力を作用させる印加時間を、発泡成形体100の内面に位置する発泡樹脂13が溶融状態を維持する範囲の時間に設定して成形することで、発泡成形体100の内面側Aの樹脂が固化して膜が形成されるのを抑制することができる。また、気泡径の小さい気泡が多く形成されるのを抑制することができる。また、流体Fによって発泡樹脂13に押圧力を作用させる印加時間を、発泡成形体100の内面に位置する発泡樹脂13が溶融状態を維持する範囲の時間に設定して成形することで、発泡成形体100の内面側に気泡が大きく膨らみ、発泡形成体100の内表面に形成された気泡の形状に沿って起状が形成されることになる。その結果、図15に示す風船形状の気泡81の発生を抑制し、図9に示すように、発泡成形体100の厚さ方向Tにおいて二等分したときに、発泡成形体100の内面側Aの厚さ方向Tにおける平均気泡径α1が、発泡成形体100の外面側Bの厚さ方向Tにおける平均気泡径β1の1.2倍以上であり、発泡成形体100の内面の表面粗さSmが1000μm以上である発泡成形体100を成形することができる。本発明にかかる発泡成形体100は、図9に示す断面で構成することで、図15に示す風船形状の気泡81の発生を抑制することができる。また、発泡成形体100の内面側Aが柔らかいため、発泡成形体100を他部材(図示せず)に嵌合させやすくすることができる。また、発泡成形体100の外面側Bは、内面側Aよりも硬いため、発泡成形体100の内面側Aが柔らかくても、発泡成形体100の剛性を確保することができる。以下、添付図面を参照しながら、本発明にかかる発泡成形体100の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、発泡成形体100としてインパネダクト100を例に説明する。
<インパネダクト100の構成例>
まず、図1〜図3を参照しながら、本実施形態のインパネダクト100の構成例について説明する。図1は、インパネダクト100の全体斜視図、図2は、図1に示す嵌め合い部102a周辺の平面図、図3は、図2のD−D’断面図である。
本実施形態のインパネダクト100は、エアコンユニットから供給される冷暖風を所望の部位へ流通させるための軽量なインパネダクト100であり、発泡剤を混合させた熱可塑性樹脂を分割金型で型締めし、ブロー成形することで成形される。
インパネダクト100は、図1に示すように、エアコンユニット(図示せず)に接続するための供給口105が管部101の一端に開設され、嵌め合い部102(102a〜d)が管部101の他端に設けられる。また、こうした管部101、供給口105、及び嵌め合い部102から構成される管本体X1(図3参照)にフランジ部103(103a〜d)が連接されて構成される。
管本体X1は、発泡倍率が2.0〜6.0の範囲で複数の気泡を有する独立気泡構造で構成される。例えば、独立気泡率が70%以上で構成される。管本体X1の平均肉厚は、0.5〜3.5mmであり、図9に示すように、管本体X1を厚さ方向Tにおいて二等分したときに、管本体X1の厚さ方向Tの内面側Aの気泡a1の平均気泡径α1が管本体X1の外面側Bの気泡b1の平均気泡径β1よりも1.2〜2.0倍の大きさ(α1/β1の気泡比が1.2〜2.0)となるように構成している。
本実施形態において平均肉厚は、樹脂成形品の中空延伸方向に約100mmの等間隔で測定した肉厚の平均値を意味する。中空の樹脂成形品であれば、パーティングラインを介して溶着される2つの壁部の各々においてそれぞれパーティングライン90°方向の位置の肉厚を測定し、その測定した肉厚の平均値を意味する。但し、測定位置に、上述したフランジ部103などを含まないようにしている。
図9は、図3に示す管本体X1の一部106aを拡大した模式図であり、管本体X1の厚さ方向Tを示す図である。具体的には、図1に示すインパネダクト100の流路進行方向に対するインパネダクト100の垂直断面の一部106aを拡大した図である。垂直断面は、図3として示す周方向断面を意味する。流路進行方向とは、インパネダクト100の厚さ方向及び周方向と直交する方向であり、図1に示すA,B(B−1、B−2),Cの方向を意味する。
本実施形態において平均気泡径α1、β1は、以下の方法で算出した値である。
本実施形態のインパネダクト100の流路進行方向に対するインパネダクト100の垂直断面の一部106aを拡大投影し、投影画像上に、インパネダクト100の管本体X1の厚さ方向Tと平行な直線Lを引く。
次に、管本体X1を厚さ方向Tにおいて二等分したときの管本体X1の内面側Aの厚さ方向Tにおいて、厚さ方向Tと平行な直線Lと交差する気泡a1の数を数え、管本体X1の内面側Aの実際の厚みを、上記数えた気泡数で割った値を管本体X1の内面側Aの厚さ方向Tにおける気泡径α1とする。例えば、管本体X1の内面側Aの実際の厚みがT1μmであり、気泡a1の数が3個の場合は、管本体X1の内面側Aの厚さ方向Tにおける気泡径α1は、T1/3μmとなる。この操作を図1に示すインパネダクト100の中央部に位置する供給口105の左右付近の2箇所、及び、両端部付近について計4つの垂直断面において行うとし、さらに、各垂直断面において等間隔に5箇所測定を行い、合計20箇所の気泡径α1を測定する。そして、20箇所の気泡径α1の内、最大及び最小の値を除く18箇所の気泡径α1の算術平均値を、管本体X1の厚さ方向Tの内面側Aの気泡a1の平均気泡径α1とする。但し、測定箇所としては、気泡が大きく変形していない部分(気泡が潰された部分や気泡が大きく引き伸ばされたところが殆どない部分を意味する)としている。また、インパネダクト100の中央部に位置する供給口105の左右付近とは、図1に示す供給口105から管部101d側の位置付近、供給口105から管部101a側の位置付近を意味する。また、インパネダクト100の両端部付近とは、図1に示す嵌め合い部102a、102d付近を意味する。なお、測定箇所は、インパネダクト100の形状に応じて任意に設定変更することが好ましい。本実施形態では、図1に示すインパネダクト100は、図5、図6に示すように型締めして成形するため、図5、図6に示す成形時のインパネダクト100の上、中、下の位置に該当する箇所を測定箇所としている。但し、本実施形態のインパネダクト100の中央部には、供給口105を設けたため、供給口105の左右付近の2箇所を測定箇所としている。
平均気泡径β1についても、上記で算出した平均気泡径α1と同様に、管本体X1を厚さ方向Tにおいて二等分したときの管本体X1の外面側Bの厚さ方向Tにおいて、厚さ方向Tと平行な直線Lと交差する気泡b1の数を数え、管本体X1の外面側Bの実際の厚みを、上記数えた気泡数で割った値を管本体X1の外面側Bの厚さ方向Tにおける気泡径β1とする。例えば、管本体X1の外面側Bの実際の厚みがT2μmであり、気泡b1の数が5個の場合は、管本体X1の外面側Bの厚さ方向Tにおける気泡径β1は、T2/5μmとなる。この操作を図1に示すインパネダクト100の中央部に位置する供給口105の左右付近の2箇所、及び、両端部付近について計4つの垂直断面において行うとし、さらに、各垂直断面において等間隔に5箇所測定を行い、合計20箇所の気泡径β1を測定する。そして、20箇所の気泡径β1の内、最大及び最小の値を除く18箇所の気泡径β1の算術平均値を、管本体X1の厚さ方向Tの外面側Bの気泡b1の平均気泡径β1とする。但し、測定箇所としては、気泡が大きく変形していない部分(気泡が潰された部分や気泡が大きく引き伸ばされたところが殆どない部分を意味する)としている。
本実施形態のインパネダクト100は、管本体X1の厚さ方向Tにおける気泡a1、b1の平均気泡径α1、β1が上記の気泡比の条件を満たすことを前提として、少なくとも気泡b1の平均気泡径β1が100μm未満で構成することが好ましい。気泡b1の平均気泡径β1が100μm未満で構成することで、管本体X1の外面側Bの剛性を向上させることができる。
また、本実施形態のインパネダクト100は、管本体X1の厚さ方向Tにおける気泡a1、b1の平均気泡径α1、β1が上記の気泡比の条件を満たすことを前提として、気泡b1の平均気泡径β1が70〜95μmの範囲で構成し、気泡a1の平均気泡径α1が100μm〜125μmの範囲で構成することがさらに好ましい。これにより、図15に示す風船形状の気泡81の発生を抑制することができる。また、インパネダクト100の内面側Aが柔らかく、インパネダクト100を他部材(図示せず)に嵌合させやすくすることができる。また、インパネダクト100の外面側Bの剛性を向上させることができる。
なお、図9に示す気泡a1、b1は、管本体X1の厚さ方向Tと直交する方向に扁平な楕円形状の場合を示したが、本実施形態の気泡a1、b1は楕円形状に限定せず任意の形状で構成することが可能である。
本実施形態のインパネダクト100の管本体X1の内側は、流体を流通させる流路を有するように構成され、エアコンユニットの冷暖風を流通させられるようになっている。
供給口105から供給される流体の流路は、図1に示すように、流路A,B−1,B−2,Cの4本に分けられる。こうした供給口105からの流体が、流路Aでは嵌め合い部102aの開口部から、流路B−1では嵌め合い部102bの開口部から、流路B−2では嵌め合い部102cの開口部から、流路Cでは嵌め合い部102dの開口部から、それぞれ流出するようにインパネダクト100は構成される。
インパネダクト100における流路A周りの構成としては、管部101aの一端に供給口105が開設され、他端に嵌め合い部102aが設けられ、こうした管部101a、供給口105、及び嵌め合い部102aから構成される管本体X1にフランジ部103aが連接されて構成される。フランジ部103aには、嵌め合い部102aにより接続される他の管状部材に対して固定するための固定用孔107aが開設される。この固定用孔107aに不図示のボルトを貫通させてナットで締め付けることにより、他の管状部材に対してインパネダクト100を固定することができる。
インパネダクト100における流路B−1周りの構成としては、管部101bの一端に供給口105が開設され、他端に嵌め合い部102bが設けられ、こうした管部101b、供給口105、及び嵌め合い部102bから構成される管本体X1にフランジ部103bが連接されて構成される。フランジ部103bには、嵌め合い部102bにより接続される他の管状部材に対して固定するための固定用孔107bが開設される。この固定用孔107bに不図示のボルトを貫通させてナットで締め付けることにより、他の管状部材に対してインパネダクト100を固定することができる。
また、管部101aと101bの間の間隔が狭い部分には、強度保持のための橋渡し部104eが、これら管部101a、101bそれぞれに連接されて設けられる。
インパネダクト100における流路B−2周りの構成としては、上述した流路B−1周りの構成と同様に構成される。
インパネダクト100における流路C周りの構成としては、上述した流路A周りの構成と同様に構成される。
本実施形態のインパネダクト100は、ポリプロピレン系樹脂からなり、好ましくは、1〜20wt%のポリエチレン系樹脂及び/又は5〜40wt%の水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーを混合させたブレンド樹脂で構成し、−10℃における引張破壊伸びが40%以上で、かつ、常温時における引張弾性率が1000kg/cm2以上であることが好ましい。さらに、−10℃における引張破壊伸びが100%以上であることが好ましい。なお、本実施形態で用いる各用語について以下に定義する。
発泡倍率:後述する本実施形態の成形方法で用いた熱可塑性樹脂の密度を、本実施形態の成形方法により得られたインパネダクト100の管本体X1における見かけ密度で割った値を発泡倍率とした。
引張破壊伸び:後述する本実施形態の成形方法により得られたインパネダクト100の管本体X1を切り出し、−10℃で保管後に、JIS K−7113に準じて2号形試験片として引張速度を50mm/分で測定を行った値を引張破壊伸びとした。
引張弾性率:後述する本実施形態の成形方法により得られたインパネダクト100の管本体X1を切り出し、常温(23℃を意味する)で、JIS K−7113に準じて2号形試験片として引張速度を50mm/分で測定を行った値を引張弾性率とした。
<インパネダクト100の成形方法例>
次に、図4〜図6を参照しながら、本実施形態のインパネダクト100の成形方法例について説明する。図4は分割金型の開状態、図5は閉状態を分割金型側面から示し、図6は、閉状態を2つの分割金型の当接面から分割金型12a側について示す断面図である。
まず、図4に示すように、発泡パリソンを環状ダイス11より射出し、円筒形状の発泡パリソン13を分割金型12a,12b間に押し出す。
次に、分割金型12a,12bを型締めし、図5に示すように、発泡パリソン13を分割金型12a,12bで挟み込む。これにより、発泡パリソン13を分割金型12a,12bのキャビティ10a,10bに収納させる。
次に、図5、図6に示すように、分割金型12a,12bを型締めした状態で、分割金型12a,12bに設けられた所定の孔に吹き込み針14と吹き出し針15とを貫通させ、発泡パリソン13に同時に突き刺す。吹き込み針14、吹き出し針15の先端が発泡パリソン13内に入ると、すぐに吹き込み針14から空気等の圧縮気体を発泡パリソン13の内部に吹き込み、発泡パリソン13の内部を経由して吹き出し針15から圧縮気体を吹き出し、所定のブロー圧にてブロー成形を行う。
吹き込み針14は、図1に示すインパネダクト100の供給口105の開口部に相当する位置に突き刺し、圧縮気体を発泡パリソン13の内部に吹き込むための吹き込み口を形成する。また、吹き出し針15は、図1に示すインパネダクト100の嵌め合い部102(102a〜102d)の開口部それぞれに相当する位置に突き刺し、圧縮気体を発泡パリソン13の内部から外部に吹き出すための吹き出し口を形成する。
これにより、吹き込み針14から圧縮気体を発泡パリソン13の内部に吹き込み、発泡パリソン13の内部を経由して吹き出し針15から圧縮気体を吹き出し、所定のブロー圧にてブロー成形を行うことができる。
吹き込み針14は、上述のようにインパネダクト100の供給口105の開口部から突き刺すため、図5に示すように、分割金型12bにおける分割金型12aと反対側から分割金型12b内に挿入される。
また、吹き出し針15は、上述のようにインパネダクト100の嵌め合い部102(102a〜102d)の開口部それぞれから突き刺すため、図6に示すように、分割金型12a,12bの当接面から分割金型12a,12b内に挿入される。
吹き込み針14としては、図7(a)に示すタケヤリ針を使用することが好ましい。このタケヤリ針は、針の差込方向と吹き込み/吹き出し方向が同一であり、加工が簡単であるという利点があるが、吹き出し針として使用すると、針先端穴から樹脂が入り込み、エアーの吹き出しができなくなるおそれがある。
このため、吹き出し針15としては、図7(b)に示すロケット針を使用することが好ましい。ロケット針は、吹き込み/吹き出し方向が針の差込方向と交差する方向になるよう形成されている。
ブロー圧は、レギュレータ16,背圧レギュレータ17の差圧であり、分割金型12a,12bを密閉した状態でレギュレータ16,背圧レギュレータ17をそれぞれ所定の圧力に設定し、所定のブロー圧にてブロー成形を行う。例えば、所定の圧力の圧縮気体を所定の時間だけ吹き込み針14から発泡パリソン13内に吹き込み、発泡パリソン13の内部の圧力を大気圧から所定の圧力状態に加圧する。
ブロー圧は、0.5〜3.0kg/cm2で設定し、好ましくは、0.5〜1.0kg/cm2で設定する。ブロー圧を3.0kg/cm2以上に設定すると、インパネダクト100の管本体X1の肉厚がつぶれ易くなったり、発泡倍率が低下し易くなったりしてしまう。また、ブロー圧を0.5kg/cm2以下に設定すると、レギュレータ16、背圧レギュレータ17の差圧の調整が難しくなってしまったり、インパネダクト100内の通気路の表面形状を、発泡パリソン13の内部に吹き込んだ圧縮気体の流路方向Fに沿って変形させ難くなってしまったりする。このため、ブロー圧は、0.5〜3.0kg/cm2で設定し、好ましくは、0.5〜1.0kg/cm2で設定する。
また、所定のブロー圧にてブロー成形を行う場合は、温調設備を設け、吹き込み針14から発泡パリソン13内に供給する圧縮気体を所定の温度に加熱することも可能である。これにより、発泡パリソン13の内部に供給された圧縮気体が所定の温度になるため、発泡パリソン13内に含有されている発泡剤を発泡させ易くすることができる。なお、所定の温度は、発泡剤を発泡させるのに適した温度に設定することが好ましい。
また、温調設備を設けず、吹き込み針14から発泡パリソン13内に供給する圧縮気体を室温で行うことも可能である。これにより、圧縮気体の温度を調整するための温調設備を設ける必要がないため、インパネダクト100を低コストで成形することができる。また、ブロー成形時に所定の温度に加熱すると、ブロー成形後のインパネダクト100を冷却する必要があるため、ブロー成形時に室温で行うことで、ブロー成形後のインパネダクト100の冷却時間の短縮に寄与することができる。
ブロー成形時の分割金型12a,12bの温度は、例えば、25℃程度の結露が発生しない温度に設定することが好ましい。
本実施形態では、吹き込み針14から圧縮気体を発泡パリソン13内に吹き込むと共に、分割金型12a,12bのキャビティ10a,10bから排気を行い、発泡パリソン13とキャビティ10a,10bとの間の隙間を無くし、負圧状態にさせる。これにより、分割金型12a,12b内部のキャビティ10a,10bに収納された発泡パリソン13の内外において圧力差が設定され、発泡パリソン13は、キャビティ10a,10bの壁面に押圧される。圧力差は、発泡パリソン13の内部が外部よりも高い圧力が設定される。
なお、上述した成形工程において、発泡パリソン13の内部に圧縮気体を吹き込む工程と、発泡パリソン13の外部に負圧を発生させる工程と、は同時に行う必要はなく、互いの工程を時間的にずらして行うことも可能である。
本実施形態では、図8に示すように、発泡パリソン13を分割金型12a,12bにより押圧力Zで型締めしているため、上述のように発泡パリソン13における管本体X1となる部分について所定のブロー圧によりキャビティ10a,10bに押圧すると共に、フランジ部103(103a〜103d)や橋渡し部104(104e,104f)の板状部分Y1となる部分については、厚さ方向に押圧され、分割金型12a,12bのキャビティ10a,10b間の厚みまで圧縮されることになる。
発泡パリソン13における管本体X1となる部分については、上述のように吹き込み針14から空気等の圧縮気体を発泡パリソン13の内部に吹き込み、発泡パリソン13の内部を経由して吹き出し針15から圧縮気体を吹き出し、所定のブロー圧により所定の時間だけ発泡パリソン13をキャビティ10a,10bに押圧し、管本体X1の厚さ方向のキャビティ10a,10b側から5〜8割程度の発泡パリソン13を冷却固化する。その後は、圧縮気体による冷却を行わず、分割金型12a,12bで型締めした状態で残りの溶融状態の発泡パリソン13を自然固化する。
吹き込み針14から発泡パリソン13内に冷却のために供給する圧縮気体の温度は、10℃〜30℃に設定し、室温(例えば、23℃)に設定することが好ましい。圧縮気体の温度を室温に設定することで、圧縮気体の温度を調整するための温調設備を設ける必要がないため、インパネダクト100を低コストで成形することができる。また、温調設備を設け、吹き込み針14から発泡パリソン13内に供給する圧縮気体の温度を室温よりも低くした場合は、インパネダクト100の冷却時間を短縮することができる。なお、圧縮気体の温度にもよるが、圧縮気体による冷却時間(印加時間を意味する)は、35秒以下で行うことが好ましい。これにより、インパネダクト100を構成する発泡パリソン13の材料にかかわらず、管本体X1の厚さ方向のキャビティ10a,10b側から5〜8割程度の発泡パリソン13を冷却固化し、管本体X1の内面側の発泡パリソン13を溶融状態のままにすることができる。その後は、圧縮気体による冷却を行わず、分割金型12a,12bで型締めした状態で溶融状態の残りの発泡パリソン13を自然に固化することができる。
本実施形態の成形方法では、圧縮気体による冷却を短い時間(例えば、35秒)で行い、管本体X1の厚さ方向のキャビティ10a,10b側から5〜8割程度の発泡パリソン13を冷却固化し、管本体X1の内面側の発泡パリソン13を溶融状態のままにする。その後は、圧縮気体による冷却を行わず、分割金型12a,12bで型締めした状態で溶融状態の残りの発泡パリソン13を自然に固化している。
これにより、管本体X1の外面側の発泡パリソン13の気泡の成長を抑制し、管本体X1の内面側の発泡パリソン13の気泡の成長を助長させることができる。
その結果、図9に示すように、成形後の管本体X1を厚さ方向Tにおいて二等分したときに、管本体X1の厚さ方向Tの内面側Aの気泡a1の平均気泡径α1が管本体X1の外面側Bの気泡b1の平均気泡径β1よりも1.2〜2.0倍の大きさになり(α1/β1の気泡比が1.2〜2.0)、気泡径β1が小さい気泡b1が集合した部分が管本体X1の内面側Aに形成されず、気泡径α1が大きい気泡a1が集合した部分が管本体X1の内面側Aに形成されることになる。
また、気泡a1同士が連結する部分は、気泡b1同士が連結する部分よりも肉厚が厚く形成されるため、管本体X1の内面側Aの肉厚を管本体X1の外面側Bよりも厚くすることができる。図9は、図3に示す管本体X1の一部106aを拡大した模式図であり、図10は、図3に示す管本体X1の一部106aをCCDカメラにて撮像した写真である。
また、本実施形態の成形方法では、圧縮気体による冷却を短い時間で行い、管本体X1の内面側の発泡パリソン13を溶融状態のままにし、管本体X1の内面側に膜を形成させないようにしている。このため、自然固化時に管本体X1の内面側Aで気泡が成長して大きくなった場合は破泡するため、図15に示す風船形状の気泡81を発生させないようにすることができる。また、圧縮気体による冷却を短い時間で行うことで、管本体X1の内面側に気泡が大きく膨らみ、その管本体X1の内表面に形成された気泡の形状に沿って起状が形成されることになる。その結果、成形後の管本体X1の内面側Aの表面粗さSmを1000μm以上にすることができる。また、成形後の管本体X1の外面側Bの表面粗さSmは1000μm未満となる。Smは、表面の凹凸の平均間隔であり、JIS B 0601に準拠して測定した値である。
これに対し、従来の成形方法では、圧縮気体による冷却を長い時間(例えば、55秒)で行い、管本体X1の厚さ方向の発泡パリソン13を全て冷却固化している。このため、長時間の圧縮気体による冷却により管本体X1の外面側の発泡パリソン13の気泡の成長を助長し、管本体X1の内面側の発泡パリソン13の気泡の成長を抑制することになる。
その結果、図11に示すように、成形後の管本体X1の厚さ方向Tの内面側Aの平均気泡径α1と管本体X1の外面側Bの平均気泡径β1とがほぼ同じ大きさになり(α1/β1の気泡比が1.2未満を意味する)、気泡径α1,β1がほぼ同じ大きさの気泡a2,b2が集合した部分が管本体X1の厚さ方向T全体に形成されることになる。
また、気泡a2,a2、b2,b2同士が連結する部分は肉厚が薄くなるため、管本体X1の内面側Aの肉厚も薄くなってしまう。図11は、本実施形態のインパネダクト100と比較する他のインパネダクトの管本体X1の一部を拡大した模式図であり、図12は、他のインパネダクトの管本体X1の一部をCCDカメラにて撮像した写真である。
また、管本体X1の内面側Aに膜が形成されるため、図15に示す風船形状の気泡81が発生することになる。また、圧縮気体による冷却を長い時間で行うと、管本体X1の内面側に気泡が大きく膨らまず、管本体X1の内表面に形成された気泡の形状と、管本体X1の内表面から少し内面側に形成された気泡の形状と、に沿って起状が形成されることになる。その結果、成形後の管本体X1の内面側Aの表面粗さSmが1000μm未満となる。また、成形後の管本体X1の外面側Bの表面粗さSmが1000μm未満となる。
このため、本実施形態の成形方法のように、圧縮気体による冷却を短い時間(例えば、35秒)で行い、管本体X1の厚さ方向のキャビティ10a,10b側から5〜8割程度の発泡パリソン13を冷却固化し、管本体X1の内面側の発泡パリソン13を溶融状態のままにし、その後は、圧縮気体による冷却を行わず、分割金型12a,12bで型締めした状態で溶融状態の残りの発泡パリソン13を自然に固化することが好ましい。これにより、図15に示す風船形状の気泡81が発生しないインパネダクト100を得ることができる。
本実施形態のインパネダクト100を成形する際に適用可能なポリプロピレン系樹脂としては、230℃におけるメルトテンションが30〜350mNの範囲内のポリプロピレンが好ましい。特に、ポリプロピレン系樹脂は、長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体であることが好ましく、エチレン−プロピレンブロック共重合体を添加することがさらに好ましい。
また、ポリプロピレン系樹脂にブレンドされる水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、耐衝撃性を改善すると共にインパネダクト100としての剛性を維持するために、ポリプロピレン系樹脂に対して5〜40wt%、好ましくは、15〜30wt%の範囲で添加することが好ましい。
具体的には、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体などの水素添加ポリマーを用いる。また、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン含有量が30wt%未満、好ましくは、20wt%未満であり、230℃におけるMFR(MFRは、JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)は10g/10分以下、好ましくは、5.0g/10分以下で、かつ、1.0g/10分以上である。
また、ポリプロピレン系樹脂にブレンドされるポリオレフィン系重合体としては、低密度のエチレン−α−オレフィンが好ましく、1〜20wt%の範囲で配合することが好ましい。低密度のエチレン−α−オレフィンは、密度0.91g/cm3以下のものを用いることが好ましく、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体が好適であり、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等があり、特に、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が好適である。また、上記の炭素原子数3〜20のα−オレフィンは単独で用いたり、2種以上を併用したりすることも可能である。エチレン−α−オレフィン共重合体中のエチレンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体に対して、50〜99wt%の範囲であることが好ましい。また、α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体に対して、1〜50wt%の範囲であることが好ましい。特に、メタロセン系触媒を用いて重合された直鎖状超低密度ポリエチレン又はエチレン系エラストマー、プロピレン系エラストマーを用いることが好ましい。
また、本実施形態のインパネダクト100を成形する際に適用可能な発泡剤としては、物理発泡剤、化学発泡剤及びその混合物が挙げられる。物理発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、及び、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、さらには、それらの超臨界流体を適用することができる。超臨界流体としては、二酸化炭素、窒素などを用いて作成することが好ましく、窒素であれば臨界温度−149.1℃、臨界圧力3.4MPa以上、二酸化炭素であれば臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa以上とすることで作成することができる。
<実施例>
次に、上述した実施形態を適用した具体的な一実施例について、図4〜図6、図9、図10を参照して説明する。但し、以下に説明する実施例は一例であり、以下の実施例に限定するものではない。
(実施例1)
実施例1では、図4に示す発泡パリソン13の厚みを3.0mmとして、上述した図4〜図6に示す本実施形態の成形方法において圧縮気体によるブロー圧を1.0kg/cm2とし、冷却時間(印加時間を意味する)を15秒に設定し、成形後のインパネダクト100の管本体X1の発泡倍率が2.8倍であり、平均肉厚が2.5mmであるインパネダクト100を20個成形した。
図9に示すように、成形されたインパネダクト100の管本体X1の厚さ方向Tにおいて二等分したときに、管本体X1の内面側Aの厚さ方向Tにおける平均気泡径α1と、管本体X1の外面側Bの厚さ方向Tにおける平均気泡径β1と、の気泡比(α1/β1)は、実施例1の場合は、1.55であった。
平均気泡径α1、β1は、ミクロトーム(LEICA社製 RM2145)でインパネダクト100の管本体X1を切断し、その切断した垂直断面をCCDカメラ(キーエンスVH−6300)で撮影して図10に示す写真のような画像を取得し、その取得した図10に示す管本体X1の画像を基に、上記実施形態で説明した平均気泡径α1、β1の測定方法と同じ測定方法で測定して算出した。
実施例1の場合は、平均気泡径α1は、96.1μmであり、平均気泡径β1は、62.2μmであった。このため、実施例1の気泡比(α1/β1)は、96.1μm/62.2μm≒1.55となった。
また、成形されたインパネダクト100の管本体X1の内面の表面粗さSmは、1227μmであった。
管本体X1の内面の表面粗さSmは、表面粗さ測定機(株式会社東京精密製サーフコム470A)を用いて、JIS B 0601に準拠して測定した値である。
また、実施例1のインパネダクト100は、20個のサンプル全てにおいて管本体X1の内側に風船形状の気泡が発生しなかった(風船現象無し:○)。
(実施例2)
実施例2は、上記実施例1の成形方法において、冷却時間を25秒とし、成形後のインパネダクト100の管本体X1の発泡倍率が2.8倍であるインパネダクト100を成形した。
実施例2の気泡比(α1/β1)は、89.3μm/63.8μm≒1.40であった。
また、表面粗さSmは、1187μmであった。
また、実施例2のインパネダクト100は、20個のサンプル全てにおいて管本体X1の内側に風船形状の気泡が発生しなかった(風船現象無し:○)。
(実施例3)
実施例3は、上記実施例1の成形方法において、冷却時間を35秒とし、成形後のインパネダクト100の管本体X1の発泡倍率が2.8倍であるインパネダクト100を成形した。
実施例3の気泡比(α1/β1)は、81.1μm/64.9μm≒1.25であった。
また、表面粗さSmは、1068μmであった。
また、実施例3のインパネダクト100は、20個のサンプル全てにおいて管本体X1の内側に風船形状の気泡が発生しなかった(風船現象無し:○)。
(実施例4)
実施例4は、上記実施例1の成形方法において、冷却時間を35秒とすると共に、成形条件を適宜調整し、成形後のインパネダクト100の管本体X1の発泡倍率が2.0倍であるインパネダクト100を成形した。
実施例4の気泡比(α1/β1)は、80.7μm/61.6μm≒1.31であった。
また、表面粗さSmは、1049μmであった。
また、実施例4のインパネダクト100は、20個のサンプル全てにおいて管本体X1の内側に風船形状の気泡が発生しなかった(風船現象無し:○)。
(実施例5)
実施例5は、上記実施例4の成形方法において、冷却時間を45秒とし、成形後のインパネダクト100の管本体X1の発泡倍率が2.0倍であるインパネダクト100を成形した。
実施例5の気泡比(α1/β1)は、76.5μm/61.2μm≒1.25であった。
また、表面粗さSmは、1024μmであった。
また、実施例5のインパネダクト100は、20個のサンプル全てにおいて管本体X1の内側に風船形状の気泡が発生しなかった(風船現象無し:○)。
(実施例6)
実施例6は、上記実施例1の成形方法において、冷却時間を35秒とすると共に、成形条件を適宜調整し、成形後のインパネダクト100の管本体X1の発泡倍率が3.5倍であるインパネダクト100を成形した。
実施例6の気泡比(α1/β1)は、89.6μm/68.9μm≒1.30であった。
また、表面粗さSmは、1237μmであった。
また、実施例6のインパネダクト100は、20個のサンプル全てにおいて管本体X1の内側に風船形状の気泡が発生しなかった(風船現象無し:○)。
(実施例7)
実施例7は、上記実施例6の成形方法において、冷却時間を45秒とし、成形後のインパネダクト100の管本体X1の発泡倍率が3.5倍であるインパネダクト100を成形した。
実施例7の気泡比(α1/β1)は、81.7μm/66.4μm≒1.23であった。
また、表面粗さSmは、1051μmであった。
また、実施例7のインパネダクト100は、20個のサンプル全てにおいて管本体X1の内側に風船形状の気泡が発生しなかった(風船現象無し:○)。
(実施例8)
実施例8は、上記実施例1の成形方法において、冷却時間を15秒とすると共に、成形条件を適宜調整し、成形後のインパネダクト100の管本体X1の発泡倍率が4.0倍であるインパネダクト100を成形した。
実施例8の気泡比(α1/β1)は、110.0μm/85.0μm≒1.29であった。
また、表面粗さSmは、1287μmであった。
また、実施例8のインパネダクト100は、20個のサンプル全てにおいて管本体X1の内側に風船形状の気泡が発生しなかった(風船現象無し:○)。
(比較例1)
比較例1は、上記実施例1の成形方法において、冷却時間を45秒とし、成形後のインパネダクト100の管本体X1の発泡倍率が2.8倍であるインパネダクト100を成形した。
比較例1の気泡比(α1/β1)は、72.3μm/66.3μm≒1.09であった。
また、表面粗さSmは、1027μmであった。
また、比較例1のインパネダクト100は、20個のサンプルのうち1個のサンプルにおいて管本体X1の内側に風船形状の気泡が発生した(風船現象有り:×)。
(比較例2)
比較例2は、上記実施例1の成形方法において、冷却時間を55秒とし、成形後のインパネダクト100の管本体X1の発泡倍率が2.8倍であるインパネダクト100を成形した。
比較例1の気泡比(α1/β1)は、66.1μm/76.1μm≒0.87であった。
また、表面粗さSmは、768μmであった。
また、比較例2のインパネダクト100は、20個のサンプルのうち3個のサンプルにおいて管本体X1の内側に風船形状の気泡が発生した(風船現象有り:×)。
(比較例3)
比較例3は、上記実施例4の成形方法において、冷却時間を45秒とし、成形後のインパネダクト100の管本体X1の発泡倍率が2.0倍であるインパネダクト100を成形した。
比較例3の気泡比(α1/β1)は、72.3μm/65.1μm≒1.11であった。
また、表面粗さSmは、688μmであった。
また、比較例3のインパネダクト100は、20個のサンプルのうち1個のサンプルにおいて管本体X1の内側に風船形状の気泡が発生した(風船現象有り:×)。
(比較例4)
比較例4は、上記実施例6の成形方法において、冷却時間を55秒とし、成形後のインパネダクト100の管本体X1の発泡倍率が3.5倍であるインパネダクト100を成形した。
比較例4の気泡比(α1/β1)は、71.9μm/69.8μm≒1.03であった。
また、表面粗さSmは、856μmであった。
また、比較例4のインパネダクト100は、20個のサンプルのうち2個のサンプルにおいて管本体X1の内側に風船形状の気泡が発生した(風船現象有り:×)。
実施例1〜8、比較例1〜4の試験結果を図13に示す。
図13に示す試験結果から明らかなように、成形後の管本体X1の気泡比(α1/β1)が1.2以上で、かつ、表面粗さSmが1000μm以上の場合は、管本体X1の内側に風船形状の気泡が発生しないインパネダクト100を成形できることが判明した。
また、冷却時間を35秒以下に設定することで、発泡倍率にかかわらず管本体X1の内側に風船形状の気泡が発生しないインパネダクト100を成形できることが判明した。
<本実施形態のインパネダクト100の作用・効果>
このように、本実施形態のインパネダクト100は、圧縮気体による冷却を短い時間(例えば、35秒)で行い、管本体X1の厚さ方向のキャビティ10a,10b側から5〜8割程度の発泡パリソン13を冷却固化し、管本体X1の内面側の発泡パリソン13を溶融状態のままにし、その後は、圧縮気体による冷却を行わず、分割金型12a,12bで型締めした状態で溶融状態の残りの発泡パリソン13を自然に固化して成形する。これにより、図15に示す風船形状の気泡81が発生せず、図9に示すように、管本体X1の厚さ方向Tにおいて二等分したときに、管本体X1の内面側Aの厚さ方向Tにおける平均気泡径α1が、管本体X1の外面側Bの厚さ方向Tにおける平均気泡径β1の1.2倍以上であり、管本体X1の内面の表面粗さSmが1000μm以上であるインパネダクト100を成形することができる。
(他の成形方法例)
次に、上述した実施形態としてのインパネダクト100の他の成形方法について、図14を参照して説明する。
ここで説明する他の成形方法は、上述した成形方法で円筒形状の発泡パリソン13を分割金型12a,12b間に押し出して成形するのに替えて、図14に示すように、シート状の溶融樹脂を分割金型12a,12b間に押し出して成形するものである。
他の成形方法で用いる成形装置は、図14に示すように、2台の押出装置50a,50bと、上述した成形方法例と同様の分割金型12a,12bと、を有して構成される。
押出装置50(50a,50b)は、上述した成形方法例における発泡パリソン13と同様の材質での、溶融状態の発泡樹脂による溶融樹脂シートP1,P2を、分割金型12a,12b間に所定の間隔で略平行に垂下させるように配置される。溶融樹脂シートP1,P2を押し出すTダイ28a,28bの下方には調整ローラ30a,30bが配置され、この調整ローラ30a,30bにより厚さ等の調整を行う。こうして押し出された溶融樹脂シートP1,P2を、分割金型12a,12bで挟み込んで型締めし、成形する。
2台の押出装置50(50a,50b)の構成は同様であるため、1つの押出装置50について、図14を参照して説明する。
押出装置50は、ホッパ21が付設されたシリンダ22と、シリンダ22内に設けられたスクリュー(図示せず)と、スクリューに連結された油圧モーター20と、シリンダ22と内部が連通したアキュムレータ24と、アキュムレータ24内に設けられたプランジャー26と、Tダイ28と、一対の調整ローラ30と、を有して構成される。
ホッパ21から投入された樹脂ペレットが、シリンダ22内で油圧モーター20によるスクリューの回転により溶融、混練され、溶融状態の樹脂がアキュムレータ24に移送されて一定量貯留され、プランジャー26の駆動によりTダイ28に向けて溶融樹脂を送る。こうして、Tダイ28下端の押出スリットから、溶融状態の樹脂による連続的な溶融樹脂シートが押し出され、間隔を隔てて配置された一対の調整ローラ30によって挟圧されながら下方へ向かって送り出され、分割金型12a,12bの間に垂下される。
また、Tダイ28には、押出スリットのスリット間隔を調整するためのダイボルト29が設けられる。スリット間隔の調整機構は、このダイボルト29を用いた機械式の機構に加え、公知の各種調整機構を他に備えてもよい。
こうした構成により、2つのTダイ28a,28bの押出スリットから、内部に気泡セルを有する溶融樹脂シートP1,P2が押し出され、上下方向(押出方向を意味する)に一様な厚みを有する状態に調整され、分割金型12a,12bの間に垂下される。
こうして溶融樹脂シートP1,P2が分割金型12a,12b間に配置されると、この分割金型12a,12bを水平方向に前進させ、分割金型12a,12bの外周に位置する不図示の型枠を、溶融樹脂シートP1,P2に密着させる。こうして分割金型12a,12b外周の型枠により溶融樹脂シートP1,P2を保持した後、分割金型12a,12bのキャビティ10a,10bに溶融樹脂シートP1,P2を真空吸引することで、溶融樹脂シートP1,P2それぞれをキャビティ10a,10bに沿った形状にする。
次に、分割金型12a,12bを水平方向に前進させて型締めし、上述した成形方法と同様に、吹き込み針14と吹き出し針15とを溶融樹脂シートP1,P2に突き刺し、吹き込み針14から空気等の圧縮気体を溶融樹脂シートP1,P2の内部に吹き込み、溶融樹脂シートP1,P2の内部を経由して吹き出し針15から圧縮気体を吹き出す。こうして、インパネダクト100の管本体X1となる部分の内側を冷却する。
次に、分割金型12a,12bを水平方向に後退させ、分割金型12a,12bをインパネダクト100から離型させる。
なお、一対の分割金型12a,12bの間に垂下された溶融樹脂シートP1,P2は、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生するのを防止するため、樹脂シートの厚み、押出速度、押出方向の肉厚分布などを個別に調整することが必要になる。
こうした樹脂シートの厚み、押出速度、押出方向の肉厚等の調整は、公知の各種方法を用いてよい。
以上のように、図14に示す他の成形方法例によっても、図4〜図6で説明した成形方法と同様に、本実施形態におけるインパネダクト100を好適に成形することができる。また、図14に示す他の成形方法例では、2枚の溶融樹脂シートP1,P2の材料、発泡倍率、肉厚などを異なるものとすることで、各種の条件に対応するインパネダクト100を成形することも可能である。
なお、上述した実施形態は本発明の好適な実施形態であり、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々変形して実施することが可能である。
例えば、上述した実施形態では、図1に示すインパネダクト100を例に説明したが、本実施形態のインパネダクト100は、図1に示す構成に限定せず、溶融状態の発泡樹脂を分割金型12a,12b間に配置して、分割金型12a,12bで挟み込むと共に、空気等の圧縮気体の押圧力で発泡樹脂を分割金型12a,12bに押し付けて成形されるインパネダクトであれば、任意の形状で構成することが可能である。