以下、本発明によるハイブリッド車両の制御装置を適用したハイブリッド車両の一実施形態について図面を参照して説明する。図1はそのハイブリッド車両の構成を示す概要図である。
ハイブリッド車両Mは、図1に示すように、ハイブリッドシステムによって駆動輪例えば左右後輪Wrl,Wrrを駆動させる車両である。ハイブリッドシステムは、エンジン11および電動モータ22(電動機)の2種類の動力源を組み合わせて使用するパワートレーンである。本実施形態の場合、エンジン11および電動モータ22の少なくとも何れか一方で車輪を駆動する方式であるパラレルハイブリッドシステムである。
なお、ハイブリッド車両Mの車両用駆動装置は、電動モータ22を備えたハイブリッド用モータユニット(以下、モータユニットという。)20をエンジン11と自動変速機12との間に組み付けて構成されている車両用駆動装置である。
ハイブリッド車両Mは、エンジン11、モータユニット20、自動変速機12、プロペラシャフト13、ディファレンシャル装置14、駆動輪(左右後輪)Wrl,Wrrおよび従動輪(操舵輪;左右前輪)Wfl,Wfrを備えている。モータユニット20、自動変速機12、プロペラシャフト13、およびディファレンシャル装置14は、エンジン11とエンジン11の駆動力によって駆動される駆動輪Wrl,Wrrとの間の駆動経路にその駆動経路に沿って直列に設けられている。駆動経路とは、エンジン11から駆動輪Wrl,Wrrまでの間の経路であって両者間で動力が伝達する経路である。
エンジン11は、燃料の燃焼によって作動され駆動力を発生させるものである。エンジン11の駆動力は、モータユニット20、自動変速機12、プロペラシャフト13、およびディファレンシャル装置14を介して駆動輪Wrl,Wrrに伝達されるように構成されている。エンジン11の吸気通路11aには、アクセルペダル17(後述する)の操作に応じて開閉されるスロットルバルブ11bが設けられている。スロットルバルブ11bは、エンジンECU31(後述する)からの指示によりスロットル用モータ11cによって開閉される。スロットルバルブ11bの開度(以下、スロットル開度という)は、スロットル開度センサ11dによって検出されており、検出結果はエンジンECU31に出力されるようになっている。
自動変速機12は、一般的な自動変速機であり、トルクコンバータ12a、プラネタリギヤユニット12b、出力軸12cおよび油圧制御装置(図示省略)を含んで構成されている。自動変速機12は、エンジン11の出力を増減して出力軸12cから出力するものであって、複数の変速段(例えば前進5段および後進1段)を備えている。前進段は、低速段から高速段に行くに従ってギヤ比が小さくなるように設定されている。自動変速機12は、スロットル開度(アクセルペダル開度)と出力軸12cの回転速度との関係を示す変速線を使用して前記変速段が変更されるものである。変速線は、アップシフト時に使用されるアップシフト変速線と、ダウンシフト時に使用されるダウンシフト変速線とがある。本実施形態では、なお、自動変速機12は、デュアルクラッチトランスミッションなどで構成してもよい。
また、自動変速機12の出力軸12cは、プロペラシャフト13に連結されている。出力軸12c付近には、出力軸12cの回転速度を検出してハイブリッドECU36(後述する)に出力する出力軸回転速度センサ12dが設けられている。
モータユニット20は、ハウジング21、電動モータ22、クラッチ23、油圧制御装置24を含んで構成されている。ハウジング21内には、電動モータ22、クラッチ23、および油圧制御装置24が収納されている。
電動モータ22は、車輪駆動用の同期モータである。電動モータ22は、エンジン11とエンジン11の駆動力によって駆動される駆動輪Wrl,Wrrとの間の駆動経路に設けられている。電動モータ22の駆動力は、自動変速機12、プロペラシャフト13、およびディファレンシャル装置14を介して駆動輪Wrl,Wrrに伝達されるように構成されている。
電動モータ22は、車両の加速時にはエンジン11の出力を補助し駆動力を高めるものであり、一方車両の制動時には発電を行って回生制動力を駆動輪に発生させるものである。また電動モータ22は、エンジン11の出力により発電を行うものであり、エンジン始動時のスタータの機能としても使える。なお、電動モータ22は、車輪駆動用の同期モータに限定されるものではない。
クラッチ23は、エンジン11と電動モータ22との間の前記駆動経路上に直列に設けられ、係合時にエンジン11と電動モータ22との間の動力が伝達可能であり一方解放時に前記動力を遮断するクラッチである。本実施形態においては、クラッチ23は、通常時(非制御時)に動力を伝達するノーマルクローズ型のクラッチである。クラッチ23は、通常時に動力を遮断するノーマルオープン型のクラッチでもよい。
油圧制御装置24は、電磁切替弁、電動ポンプおよびリザーバ(いずれも図示省略)を含んで構成されている。油圧制御装置24は、クラッチ23への油圧の給排を制御してクラッチ23の断接(係合・解放)を制御している。
ハイブリッド車両Mにおいては、エンジン11はエンジンECU31に電気的に接続され、自動変速機12は自動変速機ECU32に電気的に接続されている。また、電動モータ22は、バッテリ16に接続されているインバータ15を介してモータECU33に電気的に接続されている。バッテリ16は、バッテリECU34に電気的に接続されている。さらに、油圧制御装置24はクラッチECU35に電気的に接続されている。エンジンECU31、自動変速機ECU32、モータECU33、バッテリECU34およびクラッチECU35は、CAN等により互いに通信可能に接続されるとともに、これらECU31〜35はハイブリッドECU36ともCAN等により互いに通信可能に接続されている。
エンジンECU31は、エンジン11を制御するECU(エレクトロニック コントロール ユニット:電子制御装置。本明細書において同様。)であり、エンジン11の回転速度をエンジン11に設けられた回転速度センサ(図示省略)から入力している。回転速度センサはエンジン11のクランク軸の回転速度(すなわちエンジン回転速度)を検出するものである。
自動変速機ECU32は、自動変速機12を制御するECUである。また、モータECU33は、インバータ15を介して電動モータ22を上述した各駆動となるように制御するECUである。インバータ15は、直流電源としてのバッテリ16に電気的に接続されており、電動モータ22から入力した交流電圧を直流電圧に変換してバッテリ16に供給したり、逆にバッテリ16からの直流電圧を交流電圧に変換して電動モータ22へ出力したりするものである。
さらに、バッテリECU34は、バッテリ16の状態を監視するECUであり、バッテリ16に設けられたバッテリ状態検出センサ16aからの検出結果からSOC(State Of Charge)を導出している。また、クラッチECU35は、クラッチ23を制御するECUであり、油圧制御装置24を構成する電磁切替弁および電動ポンプに制御指令をそれぞれ送信してクラッチ23を選択的に係合・解放するものである。
ハイブリッドECU36は、各ECU31〜35を統合的に制御するECUである。例えば、ハイブリッドECU36は、車両発進時には、電動モータ22でエンジン11をスタートさせ、車両加速時には、エンジン11の駆動力を電動モータ22の駆動力でアシストさせ、高速クルージング時には、電動モータ22のアシストなしでエンジン11の駆動力のみで駆動させるように、エンジン11、電動モータ22、クラッチ23などを制御することができる。また、電動モータ22の駆動力のみで走行させるように制御することができる。また、ハイブリッドECU36は、減速時(制動時)には、電動モータ22を発電させて回生制動力を駆動輪に発生させるように制御(回生制御)する。
ハイブリッドECU36には、アクセルペダル17に付設されてその開度を検出するアクセル開度センサ17aが電気的に接続されている。アクセル開度センサ17aの検出結果は、ハイブリッドECU36に送信されるようになっている。各ECU31〜36はそれぞれ、演算処理を実行するCPU部と、プログラムや各種マップ(後述する変速線および出力軸回転速度−出力軸トルク特性)などを保存するROMやRAMなどの記憶部と、情報を交換するための入出力部とを備えて構成されている。
なお、本出願の「ハイブリッド車両の制御装置」は、自動変速機ECU32だけで構成されているが、ハイブリッドECU36だけで構成するようにしてもよいし、エンジンECU31からハイブリッドECU36までのすべてのECUで構成するようにしてもよい。
自動変速機ECU32は、シフトアップ用およびシフトダウン用の変速線を記憶している。シフトアップ用の変速線(アップシフト変速線)は、低速段から高速段にシフトアップする際に使用されるものである。シフトダウン用の変速線(ダウンシフト変速線)は、高速段から低速段にシフトダウンする際に使用されるものである。
図2には、シフトアップ用の変速線が示されており、具体的には、2速から3速にシフトアップする際に使用される2→3変速線、3速から4速にシフトアップする際に使用される3→4変速線、および4速から5速にシフトアップする際に使用される4→5変速線が示されている。2→3変速線は3→4変速線より出力軸回転速度が小さくなるように設定されており、3→4変速線は4→5変速線より出力軸回転速度が小さくなるように設定されている。
これらシフトアップ用の変速線は、駆動力より燃費を重視する燃費重視の変速線、および燃費より駆動力を重視する駆動力重視の変速線を含んで構成されている。図2において、燃費重視の変速線は黒丸印を含む実線で示され、駆動力重視の変速線は黒四角印を含む実線で示されている。
燃費重視の変速線は、駆動力重視の変速線より出力軸回転速度が小さくなるように設定されている。なお、スロットル開度が比較的小さい場合には、燃費重視の変速線と駆動力重視の変速線とは出力軸回転速度が同一となる場合もある。例えば、スロットル開度が40%以下である場合には、燃費重視の変速線と駆動力重視の変速線とは同一である(図面上では離して示している。)。一方スロットル開度が40%より大きい場合には、燃費重視の変速線は、駆動力重視の変速線より出力軸回転速度が小さくなるように設定されている。
図3には、シフトアップ用の変速線のうち2→3変速線の燃費重視の変速線および駆動力重視の変速線が示されている。燃費重視の2→3変速線が選択されている場合であって、スロットル開度が80%のときには、シフトアップする点(燃料重視のシフトアップ(アップシフト)点)はBuである。また、駆動力重視の2→3変速線が選択されている場合であって、スロットル開度が80%のときには、シフトアップする点(駆動力重視のシフトアップ(アップシフト)点)はAuである。なお、燃費重視の変速点Buは、駆動力重視の変速点Auより出力軸回転速度が小さい値となっている。
すなわち、スロットル開度が80%でかつ2速で走行している場合において、燃費重視の2→3変速線が選択されている場合には、出力軸回転速度が変速点Buに相当する回転速度未満のときには2速のままであるが、出力軸回転速度が大きくなって変速点Buに相当する回転速度に到達したときには2速から3速にシフトアップされる。また、駆動力重視の2→3変速線が選択されている場合には、出力軸回転速度が変速点Auに相当する回転速度未満のときには2速のままであるが、出力軸回転速度が大きくなって変速点Auに相当する回転速度に到達したときには2速から3速にシフトアップされる。
図4には、シフトダウン用の変速線もあわせて示されており、具体的には、2速と3速との間で変速する際に使用される2⇔3変速線、3速と4速との間で変速する際に使用される3⇔4変速線、および4速と5速との間で変速する際に使用される4⇔5変速線が示されている。2→3アップシフト変速線は3→4アップシフト変速線より出力軸回転速度が小さくなるように設定されており、3→4アップシフト変速線は4→5アップシフト変速線より出力軸回転速度が小さくなるように設定されており、3→2ダウンシフト変速線は4→3ダウンシフト変速線より出力軸回転速度が小さくなるように設定されており、4→3ダウンシフト変速線は5→4ダウンシフト変速線より出力軸回転速度が小さくなるように設定されている。
シフトダウン用の変速線は、シフトアップ用の変速線と同様に、駆動力より燃費を重視する燃費重視の変速線、および燃費より駆動力を重視する駆動力重視の変速線を含んで構成されている。図4において、燃費重視のシフトダウン用の変速線は白丸印を含む破線で示され、駆動力重視のシフトダウン用の変速線は白四角印を含む破線で示されている。
燃費重視のダウンシフト変速線は、駆動力重視のダウンシフト変速線より出力軸回転速度が小さくなるように設定されている。なお、スロットル開度が比較的小さい場合には、燃費重視のダウンシフト変速線と駆動力重視のダウンシフト変速線とは出力軸回転速度が同一となる場合もある。例えば、スロットル開度が60%以下である場合には、燃費重視のダウンシフト変速線と駆動力重視のダウンシフト変速線とは同一である。一方スロットル開度が60%より大きい場合には、燃費重視のダウンシフト変速線は、駆動力重視のダウンシフト変速線より出力軸回転速度が小さくなるように設定されている。
図5には、シフトダウン用の変速線のうち3→2変速線の燃費重視のダウンシフト変速線および駆動力重視のダウンシフト変速線もあわせて示されている。燃費重視の3→2変速線が選択されている場合であって、スロットル開度が80%のときには、シフトダウンする点(燃料重視のシフトダウン(ダウンシフト)点)はBdである。また、駆動力重視の3→2変速線が選択されている場合であって、スロットル開度が80%のときには、シフトダウンする点(駆動力重視のシフトダウン(ダウンシフト)点)はAdである。なお、燃費重視のダウンシフト変速点Bdは、駆動力重視のダウンシフト変速点Adより出力軸回転速度が小さい値となっている。また、駆動力重視のダウンシフト変速点Adは、駆動力重視のアップシフト変速点Auより出力軸回転速度が小さい値となっている。また、燃費重視のダウンシフト変速点Bdは、燃費重視のアップシフト変速点Buより小さい値となっている。
すなわち、スロットル開度が80%でかつ3速で走行している場合において、駆動力重視の3→2変速線が選択されている場合には、出力軸回転速度が変速点Adに相当する回転速度より大きいときには3速のままであるが、出力軸回転速度が小さくなって変速点Adに相当する回転速度に到達したときには3速から2速にシフトダウンされる。また、燃費重視の3→2変速線が選択されている場合には、出力軸回転速度が変速点Bdに相当する回転速度より大きいときには3速のままであるが、出力軸回転速度が小さくなって変速点Bdに相当する回転速度に到達したときには3速から2速にシフトダウンされる。
さらに、自動変速機ECU32は、図6に示すように、車両の走行性能の一つである出力軸回転速度−出力軸トルク特性(車速−駆動力線図)を記憶している。この出力軸回転速度−出力軸トルク特性は、各変速段に対応した駆動力線から構成されている。本実施形態では、2速駆動力線から5速駆動力線までが示されている。なお1速駆動力線は省略している。また、この出力軸回転速度−出力軸トルク特性は、スロットル開度毎に設定されており、スロットル開度毎の出力軸回転速度−出力軸トルク特性が記憶されている。本実施形態では、スロットル開度が80%である場合を示している。図6では、横軸が出力軸回転速度であり、縦軸が出力軸トルクである。この出力軸回転速度−出力軸トルク特性は車両に固有の特性である。
本発明を実施するための形態において駆動力重視の変速線は一例として、隣り合う変速段の駆動力線が交差する点、すなわち駆動力が最大となる変速点を駆動力重視の変速線としている。例えば、スロットル開度が80%である場合において、2速駆動力線と3速駆動力線とが交差する点が駆動力重視の変速点Au2→3であり、3速駆動力線と4速駆動力線とが交差する点が駆動力重視の変速点Au3→4であり、4速駆動力線と5速駆動力線とが交差する点が駆動力重視の変速点Au4→5である。同様に、スロットル開度が20%、40%、60%および100%のときの駆動力重視の変速点を算出する。そして、これらスロットル開度毎の駆動力重視の変速点から図3に示すシフトアップ用の駆動力重視の変速線が導出される。
また、燃費重視の変速線は一例として、次のように作成している。各出力軸回転速度において、最適燃費率曲線(最適燃費率曲線の詳細については特開2009−166741参照)に一番近づく変速段を選択するように変速線を決定する。ここで決めた燃費重視のアップシフト変速線は、図6に示すようなポイントになる。
次に、このように構成されたハイブリッド車両の制御装置の動作の一例(例えばスロットル開度が80%であるときの2→3変速動作)について図7に示すフローチャートおよび図8に示す出力軸回転速度−出力軸トルク特性の示す図を参照して説明する。
自動変速機ECU32は、図示しないスタートスイッチがオン状態にあるとき、所定の短時間毎に、上記フローチャートに対応したプログラムを繰り返し実行する。自動変速機ECU32は、図7のステップ100にてプログラムの実行を開始する毎に、出力軸回転速度センサ12dにより検出された出力軸回転速度が燃費重視の変速点Bu2→3の回転速度より大きいか否かを判定する(ステップ102)。例えば、車両が2速で加速中であって出力軸回転速度が燃費重視の変速点Bu2→3の回転速度未満である場合には、自動変速機ECU32は、ステップ102にて「NO」と判定し、プログラムをステップ103aに進める。
自動変速機ECU32は、ステップ103aにおいて、2速→3速アップシフト用の変速線を駆動力重視の変速線に設定する。その後、自動変速機ECU32は、プログラムをステップ110に進めて本フローチャートを一旦終了する。これにより、スロットル開度が80%であるときに出力軸回転速度が燃費重視のアップ変速点Bu2→3に到達するまで、変速段は2速に維持される。
一方、出力軸回転速度が燃費重視の変速点Bu2→3の回転速度以上である場合には、自動変速機ECU32は、ステップ102にて「YES」と判定し、プログラムをステップ103cに進める。
自動変速機ECU32は、ステップ103cにおいて、フラグFが1であるか否かを判定する。その駆動力線上において、初めて出力軸回転速度が燃費重視の変速点Bu2→3の回転速度以上となった場合には、その時点ではフラグFは0に設定されているため、自動変速機ECU32は、ステップ103cにおいて、「NO」と判定し、プログラムをステップ104に進める。フラグFは、出力軸回転速度が燃費重視のアップシフト変更点Bu2→3を超えたときに一度、燃費重視のアップシフト変速線に切り替えるか否かの判定をしたか否かを示すものであり、0で未判定を示し1で既判定を示す。
自動変速機ECU32は、ステップ104において、例えば燃費重視の変速点Bu2→3にて3速にアップシフトして走行したと仮定した場合、燃費重視の変速点Bu2→3から駆動力重視の変速点Au2→3に到達するまでに必要な電力量(電動モータ22が必要とする電気エネルギーEm)を演算する。
以下、電動モータ22が必要とする電気エネルギーEmの演算方法について詳述する。この電力量は、エンジン11によるトルク不足相当分を電動モータ22により補填するため、例えば、エンジン11によるトルク不足分のエネルギーEeと同一(同等)とした場合は、すなわち、電動モータ22によるアシストに必要なエネルギーEmはエンジン11の不足エネルギーEeと同一である。エンジン11の不足エネルギーEeは、図9に示すように、燃費重視の変速点Bu2→3から駆動力重視の変速点Au2→3に到達するまでの間における2速駆動力による仕事と3速駆動力による仕事との差分(図9に網掛けで示す三角の部分の仕事)である。すなわち、エンジン11の不足エネルギーEeは、所定回転速度ΔNで区分された仕事差の総和である(下記数1参照)。この所定回転速度ΔNの仕事がΔEであり、1番目のΔNであるΔN1の仕事がΔE1である。
(数1)
Ee=ΔE1+ΔE2+・・・
一方、仕事は仕事率×時間で表され、エンジンの仕事率はK×回転軸トルク×回転軸回転速度で表されるため、エンジンの仕事(出力)は(K×回転軸トルク×回転軸回転速度)×時間で表される。なお、Kは係数であり、2×π/60である。例えば、1番目のΔEであるΔE1は下記数2で示される。
(数2)
ΔE1=K×(T21−T31)N1×Δt1
ここで、T21は2速駆動力における出力軸回転速度がN1のときのエンジン11の出力軸トルクの値を示し、T31は3速駆動力における出力軸回転速度がN1のときのエンジン11の出力軸トルクの値を示している。N1は、燃費重視の変速点Bu2→3における出力軸回転速度を示している。なお、N2は、N1にΔNを加算した値である。時間Δt1は、出力軸回転速度がN1からN2までにかかる時間を示している。
さらに、時間Δt1は、下記数3で表される。
(数3)
Δt1=(M・2πr2・ΔN)/T21
ここで、Mは車両重量であり、rは駆動輪の半径である。
車両に走行抵抗がかかっていない場合には、車両の駆動力Fは下記数4で表される。車両の駆動力Fは、エンジン11による駆動力と電動モータ22による駆動力との和である。
(数4)
F=M・α
ここで、αは加速度である。
この加速度αは、車速Vが時間Δt1にて変化する変化速度ΔVで示すと、下記数5で表される。
(数5)
α=ΔV/Δt=2πr・(ΔN/Δt)
上記数5を数4の右辺に代入すると、下記数6となる。
(数6)
F=M・2πr・(ΔN/Δt)
駆動力Fは回転軸トルクと回転軸半径とにより下記数7のように表される。
(数7)
F=T21/r
上記数6と数7とから下記数8が導出され、これを解くと上記数3で示す時間Δt21が導出される。
(数8)
M・2πr・(ΔN/Δt)=T21/r
このように、時間Δt21は、2速でΔNだけ加速するときの時間である。
以上のことから、一番目の仕事差ΔE1は、上記数2に上記数3を代入すれば、下記数9で示すように導出できる。
(数9)
ΔE1=K×(T21−T31)N1×(M・2πr2・ΔN)/T21
そうすると、エンジン11の不足エネルギーEeは、上記数1に上記数9を代入すれば、下記数10で示すように導出できる。
(数10)
Ee=K×{{(T21−T31)N1×(M・2πr2・ΔN)/T21}
+{(T22−T32)N2×(M・2πr2・ΔN)/T22}
+・・・}
さらに、上記数10を変形すると、下記数11となる。
(数11)
Ee=K×(M・2πr2・ΔN){(1−T31/T21)N1
+(1−T32/T22)N2+・・・}
よって、電動モータ22によるアシストに必要なエネルギーEmはエンジン11の不足エネルギーEeと同一であるとして、下記数12で表される。
(数12)
Em=K×(M・2πr2・ΔN){(1−T31/T21)N1
+(1−T32/T22)N2+・・・}
なお、転がり抵抗、空気抵抗、勾配抵抗などの走行抵抗Rがある場合には、上記数4の左辺をF−Rとすればよい。勾配抵抗のみを考慮する場合には、F−M・sinθ=M・αとなる。
また、ディファレンシャル装置14は、自動変速機12の出力回転数を減速して車輪に伝えるために、デフ比が存在する。自動変速機12の回転数÷デフ比=タイヤの回転数である。本実施形態ではデフ比は1.0として説明している。
また、車両重量は、次のように算出するようにしてもよい。上記数4から車両重量Mは、駆動力F/加速度αで算出することができる(特許第3821001号公報参照)。駆動力Fは、図6に示す出力軸回転速度−出力軸トルク特性と出力軸回転速度(車速、車輪回転速度)と選択している変速段とから導出できる。一方、加速度αは、出力軸回転速度から導出できるし、車両の前後方向の加速度を検出する加速度センサによって検出することもできる。車両重量を算出できれば、荷物や乗員の増減があった場合でもより正確に電動モータ22によるアシストに必要なエネルギーEmを算出することができる。
説明を図7のフローチャートの説明に戻す。自動変速機ECU32は、ステップ106において、バッテリ16に残存している出力可能な電気エネルギーが、ステップ104にて演算した電動モータ22が必要とする電気エネルギーEmより大きいか否かを判定する。なお、ステップ106にて、自動変速機ECU32はバッテリ16の出力可能な残存電気エネルギーを算出する。
なお、蓄電量SOCに所定値を加算した値を閾値として、その閾値が、電動モータ22が必要とする電気エネルギーEmより大きいか否かを判定するようにしてもよい。蓄電量SOCは、バッテリ16の電力容量に対する蓄えられた電力量(電気エネルギー)を示すものであり、例えば、停車中の定常時には電圧から推定され、走行中には電流から積算して推定される。これによれば、バッテリ16に余力を残すことで、電動モータ22が必要とする電気エネルギーEmが予測以上にかかる場合であっても、エンジンに係る出力軸トルクの不足分相当をモータに係る出力軸トルクにより、より確実に補填することができるため、より確実に燃費重視の変速線を維持することが可能である(より確実に元の変速段へのダウンシフトを回避できる)。
バッテリ16の蓄電量SOCがステップ104にて演算した電動モータ22が必要とする電気エネルギーEmより大きい電気エネルギーを出力できる状態の場合には、自動変速機ECU32は、ステップ106にて「YES」と判定し、ステップ108において、2速→3速アップシフト用の変速線を燃費重視の変速線に設定する。その後、自動変速機ECU32は、プログラムをステップ109以降に進めて本フローチャートを一旦終了する。これにより、スロットル開度が80%であるときに出力軸回転速度が燃費重視のアップ変速点Bu2→3にて、変速段は2速から3速にシフトアップされる。
一方、電動モータ22が必要とする電気エネルギーEmより大きい電気エネルギーを出力できない状態の場合には、自動変速機ECU32は、ステップ106にて「NO」と判定し、ステップ112において、2速→3速アップシフト用の変速線を駆動力重視の変速線に設定する。その後、自動変速機ECU32は、プログラムをステップ109以降に進めて本フローチャートを一旦終了する。これにより、スロットル開度が80%であるときに出力軸回転速度が燃費重視のアップ変速点Bu2→3に到達しても、変速段は2速から3速にシフトアップされずに、2速が維持される。
なお、自動変速機ECU32は、上述したステップ108,112の処理が終わると、ステップ109において、フラグFを1に設定する。
出力軸回転速度が燃費重視のアップ変速点Bu2→3に到達した後であって、上述した出力軸回転速度が燃費重視のアップシフト変更点Bu2→3を超えたときに一度、燃費重視のアップシフト変速線に切り替えるか否かの判定を行った後である場合には、自動変速機ECU32は、ステップ102,103cにてそれぞれ「YES」と判定し、プログラムをステップ114に進める。自動変速機ECU32は、ステップ114において、2速→3速アップシフト用の変速線を駆動力重視の変速線に設定する。その後、自動変速機ECU32は、プログラムをステップ116以降に進めて本フローチャートを一旦終了する。これにより、燃費重視のアップシフト変更点Bu2→3を超えたときに一度燃費重視のアップシフト変速線に切り替えれば、そのときアップシフトし、次の演算で再び駆動力重視のアップシフト変速線に切り替えても既にアップシフトしているので、アップシフトしたままとなる(元の変速段には戻らない(ダウンシフトしない))。また、燃費重視のアップシフト変更点Bu2→3を超えたときに燃費重視のアップシフト変速線に切り替えない場合(駆動力重視の変速線のままである場合)には、そのときの変速段を維持し、出力軸回転速度が駆動力重視のアップ変速点Au2→3に到達するまで変速段は維持される。
自動変速機ECU32は、出力軸回転速度が駆動力重視のアップ変速点Au2→3に到達するまでステップ116において「NO」の判定を繰り返し、アップ変速点Auを超えると「YES」と判定し、プログラムをステップ118に進めてフラグFを0に設定する。これにより、出力軸回転速度が駆動力重視の変速点Au2→3を越えると、設定された変速線は駆動力重視の変速線に設定され、燃費重視のアップシフト変更点Bu2→3に到達したときに、駆動力重視のアップシフト変速線を設定して2速を維持していた場合は、この時点で2速から3速にシフトアップされる。そして、上述したステップ100からステップ110までの処理が新たな変速段に対して行われる。
上述したフローチャートに示す制御について図8を参照して説明する。最初に、バッテリ16の蓄電量SOCが電動モータ22が必要とする電気エネルギーEmより大きい電気エネルギーを出力できる状態の場合について説明する。スロットル開度が任意の値80%で一定であって車両が2速で加速中である場合において、出力軸回転速度が燃費重視のアップ変速点Bu2→3に到達する前では、エンジンに係る出力軸トルクは2速駆動力線に沿って変化する。
さらに、出力軸回転速度が燃費重視のアップ変速点Bu2→3に到達したときに、バッテリ16の蓄電量SOCが電動モータ22が必要とする電気エネルギーEmより大きい電気エネルギーを出力できる状態であると判定される(ステップ104,106)。よって、2速→3速アップシフト用の変速線は燃費重視の変速線が設定される(ステップ108)。
これにより、出力軸回転速度が燃費重視のアップ変速点Bu2→3に到達したときに、2速から3速にシフトアップされる。このとき、エンジンに係る出力軸トルクは2速駆動力線上の変速点Bu2→3から3速駆動力線上の点C2→3に飛ぶ(移動する)。点C2→3は、変速点Bu2→3と出力軸回転速度が同一である3速駆動力線上の点である。
そして、出力軸回転速度が駆動力重視のアップ変速点Au2→3に到達する前では、エンジンに係る出力軸トルクは3速駆動力線に沿って変化する。このとき、エンジン11によるトルクの不足分が電動モータ22によるトルクによって補填されている(変速点Bu2→3、変速点Au2→3および点C2→3で囲まれている部分(網掛け部分)のエネルギーを補填する)。燃費を重視する変速線に到達した時点で、バッテリ16の蓄電量SOCが足らない場合(アップシフトしたら、ダウンシフトが必要になる場合)は、アップシフトさせないため、元の変速段に戻すダウンシフトをする必要がない。
車両が3速で加速中である場合において、2速で加速中である場合と同様に、出力軸回転速度が燃費重視のアップ変速点Bu3→4に到達する前では、出力軸回転速度が増大すると、エンジンに係る出力軸トルクは3速駆動力線に沿って変化する。出力軸回転速度が燃費重視のアップ変速点Bu3→4に到達すると、3速から4速にシフトアップされる。このとき、エンジンに係る出力軸トルクは3速駆動力線上の変速点Bu3→4から4速駆動力線上の点C3→4に飛ぶ。そして、出力軸回転速度が駆動力重視のアップ変速点Au3→4に到達する前では、出力軸回転速度が増大すると、エンジンに係る出力軸トルクは4速駆動力線に沿って変化する。
車両が4速で加速中である場合において、2速で加速中である場合と同様に、出力軸回転速度が燃費重視のアップ変速点Bu4→5に到達する前では、出力軸回転速度が増大すると、エンジンに係る出力軸トルクは4速駆動力線に沿って変化する。出力軸回転速度が燃費重視のアップ変速点Bu4→5に到達すると、4速から5速にシフトアップされる。このとき、エンジンに係る出力軸トルクは4速駆動力線上の変速点Bu4→5から5速駆動力線上の点C4→5に飛ぶ。そして、出力軸回転速度が駆動力重視のアップ変速点Au4→5に到達する前では、出力軸回転速度が増大すると、エンジンに係る出力軸トルクは5速駆動力線に沿って変化する。
このように、バッテリ16の蓄電量SOCが電動モータ22が必要とする電気エネルギーEmより大きい電気エネルギーを出力できる状態の場合には、エンジンに係る出力軸トルクは、図8の破線で示すように変化する。
次に、バッテリ16の蓄電量SOCが電動モータ22が必要とする電気エネルギーEmより大きい電気エネルギーを出力できない状態の場合について説明する。スロットル開度が80%にて車両が2速で加速中である場合において、出力軸回転速度が燃費重視のアップ変速点Bu2→3に到達する前では、出力軸回転速度が増大すると、エンジンに係る出力軸トルクは2速駆動力線に沿って変化する。
さらに、出力軸回転速度が燃費重視のアップ変速点Bu2→3に到達したときに、バッテリ16の蓄電量SOCが、電動モータ22が必要とする電気エネルギーEmより小さいと判定される(ステップ104,106)。よって、2速→3速アップシフト用の変速線は駆動力重視の変速線が設定される(ステップ112)。これにより、出力軸回転速度が燃費重視のアップ変速点Bu2→3に到達しても、2速から3速にシフトアップされないで、2速が維持される。よって、出力軸回転速度が駆動力重視のアップ変速点Au2→3に到達する前では、出力軸回転速度が増大すると、エンジンに係る出力軸トルクは2速駆動力線に沿って変化し、駆動力重視のアップ変速点Au2→3に到達したときに、2速から3速にシフトアップされる。
車両が3速または4速で加速中である場合において、2速で加速中である場合と同様である。このように、バッテリ16の蓄電量SOCが電動モータ22が必要とする電気エネルギーEmより大きい電気エネルギーを出力できない状態の場合には、エンジンに係る出力軸トルクは、図8の一点破線で示すように変化する。
次に、このように構成されたハイブリッド車両の制御装置の2→3変速の動作の他の一例(第2実施例)について図10に示すフローチャートおよび図11に示す出力軸回転速度−出力軸トルク特性の示す図を参照して説明する。
自動変速機ECU32は、図示しないスタートスイッチがオン状態にあるとき、所定の短時間毎に、上記フローチャートに対応したプログラムを繰り返し実行する。自動変速機ECU32は、図10のステップ200にてプログラムの実行を開始する毎に、出力軸回転速度センサ12dにより検出された出力軸回転速度が燃費重視の変速点Bu2→3の回転速度以上であるか否かを判定する(ステップ202)。例えば、スロットル開度が80%でありかつ車両が2速で加速中であって出力軸回転速度が燃費重視の変速点Bu2→3の回転速度未満である場合には、自動変速機ECU32は、ステップ202にて「NO」と判定し、プログラムをステップ204に進める。
自動変速機ECU32は、ステップ204において、2速→3速アップシフト用の変速線を駆動力重視の変速線に設定する。その後、自動変速機ECU32は、プログラムをステップ206に進めて本フローチャートを一旦終了する。これにより、スロットル開度が80%であるときに出力軸回転速度が燃費重視のアップ変速点Bu2→3(の回転速度)に到達する前では、変速段は2速のまま維持される。
出力軸回転速度が燃費重視の変速点Bu2→3の回転速度より大きく駆動力重視の変速点Au2→3の回転速度未満である場合には、自動変速機ECU32は、ステップ202,208にて「YES」、「NO」と判定し、プログラムをステップ210に進める。なお、ステップ208においては、出力軸回転速度センサ12dにより検出された出力軸回転速度が駆動力重視の変速点Au2→3の回転速度以上であるか否かを判定する。
自動変速機ECU32は、ステップ210において、所定時間毎にそのときの出力軸回転速度においてアップシフトして走行したと仮定した場合、その仮定した時点から駆動力重視の変速点Au2→3に到達するまでに必要な電力量(電動モータ22が必要とする電気エネルギーEm)をステップ104と同様に演算する。
このとき、アップシフトしたと仮定した時点を変速点Du2→3とする。よって、エンジン11の不足エネルギーEeは、図11に示すように、変速点Du2→3から駆動力重視の変速点Au2→3に到達するまでの間における2速駆動力による仕事と3速駆動力による仕事との差分(図11に網掛けで示す三角の部分の仕事)である。
自動変速機ECU32は、ステップ212において、ステップ106と同様に、バッテリ16の蓄電量SOCがステップ210にて演算した電動モータ22が必要とする電気エネルギーEmより大きい電気エネルギーを出力できる状態か否かを判定する。
バッテリ16の蓄電量SOCがステップ210にて演算した電動モータ22が必要とする電気エネルギーEmより大きい電気エネルギーを出力できる状態の場合には、自動変速機ECU32は、ステップ212にて「YES」と判定し、ステップ214において、2速→3速アップシフト用の変速線を燃費重視の変速線に設定する。その後、自動変速機ECU32は、プログラムをステップ206に進めて本フローチャートを一旦終了する。これにより、バッテリ16の蓄電量SOCがステップ210にて演算した電動モータ22が必要とする電気エネルギーEmより大きい電気エネルギーを出力できる状態の場合には、2速→3速アップシフト用の変速線が燃費重視の変速線に設定される。このとき、その時点では出力軸回転速度が燃費重視のアップ変速点Bu2→3を越えているため、変速点Du2→3にて変速段は2速から3速にシフトアップされる。
一方、電動モータ22が必要とする電気エネルギーEmより大きい電気エネルギーを出力できない状態の場合には、自動変速機ECU32は、ステップ212にて「NO」と判定し、ステップ216において、ステップ112と同様に、2速→3速アップシフト用の変速線を駆動力重視の変速線に設定する。その後、自動変速機ECU32は、プログラムをステップ206に進めて本フローチャートを一旦終了する。これにより、スロットル開度が80%であるときに出力軸回転速度が駆動力重視のアップ変速点Auに到達するまで、バッテリ16の蓄電量SOCが電動モータ22が必要とする電気エネルギーEmより大きい電気エネルギーを出力できない状態と判断し続ける場合は、変速段は駆動力重視のアップ変速点Au2→3まで2速から3速にシフトアップされないで、2速が維持される。
さらに、出力軸回転速度が駆動力重視の変速点Au2→3の回転速度以上である場合には、自動変速機ECU32は、ステップ202,208にて「YES」と判定し、プログラムをステップ218に進める。自動変速機ECU32は、ステップ218において、ステップ204と同様に、2速→3速アップシフト用の変速線を駆動力重視の変速線に設定する。その後、自動変速機ECU32は、プログラムをステップ206に進めて本フローチャートを一旦終了する。これにより、出力軸回転速度が駆動力重視の変速点Au2→3を越えると、設定された変速線は駆動力重視の変速線に設定される。すなわち、出力軸回転速度が駆動力重視のアップ変速点Auに到達するまで駆動力重視の変速線が設定され続け2速が維持されていた場合は、この時点で2速から3速にシフトアップされ、2速駆動力線から変速点Au2→3を通って3速駆動力線に移行する。
上述したフローチャートに示す制御について図11を参照して説明する。バッテリ16の蓄電量SOCが比較的小さく、蓄電量SOCが、具体的には2速→3速アップシフト用の変速線が駆動力重視の変速線に設定されかつ燃費重視のアップ変速点Bu2→3でシフトアップされた場合における電動モータ22が必要とする電気エネルギーEmに比べて大きい電気エネルギーを出力できない状態の場合について説明する。
スロットル開度が80%にて車両が2速で加速中である場合において、出力軸回転速度が燃費重視のアップ変速点Bu2→3に到達する前では、出力軸回転速度が増大すると、エンジンに係る出力軸トルクは2速駆動力線に沿って変化する(ステップ202,204)。
出力軸回転速度が燃費重視のアップ変速点Bu2→3から駆動力重視のアップ変速点Au2→3までの間にある場合においては、蓄電量SOCが電動モータ22が必要とする電気エネルギーEmに比べて大きい電気エネルギーを出力できない状態の場合には、2速→3速アップシフト用の変速線は駆動力重視の変速線が設定される(ステップ210,212,216)。これにより、出力軸回転速度が駆動力重視のアップ変速点Au2→3に到達するまでは、2速から3速にシフトアップされることなく2速に維持される。
一方、蓄電量SOCが電動モータ22が必要とする電気エネルギーEmに比べて大きい電気エネルギーを出力できる状態の場合には、2速→3速アップシフト用の変速線は燃費重視の変速線が設定される(ステップ210,212,214)。これにより、蓄電量SOCが電動モータ22が必要とする電気エネルギーEmに比べて大きい電気エネルギーを出力できる状態と判定した時点では、出力軸回転速度が燃費重視のアップ変速点Bu2→3を越えているため、前記判定した点である変速点Du2→3にて変速段は2速から3速にシフトアップされる。
そして、出力軸回転速度が駆動力重視のアップ変速点Au2→3に到達する前では、出力軸回転速度が増大すると、エンジンに係る出力軸トルクは3速駆動力線に沿って変化する。このとき、エンジン11によるトルクの不足分が電動モータ22によるトルクによって補填されている(変速点Du2→3、変速点Au2→3および点E2→3で囲まれている部分(網掛け部分)のエネルギーを補填する)。
このように、出力軸回転速度が燃費重視のアップ変速点Bu2→3から駆動力重視のアップ変速点Au2→3までの間にある任意の時点(Du2→3)において、バッテリ16の蓄電量SOCが電動モータ22が必要とする電気エネルギーEmより大きい電気エネルギーを出力できる状態の場合には、エンジンに係る出力軸トルクは、図11の破線で示すように変化する。すなわち、エンジンに係る出力軸トルクは、変速点Bu2→3、変速点Du2→3、点E2→3および変速点Au2→3を通過するように変化する。
次に、このように構成されたハイブリッド車両の制御装置のスロットル開度が80%であるときの3→2変速の動作の一例(第3実施例)について図12に示すフローチャートおよび図13に示す出力軸回転速度−出力軸トルク特性の示す図を参照して説明する。
自動変速機ECU32は、図示しないスタートスイッチがオン状態にあるとき、所定の短時間毎に、上記フローチャートに対応したプログラムを繰り返し実行する。自動変速機ECU32は、図12のステップ300にてプログラムの実行を開始する毎に、出力軸回転速度センサ12dにより検出された出力軸回転速度が駆動力重視の変速点Ad3→2の回転速度以上であるか否かを判定する(ステップ302)。例えば、スロットル開度が80%でありかつ車両が3速で走行中であって出力軸回転速度が駆動力重視の変速点Ad3→2の回転速度より大きい場合には、自動変速機ECU32は、ステップ302にて「NO」と判定し、プログラムをステップ304に進める。
自動変速機ECU32は、ステップ304において、3速→2速ダウンシフト用の変速線を燃費重視の変速線に設定する。その後、自動変速機ECU32は、プログラムをステップ306に進めて本フローチャートを一旦終了する。これにより、スロットル開度が80%であるときに出力軸回転速度が駆動力重視のダウン変速点Ad3→2(の回転速度)より大きい場合では、変速段は3速のまま維持される。
出力軸回転速度が燃費重視の変速点Bd3→2の回転速度より大きく駆動力重視の変速点Ad3→2の回転速度未満である場合には、自動変速機ECU32は、ステップ302,308にて「YES」、「NO」と判定し、プログラムをステップ310に進める。
自動変速機ECU32は、ステップ310において、電動モータ22でアシストすることでアップシフトしている場合であって、バッテリ16の蓄電量SOCが電気エネルギーを取り出せない状態であるか否か(残エネルギー導出部により導出されたバッテリ16の出力可能な残存電気エネルギーがゼロであるか否か)を判定する。なお、蓄電量SOCはバッテリ16の残存電気量(残存電気エネルギー)が溜まっていても少ない時は電気エネルギーを出力しない場合があり、これを考慮したものである。バッテリ16の蓄電量SOCが電気エネルギーを取り出せない状態であるとは、バッテリ16がエネルギーを出力しなくなる蓄電量SOC値に設定されており、例えば50%である。
バッテリ16の蓄電量SOCが電気エネルギーを取り出せない状態である場合には、自動変速機ECU32は、ステップ310にて「YES」と判定し、ステップ312において、3速→2速ダウンシフト用の変速線を駆動力重視の変速線に設定する。その後、自動変速機ECU32は、プログラムをステップ306に進めて本フローチャートを一旦終了する。これにより、蓄電量SOCが電気エネルギーを取り出せない状態である場合には、3速→2速ダウンシフト用の変速線が駆動力重視の変速線に設定される。このとき、その時点では出力軸回転速度が駆動力重視のダウン変速点Ad3→2を下回っているため、変速点Dd3→2にて変速段は3速から2速にシフトダウンされる。
一方、蓄電量SOCが電気エネルギーを取り出だせる状態の場合には、自動変速機ECU32は、ステップ310にて「NO」と判定し、ステップ314において、ステップ304と同様に、3速→2速ダウンシフト用の変速線を燃費重視の変速線に設定する。その後、自動変速機ECU32は、プログラムをステップ306に進めて本フローチャートを一旦終了する。これにより、スロットル開度が80%であるときに出力軸回転速度が燃費重視のダウン変速点Bd3→2に到達するまで蓄電量SOCが電気エネルギーを取り出だせる状態と判断され続ける場合は、燃費重視のダウン変速点Bd3→2に到達するまでは、3速から2速にシフトダウンされることなく3速が維持される。
さらに、出力軸回転速度が駆動力重視の変速点Bd3→2の回転速度以下である場合には、自動変速機ECU32は、ステップ302,308にて「YES」と判定し、プログラムをステップ316に進める。自動変速機ECU32は、ステップ316において、ステップ304と同様に、3速→2速ダウンシフト用の変速線を燃費重視の変速線に設定する。その後、自動変速機ECU32は、プログラムをステップ306に進めて本フローチャートを一旦終了する。これにより、出力軸回転速度が燃費重視の変速点Bd3→2を下回ると、変速線は燃費重視の変速線に設定される。すなわち、出力軸回転速度が燃費重視のダウン変速点Bd3→2に到達するまで燃費重視の変速点が設定され続け3速が維持されていた場合は、この時点で3速から2速にシフトダウンされ、3速駆動力線から変速点Bd3→2を通って2速駆動力線に移行する。
上述したフローチャートに示す制御について図13を参照して説明する。3速にアップシフトし、電動モータ22でアシストしている場合について説明する。
出力軸回転速度が燃費重視のダウン変速点Bd3→2から駆動力重視のダウン変速点Ad3→2までの間にある場合においては、蓄電量SOCが電気エネルギーを取り出せない状態である場合には、3速→2速ダウンシフト用の変速線は駆動力重視の変速線が設定される(ステップ310,312)。これにより、蓄電量SOCが電気エネルギーを取り出せない状態であると判断した時点では出力軸回転速度が駆動力重視のダウン変速点Ad3→2を下回っているため、変速段は3速から2速にシフトダウンされる(Dd3→2)。
一方、燃費重視のダウン変速点Bdに到達するまで、蓄電量SOCが電気エネルギーを取り出だせる状態と判断され続ける場合は、3速→2速ダウンシフト用の変速線は燃費重視の変速線が設定される(ステップ310,314)。これにより、出力軸回転速度が燃費重視のダウン変速点Bd3→2に到達するまでは、3速から2速にシフトダウンされることなく3速に維持される。
上述した説明から明らかなように、上述した実施形態によれば(請求項2相当)、第1の必要エネルギー予測部(ステップ104)は、出力軸回転速度が燃費重視のアップシフト変速線にて変速段がシフトアップをされる点である燃費重視のアップシフト変速点である場合において、燃費重視のアップシフト変速点にてシフトアップをしたと仮定した場合にその仮定した時点から出力軸回転速度が駆動力重視のアップシフト変速線にて変速段がシフトアップをされる点である駆動力重視のアップシフト変速点に到達するまでの間におけるエンジン11に係る出力軸トルクの不足分相当を電動モータ22に係る出力軸トルクにより補填する場合に電動モータ22が必要とするエネルギーを予測する。なお、不足分相当は、エンジン11に係る出力軸トルクの不足分と一致する場合、エンジン11に係る出力軸トルクの不足分と略同一の場合も含む。残エネルギー導出部(ステップ106,212)は、バッテリ16に残存している出力可能な電気エネルギーであって、電動モータ22を駆動するためのものを導出する。そして、第3の変速線選択部(ステップ106,108,112)は、残エネルギー導出部により導出された出力可能な残存電気エネルギーが第1の必要エネルギー予測部により予測された必要なエネルギーより大きい場合には、アップシフト変速線として燃費重視のアップシフト変速線を選択し、一方そうでない場合には、アップシフト変速線として駆動力重視のアップシフト変速線を選択する。
これにより、バッテリ16の出力可能な残存電気エネルギーが電動モータ22によるアシストに必要な電気エネルギーより大きい場合には、燃費重視のアップシフト変速点にてアップシフトするが、小さい場合には、燃費重視のアップシフト変速点にてアップシフトをすることなく、駆動力重視のアップシフト変速点にてアップシフトすることができる。すなわち、バッテリ16に残存している出力可能な電気エネルギーが電動モータ22によるアシストに必要な電気エネルギーより大きい場合には、燃費重視のアップシフト変速点にてアップシフトをするが、駆動力重視のアップシフト変速点に到達するまで、エンジン11に係る出力軸トルクの不足分相当を電動モータ22に係る出力軸トルクにより補填することが可能で、元の変速段へダウンシフトする必要がなく、従来のように、アップシフトと元の変速段へのダウンシフトとが短時間の間に実施されることを抑制することで、変速をフィーリングよく実施することができる。一方、バッテリ16に残存している出力可能な電気エネルギーが電動モータ22によるアシストに必要な電気エネルギーより小さい場合には、駆動力重視のアップシフト変速点までアップシフトをすることがないので、元の変速段へダウンシフトする必要がなく、従来のように、アップシフトと元の変速段へのダウンシフトとが短時間の間に実施される煩わしい変速を抑制することができる。この様にして、走行性を低下することなく、変速フィーリングよく実施することができる。
なお、上述した実施形態において、第1の必要エネルギー予測部に代えて第3の必要エネルギー予測部を設けるとともに、第3の変速線選択部に代えて第5の変速線選択部を設けるようにしてもよい(請求項3相当)。第3の必要エネルギー予測部は、出力軸回転速度が燃費重視のアップシフト変速点である場合において、燃費重視のアップシフト変速点にてシフトアップをしたと仮定したときに、その仮定した時点から一定時間の間におけるエンジン11に係る出力軸トルクの不足分相当を電動モータ22に係る出力軸トルクにより補填する際に電動モータ22が必要とするエネルギーを予測するものである。一定時間は、例えば数秒、十数秒、数分に設定される。
具体的には、ステップ104の処理に代えて、アップシフトして走行したと仮定した場合、燃費重視のアップシフト変速点Bu2→3から所定時間までの間における必要な電気エネルギーの演算を行うようにすればよい。この電気エネルギーの演算は、上述した電気エネルギーEmと同様に行えばよい。
第5の変速線選択部は、残エネルギー導出部により導出された出力可能な残存電気エネルギーが第3の必要エネルギー予測部により予測された必要なエネルギーより大きい場合には、アップシフト変速線として燃費重視のアップシフト変速線を選択し、一方そうでない場合には、アップシフト変速線として駆動力重視のアップシフト変速線を選択するものである。具体的には、ステップ106,108,112と同様な処理を行うようにすればよい。
これにより、バッテリ16に残存している出力可能な電気エネルギーが電動モータ22によるアシストに必要な電気エネルギーより大きい場合には、燃費重視のアップシフト変速点にてアップシフトするが、小さい場合には、燃費重視のアップシフト変速点にてアップシフトをすることはない。すなわち、バッテリ16に残存している出力可能な電気エネルギーが電動モータ22によるアシストに必要な電気エネルギーより大きい場合には、燃費重視のアップシフト変速点にてアップシフトをするが、一定時間の間において、エンジン11に係る出力軸トルクの不足分相当を電動モータ22に係る出力軸トルクにより補填することが可能で、一定時間の間において、元の変速段へダウンシフトする必要がない。したがって、従来のように、アップシフトと元の変速段へのダウンシフトとが短時間の間に実施されることを抑制することで、変速をフィーリングよく実施することができる。一方、バッテリ16に残存している出力可能な電気エネルギーが電気モータ22によるアシストに必要な電気エネルギーより小さい場合には、駆動力重視のアップシフト変速点までアップシフトをすることがないので、元の変速段へダウンシフトする必要がなく、従来のように、アップシフトと元の変速段へのダウンシフトとが短時間の間に実施される煩わしい変速を抑制することができる。この様にして、走行性を低下することなく、変速フィーリングよく実施することができる。
また、上述したように、残エネルギー導出部(ステップ106)は、出力軸回転速度が燃費重視のアップシフト変速線にて変速段がシフトアップをされる点である燃費重視のアップシフト変速点である場合において、バッテリ16に残存している出力可能な電気エネルギーであって、電動モータ22を駆動するためのものを導出する。第1の変速線選択部(ステップ104,106,108,112)は、残エネルギー導出部により導出された出力可能な残存電気エネルギーの大きさによりアップシフト変速線として燃費重視のアップシフト変速線または駆動力重視のアップシフト変速線を選択する(請求項1相当)。
これにより、バッテリ16に残存している出力可能な電気エネルギーが大きい場合には、燃費重視のアップシフト変速点にてアップシフトするが、小さい場合には、燃費重視のアップシフト変速点にてアップシフトをすることなく、駆動力重視のアップシフト変速点にてアップシフトすることができる。すなわち、バッテリ16に残存している出力可能な電気エネルギーが小さい場合は、駆動力重視のアップシフト変速点までアップシフトをすることがないので、元の変速段へダウンシフトする必要がなく、従来のように、アップシフトと元の変速段へのダウンシフトとが短時間の間に実施される煩わしい変速を抑制することができる。この様にして、走行性を低下することなく、変速をフィーリングよく実施することができる。
また、第2の必要エネルギー予測部(ステップ210)は、第3の変速線選択部により駆動力重視のアップシフト変速線が選択されている場合には、出力軸回転速度が燃費重視のアップシフト変速点以上であり駆動力重視のアップシフト変速点未満である場合の任意の点において、シフトアップをしたと仮定した場合に、その仮定した時点(その任意の時点)から出力軸回転速度が駆動力重視のアップシフト変速点に到達するまでの間におけるエンジン11に係る出力軸トルクの不足分相当を電動モータ22に係る出力軸トルクにより補填する場合に電動モータ22が必要とするエネルギーを予測する。第4の変速線選択部(ステップ212,214,216)は、残エネルギー導出部(ステップ212)により導出された出力可能な残存電気エネルギーが第2の必要エネルギー予測部により予測された必要なエネルギーより大きい場合には、アップシフト変速線として燃費重視のアップシフト変速線を選択し、一方そうでない場合には、アップシフト変速線として駆動力重視のアップシフト変速線を選択する(請求項5相当)。
これにより、第3の変速線選択部により駆動力重視の変速線が選択されている場合であって、出力軸回転速度が燃費重視の変速点以上であり駆動力重視の変速点未満である場合の任意の時点において、残エネルギー導出部により導出された出力可能な残存電気エネルギーが第2の必要エネルギー予測部により予測された必要なエネルギーより大きい場合には、大きいと判断した時点にてアップシフトすることができる。一方そうでない場合には、アップシフトをすることなく、駆動力重視のアップシフト変速点にてアップシフトする。したがって、バッテリ16に残存している出力可能な電気エネルギーが第2の必要エネルギー予測部により予測された必要なエネルギーより大きいと判断した場合には、バッテリ16に残存している出力可能な電気エネルギーが比較的多い場合と比較して、シフトアップする点は燃費重視の変速点より駆動力重視の変速点寄りとなるが、バッテリ16に残存している出力可能な電気エネルギーが比較的少ない場合であってもそのエネルギーを有効利用することができ、また、駆動力重視のアップシフト変速点に到達するまで、エンジン11に係る出力軸トルクの不足分相当を電動モータ22に係る出力軸トルクにより補填することが可能で、元の変速段へダウンシフトする必要がなく、従来のように、アップシフトと元の変速段へのダウンシフトとが短時間の間に実施される煩わしい変速を抑制することができる。一方、バッテリ16に残存している出力可能な電気エネルギーが第2の必要エネルギー予測部により予測された必要なエネルギーより小さいと判断し続ける場合には、駆動力重視のアップシフト変速点までアップシフトをすることがないので、元の変速段へダウンシフトする必要がなく、従来のように、アップシフトと元の変速段へのダウンシフトとが短時間の間に実施される煩わしい変速を抑制することができる。この様にして、走行性を低下することなく、燃費性と変速フィーリングとを両立することができる。
なお、上述した実施形態において、第1の必要エネルギー予測部に代えて第3の必要エネルギー予測部を設けるとともに、第3の変速線選択部に代えて第5の変速線選択部を設けるようにした場合には、第2の必要エネルギー予測部(ステップ210)に代えて第4の必要エネルギー予測部を設けるとともに、第4の変速線選択部に代えて第6の変速線選択部を設けるようにしてもよい(請求項6相当)。
第4の必要エネルギー予測部は、第5の変速線選択部により駆動力重視のアップシフト変速線が選択されている場合には、出力軸回転速度が燃費重視の変速点以上であり駆動力重視のアップシフト変速点未満である場合の任意の時点において、シフトアップをしたと仮定した場合に、その仮定した時点から一定時間の間におけるエンジン11に係る出力軸トルクの不足分相当を電動モータ22に係る出力軸トルクにより補填する際に電動モータ22が必要とするエネルギーを予測する。
具体的には、ステップ210の処理に代えて、アップシフトして走行したと仮定した場合、上述した任意の時点から所定時間までの間における必要な電気エネルギーの演算を行うようにすればよい。この電気エネルギーの演算は、上述した電気エネルギーEmと同様に行えばよい。
第6の変速線選択部は、残エネルギー導出部により導出された出力可能な残存電気エネルギーが第4の必要エネルギー予測部により予測された必要なエネルギーより大きい場合には、アップシフト変速線として燃費重視のアップシフト変速線を選択し、一方そうでない場合には、アップシフト変速線として駆動力重視のアップシフト変速線を選択する。具体的には、ステップ212,214,216と同様な処理を行うようにすればよい。
これにより、第5の変速線選択部により駆動力重視の変速線が選択されている場合であって、出力軸回転速度が燃費重視の変速点以上であり駆動力重視の変速点未満である場合の任意の時点において、残エネルギー導出部により導出された出力可能な残存電気エネルギーが第4の必要エネルギー予測部により予測された必要なエネルギーより大きい場合には、大きいと判断した時点にてアップシフトすることができる。一方そうでない場合には、アップシフトをすることなく、駆動力重視のアップシフト変速点にてアップシフトする。したがって、バッテリ16に残存している出力可能な電気エネルギーが第4の必要エネルギー予測部により予測された必要なエネルギーより大きいと判断した場合には、バッテリ16に残存している出力可能な電気エネルギーが比較的多い場合と比較して、シフトアップする点は燃費重視の変速点より駆動力重視の変速点寄りとなるが、バッテリ16に残存している出力可能な電気エネルギーが比較的少ない場合であってもそのエネルギーを有効利用することができ、また、一定時間の間において、エンジン11に係る出力軸トルクの不足分相当を電動モータ22に係る出力軸トルクにより補填することが可能で、一定時間の間において、元の変速段へダウンシフトする必要がなく、従来のように、アップシフトと元の変速段へのダウンシフトとが短時間の間に実施される煩わしい変速を抑制することができる。一方、バッテリ16に残存している出力可能な電気エネルギーが第4の必要エネルギー予測部により予測された必要なエネルギーより小さいと判断し続ける場合には、駆動力重視のアップシフト変速点までアップシフトをすることがないので、元の変速段へダウンシフトする必要がなく、従来のように、アップシフトと元の変速段へのダウンシフトとが短時間の間に実施される煩わしい変速を抑制することができる。この様にして、走行性を低下することなく、燃費性と変速フィーリングとを両立することができる。
また、上述したように、第2の変速線選択部は、第1の変速線選択部により駆動力重視のアップシフト変速線が選択されている場合には、出力軸回転速度が燃費重視の変速点以上であり駆動力重視のアップシフト変速点未満である場合の任意の時点において、残エネルギー導出部により導出された出力可能な残存電気エネルギーの大きさによりアップシフト変速線として燃費重視のアップシフト変速線または駆動力重視のアップシフト変速線を選択する(請求項4相当)。
これにより、第1の変速線選択部により駆動力重視の変速線が選択されている場合であって、出力軸回転速度が燃費重視の変速点以上であり駆動力重視の変速点未満である場合の任意の時点において、残エネルギー導出部(ステップ212)により導出された出力可能な残存電気エネルギーが判定値(例えば、上述した第2の必要エネルギー予測部により予測された必要なエネルギー)より大きい場合には、大きいと判定した時点にてアップシフトすることができる。一方そうでない場合には、アップシフトをすることなく、駆動力重視のアップシフト変速点にてアップシフトする。したがって、残エネルギー導出部により導出された出力可能な残存電気エネルギーが判定値より大きい場合には、バッテリ16に残存している出力可能な電気エネルギーが比較的多い場合と比較して、シフトアップする点は燃費重視の変速点より駆動力重視の変速点寄りとなるが、バッテリ16に残存している出力可能な電気エネルギーが比較的少ない場合であってもそのエネルギーを有効利用することができ、一方、残エネルギー導出部により導出された出力可能な残存電気エネルギーが判定値より小さいと判断し続ける場合には、駆動力重視のアップシフト変速点までアップシフトをすることがないので、元の変速段へダウンシフトする必要がなく、従来のように、アップシフトと元の変速段へのダウンシフトとが短時間の間に実施される煩わしい変速を抑制することができる。この様にして、走行性を低下することなく、燃費性と変速フィーリングとを両立することができる。
また、変速線として燃費重視の変速線が選択されている場合において、走行抵抗が想定外に大きくなった場合(例えば走行している路面が平坦から登坂になった場合)は、予測したエネルギーより多くのエネルギーを消費することで、バッテリ16の蓄電量が低下し、不足しているエンジン11に係る出力軸トルクを電動モータ22に係る出力軸トルクで補填できなくなることがある。これに対し、自動変速機12はアクセルペダル17の開度と出力軸12cの回転速度との関係を示すダウンシフト変速線を使用して変速段がシフトダウンされる。また、判定部(ステップ310)は、第1、2、3、4、5または第6の変速線選択部により燃費重視の変速段が選択されている場合には、残エネルギー導出部により導出された出力可能な残存電気エネルギーがゼロであるか否かを判定する。第3の変速線選択部(ステップ310,312,314)は、判定部により残エネルギー導出部により導出された出力可能な残存電気エネルギーがゼロであると判定された場合に、ダウンシフト変速線として駆動力重視のダウンシフト変速線を選択し、そうでない場合には、ダウンシフト変速線として燃費重視のダウンシフト変速線を維持する(請求項7相当)。
これにより、走行抵抗が想定外に大きくなり、予測するエネルギーより多くのエネルギーを消費することで、バッテリ16の蓄電量が低下した場合において、電動モータ22によって出力軸トルクを補填できなくなっても、ダウンシフト変速線を駆動力重視のダウンシフト変速線に戻すことで、エンジン11のみによって必要な出力軸トルクを得ることにより走行性を確保することができる。
なお、本発明は、ガソリンエンジンだけでなくディーゼルエンジンにも適用可能である。