JP5995492B2 - 難燃性水性樹脂組成物及びその用途 - Google Patents

難燃性水性樹脂組成物及びその用途 Download PDF

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本発明は、難燃性水性樹脂組成物及びその用途に関する。より詳しくは、本発明は、難燃性のバックコート剤及びコーティング剤等に好適に使用することができる難燃性水性樹脂組成物、及び該難燃性水性樹脂組成物を用いたコーティング剤、バックコート剤、及び該バックコート剤でバックコートされた難燃性繊維布帛に関する。
従来、車輌(自動車、鉄道車輌)、及び航空機等で使用される繊維内装材では、繊維の抜け落ち防止及び強度向上の目的から、繊維の裏面にバックコート剤(バッキング剤)を塗布するバックコート(バッキング処理;裏打加工)が施されている。近年は、特に自動車等の分野において、安全上の問題から使用する材料の難燃化が望まれており、これらの材料に使用するバックコート剤についても高い難燃性が要求されている。バックコート剤において一般的に使用される難燃剤としては、酸化アンチモンと組み合わせたデカブロモジフェニルエーテル等のハロゲン系難燃剤が挙げられる。
しかし、ハロゲン系難燃剤は、一般に難燃剤としての性能は優れているが、塩素、臭素等のハロゲン元素を含んでいるため、これを含有するバックコート剤を使用した製品が廃棄され、焼却処理される場合に、環境負荷物質であるハロゲン化水素が発生し、ハロゲン系難燃剤の種類によっては、さらに環境負荷の大きい物質であるハロゲン化ダイオキシン等の環境負荷物質が発生するといった問題があり、その使用の回避又は使用量の低減が望まれている。
ハロゲン系難燃剤以外の有効な難燃剤として、ポリリン酸系難燃剤がある。しかし、ポリリン酸系難燃剤は耐水性が十分とは言えず、車輌用シート製造において使用される高温蒸気、及び雨、汗等の水分によって難燃成分が溶け出し、繊維製品表面にヌメリ又はシミが生じることにより製品の風合いを損ねるという問題も存在する。このヌメリ又はシミの発生を抑えるため、これまでにポリリン酸系難燃剤表面をケイ素化合物又はメラミン樹脂でコートする等の種々の試みが行われてきた(特許文献1及び2)。これらの方法により、常温の水に対するヌメリ又はシミはかなり改善されたものの、高温の蒸気又は水に対し、特にヌメリに関してまだ十分な防止効果が得られているとは言えず、さらなる改良が望まれている。
ポリリン酸系難燃剤以外にもリンを含有する難燃剤は存在し、その中でも成形樹脂、発泡ウレタン及び繊維などに幅広く用いられているリン酸エステル系難燃剤には耐水性に優れた化合物が存在する。しかし、リン酸エステル系難燃剤は、バックコート用途では難燃性が低い化合物が多い。
特開2006−063125号公報 特開2006−233152号公報
本発明の主な目的は、ハロゲンを含有せず、難燃性が良好でヌメリが少ない難燃性水性樹脂組成物を提供することであり、さらに該難燃性水性樹脂組成物を用いたコーティング剤、バックコート剤、及び該バックコート剤でバックコートされた難燃性繊維布帛を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ハロゲンを含有しない特定のリン化合物を難燃剤として含有する難燃性水性樹脂組成物をバックコート剤として繊維に適用した際に、難燃性が良好でヌメリが少なくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の難燃性水性樹脂組成物等を提供する。
項1. 一般式(I):
Figure 0005995492
[式中、Aは水素原子又は
Figure 0005995492
(ここで、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基である)であり、k、l、m及びnは、それぞれ独立して1〜3の整数である]で表されるリン化合物、及び水性樹脂エマルジョンを含有してなる、難燃性水性樹脂組成物。
項2. 前記一般式(I)において、Aが水素原子であり、k、l、m及びnが1である、項1に記載の難燃性水性樹脂組成物。
項3. 前記一般式(I)において、Aが
Figure 0005995492
(ここで、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基である)であり、k、l、m及びnが1である、項1に記載の難燃性水性樹脂組成物。
項4. 前記R及びRがメチル基である、項3に記載の難燃性水性樹脂組成物。
項5. 前記一般式(I)において、Aが水素原子であり、k、l、m及びnがそれぞれ独立して1〜3の整数であるリン化合物、及びAが
Figure 0005995492
(ここで、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基である)であり、k、l、m及びnがそれぞれ独立して1〜3の整数であるリン化合物の両方を含む、項1に記載の難燃性水性樹脂組成物。
項6. 前記k、l、m及びnが1である、項5に記載の難燃性水性樹脂組成物。
項7. 前記R及びRがメチル基である、項5又は6に記載の難燃性水性樹脂組成物。
項8. 前記一般式(I)で表されるリン化合物の総量が、前記難燃性水性樹脂組成物の全固形分のうち5〜80重量%である、項1〜7のいずれか1項に記載の難燃性水性樹脂組成物。
項9. 項1〜8のいずれか1項に記載の難燃性水性樹脂組成物を含んでなるバックコート剤。
項10. 項9に記載のバックコート剤でバックコートされた難燃性繊維布帛。
項11. 項1〜8のいずれか1項に記載の難燃性水性樹脂組成物を含んでなるコーティング剤。
本発明の難燃性水性樹脂組成物は、難燃剤としてハロゲンを含まない有機リン化合物を含有するため、環境への負荷が少ない。また、この有機リン化合物は難燃性が良好であり、ヌメリを生じないため、該難燃性水性樹脂組成物を含むバックコート剤及びコーティング剤も、良好な難燃性を有するとともに、ヌメリを生じないという効果を発揮する。よって、該難燃性水性樹脂組成物を含むバックコート剤で繊維布帛をバックコートすることにより、良好な難燃性を有するとともに、ヌメリを生じない難燃性布帛を得ることができる。
本発明の難燃性水性樹脂組成物は、一般式(I):
Figure 0005995492
[式中、Aは水素原子又は
Figure 0005995492
(ここで、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基である)であり、k、l、m及びnは、それぞれ独立して1〜3の整数である]で表されるリン化合物、及び水性樹脂エマルジョンを含有してなる。
一般式(I)における炭素数1〜4のアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。これらの中で、メチル基及びエチル基が好ましく、難燃性の点からメチル基が特に好ましい。
k、l、m及びnは、それぞれ独立して1〜3の整数であり、1〜2の整数が好ましく、難燃性の点からすべてが1であることが特に好ましい。
本発明において難燃剤として使用されるリン化合物は、一般式(I)において、Aが水素原子である、以下の一般式(Ia):
Figure 0005995492
(k、l、m及びnはそれぞれ独立して1〜3の整数である)で表されるリン化合物、及び一般式(I)において、Aが
Figure 0005995492
(ここで、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基である)である、以下の一般式(Ib):
Figure 0005995492
(ここで、k、l、m及びnはそれぞれ独立して1〜3の整数であり、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基である)で表されるリン化合物である。リン化合物(Ia)及び(Ib)は、いずれもハロゲンを含まない有機リン化合物である。これらのリン化合物は、難燃性を有するとともにヌメリを生じない。
一般式(Ia)で表されるリン化合物で好ましい化合物としては、下記の化学式(1)〜(8)の化合物が挙げられる。
Figure 0005995492
一般式(Ia)で表されるリン化合物は1種類で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。これらの中でもk、l、m及びnが1である、化学式(1)の、2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ[2.2.2]オクタン−4−メタノール−1−オキシドが、リン含有量が高く、高い難燃性を付与できる点で特に望ましい。

一般式(Ib)で表されるリン化合物の好ましい例としては、下記の化学式(9)〜(16)の化合物等が挙げられる。
Figure 0005995492
一般式(Ib)で表されるリン化合物は1種類で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。これらの中でもk、l、m及びnが1であるリン化合物が好ましく、k、l、m及びnが1であり、且つR及びRがメチル基であるリン化合物である、化学式(9)の、2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ[2.2.2]オクタン,4−{[(5,5−ジメチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル)オキシ]メチル}−,1−オキシドが、リン含有量が高く、高い難燃性を付与できる点で特に望ましい。
一般式(Ia)及び一般式(Ib)で表されるリン化合物は、単独で用いてもよく、一般式(Ia)のリン化合物と一般式(Ib)のリン化合物とを併用して用いてもよい。
本発明において難燃剤として使用されるリン化合物は、難燃性水性樹脂組成物を含むバックコート剤及びコーティング剤を均一に塗布するという点で、粒径は小さい方が好ましい。具体的には、リン化合物の平均粒径は50μm以下が好ましく、さらに好ましくは平均粒径20μm以下である。
一般式(Ia)で表されるリン化合物及び/又は一般式(Ib)で表されるリン化合物の配合量は、少なすぎると難燃性が不足し、多すぎるとバックコート層の強度又は風合いの低下を招くことから、難燃性水性樹脂組成物の全固形分のうち5〜80重量%が好ましく、20〜70重量%がより好ましく、40〜60重量%が特に好ましい。
一般式(Ia)で表されるリン化合物を合成する方法は特に限定されないが、対応するポリオール化合物と三価或いは五価のリン化合物を反応させる方法が挙げられる。
一般式(Ib)で表されるリン化合物を合成する方法は特に限定されないが、一般式(Ia)で表されるリン化合物と下記一般式(II):
Figure 0005995492
(ここで、R及びRは一般式(Ib)の定義と同じであり、XはBr、Cl等のハロゲン原子を表す)で表される化合物を、ハロゲン化水素捕捉剤の存在下、有機溶剤中で反応させた後、過酸化水素のような酸化剤で酸化させることにより得る方法が挙げられる。
本発明において使用される水性樹脂エマルジョンは、合成樹脂の微細な粒が水の中に分散したものである。水性樹脂エマルジョンは、水性媒体中で、原料単量体を乳化重合させることによって製造することも可能であるし、一般に繊維加工用として市販されているものを適宜使用してもよい。水性樹脂エマルジョンの製造に用いられる水性媒体とは、水に各種の添加剤を配合したものであり、添加剤として、各種重合体の乳化重合法による製造方法において使用する公知の添加剤、具体的には、触媒、乳化剤、連鎖移動剤等を挙げることができる。乳化重合における反応条件は、特に限定されるものではなく、単量体の種類、添加剤の種類等によって適宜設定することができる。合成樹脂がアクリル系樹脂又はウレタン系樹脂である水性樹脂エマルジョンを使用するのが好ましい。
なお、本発明の難燃性水性樹脂組成物は、その固形分が30〜70重量%であるのが好ましく、40〜60重量%がより好ましい。
本発明の難燃性水性樹脂組成物の加工安定性を向上させるために、さらに増粘剤を添加することができる。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、デンプン、キサンタンガム、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、アクリル系共重合体樹脂、ウレタン変性型界面活性剤等が挙げられる。増粘する場合、難燃性水性樹脂組成物の粘度としては、5000〜50000mPa・sが好ましい。
本発明の難燃性水性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、一般式(Ia)及び(Ib)で表されるリン化合物以外の難燃剤、例えば、ポリリン酸アンモニウム塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リン酸エステル、アルキルホスフィン酸金属塩等を併用することができる。
本発明の難燃性水性樹脂組成物には、必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料、表面改質剤、抗菌剤、防虫剤、帯電防止剤等を添加することができる。
本発明の難燃性水性樹脂組成物は、上記のリン化合物、水性樹脂エマルジョン、及び必要であれば増粘剤等の添加剤を混合して攪拌することにより調製することができる。混合及び攪拌の操作は、慣用の攪拌装置、例えば、各種ミル、ホモジナイザー等を用いて行うことができる。各種成分を均一に混合することができれば、その添加順序は問わない。全成分を一度に攪拌装置に入れて混合及び攪拌してもよい。或いは水性樹脂エマルジョンを攪拌しながら、そこにリン化合物を添加してもかまわない。
本発明の難燃性水性樹脂組成物は、バックコート剤、コーティング剤等のような難燃性が要求される各種分野の組成物及び材料に好適に使用することができる。よって、本発明の別の態様によれば、本発明の難燃性水性樹脂組成物を含んでなる、バックコート剤及びコーティング剤が提供される。該難燃性水性樹脂組成物を含むバックコート剤及びコーティング剤は、その中に上記のような有機リン化合物を含有するため、良好な難燃性を有するとともに、ヌメリを生じない。
本発明のバックコート剤が適用される繊維布帛としては、綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維、あるいはレーヨン、アセテート等の再生繊維、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリエステル等の合成繊維などからなる織布、編布等が挙げられる。
本発明のバックコート剤の生地布帛裏面への塗布方法は特に限定されず、例えばロールコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、カレンダーコーター等の公知の塗布方法により行うことができる。
バックコート剤の繊維への塗布量は、難燃性繊維布帛の用途、必要とする難燃レベル等により異なるが、車輌シート表皮用途では、乾燥後の固形分が20〜200g/mとなるのが好ましい。20g/mより少ないと十分な難燃性を付与することができず、200g/mより多くなると風合いが硬くなることがある。
塗布後の乾燥条件としては、100〜180℃で1〜10分が好ましい。
このようにして得られた繊維布帛は、該難燃性水性樹脂組成物を含むバックコート剤でバックコートされているので、良好な難燃性を有するとともに、繊維の表面にヌメリを生じない。
以下の実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
(合成例1)
化学式(1)の化合物(2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ[2,2,2]オクタン−4−メタノ−ル−1−オキシド)の合成
Figure 0005995492
撹拌機、温度計及び塩酸回収装置を接続した還流管、アスピレーター、滴下ロート並びに加熱装置を備えた5Lの4ツ口フラスコに、ペンタエリスリトール1089g(8.0mol)及びジオキサン3268gを充填し、90℃に加熱した。次いで、オキシ塩化リン1228g(8.0mol)を、温度を85〜95℃に保持しながら4.5時間かけて添加し、添加終了後に更に脱塩化水素反応を4.5時間行った。続いて30℃、8.7kPaにて減圧脱塩酸を2時間行い、白色スラリーを得た。
得られた白色スラリーを20℃に冷却し、濾過して粉体を得た。次いで得られた粉体を水670gでリパルプ洗浄を2回行い、温度80℃/圧力2.7kPaで12時間かけて乾燥し、2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ[2,2,2〕オクタン−4−メタノ−ル−1−オキシドを主成分とする難燃化合物986g(収率68%)を得た。得られた2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ[2,2,2〕オクタン−4−メタノ−ル−1−オキシドは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定して、純度98.3面積%、リン含有量16.9重量%であった。得られた難燃化合物を、平均粒径20μm以下まで粉砕したものを以下の実施例にて使用した。
なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
装置:東ソー株式会社製 HLC−8220
カラム:東ソー株式会社製 TSKgel SuperHZ1000 3本
溶離液:THF
検出器:RI
カラム温度:40℃
流量:0.35ml/min。
(合成例2)
化学式(9)の化合物(2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ[2.2.2]オクタン,4−{[(5,5−ジメチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル)オキシ]メチル}−,1−オキシド)の合成
Figure 0005995492
撹拌機、温度計及び塩酸回収装置を接続した還流管、アスピレーター並びにウォーターバスを備えた1Lの4ツ口フラスコに、三塩化リン144.2g及びトルエン136.7gを仕込み、撹拌しながら20℃に調節した。そこに、ネオペンチルグリコール105.2gを4時間かけて少しずつ追加し、追加終了後も20℃を保持しながら1.5時間脱塩酸反応を行った。反応終了後、40℃まで昇温し、20kPaで減圧脱塩酸を2時間行うことで、2−クロロ−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナンのトルエン溶液を得た。
次に、撹拌機、温度計、滴下ロート及びウォーターバスを備えた500mLの4ツ口フラスコに、合成例1で得られた2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ[2.2.2]オクタン−4−メタノール−1−オキシド27.7g、トルエン61.5g、トリエチルアミン19.0gを仕込んだ。また、滴下ロートには、上記で得られた2−クロロ−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナンのトルエン溶液45.5g及びトルエン25.1gを仕込んだ。撹拌しながら50℃まで加熱したスラリーに、反応中のスラリーが50〜60℃を維持するように滴下ロートの溶液を50分かけて滴下し、滴下後に1時間撹拌した。次に、水20.9gを加え、撹拌した後にスラリーをろ過した。このろ過ケーキを水81gでさらに洗浄した。
撹拌機、温度計、滴下ロート、ウォーターバスを備えた1Lの4ツ口フラスコに、上記で得られたケーキ64.4g及びクロロホルム199.4gを仕込み、撹拌した。このスラリーに、15℃にて30%過酸化水素水21.0gを20分かけて滴下し、その後45℃で1時間撹拌した。次に、炭酸ナトリウム1.1gを水10.5gに溶解させた溶液を加え、1時間撹拌した。このスラリーをろ過し、水29g、水31g、THF20gの順で洗浄した後、70℃/圧力2.7kPaで10時間乾燥させ、2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ[2.2.2]オクタン,4−{[(5,5−ジメチル−2−オキシド−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル)オキシ]メチル}−,1−オキシドを主成分とする難燃化合物32.1g(収率64%)を得た。リン含有量18.8重量%。得られた難燃化合物を、平均粒径20μm以下まで粉砕したものを以下の実施例にて使用した。
(実施例1)
合成例1で得られた難燃化合物20重量部、イオン交換水20重量部、市販のアクリル樹脂エマルジョン(DIC製ボンコートAB−886:固形分50%)40重量部、及び28%アンモニア水溶液0.4重量部に、増粘剤としてSNシックナーA−812(サンノプコ株式会社製)0.7重量部を加え、ホモジナイザーで均一化し、粘度15000mPa・s(BM型粘度計4号ローター12rpm)のバックコート剤を得た。
上記で得られたバックコート剤を、250g/mのポリエステルニットの裏面に、乾燥重量60g/mとなるように均一に塗布した後、150℃で3分間乾燥させ、難燃性繊維布帛を得た。
(実施例2)
難燃化合物として、合成例2で得られた難燃化合物20重量部を用いた以外は実施例1と同じ方法で難燃性繊維布帛を得た。
(比較例1)
難燃化合物として、ポリリン酸系難燃剤であるポリリン酸アンモニウムのシランコート物(ブーデンハイム社製 FRCROS486、以下APPと称する)20重量部を用いた以外は実施例1と同じ方法で難燃性繊維布帛を得た。
(比較例2)
難燃化合物として、リン酸エステル系難燃剤である以下の構造:
Figure 0005995492
を有する化合物20重量部を用いた以外は実施例1と同じ方法で難燃性繊維布帛を得た。
実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の難燃性繊維布帛の難燃性及びヌメリを測定した。
[難燃性試験]
難燃性試験は、米国自動車安全基準FMVSS302の試験方法に従って行った。縦横5回ずつ試験を行い、その全てが、1)A標線前に自消、2)A標線後の燃焼距離50mm以下かつ燃焼時間60秒以下、3)A標線後の燃焼速度100mm/分以下、のいずれかに該当するものを難燃性ありと判断し、合格とした。
[ヌメリ性試験]
得られた布帛の表面(バックコートしていない面)の中央に、それぞれ60℃の温水を3ml付与し、その付与直後及び3分後に指で触れ、付与直後及び3分後の両方において、ヌメリが感じられない場合は「○」、僅かにヌメリが感じられる場合は「△」、はっきりとヌメリが感じられる場合は「×」と表示した。
難燃試験結果とヌメリ性試験の結果を、使用した難燃化合物のリン含有率とともに以下の表1に示す。
Figure 0005995492
表1から、実施例1及び実施例2の繊維布帛は難燃試験に合格するとともにヌメリを生じないのに対し、難燃化合物としてAPPを用いた比較例1の繊維布帛は難燃試験には合格するがヌメリを生じている。このことから、本願のリン化合物を含む水性樹脂組成物を用いることで、ヌメリの発生が改善されることがわかる。
また、比較例2では、難燃化合物として、繊維への高温吸尽処理用として優れた難燃性を有するリン酸エステルを用いた。ここで、比較例2の難燃化合物は、実施例1及び実施例2の難燃化合物と同じく環状構造を有するリン酸エステルであり、リン含有量も実施例1及び実施例2と同程度である。一般に、リン酸エステル系難燃剤はそのリン含有率が高いほど難燃効果が高いと考えられるため、比較例2の繊維布帛は実施例1及び実施例2の繊維布帛と同程度の難燃性を有することが予想される。しかし、表1に示すように、比較例2の繊維布帛は、実施例1及び実施例2の繊維布帛と比較して、難燃性が明らかに低い。これらのことから、一般式(Ia)のリン化合物を用いた実施例1及び一般式(Ib)のリン化合物を用いた実施例2のバックコート剤は、難燃性バックコート剤として非常に有効であることがわかる。
本発明の難燃性水性樹脂組成物は難燃性が良好でハロゲンを含まないため、良好な難燃性を有すると共に環境への負荷が少ない。該難燃性水性樹脂組成物をバックコート剤として繊維布帛にバックコートすることにより、ヌメリの無い難燃性布帛を製造することができる。得られた難燃性布帛は様々な用途に使用できる。

Claims (11)

  1. 一般式(I):
    Figure 0005995492
    [式中、Aは水素原子又は
    Figure 0005995492
    (ここで、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基である)であり、k、l、m及びnは、それぞれ独立して1〜3の整数である]で表されるリン化合物、及び水性樹脂エマルジョンを含有し、
    前記水性樹脂エマルジョンが、樹脂としてアクリル系樹脂又はウレタン系樹脂を含む、難燃性水性樹脂組成物。
  2. 前記一般式(I)において、Aが水素原子であり、k、l、m及びnが1である、請求項1に記載の難燃性水性樹脂組成物。
  3. 前記一般式(I)において、Aが
    Figure 0005995492
    (ここで、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基である)であり、k、l、m及びnが1である、請求項1に記載の難燃性水性樹脂組成物。
  4. 前記R及びRがメチル基である、請求項3に記載の難燃性水性樹脂組成物。
  5. 前記一般式(I)において、Aが水素原子であり、k、l、m及びnがそれぞれ独立して1〜3の整数であるリン化合物、及びAが
    Figure 0005995492
    (ここで、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基である)であり、k、l、m及びnがそれぞれ独立して1〜3の整数であるリン化合物の両方を含む、請求項1に記載の難燃性水性樹脂組成物。
  6. 前記k、l、m及びnが1である、請求項5に記載の難燃性水性樹脂組成物。
  7. 前記R及びRがメチル基である、請求項5又は6に記載の難燃性水性樹脂組成物。
  8. 前記一般式(I)で表されるリン化合物の総量が、前記難燃性水性樹脂組成物の全固形分のうち5〜80重量%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の難燃性水性樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の難燃性水性樹脂組成物を含んでなるバックコート剤。
  10. 請求項9に記載のバックコート剤でバックコートされた難燃性繊維布帛。
  11. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の難燃性水性樹脂組成物を含んでなるコーティング剤。
JP2012088637A 2012-04-09 2012-04-09 難燃性水性樹脂組成物及びその用途 Active JP5995492B2 (ja)

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