JP6003533B2 - 鋼材の防食方法および皮膜つき鋼材の製造方法 - Google Patents

鋼材の防食方法および皮膜つき鋼材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、船舶、橋梁、建築用鉄骨構造体、鋼製タンク、鉄塔等の鋼構造体用として好適な、鋼材の防食方法に係り、とくに、鋼材表面に高硬度でかつ非常に薄い0.05〜5μmの皮膜を形成して鋼材を防食する、鋼材の防食方法および皮膜つき鋼材に関する。
鋼材は、従来から、船舶、橋梁、建築用鉄骨構造体、鋼製タンク、鉄塔等の鋼構造体用として使用されてきたが、近年、その使用環境は多岐にわたっており、使用環境下で鋼材に腐食が発生する場合がある。鋼材に腐食が発生すると、鋼構造体の耐久性が低下するため、鋼材には様々な防食法が適用され、しかも併用して、例えば、電気防食と塗装などを、施されている場合が多い。鋼材に適用される防食方法としては、塗装やライニング等が挙げられる。近年、鋼構造物体の耐久性向上のために、防食の重要性が認識されるとともに、塗装やライニング等のための下地処理の重要性も高まっている。
また、鋼構造体を製造するに際し、素材である鋼材の輸送時や保管時における防食もまた問題となっている。というのは、鋼材の輸送は、トラックによる陸上輸送や船舶による海上輸送が主であるが、輸送時あるいは輸送のための保管時に、環境によっては腐食が発生する場合が多々あるためである。そのため、鋼材には、塗装などの最終的な防食を施す前の初期防食として、例えば、亜鉛を含んだショッププライマーを塗布したり、あるいは化成処理を施しリン酸亜鉛系化成処理層を形成することが行われている。しかしながらこのような初期防食層の形成のみでは、塗装などの最終的な防食を施す前の期間における耐食性が不十分な場合や、機械的な摩擦による傷等により初期防食層が剥離する場合などが生じている。
また、めっき等の亜鉛系初期防食層を形成すれば、鋼材の防食という効果は達成できるが、亜鉛が腐食するので初期防食層をそのまま、構造物の防食層として利用することはできない。そこで、最終的な防食のために、これらの初期防食層を除去したうえで、再度防食層を形成するなどの措置を必要とするという問題があった。
このような問題に対し、例えば特許文献1には、表面処理鋼板の防食法として、ノンクロメートタイプの表面処理を施した亜鉛系めっき鋼板の製造方法が記載されている。特許文献1に記載された技術は、亜鉛めっき鋼板上に、Zr、TiおよびHfからなる群から選ばれた少なくとも1つの金属元素を含有する処理液を用いて、自己析出および/または電解析出により、Zr、TiおよびHfからなる群から選ばれた少なくとも1つの金属元素の単位面積当たりの元素付着合計量が2〜50mg/m2である表面処理層を形成する表面処理形成工程と、該表面処理形成工程後に、有機ケイ素含有化合物を含有する水系金属表面処理剤を前記表面処理層上に塗布して、ケイ素含有層を形成するケイ素含有層形成工程とを備えた、表面処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法である。ここで、有機ケイ素含有化合物は、1分子内に、式−SiR1R2R3で表される官能基を2個以上、アミノ基、カルボキシル基、りん酸基、ホスホン基、スルホン基、ポリオキシエチレン鎖およびアミド基から選ばれた少なくとも1種の親水官能基とを含有し、前記親水官能基1個当たりの分子量が100〜10000である化合物であるとしている。これにより、優れた耐食性と優れた耐指紋性とが両立するだけでなく、優れた導電性と優れた密着性とを有する亜鉛系めっき鋼板が得られるとしている。
また、特許文献2には、予めナノスケールの凹凸を有する基材を無水溶媒中で加熱処理し、しかる後に該基材表面を、金属アルコキシド溶液により処理して薄膜を形成する表面処理方法が記載されている。これにより、ナノスケールの凹凸内部まで金属アルコキシドを充填することができ、密着性の高い薄膜とすることができるとしている。
また、特許文献3には、金属材料の接着性を改善する技術として、金属材料表面に、濃度0.2〜2.0質量%のシランカップリング剤水溶液を塗布して薄膜を形成し、酸水溶液で洗浄したのち、再び濃度0.2〜2.0質量%のシランカップリング剤水溶液を塗布して薄膜を形成し、乾燥する技術が記載されている。
また、特許文献4には、アルコキシシランを2個以上有する化合物と、有機酸、りん酸および錯弗化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有する表面処理剤を、金属材料の表面に塗布し直ちに乾燥して、表面に0.1〜3.0g/mの皮膜を形成する金属材料の表面処理方法が記載されている。これにより、上層である有機層との接着性改善に十分な効果があるとしている。
特開2010−111904号公報 特開2010−142732号公報 特開2012−041418号公報 特開2001−049453号公報
特許文献1に記載された技術では、ケイ素含有層を形成する前に自己析出および/または電解析出により、亜鉛系めっき鋼板の表面上に、チタン族元素を含む表面処理層を形成するが、多くの工程を必要とし製造コストも高いものとなり工業的には不利となる。また、めっき層を必須とするため溶接性が低下し、ほとんどが溶接構造物である鋼構造物用の鋼材として適用するのは困難である。すなわち、ブローホールなどの溶接欠陥を避けるため、溶接前に表面を研削して初期防食層を除去するのが通常であり、そのため、表面研削で容易に剥離可能な薄膜の初期防食層が求められているのに対し、めっき層はその除去が非常に困難なものであるため、溶接性を著しく低下させる。
また、特許文献2に記載された技術によれば、ナノスケールの凹凸内部まで金属アルコキシドで充填することができ、密着性の高い薄膜形成を実現できる。しかし、基材に薄膜を形成するに際し、凹凸の内部及び外表面に付着している水分を除去するために、予め、基材を無水溶媒中で加熱処理する必要があり、複雑な工程となり製造コストの高騰を招き、工業的には不利となる。さらに得られた薄膜は、一時的な防食層としては有効であるとも考えられるが、耐食性が不十分であり、鋼材の使用環境下で要望されるような優れた耐食性を確保するまでには至っていないという問題がある。
また、特許文献3に記載された技術によれば、シランカップリング処理を施すことにより、上層である有機層(塗装)との接着性は向上するが、シランカップリング処理で薄膜を形成したのち、洗浄、乾燥を行い、再度、シランカップリング処理を施し薄膜を形成し、エポキシ系接着剤で接着するという複雑な工程を必要とし、工業的には不利となる。また、特許文献3に記載された技術で形成された薄膜は、湿潤環境下で接着保持率が向上するなど、一時的な防食層として有効であるとも考えられるが、耐食性が不十分で、鋼材の使用環境下で要望される優れた耐食性を確保するまでには至っていないという問題がある。
また、特許文献4に記載された技術では、形成する皮膜は、実質的にめっき層の上層として形成することを前提としており、上記のように溶接性が低下するため、溶接構造物である鋼構造物用としては不適である。
このように、従来の技術を用いて形成した皮膜は、鋼材の使用環境下において要望されているような耐食性を保持する防食皮膜として有効であるとは考えがたい。そこで、本発明では、上記した従来技術の問題を解決し、鋼材表面に、耐食性に優れ、かつ傷がつきにくい皮膜を安価に形成し、使用環境下における耐食性に優れた鋼材とし、さらに、皮膜のうえに塗装など他の防食層を形成する場合にもその密着性が高い(上塗り性に優れた)、安価な、鋼材の防食方法を提供することを目的とする。
上記した目的を達成するため、本発明者らは、皮膜における耐食性に及ぼす各種要因について鋭意研究を重ねた。その結果、シリコン樹脂前駆体とシランカップリング剤とを複合して配合した溶液を塗布して、鋼材表面に薄膜を形成すれば、耐食性、上塗り性に優れ、かつ傷がつきにくい皮膜とすることができることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。即ち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)鋼材表面に皮膜を形成して防食する鋼材の防食方法であって、前記皮膜が、溶媒を溶媒全量に対するmass%で1〜5%の水を含むエタノールとし、該溶媒中に、分子量が500〜2000で、末端にメチル基およびシラノール基を複数有するシリコン樹脂前駆体と、シランカップリング剤とを配合した溶液を鋼板表面に塗布して形成されたものであることを特徴とした鋼材の防食方法。
(2)(1)において、前記溶液に、溶液全量に対するmass%で、前記シリコン樹脂前駆体が1〜5%、前記シランカップリング剤が0.1〜1.O%配合されてなることを特徴とする鋼材の防食方法。
(3)(1)または(2)において、前記シリコン樹脂前駆体が末端に、前記メチル基および前記シラノール基に加えてさらに、アミノ基またはエポキシ基を有することを特徴とする鋼材の防食方法。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記シランカップリング剤が、アミノ系シランまたはエポキシ系シランであることを特徴とする鋼材の防食方法。
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記溶液を塗布した後、鋼材表面を80℃以上に加熱すること特徴とする鋼材の防食方法。
(6)表面に皮膜を有する鋼材の製造方法であって、該皮膜が、(1)ないし(5)のいずれかに記載の鋼材の防食方法で形成された皮膜で、乾燥後厚さで0.05〜5μmであることを特徴とする皮膜つき鋼材の製造方法
本発明によれば、鋼材の輸送時及び保管時に十分な耐食性を有する鋼材とすることができるうえ、形成された皮膜は、その後の防食処理の下地処理として活用できるため下地処理を省略でき、安価に防食された鋼材を提供できるという、産業上格段の効果を奏する。
本発明は、鋼材表面に、溶液を塗布して、厚さ:0.05〜5μm程度の皮膜を形成する鋼材の防食方法である。
ここで、使用する鋼材については、とくに限定する必要はなく、船舶、橋梁、建築用鉄骨構造体、鋼製タンク、鉄塔等の鋼構造体用として好適な鋼材がいずれも適用できる。また、鋼材としては鋼板、鋼帯、形鋼、鋼管、鋼線等が例示できる。
また、使用する溶液は、溶媒を、mass%で、95〜99%のエタノールと、1〜5%の水を含むエタノールと水の混合溶媒とし、その溶媒に、分子量が500〜2000で、末端にメチル基およびシラノール基を複数有するシリコン樹脂前駆体と、シランカップリング剤とを配合した溶液とする。
溶媒は、エタノールを主とし、mass%で、95〜99%のエタノールと、1〜5%の水を含む。シランカップリング剤のアルコキシシリル基が反応性を有するシラノール基となるためには、水が必要であり、本発明では、1mass%以上の水を含有する溶媒を使用する。含有する水が1mass%未満ではシランカップリング剤の反応が十分でなく、形成される皮膜の耐食性が低下する。一方、5mass%を超える水が含有されると、短時間でゲル化するなどの不具合が生じ溶液の安定性が低下する。このため、溶媒は、水を1〜5mass%の範囲で含有するエタノール95〜99mass%で構成される溶媒とした。
シリコン樹脂前駆体は、分子量が小さいほど溶媒主成分(エタノール)への溶解性が高くなるが、分子量500未満では、反応性が高すぎて、溶液中での安定性が低下する、一方、分子量が2000を超えると溶解性が低下するとともに、造膜性が低下して形成される皮膜の耐食性が低下する。このため、溶液中に配合するシリコン樹脂前駆体の分子量は500〜2000に限定した。なお、好ましくは500〜1000である。
なお、使用するシリコン樹脂前駆体は、シロキサン結合を主骨格とし、分岐を持った構造を有し、末端にメチル基およびシラノール基を複数有し、末端以外のケイ素原子にはメチル基やフェニル基が結合している化合物である。そして、末端のシラノール基が他のシリコン樹脂前駆体と脱水結合したり、シランカップリング剤のアルコキシシリル基もしくはシラノール基と反応して高分子化しシリコン系樹脂となるものである。また、シラノール基を複数残しシラノール基の一部を、溶液中での安定性の面からメチル基、エポキシ基、アミノ基から選ばれた1種または2種とする。なお、シラノール基とメチル基(およびエポキシ基、あるいはアミノ基)との数の比は、3:1程度とすることが好ましい。
このようなシリコン樹脂前駆体は、合成品が入手可能である。シラノール基を有するものとしては、例えば、信越化学工業(株)製「KC89S」、「KR−500」、「X−40−9225」、「X−40−9246」、「X−40−9250」などが挙げられ。また、シラノール基とエポキシ基を有するものとしては、信越化学工業(株)製「X−41−1056」、「X−41−1053」などが挙げられる。また、シラノール基とアミノ基を有するものとして、信越化学工業(株)製「X−40−2651」などが挙げられる。
本発明では、溶媒を上記したエタノールと水の混合溶媒(エタノール:95〜99mass%、水:1〜5mass%)とし、上記したシリコン樹脂前駆体を、溶液全量に対するmass%で1〜5mass%配合することが好ましい。シリコン樹脂前駆体が1mass%未満では、溶液中のシリコン樹脂前駆体濃度が希薄となり、溶液を鋼材表面に塗布した場合に均一な皮膜が得られない。一方、5mass%を超えると、溶液中のシリコン樹脂前駆体濃度が高くなり、溶液中でゲル化が生じ、溶液の可使用時間(ポットライフ)が短くなるとともに、ゲル化(高分子化)することにより、鋼板表面との吸着点が少なくなり、耐食性が低下する。このため、溶液中のシリコン樹脂前駆体の配合量は1〜5mass%に限定することが好ましい。
溶媒に、少なくともシラノール基を有する上記したシリコン樹脂前駆体とシランカップリング剤とを配合し、混合した溶液を鋼材表面に塗布すると、シランカップリング剤のシラノール基とシリコン樹脂前駆体のシラノール基の脱水縮合反応が起き、シリコン樹脂前駆体がシランカップリング剤を仲立ちとして、鋼材表面に緻密な膜を形成する。この反応は、混合後短時間で生じるため、混合後少なくとも48時間以内に鋼材表面に塗布することが肝要となる。
なお、シランカップリング剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が例示できる。このようなシランカップリング剤は、合成品が入手可能であり、例えば、信越化学工業(株)製の「KBM403」、「KBE403」、「KBM903」、「KBE903」、「KBM803」、「KBM9007」、「KBM5103」、「KBM502」、「KBE502」、「KBM1003」、「KBE1003」などを用いることができる。
なお、シランカップリング剤を調合後速やかに鋼板表面に塗布できる場合、すなわち、シランカップリング剤を調合後、使用までに長時間を経過しない場合には、これらシランカップリング剤が使用可能である。しかし、シランカップリング剤を調合後、塗布までに長時間を要する場合には、調合した溶液の安定性の観点から、本発明では、シランカップリング剤としては、アミノ系シランまたはエポキシ系シランとすることが好ましい。シランカップリング剤は、シリコン樹脂前駆体がアミノ基を一部導入したシリコン樹脂前駆体である場合には、エポキシ系シランを、また、シリコン樹脂前駆体がエポキシ基を一部導入したシリコン樹脂前駆体である場合には、アミノ系シランを使用することが好ましい。これは、エポキシ基とアミノ基との反応により、より緻密な皮膜が形成されるためである。
本発明では、上記したシランカップリング剤は、溶媒として、エタノールと水の混合溶媒を用い、溶液全量に対するmass%で、0.1〜1.0%配合することが好ましい。配合量が0.1mass%未満では、シリコン樹脂前駆体との脱水縮合による緻密な結合が形成されにくく、一方、1.0mass%を超えると、鋼板表面に塗布する前に溶液中でカップリング剤同士が縮合したり、シリコン樹脂前駆体と縮合反応を起こして多量体となり、鋼板表面に塗布した後の緻密な皮膜の形成が困難となる。このため、シランカップリング剤の配合量は溶液全量に対するmass%で、0.1〜1.0%の範囲に限定することが好ましい。
本発明では、鋼材表面に、上記した溶液(分散液)を塗布し、好ましくは80℃以上に加熱し、乾燥させて、鋼板表面に皮膜を形成する。
鋼材表面への塗布方法は、刷毛塗り、ロールコータ、スプレー、カーテンコーター、溶液中への鋼材の浸漬等が例示されるが、溶液が対象鋼材面に接触し液膜が形成されればよく、とくに限定する必要はなく、適宜選択して実施することが好ましい。なお、より好ましい塗布方法は、溶液濃度を調整したのち、スプレー等で対象面に吹き付け、溶液層を形成する方法である。また、鋼板表面への塗布量(塗布厚さ)は、所望の耐食性が確保できればよく、とくに限定する必要はないが、耐食性の観点から乾燥後厚さで0.05〜5μmの範囲とすることが好ましい。ただし、溶液を上記した方法で鋼材表面に塗布する前に、鋼材表面を清浄化しておくことは言うまでもない。汚れや、防錆油、ミルスケールなどは、予め落としておくことがこのましい。そのためには、脱脂処理(アルカリ脱脂、溶媒脱脂など)やブラスト処理、酸洗処理などを前処理として行うことが好ましい。
溶液の塗布後、乾燥させて、皮膜とする。乾燥は、鋼材表面を80℃以上に加熱することが好ましい。加熱温度が、80℃未満では、乾燥に時間がかかり、工業的な生産では生産能率が低下するという問題がある。このため、鋼材表面に塗布した溶液を加熱し乾燥させる温度は、鋼材表面の温度で、80℃以上に限定した。なお、加熱温度の上限は、とくに限定する必要はないが、鋼材の表面到達温度が200℃を超えないことが好ましい。というのは、加熱のための費用が高騰するという経済的な理由と、冷却時間の短縮のためである。
以下、実施例に基づき、さらに本発明について説明する。
鋼材としてSS400鋼板(6mm厚×100mm幅×100mm長さ)を用意した。用意した鋼材に、塩酸酸洗を施し、表面スケールを除去して素材とした。
表1に示す量(溶媒全量に対するmass%)の水を含有するエタノールを溶媒として、該溶媒に、表1に示す官能基を有するシリコン樹脂前駆体、表1に示す種類のシランカップリング剤を表1に示す配合量(溶液全量に対するmass%)で、それぞれ配合したのち、ラボミキサーで混合し、溶液(試験液)とした。混合後10分以内に、溶液を鋼材(試験片)表面に塗布した。塗布は、鋼材を溶液中に10秒間浸漬し、その後引き上げ垂直に1分間保持して、鋼材表面に溶液を付着させる方法によった(溶液の付着量は20μm厚)。その後、120℃の電気炉中で鋼材温度が80℃になるまで加熱し、溶媒を蒸発させ、鋼材表面に皮膜(膜厚:0.5〜3μm)を形成した。なお、比較例として、鋼材(試験片)表面に市販のリン酸塩処理(日本パーカライジング社製、パルボンド)を施し、リン酸塩皮膜(塗布量:固形分200mg/m、膜厚:8μm程度)を形成した。処理は、パルボンド原液と純水を質量で1:1に混合し、50℃にした溶液を50℃の鋼板上に刷毛で塗布して、約20分放置した。その後、純水を表面にかけ水洗した後、120℃の電気炉中で処理鋼板を加熱し乾燥した。
得られた皮膜つき鋼材(試験片)について、耐食試験および塗膜試験を実施した。試験方法は次のとおりである。
(1)耐食試験
得られた皮膜つき試験片(鋼材)の裏面および端面にシールを施し、評価面を皮膜が形成されている表面一面として耐食試験を実施した。耐食試験は、JIS Z 2371に準拠した塩水噴霧試験とした。なお、5%NaCl水溶液(液温:35℃)を噴霧液とし、試験時間は48時間とした。
試験後、皮膜つき試験片(鋼材)表面を目視で観察し、赤さび発生面積率を10段階(0%、0.03%、0.1%、0.3%、1%、3%、10%、30%、50%、100%)で判定した。
(2)塗膜試験
得られた皮膜つき試験片(鋼材)の皮膜表面に、エポキシ系塗料(商標名:エポマリン(関西ペイント(株)製)を厚さ50μm塗布し、常温で2週間乾燥させて、塗膜を形成した。
得られた塗膜付き試験片について、塗膜の付着強度を求めた。塗膜の付着強度は塗膜上に円筒形鋼製治具(底面(円形)の面積が100 mm)の底面をエポキシ系接着剤を介して接着し、治具周囲の塗膜を鋼材面に至るまで削り取った。鋼材側を固定し、引張試験機で治具を5mm/minの一定速度で鋼材面に対し垂直方向に引張り、破断に至る最高荷重を求め、これを塗膜の鋼材への付着強度とした。また、得られた塗膜付き試験片表面に、クロスカットを付与し、JASO M609 に準拠して乾湿繰返し試験(JASO試験)を実施した。なお、試験期間は20日間とした。試験後、クロスカット部からの膨れ幅を測定した。膨れ幅は、クロスカット部からの膨れ幅の大きい順番に4箇所を測定し、その平均値を用いた。
得られた結果を表2に示す。
Figure 0006003533
Figure 0006003533
また、皮膜の硬さを、鉛筆硬度試験により評価した。試験方法はつぎのとおりである。
(3)鉛筆硬度試験
平坦な薄鋼板(板厚:0.4mm)から、試験片(大きさ:0.4mm×150mm×75mm)を採取し、溶液No.1、No.2、No.14を用いて、上記した処理方法と同様に試験片表面に皮膜を形成した。得られた皮膜つき試験片の皮膜について、表面硬度をJIS K5400に規定される鉛筆硬度測定方法(手かき法)で、傷のつかない最大硬度として鉛筆硬度と比較した。得られた結果を表3に示す。
Figure 0006003533
本発明例はいずれも、塩水噴霧試験時の赤さび発生面積率が低く、耐食性に優れ、また、上層として塗膜を形成しても、塗膜の付着強度は高く、またクロスカット部からの膨れ幅は小さく、塗膜との密着性にも優れた皮膜(薄膜)が形成され、防食された鋼材となっている。一方、本発明範囲から外れた比較例はいずれも、塩水噴霧試験時の赤さび発生面積率が高く、耐食性が低下し、また、塗膜の付着強度が低く、クロスカット部からの膨れ幅も大きく、塗膜との密着性が低下している。また、本発明方法で形成された皮膜(薄膜)は、従来のリン酸塩処理による皮膜にくらべ、硬く、傷のつきにくいものとなっている。
なお、溶液No.15、No.16は、形成された塗膜の鋼材への付着強度が1.0MPa以下であり、そのため塗膜試験(乾湿繰返し試験)は実施していない。

Claims (6)

  1. 鋼材表面に皮膜を形成して防食する鋼材の防食方法であって、
    前記皮膜が、溶媒を溶媒全量に対するmass%で1〜5%の水を含むエタノールとし、該溶媒中に、分子量が500〜2000で、末端にメチル基およびシラノール基を複数有するシリコン樹脂前駆体と、シランカップリング剤とを配合した溶液を鋼板表面に塗布して形成されたものであることを特徴とした鋼材の防食方法。
  2. 前記溶液に、溶液全量に対するmass%で、前記シリコン樹脂前駆体が1〜5%、前記シランカップリング剤が0.1〜1.O%配合されてなることを特徴とする請求項1に記載の鋼材の防食方法。
  3. 前記シリコン樹脂前駆体が末端に、前記メチル基および前記シラノール基に加えてさらに、アミノ基またはエポキシ基を有することを特徴とする請求項1または2に記載の鋼材の防食方法。
  4. 前記シランカップリング剤が、アミノ系シランまたはエポキシ系シランであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の鋼材の防食方法。
  5. 前記溶液を塗布した後、鋼材表面を80℃以上に加熱すること特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の鋼材の防食方法。
  6. 表面に皮膜を有する鋼材の製造方法であって、該皮膜が、請求項1ないし5のいずれかに記載の鋼材の防食方法で形成された皮膜で、乾燥後厚さで0.05〜5μmであることを特徴とする皮膜つき鋼材の製造方法
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