以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
[実施形態]
<媒体取扱装置の構成>
本実施形態に係る媒体取扱装置1は、装置の内部に収納されたロール紙の先端部分を切断し、切断したロール紙の先端部分(以下、「カット媒体」と称する)を装置の外部に放出する装置である。「ロール紙」は、ロール状に巻回された長尺な帯状の紙媒体である。ロール紙は、一般に、その中心部分に円環状の紙管を備えており、その周囲に帯状の紙媒体が巻回されている。
本実施形態では、媒体取扱装置1は、装置の内部に、ロール紙を収納するロール紙収納部が設けられている。そして、媒体取扱装置1は、ロール紙を回転自在に軸支するロール軸支部がロール紙収納部の内部に設けられているとともに、ロール軸支部を回転駆動させる回転駆動源がロール軸支部の周囲に設けられている構成になっている。
さらに、媒体取扱装置1は、ロール紙の繰り出し動作(特に、その初期動作)が軽快に行えるように、ロール紙収納部の内部でロール紙を予め弛(たる)ませておき、ロール紙の繰り出し時に、回転駆動源とは別の駆動源であって、かつ、回転駆動源の停止時の制動トルクよりも低い駆動トルクで駆動する駆動源(以下、「搬送駆動源」と称する)によって、ロール紙を搬送する搬送部(以下、「ロール紙搬送部」と称する)を駆動させて、ロール紙の先端部分を下流側の機構に繰り出す構成になっている。
すなわち、媒体取扱装置1は、ロール軸支部によって軸支されたロール紙の最外周部分をロール部分(紙媒体がロール状に巻回された部分)から垂れ下がらせた状態に予めしておき、ロール紙の繰り出し時に、前記した搬送駆動源によって駆動されるロール紙搬送部で、ロール紙の先端部分を下流側の機構に繰り出す構成になっている。
なお、搬送駆動源の駆動トルクを回転駆動源の駆動トルクよりも低く設定する理由は、(1)搬送駆動源によって駆動される搬送部が強い搬送力でロール紙をロール紙収納部から引き出すことによるロール紙の伸びや破断を防止するとともに、(2)高出力の搬送駆動源を導入することによる装置の大型化を抑制するため、である。
以下、図1〜図3を参照して、本実施形態に係る媒体取扱装置1の構成につき説明する。なお、以下の説明では、「上流」及び「下流」は、媒体の搬送方向を基準にしている。図1〜図3は、それぞれ、実施形態に係る媒体取扱装置の構成を示す図である。図1は、本実施形態に係る媒体取扱装置1の内部の概略構成を示している。図2及び図3は、媒体取扱装置1の内部に設けられたロール紙収納部12の構成を示している。
ここでは、媒体取扱装置1が交通機関で使用される発券機として構成されている場合を想定して説明する。発券機1は、乗車券や入場券、定期券、座席指定券、各種の予約券等の券類を発行(発券)する装置である。以下、本実施形態に係る媒体取扱装置1を「発券機1」と称する場合がある。ただし、媒体取扱装置1は、交通機関で使用される発券機に限らず、装置の内部にロール紙を収納する様々なタイプの装置として構成されていてもよい。
図1に示すように、本実施形態に係る媒体取扱装置としての発券機1は、発券部3を装置の内部に有している。発券部3は、券類を発行する機構である。その発券部3は、ロール紙セット機構10、ロール紙印字部15、磁気部16、定期券ホッパ部17、定期券印字部18、及び、エスカッション部20を有している。
ロール紙セット機構10は、ロール紙101がセット(装着)される機構である。ロール紙セット機構10は、内部に、ロール紙101が収納されるロール紙収納部12が設けられており、さらに、そのロール紙収納部12の内部の中央付近に、ロールボス41が設けられている。ロールボス41は、ロール紙101の中心部分に設けられた円環状の紙管が取り付けられることによって、ロール紙101を回転自在に軸支するロール軸支部として機能する構成要素である。
ロール紙印字部15は、所定の印字情報をロール紙101の先端部分の印字面に印字するとともに、その先端部分をカット媒体として所定の長さにカット(切断)する構成要素である。ロール紙印字部15は、印字情報を印字するための印字ヘッド15aと、ロール紙101の先端部分をカット(切断)するための切断部15bとを備えている。
印字ヘッド15aは、ロール紙101の先端部分の印字面107(図3参照)として形成された内周面と対向する位置に設けられている。なお、ロール紙印字部15は、プラテン15cが、搬送路13を介して印字ヘッド15aと対向する位置に設けられている。プラテン15cは、高品位な印字が行えるように、印字時に媒体(ここでは、ロール紙101)を裏面(ここでは、外周面である磁気面106(図3参照))から支持する支持部材である。ロール紙印字部15は、印字時に、ロール紙101の裏面(ここでは、外周面である磁気面106)をプラテン15cで支持しながら、印字ヘッド15aで印字情報をロール紙101の表面(ここでは、内周面である印字面107(図3参照))に印字する。
切断部15bは、搬送路13を上下に跨いで設けられている。なお、図1に示す例では、2つの切断部15bが、印字ヘッド15aの上流側と下流側とに設けられている。2つの切断部15bが設けられている理由は、発行する券類の種類に応じて、券類のサイズが異なるように、2つの切断部15bを使い分けるためである。
ロール紙印字部15は、発行する券類の種類に応じて、以下の(1)の動作及び(2)の動作のいずれか一方の動作を選択的に切り替えて行うことができる。
(1)上流側の切断部15bでロール紙101の先端部分をカット媒体として切断し、印字ヘッド15aで印字情報をカット媒体の印字面107に印字し、その後に、磁気ヘッド16aで磁気情報をカット媒体の磁気面106に書き込む動作。
(2)印字ヘッド15aで印字情報をロール紙101の先端部分の印字面107に印字し、下流側の切断部15b(又は上流側の切断部15b)でロール紙101の先端部分をカット媒体として切断し、その後に、磁気ヘッド16aで磁気情報をカット媒体の磁気面106に書き込む動作。
磁気部16は、所定の磁気情報をカット媒体(切断したロール紙101の先端部分)や定期券用の発券媒体の磁気面に書き込んだり、磁気面から磁気情報を読み出したりする構成要素である。磁気部16は、磁気情報を書き込んだり読み出したりするための磁気ヘッド16aを備えている。磁気ヘッド16aは、カット媒体の磁気面106(図3参照)として形成された外周面と対向する位置に設けられている。
定期券ホッパ部17は、定期券用の発券媒体が収納される構成要素である。
定期券印字部18は、発行する定期券に関する印字情報を定期券用の発券媒体の印字面に印字する構成要素である。
エスカッション部20は、券類の挿入放出口である。
発券機1は、ロール紙101の先端部分が搬送される搬送路13と定期券用の発券媒体が搬送される搬送路19とを備えている。
搬送路13は、ロール紙収納部12からエスカッション部20に亘って設けられており、その経路上に、ロール紙印字部15、及び、磁気部16が配置されている。
一方、搬送路19は、ロール紙印字部15と磁気部16との間の位置で搬送路13と合流するように、定期券ホッパ部17からエスカッション部20に亘って設けられており、その経路上に、定期券印字部18、及び、磁気部16が配置されている。
発券機1は、回転駆動源M1が、ロールボス41の周囲に設けられている。回転駆動源M1は、ロールボス41を回転駆動させる駆動源である。回転駆動源M1は、駆動トルク及び停止時の制動トルクが後記する搬送駆動源M2の駆動トルクよりも高い駆動源によって構成されている。回転駆動源M1は、ロールボス41を回転駆動させて、ロール紙101の先端部分をロール紙収納部12から下流側の機構に繰り出したり、又は、ロール紙101の先端部分を下流側の機構からロール紙収納部12に引き戻したりする。
発券機1は、ロール紙搬送部14が、搬送路13に沿って、設けられている。ロール紙搬送部14は、ロール紙収納部12に収納されたロール紙101の先端部分を保持して下流側に搬送する機構である。ロール紙搬送部14は、搬送駆動源M2によって、駆動されている。搬送駆動源M2は、回転駆動源M1の停止時の制動トルクよりも低い駆動トルクで駆動する駆動源である。なお、発券機1は、定期券用の発券媒体を搬送するための図示せぬ搬送機構が、搬送路19に沿って設けられている。
券類を購入しようとする顧客は、例えば、乗車券や入場券等の券類を購入する取引を行う場合に、図示せぬ顧客操作部を操作して、取引の実行を発券機1に指示する。この場合に、発券機1は、ロール紙セット機構10にセットされたロール紙101を用いて券類を発行(発券)する。
その際に、発券機1は、ロール紙セット機構10にセットされたロール紙101の先端部分を下流側の機構に繰り出し、繰り出されたロール紙101の先端部分に対して、所定の処理を行う。この場合の「所定の処理」としては、例えば、乗車券や入場券等の発券媒体としての印字情報を印字面に印字する処理や、発券媒体としての磁気情報を磁気面に書き込む処理、ロール紙101の先端部分をカット媒体として切断する処理等がある。発券機1は、これらの所定の処理を行った後、カット媒体を発券媒体としてエスカッション部20から装置の外部に放出する。なお、エスカッション部20は、券類の挿入放出口である。
発券機1に使用されるロール紙101は、一般に、外周面が磁気面106(図3参照)として構成され、内周面が印字面107(図3参照)として構成されている。磁気面106は、磁性体が塗布された、磁気情報が書き込まれる面である。印字面107は、印字情報が印字される面である。
また、顧客は、例えば、定期券を新規に購入する取引を行う場合に、図示せぬ顧客操作部を操作して、取引の実行を発券機1に指示する。この場合に、発券機1は、定期券ホッパ部17に収納された定期券用の発券媒体を用いて定期券を発行(発券)する。
その際に、発券機1は、定期券ホッパ部17に収納された定期券用の発券媒体を下流側の機構に繰り出し、繰り出された定期券用の発券媒体に対して、所定の処理を行う。この場合の「所定の処理」としては、例えば、定期券としての印字情報を印字面に印字する処理や、定期券としての磁気情報を磁気面に書き込む処理等がある。発券機1は、これらの所定の処理を行った後、定期券用の発券媒体をエスカッション部20から装置の外部に放出する。
また、顧客は、例えば、既に購入された定期券を用いて定期券を継続して購入する取引や予め購入された回数券を用いて所望の列車の座席を指定する取引を行う場合に、図示せぬ顧客操作部を操作して、取引の実行を発券機1に指示する。そして、顧客は、定期券や回数券等の券類をエスカッション部20から発券機1の内部に挿入する。
この場合に、発券機1は、挿入された券類を装置の内部に取り込み、取り込まれた券類に対して、所定の処理を行う。この場合の「所定の処理」としては、例えば、定期券や座席指定券等の発券媒体としての印字情報を印字面に印字する処理や、定期券や座席指定券等の発券媒体としての磁気情報を磁気面に書き込む処理等がある。発券機1は、これらの所定の処理を行った後、挿入された券類をエスカッション部20から装置の外部に放出する。
図1及び図2に示すように、ロール紙収納部12は、発券機1の筐体11に対して、矢印α1の方向への引き出し及び矢印α2の方向への押し戻しを自在に行うことが可能なトレイとして構成されている。
ロール紙収納部12は、図2に示すように、下方に突出する突出部22が設けられている。その突出部22の内部には、給紙ローラ23が設けられている。給紙ローラ23は、ロール紙101の先端部分を筐体11の内部に設けられたロール紙搬送部14(図2に示す例では、搬送ローラ14a,14b)側に向けて繰り出すローラである。
ロール紙収納部12及び筐体11は、互いの間でロール紙101の先端部分を受け渡す開口部が、搬送路13の周囲に設けられている。以下、ロール紙収納部12側に設けられた開口部を「収納部側受渡口24」と称し、筐体11側に設けられた開口部を「筐体側受渡口25」と称する。収納部側受渡口24と筐体側受渡口25とは、互いに対向している。搬送路13は、ロール紙収納部12が矢印α1の方向に引き出された場合に、収納部側受渡口24と筐体側受渡口25とによって分断される。
図3は、ロール紙収納部12及びその周囲の詳細な構成を示している。図3に示すように、発券機1の筐体11(図1及び図2参照)は、その一部が筐体フレーム31として構成されている。筐体フレーム31は、ロール紙収納部12に対向する壁面32にレール33を備えている。レール33は、ロール紙収納部12の引き出し方向に沿って延在して設けられている。
ロール紙収納部12は、筐体フレーム31の壁面32に対向する側の面に、レール33に対して移動可能に係合する係合部(以下、「レール係合部44」と称する)を備えている。また、ロール紙収納部12は、内部に、ロールボス41、及び、挿入部42を備えている。ロールボス41は、前記した通り、ロール紙101を回転自在に軸支するロール軸支部として機能する構成要素である。挿入部42は、ロール紙101の先端部分が挿入されることにより、ロール紙101をロール紙搬送部14に導く部位である。また、ロール紙収納部12は、ロール紙収納部12の引き出し方向の面に、取手部43を備えている。取手部43は、ロール紙収納部12の引き出し時に、発券機1を管理する係員によって把持される部位である。
発券機1は、ロール紙101の交換時に、係員によって、ロール紙収納部12が筐体フレーム31から引き出されて、ロール紙101がロールボス41に取り付けられる。係員は、ロール紙101をロールボス41に取り付けると、ロール紙101の先端部分を挿入部42に挿入して、ロール紙収納部12を筐体フレーム31の内部に押し戻す。
これにより、挿入部42に挿入されたロール紙101の先端部分が、ロール紙搬送部14に導かれる。ロール紙搬送部14は、ロール紙101の先端部分を下流側に向けて搬送する。そして、ロール紙搬送部14は、ロール紙101の先端部分をロール紙印字部15の手前の位置で停止させて、その状態を所定のタイミングまで保持する。
この後、発券機1は、いずれかの時点で、顧客が図示せぬ顧客操作部を操作することにより、例えば、券類の発行取引の指示を受け付ける。ここでは、取引の形態がロール紙収納部12にセットされたロール紙101を用いる取引(例えば、乗車券の発行取引)である場合を想定して説明する。
すると、発券機1は、ロール紙101の先端部分をロール紙印字部15に搬送し、ロール紙印字部15で、所定の印字情報をロール紙101の先端部分の印字面107に印字して、その先端部分をカット媒体として所定の長さにカットし(又は、ロール紙101の先端部分をカット媒体として所定の長さにカットして、所定の印字情報をその印字面107に印字し)、カット媒体を磁気部16に搬送する。
そして、発券機1は、磁気部16で、所定の磁気情報を、カット媒体の磁気面106に書き込み、書き込まれた磁気情報のチェックを行う。発券機1は、チェックが正常に行われた場合に、カット媒体をエスカッション部20に搬送して、券類としてエスカッション部20から装置の外部に放出する。これにより、発券機1は、券類を発行(発券)する。
なお、発券機1は、取引の形態が定期券ホッパ部17にセットされた発券媒体を用いる取引(すなわち、定期券の発行取引)である場合に、以下のように動作する。
まず、発券機1は、発券媒体を定期券ホッパ部17から搬送路19に繰り出し、発券媒体を定期券印字部18に搬送し、定期券印字部18で、所定の印字情報を発券媒体の印字面に印字して、発券媒体を磁気部16に搬送する。
そして、発券機1は、磁気部16で、所定の磁気情報を、発券媒体の磁気面に書き込み、書き込まれた磁気情報のチェックを行う。発券機1は、チェックが正常に行われた場合に、発券媒体をエスカッション部20に搬送して、定期券としてエスカッション部20から外部に放出する。これにより、発券機1は、定期券を発行(発券)する。
図3に示すように、発券機1は、ロール紙収納部12の底面部49に、当接部60を備えている。当接部60は、ロールボス41によって軸支されたロール紙101のロール部分102(図6参照)から垂れ下がった最外周部分(弛み部分)103(図6参照)の外周面(磁気面106)と部分的に当接して、ロール紙101の最外周部分103をロール紙収納部12の底面部49から離間させる構成要素である。
当接部60は、ロール紙101の最外周部分103の外周面(磁気面106)と部分的に当接することによって、ロール紙101の最外周部分103の外周面(磁気面106)がロール紙収納部12の底面部49に当接することを防止する。
そのため、発券機1は、塵や埃等の汚れがロール紙収納部12の底面部49からロール紙101の最外周部分103の外周面(磁気面106)(特に、その外周面に設定される磁気情報の書込領域)に付着することを抑制して、磁気情報の書き込みエラーや読み取りエラー等の障害の発生を抑制することができる。
図4A及び図4Bに、当接部60の構成を示す。図4A及び図4Bは、それぞれ、実施形態に係る当接部60の構成を示す図である。図4Aは、当接部60を含む、図3に示すA部分の構成を拡大して示している。図4Aは、斜め方向から見た当接部60の構成を示しており、図4Bは、図4Aの右方向から見た当接部60の構成を示している。
ここでは、当接部60は、ロール紙収納部12の底面部49とは別体の、板状部材によって構成されている場合を想定して説明する。しかしながら、当接部60は、ロール紙収納部12の底面部49と一体に成型された構成要素とすることも可能である。
本実施形態では、当接部60は、長尺な板状部材によって構成されている。当接部60を構成する材料としては、後記する汚れ109(図7B参照)の基となる塵や埃等の静電気による付着が発生し難くなるように、合成樹脂材よりも、帯電性の低い金属材(例えば、SPCC−SD鋼等)が好ましい。
当接部60は、ロール紙収納部12の底面部49に、ロール紙101の先端部分の搬送方向(以下、単に「ロール紙101の搬送方向」と称する)に沿って、複数列(図3及び図4Aに示す例では、2列)配置される。当接部60は、ロール紙101の搬送方向に沿って、固定部61及び突出部62を備えている。
固定部61は、ビス等によってロール紙収納部12の底面部49に固定される部位である。固定部61は、少なくともロール紙収納部12の底面部49に対向する側の面が、ロール紙収納部12の底面部49と密着するように、平坦面として形成されている。
突出部62は、ロール紙101のロール部分102(図6参照)から垂れ下がった最外周部分(弛み部分)103(図6参照)の外周面(磁気面106)と部分的に当接する部位である。突出部62は、その下面がロール紙収納部12の底面部49から離間するように、長手方向に沿って、山型状(略三角形状)に突出する構成になっている。
当接部60は、ロール紙101の搬送方向に沿って、ロール紙収納部12の底面部49に配置される。そのため、当接部60は、突出部62の天頂部62aがロール紙101の搬送方向に沿って延在して配置される。
当接部60は、その天頂部62aが山型状(略三角形状)の突出部62として設けられている。そのため、当接部60は、天頂部62aがロール紙101の最外周部分103(図6参照)の外周面(磁気面106)と当接する場合に、天頂部62aでロール紙101の最外周部分103をロール紙収納部12の底面部49から浮かせた状態(離間させた状態)にする。
その結果、発券機1は、塵や埃等の汚れ109がロール紙収納部12の底面部49からロール紙101の最外周部分103の外周面(磁気面106)(特に、その外周面に設定される磁気情報の書込領域である書込トラックTr)に付着することを抑制して、磁気情報の書き込みエラーや読み取りエラー等の障害の発生を低減することができる。
また、当接部60は、前記した通り、その天頂部62aが山型状(略三角形状)の突出部62として設けられている。そのため、当接部60は、天頂部62aにかかるロール紙101の最外周部分103(図6参照)の荷重を分散させることができる。
その結果、発券機1は、ロール紙101の繰り出し動作時に、ロール紙101の最外周部分103が当接部60の上を走行しても、傷(擦過傷)がロール紙101の最外周部分103に付くことを防止することができる。
なお、当接部60は、好ましくは、天頂部62aが小径の円弧状の部位(以下、「小径円弧部」と称する)として形成されているとよい。これにより、発券機1は、ロール紙101の繰り出し動作時に、傷(擦過傷)がロール紙101の最外周部分103に付くことをさらに効率よく防止することができる。
また、当接部60は、図4A及び図4Bに示す当接部60と同様の形状の型で平坦な板状部材をプレス加工して成型する場合に、大量に生産することができるため、このような手法で成型することが好ましい。
当接部60の天頂部62aは、ロール紙101の幅方向に対して、磁気ヘッド16a(図1参照)によって磁気情報が書き込まれる磁気情報の書込領域から外れた位置に配置される。
以下、図5A及び図5Bを参照して、当接部60の天頂部62aの配置位置につき説明する。図5A及び図5Bは、それぞれ、実施形態に係る当接部60の配置位置を示す図である。
図5Aは、基準面13aから2つの当接部60の天頂部62aまでの距離P1,P2を示している。ここで、「基準面13a」とは、ロール紙収納部12の底面部49の上を走行するロール紙101の片側の辺と当接して、ロール紙101の走行の基準となる面を意味している(図4B参照)。
図5Bは、当接部60の天頂部62aが配置可能な領域(以下、「天頂部配置可能領域Rp」と称する)の位置を示している。天頂部配置可能領域Rpは、隣接する書込トラックTrと書込トラックTrとの間の領域となっている。書込トラックTrは、磁気ヘッド16a(図1参照)によって磁気情報が書き込まれる磁気情報の書込領域である。図5Bに示す例では、10本の書込トラック1Tr〜10Trが示されており、これに対応して、9本の天頂部配置可能領域1Rp〜9Rpが示されている。
当接部60の天頂部62aは、図5Aに示す距離P1,P2が天頂部配置可能領域Rpの中に位置するように、ロール紙収納部12の底面部49の上に配置される。
係る構成において、発券機1は、前記した通り、ロール紙101の繰り出し動作(特に、その初期動作)が軽快に行えるように、ロール紙収納部12の内部でロール紙101を予め弛(たる)ませておき、ロール紙101の繰り出し時に、搬送駆動源M2によって、ロール紙搬送部14を駆動させて、ロール紙101の先端部分を下流側に繰り出す構成になっている。
すなわち、発券機1は、図6に示すように、ロールボス41によって軸支されたロール紙101の最外周部分103をロール部分(紙媒体がロール状に巻回された部分)102から垂れ下がらせた状態に予めしておき、ロール紙101の繰り出し時に、搬送駆動源M2によって駆動されるロール紙搬送部14(図1参照)で、ロール紙101の先端部分を下流側に繰り出す構成になっている。なお、図6は、実施形態に係る媒体取扱装置(発券機1)内でのロール紙101の状態を示す図である。
ロール紙101は、図6に示すように、その最外周部分103がロール部分102から垂れ下がった状態になる。なお、この状態は、発券機1の制御部4(図1参照)が回転駆動源M1を以下のように動作させることにより、実現される。すなわち、回転駆動源M1は、ロール紙搬送部14によるロール紙101の先端部分の搬送に際して、事前に、ロールボス41を所定の回転角だけ余分にロール紙搬送部14の方向に回転させる。ロールボス41によって軸支されているロール紙101は、その先端部分がロール紙搬送部14によって保持されている。そのため、ロール紙101は、その最外周部分103が、弛んで、ロール部分102から垂れ下がった状態になる。
発券機1は、ロール紙101の最外周部分103がロール部分102から垂れ下がった状態になると、ロール紙収納部12の底面部49に設けられた当接部60の天頂部62aがロール紙101の最外周部分103の外周面(磁気面106)と部分的に当接する。そのため、発券機1は、ロール紙101の最外周部分103をロール紙収納部12の底面部49から離間させることができる。
ここで、図7A及び図7Bを参照して、ロール紙101の最外周部分103をロール紙収納部12の底面部49から離間させることの利点につき説明する。図7A及び図7Bは、それぞれ、比較例に係る媒体取扱装置1001内でのロール紙101の状態を示す図である。
図7A及び図7Bに示す比較例に係る媒体取扱装置1001は、本実施形態に係る媒体取扱装置1から当接部60(図6参照)が排除された構成になっている。比較例に係る媒体取扱装置1001は、当接部60が排除されているため、図7Aに示すように、ロール紙101のロール部分102から垂れ下がった最外周部分103の外周面(磁気面106)が、ロール紙収納部12の底面部49と当接した状態になる。
その結果、塵や埃等の汚れ109が、ロール紙101の磁気面106に付着する場合がある。この汚れ109は、磁気情報の書込領域である磁気トラックTrに付着すると(特に、例えば、点線で囲んで示す領域のように、磁気トラックTrを横断するように付着すると)、磁気情報の書き込みエラーや読み取りエラー等の障害を発生する原因となる。
一方、本実施形態に係る発券機1は、当接部60がロール紙101の最外周部分103の外周面(磁気面106)と部分的に当接することによって、ロール紙101の最外周部分103がロール紙収納部12の底面部49に当接することを防止する。
そのため、発券機1は、塵や埃等の汚れ109がロール紙収納部12の底面部49からロール紙101の最外周部分103の外周面(磁気面106)(特に、その外周面に設定される磁気情報の書込領域である書込トラックTr)に付着することを抑制して、磁気情報の書き込みエラーや読み取りエラー等の障害の発生を低減することができる。
しかも、発券機1は、当接部60の天頂部62aが、天頂部配置可能領域Rpに配置されている。すなわち、発券機1は、当接部60の天頂部62aが、磁気情報の書込領域である磁気トラックTrからロール紙101の幅方向に外れた位置に配置されている。そのため、当接部60は、ロール紙101の幅方向に横断することなく、ロール紙101の搬送方向に沿って、ロール紙101の最外周部分103の外周面(磁気面106)と線接触する。
このような発券機1は、当接部60がロール紙101の外周面(磁気面106)の磁気情報の書込領域である磁気トラックTrに接触することを防止する。そのため、発券機1は、塵や埃等の汚れ109が当接部60からロール紙101の書込トラックTrに付着することを防止して、磁気情報の書き込みエラーや読み取りエラー等の障害の発生をより効果的に低減することができる。
なお、図7A及び図7Bに示す比較例に係る媒体取扱装置1001で発生する汚れ109に対して、例えば、図8に示す対策例を講じることができる。図8は、比較例に係る媒体取扱装置1001で発生する汚れ109に対する想定可能な対策例の説明図である。以下、図8を参照して、汚れ109に対する想定可能な対策例につき説明する。
図8(a)は、第1対策例1100の構成を示している。第1対策例1100は、ロール紙収納部12の底面部49に、貫通孔1101を、ロール紙101の搬送方向に沿って設けた構成となっている。貫通孔1101は、磁気トラックTrの位置に対応して設けられている。第1対策例1100は、貫通孔1101が磁気トラックTrの位置に対応して設けられているので、磁気トラックTrがロール紙収納部12の底面部49に当接することを防止することができるとともに、塵や埃等が貫通孔1101の壁面1101a内に入るので、塵や埃等の汚れ109が磁気トラックTrに付着することを抑制することができる。これによって、第1対策例1100は、磁気情報の書き込みエラーや読み取りエラー等の障害を低減することができる。
図8(b)は、第2対策例1200の構成を示している。第2対策例1200は、第1対策例1100と比較すると、貫通孔1101の代わりに、溝部1201がロール紙収納部12の底面部49に設けられている点で相違している。第2対策例1200は、溝部1201が磁気トラックTrの位置に対応して設けられているので、磁気トラックTrがロール紙収納部12の底面部49に当接することを防止することができるとともに、塵や埃等が溝部1201の壁面1201a内に入るので、塵や埃等の汚れ109が磁気トラックTrに付着することを抑制することができる。これによって、第2対策例1200は、磁気情報の書き込みエラーや読み取りエラー等の障害を低減することができる。
第2対策例1200は、貫通孔1101の代わりに、溝部1201が設けられているため、第1対策例1100よりもロール紙収納部12の底面部49の強度の低下が抑制されている。
図8(c)は、第3対策例1300の構成を示している。第3対策例1300は、第2対策例1200と比較すると、第2対策例1200の溝部1201がロール紙101の搬送方向に沿って設けられているのに対して、溝部1301がロール紙101の搬送方向に対して傾斜して設けられている点で相違している。第3対策例1300は、ロール紙101の走行に伴って、溝部1301の壁面1301aがロール紙101の磁気面106に付着した汚れ109に当接することによって、汚れ109をロール紙101の磁気面106から掻き落とすことができる。これによって、第3対策例1300は、磁気情報の書き込みエラーや読み取りエラー等の障害を低減することができる。
第3対策例1300は、溝部1301が傾斜して設けられているため、溝部1301の壁面1301aが汚れ109と当接し易くなっている。そのため、第3対策例1300は、第2対策例1200よりも効率よく汚れ109を掻き落とすことができる。
図8(d)は、第4対策例1400の構成を示している。第4対策例1400は、本実施形態に係る当接部60をロール紙収納部12の底面部49に設ける構成(図4A参照)と比較すると、当接部60の代わりに、当接部1460をロール紙収納部12の底面部49に設ける点で相違している。第4対策例1400に係る当接部1460は、固定部1461と突出部1462とが略L字状に直交して配置された構成になっている。
なお、固定部1461は、ビス等によってロール紙収納部12の底面部49に固定される部位である。突出部62は、ロール紙101のロール部分102から垂れ下がった最外周部分103の外周面(磁気面106)と部分的に当接する部位である。
第4対策例1400は、本実施形態に係る当接部60を設ける構成(図4A参照)と同様に、ロール紙101の最外周部分103をロール紙収納部12の底面部49から離間させるため、汚れ109のロール紙101の磁気面106への付着を抑制することができる。
以上の通り、本実施形態に係る媒体取扱装置1によれば、ロール紙がロール紙収納部の底面部に当接することにより発生する障害を低減することができる。
本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
例えば、実施形態では、当接部60は、ロール紙収納部12の底面部49とは別体の、プレス加工によって山型状の突出部62が形成された板状部材として構成されている。しかしながら、当接部60は、プレス加工等でロール紙収納部12を製造する際に、ロール紙収納部12の底面部49と一体に成型された構成要素とすることも可能である。