JP6011021B2 - 電子写真感光体、画像形成装置およびプロセスカートリッジ - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1では、「支持体と感光層の間に下引き層を設け、下引き層は水溶性もしくはアルコール可溶性樹脂、導電性ポリマー、電解質系の添加物、及び無機顔料からなり、該下引き層は20℃90%RHの雰囲気に20hr置かれた時の含水分量が下引き層1g当たり0.02g以下であることを特徴とする電子写真感光体」が提案されている。
請求項1に係る発明は、
導電性支持体と、
前記導電性支持体上に設けられた下引層であって、結着樹脂、金属酸化物粒子、前記金属酸化物粒子100質量部に対する含有量が1質量部以上5質量部以下のアントラキノン構造を有する電子受容性化合物、及びイソシアネート化合物を含む組成物の硬化膜で構成され、且つ示差熱/熱重量同時測定(TG/DTA測定)における0℃から230℃までの重量変化量が0.27質量%以上0.8質量%以下である下引層と、
前記下引層上に設けられた感光層と、
を有する電子写真感光体。
前記電子受容性化合物が、ヒドロキシアントラキノン構造を有する電子受容性化合物である請求項1に記載の電子写真感光体。
請求項1又は2に記載の電子写真感光体を少なくとも備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
請求項1又は2に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電された前記電子写真感光体の表面を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
現像剤を収容し、前記現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、
を少なくとも備えた画像形成装置。
請求項2に係る発明によれば、電子受容性化合物がヒドロキシアントラキノン構造を有する電子受容性化合物でない場合に比べて、残留電位の上昇が抑制された電子写真感光体を提供できる。
本実施形態に係る電子写真感光体は、導電性支持体と、導電性支持体上に設けられた下引層と、下引層上に設けられた感光層と、を有する。
下引層は、結着樹脂、金属酸化物粒子、アントラキノン構造を有する電子受容性化合物、及びイソシアネート化合物を含む組成物であって、電子受容性化合物が金属酸化物粒子100質量部に対して1質量部以上5質量部以下で含む組成物の硬化膜で構成されている。
そして、このような組成物の硬化膜で構成された下引層において、示差熱/熱重量同時測定(TG/DTA測定)における0℃から230℃までの重量変化量が0.05質量%以上0.8質量%以下である。
そして、このような電子写真感光体の下引層の構成において、金属酸化物粒子と共に、アントラキノン構造を有する電子受容性化合物を金属酸化物粒子100質量部に対し1質量部以上5質量部以下と多量に含有させると、例えば、電子写真感光体の下引層において、アミノ基を有するカップリング剤と導電性支持体の酸化還元反応による導電性支持体の腐食の進行が抑制され、その結果、前画像の履歴が残ることで生じる残像現象(ゴースト)の発生が抑制されると考えられる。
しかしながら、このような利点を有する下引層を持つ電子写真感光体では、残留電位が上昇することがある。
その理由は定かではないが、以下に示す理由と考えられる。
つまり、残留電位の上昇は、下引層において、金属酸化物粒子と電子受容性化合物との反応(又は配位)やイソシアネート化合物の反応が過剰に進行したり、十分反応が進行していないことにより生じると考えられる。
そして、下引層の重量変化量が上記範囲とすることは、下引層において、金属酸化物粒子と電子受容性化合物との反応(又は配位)やイソシアネート化合物の反応が適度に進行し、反応残留物(例えば未反応の電子受容性化合物や、イソシアネート化合物等)が下引層中に適度に存在した状態を意味していると考えられる。
つまり、下引層の重量変化量が上記範囲とすることにより、下引層の抵抗値が適切な範囲となり、経時で抵抗値が変動し難い状態となると考えられる。
また、作用機構は明らかではないが、電子受容性化合物としてヒドロキシアントラキノン構造を有する材料を用いることで、より残留電位の上昇が抑制されると考えられる。
そして、本実施形態に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置(プロセスカートリッジ)でばm電子写真感光体の残留電位の上昇に起因する画像欠陥(例えば画像濃度の経時変化等)が抑制された画像が得られる。
具体的には、下引層の重量変化量は、示差熱/熱重量同時測定装置を用い、標準試料:アルミナ、昇温条件:10℃/minで測定して、下引層の重量変化量を求める。
例えば、電子写真感光体から、カッター等により、目的とする重さの下引層を採取し、これを下引層試料とする。
特に、金属酸化物粒子と電子受容性化合物との反応(又は配位)は、空気中の水分に阻害され易いことから、加熱乾燥湿度を低減(例えば湿度50RH%以下)した環境下で、加熱乾燥温度、加熱乾燥時間を調整して、下引層を形成することで、下引層の重量変化量が上記範囲に制御し易く、好適である。
なお、本明細書において、絶縁性とは、体積抵抗率で1012Ωcm以上の範囲を意味する。一方、導電性とは、体積抵抗率で1010Ωcm以下の範囲を意味する。
以下、感光体1の各要素について説明する。
導電性支持体2としては、従来から使用されているものであれば、如何なるものを使用してもよい。例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類、及びアルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、ITO等の薄膜を設けたプラスチックフィルム等、導電性付与剤を塗布又は含浸させた紙、プラスチックフィルム等が挙げられる。
導電性支持体2の形状はドラム状に限られず、シート状、プレート状としてもよい。
下引層4は、少なくとも、結着樹脂、金属酸化物粒子、アントラキノン構造を有する電子受容性化合物、及びイソシアネート化合物を含む組成物であって、電子受容性化合物が金属酸化物粒子100質量部に対して1質量部以上5質量部以下で含む組成物の硬化膜で構成されている。
つまり、下引層4としては、例えば、結着樹脂及イソシアネート化合物の硬化物(架橋物)中に、金属酸化物粒子と目的とする量の電子受容性化合物とが分散して構成されている。
なお、下引層4は、必要に応じてその他の材料を含んでもよい。
下引層4に含まれる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの高分子化合物、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などが用いられる。
金属酸化物粒子としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化錫、酸化ジルコニウム等が挙げられ、2種以上混合して用いてもよい。
金属酸化物粒子の体積平均粒径としては、例えば50μm以上200μm以下が挙げられ、60μm以上180μm以下であることが望ましく、70μm以上120μm以下であることが望ましい。
アミノ基を有するカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤などが挙げられる。特に、抵抗を調整することでカブリが抑制される表面処理剤として、シランカップリング剤(特にアミノ基を有するシランカップリング剤)が挙げられる。
乾式法にて表面処理を施す場合には、例えば、金属酸化物粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接表面処理剤を滴下するか、又は有機溶媒に溶解させた表面処理剤を滴下し、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させる。滴下又は噴霧は、例えば溶剤の沸点以下の温度で行われる。滴下又は噴霧の後、さらに100℃以上に加熱して焼き付けを行ってもよい。
上記表面処理量(すなわち、金属酸化物粒子に付着した表面処理剤の量)を測定する方法としては、例えば、FT−IR、ラマン分光法、XPSなどによる分子構造解析する方法が挙げられる。
電子受容性化合物は、前記の通り、アントラキノン構造を有する電子受容性化合物である。ここで、「アントラキノン構造を有する化合物」は、具体的には、アントラキノン及びアントラキノン誘導体から選択される少なくとも1種であり、さらに具体的には、下記一般式(1)で表される化合物であることがよい。
なお、一般式(1)中、m及びnがいずれも0である化合物がアントラキノンであり、一般式(1)中、m及びnの少なくとも一方が1以上4以下の整数である化合物がアントラキノン誘導体である。すなわちアントラキノン誘導体は、アントラキノンが有する水素原子の少なくとも1つが、水酸基、メチル基、メトキシメチル基、フェニル基、アミノ基等の置換基によって置換された化合物を意味する。
電子受容性化合物の具体例としては、例えば、アントラキノン、プルプリン、アリザリン、エチルアントラキノン、アミノヒドロキシアントラキノン等が挙げられる。
イソシアネート化合物は、硬化剤(架橋剤)として機能する材料であり、具体的には、イソシアネート化合物としては、特に制限はないが、ブロック化イソシアネート化合物が挙げられる。
ブロック化イソシアネート化合物としては、例えば、ポリイソシアネート化合物にブロック化剤となる活性水素を有する化合物を反応させて得られるイソシアネートが挙げられる。
具体的には、ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4‘ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
一方、ブロック化剤としては、例えば、カプロラクタム等のラクタム類、メチルエチルケトオキシムやアセトオキシム等のオキシム類、マロン酸ジエチル、アセト酢酸ジエチル等のβ-ジケトン類等が挙げられる。
なお、ブロック化イソシアネート化合物は、イソシアネート基がブロック化剤でマスクされているため、塗工液が経時でゲル化し増粘するのが抑えられ、作業性に優れる。
イソシアネート化合物の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上15質量部以下であることがよく、0.5質量部以上12質量部以下であることが望ましい。
下引層4には、表面粗さ調整のために樹脂粒子を添加してもよい。樹脂粒子としては、例えば、シリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂粒子等が挙げられる。
硬化触媒としては、一般に用いられている公知の材料が挙げられ、その中でも酸触媒、アミン系触媒、金属化合物系触媒から選択することが望ましい。なお、ブロックイソシアネート化合物を用いた場合にはアミン系触媒又は金属化合物系触媒を用いることが望ましい。金属化合物系触媒としては、例えば、酸化第一錫、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ナフテン酸亜鉛、三塩化アンチモン、カリウムオレート、ナトリウムO−フェニルフェネート、硝酸蒼鉛、塩化第二鉄、テトラ−n−ブチルチン、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、コバルト2−エチルヘキソエート、第二2−エチルヘキソエート鉄等が挙げられる。
硬化触媒の添加量は、イソシアネート化合物(硬化剤)に対して0.0001質量%以上0.1質量%以下が望ましく、0.001質量%以上0.01質量%以下がより望ましい。
下引層4の形成の際には、上記組成物の成分を溶媒に加えた塗布液(下引層形成用の塗布液)が使用される。
溶媒としては、例えば有機溶剤が挙げられ、具体的には、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤;アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状又は直鎖状エーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤;等が挙げられる。上記溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよく、特に限定されないが、上記結着樹脂を溶解する溶剤を用いることがよい。
得られる下引層4の体積抵抗率を後述の規定の範囲内とするために、適切な分散方法を選択することが望ましく、具体的には、ガラスビーズを用いたサンドミル、ボールミルなどで分散することが好適である。ガラスビーズの粒径は、用いる金属酸化物粒子や結着樹脂などの成分に応じて調節され、具体的には、0.1mm以上10mm以下の粒径が挙げられる。
そして、下引層形成用の塗布液を導電性支持体2上に塗布した後、加熱乾燥により塗布液中の溶剤を除去すると共に、硬化してした下引層を形成する。
下引層4の厚さは、10μm以上が望ましく、12μm以上がより望ましく、18μm以上40μm以下がさらに望ましい。
まず、下引層4のインピーダンスを測定する。インピーダンス測定用試料におけるアルミパイプ等の導電性支持体を陰極、金電極を陽極として、1Vp−pの交流電圧を周波数1MHzから1mHzまでの範囲で高周波側から印加し、各試料の交流インピーダンスを測定する。この測定より得られたCole−ColeプロットのグラフをRC並列の等価回路にフィッティングすることで下引層4の体積抵抗率を得る。
例えば、下引層を被覆している電荷発生層、電荷輸送層等の塗膜をアセトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール等の溶媒を用いて除去し、露出された下引層上に真空蒸着法やスパッタ法等により金電極を装着することで、体積抵抗率測定用の下引層試料とする。
その他の方法としては、例えば、金属酸化物粒子の添加量や粒径を調整したり、下引層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の分散方法を変更したりする方法が挙げられる。
金属酸化物粒子の粒径が大きくなるにつれ、下引層4の体積抵抗率は低下する傾向にある。また、金属酸化物粒子の添加量を多くするにつれ、下引層4の体積抵抗率は上昇する傾向にある。
また、下引層形成用塗布液中の金属酸化物粒子の分散性を向上させると、下引層4の体積抵抗率は上昇する傾向にある。具体的には、下引層形成用塗布液の分散処理時間を長くするにつれ、下引層4の体積抵抗率は上昇する傾向にある。
電気特性向上、画質向上、画質維持性向上、感光層接着性向上などのために、下引層4上に必要に応じて中間層(図示せず)をさらに設けてもよい。中間層に用いられる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素原子などを含有する有機金属化合物などがある。
中間層の形成は、例えば上記結着樹脂を溶媒に溶解させた塗布液を用いる。塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の公知の方法が用いられる。
中間層の厚さは例えば0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。
電荷発生層5は、例えば、電荷発生材料が結着樹脂中に分散して形成されている。
電荷発生材料としては、例えば、無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等のフタロシアニン顔料が使用され、特に、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.7゜、9.3゜、16.9゜、17.5゜、22.4゜及び28.8゜に強い回折ピークを有する無金属フタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも9.6゜、24.1゜及び27.2゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶等が使用される。その他、電荷発生材料としては、キノン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスベンゾイミダゾール顔料、アントロン顔料、キナクリドン顔料等が使用される。これらの電荷発生材料は、単独又は2種以上を混合して使用される。
電荷発生材料と結着樹脂の配合比(質量比)は、使用する材料にもよるが例えば10:1から1:10の範囲である。
電荷発生材料を結着樹脂中に分散させるために、塗布液には分散処理が施される。分散手段としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や、液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
電荷発生層5の厚さは、望ましくは0.01μm以上5μm以下の範囲に設定される。
電荷輸送層6は、例えば、電荷輸送材料を結着樹脂中に分散して形成される。
かかる電荷輸送材料としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体などの正孔輸送物質、クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質、および上記した化合物からなる基を主鎖または側鎖に有する重合体などが挙げられる。これらの電荷輸送材料は、1種または2種以上を組み合わせて使用する。
上記溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状又は直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。また、これらの溶剤は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。混合して使用される溶剤は、混合溶剤として結着樹脂を溶解するものであれば、いかなるものでもよい。
上記電荷輸送層形成用の塗布液を電荷発生層5上に塗布する方法としては、例えば、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
そして上記塗布液を電荷発生層5上に塗布した後、加熱乾燥工程により塗布液中の溶剤を除去する。電荷輸送層6の膜厚としては、例えば5μm以上50μm以下の範囲が挙げられる。
また、本実施形態の感光体1は、感光層3として機能分離型のものであるが、感光層3が単層型(電荷発生能・電荷輸送能を持つ感光層)である構成であってもよい。
次に、本実施形態に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置について説明する。
−第1実施形態−
図2は、第1実施形態の画像形成装置の基本構成を概略的に示している。
図2に示す画像形成装置200は、例えば、上記実施形態の電子写真感光体1と、電源209に接続され、電子写真感光体1を帯電させる帯電装置208(帯電手段)と、帯電装置208により帯電された電子写真感光体1を露光して静電潜像を形成する露光装置210(静電潜像形性手段)と、露光装置210により形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像装置211(現像手段)と、電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像を被転写媒体500に転写する転写装置212(転写手段)と、転写後、電子写真感光体1の表面に残留するトナーを除去するトナー除去装置213(トナー除去手段)と、被転写媒体500に転写されたトナー像を被転写媒体500に定着させる定着装置215(定着手段)と、を備える。
また、図3に示す画像形成装置200は、電子写真感光体表面のトナー像が転写された後、電子写真感光体表面に残留した電荷を除去する除電手段を備えない、イレーズレス方式の画像形成装置である。
交流電圧を重畳する場合は、ピーク間電圧が400V以上1800V以下、望ましくは800V以上1600V以下、さらに望ましくは1200V以上1600V以下が望ましい。交流電圧の周波数は50Hz以上20000Hz以下、望ましくは100Hz以上5000Hz以下である。
帯電部材として帯電ローラを用いる場合、感光体1に接触する圧力としては、例えば、250mgf以上600mgf以下(2.45mN以上5.88mN以下)の範囲が挙げられる。
さらにナイロン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーン等の樹脂を塗料化し、そこに導電性カーボン、金属酸化物、イオン導電剤等の導電性付与剤を適量配合し、得られた塗料をデイッピング、スプレー、ロールコート等の手法により、積層して用いてもよい。
なお、帯電部材は、接触帯電方式の帯電部材に限られず、コロトロン、スコロトロン等の非接触帯電方式の帯電部材であってもよい。
トナーとしては、公知のトナーであれば特に限定されない。具体的には、例えば、少なくとも結着樹脂が含まれ、必要に応じて着色剤、離型剤等が含まれたトナーであってもよい。
なお、例えば感光体1の表面にトナーが残留しにくい場合など、残留トナーが問題にならない場合は、トナー除去装置213は設ける必要がない。
まず、帯電装置208が感光体1の表面を、定められた電位に帯電させる。次に、帯電された感光体1の表面を、画像信号に基づいて、露光装置210によって露光して静電潜像を形成する。
現像されたトナー像は、転写装置212の位置まで搬送され、転写装置212によって被転写媒体500に直接転写される。
以上のようにして、画像形成装置200による画像形成が行われる。
図3は第2実施形態の画像形成装置の基本構成を概略的に示している。図3に示す画像形成装置220は中間転写方式の画像形成装置であり、ハウジング400内において4つの電子写真感光体1a,1b,1c,1dが中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。例えば、感光体1aがイエロー、感光体1bがマゼンタ、感光体1cがシアン、感光体1dがブラックの色の画像をそれぞれ形成する。
また、図3に示す画像形成装置220は、電子写真感光体表面のトナー像が転写された後、電子写真感光体表面に残留した電荷を除去する除電手段を備えない、イレーズレス方式の画像形成装置である。
電子写真感光体1a,1b,1c,1dはそれぞれ一方向(紙面上は反時計回り)に回転し、その回転方向に沿って帯電ロール402a,402b,402c,402d、現像装置404a,404b,404c,404d、1次転写ロール410a,410b,410c,410d、クリーニングブレード415a,415b,415c,415dが配置されている。現像装置404a,404b,404c,404dはそれぞれトナーカートリッジ405a,405b,405c,405dに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを供給し、また、1次転写ロール410a,410b,410c,410dはそれぞれ中間転写ベルト409を介して電子写真感光体1a,1b,1c,1dに接している。
また上記実施形態においては、帯電ロール402a,402b,402c,402dは、直流電圧のみを印加する方式が採用される。
図4は、本実施形態の電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジの一例の基本構成を概略的に示している。このプロセスカートリッジ300は、電子写真感光体1と共に、電子写真感光体1を帯電させる帯電装置208、露光により電子写真感光体1上に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像装置211、転写後、電子写真感光体1の表面に残留するトナーを除去するトナー除去装置213、及び露光のための開口部218を、取り付けレール216を用いて組み合わせて一体化したものである。
プロセスカートリッジ300は、電子写真感光体1、帯電装置208、現像装置211、トナー除去装置213、及び露光のための開口部218のほかに、電子写真感光体1の表面を露光する露光装置(図示せず)を備えていてもよい。
なお、本実施形態のプロセスカートリッジでは、電子写真感光体1を少なくとも備えていればよい。
<実施例1>
−下引層の形成−
酸化亜鉛粒子(テイカ社製、体積平均粒径:70nm、比表面積値:15m2/g)60質量部をテトラヒドロフラン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(表面処理剤)として、KBM603(N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製)を酸化亜鉛粒子100質量部に対し1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後、テトラヒドロフランを減圧蒸留にて除去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤で表面処理した酸化亜鉛粒子を得た。
次に、電荷発生材料として、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶15質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10質量部及びn−ブチルアルコール300質量部からなる混合物を、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散して電荷発生層形成用の塗布液を得た。この電荷発生層形成用の塗布液を下引層上に浸漬塗布し、乾燥して、厚みが0.2μmの電荷発生層を得た。
次に、4フッ化エチレン樹脂粒子(平均粒径:0.2μm)8質量部と、フッ化アルキル基含有メタクリルコポリマー(重量平均分子量:30000)0.015質量部と、テトラヒドロフラン4質量部と、トルエン1質量部と、を20℃の液温に保って48時間攪拌混合し、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液Aを得た。
下引層の作製において、電子受容性化合物を5質量部とし、酸化亜鉛微粒子の体積平均粒子径を100nmとした以外は実施例1と同様の方法で、電子写真感光体2を作製した。
但し、下引層を形成する際、加熱乾燥湿度を20RH%に変更した。
下引層の作製において、電子受容性化合物を1質量部とした以外は実施例2と同様の方法で、電子写真感光体3を作製した。
但し、下引層を形成する際、加熱乾燥湿度を40RH%、加熱乾燥時間を15分に変更した。
下引層の形成において、電子受容性化合物を5質量部とし、サンドミルによる分散時間を2時間とした以外は実施例2と同様の方法で、電子写真感光体4を作製した。
但し、下引層を形成する際、加熱乾燥温度を185℃、加熱乾燥湿度を40RH%に変更した。
下引層の作製において、電子受容性化合物をプルプリン1質量部とした以外は実施例1と同様の方法で、電子写真感光体5を作製した。
下引層の作製において、電子受容性化合物をプルプリン1質量部とした以外は実施例3と同様の方法で、電子写真感光体6を作製した。
下引層の作製において、電子受容性化合物を2質量部とし、サンドミルによる分散時間を7時間とした以外は実施例1と同様の方法で、電子写真感光体C1を作製した。
但し、下引層を形成する際、加熱乾燥温度を165℃に変更した。
下引層の作製において、電子受容性化合物を2質量部とし、サンドミルによる分散時間を3時間とした以外は実施例2と同様の方法で、電子写真感光体C2を作製した。
但し、下引層を形成する際、加熱乾燥温度を195℃、加熱乾燥湿度を10RH%、加熱乾燥時間を40分に変更した。
-測定試料の作製-
上記実施例及び比較例の感光体を作製する際に用いた下引層用塗布液をそれぞれアルミプレート上にブレード塗布法により塗布、各例の加熱乾燥条件で加熱乾燥(乾燥硬化)した。この単層膜から約7mgの試料を採取し、これをTG測定用アルミ皿に秤量し、重量減少率測定用とした。
重量変化量の測定にはSIIナノテクノロジー社製「EXSTER TG/DTA 6200」を用いた。
そして、標準物質をアルミナとし、昇温速度10℃/minで30℃から500℃まで測定し、30℃から230℃までの重量変化量(重量減少率)を測定した。実施例および比較例における重量変化量を表1に示す。
−測定試料の作製−
上記実施例及び比較例の感光体を作製する際に用いた下引層用塗布液をそれぞれアルミプレート上にブレード塗布法により塗布、各例の加熱乾燥条件で加熱乾燥(乾燥硬化)した。この下引層単層膜について、対向電極として100nmの金電極を真空蒸着法により装着し、抵抗率測定用とした。
インピーダンスの測定には電源としてSI 1287 electrochemical interface(東陽テクニカ製)、電流計としてSI 1260 inpedance/gain phase analyzer(東陽テクニカ製)、電流アンプとして1296 dielectric interface(東陽テクニカ製)を用いた。
インピーダンス測定用試料におけるアルミパイプを陰極、金電極を陽極として、1Vp−pの交流電圧を周波数1MHzから1mHzまでの範囲で高周波側から印加し、各試料の交流インピーダンスを測定し、この測定より得られたCole−ColeプロットのグラフをRC並列の等価回路にフィッティングすることで体積抵抗率を得た。実施例および比較例における体積抵抗率を表1に示す。
−残留電位評価−
上記実施例および比較例で得られた感光体の残留電位について、次の測定を行った。
常温常湿下(20℃、40RH%)において、感光体を100rpmで回転させた状態で、スコロトロン帯電器により感光体を−700Vに帯電させ、帯電の1秒後に波長780nmの半導体レーザを用いて10mJ/m2の光を照射して放電させた。続いて、放電させてから3秒後の感光体に50mJ/m2の赤色LED光を照射して徐電を行った。そして、徐電から100msec後の感光体の表面の電位Vを測定し、これを残留電位の値とした。
測定後の感光体に露光・帯電・放電・徐電を1000cycle繰り返した後、上記測定を行い、得られた残留電位と初期の残留電位の差を残留電位上昇分とした。
上記実施例および比較例で得られた感光体を、画像形成装置DocuCentre 505aの改造機組み込んだ。そして、本画像形成装置を用いて以下の評価を行った。
高温高湿(28℃、85RH%)及び低温低湿(15℃、10RH%)の環境を10枚の画像形成毎に交互に変更しながら、連続して5万枚の画像形成(A4サイズ)を行った。その後、ゴーストの評価を下記の方法に基づいて行った。
20℃、40%RHの環境下で、ゴースト評価用の画像として15mm角の四角パターンを電子写真感光体の1周分、任意の数だけ印字した後、次のサイクルで全面ハーフトーン画像を印字し、ハーフトーン画像上に浮き出たゴースト画像を以下の基準に基づいて評価した。
評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
◎: 画像内にゴーストが見られない。
○: 画像内にゴーストがわずかに見られる。
△: 画像内にゴーストが見られる。
×: 画像内にひどいゴーストが見られる。
また、本実施例では、比較例に比べ、画質の評価について良好な結果が得られたことがわかる。
Claims (4)
- 導電性支持体と、
前記導電性支持体上に設けられた下引層であって、結着樹脂、金属酸化物粒子、前記金属酸化物粒子100質量部に対する含有量が1質量部以上5質量部以下のアントラキノン構造を有する電子受容性化合物、及びイソシアネート化合物を含む組成物の硬化膜で構成され、且つ示差熱/熱重量同時測定(TG/DTA測定)における0℃から230℃までの重量変化量が0.27質量%以上0.8質量%以下である下引層と、
前記下引層上に設けられた感光層と、
を有する電子写真感光体。 - 前記電子受容性化合物が、ヒドロキシアントラキノン構造を有する電子受容性化合物である請求項1に記載の電子写真感光体。
- 請求項1又は2に記載の電子写真感光体を少なくとも備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。 - 請求項1又は2に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電された前記電子写真感光体の表面を露光して静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
現像剤を収容し、前記現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、
を少なくとも備えた画像形成装置。
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