図1は、本発明の第1の実施形態に係る温度調節装置100の構成例を示す図である。本例の温度調節装置100は、冷却対象物を冷却する冷却装置として機能する。温度調節装置100は、第1のペルチェ素子110、吸熱プレート112、第2のペルチェ素子120、コントローラ130、第1の放熱ブロック140、吸熱ブロック150、第2の放熱ブロック160、一次循環機構170、二次循環機構180、および、熱交換器190を備える。
温度調節装置100に用いられるペルチェ素子は、周知の構成であるので詳細な説明は行わないが、例えば、P型半導体とN型半導体とが交互に並列に並べられ、各半導体の一方の端部を基板(以下、第1の基板という)に接合するとともに、隣接する2つの半導体を1組として、各組ごとに、半導体の他方の端部をそれぞれ前記第1の基板と異なる基板(以下、第2の基板という)に接合した構成を有しており、各半導体及び基板により構成される直列回路に直流電流を供給することにより、前記第1、第2の基板のうち一方の基板が発熱側として、他方の基板が吸熱側としてそれぞれ作用するものである。第1のペルチェ素子110の吸熱面は、冷却対象物に熱的に結合される。
コントローラ130は、第1のペルチェ素子110および第2のペルチェ素子120に供給する駆動電流を制御して、第1のペルチェ素子110および第2のペルチェ素子120の一方の面を吸熱面、他方の面を放熱面として機能させる。コントローラ130は、第1のペルチェ素子110の駆動電流と第2のペルチェ素子120の駆動電流をそれぞれ個別に制御してもよいし、第1のペルチェ素子110の駆動電流と第2のペルチェ素子120の駆動電流を共通に制御してもよい。
第1のペルチェ素子110は、本発明における第1のペルチェユニットの一例である。第1のペルチェ素子110は、平板形状に形成され、コントローラ130による制御により、一方の面が吸熱面、他方の面が放熱面となる。第1のペルチェ素子110の吸熱面は、冷却装置自体の吸熱面として機能する。すなわち、第1のペルチェ素子110の吸熱面は、冷却対象物と熱的に結合され、冷却対象物を冷却する。本例において、第1のペルチェ素子110の吸熱面には吸熱プレート112が取り付けられ、第1のペルチェ素子110は、吸熱プレート112を介して冷却対象物に熱的に結合される。他の例として、第1のペルチェ素子110の吸熱面は、グリース、弾性シート等の素材を介して冷却対象物に接触してよい。これらの素材を介することで、接触面積を大きくし熱抵抗を低減させることができる。第1のペルチェ素子110の放熱面は、第1の放熱ブロック140に熱的に結合される。
第1の放熱ブロック140は、流路142を有する。第1の放熱ブロック140の流路142には、一次循環機構170により、一次冷媒が流される。本例において、第1の放熱ブロック140は、銅、アルミニウム、真鍮、ステンレス等の金属材料のブロックで形成される。第1の放熱ブロック140の側面には、一次冷媒を流すための流路142の流入口144及び排出口146が設けられる。第1の放熱ブロック140は、第1のペルチェ素子110の放熱面に熱的に結合され、第1のペルチェ素子110の放熱面から熱を受け取って一次冷媒に伝える。例えば、第1の放熱ブロック140は、グリース、弾性シート等の素材を介して第1のペルチェ素子110の放熱面に接触してよい。また、第1のペルチェ素子110と吸熱プレート112の間にグリース、弾性シート等を挟んでもよい。これらの素材を介することで、接触面積を大きくし熱抵抗を低減させることができる。第1の放熱ブロック140から排出された一次冷媒は、吸熱ブロック150に供給される。
本例において温度調節装置100には第1のペルチェ素子110と第1の放熱ブロック140が一組のみ設けられているが、第1のペルチェ素子110と第1の放熱ブロック140の組は、複数設けられてもよい。第1のペルチェ素子110と第1の放熱ブロック140の組を複数設ける場合には、複数の第1の放熱ブロック140に対して並列に一次冷媒を供給してよい。複数の第1の放熱ブロック140に並列に一次冷媒を供給することにより、複数の第1のペルチェ素子110を均等に放熱することができる。
吸熱ブロック150は、第2のペルチェ素子120に対応して4つ設けられる。本例において、4つの吸熱ブロック150は、並列に接続される。他の例としては、吸熱ブロック150は、直列に接続されてもよいし、直列接続と並列接続とが混在しても構わない。吸熱ブロック150は、銅、アルミニウム、真鍮、ステンレス等の金属材料のブロックで形成される。各吸熱ブロック150は、流路152を有する。吸熱ブロック150の流路152には、第1の放熱ブロック140から排出される一次冷媒が流される。吸熱ブロック150は、第2のペルチェ素子120の吸熱面に熱的に結合され、流路152を流れる一次冷媒の熱を第2のペルチェ素子120の吸熱面に伝える。例えば、吸熱ブロック150は、グリース、弾性シート等の素材を介して第2のペルチェ素子120の吸熱面に接触してよい。これらの素材を介することで、接触面積を大きくし熱抵抗を低減させることができる。
一次循環機構170は、第1の放熱ブロック140と吸熱ブロック150との間で一次冷媒を循環させる。すなわち、一次循環機構170は、第1の放熱ブロック140から排出される一次冷媒を、吸熱ブロック150の各々に供給するとともに、吸熱ブロック150の各々から排出される一次冷媒を第1の放熱ブロック140に還流する。一次循環機構170は、ポンプ172と、リザーバタンク174を備える。リザーバタンク174は、循環させる一次冷媒の余剰分を貯蔵する。ポンプ172は、リザーバタンク174から第1の放熱ブロック140に一次冷媒を供給する。
本例において、各吸熱ブロック150は互いに並列に設けられ、配管により分岐された一次冷媒が各吸熱ブロック150に供給される。各吸熱ブロック150から排出された一次冷媒は、配管によって合流し、リザーバタンク174に戻される。なお、接続形態の他の例として、吸熱ブロック150は、配管によって直列に接続されてもよいし、並列と直列とが混在するように設けられてもよい。
一次循環機構170の配管において、一次冷媒は雰囲気から断熱されてよい。少なくとも、吸熱ブロック150の排出口から第1の放熱ブロック140の供給口までの経路の配管は、雰囲気から断熱されることが好ましい。これにより、吸熱ブロック150において第2のペルチェ素子120により冷却された一次冷媒が、雰囲気の温度によって第1のペルチェ素子110に供給される前に温まることを防ぐことができる。具体的な断熱の手法としては、配管を断熱材により覆ってもよいし、配管自体を断熱材により形成してもよい。
一次循環機構170により循環される一次冷媒は、水であってよい。水は、比較的熱容量が高く、安価かつ入手が容易であるため一次冷媒として好適である。水を一次冷媒として用いる場合、コントローラ130は、一次冷媒の凍結を防ぐべく、吸熱ブロック150の排出口の付近での一次冷媒の温度を監視し、温度に応じて第2のペルチェ素子120の駆動電流を制御してもよい。なお、一次冷媒として、不凍液等の他の液体を用いてもよいし、気体を用いてもよい。
第2のペルチェ素子120は、本発明における第2のペルチェユニットの一例である。本例において、第2のペルチェ素子120は、4つ設けられる。各第2のペルチェ素子120は、平板形状に形成され、コントローラ130による制御により、一方の面が吸熱面、他方の面が放熱面となる。各第2のペルチェ素子120の吸熱面は、対応する吸熱ブロック150と熱的に結合され、吸熱ブロック150が一次冷媒から受け取った熱を奪う。一方、第2のペルチェ素子120の放熱面は、第2の放熱ブロック160と熱的に結合される。
第2の放熱ブロック160は、第2のペルチェ素子120に対応して4つ設けられる。各第2の放熱ブロック160は、流路162を有する。第2の放熱ブロック160の流路162には、二次循環機構180により、二次冷媒が流される。第2の放熱ブロック160は、銅、アルミニウム、真鍮、ステンレス等の金属材料のブロックで形成される。第2の放熱ブロック160の側面には、二次冷媒を流すための流路162の流入口及び排出口が設けられる。各第2の放熱ブロック160は、対応する第2のペルチェ素子120の放熱面に熱的に結合され、第2のペルチェ素子120の放熱面から熱を受け取って二次冷媒に伝える。第2の放熱ブロック160から排出された二次冷媒は熱交換器190に供給される。例えば、第2の放熱ブロック160は、グリース、弾性シート等の素材を介して第2のペルチェ素子120の放熱面に接触してよい。これらの素材を介することで、接触面積を大きくし熱抵抗を低減させることができる。
ここで、本例において温度調節装置100は、第2のペルチェ素子120、吸熱ブロック150、および第2の放熱ブロック160を4組備えるが、第2のペルチェ素子120、吸熱ブロック150、および第2の放熱ブロック160の組の数は、1以上であればよく、要求される冷却性能に応じて適切な数としてよい。また、第2のペルチェ素子120、吸熱ブロック150、および第2の放熱ブロック160の組の数が変更可能なように設けられてもよい。一次冷媒を冷却する能力を可変として、一次冷媒を十分に冷却し、第1のペルチェ素子110による冷却機能を高めるには、第2のペルチェ素子120、吸熱ブロック150、および第2の放熱ブロック160の組の数が第1のペルチェ素子110の数より多いことが好ましい。
二次循環機構180は、第2の放熱ブロック160と熱交換器190との間で二次冷媒を循環させる。すなわち、二次循環機構180は、第2の放熱ブロック160から排出される二次冷媒を、熱交換器190に供給するとともに、熱交換器190から排出される二次冷媒を第2の放熱ブロック160に還流する。二次循環機構180は、ポンプ182と、リザーバタンク184を備える。リザーバタンク184は、循環させる二次冷媒の余剰分を貯蔵する。ポンプ182は、リザーバタンク184から第2の放熱ブロック160に二次冷媒を供給する。
本例において、各第2の放熱ブロック160は互いに並列に設けられ、配管により分岐された二次冷媒が各第2の放熱ブロック160に供給される。各第2の放熱ブロック160から排出された二次冷媒は、配管によって合流し、熱交換器190に供給される。なお、第2の放熱ブロック160は、配管によって直列に接続されてもよいし、並列と直列とが混在するように設けられてもよい。
熱交換器190は、第2の放熱ブロック160から排出される二次冷媒を受け取り放熱する。例えば、熱交換器190はラジエータであってよく、ラジエータは二次冷媒の熱を大気に放熱してよい。熱交換器190対し空冷用のファン192により風を当てて熱交換を促進させてよい。熱交換器190から排出された二次冷媒は、リザーバタンク184に戻される。
二次循環機構180により循環される二次冷媒は、水であってよい。水は、比較的熱容量が高く、安価かつ入手が容易であるため二次冷媒として好適である。また、常温において熱交換器190としてラジエータを用いる場合には、水の凍結に配慮する必要がなく、取り扱いが簡便である。なお、二次冷媒として、不凍液等の他の液体を用いてもよいし、気体を用いてもよい。
以上のように構成される温度調節装置100によって冷却対象物を冷却するには、コントローラ130により第1のペルチェ素子110および第2のペルチェ素子120に駆動電流を供給するとともに、ポンプ172およびポンプ182によって一次冷媒および二次冷媒を循環させる。コントローラ130は、第1のペルチェ素子110の吸熱面又は冷却対象物の温度を監視して、第1のペルチェ素子110と第2のペルチェ素子120に供給する駆動電流を制御してもよい。例えば、コントローラ130は、監視温度が所定値よりも低下したことに応じて駆動電流を遮断し、監視温度が所定温度を超過したことに応じて駆動電流を供給するように制御してよい。あるいは、コントローラ130は、温度計(図示せず)を利用して吸熱ブロック150の排出口付近での一次冷媒の温度を監視し、一次冷媒の凍結を防ぐように第2のペルチェ素子120への駆動電流を制御してもよい。なお、第1のペルチェ素子に流す電流の向きを冷却動作時と逆とすることで、加熱装置として動作させることも可能である。加熱装置として動作させる場合、二次冷媒を循環させてもよいし、循環を停止してもよい。また、加熱装置として動作させる場合、第2のペルチェ素子120を停止させてもよいし、第2のペルチェ素子120に冷却動作時と逆向きの駆動電流を流して一次冷媒を加熱し、加熱性能を増強させてもよい。
図2は第1の実施形態の変形例を示す。第1の実施形態の一例と本変形例とで共通の参照番号を付された構成要素は、特に説明がない限りその機能及び構成が共通であるので説明を省略する。本変形例の温度調節装置100は、第1のペルチェ素子110、吸熱プレート112、第2のペルチェ素子120、コントローラ130、第1の放熱ブロック140、吸熱ブロック150、第2の放熱ブロック160、一次循環機構170、二次循環機構180、熱交換器190、および第3のペルチェ素子200を備える。
第3のペルチェ素子200は、第1のペルチェ素子110に対応して設けられ、吸熱面及び放熱面を有する。第3のペルチェ素子200の放熱面は、対応ずる第1のペルチェ素子110の吸熱面に熱的に結合される。第3のペルチェ素子200の吸熱面は、冷却装置自体の吸熱面として機能する。すなわち、第3のペルチェ素子200の吸熱面は、冷却対象物と熱的に結合され、冷却対象物を冷却する。本例において、第3のペルチェ素子200の吸熱面には吸熱プレート112が取り付けられ、第3のペルチェ素子200は、吸熱プレート112を介して冷却対象物に熱的に結合される。他の例として、第3のペルチェ素子200の吸熱面は、グリース、弾性シート等の素材を介して冷却対象物に接触してよい。これらの素材を介することで、接触面積を大きくし熱抵抗を低減させることができる。
第1のペルチェ素子110と第3のペルチェ素子200とを重ねた構成は、本発明における第1のペルチェユニットの一例である。なお、本変形例においては、第1のペルチェ素子110と第3のペルチェ素子200とを二段重ねとした構成を採用しているが、より多くのペルチェ素子を重ねた構造としてもよい。また、同様のペルチェ素子を複数段に重ねた構造を、第2のペルチェ素子120に代えて採用し、本発明における第2のペルチェユニットとしてもよい。
コントローラ130は、第1のペルチェ素子110および第2のペルチェ素子120に供給する駆動電流に加えて、第3のペルチェ素子200に供給する駆動電流を制御する。コントローラ130によって駆動電流を供給するとともに、ポンプ172およびポンプ182によって一次冷媒および二次冷媒を循環させることで、温度調節装置100は、吸熱プレート112と熱的に結合された冷却対象物を冷却することができる。第1のペルチェ素子110と第3のペルチェ素子200に供給する駆動電流は予め定められた電流値とする。第1のペルチェ素子110と第3のペルチェ素子200の駆動電流の比率は、最大の冷却能力が得られるように最適化される。コントローラ130は、第1のペルチェ素子110の駆動電流を、第3のペルチェ素子200の駆動電流より大きくしてもよい。また、第1のペルチェ素子110と第3のペルチェ素子200とは直列に接続されて、コントローラ130により一括して制御されてもよい。
他の例として、コントローラ130は、第3のペルチェ素子200の吸熱面又は冷却対象物の温度を監視して、第1のペルチェ素子110と第3のペルチェ素子200に供給する駆動電流を制御してもよい。例えば、コントローラ130は、監視温度が所定値よりも低下したことに応じて駆動電流を遮断し、監視温度が所定温度を超過したことに応じて駆動電流を供給するように制御してよい。あるいは、コントローラ130は、吸熱ブロック150の排出口付近での一次冷媒の温度を監視し、一次冷媒の凍結を防ぐように第2のペルチェ素子120への駆動電流を制御してもよい。なお、第2のペルチェ素子の動作と二次冷媒の循環を制御し、第1のペルチェ素子110に流す電流の向きを冷却動作時と逆にすることで、加熱装置として動作させることも可能である。
図3は、本発明の各実施形態で用いられる第1の放熱ブロック140の構造の一例を示す。なお、吸熱ブロック150、および第2の放熱ブロック160も同様の構造としてもよい。本例において、第1の放熱ブロック140は、第1のペルチェ素子110の放熱面を覆う面積を有し、該放熱面と接触する上面、上面と対向する下面、および上面と下面との間に略垂直な複数の側面を有する。流路142に一次冷媒が流されたときに圧力に耐える十分な強度を保てる限り、第1の放熱ブロック140の上面と流路142との距離は短い方が、第1のペルチェ素子110と一次冷媒との間の熱抵抗を低減できる点で好ましい。第1の放熱ブロック140の側面には流入口144と排出凵146が設けられる。本例では流入口144と排出口146は同じ側面に設けられているが、流入口144と排出口146は、異なる側面(例えば対抗する側面)にそれぞれ設けられてもよい。本例の流路142は、第1の放熱ブロック140内にU字状に設けられる。他の例として、流路142は第1の放熱ブロック140内を蛇行してもよい。流路142の長さを長くすることで放熱効果を高めることができる。
第1の放熱ブロック140を一体の金属塊から製造する場合には、第1の放熱ブロック140の複数の側面からドリル加工により複数の穴を開けて第1の放熱ブロック140内に流路142を形成し、不要な穴を埋めることで、上面および下面に穴を開けることなく流路142を形成できる。本例の場合、流入口144および排出口146のための2つの穴をドリル加工で形成するのに加え、該2つの穴を連通させるための経路を形成すべく、流入口144および排出口146が設けられる側面に隣接する他の側面からドリル加工で穴を開け、流入口144と排出口146とを連通する経路を残して当該他の側面の穴を埋めることでU字型の流路142を形成する。なお、上面側と下面側の2片の金属塊に切削加工により流路142を形成し、当該第1の放熱ブロック140を2片の金属塊を接合して流路142を備える第1の放熱ブロック140を製造してもよい。
図4は、本発明の各実施形態で用いられる第1の放熱ブロック140の構造の他の例を示す。なお、吸熱ブロック150、および第2の放熱ブロック160も同様の構造としてもよい。本例において、第1の放熱ブロック140の上面に開口が設けられ、流路142が露出している。開口を囲んで凹部148が設けられ、凹部148内にOリング400が嵌入される。凹部148に嵌入された状態でOリング400の上端は第1の放熱ブロック140の上面から、例えば0.2mm程度、はみ出す。すなわち、凹部148の深さをd1、Oリング400の弾性変形していない状態での太さをd2とすると、d2>d1である。
図5は、図4に示された第1の放熱ブロック140に第1のペルチェ素子110が取り付けられた状態における吸熱プレート112、第1のペルチェ素子110および第1の放熱ブロック140の断面図である。第1の放熱ブロック140の上面には四隅に螺子穴が設けられ、吸熱プレート112における螺子穴と対応する位置には貫通孔が設けられる。吸熱プレート112は貫通孔を通る螺子により、第1のペルチェ素子110を挟んで第1の放熱ブロック140に螺子止めされる。第1のペルチェ素子110は、吸熱面側から吸熱プレート112により第1の放熱ブロック140に対して付勢され、第1のペルチェ素子110の放熱面は、第1の放熱ブロック140の上面からはみ出たOリング400を開口の全周において弾性変形させる。これにより、開口を封止して一次冷媒が第1の放熱ブロック140の上面側に漏れることを防ぐとともに、流路142を流れる一次冷媒と第1のペルチェ素子110の放熱面とを直接接触させて一次冷媒に放熱面の熱を直接伝えることができる。
吸熱プレート112の貫通孔と第1の放熱ブロック140の螺子穴の間には、スペーサ114が配される。スペーサ114の高さは、Oリング400の第1の放熱ブロック140からはみ出た量(すなわち本例においては0.2mm)よりも小さい長さ(例えば0.1mm)だけ、第1のペルチェ素子110の厚みよりも大きい。すなわち、凹部148の深さをd1、Oリング400の弾性変形していない状態での太さをd2、第1のペルチェ素子110の厚さをT、スペーサ114の高さをHとすると、H<d2−d1+Tである。これにより、吸熱プレート112と第1の放熱ブロック140との距離の下限がスペーサ114の高さによって制限され、吸熱プレート112を取り付ける螺子を締め込み過ぎた場合であっても、Oリング400の適切な弾性変形量が得られるとともに、第1のペルチェ素子110が第1の放熱ブロック140の上面と接触して破損することを防ぐことができる。
以上で説明した温度調節装置100の構成によれば、第1のペルチェ素子の放熱に用いる一次冷媒を第2のペルチェ素子120で冷却することで、冷却性を高めるとともに静粛性の高い温度調節装置を実現できる。また、第2のペルチェ素子120の数を可変とすることで、必要とされる冷却性能に応じて一次冷媒に対する冷却能力を調整することができる。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る温度調節装置1100の構成例を示す図である。本例の温度調節装置1100は、対象物の温度を調節する。温度調節装置1100は、第1ペルチェ素子1110、調熱ステージ1112、第1熱伝達ブロック1114、第1格納容器1116、第2ペルチェ素子1120、第2熱伝達ブロック1122、第3熱伝達ブロック1124、第2格納容器1126、コントローラ1130、一次循環機構1140、二次循環機構1150、熱交換器1160および筐体1170を備える。第1ペルチェ素子1110、調熱ステージ1112、および第1熱伝達ブロック1114は、第1格納容器1116に格納される。第2ペルチェ素子1120、第2熱伝達ブロック1122、第3熱伝達ブロック1124、第2格納容器1126、コントローラ1130、一次循環機構1140、二次循環機構1150、および熱交換器1160は筐体1170に格納される。第1格納容器1116と筐体1170とは、後述する第1熱媒体を循環させるための配管および第1ペルチェ素子1110に駆動電流を供給するための配線により接続される。
温度調節装置1100に用いられるペルチェ素子は、第1の実施形態にて用いられたものと同様のものである。以下では、平板形状に形成されるペルチェ素子における第1基板側の外面をペルチェ素子の第1面、第2基板側の外面をペルチェ素子の第2面と称する。
上述の通り、ペルチェ素子は、駆動電流の向きに応じて第1面および第2面のいずれ一方が吸熱面として機能し、他方が放熱面として機能するので、駆動電流の向きによって対象物を加熱することもできるし、冷却することもできる。以下の説明においては、主として温度調節装置1100が対象物を冷却する場合の動作を例に説明する。
温度調節装置1100が対象物を冷却する場合、コントローラ1130は、第1ペルチェ素子1110および第2ペルチェ素子1120に供給する駆動電流を制御して、第1ペルチェ素子1110および第2ペルチェ素子1120の第1面を吸熱面、第2面を放熱面として機能させる。コントローラ1130は、第1ペルチェ素子1110の駆動電流と第2ペルチェ素子1120の駆動電流をそれぞれ個別に制御してもよいし、第1ペルチェ素子1110の駆動電流と第2ペルチェ素子1120の駆動電流を共通に制御してもよい。なお、図6において、発明の理解を容易にすべく、コントローラ1130から第1ペルチェ素子1110および第2ペルチェ素子1120への駆動電流供給を矢印によって簡略化して描いているが、実際は第1、第2の基板それぞれに接続される2本の配線により、駆動電流がペルチェ素子に供給されてリターン電流が還流されることは言うまでもない。
第1ペルチェ素子1110は、平板形状に形成され、コントローラ1130による制御により、第1面が吸熱面、第2面が放熱面として機能する。
図7は、調熱ステージ1112の外観の一例を示す。調熱ステージ1112は、第1ペルチェ素子1110の第1面に熱的に結合され、第1ペルチェ素子1110の第1面と対象物との間で熱を伝達する。調熱ステージ1112は、例えば、銅、アルミニウム、真鍮、ステンレス等の熱伝達特性または加工特性に優れた金属材料で形成される。なお、絶縁が必要な場合には、調熱ステージ1112はセラミック等の絶縁体により形成されてもよいし、金属材料をセラミック等の絶縁体で被覆して形成されてもよい。調熱ステージ1112は、下面が第1ペルチェ素子1110の第1面と当接する基底部1210と、基底部1210における第1ペルチェ素子と当接しない側に突出する突出部1220とを備える。突出部1220は、第1ペルチェ素子1110の第1面に略垂直な側壁面1222、および第1格納容器1116に設けられる開口部1410から露出する露出面1224を有する。図7に示した例では、露出面1224は正方形であるが、露出面1224の形状は、対象物の形状に合わせて設計することができる。調熱ステージ1112の基底部下面は、グリース、弾性シート等を介して第1ペルチェ素子1110の第1面と接触してよい。これらの素材を介することで、接触面積を大きくし熱抵抗を低減させることができる。
図8は、第1熱伝達ブロック1114の外観の一例を示す。第1熱伝達ブロック1114は、一次熱媒体が流れる流路1310を有し、第1ペルチェ素子の第2面に熱的に結合される。例えば、第1熱伝達ブロック1114は、グリース、弾性シート等の素材を介して第1のペルチェ素子1110の第2面に接触してよい。これらの素材を介することで、接触面積を大きくし熱抵抗を低減させることができる。第1熱伝達ブロック1114は、第1ペルチェ素子1110の第2面と一次熱媒体との間で熱を伝達する。温度調節装置1100が対象物を冷却する場合には、第1ペルチェ素子1110の第2面は放熱面として機能すべく駆動され、第1熱伝達ブロック1114は第1ペルチェ素子1110の第2面に熱的に結合され、第1ペルチェ素子1110の第2面から熱を受け取って一次熱媒体に伝える。
第1熱伝達ブロック1114の流路を流れる一次熱媒体の温度は、第1格納容器1116の外部の雰囲気における露点温度以下となり得る。一次熱媒体は、例えば水などの液体であってよいが、凍結を防止すべく不凍液を用いることが好ましい。コントローラ1130は、一次熱媒体の凍結を防ぐべく、一次熱媒体の温度を監視し、温度に応じて駆動電流を制御してもよい。一次熱媒体は、一次循環機構1140により、第1熱伝達ブロックと後述する第2熱伝達ブロックとの間で循環させられる。本例において、第1熱伝達ブロック1114は、銅、アルミニウム、真鍮、ステンレス等の金属材料のブロックで形成される。第1熱伝達ブロック1114の側面には、一次熱媒体を流すための流路1310の流入口1320及び排出口1330が設けられる。第1熱伝達ブロック1114から排出された一次熱媒体は、第2熱伝達ブロック1122に供給される。
本実施形態において温度調節装置1100には第1ペルチェ素子1110、調熱ステージ1112、および第1熱伝達ブロック1114が一組のみ設けられているが、これらの組は、複数設けられてもよい。第1ペルチェ素子1110、調熱ステージ1112、および第1熱伝達ブロック1114の組を複数設ける場合には、複数の第1熱伝達ブロック1114に対して並列に一次熱媒体を供給してよい。複数の第1熱伝達ブロック1114に並列に一次熱媒体を供給することにより、複数の第1ペルチェ素子1110を均等に放熱または加熱することができる。
図9は、第1格納容器1116に第1ペルチェ素子1110、調熱ステージ1112、および第1熱伝達ブロック1114が格納された状態の外観を示す。図10は、図9におけるA−A’線断面図を示す。第1格納容器1116は、第1ペルチェ素子1110、および第1熱伝達ブロック1114を気密密閉する。第1格納容器1116には、開口部1410が設けられ、この開口部1410から調熱ステージ1112の一部である露出面1224が第1格納容器1116外に露出する。第1格納容器1116には、第1ペルチェ素子1110に駆動電流を供給するための電気配線フィードスルー1420および第1熱伝達ブロック1114に一次熱媒体を循環させるための配管1430が取り付けられるが、これらも気密性が維持される態様で取り付けられる。
温度調節装置1100が、対象物を冷却する場合、第1熱伝達ブロック1114を流れる一次熱媒体は、第1格納容器1116の外部雰囲気温度よりも低温となり得る。第1熱伝達ブロック1114と第1格納容器1116とが熱的に強く結合していると、外部雰囲気によって一次熱媒体が温められてしまい、温度調節装置1100の冷却性能を低下させる。このため、図10に示すように、第1熱伝達ブロック1114は、断熱性の素材で形成されたスペーサ1570を介して第1格納容器1116の内部に固定され、外気と断熱される。また固定用の螺子1580も断熱性の素材で形成されたものを用いる。スペーサ1570および螺子1580を形成する断熱性の素材は、例えば樹脂素材であってよい。調熱ステージ1112および第1熱伝達ブロック1114は、螺子1590により、放熱面と吸熱面との断熱を維持しつつ第1ペルチェ素子1110を挟み押し付けられる。螺子1590は、一例として、樹脂素材等の断熱性の素材により形成される。樹脂素材の螺子では強度が不足する場合には、螺子1590の頭部と調熱ステージ1112との間に断熱素材のブッシュを挿入して放熱面と吸熱面とを断熱してもよい。
第1格納容器1116は、本体部1510と蓋部1520とで構成される。本体部1510と蓋部1520とは、気密性を維持すべくOリング1530を挟んで密着する。蓋部1520には第1格納容器1116の内部と外部とを連通する開口部1410が設けられる。この開口部1410から調熱ステージの一部である露出面1224が第1格納容器1116の外に露出する。開口部1410の内壁面1540は、調熱ステージ1112の側壁面1222と所定の間隙(クリアランス)を挟んで対向する。開口部1410の内壁面1540と調熱ステージ1112の側壁面1222との間には、第1格納容器1116の気密性を維持すべく、Oリング等のシーリング部材1550が配される。開口部1410の内壁面1540には、シーリング部材1550の位置決めをすべく溝1560が形成されてもよい。シーリング部材1550は、溝1560と側壁面1222とに挟まれて圧縮・変形し、内壁面1540と側壁面1222の間隙を封止する。なお、シーリング部材1550の位置決めのための溝1560は、調熱ステージ1112の側壁面1222に設けられてもよいし、内壁面1540と側壁面1222の両方に設けられてもよい。以上のような構造により、第1格納容器1116の内部は気密性が維持され、第1格納容器1116の外部から水分が供給されることが妨げられるので、第1格納容器1116の内部で結露が生じることを抑制できる。第1格納容器1116は真空引きされた状態で密閉されてもよい。また、第1格納容器1116の内部に乾燥した不活性ガスが充填されてもよい。また、第1格納容器1116の内部にシリカゲル等の乾燥剤が配置されてもよい。
図6に戻り、一次循環機構1140は、第1熱伝達ブロック1114と第2熱伝達ブロック1122との間で一次熱媒体を循環させる。すなわち、一次循環機構1140は、第1熱伝達ブロック1114から排出される一次熱媒体を、第2熱伝達ブロック1122に供給するとともに、第2熱伝達ブロック1122の各々から排出される一次熱媒体を第1熱伝達ブロック1114に還流する。一次循環機構1140は、ポンプ1142と、リザーバタンク1144とを備える。リザーバタンク1144は、循環させる一次熱媒体の余剰分を貯蔵する。ポンプ1142は、リザーバタンク1144から第1熱伝達ブロック1114に一次熱媒体を供給する。
本実施形態の温度調節装置1100は、4つの第2熱伝達ブロック1122を備える。第2熱伝達ブロック1122は、銅、アルミニウム、真鍮、ステンレス等の金属材料のブロックで形成される。第2熱伝達ブロック1122は、第2ペルチェ素子1120に対応して同数だけ設けられる。第2熱伝達ブロック1122は、図8に示した第1熱伝達ブロック1114と同様、流路、流入口及び排出口を備える。流路には、第1熱伝達ブロック1114から排出される一次熱媒体が流れる。第2熱伝達ブロック1122は、第2ペルチェ素子1120の第1面に熱的に結合され、第2ペルチェ素子1120の第1面と一次熱媒体のとの間で熱を伝達する。温度調節装置1100が対象物を冷却する場合、第2ペルチェ素子1120の第1面は吸熱面として機能すべくコントローラ1130により駆動電流が供給される。例えば、第2熱伝達ブロック1122は、グリース、弾性シート等の素材を介して第2ペルチェ素子1120の吸熱面に接触してよい。これらの素材を介することで、接触面積を大きくし熱抵抗を低減させることができる。複数の第2熱伝達ブロック1122は直列に接続され、第1熱伝達ブロック1114から排出された一次熱媒体は最上流の第2熱伝達ブロック1122の流入口に供給される。一次熱媒体は順次、次段の第2熱伝達ブロック1122へと供給され、最下流の第2熱伝達ブロック1122の排出口から排出された一次熱媒体は、リザーバタンク1144に蓄えられる。本例において、4つの第2熱伝達ブロック1122は、直列に接続されたが、他の例としては、第2熱伝達ブロック1122は、並列に接続されてもよいし、直列接続と並列接続とが混在しても構わない。最下流の第2熱伝達ブロック1122から排出される一次熱媒体は、4つの第2ペルチェ素子1120により冷却された結果、第2格納容器1126の外部の雰囲気における露点温度以下となる場合がある。
一次循環機構1140の配管において、一次熱媒体は雰囲気から断熱されてよい。少なくとも、第2熱伝達ブロック1122の排出口から第1熱伝達ブロック1114の供給口までの経路の配管は、雰囲気から断熱されることが好ましい。これにより、第2熱伝達ブロック1122において第2ペルチェ素子1120により冷却された一次熱媒体が、雰囲気の温度によって第1ペルチェ素子1110に供給される前に温まることを防ぐことができる。具体的な断熱の手法としては、配管を断熱材により覆ってもよいし、配管自体を断熱材により形成してもよい。
本実施形態において、第2ペルチェ素子1120は、4つ設けられる。各第2ペルチェ素子1120は、平板形状に形成され、コントローラ1130による制御により、一方の面が吸熱面、他方の面が放熱面として機能する。各第2ペルチェ素子1120の第1面は、対応する第2熱伝達ブロック1122と熱的に結合される。温度調節装置1100が対象物を冷却する動作をするときには、コントローラ1130からの駆動電流により第2ペルチェ素子1120の第1面は冷却面として機能し、一次熱媒体から熱を奪う。一方、第2ペルチェ素子1120の第2面は、第3熱伝達ブロック1124に熱的に結合される。なお、本実施形態では4つの第2ペルチェ素子1120を備える例を開示したが、第2ペルチェ素子は、要求性能に応じて任意の数設けられてよい。
図6に示すように、本実施形態において、第3熱伝達ブロック1124は、4つの第2ペルチェ素子1120に対して1つ設けられる。この構成は、個々の第2ペルチェ素子1120に対して1つずつ第3熱伝達ブロックを設ける場合と比較して、複数の第3熱伝達ブロックの流路間を接続する配管や継手が不要となり、信頼性、組み立ての容易性等で有利である。第3熱伝達ブロック1124は、第2ペルチェ素子1120の第2面に熱的に結合され、第2ペルチェ素子1120の第2面と二次熱媒体との間で熱を伝達する。図11は、第3熱伝達ブロック1124を分解した状態の外観を示す。第3熱伝達ブロック1124は、本体部1610と蓋部1620とで構成される。第3熱伝達ブロック1124の本体部1610には流路1630が凹部として設けられる。二次循環機構1180により、この流路1630に二次熱媒体が流される。第3熱伝達ブロック1124の本体部1610は、銅、アルミニウム、真鍮、ステンレス等の金属材料のブロックで形成される。第3熱伝達ブロック1124の本体部1610の側面には、流路1630の流入口1640及び排出口1650が設けられる。
第3熱伝達ブロック1124の蓋部1620は本体部1610と同じ材質で、板状に形成される。板状の蓋部1620は板金加工により形成することができるため、製造コストを抑制できる。蓋部1620は、流路1630を流れる二次熱媒体が漏れないよう、例えばロウ付けにより本体部1610に取り付けられる。第3熱伝達ブロック1124の上面は、4つの第2ペルチェ素子1120の第2面に熱的に結合され、各第2ペルチェ素子1120の第2面と二次熱媒体の間で熱を伝達する。例えば、第3熱伝達ブロック1124は、グリース、弾性シート等の素材を介して第2ペルチェ素子1120の第2面に接触してよい。これらの素材を介することで、接触面積を大きくし熱抵抗を低減させることができる。温度調節装置1100が対象物を冷却する動作をするときには、放熱面として機能する第2ペルチェ素子の第2面から熱を受け取り、二次熱媒体に伝える。
なお、本実施形態では、第3熱伝達ブロック1124が4つの第2ペルチェ素子1120に対して1つ設けられる場合を例に説明したが、第3熱伝達ブロック1124は、4つの第2ペルチェ素子1120に対応して各1つずつ設けられてもよい。この場合、4つの第3熱伝達ブロック1124は、第2熱伝達ブロック1122と同様に従属接続されてもよいし、並列接続とされてもよい。あるいは、並列と直列とが混在するように設けられてもよい。第2ペルチェ素子1120、第2熱伝達ブロック1122、および第3熱伝達ブロック1124が1つずつ組となる構成では、第2ペルチェ素子1120の増設が容易となり、要求性能に応じた構成変更が容易となる。
第3熱伝達ブロック1124から排出された二次熱媒体は、二次循環機構1150により、第3熱伝達ブロック1124と後述する熱交換器1160との間で循環させられる。すなわち、二次循環機構1150は、第3熱伝達ブロック1124から排出される二次熱媒体を、熱交換器1160に供給するとともに、熱交換器1160から排出される二次媒体を第3熱伝達ブロック1124に還流する。二次循環機構1150は、ポンプ1152と、リザーバタンク1154を備える。リザーバタンク1154は、循環させる二次熱媒体の余剰分を貯蔵する。ポンプ1152は、リザーバタンク1154から第3熱伝達ブロック1124に二次熱媒体を供給する。
熱交換器1160は、第3熱伝達ブロック1124から排出される二次熱媒体を受け取り放熱する。例えば、熱交換器1160はラジエータであってよく、ラジエータは二次熱媒体の熱を大気に放熱してよい。熱交換器1160対し空冷用のファン1162により風を当てて熱交換を促進させてよい。熱交換器1160から排出された二次熱媒体は、リザーバタンク1154に戻される。
二次循環機構1150により循環される二次熱媒体は、水であってよい。水は、比較的熱容量が高く、安価かつ入手が容易であるため二次熱媒体として好適である。また、常温において熱交換器1160としてラジエータを用いる場合には、水の凍結に配慮する必要がなく、取り扱いが簡便である。なお、二次熱媒体として、不凍液等の他の液体を用いてもよいし、気体を用いてもよい。
図12は、第2格納容器1126に格納された第2ペルチェ素子1120、第2熱伝達ブロック1122、および第3熱伝達ブロック1124を示す。第2ペルチェ素子1120、第2熱伝達ブロック1122、および第3熱伝達ブロック1124は、第2格納容器1126に気密密閉状態で格納される。第2格納容器1126は、本体部1710と蓋部1720とで構成される。本体部1710と蓋部1720とは、気密性を維持すべく平パッキン等のシーリング部材1730を挟んで密着する。第3熱伝達ブロック1124は、第2格納容器1126に、螺子1740により、直接接する態様で固定される。螺子1740は熱伝導率が比較的高い金属材料により形成されてよい。第2格納容器1126に直接接することで、第3熱伝達ブロック1124は、放熱面として機能する第2ペルチェ素子1120の第2面から熱を二次熱媒体へと伝達するだけでなく、第2格納容器1126を放熱器として利用して放熱を促進させることができる。第2熱伝達ブロック1122および第3熱伝達ブロック1124は、放熱面と吸熱面との断熱を維持しつつ螺子1750により第2ペルチェ素子1120を挟み押し付けられる。一例として、螺子1750は、樹脂素材等の断熱性の素材により形成される。樹脂素材の螺子では強度が不足する場合には、螺子1750の頭部と第2熱伝達ブロック1122との間に断熱素材のブッシュを挿入して放熱面と吸熱面とを断熱してもよい。第2格納容器1126には、第2ペルチェ素子1120に駆動電流を供給するための電気配線フィードスルー、第2熱伝達ブロック1122に一次熱媒体を循環させるための配管、および第3熱伝達ブロック1124に二次熱媒体を循環させるための配管等が取り付けられるが、これらも気密性が維持される態様で取り付けられる。以上のような構造により、第2格納容器1126の内部は気密性が維持され、第2格納容器1126の外部から水分が供給されることが妨げられるので、第2格納容器1126の内部で結露が生じることを抑制できる。第2格納容器1126は真空引きされた状態で密閉されてもよい。また、第2格納容器1126の内部に乾燥した不活性ガスが充填されてもよい。また、第2格納容器1126の内部にシリカゲル等の乾燥剤が配置されてもよい。
以上のように構成される温度調節装置1100によって冷却対象物を冷却するには、コントローラ1130により、第1ペルチェ素子1110および第2ペルチェ素子1120の第1面が吸熱面となるように駆動電流を供給するとともに、ポンプ1142およびポンプ1152によって一次熱媒体および二次熱媒体を循環させる。コントローラ1130は、調熱ステージ1112の露出面1224又は冷却対象物の温度を監視して、第1ペルチェ素子1110および/または第2ペルチェ素子1120に供給する駆動電流を制御してもよい。例えば、コントローラ1130は、監視温度が所定値よりも低下したことに応じて駆動電流を遮断し、監視温度が所定温度を超過したことに応じて駆動電流を供給するように制御してよい。あるいは、コントローラ1130は、温度計(図示せず)を利用して第2熱伝達ブロック1122の排出口付近での一次熱媒体の温度を監視し、一次熱媒体の凍結を防ぐように第2ペルチェ素子1120への駆動電流を制御してもよい。なお、第1ペルチェ素子に流す電流の向きを冷却動作時と逆とすることで、温度調節装置1100により対象物を加熱することも可能である。この場合、二次熱媒体を循環させてもよいし、循環を停止してもよい。また、温度調節装置1100により対象物を加熱する動作を行う場合、第2ペルチェ素子1120を停止させてもよいし、第2ペルチェ素子1120に冷却動作時と逆向きの駆動電流を流して一次熱媒体を加熱し、加熱性能を増強させてもよい。
以上で説明した温度調節装置1100の構成によれば、第1ペルチェ素子1110の放熱に用いる一次熱媒体を第2ペルチェ素子1120で冷却することで、冷却性を高めるとともに静粛性の高い温度調整装置を実現できる。また、第1格納容器1116および第2格納容器1126がペルチェ素子とその周辺に配される熱伝達ブロックを気密密閉して格納するので、第1格納容器1116および第2格納容器1126の内部で結露が生じることを抑制できる。
図13は、上記の第2の実施形態における第1ペルチェ素子1110、調熱ステージ1112、および第1熱伝達ブロック1114を格納する第1格納容器1116の変形例を示している。また、図14は、図13におけるB−B’線断面図である。なお、図13及び図14において、図6から図12で用いた参照番号と同じ参照番号が付された部材は、特に説明のない限り図6から図12に関して説明をしたものと同様の構成であるので、冗長な記載を避ける観点から説明を省略する。
本変形例においては、図13及び図14に示すように、調熱ステージ1112の突出部1220と第1格納容器1116の蓋部1520との間に、筒状の耐熱リング1800が配置される。すなわち、耐熱リング1800は、調熱ステージ1112の開口部1410から露出する部位と開口部1410との間に配される。耐熱リング1800は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のような高耐熱性の材料により、円筒形状に形成される。本変形例における調熱ステージ1112の突出部1220は、耐熱リング1800の形状に合わせ、円柱状に形成される。蓋部1520の開口部1410も、耐熱リング1800の形状に合わせ円形の貫通孔として設けられる。耐熱リング1800の外壁面1810は、蓋部1520に設けられた開口部1410の内壁面1540と、所定の間隙(クリアランス)を挟んで対向し、耐熱リング1800の内壁面1820は、突出部1220の側壁面1222と、所定の間隙を挟んで対向する。
耐熱リング1800の外壁面1810には溝1830が形成される。本変形例では、蓋部1520の開口部1410の内壁面1540には溝が形成されない。内壁面1540と溝1830との間には、弾性材料で形成されたOリング等のシーリング部材1850が配される。シーリング部材1850は、内壁面1540と溝1830とに挟まれて圧縮・変形し、内壁面1540と外壁面1810の間隙を封止する。溝1830およびシーリング部材1850は、それぞれ複数設けられてもよいし、1つであってもよい。これらの数は要求性能(断熱性能、気密性能、保持力等)に応じて決定することができる。図14に示すように、本変形例では、溝1830およびシーリング部材1850は2組設けられている。
耐熱リング1800の内壁面1820には溝1840が形成される。また、調熱ステージ1112の側壁面1222には、溝1226が形成される。内壁面1820と溝1226との間には、第1格納容器1116の気密性を維持すべく、Oリング等のシーリング部材1550が配される。シーリング部材1550は、溝1840と溝1226とに挟まれて圧縮・変形し、内壁面1820と側壁面1222の間隙を封止する。シーリング部材1550は、第1格納容器1116の気密性を確保するとともに、耐熱リング1800と調熱ステージ1112との上下方向における位置決めをする。溝1840、溝1226、およびシーリング部材1550は、それぞれ複数設けられてもよいし、1つであってもよい。これらの数は要求性能(断熱性能、気密性能、保持力等)に応じて決定することができる。また、シーリング部材1550を挟むための溝は、調熱ステージ1112の側壁面1222および耐熱リング1800の内壁面1820のいずれか一方のみに設けられてもよい。この場合、シーリング部材1850を挟む溝が蓋部1520の内壁面1540と耐熱リング1800の外壁面1810の双方に設けられ、シーリング部材1850を挟み溝同士が対向することにより、蓋部1520と耐熱リング1800の上下方向における位置決めをすることが望ましい。
調熱ステージ1112の突出部1220と第1格納容器1116の蓋部1520との間に、耐熱リング1800が配置される構造により、第1格納容器1116の内部は気密性を維持しつつ、調熱ステージ1112の温度変化により第1格納容器1116の蓋部1520にかかる熱的な負荷を抑制できる。
耐熱リング1800の下面外周部には、突起1860が設けられる。突起1860は、耐熱リング1800が調熱ステージ1112に対し所定の位置よりも下側にずれた時に、調熱ステージ1112の基底部1210上面に接し、過度な位置ずれを防止する。突起部1860は、耐熱リング1800の下面の全周に渡って設けられてもよいし、下面外周部の一部のみに設けられてもよい。
本変形例においては、第1格納容器1116における調熱ステージ1112と対向する内壁面に、遮熱部材1870が配置される。遮熱部材1870は、調熱ステージ1112からの輻射を反射して、第1格納容器1116への輻射による熱の伝達を妨げる。なお、遮熱部材1870は、少なくとも第1格納容器1116における調熱ステージ1112と対向する内壁面に配されればよく、第1格納容器1116の内壁面全面に配されてもよい。遮熱部材1870は、例えば、アルミニウム薄膜により形成することができる。他の例としては、蒸着、鍍金等の手法により、第1格納容器1116の内壁面の必要な領域に、遮熱膜を形成してもよい。
本変形例の構成によれば、耐熱リング1800および遮熱部材1870により、第1格納容器1116の内部に格納された第1ペルチェ素子1110、調熱ステージ1112、および第1熱伝達ブロック1114等との遮熱性能を高めることができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることができることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。