JP6002635B2 - 生タイヤの加熱方法とその装置 - Google Patents
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Description
生タイヤの加熱方法としては、生タイヤの内部にヒーターランプを配置し、ヒーターランプの熱輻射により生タイヤを加熱する方法(例えば、特許文献1参照)や、生タイヤ内のスチールコードを電磁誘導加熱により加熱し、この熱を利用して生タイヤを加熱する方法(例えば、特許文献2,3参照)などが提案されている。
また、電磁波を利用した加熱方法としては、マグネトロンで発生させた電磁波の一つであるマイクロ波を導波管により生タイヤを入れた加熱室に導入し、ゴム配合物の誘電損失による自己発熱を利用して生タイヤを加熱する方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。
また、電磁誘導による加熱方法では、スチールコードのみが加熱されるので、スチールコードを高温にする必要がある。しかし、スチールコードを高温にするとスチールコードと周囲のゴム配合物との接着性が阻害される虞があるので、スチールコードの温度を接着性が阻害されない程度の温度(例えば、100℃以下)にする必要があり、その結果、加熱時間が長くなってしまっていた。
また、マイクロ波による加熱方法では、利用している波長が短いため、誘電損失体であるゴム配合物の誘電損失率が高い場合には、マイクロ波のエネルギーがタイヤの表層部で消費されやすいことから局部発熱し易く、その結果、生タイヤ全体を均一に加熱することできなかった。また、波長が短いため、タイヤ構成材料であるスチール部材近傍で過剰発熱が発生することがあった。
すなわち、本願発明は、加硫前の生タイヤを高周波誘電加熱方式により加熱する際に、生タイヤの内部の導電性部材を高周波発生装置の一方の出力端子を接続して高周波誘電加熱を行うことを特徴とする。
このような工程により生タイヤを加熱したので、高周波をゴム配合物の内部まで確実に到達させることができ、生タイヤを効率よく加熱することができる。
また、高周波発生装置の一方の出力端子を、ビード、プライ、ベルトのスチールコードに接続したので、トレッド部を確実に加熱することができる。
また、前記高周波の波長を1m〜100mの範囲として、高周波の電力半減深度を大きくしたので、トレッド部の厚さが厚い場合でも内部まで容易に加熱することができる。
また、高周波のエネルギーもマイクロ波よりも低いので、トレッド部表層での局部発熱やスチール部材近傍での過剰発熱の発生を抑制できる。したがって、生タイヤを損傷することなく、内部まで均一に加熱することができる。
また、本願発明は、前記生タイヤの加熱温度を100℃以上130℃以下としたことを特徴とする。
これにより、加硫開始時の温度を確保できるとともに、生タイヤの加硫が進行することを抑制することができる。
このような構成を採ることにより、高周波を誘電損失体であるゴム配合物の内部まで到達させてゴム配合物を有効に誘電加熱させることができる。
また、本願発明は、高周波発生装置の発生する高周波の波長が1m〜100mの範囲にあることを特徴とする。
これにより、生タイヤの内部まで容易に加熱することができるとともに、生タイヤの表層での局部発熱やスチール部材近傍での過剰発熱の発生を抑制できるので、生タイヤを内部まで均一に加熱することができる。
電極板11は金属板から構成され、生タイヤ20の径方向外側でトレッド部21を覆うように配置されて、高周波発生装置13の(+)側の出力端子とケーブル線11cを介して接続される。電極板11は高周波発生装置13の電源電極として機能する。
接続端子12は、生タイヤ20のプライ22のスチールコード22cに電気的に接触する金属製の接触子12kを有し、高周波発生装置13の(−)側の出力端子と、ケーブル線12cを介して接続される。これにより、プライ22のスチールコード22cを高周波発生装置13のアース電極として機能させることができる。
高周波発生装置13は、電極板11とスチールコード22cとの間に高周波電流を流して高周波を発生させることで、電極板11とスチールコード22cとの間に配置された生タイヤ20のトレッド部21に高周波を照射する。照射する高周波の波長としては、1m〜100mの範囲にあることが好ましく、5m〜50mの範囲であれば更に好ましい。
本例では、図2に示すように、電極板11と接続端子12とを複数準備し、電極板11を生タイヤ20の全周に配置するとともに接続端子12を複数本のスチールコード22cにそれぞれ接続して、生タイヤ20を周方向に均一に加熱するようにしている。
リム部14aはホイールリムと同様の構造で、生タイヤ20の一対のビード部23a,23bを固定する。また、ディスク部14bには空気供給装置16から送られてきた空気を保持部材14の中空部14sに供給するための空気供給孔14pが設けられ、リム部14aにはリム部14aに取付けられたときの生タイヤ20の内部と前記中空部14sとを連通させるための空気導入孔14qが設けられている。
空気供給装置16は生タイヤ20の内部に所定の圧力の空気を供給する。
エアホース17は、一端が空気供給装置16の空気供給口16pに連結され、他端が保持部材14の空気供給孔14pに取付けられて、空気供給装置16から供給される空気を保持部材14の中空部14sに供給する。なお、空気供給孔14pは図示しない開閉弁により開閉可能である。
まず、生タイヤ20を保持部材14のリム部14aに装着する。
次に、空気供給装置16と保持部材14とをエアホース17で連結し、生タイヤ20の内部に空気を供給する。空気供給装置16から供給される空気はエアホース17から保持部材14の空気供給孔14pを通って中空部14sに入り、リム部に設けられた空気導入孔14qから生タイヤ20内に導入される。
これにより、生タイヤを所定の内圧で膨張させることができるので、生タイヤ20の形状を保持することができる。したがって、加熱時における電極板11と生タイヤ20との距離を一定に保つことができる。
生タイヤ20を所定の内圧に保持した後には、開閉弁を閉じてエアホース17を保持部材14から取り外した後、電極板11をトレッド部21の表面から所定距離離して配置するとともに、接続端子12をプライ22のスチールコード22cに接触させて固定する。
本例では、図3(a)に示すように、予めプライ22外側を覆うサイドトレッド24の一部を除去し、更に、プライ22を被覆しているトリートゴム22tを除去してプライ22のスチールコード22cを露出させた状態にしてある。そして、図3(b)に示すように、この露出されたスチールコード22cに接続端子12の接触子12kを接触させて固定した後、接続端子12とケーブル線12cとを接続する。
加熱後には、図3(c)に示すように、露出部に別途成形したゴム部材24m(ここでは、サイドトレッド24のゴム部材と同じ特性を有するゴム部材)を貼り付けてから加熱された生タイヤ20を加硫する。
なお、接続端子12の取り付けは、スチールコード22cを露出させる作業の後に予め行っておき、加熱準備時には、接続端子12とケーブル線12cの接続作業のみを行う方が作業効率は良い。
また、電極板11及び接続端子12と高周波発生装置13との接続は電極板11及び接続端子12の配置前に行ってもよいし、配置後に行ってもよい。
本例では、生タイヤ20に波長が1m〜100mの範囲にある高周波を照射するため、高周波発生装置13を、例えば、13.56MHz,27.12MHzなどの3MHz〜300MHzの範囲の発振周波数で発振させている。
電極板11は送信アンテナに相当し、導電性材料であるスチールコード22cは受信アンテナに相当するので、電極板11から照射された高周波は、図1の一点鎖線に示すようにトレッド部21の表層からトレッド部21の内部まで達した後、プライ22のスチールコード22cに達するような伝播路を伝播する。
一方、誘電損失体に高周波を照射したときに、エネルギーが半減するときの深さ(電力半減深度)Dは、以下の式(2)より表わせる。
従来のマイクロ波による加熱方法では、主に、2.45GHz,5.8GHzなどの周波数のマイクロ波が用いられている。マイクロ波は周波数が高いので発熱量は大きいものの、電力半減深度Dが浅いため、トレッド部21のような厚いゴム部材を均一に加熱することが困難であったが、本例では、波長が1m〜100m(周波数;3MHz〜300MHz)の範囲にある波長の長い(周波数の低い)電磁波である高周波を用いているので、トレッド部21のゴム配合物の誘電損失率が高い場合でも、トレッド部21の表層での損失が大きくなって局所加熱を起こすようなことがない。したがって、トレッド部21を内部まで均一に加熱することができる。また、厚みが厚いトレッド部21であっても、従来のヒーターランプ等による外部加熱方式と比べてトレッド部21の表層から内部までを短時間で効率的に加熱できるだけでなく、エネルギー効率も高いので、生産性を大幅に改善できる。
また、本例では、電極板11を生タイヤ20の全周に配置して生タイヤ20を加熱しているので、生タイヤ20を周方向に均一に加熱することができる。
高周波の照射を開始してから所定時間経過後には、高周波発生装置13を停止させ、生タイヤ20の加熱を終了する。
このとき、生タイヤ20の加熱温度としては、100℃以上130℃以下とすることが好ましい。加熱温度を100℃以上としたのは、加熱後から加硫開始までの時間に生タイヤ20の温度が低下しないようにするためであり、130℃以下としたのは、生タイヤ20の加硫が進行することを抑制するためである。
生タイヤの温度と必要加硫時間との関係は、例えば、加硫後のタイヤの加硫遅れが発生する部分の温度を針式温度センサーで測定し、予め求めておいた加熱後の生タイヤの温度と加硫時間との関係を調べるなどして求めることができる。
本発明の生タイヤ20は、タイヤ加硫において伝熱の遅いトレッド部21が均一に加熱されているので、加硫温度を上げることなく加硫時間を短縮できる。加熱時間を短縮できれば、モールドに直接接するトレッド部21の表層のゴム配合物が過剰な熱履歴を受けることがないので、タイヤの熱劣化を抑制することができる。
また、加硫時間だけでなく、加硫温度についても調整すれば、タイヤの品質を更に向上させることができる。
なお、プライ22や第1ベルト24a及び第2ベルト24bを覆っているトリートゴムは厚さが薄いので、スチールコード22c,24cを露出させなくてもアース電極として使用可能であるが、トレッド部21を確実に加熱するには、本例のように、導電性部材であるスチールコード22cに直接接続端子12を接触させる方が好ましい。
また、前記例では、プライ22外側を覆うサイドトレッド24の一部を除去してから、スチールコード22cを露出させたが、除去箇所は図3に示した箇所に限定されるものではなく、図3の射線で示すような、折り返し部を含むプライ22を覆っている部分であればどこを除去してもよい。
また、前記例では、肉厚なゴム配合物で形成されたトレッド部21に高周波を照射したが、本発明はこれに限るものではなく、ビード部23a,23bなど生タイヤ20の他の肉厚部位を加熱する場合にも適用可能である。
14q 空気導入孔、15 基台、16 空気供給装置、17 エアホース、
20 生タイヤ、21 トレッド部、22 プライ、22c スチールコード、
23a,23b ビード部、24a,24b ベルト。
Claims (8)
- 加硫前の生タイヤを高周波誘電加熱方式により加熱する際に、生タイヤの内部の導電性部材を高周波発生装置の一方の出力端子を接続して高周波誘電加熱を行うことを特徴とする生タイヤの加熱方法。
- 前記生タイヤを構成するゴム配合物の一部を除去して前記導電部材を露出させる工程と、
前記露出された導電性部材を高周波発生装置の一方の出力端子に接続し、生タイヤの外側に高周波発生装置の他方の出力端子に接続された電極板を配置する工程と、
前記電極板と前記導電性部材との間に高周波電圧を印加して、前記電極板と前記導電性部材との間に配置された前記生タイヤの加熱予定部分に高周波を照射する工程とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の生タイヤの加熱方法。 - 前記導電性部材がビード、プライ、ベルトのいずれかであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の生タイヤの加熱方法。
- 前記導電性部材がスチールコードであることを特徴とする請求項3に記載の生タイヤの加熱方法。
- 前記高周波の波長が1m〜100mの範囲にあることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の生タイヤの加熱方法。
- 前記生タイヤの加熱温度を100℃以上130℃以下としたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の生タイヤの加熱方法。
- 高周波発生装置により発生した高周波を生タイヤに照射して前記生タイヤを加熱する生タイヤの加熱装置であって、
前記生タイヤの径方向外側に配置された電極板を備え、
前記電極板は前記高周波発生装置の一方の出力端子に接続され、
前記生タイヤの内部のスチールコードと前記高周波発生装置の他方の出力端子とが接続されていることを特徴とする生タイヤの加熱装置。 - 前記高周波発生装置の発生する高周波の波長が1m〜100mの範囲にあることを特徴とする請求項7に記載の生タイヤの加熱装置。
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