JP5998750B2 - 静電潜像計測方法及び静電潜像計測装置 - Google Patents
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画像形成装置における画像形成の課題項目として、画像を構成するドットの再現性の指標である粒状度の改善が挙げられる。高品質な画像形成装置を提供するためには優れたドット再現性を有していることが求められる。
中でも、露光プロセスにより感光体上に生じる静電潜像の状態は、トナー粒子の挙動に直接影響を及ぼす重要なファクターである。
そのため、潜像形成時のドット再現性の評価として、画像形成装置で用いられているような2次元的なドット周期パターン潜像を形成し、そのときの潜像形成の再現性を高精度に計測することが試みられている。
このような試みは、高品質の画像を得ることができる画像形成装置を実現する上で極めて重要であり、ミクロンスケールでの高精度の計測が要求される。
しかしながら、この方式を用いるためには、センサヘッドを試料に近接させる必要があり、放電や吸着の発生、センサ自身が磁場を乱す等の問題がある。
また、この方式では原理的に数ミリ程度の分解能であるため、静電潜像特性を評価するのに適していない。
すなわち、暗減衰を生じる通常の感光体は、測定することができない。通常の誘電体は電荷を半永久的に保持することができるので、電荷分布を形成後、時間をかけて測定を行っても、測定結果に影響を与えることはない。
従って、帯電、露光後に電子顕微鏡(SEM)内で静電潜像を観察しようとしても、その準備段階で静電潜像は消失してしまう。
この問題に対処すべく、本出願人は、暗減衰を有する感光体試料であっても静電潜像を計測することのできる方法及び装置を提案した(特許文献2〜4参照)。
静電潜像が形成された試料を電子ビームで走査し、これによって発生する試料からの2次電子を検出器で検出し、画像処理手段により2次電子のコントラスト像から潜像面積ないしは潜像径を算出するものである。
検出器は、試料の上方の片側に配置されている。
特許文献5には、空間周波数を考慮した潜像の再現性を評価する目的で、感光体試料の任意の点で空間周波数を変えながら順次、潜像形成及び計測を行うことで潜像形成の再現性を評価する手法が開示されている。
このため、同じ露光条件で潜像を形成したとしても、得られる潜像情報が異なるという課題があった。
2次電子像を同じ解析条件で解析すると、計測領域内の潜像形成位置により潜像の特性を示す特徴量が変動してしまい、潜像形成の再現性を高精度に評価することができなかった。
しかしながら、例えば1mm×1mm程度の領域に2次元的な潜像パターンを形成し、その再現性を評価する場合などには無視できないものとなる。
Th m =Br m /Br 0 ×Th 0
Th m =Br m /Br 0 ×Th 0
評価結果に基づいて露光条件を制御することにより、画像形成装置において高品質の画像を得ることができる。
図1乃至図21に第1の実施形態を示す。まず、図1に基づいて、本実施形態に係る静電潜像計測装置の構成について説明する。
静電潜像計測装置は、大きく分けて、荷電粒子ビームを照射する荷電粒子照射部10、露光光学系22、感光体試料(以下、単に「試料」という)23を載置する試料設置部GNDおよび1次反転荷電粒子や2次電子などの検出部24およびLED25等を備えている。
ここでいう「荷電粒子」とは、電子ビームあるいはイオンビームなど電界や磁界の影響を受ける粒子を指す。
すなわち、荷電粒子照射部10は、電子ビームを発生させるための電子銃11、電子ビームを制御するためのサプレッサ電極(引き出し電極)12、電子ビームのエネルギーを制御するための加速電極13、電子銃から発生された電子ビームを集束させるためのコンデンサレンズ14、電子ビームをON/OFFさせるためのビームブランカ15、仕切り板16、可動絞り17、非点補正部(スティングメータ)18、ビームブランカ15を通過した電子ビームを走査させるための走査レンズ19、走査レンズ19を通過した電子ビームを再び収束させるための対物レンズ20およびビーム射出開口部21を備えている。
2次電子検出手段としての2次電子検出器(以下、単に「検出器」ともいう)24には、シンチレータや光電子増倍管などを用いている。
これは、表面に金などが蒸着された金属板であり、感光体試料に電子ビームを照射することで生じた2次電子が検出器に到達せず抜けていくことを防ぐためのものである。
2次電子を2次電子捕獲部材26にぶつけることでエネルギーを減らし、その後正極性を持つ検出器へ到達させる。2次電子捕獲部材26の形状は円形や正方形など、任意の形状であってよい。
この静電潜像計測装置の制御および信号処理系統は以下のように構成されている。
これらの制御部により、加速電極13、走査レンズ19、対物レンズ20が制御されて、感光体試料23の表面に電子ビームが適正に照射され、感光体試料23表面が均一に帯電される。
また、ホストコンピュータ200は、図3に示すように、音響光学偏向素子103、光偏向器105を制御するようになっている。
音響光学偏向素子103、光偏向器105の制御により、感光体試料23の表面がレーザ光で2次元走査され、感光体試料23の表面に所望のパターンの静電潜像が形成されるようになっている。
ホストコンピュータ200は、試料台制御部206を介して試料台GNDの位置や高さなどを制御し、さらにLED制御部207を介して、測定後の感光体試料23の残留電荷を消去するようになっている。
これにより、感光体試料23上に所望のビーム径のビームプロファイルを生成することが可能となっている。
光源は、LD100に代えて、図4(a)に示すような、複数の発光点が一直線状に並んだマルチビーム光源801、図4(b)に示すような、VCSEL(面発光レーザ)802等を用いてもよい。
このライン方向を主走査方向とする。また、図3に示すように、ポリゴンスキャナなどによる走査方向(主走査方向)に対し直交する方向(この方向を副走査方向とする)に光束を走査するための音響光学偏向素子103が配置されている。
静電潜像計測装置の仕様によっては、実際の画像形成装置に用いられる態様の感光体を試料とすることも可能である。
入力信号を周波数変調してこれを音響光学偏向素子103に加えると、加えられる信号の周波数に応じてレーザ光の回折度合いが変わり、角度変調を行うことができる。
音響光学偏向素子103には機械的可動部がないため、これを用いることで高速な走査を実現することができる。
この超音波トランスデューサ94に外部から電気信号を与えて超音波を発生させ、超音波を媒体中に伝播させると、光学素子内に周期的な屈折率の粗密を形成することができる。
周波数変換器95は一種のオシレータで、例えば、周波数制御発振器(VCO)で構成することができる。
以下、周波数変換器のことを「VCO」という。VCOで生成された信号はRFアンプ96を経て超音波トランスデューサ94に加えられ、上記のようにレーザ光の角度変調が行われる。
θ01=λ・fa/Va
偏向角をΔθだけ変化させるためには、基本周波数faを音響波周波数変調Δfa分だけシフトさせるとよい。この場合、Δθは以下の式で表される。
Δθ=λ・Δfa/Va
図5(b)は、VCO95に入力する電圧信号とVCO95の出力周波数の関係を示す。図5(b)からわかるように、VCO95に適切な電圧信号を入力することで、所望の方向に光束を偏向させることができる。
これによって、露光光学系22を電子ビームの軌道から遠ざけることができ、測定結果に及ぼす外乱の影響を抑制することができる。
この場合、露光ビームは、真空チャンバ40の外壁に設けられた透明な入射窓より入射させることが望ましい。
図6に示すように、真空チャンバ40の鉛直軸に対して45°の角度で、外部の露光光学系22から真空チャンバ40内部に向かって光ビームを入射可能な入射窓68が配置された構成となっている。
図6において、露光光学系22は、図示されない光源、音響光学偏向素子103、光偏向器105、走査レンズ106、光ビームの光路を曲げるミラー72を有している。
また、図6には描かれていないが、前記コリメートレンズ、アパーチャ、同期検知手段などを有している。
露光光学系22の主要部は光学ハウジング69の上に配置され、上部は上記カバー71で覆われて遮光されている。
光学ハウジング69は水平方向の平行移動台83の上に取り付けられ、平行移動台83は柱状の複数本の構造体82を介して除振台81の上に取り付けられている。
走査ビーム77の進路の周りは、外部遮光筒73、内部遮光筒75、これら内外の遮光筒の接続部に介在するラビリンス部74によって遮光されている。
除振台81の上に真空チャンバ40が固定されている。真空チャンバ40内に試料載置台としての試料ステージ78が水平面内において直交2軸方向に移動可能に取り付けられている。
荷電粒子照射装置10の内部も真空チャンバ40と連通していて真空に保たれている。
真空チャンバ40内には、感光体試料23に静電潜像を形成した後、感光体試料23に荷電粒子ビームを照射することによって放出される電子ビームを検出する検出器24の検出端が感光体試料23に向かって伸びている。
このため、ポリゴンスキャナ等の光偏向器105をモータ65によって回転駆動する際に生じる振動は、真空チャンバ40に直接伝播されることはなく、上記振動が感光体試料23の静電潜像測定に与える影響は少ない。
さらに、図6では示していないが、構造体82と除振台81との間にダンパを挿入すれば、防振効果を更に高めることができる。
まず、荷電粒子照射装置10により感光体試料23に電子ビームを照射させることで、感光体試料23の表面を均一に帯電させる。
このときの加速電圧と2次電子放出比δとの関係を図7に示す。加速電圧E1は、これを2次電子放出比δが1となる加速電圧E0よりも高い加速電圧に設定する。
これにより、入射電子量が放出電子量より上回るため電子が試料23に蓄積され、チャージアップを起こす。
この結果、試料23はマイナスの一様帯電を生じることができる。
帯電電位が形成されたら、静電潜像が観察できるように入射電子量を1/100〜1/1000に下げる。
ここで、2次電子放出比δは、
2次電子放出比δ=放出電子/入射電子
と表されるが、より厳密にいうと、透過電子と反射電子を考慮する必要があるので、
放出電子=透過電子+反射電子+2次電子
とするとよい。
δ=1となるような加速電圧E1では帯電が起きず、平衡状態を保っている。加速電圧E1>E0の場合は、δ<1となり、入射電子数に比べて放出電子数が少ないため、負帯電となっている。
照射時間に対する帯電電位の関係を、加速電圧ごとに示したのが図8である。
帯電電位Vs(<0)における、電子の試料表面到達時の速度をV、電子の質量、電荷量をそれぞれm、eとすると、V={2e(E1−(−Vs))}1/2と表すことできる。
これは、相対的に加速電圧E1が小さくなっていることを意味する。これにより、単位時間あたりの電荷蓄積量が減少し、E1−(−Vs)=E0に相当する帯電電位になると、飽和帯電電位に達し平衡安定する。
電子ビームの加速電圧E1と飽和帯電電位Vsには、近似的に以下の関係式が成立する。
飽和帯電電位=−{(電子ビームの加速電圧E1)−(δ=1となる電子ビームの加速電圧E0)}・・・・(1)
E0は、試料の特性によって異なってくる場合があるが、以下の手順で求めることができる。
ほぼ直線的に変化していると見なすことができるので、近似直線より加速電圧E1=0.915kVのときVs=0であるため、この試料でのE0=0.915kVと求めることができる。
式(1)によれば、上記試料を−800Vに帯電させようとした場合、電子ビームの加速電圧が1.5kV以下では、飽和帯電電位でも−585Vであり、−800Vの帯電電位には達しない。
|E1−E0|≧|Vs|・・・・(2)
より、1.715kV以上の加速電圧が必要である。
加速電圧が大きくなると目標とする帯電電位に到達する時間が短くなるので、制御することが難しくなるだけでなく、試料へのダメージも無視できなくなる。
従って、なるべく小さい加速電圧で、所望の帯電電位を形成できる条件が望ましい。
|Vs|≦|E1−E0|≦|Vs|+2kV・・・・(3)
が適切である。
今回の試料で例えば−800Vに帯電させるために、1.7〜3.7kV程度が適当と考える。そのときの電子ビーム照射時間は、2分以下程度である。
短い時間で帯電させるためには、電子ビームの電流密度を大きくすればよい。
露光光学系22は、感光体試料23の表面に所望のビーム径及びビームプロファイルを形成するように調整されている。
必要な露光エネルギーは感光体試料23の特性によって決まるファクターであるが、通常、2〜10mJ/m2程度である。
感度が低い感光体試料23では、必要露光エネルギーは十数mJ/m2となることもある。帯電電位や必要露光エネルギーは、感光体特性やプロセス条件に合わせて設定するとよい。
画像パターンとしては、図10に示すような、1by1、2by2、1ドット格子、副走査1ドットラインや副走査ピッチむらのある1ドットラインなどがある。
これらのパターンの一つを意図的に発生させたラインのほか、様々なパターンを形成することができる。
この露光プロセスは、ホストコンピュータ200が、LD制御部・2次元走査制御部205を制御することによって実行される。
これを電子検出部201で電気信号に変換してコントラスト像を観察する。
このとき、2次電子検出部は、電子ビーム走査レンズ19からの走査信号と同期を取ることで、各走査位置とその位置における2次電子検出量を関連付ける。
暗の部分を露光による潜像部とみなすことができるので、コントラスト像の明暗の境界を潜像径とすることができる。
試料表面に電荷分布があると、感光体試料23の上方に位置する空間に、表面電荷分布に応じた電界分布が形成される。
従って、電荷リーク箇所は、露光部が黒、非露光部が白となり、表面電荷分布に応じたコントラスト像を測定することができる。
感光体試料23の表面は、光減衰により電位が減衰した部分を除いては負極性に一様に帯電した状態であり、検出器24には正極性の電位が与えられている。
そのため、実線で示す電位等高線群においては、感光体試料23の表面から検出器24に近づくに従い電位が高くなる。
一方、図11(a)において、Q3点は光照射されて負電位が減衰した部分であり、Q3点近傍では電位等高線の配列は破線で示すように、Q3点を中心とした半円形の波紋状に広がる。
この波紋状の電位分布では、Q3点に近いほど電位が高くなっている。換言すると、Q3点の近傍で発生した2次電子el3には、矢印G3で示すように、感光体試料23側に拘束する電気力が作用する。
図11(b)は、上記ポテンシャルの穴を模式的に示している。すなわち、検出器24により検出される2次電子の強度(2次電子数)は、強度の大きい部分が「静電潜像の地の部分(均一に負帯電している部分、図11(a)の点Q1やQ2に代表される部分)」に対応し、強度の小さい部分が「静電潜像の画像部(光照射された部分、図11(a)の点Q3に代表される部分)」に対応することになる。
そして、信号処理部202により上記表面電位分布V(X,Y)を2次元的な画像データとして構成し、これを測定結果出力部203、画像処理部204を経て、ディスプレイやプリンタなどのアウトプット装置で出力すれば、静電潜像が可視的な画像として得られる。
もちろん、表面電位分布を知ることができれば、表面電荷分布も知ることができる。
上述の構成によれば、表面電荷分布を有する試料に荷電粒子ビームを照射して得られる検出信号により、試料の電荷分布の状態を測定する方法において、露光条件を変えたときの潜像の状態を計測することにより、感光体の静電特性を把握することができる。
感光体試料23上に生成された帯電電荷は光を照射することで消失し、次の測定に備えることができる。
以上のプロセスを行うことで、所望の条件で形成された静電潜像を計測することができる。
上述の電子ビームによる帯電により、感光体試料に帯電電荷を生成する(S1)。感光体試料の帯電を行った後は、静電潜像が観察できるように入射電子量を1/100〜1/1000に下げる。
上述の露光光学系を用いて、所望の2次元露光パターンが形成されるように露光し、感光体試料上に潜像パターンを形成する(S2)。
潜像パターンが形成された試料に対して、電子ビームを照射し、試料から放出される2次電子を検出することで静電潜像計測を行う(S3)。
LEDを用いて感光体試料の除電を行い、次の測定に備える(S4)。
露光プロセスにより感光体上に生じる静電潜像の状態は、トナー粒子の挙動に直接影響を及ぼす重要なファクターである。
そのため、潜像形成時のドット再現性評価として、画像形成装置で用いられているような2次元的なドット周期パターン潜像を形成し、そのときの潜像形成再現性を高精度に計測することが、高品質の画像を得ることができる画像形成装置を実現するうえで極めて重要であるといえる。
また、その検出条件の変動特性は、図13に示すように、計測条件により様々な特性で変化する。
すなわち、潜像の形成位置が同じ(a〜e)であっても、計測条件の変化により輝度の変動特性が変化する。
図13(b)において、黒丸はある計測条件での輝度の変動特性を示し、黒三角はそれとは異なる計測条件での輝度の変動特性を示している。
これは、感光体の帯電部の検出輝度が高い場所、即ち、検出感度の高い場所では、図14のようなコントラスト像の明暗の境界に対応する、電界の極性が変化する位置において検出される微弱な2次電子でも検出輝度が高まり、他の場所で形成された静電潜像と比べて、コントラストの暗い部分が狭まるためである。
電子ビーム走査から得られたコントラスト像に対して、同じ解析条件を用いて潜像面積を算出した場合、図15に示すように、潜像形成位置により潜像面積が異なるため、計測領域内において計測ばらつきが生じ、潜像形成の再現性を高精度に評価することができない。
このような条件では上記の検出条件の変動の影響は小さく、問題視されていなかった。
本発明の構成では、後述するように、露光ビームの二次元走査が実現でき、これにより従来と比較して広範囲領域に潜像形成が可能となった。
例えば1mm×1mm程度の領域に離隔した複数の潜像を有する2次元的な潜像パターンを形成し、その再現性を評価する場合などには上記の検出条件の変動は無視できないものとなる。
電子ビーム照射から得られたコントラスト像に対して画像処理を行うことで、潜像面積ないしは潜像径を算出することができる。
例えば、コントラスト像に対して所定のスレッシュ値で2値化処理を行い、潜像部の輪郭を抽出し、輪郭の内側を占める画素数をカウントすることで潜像面積を算出することができる。
しかし、スレッシュ値を固定した解析条件で図15に示したような異なる位置に形成された潜像の潜像面積ないしは潜像径を算出する場合、上述した検出条件の変動の影響を受けて計測ばらつきが生じてしまう。
図16に示すような2次元的なドット周期パターン潜像が感光体試料に形成された場合を考える。
本発明の潜像の解析方法では、計測領域内の異なる位置に形成された離隔した複数の潜像において、各潜像の周辺帯電部の輝度を求め、その周辺輝度に応じて2値化スレッシュ値を設定する。
2値化スレッシュ値の算出式を式(4)に示す。ここで、Thmは解析に用いる2値化スレッシュ値を、Brmは注目潜像の周辺帯電部輝度を表し、異なる位置に形成された各潜像それぞれで値が設定される。また、Th0は基準2値化スレッシュ値を、Br0は基準輝度を表し、予め所定値に定めておく。
Thm=(Brm/Br0)×Th0 (4)
すなわち、潜像計測画像では、画像のピクセル毎にそれぞれ異なる輝度値を持っているため、算出枠上の全ピクセルの輝度値を取得し、それを平均することにより周辺帯電部輝度Brmが求まる。
「算出枠上」とは、枠内という意味ではなく、枠としてのライン上を意味する。換言すれば、算出枠が四角形の場合には、4辺に亘るライン上である。
輝度値の平均は、該ライン上の全ピクセルの合計輝度値を全ピクセル数で割ることにより得られる。
Brm算出枠の設定に関して、図17を用いて説明する。図17は、感光体試料に2次元的なドット周期パターン潜像が形成されたときの潜像画像を表す。
解析対象の潜像におけるBrm算出枠は、解析対象の潜像中心と隣接する潜像中心の中点を通り、各辺が露光光学系による主走査方向、または、副走査方向と平行な長方形と定義される。
この定義に基づくBrm算出枠の設定により、感光体試料上に形成された離隔した複数の潜像に対して任意の1つの潜像を内部に含む枠を設定することができる。
ここでは図示されないが、ドット潜像は、図示した潜像の外部にも周期的に形成され、それに基づき、Brm算出枠が設定されている。
式(4)によれば、感光体の帯電部の検出輝度が高い場所、即ち、検出感度の高い場所では2値化スレッシュ値が高く設定されるため、潜像輪郭が大きく解析され、上述の計測領域内での検出条件の変動を補正することができる。
すなわち、図14(b)で説明した「検出輝度が高いことによって潜像径が狭くなり潜像面積が小さくなる」という検出条件の変動による計測誤差を、検出条件の変動に対応して2値化スレッシュ値を変化させることで是正することができる。
これより、計測領域内の潜像形成位置による検出条件の変動を考慮した潜像解析が実現でき、計測ばらつきを改善することができる。
これらの一連の手順を、図18のフローチャートに基づいて説明する。
周辺帯電部輝度Brmを算出するためのBrm算出枠を設定する(S11)。
Brm算出枠は、解析対象の潜像中心と隣接する潜像中心の中点を通り、各辺が露光光学系による主走査方向、または、副走査方向と平行な長方形と定義される。
式(4)に基づき、2値化スレッシュ値Thmを算出する(S13)。
S13で算出した2値化スレッシュ値Thmを用いて、注目潜像(解析対象潜像)に対して、2値化処理を行う(S14)。
2値化処理から抽出した潜像部の輪郭の内側を占める画素数をカウントすることで潜像面積を算出する(S15)。
潜像画像に対する解析終了の有無を判断し(S16)、別の潜像に対して解析を行う場合は、S11へ進む。
Brm算出部では、測定結果出力部から取得できる画像情報をもとに、注目潜像の周辺帯電部輝度Brmを算出し、その値はThm算出部へ送られる。
Thm算出基準値設定部では、Thm算出に用いる基準2値化スレッシュ値Th0、基準輝度Br0を任意の値に設定可能であり、設定された値はThm算出部へ送られる。
算出された値は、2値化処理部へ送られる。
2値化スレッシュ値を固定値で設定して解析を行う従来方式では、検出器に近い位置では潜像径が小さく、遠ざかるほど潜像径が大きくなる計測量の傾きが生じていた。
これに対し、本発明を適用し、潜像形成位置により2値化スレッシュ値を潜像ごとに変動させて解析した場合は、計測量の傾きが改善されることがわかる。
これに対し、本発明を適用すると0.9%に改善され、従来と比較して高精度な潜像評価が実現できることがわかる。
すなわち、本発明によれば、画像形成装置で用いられているような2次元的なドット周期パターン潜像において、その潜像形成の再現性の高精度な計測が実現できる。
電子写真方式の画像形成装置では、帯電させた感光体に対して光を照射し、静電潜像を形成する。
これにより電荷分布が生じ、トナーの付着の有無が決まるが、感光体の仕様、或いは欠陥により、光を照射しなくても、電荷分布が生じることがある。
これは感光体が層構成をしており、帯電した際に、電荷が自然にリークしてしまうことによる。これを以下、電荷リークと呼ぶ。
前述の実施形態において、2値化スレッシュ値の算出のために注目潜像を囲むBrm算出枠上の平均輝度より周辺帯電部輝度Brmを求めたが、電荷リークの影響を受けずにBrmの算出を行うために、算出過程において電荷リーク部の輝度は除外する必要がある。
これは、出力輝度が所定値以上の画素のみをBrm算出有効画素として設定して、Brmの算出を行えばよい。
これにより、暗いコントラストで計測される電荷リーク部を算出から除くことができ、電荷リークの影響を受けずに2値化スレッシュの設定ができる。
周辺帯電部輝度Brmを算出するためのBrm算出枠を設定する(S21)。
Brm算出枠は、解析対象の潜像中心と隣接する潜像中心の中点を通り、各辺が露光光学系による主走査方向、または、副走査方向と平行な長方形と定義される。
Brm算出に対する電荷リーク部の影響を除くため、出力輝度が所定値以上の画素のみをBrm算出有効画素に設定する(S22)。
式(4)に基づき、2値化スレッシュ値Thmを算出する(S24)。
S24で算出した2値化スレッシュ値Thmを用いて、注目潜像に対して、2値化処理を行う(S25)。
潜像画像に対する解析終了の有無を判断し(S27)、別の潜像に対して解析を行う場合は、S21へ進む。
Brm算出下限値設定部では、周辺帯電部輝度Brmの算出過程における電荷リークの影響を除外するための輝度下限値を設定し、その値はBrm算出部に送られる。
Brm算出部では、Brm算出下限値設定部からの輝度下限値と測定結果出力部から取得できる画像情報をもとに、Brm算出に用いる有効画素を決定し、それらの輝度平均値からBrmを算出する。
その値は、Thm算出部へ送られる。
Thm算出部では、Brm算出部からの周辺帯電部輝度Brm、Thm算出基準値設定部からの基準2値化スレッシュ値Th0、基準輝度Br0を入力信号として受け、これらの値をもとに、上記の算出式より2値化スレッシュ値Thmを算出する。
算出された値は、2値化処理部へ送られる。
以上の構成により、電荷リークの影響を受けずに2値化スレッシュの設定ができ、また、計測領域内の潜像形成位置による検出条件の変動を考慮した潜像解析が実現できる。
上述の実施形態において、計測領域内の各潜像において2値化スレッシュ値の算出及び設定を行うことで、計測領域内の潜像形成位置による検出条件の変動を考慮した潜像解析が実現でき、これにより、2次元的なドット周期パターン潜像に関わる潜像形成再現性の高精度な計測が実現できることを示した。
この計測領域内の潜像形成位置による潜像解析条件の設定は、測定試料の異なる領域に形成された離隔した各潜像に必要とされる解析条件を予めメモリに蓄えておき、その解析条件をメモリから参照することで、効率的に潜像形成再現性の高精度計測に必要とされる2値化スレッシュ値の設定が実現できる。
2値化条件メモリでは、上述の実施形態における解析手順から得られた所望の実験条件における2値化スレッシュ値Thmと潜像形成位置の関係を格納している。
2値化処理部では、注目する潜像の計測領域内での潜像形成位置情報を2値化条件メモリに送り、その形成領域に応じた2値化スレッシュ値Thmを受け取る。
以上の構成により、潜像測定毎に解析条件を算出する作業が省略でき、効率的に測定試料の異なる領域に形成された離隔した各潜像に対して、潜像形成再現性の高精度計測に必要とされる2値化スレッシュ値の設定が実現できる。
10 感光体試料を電子ビームで走査する手段としての荷電粒子照射部
22 静電潜像形成手段としての露光光学系
23 感光体試料
24 2次電子検出手段としての検出器
100 光源としてのLED
200 2値化スレッシュ値設定手段としてのホストコンピュータ
Claims (6)
- 感光体試料の表面に形成される静電潜像を計測する静電潜像計測方法であって、
前記感光体試料の表面に荷電粒子ビームを照射し前記感光体試料を帯電させる帯電工程と、
光源からの光束を2次元的に照射して、帯電した前記感光体試料に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
静電潜像が形成された前記感光体試料を電子ビームで走査することにより、前記感光体試料から発生する2次電子を検出する2次電子検出工程と、
検出した2次電子のコントラスト像から潜像面積ないしは潜像径を算出する画像処理工程と、を備え、
前記画像処理工程では、前記感光体試料の異なる領域に形成された離隔した複数の静電潜像において、各領域毎に静電潜像の2値化スレッシュ値を設定して2値化処理を行い、解析対象の静電潜像の周辺帯電部輝度をBr m 、基準輝度をBr 0 、基準2値化スレッシュ値をTh 0 としたときに、解析対象の静電潜像の2値化スレッシュ値Th m は、以下の式により設定し、解析対象の静電潜像の周辺帯電部輝度Br m は、解析対象の静電潜像中心と隣接する静電潜像中心の中点を通り、各辺が露光光学系による主走査方向、または、副走査方向と平行な長方形と定義されるBr m 算出枠上の平均輝度より算出することを特徴とする静電潜像計測方法。
Th m =Br m /Br 0 ×Th 0 - 請求項1に記載の静電潜像計測方法において、
前記光源からの光照射以外の要因で生じる電荷分布からの信号を除去して2値化スレッシュ値Th m を算出することを特徴とする静電潜像計測方法。 - 請求項2に記載の静電潜像計測方法において、
所定値以上の出力輝度を有効値として、2値化スレッシュ値Th m を算出することを特徴とする静電潜像計測方法。 - 請求項1〜3のいずれか1つに記載の静電潜像計測方法において、
前記感光体試料の異なる領域に同一の露光パターンを用いて、離隔した複数の静電潜像を形成することを特徴とする静電潜像計測方法。 - 感光体試料の表面に形成される静電潜像を計測する静電潜像計測装置であって、
前記感光体試料の表面に荷電粒子ビームを照射し前記感光体試料を帯電させる帯電手段と、
光源からの光束を2次元的に照射して、帯電した前記感光体試料に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
静電潜像が形成された前記感光体試料を電子ビームで走査する手段と、
電子ビームの走査により前記感光体試料から発生する2次電子を検出する2次電子検出手段と、
検出した2次電子のコントラスト像から潜像面積ないしは潜像径を算出する画像処理手段と、
を備え、
前記画像処理手段は、前記感光体試料の異なる領域に形成された離隔した複数の静電潜像において、各領域毎に静電潜像の2値化スレッシュ値を設定する2値化スレッシュ値設定手段を有し、
解析対象の静電潜像の周辺帯電部輝度をBr m 、基準輝度をBr 0 、基準2値化スレッシュ値をTh 0 としたときに、解析対象の静電潜像の2値化スレッシュ値Th m は、以下の式により設定し、解析対象の静電潜像の周辺帯電部輝度Br m は、解析対象の静電潜像中心と隣接する静電潜像中心の中点を通り、各辺が露光光学系による主走査方向、または、副走査方向と平行な長方形と定義されるBr m 算出枠上の平均輝度より算出することを特徴とする静電潜像計測装置。
Th m =Br m /Br 0 ×Th 0 - 請求項5に記載の静電潜像計測装置において、
2値化スレッシュ値Thmの算出に関して、前記光源からの光照射以外の要因で生じる電荷分布からの信号を除去する信号除去手段を有することを特徴とする静電潜像計測装置。
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