JP6010484B2 - 感光性樹脂組成物作製キット及びその利用 - Google Patents
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Description
本願発明の感光性樹脂組成物作製キットは、少なくともA剤およびB剤の少なくとも2剤以上含んでなる感光性樹脂組成物作製キットであって、
当該A剤は(A)感光性基を有する化合物、及び(C)オキシムエステル系光重合開始剤を含有し、A剤中の水分量が5000ppm以下であり当該B剤は(B)カルボキシル基と反応する反応性基を有する化合物を含有していることを特徴とする感光性樹脂組成物作製キットであればよい。
本願発明における(A)感光性基を有する化合物とは、ラジカル重合開始剤により重合反応が進行するラジカル重合性基を分子内に含有する化合物である。
本願発明で用いられる(B)カルボキシル基と反応する反応性基を有する化合物とは、分子内に少なくとも1つのカルボキシル基と反応する反応性基を有する化合物であれば特に限定されない。ここで、カルボキシル基と反応する反応性基は、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基等が挙げられ、モノマー、オリゴマー、ポリマーの何れを用いることができる。また、(B)カルボキシル基と反応する反応性基を有する化合物は、上記(A)感光性基を有する化合物を含有するA剤とは別のB剤に配合されている。
本願発明における(C)オキシムエステル系光重合開始剤とは、分子内に少なくとも1つの下記一般式(1)
で示されるオキシムエステル構造を有し、UVなどのエネルギーによって活性化し、ラジカル重合性基の反応を開始・促進させる化合物である。また、上記(C)オキシムエステル系光重合開始剤は、上記(A)感光性基を有する化合物を含有するA剤に配合されている。上記構成にすることで、(a1)カルボキシル基及び感光性基を有する化合物を得る際の反応に使用した有機溶媒や(a2)カルボキシル基を有さず感光性基を有する化合物を溶媒として利用し、(C)成分を溶解、分散することが容易となるため、製造時の加工プロセス性、保存安定性に優れる。
本願発明におけるA剤およびB剤の少なくとも2剤以上含んでなる感光性樹脂組成物作製キットは、当該A剤に(A)感光性基を有する化合物、及び(C)オキシムエステル系光重合開始剤を含有し、A剤中の水分量が5000ppm以下である。より好ましくは、3000ppm以下であり、特に、1000ppm以下にすることが好ましい。水分量を5000ppm以下にすることで、((C)オキシムエステル系光重合開始剤の加水分解が抑制され、長期保存安定性に優れる。
本願発明の感光性樹脂組成物には、さらに必要に応じてバインダー樹脂、難燃剤、充填剤、接着助剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤、重合禁止剤等の各種添加剤を加えることができる。
本願発明におけるA剤は、例えば上記(A)感光性基を有する化合物、(C)オキシムエステル系光重合開始剤、必要に応じてその他成分及び有機溶媒を粉砕および分散させて混合し、得られることができる。粉砕および分散させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えばビーズミル、ボールミル、3本ロール等の一般的な混練装置を用いて行われる方法が挙げられる。
本願発明の感光性樹脂組成物作製キットは、少なくともA剤と、A剤とは別の組成物であるB剤とから構成されており、A剤とB剤を混合することにより得られる感光性樹脂組成物を直接用い、以下のようにして硬化膜又はレリーフパターンを形成することができる。また当該感光性樹脂組成物を有機溶媒で希釈した感光性樹脂組成物溶液を調製した後に、以下のようにして硬化膜又はレリーフパターンを形成することもできる。
<バインダー樹脂の合成>
攪拌機、温度計、滴下漏斗、および窒素導入管を備えた反応容器に、重合用溶媒としてメチルトリグライム(=1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン)100.0gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温した。これに、室温で予め混合しておいた、メタクリル酸14.0g、アクリル酸エチル38.0g、メタクリル酸メチル38.0g、スチレン10.0g、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.4gを80℃に保温した状態で3時間かけて滴下漏斗から滴下した。滴下終了後、反応溶液を攪拌しながら90℃まで昇温し、反応溶液の温度を90℃に保ちながら更に2時間攪拌し、バインダー樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は50%、重量平均分子量は71,000、固形分の酸価は90mgKOH/gであった。尚、固形分濃度、重量平均分子量、酸価は下記の方法で測定した。
JIS K 5601−1−2に従って測定を行った。尚、乾燥条件は170℃×1時間の条件を選択した。
重量平均分子量の測定は、下記条件で実施した。
使用装置:東ソーHLC−8220GPC相当品
カラム :東ソー TSK gel Super AWM−H(6.0mmI.D.×15cm)×2本
ガードカラム:東ソー TSK guard column Super AW−H
溶離液:30mM LiBr+20mM H3PO4 in DMF
流速:0.6mL/min
カラム温度:40℃
検出条件:RI:ポラリティ(+)、レスポンス(0.5sec)
試料濃度:約5mg/mL
標準品:PEG(ポリエチレングリコール)。
JIS K 5601−2−1に従って測定を行った。
(A)感光性基を有する化合物、(B)カルボキシル基と反応する反応性基を有する化合物、(C)オキシムエステル系光重合開始剤、その他の成分、及び有機溶媒である1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタンを添加してA剤、B剤からなる感光性樹脂組成物を作製した。それぞれの構成原料の樹脂固形分での配合量及び原料の種類を表1に記載する。この際、A剤、B剤のそれぞれは、3本ロールで2パスすることにより、混合、分散を行った。また、実施例1〜3は分散後、すぐに梱包したのに対し、実施例4では2日間、実施例5では4日間、25℃、50RHの環境下に放置してから梱包した。A剤とB剤の混合物を得るための混合比は表の配合通りの比率であり、例えば、実施例1では、A剤(樹脂固形分換算)91gとB剤(樹脂固形分換算)20gとを混合した。また、A剤の水分量測定は、カールフィッシャー水分計(三菱化学製CA−100、VA−100)を使用して測定した。
<2>カルボキシル基及び感光性基含有樹脂(日本化薬株式会社製酸変性エポキシアクリレートの製品名)
<3>BASFジャパン社製オキシムエステル系光重合開始剤の製品名
<4>日立化成工業社製ビスフェノールA型ジメタクリレートの商品名
<5>大塚化学株式会社製ホスファゼン化合物(リン系難燃剤)の製品名
<6>三菱化学製液状エポキシ樹脂の製品名。
上記、A剤、B剤からなる感光性樹脂組成物を混合し、ベーカー式アプリケーターを用いて、25μmのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製:商品名アピカル25NPI)に最終乾燥厚みが20μmになるように100mm×100mmの面積に流延・塗布し、80℃で20分乾燥した。必要に応じてネガ型フォトマスクを置いた後、300mJ/cm2の積算露光量の紫外線を照射して露光した。次いで、1.0重量%の炭酸ナトリウム水溶液を30℃に加熱した溶液を用いて、1.0kgf/mm2の吐出圧で60秒スプレー現像を行った。現像後、純水で十分洗浄した後、150℃のオーブン中で60分加熱硬化させてポリイミドフィルム上に感光性樹脂組成物の硬化膜を作製した。
感光性樹脂組成物を用いて、上記方法により塗膜を作製し、以下の項目につき評価を行った。評価結果を表2に記載する。
上記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>の項目と同様の方法で、25μm厚みのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製:アピカル25NPI)表面に20μm厚みの感光性樹脂組成物の硬化膜積層フィルムを作製した。露光の際、21段ステップタブレットフォトマスク(Stouffer社製T2115)を用いた。この硬化膜のステップタブレット段数を基準値とした。
この21段ステップタブレットフォトマスクは、光透過率が0〜100%の範囲で段階的に異なる1段から21段の領域に分かれている。これを感光性樹脂組成物上にかぶせて露光を行い、どの段数まで硬化するかを調べることによって、感光性樹脂組成物の感光性を評価することができる。
本実施例においては、40℃で保管する前のA剤およびB剤を混合して得られた感光性樹脂組成物を評価して得られたステップタブレット段数を基準値とした。
さらに、混合前のA剤、B剤を40℃で保管し、各経過日数後に同様の評価を行った。その後、以下の基準に基づき判定を行った。
◎300日経過後、ステップタブレット段数が基準値に対し±1の範囲にある。
○50日経過後、ステップタブレット段数が基準値に対し±1の範囲にある。
△10日経過後、ステップタブレット段数が基準値に対し±1の範囲にある。
×10日経過後、ステップタブレット段数が基準値に対し±1の範囲にない。
プラスチック材料の燃焼性試験規格UL94VTM法に従い、以下のように燃焼性試験を行った。上記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>の項目と同様の方法で、25μm厚みのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製:商品名アピカル12.5NPI)両面に20μm厚みの感光性樹脂組成物硬化膜積層フィルムを作製した。上記作製したサンプルを寸法:50mm幅×200mm長さ×75μm 厚み(ポリイミドフィルムの厚みを含む)に切り出し、125mmの部分に標線を入れ、直径約13mmの筒状に丸め、標線よりも上の重ね合わせ部分(75mmの箇所)、及び、上部に隙間がないようにPIテープを貼り、難燃性試験用の筒を20本用意した。そのうち10本は(1)23℃/50%相対湿度/48時間で処理し、残りの10本は(2)70℃で168時間処理後無水塩化カルシウム入りデシケーターで4時間以上冷却した。これらのサンプルの上部をクランプで止めて垂直に固定し、サンプル下部にバーナーの炎を3秒間近づけて着火する。3秒間経過したらバーナーの炎を遠ざけて、サンプルの炎や燃焼が何秒後に消えるか測定する。
○:各条件((1)、(2))につき、サンプルからバーナーの炎を遠ざけてから平均(10本の平均)で10秒以内、最高で10秒以内に炎や燃焼が停止し自己消火し、かつ、評線まで燃焼が達していないもの。
×:サンプルの1本でも、10秒以内に消火しないものや、炎が評線以上のところまで上昇して燃焼するもの。
上記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>の項目と同様の方法で、75μm厚みのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製アピカル75NPI)表面に20μm厚みの感光性樹脂組成物の硬化膜積層フィルムを作製した。
上記塗工膜を260℃で完全に溶解してある半田浴に感光性樹脂組成物の硬化膜が塗工してある面が接する様に浮かべて10秒後に引き上げた。その操作を3回行い、フィルム表面の状態を観察した。
○:塗膜に異常がない。
×:塗膜に膨れや剥がれなどの異常が発生する。
上記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>の項目で得られた硬化膜の耐溶剤性の評価を行った。評価方法は25℃のメチルエチルケトン中に15分間浸漬した後風乾し、フィルム表面の状態を観察した。
○:塗膜に異常がない。
×:塗膜に膨れや剥がれなどの異常が発生する。
フレキシブル銅張積層版(電解銅箔の厚み12μm、ポリイミドフィルムは株式会社カネカ製アピカル25NPI、ポリイミド系接着剤で銅箔を接着している)上にライン幅/スペース幅=100μm/100μmの櫛形パターンを作製し、10容量%の硫酸水溶液中に1分間浸漬した後、純水で洗浄し銅箔の表面処理を行った。その後、上記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>方法と同様の方法で櫛形パターン上に20μm厚みの感光性樹脂組成物の硬化膜を作製し試験片の調整を行った。85℃、85%RHの環境試験機中で試験片の両端子部分に100Vの直流電流を印加し、絶縁抵抗値の変化やマイグレーションの発生などを観察した。
○:試験開始後、1000時間で10の8乗以上の抵抗値を示し、マイグレーション、デンドライトなどの発生が無いもの。
×:試験開始後、1000時間でマイグレーション、デンドライトなどの発生があるもの。
実施例同様、A剤、B剤からなる感光性樹脂組成物を作製した。また、分散後、比較例1では6日間、比較例2では8日間、25℃、50RHの環境下に放置してから梱包した。それぞれの構成原料の樹脂固形分での配合量及び原料の種類を表1に記載する。得られた感光性樹脂組成物を用いて、実施例と同様の方法で評価を行った。評価結果を表2に記載する。
攪拌機、温度計、滴下漏斗、および空気導入管を備えた反応容器に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量217)217.0g、重合禁止剤としてハイドロキノン0.2g、触媒としてトリフェニルホスフィン1.0g、重合用溶媒としてカルビトールアセテート204.8gを仕込み、空気気流下で攪拌しながら80℃まで昇温した。次いで、アクリル酸72.0gを徐々に加えながら85〜105℃に保温した状態で、攪拌しながら16時間反応させた。更に、テトラヒドロフタル酸無水物91.2gを付加反応させて(A)感光性基を有する化合物溶液を得た。得られた(A)感光性基を有する化合物溶液の固形分濃度は65%、固形分の酸価は65mgKOH/gであった。尚、固形分濃度、酸価は合成例と同様の方法で測定した。
A剤は、上記で得られた(A)感光性基を有する化合物溶液100.0g、(a2)成分としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10.0g、消泡剤(共栄社化学株式会社製の製品名フローレンAC−300)1.0g、硫酸バリウム80.0g、及びフタロシアニングリーン0.5gを配合して調製された。またB剤は、(B)成分としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製の製品名EOCN1020)20.0g、及びビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製の製品名jER828)10.0g、(C)成分として(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オン(BASFジャパン株式会社製、オキシムエステル系光重合開始剤の製品名CGI−325)5.0g、ジエチルチオキサントン(日本化薬株式会社製の製品名KAYACURE DETX−S)1.0g、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル(日本化薬株式会社製の製品名KAYACURE EPA)2.5gを配合して調製された。A剤およびB剤を混合し、感光性樹脂組成物を作製した。上記配合のA剤191.5gとB剤38.5gを混合し、得られた感光性樹脂組成物を用いて、実施例と同様の方法で評価を行った。評価結果を表2に記載する。
Claims (13)
- A剤およびB剤の少なくとも2剤以上含んでなる感光性樹脂組成物作製キットであって、
当該A剤は(A)感光性基を有する化合物、及び(C)オキシムエステル系光重合開始剤を含有し、A剤中の水分量が5000ppm以下であり、
当該B剤は(B)カルボキシル基と反応する反応性基を有する化合物を含有していることを特徴とする感光性樹脂組成物作製キット。 - 前記(B)カルボキシル基と反応する反応性基を有する化合物が、(b1)エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物作製キット。
- 前記(A)感光性基を有する化合物が、(a1)カルボキシル基及び感光性基を有する化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物作製キット。
- 前記(A)感光性基を有する化合物が、(a2)カルボキシル基を有さず感光性基を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜3に記載の感光性樹脂組成物作製キット。
- さらに、B剤に(a2)カルボキシル基を有さず感光性基を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1〜4に記載の感光性樹脂組成物作製キット。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物作製キットを用いて製造する感光性樹脂組成物の製造方法であって、
前記A剤およびB剤の少なくとも2剤を混合してなることを特徴とする感光性樹脂組成物の製造方法。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物作製キットを用いて製造する樹脂フィルムの製造方法であって、
前記A剤およびB剤の少なくとも2剤の混合物を基材表面に塗布した後、当該混合物を乾燥することを特徴とする樹脂フィルムの製造方法。 - 請求項7に記載の樹脂フィルムの製造方法で得られる樹脂フィルムを硬化させることを特徴とする絶縁膜の製造方法。
- 請求項8に記載の絶縁膜の製造方法で得られる絶縁膜をプリント配線板に被覆することを特徴とする絶縁膜付きプリント配線板の製造方法。
- 少なくとも(A)感光性基を有する化合物(A)感光性基を有する化合物、(C)オキシムエステル系光重合開始剤、(B)カルボキシル基と反応する反応性基を有する化合物からなる感光性樹脂組成物を構成する化合物の保存方法であって、
(A)感光性基を有する化合物、(C)オキシムエステル系光重合開始剤を含有し、A剤中の水分量が5000ppm以下であるA剤と、
(B)カルボキシル基と反応する反応性基を有する化合物を含有するB剤との2剤以上を調製し、
少なくともA剤とB剤とを別個に保管することを特徴とする保存方法。 - 前記(B)カルボキシル基と反応する反応性基を有する化合物が、(b1)エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項10に記載の保存方法。
- 前記(A)感光性基を有する化合物が、(a1)カルボキシル基及び感光性基を有する化合物であることを特徴とする請求項10または11に記載の保存方法。
- 前記(A)感光性基を有する化合物が、(a2)カルボキシル基を有さず感光性基を有する化合物であることを特徴とする請求項10〜12に記載の保存方法。
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