<全体構成>
図1は、スイッチングレギュレータの全体構成を示すブロック図である。本構成例で示される昇降圧型のスイッチングレギュレータ1は、半導体装置10と、これに外部接続される種々のディスクリート部品(例えば、スイッチング素子M1及びM2、コイル(インダクタ)L1、ダイオードD1及びD2、コンデンサC1〜C5、並びに、抵抗R1及びR2)を有する。
スイッチング素子M1及びM2は、それぞれ、入力電圧INを昇圧または降圧して出力電圧OUTを生成するためにオン/オフされる第1スイッチング素子(降圧用スイッチング素子)及び第2スイッチング素子(昇圧用スイッチング素子)に相当する。スイッチング素子M1及びM2は、それぞれ制御電圧G1及びG2に応じてオン/オフ(両端間の導通/非導通)を切り替えるスイッチング動作を行う。スイッチング素子M1及びM2としてMOSFET[metal oxide semiconductor field effect transistor]が用いられている場合、スイッチング動作は、ゲートに入力される制御電圧G1及びG2に応じて、ソース・ドレイン間の導通/非導通を切り替える動作となる。本構成例において、スイッチング素子M1はPチャネル型MOSFETであり、スイッチング素子M2はNチャネルMOSFETであるが、これに限定されるものではない。
半導体装置(レギュレータIC)10は、内部電源生成回路21と、バンドギャップ電圧生成回路22と、低電圧誤動作防止回路23と、サーマルシャットダウン回路24と、発振回路31と、スロープ生成回路32と、ソフトスタート回路33と、誤差増幅器34と、オペアンプ35と、比較器36及び37と、抵抗38a及び38bと、ショート回路保護用比較器41と、過電圧保護用比較器42と、制御回路51と、過電流検出回路52と、ドライバ53と、VL電圧生成回路54と、ドライバ55と、論理和演算器61と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタM3(以下、「スイッチング素子M3」という)と、を有する。
また、半導体装置10は、外部との接続に用いられる端子T1〜T15を有する。端子T1は、入力電圧印加端子である。端子T2及びT3は、スイッチ電流検出端子である。端子T4は、スイッチング素子M1の制御端子である。端子T5は、ドライバ53の下側駆動電圧印加端子である。端子T6は、ドライバ55の上側駆動電圧印加端子である。端子T7は、スイッチング素子M2の制御端子である。端子T8は、接地端子である。端子T9は、ソフトスタート調整端子である。端子T10は、帰還電圧印加端子である。端子T11は、位相補償端子である。端子T12は、発振周波数調整端子である。端子T13は、内部電源電圧印加端子である。端子T14は、イネーブル端子である。端子T15は、正常動作信号の出力端子である。
端子T1は、入力電圧IN(例えば4〜40V)の印加端(バッテリなどの外部電源)に接続されている。また、端子T1は、コンデンサC1の一端、コンデンサC2の一端、及び、抵抗R1の一端にも接続されている。
コンデンサC1の他端は接地端に接続されている。コンデンサC2の他端は端子T5に接続されている。抵抗R1の他端はスイッチング素子M1のソースに接続されている。抵抗R1の両端は、それぞれ、端子T2及び端子T3に接続されている。スイッチング素子M1のドレインは、ダイオードD1のカソードとコイルL1の一端に接続されている。ダイオードD1のアノードは、接地端に接続されている。ダイオードD1は、第1整流素子に相当し、同期整流トランジスタと置換することも可能である。
なお、スイッチング素子M1のドレインには、スイッチング素子M1のオン/オフに応じて矩形波状のスイッチ電圧SW1が現れる。スイッチング素子M1がオンされているときには、スイッチ電圧SW1がハイレベル(ほぼ入力電圧IN)となり、スイッチング素子M1がオフされているときには、スイッチ電圧SW1がローレベル(ほぼ接地電圧GND)となる。
コイルL1の他端は、ダイオードD2のアノードとスイッチング素子M2のドレインに接続されている。スイッチング素子M2のソースは接地端に接続されている。ダイオードD2のカソードは、コンデンサC3の一端と出力電圧OUTの印加端に接続されている。コンデンサC3の他端は、接地端に接続されている。ダイオードD2は、第2整流素子に相当し、同期整流トランジスタと置換することも可能である。
なお、スイッチング素子M2のドレインには、スイッチング素子M2のオン/オフに応じて矩形波状のスイッチ電圧SW2が現れる。スイッチング素子M2がオフされているときには、スイッチ電圧SW2がハイレベル(ほぼ出力電圧OUT)となり、スイッチング素子M2がオンされているときには、スイッチ電圧SW2がローレベル(ほぼ接地電圧GND)となる。
スイッチング素子M1のゲートは端子T4に接続されている。スイッチング素子M2のゲートは、端子T7に接続されている。抵抗R2は、発振回路31が生成する矩形波電圧CLKの周波数調整に用いられる抵抗であり、一端が端子T12に接続され、他端が接地端に接続されている。コンデンサC4は、主に内部電源電圧REGの位相補償に用いられるコンデンサであり、一端が端子T13に接続され、他端が接地端に接続されている。端子T10には、出力電圧OUTに応じた帰還電圧FBが入力される。端子T10と端子T11は、外付けの位相補償回路(抵抗とコンデンサ)を介して接続されている。
内部電源電圧生成回路21は、内部電源電圧REGが印加される端子T13とイネーブル信号が外部入力される端子T14に接続されており、入力電圧INから半導体装置10の内部で使用される内部電源電圧REGを生成する。内部電源電圧REGは、入力電圧INに比べて電圧値等の精度が高くなるように生成される。内部電源電圧REGは、サーマルシャットダウン回路24やドライバ55の駆動電圧等として用いられる。
内部電源電圧生成回路21は、生成した内部電源電圧REGを、端子T13に接続された外部ライン(半導体装置10の外部に設けられた伝送ライン)を介して半導体装置10の外部に一旦送出した後、半導体装置10内に引き込む。例えば外部ラインに送出された内部電源電圧REGは、端子T6を介して半導体装置10内に戻り、ドライバ55の電源端子に入力される。この外部ラインには位相補償用のコンデンサC4が接続されている。
このように、半導体装置10では、内部電源電圧REGの伝送ラインの少なくとも一部を半導体装置10の外側に設けて、位相補償用のコンデンサC4を外付けとすることにより、半導体装置10の省スペース化等が容易となっている。
バンドギャップ電圧生成回路22は、内部電源電圧生成回路21から供給される内部電源電圧REGを用いてバンドギャップ電圧を生成する。バンドギャップ電圧は、半導体のバンドギャップを利用して内部電源電圧REGよりも更に安定するように生成され、半導体装置10内の各部において利用される。
低電圧誤動作防止回路23は、半導体装置10においてUVLO[Under Voltage Lock Out]機能を発揮させる回路である。低電圧誤動作防止回路23は、入力電圧INが低過ぎることに起因する誤動作を防ぐため、例えば、所定値以上の入力電圧INが入力されないと半導体装置10がオンしないようにする。
サーマルシャットダウン回路24は、過熱(過度な温度上昇)によるスイッチングレギュレータ1の熱暴走等を防止する回路である。サーマルシャットダウン回路24は、例えば、温度センサを用いて温度を継続的に検知し、検知温度が上限値を超えた場合に、スイッチング素子M1及びM2のスイッチング動作が停止されるようにする。なお、サーマルシャットダウン回路24の動作精度等の観点から、サーマルシャットダウン回路24の駆動電圧としては、入力電圧INではなく、より電圧値等の精度が高い内部電源電圧REGが用いられる。
発振回路31は、所定周波数の矩形波電圧CLKを生成してスロープ生成回路32と制御回路41に出力する。矩形波電圧CLKの周波数は、抵抗R2を用いて調整することが可能である。
スロープ生成回路32は、発振回路31が生成した矩形波電圧CLKに対して、立ち上り(或いは立ち下り)に傾斜を付ける処理を施すことにより、スロープ電圧SLOPE(鋸波電圧、三角波電圧、或いは、これに準じた波形の電圧信号)を生成し、これを比較器36及び37の非反転入力端子に出力する。なお、スロープ電圧SLOPEは、その最大値VMAXが反転基準電圧V2よりも大きく、且つ、その最小値VMINが反転基準電圧V2よりも小さく設定されている。
ソフトスタート回路33は、出力電圧OUTのオーバーシュートや突入電流の発生等を防ぐため、ソフトスタート機能を発揮する回路である。ソフトスタート回路33は、スイッチングレギュレータ1の起動時に誤差増幅器34へ適切なソフトスタート電圧SSを供給し、出力電圧OUTが緩やかに立ち上がるようにする。ソフトスタート電圧SSは、例えば過電流検出回路52から受け取る過電流検出信号に基づいてディスチャージされる。ソフトスタート回路33には、ソフトスタート時間設定用のコンデンサC5が接続されている。コンデンサC5は、一端が端子T9を介してソフトスタート回路33に接続されており、他端が接地端に接続されている。
誤差増幅器34は、反転入力端子に印加される帰還電圧FB(出力電圧OUTの分圧電圧)と、非反転入力端子に印加される所定の基準電圧V1との差分を増幅して誤差電圧VAを生成する誤差信号生成回路に相当する。なお、スイッチングレギュレータ1の起動時には、誤差増幅器34の非反転入力端子に入力される電圧として、基準電圧V1ではなくソフトスタート電圧SSが優先される。誤差増幅器34の出力端は、抵抗38aを介してオペアンプ35の反転入力端子に接続されているとともに、比較器36の反転入力端子及び端子T11に接続されている。
オペアンプ35の非反転入力端子には、所定の反転基準電圧V2が印加されている。オペアンプ35の出力端子は、比較器37の反転入力端子に接続されるとともに、抵抗38bを介してオペアンプ35の反転入力端子に接続されている。なお、抵抗38a、抵抗38b、及び、オペアンプ35は、所定の反転基準電圧V2を基準として、誤差電圧VAを反転させた反転誤差電圧VBを生成する信号反転回路(反転増幅器)に相当する。すなわち、誤差電圧VAが高くなると反転誤差電圧VBが低くなり、逆に、誤差電圧VAが低くなると反転誤差電圧VBが高くなる。
比較器36は、誤差電圧VAとスロープ電圧SLOPEを比較して比較電圧CMP1を生成する第1比較回路に相当する。比較電圧CMP1は、誤差電圧VAがスロープ電圧SLOPEよりも大きいときにローレベルとなり、誤差電圧VAがスロープ電圧SLOPEよりも小さいときにハイレベルとなる。
比較器37は、反転誤差電圧VBとスロープ電圧SLOPEを比較して比較電圧CMP2を生成する第2比較回路に相当する。比較電圧CMP2は、反転誤差電圧VBがスロープ電圧SLOPEよりも大きいときにローレベルとなり、反転誤差電圧VBがスロープ電圧SLOPEよりも小さいときにハイレベルとなる。
ショート回路保護用比較器41は、非反転入力端子に帰還電圧FBが、反転入力端子に所定電圧V3が各々入力され、これらの電圧の比較結果をショート回路保護信号SCPとして出力する。また、過電圧保護用比較器42は、非反転入力端子に帰還電圧FBが、反転入力端子に所定電圧V4が各々入力され、これらの電圧の比較結果を過電圧保護信号OVPとして出力する。
制御回路51は、比較電圧CMP1及びCMP2と矩形波電圧CLKに基づいて、スイッチング素子M1及びM2のオン/オフ制御(PWM[pulse width modulation]制御)を行う。
より具体的に述べると、制御回路51は、比較電圧CMP1と矩形波電圧CLKに基づいて、スイッチング素子M1をオン/オフするための制御電圧G1を生成する。制御電圧G1は、ドライバ53及び端子T4を介してスイッチング素子M1のゲートに入力される。このように、ドライバ53は、制御回路51とスイッチング素子M1を結ぶ、制御電圧G1の伝送ライン上に設けられている。
制御電圧G1がハイレベルのとき、スイッチング素子M1はオフとなり、制御電圧G1がローレベルのとき、スイッチング素子M1はオンとなる。これにより、比較電圧CMP1のデューティに応じて、スイッチング素子M1のスイッチング動作が行われる。
また、制御回路51は、比較電圧CMP2と矩形波電圧CLKに基づいて、スイッチング素子M2をオン/オフするための制御電圧G2を出力する。制御電圧G2は、ドライバ55及び端子T7を介して、スイッチング素子M2のゲートに入力される。このように、ドライバ55は、制御回路51とスイッチング素子M2を結ぶ、制御電圧G2の伝送ライン上に設けられている。
制御電圧G2がハイレベルのとき、スイッチング素子M2はオンとなり、制御電圧G2がローレベルのとき、スイッチング素子M2はオフとなる。これにより、比較電圧CMP2のデューティに応じて、スイッチング素子M2のスイッチング動作が行われる。
過電流検出回路52は、端子T2及び端子T3の電圧に基づいて抵抗R1を流れる電流の値を検出する。そして、過電流検出回路52は、当該検出値が所定の上限値を超えたとき(つまり抵抗R1に流れる電流が過電流状態であることを検出したとき)に、過電流検出信号の波形を変化させる。なお、過電流検出回路52が実施する過電流保護動作の詳細については後述する。
ドライバ53の第1電源端子は、端子T1に接続されており、入力電圧INが入力される。VL電圧生成回路54は、ドライバ53の第2電源端子と端子T5との間に接続されており、入力電圧INの電圧を一定電圧Vsだけ低下させた電圧VLを生成し、ドライバ53の第2電源端子に供給する。この電圧Vsは、ドライバ53の駆動電圧(第1電源端子の電圧と第2電源端子の電圧との差)として適正な大きさの電圧である。
論理和演算器61の第1入力端は、ショート回路保護信号SCPの印加端に接続されている。論理和演算器61の第2入力端は、過電圧保護信号OVPの印加端に接続されている。論理和演算器61の出力端は、スイッチング素子M3のゲートに接続されている。スイッチング素子M3のソースは、接地単に接続されている。スイッチング素子M3のドレインは、端子T15に接続されている。
論理和演算器61の入力端にショート回路保護信号SCP及び過電圧保護信号OVPのいずれかが印加されると、論理和演算器61の出力信号は、ハイレベルに固定される。これにより、スイッチング素子M3のソースとゲートとの間に、スイッチング素子M3のオンスレッショルド電圧を上回るような電位差を生じさせる。
この結果、スイッチング素子M3はオンとなり、スイッチング素子M3のソースとドレインとの間が短絡される。この短絡により正常動作信号が停止されることにより、端子T15に外部接続された装置は、半導体装置10に異常が発生したことを検知する。
図2は、VL電圧生成回路54の構成を示している。VL電圧生成回路54では、入力電圧INの入力端と接地端との間において、ツェナーダイオード54a及び54bと定電流源54cとが直列に接続された形態で設けられている。なお、ツェナーダイオード54a及び54bのツェナー電圧の和は電圧Vsに設定されており、定電流源54cは、電圧VLの生成に必要な電流Iを流すように設定されている。
VL電圧生成回路54によれば、ツェナーダイオード54a及び54bと定電流源54cとの間にて電圧VL(=IN−Vs)が生成され、ドライバ53の第2電源端子に供給される。なお、VL電圧生成回路54の構成は上述した形態に限られることなく、他の形態となっていても構わない。
VL電圧生成回路54によれば、入力電圧INの電圧変動などに関わらずドライバ53に適正な駆動電圧を供給し、ドライバ53に過剰な電圧が加わることは防止される。このように、VL電圧生成回路54は、ドライバ53の第1電源端子の電圧と第2電源端子の電圧との差を略一定に保つ、電圧調整回路としての役割を果たす。
<スイッチングレギュレータの基本動作>
次に、スイッチングレギュレータ1の基本動作について説明する。スイッチングレギュレータ1の動作形態は、基本的に、出力電圧OUTが目標電圧より小さいときには昇圧動作が行われる昇圧モードとなり、逆に、目標電圧より大きい場合には降圧動作が行われる降圧モードとなる。
昇圧モードにおいては、誤差電圧VAがスロープ電圧SLOPEより定常的に大きくなる。従って、昇圧モードにおいては、比較電圧CMP1が定常的にローレベルになり、スイッチング素子M1は定常的にオンになる。
ここで、反転誤差電圧VBがスロープ電圧SLOPEより大きいときには、比較電圧CMP2がローレベルとなり、反転誤差電圧VBがスロープ電圧SLOPEより小さいときには、比較電圧CMP2がハイレベルとなる。このように、比較電圧CMP2は、反転誤差電圧VBとスロープ電圧SLOPEとの大小関係に応じたレベル変動を生じ、スイッチング素子M2は、この比較電圧CMP2のレベル変動に応じてオン/オフが切り替わる。
スイッチング素子M2がオンになると、コイルL1に磁気エネルギーが蓄積され、スイッチング素子M2がオフになると、コイルL1に蓄積されていた磁気エネルギーが放出される。昇圧モードでは、スイッチング素子M2のオン/オフの切替が繰り返されることにより、コイルL1における磁気エネルギーの蓄積と放出が繰り返される。このような昇圧動作がなされる結果、入力電圧INを昇圧した出力電圧OUTが生成される。
一方、降圧モードにおいては、反転誤差電圧VBがスロープ電圧SLOPEより定常的に大きくなる。従って、降圧モードにおいては、比較電圧CMP2が定常的にローレベルになり、スイッチング素子M2は定常的にオフになる。
ここで、誤差電圧VAがスロープ電圧SLOPEより大きいときには、比較電圧CMP1がローレベルとなり、誤差電圧VAがスロープ電圧SLOPEより小さいときには、比較電圧CMP1がハイレベルとなる。このように、比較電圧CMP1は、誤差電圧VAとスロープ電圧SLOPEとの大小関係に応じたレベル変動を生じ、スイッチング素子M1は、この比較電圧CMP1のレベル変動に応じてオン/オフが切り替わる。
スイッチング素子M1がオンになると、コイルL1に磁気エネルギーが蓄積され、スイッチング素子M1がオフになると、コイルL1に蓄積されていた磁気エネルギーが放出される。降圧モードでは、スイッチング素子M1のオン/オフの切替が繰り返されることにより、コイルL1における磁気エネルギーの蓄積と放出が繰り返される。このような降圧動作がなされる結果、入力電圧INを降圧した出力電圧OUTが生成される。
なお、スイッチングレギュレータ1は、入力電圧INと出力電圧OUTが近いときに、スイッチング素子M1及びM2が共にオン/オフを繰り返す昇降圧モードとなる。
<昇降圧動作の詳細>
図3は、スイッチングレギュレータ1の動作モード(降圧モード、昇降圧モード、及び昇圧モード)を示すテーブルである。本テーブルには、入力電圧IN及び出力電圧OUTの大小関係と、これに対応するスイッチングレギュレータ1の動作モード、並びに、スイッチング素子M1及びM2のオン/オフ状態(スイッチ電圧SW1及びSW2の波形)が描写されている。
スイッチングレギュレータ1において、制御回路51は、比較電圧CMP1及びCMP2に基づいてスイッチング素子M1及びM2を独立制御することにより、入力電圧INと出力電圧OUTの大小関係に応じた動作モードの切替制御と、制御電圧G1及びG2のデューティ制御を同時並列的に実施する。以下、具体的に説明する。
入力電圧INが出力電圧OUTよりも大きい状態(IN>OUT)において、制御回路51は、スイッチング素子M1を比較電圧CMP1に応じたデューティでオン/オフし、スイッチング素子M2を定常的にオフするように、制御電圧G1及びG2を生成する。この状態は、スイッチングレギュレータ1の降圧モードに相当する。
また、入力電圧INが出力電圧OUTと近い状態(IN≒OUT)において、制御回路51は、スイッチング素子M1を比較電圧CMP1に応じたデューティでオン/オフし、スイッチング素子M2を比較電圧CMP2に応じたデューティでオン/オフするように、制御電圧G1及びG2を生成する。この状態は、スイッチングレギュレータ1の昇降圧モードに相当する。
また、入力電圧INが出力電圧OUTよりも小さい状態(IN<OUT)において、制御回路51は、スイッチング素子M1を定常的にオンし、スイッチング素子M2を比較電圧CMP2に応じたデューティでオン/オフするように、制御電圧G1及びG2を生成する。この状態は、スイッチングレギュレータ1の昇圧モードに相当する。
ここで、スイッチングレギュレータ1の発熱量(損失)を低減するために重要な点は、スイッチング素子M1及びM2がいずれもオン/オフされる昇降圧モードにおいて、スイッチング素子M1のオン期間中には、スイッチング素子M2を極力長くオフし、スイッチング素子M1のオフ期間中には、スイッチング素子M2を極力長くオンすることである。
上記動作を実現するために、制御回路51では、スイッチング素子M1をオンすると同時にスイッチング素子M2を必ずオフさせるためのタイミング制御が実施される。以下では、図4Aを参照しながら、上記のタイミング制御について詳細に説明する。
図4Aは、昇降圧動作の一例を示すタイミングチャートであり、上から順に、矩形波電圧CLK、スロープ電圧SLOPE、制御電圧G1及びG2(比較電圧CMP1及びCMP2と同等)、並びに、スイッチ電圧SW1及びSW2が描写されている。図4Aでは、スイッチングレギュレータ1が昇降圧モードとなる状況の一例として、反転誤差電圧VBがスロープ電圧SLOPEの最大値VMAXよりも小さくかつ誤差電圧VAよりも大きい状況が例示されている。
時刻t1において、矩形波電圧CLKがローレベルからハイレベルに立ち上がると、制御回路51は、矩形波電圧CLKの立上りエッジをトリガとして、制御電圧G1及びG2をいずれもハイレベルからローレベルに立ち下げる。その結果、時刻t1では、スイッチング素子M1がオンされると同時にスイッチング素子M2がオフされる。また、時刻t1において、スロープ信号生成回路32は、矩形波電圧CLKの立上りエッジをトリガとしてスロープ電圧SLOPEを最小値VMIN(例えばGND)にディスチャージ(放電)する。
時刻t2において、矩形波電圧CLKがハイレベルからローレベルに立ち下がると、スロープ信号生成回路32は、矩形波電圧CLKの立下りエッジをトリガとして、スロープ電圧SLOPEの傾斜生成(充電)を開始する。その結果、時刻t2以降、スロープ電圧SLOPEは所定の傾斜を持って上昇する。
時刻t3において、スロープ電圧SLOPEが誤差電圧VAを上回り、比較電圧CMP1がローレベルからハイレベルに立ち上がると、制御回路51は、制御電圧G1をローレベルからハイレベルに立ち上げる。その結果、時刻t3では、スイッチング素子M1がオンからオフに切り替えられる。なお、誤差電圧VAが小さいほどスイッチング素子M1のオフタイミングは早くなり、誤差電圧VAが大きいほどスイッチング素子M1のオフタイミングは遅くなる。すなわち、スイッチング素子M1のオンデューティは、誤差電圧VAの電圧値に応じて変化する。
時刻t4において、スロープ電圧SLOPEが反転誤差電圧VBを上回り、比較電圧CMP2がローレベルからハイレベルに立ち上がると、制御回路51は、制御電圧G2をローレベルからハイレベルに立ち上げる。その結果、時刻t4では、スイッチング素子M2がオフからオンに切り替えられる。なお、誤差電圧VBが小さいほどスイッチング素子M2のオンタイミングは早くなり、誤差電圧VBが大きいほどスイッチング素子M2のオンタイミングは遅くなる。すなわち、スイッチング素子M2のオンデューティは、誤差電圧VBの電圧値に応じて変化する。
その後も、制御回路51は、時刻t1〜t4と同様の動作を繰り返すことにより、矩形波電圧CLKに基づいてスイッチング素子M1をオンすると同時にスイッチング素子M2をオフさせる一方、比較信号CMP1に基づいてスイッチング素子M1をオフし、且つ、比較信号CMP2に基づいてスイッチング素子M2のオンするように、制御電圧G1及びG2を生成する。
すなわち、本構成例のスイッチングレギュレータ1において、制御回路51は、矩形波電圧CLKに基づいてスイッチング素子M1のオン遷移とスイッチング素子M2のオフ遷移を同時に行う一方、比較信号CMP1及びCMP2に基づいてスイッチング素子M1のオフ遷移とスイッチング素子M2のオン遷移を互いに独立して行うように、制御電圧G1及びG2を生成する。
このような構成であれば、スイッチング素子M1及びM2がいずれもオン/オフされる昇降圧モードにおいて、スイッチング素子M1のオン期間中には、スイッチング素子M2を極力長くオフし、スイッチング素子M1のオフ期間中には、スイッチング素子M2を極力長くオンすることができるので、スイッチングレギュレータ1の発熱量(損失)を低減することが可能となる。
なお、スロープ生成回路32の小型化を鑑みると、スロープ電圧SLOPEとしては、三角波電圧よりも鋸波電圧を生成することが望ましい。三角波電圧を生成する場合、スロープ生成回路32には、充電速度(例えば立上りの傾斜)を定める第1電流源回路だけでなく、放電速度(例えば立下りの傾斜)を定める第2電流源回路を設ける必要がある。一方、鋸波電圧を生成する場合には、上記の第2電流源回路が不要となるので、その分だけスロープ生成回路32の小型化を図ることが可能となる。
また、パルス抜けの防止を鑑みても、スロープ電圧SLOPEとしては、三角波電圧よりも鋸波電圧を生成することが望ましい。例えば、三角波電圧と誤差電圧VAを比較する場合、三角波電圧の放電開始(t1)から次の充電開始(t2)までに、三角波電圧が誤差電圧VAを下回っていなければ、比較電圧CMP1のパルス抜けが生じてスイッチング素子M1のオン/オフ制御を正しく行うことができなくなる。一方、鋸波電圧であれば、鋸波電圧の放電開始(t1)とほぼ同時に放電動作が完了し、次の充電開始(t2)までには確実に鋸波電圧が誤差電圧VAを下回るので、比較電圧CMP1のパルス抜けが生じるおそれはなく、スイッチング素子M1のオン/オフ制御を正しく行うことができる。
なお、図4Aでは、矩形波電圧CLKの立下りエッジをトリガとしてスロープ電圧SLOPEの傾斜生成を開始する構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、図4Bで示すように、矩形波電圧CLKの立上りエッジ(時刻t1)から所定の遅延時間τが経過した時点(時刻t2’)でスロープ電圧SLOPEの傾斜生成を開始する構成としても構わない。
図5は、誤差電圧VA及び反転誤差電圧VBと動作モードとの相関関係を示すテーブルである。先では、入力電圧INと出力電圧OUTとの大小関係に応じて、スイッチングレギュレータ1の動作モードが切り替わる旨の説明を行ったが、比較器36及び37の動作に着目して見ると、スイッチングレギュレータ1の動作モードは、誤差電圧VA及び反転誤差電圧VBとスロープ電圧SLOPEとの大小関係に応じて切り替わることが分かる。
具体的に述べると、反転誤差電圧VBがスロープ電圧SLOPEの最大値VMAXよりも大きいとき(VB>VMAX)には、比較電圧CMP2が定常的にローレベルとなるので、スイッチング素子M2が定常的にオフとなる。一方、スイッチング素子M1は、誤差電圧VAとスロープ電圧SLOPEとの大小関係に応じて、オン/オフが周期的に切り替わる状態となる。この状態は、スイッチングレギュレータ1の降圧モードに相当する。スイッチング周期をTとし、スイッチング素子M1のオン時間をTon1とすると、出力電圧OUTは、次の(A)式で算出することができる。
OUT=(Ton1/T)×IN … (A)
また、誤差電圧VAと反転誤差電圧VBの双方がスロープ電圧SLOPEの最大値VMAXよりも小さいとき(VMAX≧(VA,VB))には、誤差電圧VA及びVBとスロープ電圧SLOPEとの大小関係に応じてスイッチング素子M1及びM2が共にオン/オフを繰り返す状態となる。この状態は、スイッチングレギュレータ1の昇降圧モードに相当する。スイッチング素子M1のオン時間をTon1とし、スイッチング素子M2のオフ時間をToff2とすると、出力電圧OUTは、次の(B)式で算出することができる。
OUT=(Ton1/Toff2)×IN … (B)
また、誤差電圧VAがスロープ電圧SLOPEの最大値VMAXよりも大きいとき(VA>VMAX)には、比較電圧CMP1が定常的にローレベルとなるので、スイッチング素子M1が定常的にオンとなる。一方、スイッチング素子M2は、反転誤差電圧VBとスロープ電圧SLOPEとの大小関係に応じて、オン/オフが周期的に切り替わる状態となる。この状態は、スイッチングレギュレータ1の昇圧モードに相当する。スイッチング周期をTとし、スイッチング素子M2のオフ時間をToff2とすると、出力電圧OUTは次の(C)式で算出することができる。
OUT=(T/Toff2)×IN … (C)
図6は、平均コイル電流の低減効果を示すテーブルであり、出力電圧OUT=6V、平均出力電流Io=2Aという条件の下、各動作モード(降圧モード(IN=12V)、昇降圧モード(IN=6V)、及び、昇圧モード(IN=3V))における平均コイル電流ILを算出した結果が示されている。なお、本テーブル中のX行目には、従来構成(図7A及び図7Bを参照)で得られる平均コイル電流ILの算出結果が示されており、本テーブル中のY行目には、本構成例(図1を参照)で得られる平均コイル電流ILの算出結果が示されている。
本テーブルのX行目とY行目を比較すれば明らかなように、本構成例のスイッチングレギュレータ1であれば、スイッチング周期T毎の平均コイル電流ILを抑えることができるので、スイッチングレギュレータ1の発熱量(損失)を低減することが可能となる。
<過電流保護動作の詳細>
図7は、図1の構成より制御回路51、過電流検出回路52、ソフトスタート回路33、ドライバ53及び55、及び出力段(コイルL1、スイッチング素子M1、スイッチング素子M2、ダイオードD1、ダイオードD2、コンデンサC3、及び抵抗R1)を抽出し、それぞれの構成を示した回路ブロック図である。
制御回路51は、論理回路511を有する。過電流検出回路52は、上側比較器521と、下側比較器522と、カウンタ523と、を有する。ソフトスタート回路33は、論理和演算器331と、スイッチング素子332と、定電流源333と、を有する。なお本構成例において、スイッチング素子332はNチャネル型MOSFETであるが、これに限定されるものではない。
上側比較器521の非反転入力端(+)は、定電圧源に接続され、所定の閾値電圧VthHが印加されている。上側比較器521の反転入力端(−)は、端子T3に接続されている。上側比較器521の出力端子は、論理回路511と論理和演算器331の第1入力端子とに接続されている。
下側比較器522の非反転入力端(+)は、定電圧源に接続され、所定の閾値電圧VthLが印加されている。なお、閾値電圧VthLは閾値電圧VthHよりも高い電圧となるよう、予め各定電圧源が設計されている。下側比較器522の反転入力端(−)は、端子T3に接続されている。下側比較器522の出力端子は、論理回路511と、カウンタ523の入力端子に接続されている。カウンタ523の出力端子は、論理和演算器331の第2入力端子に接続されている。
論理和演算器331の出力端子は、スイッチング素子332のゲートに接続されている。スイッチング素子332のソースは、接地端に接続されている。スイッチング素子332のドレインは、端子T9に接続される一方、定電流源333に接続されている。
なお、図7ではは、昇降圧動作が可能なスイッチングレギュレータ1を示しているが、昇圧動作及び高圧動作のいずれか一方のみが可能な構成のスイッチングレギュレータ1において、本発明の過電流保護動作を適応する形態でもよい。
例えば、図7の構成からスイッチング素子M2、ダイオードD2、及びドライバ55を除いた、降圧動作のみ可能な構成のスイッチングレギュレータ1において、本発明の過電流保護動作を適応する形態でもよい。或いは、図7の構成からスイッチング素子M1、ダイオードD1、及びドライバ53を除いた、昇圧動作のみ可能な構成のスイッチングレギュレータ1において、本発明の過電流保護動作を適応する形態でもよい。
次に、制御回路51の動作について説明する。
制御回路51が有する論理回路511は、比較信号CMP1を入力し、比較信号CMP1の波形に応じた制御電圧G1を生成する。また論理回路511は、比較信号CMP2を入力し、比較信号CMP2の波形に応じた制御電圧G2を生成する。また論理回路511は、下側比較器522より入力される出力信号S2を用いて、制御電圧G1または制御電圧G2のパルス幅を制限するパルスバイパルス型の過電流保護動作を行う。
また論理回路511は、出力信号S1または出力信号S2の論理に基づいて、スイッチングレギュレータ1のシャットダウンを行う。論理回路511は例えば、後述する過電流検出回路52により過電流が検出された場合等に、スイッチングレギュレータ1のシャットダウンを行う。
次に、過電流検出回路52の動作について説明する。
過電流検出回路52に含まれる上側比較器521、及び下側比較器522は、抵抗R1の低電位端に現れる電圧V11と所定の閾値電圧VthH、VthLとを比較することにより、スイッチング素子M1へ流れる電流Iswを監視する過電流検出回路として機能する。
上側比較器521(=第1比較器)は、電圧V11と閾値電圧VthHとを比較し、比較結果に基づいて出力信号S1(=第1過電流検出信号)の論理レベルを決定する。出力信号S1は、電圧V11が閾値電圧VthHよりも高い場合にローレベルとされ、電圧V11が閾値電圧VthHよりも低い場合にハイレベルとされる。出力信号S1がハイレベルとなると、後述するソフトスタート回路33において、ソフトスタート電圧SSのディスチャージが行われる。
下側比較器522(=第2比較器)は、電圧V11と閾値電圧VthLとを比較し、比較結果に基づいて出力信号S2(=第1過電流検出信号)の論理レベルを決定する。出力信号S2は、電圧V11が閾値電圧VthLよりも高い場合にローレベルとされ、電圧V11が閾値電圧VthLよりも低い場合にハイレベルとされる。
カウンタ523は、出力信号S2がハイレベルに立ち上がった回数をカウントする。またカウンタ523は、上記のカウント数が所定回数に達した場合に、出力信号S3(=第3過電流検出信号)をローレベルからハイレベルに立ち上げる。この結果、後述するソフトスタート回路33において、ソフトスタート電圧SSのディスチャージが行われる。なお出力信号S3は、例えばハイレベルに立ち上げられてから所定時間経過後に、ローレベルに引き下げられる。
次に、ソフトスタート回路33の動作について説明する。
ソフトスタート回路33に含まれる論理和演算器331は、第1入力端子及び第2入力端子に入力される信号の論理和に基づき、スイッチング素子332のゲートへ電圧を印加する。つまり、出力信号S1及び出力信号S3のいずれかがハイレベルになった場合に、スイッチング素子332のゲートにハイレベル電圧が印加される。
スイッチング素子332のゲートにハイレベル電圧が印加されると、スイッチング素子332がオンとなり、コンデンサC5と接地端とが電気的に接続される。これにより、コンデンサC5に蓄積されている電荷が流れ、ソフトスタート電圧SSがディスチャージされる。
以上に説明した電圧V11、閾値電圧VthH、及び閾値電圧VthLと、スイッチングレギュレータ1の動作との関係を模式的に表したのが、図10である。先述した通り、電圧V11は電流Iswが大きいほど低下する電圧信号である。このため図10に示すように、電圧V11が閾値電圧VthHよりも低い場合、極めて大きな過電流が発生しているとみなされ、即座にスイッチングレギュレータ1がシャットダウンされ、ソフトスタート電圧SSのディスチャージが行われる。
一方、電圧V11が閾値電圧VthHより高く、且つ閾値電圧VthLより低い場合、過電流が発生していると認識されるが即座にはシャットダウンされず、電圧V11が閾値電圧VthLを下回った回数がカウントされ、所定カウントでシャットダウンされる。一方、電圧V11が閾値電圧VthLより高い場合、過電流が発生していないとみなされ、通常動作が行われる。
以上に説明した動作に伴い変化する各信号、各電圧、各電流の波形について、図8及び図9のタイミングチャートを用いつつ説明する。なお図8及び図9は、本構成例のスイッチングレギュレータ1が降圧モード(スイッチ電圧SW2が常にハイレベル)で動作している場合の波形を例示したものである。
図8は、図10の中段に示す状態において、カウンタ523のカウント数が所定カウントに達することにより、ソフトスタート電圧SSのディスチャージが行われる例を示したタイミングチャートである。また図9は、図10の中段に示す状態において、電圧V11が閾値電圧VthHを下回ることにより、ソフトスタート電圧SSのディスチャージが行われる例を示したタイミングチャートである。なお図9は、過電流を検出してからスイッチング制御を行うまでの遅延をより明確に示すために、図8と比較して大きいスケールで表記している。
図8及び図9は上段より、OSC31により生成される矩形波電圧CLK、トランジスタM1とコイルL1との接続ノードに表れるスイッチ電圧SW1、閾値電圧VthH及び抵抗値により定められる閾値電流IthH、閾値電圧VthL及び抵抗値により定められる閾値電流IthL、コイルL1に流れる電流IL、スイッチング素子M1へ流れる電流Isw、出力信号S1〜S3、ソフトスタート電圧SS、誤差増幅器34に印加される基準電圧Vref、を示している。なおスイッチ電圧SW1の破線部分は、パルスバイパルス制御によりパルス幅が制限された部分を示している。
まず図8の例では、破線で示した時刻t11で、電流ILが閾値電流IthLを上回っている。これにより下側比較器522により出力される出力信号S2がハイレベルに立ち上がる。この立ち上がりを検知した論理回路511は、スイッチング素子M1をオフさせる。これにより、電流Iswの電流経路が遮断され、出力信号S2がローレベルに立ち下がる。またこれにより、電流ILが徐々に減少していく。
時刻t11の次に矩形波電圧CLKが立ち上がった時点で、論理回路511は、再びスイッチング素子M1をオンする。これにより電流Iswが流れるが、再び電流Iswが閾値電流IthLを上回り、出力信号S2がハイレベルに立ち上がる。この結果、論理回路511は、スイッチング素子M1をオフさせる。
以上の動作が継続的に繰り返され、やがて破線で示した時刻t12において、出力信号S2が立ち上がった回数がK回となる。これを検知したカウンタ523は、出力信号S3を立ち上げる。これにより、ソフトスタート回路33のスイッチング素子332がオンされ、ソフトスタート電圧SSのディスチャージされる。
以上に説明した本実施形態の構成によれば、電流ILが閾値電流IthLを超えた回数が所定回数に達しない場合はソフトスタート電圧SSのディスチャージを行わないため、例えばラッシュ電流のような非定常的な電流を過電流として誤検出し、不要なディスチャージが行われることを回避できる。このため、先の図12で示した課題は解決されている。
また本実施形態の構成によれば、スイッチングレギュレータ1の起動不良を回避するための動作停止期間を、電流検出回路52に設ける必要がない。このため、この動作停止期間においてショート等により出力電流Ioutが流れ続けて、装置または周辺部品を破壊するといった不具合を回避できる。このため、先の図13で示した課題は解決されている。
次に図9の例では、破線で示した時刻t21で、電流ILが閾値電流IthLを上回っている。これにより下側比較器522により出力される出力信号S2がハイレベルに立ち上がる。この立ち上がりを検知した論理回路511は、スイッチング素子M1をオフさせる。これにより、電流Iswの電流経路が遮断され、出力信号S2がローレベルに立ち下がる。またこれにより、電流ILが徐々に減少していく。
ただし、出力信号S2がハイレベルに立ち上がってからスイッチング素子M1がオフされるまでには、tΔに示すだけの遅延が発生する。この遅延により、電流ILは実際には閾値電流IthLを少しだけ上回る。このため、電流ILが急激に増加した場合、次に矩形波電圧CLKが立ち上がるまでに電流ILが下がり切らず、徐々に上昇していくこととなる。
この結果、破線で示した時刻t22で、出力信号S2に基づく過電流保護動作に依らず、電流ILが閾値電流IthHを上回る。これにより、上側比較器521により出力される出力信号S1がハイレベルに立ち上がる。この結果、ソフトスタート回路33のスイッチング素子332がオンされ、ソフトスタート電圧SSがディスチャージされる。このように図9の例では、図8の例と異なり、出力信号S2の立ち上がりのカウント数が所定回数に達する前に、ディスチャージが行われる。
以上に説明した本実施形態の構成によれば、電流ILが急激に増加した場合に、カウンタ523によるカウントを行うことなく、即座にシャットダウン及びソフトスタート電圧SSのディスチャージを行うことができる。このため、パルスバイパルス制御で各周期毎にスイッチ素子M1のオン動作が繰り返され、スイッチ素子M1がオンされる度に、過大な出力電流Ioutが断続的に流れつづけるといった不具合を回避できる。このため、先の図14で示した課題は解決されている。
また、本実施形態の構成によれば、電流ILが急激に上昇して閾値電流IthHを上回った場合だけでなく、電流ILが閾値電流IthHと閾値電流IthLとの間で増減する状態が所定期間継続した場合にも、ソフトスタート電圧SSをディスチャージすることができる。つまり、閾値電流IthL及び閾値電流IthHのいずれで過電流保護がかかったとしても、ソフトスタート電圧SSのディスチャージを行うことができる。
このため、次回の再起動時には、確実にソフトスタート動作を伴って出力電圧が緩やかに上昇する。従って、電流ILも十分に抑制された状態から徐々に上昇していくので、万一過電流の原因が解消されていないとしても、装置の再起動と同時に過大な電流ILが流れることはなく、装置破壊につながる等の不具合を回避できる。
<車両>
図11は、スイッチングレギュレータ1を搭載した車両の一構成例を示す外観図である。本構成例の車両Xは、車載機器X11〜X17と、これらの車載機器X11〜X17に電力を供給するバッテリ(図11では不図示)と、を搭載している。
車載機器X11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、及び、オートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。
車載機器X12は、HID[high intensity discharged lamp]やDRL[daytime running lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
車載機器X13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。
車載機器X14は、車両Xの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]制御、EPS[electric power Steering]制御、電子サスペンション制御など)を行うボディコントロールユニットである。
車載機器X15は、ドアロックや防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。
車載機器X16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、電動サンルーフ、電動シート、及び、エアコンなど、標準装備品やメーカーオプション品として、工場出荷段階で車両Xに組み込まれている電子機器である。
車載機器X17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、及び、ETC[Electronic Toll Collection System]など、ユーザの任意で車両Xに装着される電子機器である。
なお、先に説明したスイッチングレギュレータ1は、車載機器X11〜X17のいずれにも組み込むことが可能である。
<その他の変形例>
なお、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。