JP5993196B2 - 冷感に優れた複合繊維 - Google Patents
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例えば、繊維を構成するポリマーとして吸湿性を有するポリマーを用いたもの(特許文献1)や、熱可塑性エラストマーを用いたもの(特許文献2)、さらには熱伝導性に優れた無機粒子などを練りこんだものが提案されている。
また、布帛を形成した後に、後加工によって冷感を有する物質を付着させる技術も開示されているが(特許文献3、4)、後加工による付着は、接着剤となるバインダーによる風合いの悪化や洗濯耐久性の問題などを有するものであった。
上述の通り、従来の方法では冷感と加工性、耐久性を十分両立する繊維は得られておらずその改善が望まれていた。
本発明の複合繊維は、芯鞘型の複合繊維であり、鞘成分を構成するポリマーは、繊維形成性ポリマーからなる。
該繊維形成性ポリマーとしては、成形性、取り扱い性、染色性の点からポリエステル系ポリマーであることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどの繊維形成性ポリエステルが好ましい。すなわち、テレフタル酸を主たる二官能性カルボン酸成分とし、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどを主たるグリコール成分とするポリアルキレンテレフタレート系ポリエステルが好ましい。さらには、かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルや、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステル、ポリ乳酸やステレオコンプレックスポリ乳酸などの脂肪族ポリエステルでもよい。
ここで、使用されるテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の如き芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸をあげることができる。
さらに、ポリエステルが実質的に線状である範囲でトリメリット酸、ピロメリット酸のごときポリカルボン酸、グリセリン、トリメチp−ルプロパン、ペンタエリスリトールのごときポリオールなどを使用することができる。
また本発明の繊維に用いる原料樹脂には、従来公知の酸化防止剤、耐光剤、難燃剤、顔料などを本発明の目的を損なわない範囲で含有させることができる。
ここで鞘成分と芯成分は重量比で1/9〜7/3である必要がある。鞘成分が芯成分に対し重量比率で7/3を超えると、芯成分の有する冷感効果が繊維表面において発現困難となり十分な効果を得られ難くなり、逆に1/9より小さいと鞘部の破れによる芯部露出などの問題が発生し好ましくない。好ましい範囲は2/8〜5/5である。
さらに該丸断面単糸が直線状に連結した形状の場合、扁平形状断面の短軸の最大幅B1と、くびれ部に相当する短軸の最小幅B2の比(B1/B2)は1.05以上1.6以下であることが好ましい。B1/B2が1.05未満となると上述の丸断面が連結した効果が低下し、また、B1/B2が1.6を超えると、連結部の厚みが薄くなり冷感効果が低下する。好ましい範囲は1.1〜1.4である。
また、強度は1.5cN/dt以上であることが好ましい。強度が1.5cN/dt未満であると耐久性に劣るものとなる。
本発明の繊維を布帛とする場合は、布帛全てに用いてもよく、部分的に用いても良い。その組織は特に限定されず、織物でもよいし編物でもよいし不織布でもよい。
倍率500倍の、繊維の透過型電子顕微鏡による断面写真から、20本の複合繊維単糸につきA、B1、B2の値を測定し、その平均値から、扁平率A/B1、B1/B2の値を算出した。
JIS L1070記載の方法に準拠して測定を行った。
得られた複合繊維を用いて目付150g/m2の筒編みを作成し、被験者10人が生地を触った瞬間の冷感の有無について以下の基準により評価を行い、10人の点数の平均値を求め、評価した。
3点 : 明らかに体感できる冷感を感じた
2点 : 少し冷感を感じた
1点 : わずかに冷感を感じた
0点 : 全く冷感を感じなかった
また、布帛を8cm×8cmの大きさとし、予め40℃に暖めた10cm×10cmの大きさの厚み0.5mmのステンレス板に載せ、ステンレス板の中央部の温度を熱電対で測定して、最大降下温度を測定し、参考例との温度差にて評価した。
紡糸、延伸工程において、1日当りの断糸、単糸巻き付き回数が0〜1回を◎、2〜4回を○、5〜8回を△、9回以上を×とした。
得られた複合繊維を用いて目付150g/m2の筒編みを作成し、分散染料で常圧にて染色し、80℃で精錬後、130℃にて熱セットを行った。この筒編みを触った際の触感、および外観について次の基準により風合い、染色性を評価した。風合いは、柔軟で滑らかで良好なものを○、ある程度柔軟だが若干硬目のものを△、単糸同士が融着し柔軟性がなく硬いものを×とした。また、染色性は、良く染まっておりかつ斑がなく均一なものを○、単糸間で染色性に斑があり筋が見えるものを△、染着度合いが極めて低く斑も大きいものを×とした。
固有粘度0.64dL/g(35℃、オルトクロロフェノール中)であるポリエチレンテレフタレートを、290℃に設定したエクストルーダーで溶融し、ギヤポンプで計量した後パック内へ導入し、実施例1と同じ繊度となる吐出孔を36ホール有する口金から285℃の温度条件で吐出し、紡糸速度1000m/分で巻き取った。巻き取った未延伸糸を予熱温度90℃、熱セット温度160℃、延伸倍率3.4倍の条件で延伸し、84dtex/36fils.の丸断面繊維を得た。得られた繊維を用いて筒編みを作成し、冷感評価の基準とした。
固有粘度0.64dL/g(35℃、オルトクロロフェノール中)であるポリエチレンテレフタレート(PET)と、高密度ポリエチレン(PE、JIS K−7210によるメルトフローレート;19)を、それぞれ290℃および230℃に設定したエクストルーダーで別々に溶融し、それぞれをギヤポンプで計量した後パック内へ導入し、パックに取り付けた吐出口金内でポリエチレンが芯部に配される様に合流させ、図1(a)に示す断面形状となる吐出孔を36ホール有する口金から285℃の温度条件で吐出し、紡糸速度1000m/分で巻き取った。巻き取った未延伸糸を予熱温度90℃、熱セット温度160℃、延伸倍率3.4倍の条件で延伸し、84dtex/36fils.の芯鞘型複合繊維を得た。得られた繊維を用いて筒編みを作成し、冷感を評価した。得られた繊維の物性、評価結果を表1に示す。
吐出孔を36ホール有し、図1(b)、(c)に示す断面形状となる口金を用いた以外は実施例1と同様にして84dtex/36fils.の扁平断面芯鞘型複合繊維を得た。得られた繊維の物性およびこの繊維を用いて作成した筒編みの評価結果を表1に示す。
実施例1において、鞘部と芯部の比率を表1に示す如く変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。得られた繊維の物性、評価結果を表1に示す。
実施例1において、鞘部にポリエチレンが配される様に繊維の断面形状を変更したこと、以外は実施例1と同様に実施した。得られた繊維の物性、評価結果を表1に示す。
また、鞘部にポリエチレンを配した比較例3では冷感には優れるが染色不可であり、110℃の熱セットで単糸同士の融着が発生し風合いが硬化し、着用には不適なものとなった。
B1:扁平形状断面の長軸に直交する短軸の最大幅
B2:くびれ部に相当する短軸の最小幅
Claims (3)
- 繊維形成性ポリマーを鞘成分とし、主たる構成成分が高密度ポリエチレンであるポリマーを芯成分とする、鞘成分が実質的に芯成分を覆っている断面形状の芯鞘型複合繊維であって、鞘成分の繊維形成性ポリマーがポリエステル系ポリマーであり、鞘成分ポリマーと芯成分ポリマーとの重量比が鞘/芯=1/9〜7/3であり、複合繊維が下記(1)〜(3)の要件を同時に満たすことを特徴とする冷感に優れた複合繊維。
(1) 複合繊維の繊維軸に直行する断面の形状が扁平形状で、断面の長軸方向に丸断面単糸が直線状に連結した形状であり、くびれ部を2〜5個有すること。
(2) 扁平形状断面の長軸の幅Aとそれに直交する短軸の最大幅B1の比A/B1が2〜6であること。
(3) 扁平形状断面の短軸の最大幅B1と、くびれ部に相当する短軸の最小幅B2の比比B1/B2が1.05以上1.6以下であること。 - 複合繊維の繊維軸に直行する断面が扁平形状であり、該扁平形状断面の長軸の幅Aとそれに直交する短軸の最大幅B1の比A/B1が2〜10である請求項1記載の冷感に優れた複合繊維。
- 複合繊維の単糸繊度が0.1〜10dtex、強度が1.5cN/dt以上である請求項1又は2記載の冷感に優れた複合繊維。
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